(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】給油所システム
(51)【国際特許分類】
B67D 7/32 20100101AFI20220915BHJP
【FI】
B67D7/32 C
(21)【出願番号】P 2019225228
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2020-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】田中 和則
(72)【発明者】
【氏名】瀧 小緒里
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-179103(JP,A)
【文献】特開2009-241962(JP,A)
【文献】特開2018-131250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給油装置と、
該給油装置を利用する車両を撮影するカメラと、
該カメラの撮影画像から前記車両を特定し、該車両と該車両の給油結果を関連付けて記憶し、該車両が連続して同一油種
(レギュラーガソリン、ハイオクガソリン又は軽油)の給油を行った場合には、該油種を該車両の適合油種として該車両と関連付けて記憶するサーバとを備え、
該サーバによって前記車両の適合油種が記憶された後で該車両に給油を行う際に、該車両の前回の給油結果に基づく油種系統
(ガソリン又は軽油)と、今回前記給油装置から給油要求のあった油種系統とが異なる場合には、該給油要求のあった油種の給油を不可能にすることを特徴とする給油所システム。
【請求項2】
前記サーバは、前記特定した車両の適合油種を特定する前に、該車両の前回の給油結果に基づく油種と、今回の給油結果に基づく油種とが異なる場合には、今回の給油結果に基づく油種を該車両と関連付けて記憶し、次回の給油結果に基づく油種と比較することを特徴とする請求項1に記載の給油所システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給油所システムに関し、車両への燃料油の誤給油を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の燃料油にはガソリン(レギュラー、ハイオク)と軽油があり、種類の異なる燃料油を給油して走行すると、走行中にエンジンが止まってしまうこともあるため、重大な事故になりかねない。特に高速道路にて誤給油をしてしまい、高速走行中に車両が動かなくなると周りを巻き込んだ重大な事故に繋がりかねない。また、誤給油をしてしまうと給油所の信頼が失われ、給油所を閉鎖する事態となると地域社会の生活にも影響を与えかねない。
【0003】
一方、最近はどのような油種の車両にも対応できるように、複数の油種に対応可能な給油装置が普及している。そこで、特許文献1には、給油ノズルの先端から車両タンク内に滞留するベーパ濃度に基づいて、その車両の燃料油の種類を判別するようにした給油装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の発明によって油種を判定するには、車両タンク内に滞留するベーパ濃度が所定値以上でなければならない。しかし、長時間停車すると車両タンク内のベーパ濃度が所定値を下回ることがあり、例えば高速道路のサービスエリアで長時間停車した後に給油する場合には油種を判別することができないおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来の技術に鑑みてなされたものであって、車両への燃料油の誤給油を確実に防止することができる給油所システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、給油所システムであって、給油装置と、該給油装置を利用する車両を撮影するカメラと、該カメラの撮影画像から前記車両を特定し、該車両と該車両の給油結果を関連付けて記憶し、該車両が連続して同一油種(レギュラーガソリン、ハイオクガソリン又は軽油)の給油を行った場合には、該油種を該車両の適合油種として該車両と関連付けて記憶するサーバとを備え、該サーバによって前記車両の適合油種が記憶された後で該車両に給油を行う際に、該車両の前回の給油結果に基づく油種系統(ガソリン又は軽油)と、今回前記給油装置から給油要求のあった油種系統とが異なる場合には、該給油要求のあった油種の給油を不可能にすることを特徴とする。本発明によれば、前回の油種系統と異なる油種系統の給油は誤給油である可能性が高く、油種系統の異なる燃料油の混合は危険であるため、そのような給油を防止することができる。
【0010】
上記給油所システムにおいて、前記サーバは、前記特定した車両の適合油種を特定する前に、該車両の前回の給油結果に基づく油種と、今回の給油結果に基づく油種とが異なる場合には、今回の給油結果に基づく油種を該車両と関連付けて記憶し、次回の給油結果に基づく油種と比較することができる。これによって、車両が連続して同一油種の給油を行うことを確認することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、車両への燃料油の誤給油を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る給油所システムの第1の実施形態を示す全体構成図である。
【
図2】
図1に示す給油装置の構成を示す概略図である。
【
図3】
図1に示す給油所システムの動作を示すフローチャートである。
【
図4】本発明に係る給油所システムの第2の実施形態を示す全体構成図である。
【
図5】
図1及び
図4に示す給油所システムの他の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る給油所システムの第1の実施形態を示し、この給油所システム1は、各給油所A~Cに設けられる複数の給油装置2と、給油装置2の上部に設けられ、車両Vを撮影するカメラ2aと、各給油所A~Cのカメラ2aの撮影画像から車両Vの特定等を行うサーバ3とで構成される。尚、各給油所A~Cの構成は同一であるため、給油所B及びCは簡略化して示す。
【0015】
給油装置2は、上記カメラ2a以外に、給油データ等を表示する表示器2bと、給油装置2の近傍に停車する車両Vを検知する車両センサ2cを備え、さらに、
図2に示すように、通常の給油装置に設けられる給油系統としてのノズルSW2d、流量計2e、給油ポンプ2f及び給油モータ2gと、ノズルSWの近傍に設けられるノズルロック機構2hと、サーバ3と通信するための通信装置(例えばWi-Fi(登録商標))2iと、各部を制御する給油制御装置2jとを備える。
【0016】
カメラ2aは、車両センサ2cが給油装置2の近傍に停車する車両Vを検知すると車両Vを撮影し、撮影画像をサーバ3に送信するために設けられる。撮影画像は静止画でもよく、動画でもよい。このカメラ2aは、各給油装置2の近傍の車両Vを撮影することができれば、給油装置2毎に設置せず、給油所に1台設置してもよい。また、既に給油所に存在するものを利用してもよく、新設してもよい。
【0017】
ノズルロック機構2hは、後述するサーバ3からの指示に従い、特定の油種の給油ノズルをノズル掛けから外せないようにするために設けられる。
【0018】
クラウドを構成するサーバ3は、カメラ2aの撮影画像から車両Vを特定し、特定した車両Vの給油結果を車両Vと関連付けて記憶する。そして、車両Vが連続して同一油種の給油を行った際、その油種を車両Vの適合油種として車両Vと関連付けて記憶し、給油装置2の通信装置2i、ノズルロック機構2h及び給油制御装置2jを介し、車両Vに対して適合油種以外の油種の給油を禁止する。これは、連続して同一油種の給油を行った場合には、その油種が適合油種である可能性が高いからである。
【0019】
また、サーバ3は、特定した車両Vに給油を行う際、この車両Vの前回の給油結果の油種系統と、今回給油しようとしている油種系統とが異なる場合には、今回の給油を禁止する。ここで、油種系統としてはガソリン(レギュラー/ハイオク)と軽油があるが、これによれば、前回の油種系統と異なる油種系統の給油は誤給油である可能性が高く、油種系統の異なる燃料油の混合は危険であるため、そのような給油を防止する。
【0020】
次に、上記構成を有する給油所システム1の動作について、
図1~
図3を参照しながら説明する。尚、
図3のルートが分岐するステップにおいては、下方向がYes、横方向がNoに対応する。
【0021】
カメラ2aのステップS1において、給油所に顧客が来店し、車両センサ2cが給油装置2の近傍に停車する車両Vを検知すると(ステップS1;Yes)、車両Vを撮影し、撮影データとしてサーバ3へ出力する(ステップS2)。
【0022】
サーバ3のステップS11において、カメラ2aから撮影データが入力されると(ステップS11;Yes)、サーバ3は、撮影データから車両Vの車両番号を抽出し、データベースと照合する(ステップS12)。このデータベースは、車両番号、車種、過去に給油した油種、平均燃費、前回給油日、給油量、トータル給油量、データ保存回数等を蓄積する。このとき、車両Vの位置も特定し、車両Vが給油しようとしている給油装置2とその給油エリアも特定する。
【0023】
サーバ3は、車両Vの過去に給油した油種(油種情報)と、データ保存回数を給油装置2に出力する(ステップS13)。
【0024】
給油装置2のステップS21において、サーバ3から油種情報等が入力されると(ステップS21;Yes)、データ保存回数が1回であるか否かを判断する(ステップS22)。
【0025】
上記ステップS22において、データ保存回数が1回である場合には(ステップS22;Yes)、ステップS23において、ノズルSW(スイッチ)2dがONであるか否かを判断し、これがONになると(ステップS23;Yes)、ステップS24において、ONになったノズルSW2dに対応する油種系統(ガソリン/軽油)と前回の油種系統が異なるか否かを判断し、これが異なる場合には(ステップS24;Yes)、例えば「注意!!前回給油の油種とお手持ちのノズルの油種が違っています。前回油種:軽油」というエラーを表示器2bに表示し(ステップS25)、ステップS23に戻る。
【0026】
上記ステップS24において、ONになったノズルSW2dに対応する油種系統と前回の油種系統が同一である場合には(ステップS24;No)、油種(レギュラー/ハイオク/軽油)が同一であるか否かを判断し、油種が異なる場合には(ステップS26;Yes)、データ保存回数減のフラグを立てた後(ステップS27)、今回の給油を許可する。これは、油種系統が同一であれば混油による問題は小さいからである。上記ステップS26において、油種が同一である場合には(ステップS26;No)、そのまま今回の給油を許可する。
【0027】
給油動作として、表示器2bにリセット信号を送信することで前回なされた給油に関する情報の帰零(リセット)を行い、給油ポンプ2fを駆動する(ステップS28)。
【0028】
給油ポンプ2fがONになることで給油ノズルより燃料油が吐出され、これにより流量計2eの流量パルス信号が表示器2bに出力され(ステップS29;Yes)、表示器2bにおいて給油量の表示(計数表示)がなされる(ステップS30)。尚、流量パルス信号が出力されない場合には(ステップS29;No)、ノズルSW2dがOFFでない限り(ステップS31;No)、すなわち給油が中止又は終了するまで流量パルス信号の出力を待つ。
【0029】
ステップS31において、顧客が給油ノズルをノズル掛けに戻すことでノズルSW2dがOFFになると(ステップS31;Yes)、給油ポンプ2fを停止し(ステップS32)、サーバ3に給油データを出力し(ステップS33)、給油装置2の動作を終了する。
【0030】
サーバ3のステップS14において、給油装置2から給油データが入力されると(ステップS14;Yes)、入力された給油データを保存し、データ保存回数に「1」を加える(ステップS15)。ステップS16において、データ保存回数減フラグが立っているか否かを判断し、これが立っている場合には(ステップS16;Yes)、データ保存回数から「1」を減算し(ステップS17)、データ保存回数減フラグが立っていない場合には(ステップS16;No)そのまま動作を終了する。これにより、連続して同一油種の給油を行わない限り、その車両の適合油種としてサーバ3に記憶しないようにすることができる。
【0031】
上記給油装置2のステップS22において、データ保存回数が1回でない場合には(ステップS22;No)、ステップS34において、データ保存回数が2回以上であるか否かを判断し、これが2回以上である場合には(ステップS34;Yes)、サーバ3に記憶されている油種が車両Vの適合油種であると判断し、ノズルロック機構2hを介して適合油種以外のノズルSW2dをロックし(ステップS35)、ステップS36において該当油種のノズルSW2dがONになり次第(ステップS36;Yes)、上記給油装置2のステップS28~S33及びサーバ3のステップS14~S16と同様の動作をして通常通り給油を行う。
【0032】
一方、上記給油装置2のステップS22において、データ保存回数が1回でなく(ステップS22;No)、ステップS34において、データ保存回数が2回以上でないと判定された場合には(ステップS34;No)、初回給油時であるため、給油ノズルのロックや、データ保存回数減フラグを立てることもなく、ステップS36においてノズルSW2dがONになり次第(ステップS36;Yes)、上記給油装置2のステップS28~S33及びサーバ3のステップS14~S16と同様の動作をして通常通り給油を行う。本動作でデータ保存回数が1回になるため、次回給油時に給油装置2において誤給油の判断がされることになる。
【0033】
以上のように、本実施の形態によれば、連続して同一油種の給油を行った車両Vに対し、その油種しか給油することができなくするため、車両タンク内に滞留するベーパ濃度に関わらず、車両Vへの誤給油を防止することができる。また、不慣れな給油所作業員や顧客が給油する際でも、適合油種以外の給油は不可能であるため、誤給油を確実に防止することができ、上述のような重大な事故に繋がるおそれもない。さらに、車両Vの運転手や持ち主に関連付けて適合油種を特定するのでなく、車両Vに関連付けて行うため、レンタカーやカーシェアの場合に誤給油をする可能性を低減することができる。
【0034】
また、サーバ3によって特定された車両Vに給油を行う際、この車両Vに前回給油した油種系統と、給油装置2によって給油要求があった油種系統とが異なる場合には、給油要求の油種の給油を不可能にするため、油種系統の異なる燃料油の混合も防止することができる。
【0035】
図4は、本発明に係る給油所システムの第2の実施形態を示し、この給油所システム11は、各給油所A~Cのサーバ3と給油装置2の間に、給油所に複数回来店し、既に適合油種が特定された車両Vのデータを管理するデータ管理部12を設けた点で上記給油所システム1と相違し、その他の構成要素は給油所システム1と同一である。この給油所システム11によれば、既に適合油種が特定された車両Vについてサーバ3にデータを問い合わせずに済むため、通信不良となる可能性が低下し、データ処理速度が向上する。また、サーバ3のデータをバックアップとして利用することができ、万が一給油所内のデータが紛失した際にもサーバ3へアクセスすることでデータの復旧が可能となり、給油所の運営に支障が出ない。
【0036】
次に、上記構成を有する給油所システム1の他の動作について、
図1~
図3に加え、
図5を参照しながら説明する。尚、
図5においても、ルートが分岐するステップにおいては、下方向がYes、横方向がNoに対応する。
【0037】
図5において、
図3のカメラ2aのステップS1、S2及びサーバ3のステップS11、S12と同様に、給油所に来店した顧客の車両Vをカメラ2aによって撮影し、撮影データからサーバ3が車両Vの車両番号をデータベースと照合する。
【0038】
サーバ3のステップS41において、車両Vの車種情報がデータベース上に存在する場合には(ステップS41;Yes)、サーバ3が蓄積するトータル給油量と燃費を乗算してトータル走行距離を算出する(ステップS42)。ステップS41において、車種情報がデータベース上に存在しない場合には(ステップS41;No)、撮影データから特定した車種について自動車会社のデータベース等に問い合わせることで燃費を特定する(ステップS43)。
【0039】
ステップS42及びステップS43のいずれの動作を行った場合でも、ステップS44において、両ステップS42、S43によって算出されたトータル走行距離が一定値以上となったか否かを判定し、これが一定値以上であると判定されると(ステップS44;Yes)、オイル交換を勧める情報を給油装置2に出力してサーバ3の動作を終了する。この動作は、基本的には給油終了後に行うべきであるが、給油前に行ってもよい。
【0040】
給油装置2のステップS51において、サーバ3からお勧め情報が入力されると(ステップS51;Yes)、給油装置2の表示器2b等を介してお勧め情報を顧客に提供し(ステップS52)、動作を終了する。
【0041】
以上のように、顧客にオイル交換時期をお勧め情報として提供し、適当な時期にオイル交換を推奨することができ、車両の性能の悪化を防止し、結果として車両の性能不良による事故を防止することができる。また、例えば、お勧め情報に関するクーポンを発行したり、給油所作業員がその旨を声掛けによって指示することで、顧客の給油所への再来店を促すことができる。
【0042】
さらに、オイル交換時期を知らせる以外にも、カメラ2aの撮影データをサーバ3が画像認識し、車両に貼付された車検シールから車検の近い車両に車検見積もり情報を提供したり、車両の汚れ状態から洗車を促したり、冬季以外に車両がスタッドレスタイヤを装着している際に、タイヤの交換を促すことなどができる。これらにより、車両の実情に合わせた情報を顧客へ提供することができるため、給油所作業員は給油以外のサービスを効率よく行うことができ、収益の増加に繋げることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 給油所システム
2 給油装置
2a カメラ
2b 表示器
2c 車両センサ
2d ノズルSW
2e 流量計
2f 給油ポンプ
2g 給油モータ
2h ノズルロック機構
2i 通信装置
2j 給油制御装置
3 サーバ
11 給油所システム
12 データ管理部
V 車両