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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】手動式シート掛け装置
(51)【国際特許分類】
   B60P 7/04 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
B60P7/04 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019161009
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021037870
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】518199849
【氏名又は名称】大煌工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000208204
【氏名又は名称】大林道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】山下 将弘
(72)【発明者】
【氏名】堀川 恭司
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-001581(JP,A)
【文献】実開昭59-105535(JP,U)
【文献】特開平07-026862(JP,A)
【文献】特開平07-215127(JP,A)
【文献】米国特許第05125713(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 7/04
B60P 7/06
B60J 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷台に積載された積載物を上方から覆うシートを手動で引き出しおよび巻き取る装置であって、
前記車両の荷台の前端部に車幅方向に沿って配置された回転可能な巻取りドラムであって、当該巻取りドラムは、その軸方向の両端にそれぞれ連結された左右一対の回転軸と該左右一対の回転軸をそれぞれ支持する左右一対の軸受により、軸方向の両端で回転可能に支持されている巻取りドラムと、
前記左右一対の回転軸は、夫々に軸方向に相対移動可能に嵌合する第1軸と第2軸とで構成され、左右の前記第1軸が、前記巻取りドラムの軸方向の端部に摺動可能に挿通嵌合され、左右の前記第2軸が、左右の前記軸受によって回転可能に支持されている左右一対の回転軸と、
前記巻取りドラムを手動で回転させる手動式回転機構と、を備える巻取り部と、
前記巻取りドラムに巻き取られた前記シートの引き出し端に連結された引き出し用ロープと、
を含んで構成されることを特徴とする手動式シート掛け装置。
【請求項2】
前記手動式回転機構は、前記巻取りドラムと一体に回転するプーリと、該プーリに巻き掛けられた無端状のチェーンとで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の手動式シート掛け装置。
【請求項3】
前記巻取り部の左右両端部を前記車両の荷台の前端部に着脱可能に取り付ける左右一対の取付部を設け、各取付部には、その幅寸法を調整するための調整機構を設けるとともに、各取付部を、これに螺合するボルトを前記車両の荷台の左右の各側壁に押圧することによって各側壁に固定することを特徴とする請求項1又は2に記載の手動式シート掛け装置。
【請求項4】
前記引き出し用ロープを平面視Y字状とし、該引き出し用ロープの合流点から二股状に左右に広がる左右部分の各先端部を前記シートの引き出し端の左右に連結したことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の手動式シート掛け装置。
【請求項5】
前記シートの引き出し端に補強用の芯金を幅方向に沿って取り付けたことを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の手動式シート掛け装置。
【請求項6】
前記シートをその幅寸法が前記車両の荷台の幅寸法よりも大きな幅広シートとし、該幅広シートを、その左右両側部を内側に折り畳んだ状態で前記巻取りドラムに巻き取るとともに、同幅広シートの折り畳んだ左右両側部の各端縁に複数の止め輪を長手方向に沿って適当な間隔で取り付けたことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の手動式シート掛け装置。
【請求項7】
前記幅広シートの少なくとも左右両側部と引き出し端に営業ゼッケンを見せるための透明部を設けたことを特徴とする請求項に記載の手動式シート掛け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の荷台に積載された積載物を上方から覆うシートを手動で引き出しおよび巻き取るための手動式シート掛け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックなどの車両の荷台には種々の積載物が積載されるが、例えば道路舗装用の加熱アスファルト混合物は、当該加熱アスファルト混合物の製造設備から道路の舗装箇所まで保温した状態で搬送される。このような車両の荷台に積載された加熱アスファルト混合物が風や降雨などによって冷やされないようにするため、搬送中の加熱アスファルト混合物を保温用のシートで上方から覆うことが行われている。
【0003】
ところで、従来、車両の荷台に積載された加熱アスファルト混合物の上にシートを掛ける作業は、加熱アスファルト混合物の上に作業者が載って行われていた。この場合、加熱アスファルト混合物の温度は、100℃を超えるほどの高温であるばかりでなく、車両の荷台に積載された状態の加熱アスファルト混合物の表面には凹凸があるために足場が悪く、作業しにくいという問題がある。また、シートは重いため、このシートを作業者が加熱アスファルト混合物の上に掛けるには多大な労力を要するばかりか、作業効率が悪いという問題もある。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、車両(トラック)の荷台前方上部に配置された水平方向の巻取軸に巻装されたシートを荷台後方に向かって引き出して当該シートで荷台の積載物上を覆うシート掛け装置が提案されている。具体的には、荷台前方上部に配置された巻取軸に、シートの巻取り駆動手段と制動手段を設け、シートの引出端に、荷台の側壁の上縁と上部を通って荷台後端に達するワイヤーを固定し、このワイヤーの反シート側端を巻き取るワイヤードラムを設けてシート掛け装置が構成されている。このシート掛け装置によれば、車両の運転室内に設けられたコントローラを操作することによって、シートの引き出しと巻き取りを自動で行うことができる。
【0005】
また、特許文献2には、車両の荷台を覆うカバーシートを引き出しまたは収納するカバーシート巻き機を荷台の前壁背面に配置して成るカバーシート掛け装置が提案されている。具体的には、このカバーシート掛け装置のカバーシート巻き機は、車両の荷台の前端上部に幅方向に沿って配置された回転可能な巻き軸と、該巻き軸を回転駆動する電動装置と、逆転防止装置および手動ハンドル装置を備えている。このように構成されたカバーシート巻き機を備えるカバーシート掛け装置において、リモコンを操作して電動装置によって巻き軸を正逆転させることによって、カバーシートを巻き軸から引き出して荷台に積載された積載物に当該カバーシートを掛けることができるとともに、積載物に掛けられたカバーシートを巻き軸によって巻き取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-326533号公報
【文献】特開2001-165195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2において提案されたシート掛け装置によれば、荷台に載って作業者が作業を行うことなく、コントローラやリモコンを操作してシートを自動で引き出し或いは巻き取ることができるため、作業性の向上や省力化を図ることができる反面、以下のような問題がある。
【0008】
すなわち、特許文献1,2において提案されたシート掛け装置は、巻取軸(巻き軸)を回転駆動するための駆動手段や制動手段、逆転防止装置などが必要であるため、構造が複雑化し、コストアップを招くという問題がある。また、リモコンなどを操作してシートを正常に引き出し或いは巻き取るには熟練を要し、初心者が簡単にこれらの作業を行うことができないという問題もある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、熟練を要することなく、手動でシートを引き出してこれを車両の荷台に掛け、或いは荷台に掛けられていたシートを手動で巻き取ることができる構造単純で安価な手動式シート掛け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る手動式シート掛け装置は、車両の荷台に積載された積載物を上方から覆うシートを手動で引き出しおよび巻き取る装置であって、前記車両の荷台の前端部に車幅方向に沿って配置された回転可能な巻取りドラムと、該巻取りドラムを手動で回転させる手動式回転機構と、を備える巻取り部と、前記巻取りドラムに巻き取られた前記シートの引き出し端に連結された引き出し用ロープと、を含んで構成されることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る手動式シート掛け装置によれば、シートの引き出しと巻き取りは全て手動で行われるため、これらの作業に熟練を要することがなく、初心者であっても簡単にシートを引き出し或いは巻き取ることができる。また、シートの引き出しと巻き取りを手動で行うための構成が単純化するため、手動式シート掛け装置の構造単純化とコストダウンを図ることができる。
【0012】
上記手動式シート掛け装置において、前記手動式回転機構は、前記巻取りドラムと一体に回転するプーリと、該プーリに巻き掛けられた無端状のチェーンとで構成されていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、シートの巻き取りに際して、チェーンを手でたぐってプーリを手動で回転させれば、このプーリと共に巻取りドラムが一体に回転してシートが該巻取りドラムに巻き取られて収納される。
【0014】
また、前記手動式シート掛け装置において、前記巻取りドラムは、その軸方向両端にそれぞれ連結された左右一対の回転軸と、各回転軸をそれぞれ支持する左右一対の軸受によって軸方向両端が回転可能に支持されていてもよい。
【0015】
上記構成によれば、巻取りドラムを左右の回転軸とこれを支持する左右の軸受によって荷台に回転可能に支持することができる。
【0016】
また、前記手動式シート掛け装置において、前記各回転軸は、軸方向に相対移動可能に嵌合する第1軸と第2軸とでそれぞれ構成され、各第1軸は、前記巻取りドラムの軸方向端部に摺動可能に挿通嵌合し、各第2軸は、前記軸受によって回転可能に支持されているものとしてもよい。
【0017】
上記構成によれば、左右の回転軸の軸方向長さを調整することができるため、荷台の幅が異なる車両に対しても、本発明に係る手動式シート掛け装置を取り付けることができる。
【0018】
また、前記手動式シート掛け装置において、前記巻取り部の左右両端部を前記車両の荷台の前端部に着脱可能に取り付ける左右一対の取付部を設け、各取付部には、その幅寸法を調整するための調整機構を設けるとともに、各取付部を、これに螺合するボルトを前記車両の荷台の左右の各側壁に押圧することによって各側壁に固定するようにしてもよい。
【0019】
上記構成によれば、左右の各取付部の幅を調整機構によって調整することができるため、荷台の側壁の幅が変化しても、この変化に対応して各取付部の幅を調整して該取付部を各側壁にそれぞれ確実に取り付けることができる。
【0020】
また、前記手動式シート掛け装置において、前記引き出し用ロープを平面視Y字状とし、該引き出し用ロープの合流点から二股状に左右に広がる左右部分の各先端部を前記シートの引き出し端の左右に連結してもよい。
【0021】
上記構成によれば、引き出し用ロープを引っ張れば、引張力がシートの引き出し端の左右に均等に作用するため、巻取り部の巻取りドラムに巻き取られて収納されているシートを左右に偏ることなく均一な力でスムーズに引き出すことができ、この引き出したシートを荷台の積載物に掛けてこれを覆うことができる。
【0022】
また、前記手動式シート掛け装置において、前記シートの引き出し端に補強用の芯金を幅方向に沿って取り付けてもよい。
【0023】
上記構成によれば、シートの引き出し用ロープが連結される引き出し端の強度が芯金によって高められるため、該引き出し端の左右に引き出し用ロープが確実かつ強固に連結される。
【0024】
また、前記手動式シート掛け装置において、前記シートをその幅寸法が前記車両の荷台の幅寸法よりも大きな幅広シートとし、該幅広シートを、その左右両側部を内側に折り畳んだ状態で前記巻取りドラムに巻き取るとともに、同幅広シートの折り畳んだ左右両側部の各端縁に複数の止め輪を長手方向に沿って適当な間隔で取り付けてもよい。
【0025】
上記構成によれば、積載物を積載した車両の荷台の全体を幅広シートで覆うことができる。
【0026】
また、前記手動式シート掛け装置において、前記幅広シートの少なくとも左右両側部と引き出し端に窓状の透明部を設けてもよい。前記透明部は外面を透明にした名札入れ状のポケットであってもよい。
【0027】
上記構成によれば、幅広シートが荷台の全体を覆った状態においても、荷台の少なくとも左右両側面と後面に表示されている営業ゼッケンを、透明部を介して視認することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、熟練を要することなく、手動でシートを引き出してこれを車両の荷台に掛け、或いは荷台に掛けられていたシートを手動で巻き取ることができる構造単純で安価な手動式シート掛け装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る手動式シート掛け装置を備えた車両の斜視図である。
図2】(a)~(c)は本発明に係る手動式シート掛け装置の巻取り部の破断正面図である。
図3図2(a)のA部拡大詳細図である。
図4図3の矢視B方向の図である。
図5】本発明に係る手動式シート掛け装置の取付部の正断面図である。
図6】本発明に係る手動式シート掛け装置の取付部の平面図(図5の矢視C方向の図)である。
図7】本発明に係る手動式シート掛け装置のシート引き出し中の動作を示す車両の斜視図である。
図8】本発明に係る手動式シート掛け装置のシート掛け状態を示す車両の斜視図である。
図9】本発明の別形態に係る幅広シートの平面図である。
図10】(a)~(c)は本発明の別形態に係る幅広シートの引き出し課程をその工程順に示す荷台の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0031】
[手動式シート掛け装置の構成]
まず、本発明に係る手動式シート掛け装置の構成を図1図6に基づいて以下に説明する。
【0032】
図1は本発明に係る手動式シート掛け装置を備えた車両の斜視図、図2(a)~(c)は本発明に係る手動式シート掛け装置の巻取り部の破断正面図、図3図2(a)のA部拡大詳細図、図4図3の矢視B方向の図、図5は本発明に係る手動式シート掛け装置の取付部の正断面図、図6は同取付部の平面図(図5の矢視C方向の図)である。
【0033】
本発明に係る手動式シート掛け装置1は、図1に示す車両(トラック)50の荷台51に積載された積載物(本実施の形態では、加熱アスファルト混合物)Sを上方から覆うシート2を手動で引き出しおよび巻き取る装置であって、シート2を手動で巻き取るための巻取り部10と、該巻き取り部10によって巻き取られたシート2を手動で引き出すための引き出し用ロープ30とで構成されている。
【0034】
上記巻取り部10は、図2に示すように、車両50の荷台51の前端上部に車幅方向(左右方向)に沿って配置された回転可能な巻取りドラム11と、該巻取りドラム11を手動で回転させる手動式回転機構12とを備えている。ここで、巻取りドラム11は、円筒状の部材であって、その左右両端の開口部には、円板状の端板13がそれぞれ取り付けられており、各端板13の中心部には、軸方向外方に向かって一体に延びる円筒状のスリーブ13aがそれぞれ設けられている。そして、左右の各スリーブ13aには、回転軸14がそれぞれ挿通支持されている。なお、各回転軸14の軸心は、巻取りドラム11の軸心に一致している。
【0035】
ところで、図3に詳細に示すように、左右の各回転軸14は、軸方向に互いに相対移動可能な第1軸14Aと第2軸14Bによってそれぞれ構成されており、各第1軸14Aは、左右の各端板13の中心から一体に突出する各スリーブ13aに軸方向(図3の左右方向)に摺動可能に挿通嵌合しており、第2軸14Bは、その外端部が軸受15によって荷台51に回転可能に支持されている。
【0036】
ここで、図3に詳細に示すように、一方(図2の右側)の回転軸14の第2軸14Bの第1軸14A側(図3の左側)の端部には中空部14aが形成されており、この中空部14aに第1軸14Aの端部が第2軸14Bに対して軸方向に相対移動可能に嵌合している。したがって、回転軸14においては、第1軸14Aと第2軸14Bとは周方向には巻取りドラム11と一体に回転し、軸方向には互いに相対移動が可能である。なお、図3には一方(図2の右側)の回転軸14部分の詳細のみを示すが、他方(図2の左側)の回転軸14部分の構成は一方のそれと同じであるため、これについての説明は省略する。
【0037】
ところで、前記手動式回転機構12は、一方(図2の右側)の回転軸14に設けられており、図3に示すように、回転軸14の第2軸14Bに結着されて左右の回転軸14と巻取りドラム11と共に一体に回転するプーリ16と、該プーリ16に巻き掛けられた無端状(エンドレス)のチェーン17とで構成されている。
【0038】
以上のように構成された巻取り部10は、図2に示すように、その左右両端部が左右一対の取付部20によって車両50の荷台51(図1参照)の前端上部に着脱可能に取り付けられている。より詳細には、図1に示すように、車両50の荷台51には、垂直に起立する左右の側壁(プロテクタ)51Aが設けられており、これらの側壁51Aの間に巻取り部10の左右両端部が取付部20によって着脱可能に取り付けられている。
【0039】
ここで、一方(図2の右側)の取付部20の構成の詳細を図4図6に基づいて以下に説明する。なお、以下においては一方(図2の右側)の取付部20の構成のみについて説明するが、他方(図2の左側)の取付部20の構成も右側の取付部20のそれと同じであるため、これについての説明は省略する。
【0040】
図5に示すように、取付部20は、逆L字状の2つの取付部材21,22の上端水平部21A,22A同士を上下に重ねて逆チャンネル状に構成されている。ここで、一方の取付部材21の高さは、他方の取付部材22の高さよりも高く設定されている。
【0041】
そして、図5に示すように、一方の取付部材21の上端水平部21Aの前後方向(図5の紙面垂直方向)2箇所には、皿状(テーパ状)のネジ孔21aが形成されている。これに対して、他方の取付部材22の上端水平部22Aの前後方向2箇所(前後方向においてネジ孔21aに対応する2箇所)には、図6に示すように、左右方向に長い長孔22aがそれぞれ貫設されている。
【0042】
また、一方の取付部材21の垂直部21Bの下端部には、図5に示すように、前後方向(図5の紙面垂直方向)に2つのボルト挿通孔21b(図4参照)が形成されている。そして、一方の取付部材21の垂直部21Bの各ボルト挿通孔21bの周囲には、ナット23が溶着されており、各ナット23にはボルト24がそれぞれ挿通螺合している。なお、各ボルト24には、ロックナット25がそれぞれ螺合挿通している。
【0043】
以上のように構成された取付部20においては、図5に示すように、2つの取付部材21,22の上端水平部21A,22Aが上下に重ねられ、これらに形成された各2つのネジ孔21aと長孔22aに下方から挿通する皿ネジ26を軸受15(図2図3参照)に締め付けることによって当該取付部20が巻取り部10の左右両端にそれぞれ取り付けられる。この場合、皿ネジ26を緩めれば、2つの取付部材21,22は、一方の取付部材22Bの水平上端部22Aの2箇所に形成された長孔22a内を皿ネジ26が移動し得る範囲で図5に鎖線にて示すように左右方向に相対移動が可能である。すなわち、取付部20には、該取付部20の幅寸法(取付部材21,22の間の距離)を調整可能な調整機構が設けられており、この調整機構によって2つの取付部材21,22の間の距離を荷台51の左右の側壁(プロテクタ)51A(図1参照)の幅寸法に応じて調整することができ、左右の側壁51Aの幅寸法が異なる荷台51に対しても左右の取付部20を左右の側壁51Aに取り付けることができる。
【0044】
具体的には、左右の各取付部20を荷台51の左右の側壁51Aに上方から嵌め込み、該取付部20の一方の取付部材21に螺合する2つのボルト24を締め付け、図5に示すように、該ボルト24の先端を荷台51の側壁51Aに押し付けることによって、各取付部20が荷台51の左右の側壁51Aにそれぞれ取り付けられる。この結果、図2に示すように、巻取り部10の左右両端部が左右の取付部20によって荷台51の左右の側壁51A(図1参照)に取り付けられる。なお、ボルト24によって左右の取付部20を荷台51の左右の側壁51Aに取り付けた後、各ボルト24に螺合挿通するロックナット25を締め付ければ、ボルト24の回転が阻止されて該ボルト24によって左右の取付部20が荷台51の左右の側壁51Aにそれぞれ確実に取り付けられる。
【0045】
以上のように、巻取り部10の左右両端部は、左右の取付部20によって荷台51の左右の側壁51Aに取り付けられるが、車両50の種類によっては荷台51の左右幅寸法に違いがある。このような場合にあっても、本実施の形態に係る巻取り部10は、その左右両端部が左右の取付部20によって荷台51の左右の側壁51Aに安定的に取り付けられる。
【0046】
すなわち、本実施の形態に係る巻取り部10においては、巻取りドラム11を支持する左右の各回転軸14は、図3に詳細に示すように(図3には一方のみ図示)、軸方向に相対移動可能に嵌合する第1軸14Aと第2軸14Bとでそれぞれ構成されている。そして、左右の第1軸14Aは、巻取りドラム11の左右の端板13の中心から外側方へと突出するスリーブ13aに軸方向に摺動可能に挿通嵌合しているため、巻取り部10の左右方向(軸方向)長さ、具体的には、左右の取付部20の間の距離を荷台51の幅寸法の変化に応じて任意に調整することができる。
【0047】
例えば、図2(a)に示す状態では、巻取りドラム11を回転可能に支持する左右の軸受15の間の距離L1は最も小さく、この状態から左右の回転軸14を図2(b)および図2(c)に示すように軸方向に延ばせば、左右の軸受15の間の距離を図示のようにL2,L3と順次延ばすことができ(L1<L2<L3)、荷台51の幅寸法(左右の側壁51A間の距離)の変化に柔軟に対応して巻取り部10の左右両端部を左右の取付部20によって荷台51の左右の側壁51Aに安定して取り付けることができる。なお、この場合、図2に示すように、巻取りドラム11は、常に巻取り部10の幅方向中心部に位置するように左右の回転軸14の長さが調整される。
【0048】
ところで、図1に示す車両50の荷台51に積載された積載物(加熱アスファルト混合物)Sを上方から覆うシート2は、荷台51の幅と略同一幅を有する帯状の柔軟なものであって、例えば保温性の高い不透明なビニールシートなどによって構成されており、積載物Sを覆う前の状態では、図1に示すように、巻取り部10の巻取りドラム11によって巻き取られて収納されている。
【0049】
ところで、巻取り部10と共に手動式シート掛け装置1を構成する引き出し用ロープ30は、後述の図7に示すように、平面視Y字状を成しており、その合流点から二股状に左右に広がる左右部分30aの各先端部がシート2の引き出し端の左右に連結されている。ここで、引き出し用ロープ30が連結されているシート2の引き出し端には、金属パイプ等の棒材によって構成された補強用の芯金3が幅方向に沿って取り付けられている。このように、シート2の引き出し端に芯金3が取り付けられることによって、シート2の引き出し用ロープ30が連結される引き出し端の強度が高められ、該引き出し端の左右に引き出し用ロープ30が確実かつ強固に連結される。
【0050】
[手動式シート掛け装置の作用]
次に、以上のように構成された手動式シート掛け装置1の作用を図7および図8に基づいて以下に説明する。
【0051】
図7は本発明に係る手動式シート掛け装置のシート引き出し中の動作を示す車両の斜視図、図8は同手動式シート掛け装置のシート掛け状態を示す車両の斜視図であり、図1に示すように巻取り部10の巻取りドラム11に巻き込まれて収納されているシート2は、以下のようにして引き出されて荷台51の積載物Sに掛けられる。
【0052】
すなわち、シート2の引き出しに際しては、図7に示すように、引き出し用ロープ30を図示矢印方向に手動で引っ張る。すると、引き出し用ロープ30の二股状に分岐する左右部分30aの先端部が引き出し端の左右に連結されたシート2が巻取りドラム11から引き出される。この場合、引き出し用ロープ30に加えられる引張力がシート2の引き出し端の左右に均等に作用するため、巻取り部10の巻取りドラム11に巻き取られて収納されているシート2を左右に偏ることなく均一な力でスムーズに引き出すことができる。
【0053】
以上の要領でシート2がその全長に亘って巻取りドラム11から引き出されると、図8に示すように、この引き出されたシート2が荷台51の積載物Sに掛けられ、積載物Sがシート2によって上方から覆われる。なお、本実施の形態では、積載物Sが高温の加熱アスファルト混合物であるため、この加熱アスファルト混合物の温度低下がシート2によって防がれる。
【0054】
次に、車両50が目的地に到着したために、その荷台51に積載された積載物Sを荷台51から降ろす場合には、積載物Sに掛けられているシート2が以下の要領で巻取りドラム11に手動で巻き取られる。
【0055】
すなわち、巻取り部10に設けられた手動回転機構12のチェーン17を手でたぐってプーリ16を回転させれば、このプーリ16と共に左右の回転軸14と巻取りドラム11が一体に回転するため、引き出されているシート2が巻取りドラム11に順次巻き取られ、最終的には図1に示すように、シート2がその全長に亘って巻取りドラム11に巻き取られて収納される。
【0056】
以上のように、本発明に係る手動式シート掛け装置1によれば、シート2の引き出しと巻き取りは全て手動で行われるため、これらの作業に熟練を要することがなく、初心者であっても簡単にシート2を引き出し或いは巻き取ることができる。また、シート2の引き出しと巻き取りを手動で行うための構成が単純化するため、手動式シート掛け装置1の構造単純化とコストダウンが図られるという効果が得られる。
【0057】
[本発明の別形態]
次に、本発明の別形態を図9および図10に基づいて以下に説明する。
【0058】
図9は本発明の別形態に係る幅広シートの平面図、図10(a)~(c)は同幅広シートの引き出し課程をその工程順に示す荷台の斜視図であり、本形態では、図9に示すように、シートとして幅広シート2Aを用いている。
【0059】
上記幅広シート2Aは、図10(b)に示すように、その左右両側部を内側に折り畳んだ状態で巻取りドラム11に巻き取られている(図10(a)参照)。そして、図9に示すように、幅広シート2Aの左右両側部と引き出し端には、矩形の透明部2a,2bがそれぞれ設けられている。
【0060】
また、図10(b)に示すように、幅広シート2Aの左右両側部を内側に折り畳んだ状態では、該幅広シート2Aの折り畳まれた左右両側部の互いに付き合わされる各端縁には、複数の止め輪4が長手方向に沿って適当な間隔で取り付けられている。そして、幅広シート2Aの引き出し端(左右両側部を除く)の左右には、平面視Y字状を成す引き出し用ロープ30の二股状に分岐する左右部分30aの先端部が連結されている。
【0061】
図10(a)に示すように、左右両側部が内側に折り畳まれて状態で巻取り部10の巻取りドラム112Aに巻き込まれて収納されている幅広シートは、以下のようにして引き出されて荷台51の積載物Sに掛けられる。
【0062】
すなわち、幅広シート2Aの引き出しに際しては、図10(b)に示すように、引き出し用ロープ30を図示矢印方向に手動で引っ張る。すると、引き出し用ロープ30の二股状に分岐する左右部分30aの先端部が引き出し端の左右に連結された幅広シート2Aが巻取りドラム11から引き出される。この場合、引き出し用ロープ30に加えられる引張力が幅広シート2Aの引き出し端の左右に均等に作用するため、巻取り部10の巻取りドラム11に巻き取られて収納されている幅広シート2Aを左右に偏ることなく均一な力でスムーズに引き出すことができる。
【0063】
以上の要領で幅広シート2Aがその全長に亘って巻取りドラム11から引き出されると、図10(c)に示すように、この引き出された幅広シート2Aの折り畳まれていた左右両側部が開かれ、荷台51の積載物Sに幅広シート2Aが掛けられる。この場合、幅広シート2Aの左右両側部と後端部が荷台51の左右両側部と後端部を覆うため、荷台51に積載された積載物Sが幅広シート2Aによって一層確実に覆われる。なお、幅広シート2Aの開かれた両側部の端縁に長手方向に沿って取り付けられた複数の止め輪4は、図10(c)に示すように、荷台51の左右の下端に長手方向に沿って適当な間隔で取り付けられたフック5(図10(a),(b)参照)に掛けられるため、積載物Sを覆う幅広シート2Aの左右両側部が荷台51に確実に取り付けられる。
【0064】
ところで、図9に示すように、幅広シート2Aの左右両側部と引き出し端には、矩形の透明部2a,2bが設けられているため、この幅広シート2Aが図10(c)に示すように荷台51の全体を覆った状態においても、荷台51の左右両側面と後面に表示されている営業ゼッケンを透明部2a,2bに入れた名札状の営業ゼッケン表示で視認することができる。
【0065】
そして、引き出された幅広シート2Aの巻取りドラム11への巻き取りは、前述と同様に手動で巻取りドラム11を回転させることによってなされる。
【0066】
以上のように、本形態においても幅広シート2Aの引き出しと巻取りドラム11への巻き取りが手動によってなされるため、これらの作業に熟練を要することがなく、初心者であっても簡単に幅広シート2Aを引き出し或いは巻き取ることができる。また、幅広シート2Aの引き出しと巻き取りを手動で行うための構成が単純化するため、手動式シート掛け装置1の構造単純化とコストダウンを図ることができるという効果が得られる。
【0067】
なお、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
1 手動式シート掛け装置
2 シート
2A 幅広シート
2a,2b 幅広シートの透明部
3 芯金
4 止め輪
10 巻取り部
11 巻取りドラム
12 手動式回転機構
13 端板
13a スリーブ
14 回転軸
14A 第1軸
14B 第2軸
14a 第2軸の中空部
15 軸受
16 プーリ
17 チェーン
20 取付部
21,22 取付部材
23 ナット
24 ボルト
25 ロックナット
26 皿ネジ
30 引き出し用ロープ
30a 引き出しようロープの左右部分
50 車両
51 荷台
51A 荷台の側壁
S 積載物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10