(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】射出成形用金型
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20220915BHJP
B29C 45/27 20060101ALI20220915BHJP
B29C 45/28 20060101ALI20220915BHJP
B29C 45/56 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/27
B29C45/28
B29C45/56
(21)【出願番号】P 2020034046
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2021-07-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】下楠薗 渉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 貴之
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-025527(JP,A)
【文献】特開平10-024455(JP,A)
【文献】特開2010-058461(JP,A)
【文献】特開2020-104438(JP,A)
【文献】特開2003-245951(JP,A)
【文献】特開2000-202865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
突き合わされることにより溶融樹脂が充填されるキャビティを形成する固定型と可動型を有する射出成形用金型であって、
前記キャビティの内外において軸方向へ移動可能な可動ピンを備え、
前記可動ピンの先端部は前記溶融樹脂が充填された前記キャビティに位置され成形品に成形穴を形成する穴形成部として設けられ、
前記溶融樹脂を前記キャビティへ向けて吐出する吐出口を有するノズルと、
前記吐出口を開閉するバルブピンとが設けられ、
前記可動ピンとして前記バルブピンが用いら
れ、
ゲートが前記キャビティの中央部に対応する位置に一つ形成された
射出成形用金型。
【請求項2】
前記穴形成部が前記キャビティに位置された状態において、前記可動ピンの先端面が前記キャビティを形成する前記可動型の壁面又は前記固定型の壁面から離隔して位置される
請求項1に
記載の射出成形用金型。
【請求項3】
前記穴形成部が前記キャビティに位置された状態において、前記可動ピンの先端面が前記キャビティを形成する前記可動型の壁面又は前記固定型の壁面に接した状態にされる
請求項1に
記載の射出成形用金型。
【請求項4】
前記穴形成部が先端に近付くに従って径が小さくなる形状に形成された
請求項1から
請求項3の何れかに記載の射出成形用金型。
【請求項5】
前記可動ピンが軸回り方向へ回転可能にされ、
前記穴形成部の外周面に螺溝が形成された
請求項1から
請求項4の何れかに記載の射出成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定型と可動型と可動ピンを有する構成において成形品を成形する射出成形用金型についての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
固定型と可動型を有し両者が突き合わされることにより形成される空間であるキャビティに溶融樹脂が充填されて成形品を成形する射出成形用金型がある。このような射出成形用金型は射出成型機に、その一部の構造として組み付けられている。
【0003】
このような射出成形用金型においては、キャビティに溶融樹脂が充填され、固化された溶融樹脂がエジェクタピンによってキャビティから取り出されることにより成形品が形成される。射出成形用金型によって形成される成形品には様々な種類や形状が存在し、例えば、射出成形用金型によって成形穴を有する成形品が形成される場合がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、成形品として中心部に貫通孔を有する歯車が形成され、歯車の形成が貫通孔の周囲において等間隔に存在する複数のゲートを用いて行われることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された射出成形用金型にあっては、溶融樹脂の充填時にキャビティにコアピンと称される成形用のピンが位置され、コアピンが存在した部分が成形品に貫通孔として形成される。
【0006】
ところが、このような射出成形においては、キャビティにコアピンが位置されているため、キャビティへの溶融樹脂の充填時にコアピンに溶融樹脂から圧力が付与され、付与される圧力の大きさやコアピンに対して付与される圧力の方向によってはコアピンに倒れが生じ、成形品の成形精度が低下するおそれがある。
【0007】
特に、特許文献1に記載されたように、複数のゲートが周囲に存在する場合には、コアピンに外周側の複数の方向から圧力が付与され、コアピンに倒れが生じ易い状態にされている。
【0008】
このようなコアピンの倒れを抑制するために、キャビティに対しての溶融樹脂の射出速度を低く設定したり射出圧力を小さく設定した射出成形用金型も存在するが、この場合には溶融樹脂の内部にボイドが生じ易くなり、やはり成形品の成形精度の低下を来すおそれがある。
【0009】
そこで、本発明の射出成形用金型は、成形品の成形精度の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1に、本発明に係る射出成形用金型は、突き合わされることにより溶融樹脂が充填されるキャビティを形成する固定型と可動型を有する射出成形用金型であって、前記キャビティの内外において軸方向へ移動可能な可動ピンを備え、前記可動ピンの先端部は前記溶融樹脂が充填された前記キャビティに位置され成形品に成形穴を形成する穴形成部として設けられたものである。
【0011】
これにより、キャビティに溶融樹脂が充填された状態において可動ピンの穴形成部がキャビティに位置され、穴形成部が固化された溶融樹脂から引き抜かれることにより成形品に成形穴が形成される。
【0012】
第2に、上記した本発明に係る射出成形用金型においては、ゲートが前記キャビティの中央部に対応する位置に一つ形成されることが望ましい。
【0013】
これにより、キャビティの中央部に対応した位置に形成された一つのゲートから溶融樹脂がキャビティに充填されるため、成形品にウエルドラインが形成され難いと共にキャビティの各部に均一に溶融樹脂が流動され易くなる。
【0014】
第3に、上記した本発明に係る射出成形用金型においては、前記溶融樹脂を前記キャビティへ向けて吐出する吐出口を有するノズルと、前記吐出口を開閉するバルブピンとが設けられ、前記可動ピンとして前記バルブピンが用いられることが望ましい。
【0015】
これにより、バルブピンが吐出口及びゲートを開閉する機能と成形穴を形成する機能との双方の機能を有する。
【0016】
第4に、上記した本発明に係る射出成形用金型においては、前記可動ピンとして前記成形品を前記キャビティから取り出すエジェクタピンが用いられることが望ましい。
【0017】
これにより、エジェクタピンが成形品をキャビティから取り出す機能と成形穴を形成する機能の双方の機能を有する。
【0018】
第5に、上記した本発明に係る射出成形用金型においては、前記穴形成部が前記キャビティに位置された状態において、前記可動ピンの先端面が前記キャビティを形成する前記可動型の壁面又は前記固定型の壁面から離隔して位置されることが望ましい。
【0019】
これにより、キャビティにおける穴形成部の先端面の位置を調整することにより成形穴の深さを自由に設定することが可能になる。
【0020】
第6に、上記した本発明に係る射出成形用金型においては、前記穴形成部が前記キャビティに位置された状態において、前記可動ピンの先端面が前記キャビティを形成する前記可動型の壁面又は前記固定型の壁面に接した状態にされることが望ましい。
【0021】
これにより、穴形成部によって成形品に貫通された形状の成形穴が形成される。
【0022】
第7に、上記した本発明に係る射出成形用金型においては、前記穴形成部が先端に近付くに従って径が小さくなる形状に形成されることが望ましい。
【0023】
これにより、穴形成部をキャビティに充填された溶融樹脂に押し込み易いと共にキャビティに充填されて固化された溶融樹脂から引き抜き易くなる。
【0024】
第8に、上記した本発明に係る射出成形用金型においては、前記可動ピンが軸回り方向へ回転可能にされ、前記穴形成部の外周面に螺溝が形成されることが望ましい。
【0025】
これにより、成形穴の形成とネジ溝の形成とを各別に行う必要がない。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、キャビティに溶融樹脂が充填された状態において可動ピンの穴形成部がキャビティに位置され、穴形成部が固化された溶融樹脂から引き抜かれることにより成形品に成形穴が形成されるため、可動ピンに対して溶融樹脂から可動ピンに倒れが生じる方向への圧力が付与され難く、成形品の成形精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図2乃至
図9と共に本発明の第1の実施の形態を示すものであり、本図は、可動型と固定型が突き合わされキャビティに溶融樹脂が充填される前の状態を示す射出成形用金型の断面図である。
【
図2】
図1に引き続き、キャビティに溶融樹脂が充填された状態を示す射出成形用金型の断面図である。
【
図3】
図2に引き続き、バルブピンの穴成形部が溶融樹脂に押し込まれた状態を示す射出成形用金型の断面図である。
【
図4】
図3に引き続き、可動型と固定型が離型された状態を示す射出成形用金型の断面図である。
【
図5】
図4に引き続き、エジェクタピンによって成形品が突き出された状態を示す射出成形用金型の断面図である。
【
図6】成形穴がネジ穴として形成される例を示す拡大断面図である。
【
図7】溶融樹脂がバルブピンの側方に形成された流路を流動されてキャビティへ向けて吐出される構成の例を示す断面図である。
【
図8】
図9と共に成形穴が貫通孔として形成される例を示すものであり、本図は、バルブピンが溶融樹脂に押し込まれる前の状態を示す拡大断面図である。
【
図9】バルブピンが溶融樹脂に押し込まれて成形穴が貫通孔として形成された状態を示す拡大断面図である。
【
図10】
図11及び
図12と共に本発明の第2の実施の形態を示すものであり、本図は、可動型と固定型が突き合わされキャビティに溶融樹脂が充填された状態を示す射出成形用金型の断面図である。
【
図11】
図10に引き続き、バルブピンの穴成形部が溶融樹脂に押し込まれた状態を示す射出成形用金型の断面図である。
【
図12】
図11に引き続き、可動型と固定型が離型されエジェクタピンによって成形品が突き出された状態を示す射出成形用金型の断面図である。
【
図13】
図14及び
図15と共に本発明の第3の実施の形態を示すものであり、本図は、可動型と固定型が突き合わされキャビティに溶融樹脂が充填された状態を示す射出成形用金型の断面図である。
【
図14】
図13に引き続き、バルブピンの穴成形部が溶融樹脂に押し込まれた状態を示す射出成形用金型の断面図である。
【
図15】
図14に引き続き、可動型と固定型が離型されエジェクタピンによって成形品が突き出された状態を示す射出成形用金型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の射出成形用金型を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0029】
以下の説明においては、射出成形用金型の固定型と可動型が離接される方向を上下方向として上下前後左右の方向を示す。尚、以下に示す上下前後左右の方向は、説明の便宜上示すものであり、本発明はこれらの方向に限定して適用されることはない。また、各部品の数量、形状、配置等は、本発明の意図を逸脱しない範囲において図示された内容に限定されて適用されることはない。
【0030】
<第1の実施の形態に係る射出成形用金型の構造>
先ず、第1の実施の形態に係る射出成形用金型1の構造について説明する(
図1参照)。射出成形用金型1はホットランナとしての機能を有している。
【0031】
射出成形用金型1は射出成型機に、その一部の構造として組み付けられ、上下方向において離接される可動型2と固定型3を有している。固定型3には内部空間が形成され、この内部空間が配置空間4とされている。固定型3の下端部には下方に開口された凹部3a、3a、・・・が形成されている。凹部3a、3a、・・・は水平方向において離隔して形成されている。
【0032】
可動型2は固定型3に対して上下方向へ移動されて離接される。可動型2は厚み方向が上下方向にされた略平板状に形成され、上面側に固定型3と突き合わされたときに固定型3に形成された凹部3a、3a、・・・と組み合わされて、それぞれキャビティ5、5、・・・として形成される複数の凹部2a、2a、・・・を有している。凹部2a、2a、・・・は上方に開口され水平方向において離隔して形成されている。
【0033】
可動型2にはエジェクタピン6、6、・・・が上下方向へ移動自在に支持されている。エジェクタピン6、6、・・・は、少なくとも二つずつがそれぞれ凹部2a、2a、・・・に対応して位置されている。従って、複数のエジェクタピン6、6、・・・の上端部が一つの凹部2aに挿入可能にされている。キャビティ5、5、・・・に後述する溶融樹脂が充填される前の状態においては、エジェクタピン6の上面が凹部2aを形成する底面の外周部に一致されている。
【0034】
固定型3は、上下方向を向く平板状の取付板7と、取付板7の下方に位置されたキャビティプレート8と、取付板7の外周部とキャビティプレート8の外周部とを連結する連結板9とを有している。取付板7と連結板9とキャビティプレート8によって固定型3の内部に配置空間4が形成される。
【0035】
取付板7の中央部における上面には環状のロケートリング10が取り付けられ、ロケートリング10は射出成型機に組み付けられるときの射出成形機に対する位置決めを行う機能を有している。
【0036】
取付板7の中央部には溶融樹脂を供給する樹脂供給部として機能する供給ノズル100が挿入されて取り付けられる。供給ノズル100はロケートリング10に挿通された状態で一部が取付板7に挿入される。
【0037】
取付板7にはローケートリング10の外周側に駆動ロッド11、11が上下方向に移動自在に支持されている。駆動ロッド11、11は駆動源200、200によって駆動され、取付板7に対して上下方向へ移動される。
【0038】
駆動源200としては、例えば、シリンダ及びピストンや電気的なモータ等が用いられる。
【0039】
キャビティプレート8には上下に貫通された配置孔8a、8a、・・・が形成されている。配置孔8aは下側の開口が上側の開口より小さくされている。キャビティプレート8における配置孔8aの下端部はゲート8bとして形成されている。ゲート8bは一つのキャビティ5の中央部(中心部)に対応する位置に一つが形成されている。
【0040】
固定型3の配置空間4にはガイド軸12、12が配置されている。ガイド軸12、12は上下両端部がそれぞれ取付板7とキャビティプレート8に結合されている。
【0041】
ガイド軸12、12には駆動プレート13が上下方向へ移動自在に支持されている。駆動プレート13は外周部にそれぞれガイド軸12、12が挿通されることにより、ガイド軸12、12の上端側において支持されている。ガイド軸12、12には駆動プレート13の下側にそれぞれ圧縮コイルバネ14、14が支持されている。従って、駆動プレート13は圧縮コイルバネ14、14によって上方に付勢され、下方への力が付与されていない状態において圧縮コイルバネ14、14の付勢力によって取付板7に下方から押し付けられている。駆動プレート13には駆動ロッド11、11の駆動力が伝達される。
【0042】
駆動プレート13には上下方向へ移動可能な可動ピンとして機能するバルブピン15、15、・・・が水平方向において離隔した状態で結合されている。バルブピン15は上端部が駆動プレート13に結合され、下端部(先端部)が穴形成部16として設けられている。バルブピン15は下端寄りの部分がゲート開閉部17として設けられ、ゲート開閉部17と穴形成部16が上下で連続されている。
【0043】
穴形成部16は下端側の部分が上端側の部分より径が小さくされた先細りの形状に形成されている。穴形成部16は、先端面16aに近付くに従って径が漸次小さくなる形状に形成されていてもよく、先端面16aに近付くに従って径が段階的に小さくなる形状に形成されていてもよい。ゲート開閉部17は径が穴形成部16の径より大きくされゲート開閉部17より上側の部分の径より小さくされている。
【0044】
固定型3の配置空間4にはマニホールド18とスプル19とノズル20、20、・・・が配置されている。
【0045】
マニホールド18は上下方向の厚みが薄くされた扁平な形状に形成され、ガイド軸12、12間に位置されている。マニホールド18の内部には溶融樹脂が流動される流動路21が形成され、流動路21は上下方向における中央部に位置する中間部21aと中間部21aの上側に位置された流入部21bと中間部21aの下側に位置された分岐部21c、21c、・・・とから成る。
【0046】
中間部21aは上下方向における幅に対して水平方向における幅が大きくされた空間として形成されている。
【0047】
流入部21bはマニホールド18の中央部に形成され、上側開口がマニホールド18の上面に開口され下側開口が中間部21aの中央部に連通されている。
【0048】
分岐部21c、21c、・・・は水平方向において離隔して形成され、バルブピン15、15、・・・と同数が形成されている。分岐部21c、21c、・・・の径はバルブピン15、15、・・・の径より稍大きくされている。分岐部21cは上側開口が中間部21aに連通され下側開口がマニホールド18の下面に開口されている。
【0049】
マニホールド18は、例えば、環状のスペーサ22を介してキャビティプレート8の上面に取り付けられている。
【0050】
スプル19は上下に延びる円筒状に形成され、下面がマニホールド18の中央部における上面に結合され、内部の空間がマニホールド18の流入部21bに連通されている。スプル19は駆動プレート13に挿通された状態で上端部が取付板7に挿入され、上面が供給ノズル100に結合される。
【0051】
ノズル20、20、・・・は水平方向において離隔して配置され、バルブピン15、15、・・・と同数が設けられている。ノズル20は筒状に形成され、上端部を除く部分がキャビティプレート8の配置孔8aに挿入されている。
【0052】
ノズル20には上下に貫通された流路23が形成されている。流路23は下端部が他の部分より径が小さくされ、下側の開口が吐出口23aとして形成されている。吐出口23aはキャビティプレート8のゲート8bに連通されている。流路23の径は下端部を除きバルブピン15の径より稍大きくされている。
【0053】
ノズル20は上面がマニホールド18の下面に結合され、流路23がマニホールド18の分岐部21cに連通されている。
【0054】
ノズル20の周囲にはヒータ24が配置され、ヒータ24はキャビティプレート8の配置孔8に配置されている。ヒータ24によってノズル20が加熱され、流路23を流動される溶融樹脂の冷却による固化が防止される。
【0055】
尚、マニホールド18とスプル19に対しても図示しないヒータによって加熱が行われ、マニホールド18とスプル19を流動される溶融樹脂の冷却による固化が防止される。
【0056】
バルブピン15、15、・・・はそれぞれマニホールド18を挿通されマニホールド18に上下方向へ移動自在に支持されている。バルブピン15はマニホールド18とノズル20の流路23とに挿通される。バルブピン15の径は流路23の径より小さくされているため、流路23にはバルブピン15の外周側に溶融樹脂が流動される空間が形成される。
【0057】
<第1の実施の形態に係る射出成形用金型における動作>
次に、射出成形用金型1において成形品、例えば、ギヤが形成されるときの動作について説明する(
図1乃至
図5参照)。
【0058】
射出成形用金型1において、可動型2が固定型3に対して上方へ移動されて可動型2と固定型3が突き合わされると、可動型2に形成された凹部2a、2a、・・・と固定型3に形成された凹部3a、3a、・・・とによってそれぞれキャビティ5、5、・・・が形成される(
図1参照)。このとき駆動プレート13は圧縮コイルバネ14、14によって取付板7に下方から押し付けられ、バルブピン15が上方の移動端に位置され、ゲート開閉部17が吐出口23a及びゲート8bの上側に位置されている。従って、ゲート8bが開放されている。
【0059】
可動型2と固定型3が突き合わされてキャビティ5、5、・・・が形成されると、供給ノズル100から溶融樹脂300がスプル19に供給され、溶融樹脂300がマニホールド18の流動路21を流動されて分岐部21c、21c、・・・によって分岐され、ノズル20、20、・・・の流路23、23、・・・を流動される(
図2参照)。このときヒータ24によってスプル19、マニホールド18及びノズル20が加熱され、溶融樹脂300の冷却による固化が防止される。
【0060】
溶融樹脂300はゲート8bからキャビティ5に流動され、キャビティ5に充填される。このときキャビティ5への溶融樹脂300への充填状態は満充填状態ではなく、満充填状態より僅かに少ない充填状態にされていてもよい。
【0061】
キャビティ5に溶融樹脂300が充填されると、駆動源200、200によってそれぞれ駆動ロッド11、11が下方へ移動され、駆動プレート13が駆動ロッド11、11に押圧されて圧縮コイルバネ14、14の付勢力に反して下方へ移動される(
図3参照)。駆動プレート13が下方へ移動されるタイミングは、キャビティ5に充填された溶融樹脂300が固化される前の未硬化状態でのタイミングにされている。
【0062】
駆動プレート13が下方へ移動されると、バルブピン15が駆動プレート13の移動に伴って下方へ移動されてゲート開閉部17によってゲート8bが閉塞される。従って、ノズル20からの溶融樹脂300のキャビティ5への吐出が停止される。
【0063】
このとき同時に溶融樹脂300にバルブピン15の穴形成部16が押し込まれ、穴形成部16が溶融樹脂300の内部においてキャビティ5に位置される。穴形成部16がキャビティ300に位置された状態においては、穴形成部16の先端面16aがキャビティ5を形成する可動型2の壁面(底面)2bから離隔して位置され、先端面16aが壁面2bより上方に位置される。
【0064】
上記のように、溶融樹脂300のキャビティ5への吐出が停止されると、一定時間経過後に、キャビティ5に充填された溶融樹脂300が冷却されて固化され成形品400が形成される。
【0065】
キャビティ5に充填された溶融樹脂300が冷却されて固化されると、可動型2が下方へ移動されて成形品400とともに固定型3から離隔される(
図4参照)。従って、成形品400がバルブピン15に対して下方へ移動され、バルブピン15の穴形成部16が成形品400から引き出され、成形品400に成形穴401が形成される。成形穴401は、例えば、底を有する形状の穴である。
【0066】
上記のように、射出成形用金型1においては、穴形成部16がキャビティ5に位置された状態において、穴形成部16の先端面16aがキャビティ5を形成する可動型2の壁面2bから離隔して位置されるため、穴形成部16によって成形品400に底面を有する成形穴401が形成される。
【0067】
従って、キャビティ5における穴形成部16の先端面16aの位置を調整することにより成形穴401の深さを自由に設定することが可能になり、成形品400の形状に関する設計の自由度の向上を図ることができる。
【0068】
可動型2が成形品400とともに下方へ移動されると、エジェクタピン6、6、・・・が可動型2に対して上方へ移動され、成形品400がエジェクタピン6、6、・・・によって突き出されてキャビティ5から取り出される(
図5参照)。
【0069】
上記のように、射出成形用金型1にあっては、ゲート8bが一つのキャビティ5の中央部(中心部)に対応した位置に一つ形成されている。
【0070】
従って、キャビティ5の中央部に対応した位置に形成された一つのゲート8bから溶融樹脂300がキャビティ5に充填されるため、成形品400にウエルドラインが形成され難いと共にキャビティ5の各部に均一に溶融樹脂300が流動され易くなり、成形品400の成形精度の向上を図ることができる。
【0071】
特に、周方向に離隔した複数のゲートからそれぞれ溶融樹脂がキャビティに充填される構成においては、例えば、ギヤのような点対称の成形品が形成される場合には真円度が低下する可能性があるが、点対称の形状の中心部にゲート8bが形成されるため、高い真円度を有する成形品を形成することができる。
【0072】
また、ゲートが複数存在する場合には、成形品に複数のゲート痕が形成されたり、ゲートの部分に残存する固化された溶融樹脂の量が多くなり易く無駄な材料により製造コストが高くなる可能性があるが、一つのゲート8bから溶融樹脂300が充填される構成にすることにより、ゲート痕の数の低減及び製造コストの低減を図ることができる。
【0073】
さらに、成形品400に成形穴401を形成するための可動ピンとしてバルブピン15が用いられている。
【0074】
従って、ノズル20の吐出口23a及びゲート8bを開閉するバルブピン15によって成形品400に成形穴401が形成されるため、バルブピン15が吐出口23a及びゲート8bを開閉する機能と成形穴401を形成する機能との双方の機能を有し、既存の構造を用いることにより部品点数の削減を図った上で射出成形用金型1の高機能化を図ることができる。
【0075】
さらにまた、穴形成部16が先端に近付くに従って径が小さくなる形状に形成されている。
【0076】
従って、穴形成部16をキャビティ5に充填された溶融樹脂300に押し込み易いと共にキャビティ5に充填されて固化された溶融樹脂300から引き抜き易くなり、成形品400の成形精度の向上を図ることができる。
【0077】
尚、上記には、複数のノズル20、20、・・・を有する射出成形用金型1を例として示したが、射出成形用金型1には少なくとも一つのノズル20が設けられていればよい。
【0078】
また、上記には、バルブピン15が上下方向へ移動されることにより成形品400に成形穴401が形成される例を示したが、バルブピン15は上下方向へ移動されるときに軸回り方向へ回転されてもよい。この場合に、穴形成部16の外周面に螺溝16bが形成されることにより、成形品400の成形穴401をネジ溝を有するネジ穴として形成することが可能である(
図6参照)。
【0079】
このように穴形成部16の螺溝16bによって成形品400に成形穴401としてネジ穴を形成することにより、成形穴401の形成とネジ溝の形成とを各別に行う必要がなく、成形品400の成形時間の短縮化を図った上で成形品400の設計の自由度の向上を図ることができる。
【0080】
さらに、上記には、溶融樹脂300がバルブピン15の周囲を流動されて吐出口23aからキャビティ5へ向けて吐出されるノズル20が用いられた例を示したが、ノズル20に代え、溶融樹脂300がバルブピン15の側方に形成された流路23Xを流動されて吐出口23aからキャビティ5へ向けて吐出されるノズル20Xが用いられてもよい(
図7参照)。
【0081】
さらにまた、上記には、溶融樹脂300にバルブピン15の穴形成部16が押し込まれたときに、穴形成部16の先端面16aが可動型2の壁面2bから離隔して位置される例を示したが、溶融樹脂300にバルブピン15の穴形成部16が押し込まれたときに、先端面16aが壁面2bに接する状態にされてもよい(
図8及び
図9参照)。
【0082】
この場合には、溶融樹脂300が固化される前の未硬化状態でのタイミングにおいて、溶融樹脂300にバルブピン15の穴形成部16が押し込まれ、先端面16aが壁面2bに接した状態にされる。
【0083】
従って、成形品400がバルブピン15に対して下方へ移動され穴形成部16が成形品400から引き出されると、成形品400に貫通された形状の成形穴401が形成される。
【0084】
このように、穴形成部16がキャビティ5に位置された状態において、穴形成部16の先端面16aが壁面2bに接した状態にされることにより、穴形成部16によって成形品400に貫通された形状の成形穴401が形成されるため、成形穴401を貫通孔として容易に形成することができる。
【0085】
<第2の実施の形態に係る射出成形用金型>
次に、第2の実施の形態に係る射出成形用金型1Aについて説明する(
図10乃至
図12参照)。射出成形用金型1Aはホットランナとしての機能を有している。
【0086】
尚、以下に示す射出成形用金型1Aは、上記した射出成形用金型1と比較して、バルブピンの形状が異なること及びエジェクタピンによって成形穴が形成されることのみが相違する。従って、射出成形用金型1Aについては射出成形用金型1と比較して異なる部分についてのみ詳細に説明をし、その他の部分については射出成形用金型1における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明を省略する。
【0087】
射出成形用金型1Aにおいては、例えば、可動型2に形成された凹部2a、2a、・・・と固定型3に形成された凸部2c、2c、・・・とによってそれぞれキャビティ5、5、・・・が形成される(
図10参照)。但し、射出成形用金型1Aにおいても、射出成形用金型1と同様に、可動型2に形成された凹部と固定型3に形成された凹部によってキャビティ5が形成されてもよい。
【0088】
射出成形用金型1Aは可動型2にエジェクタピン6、6、・・・が上下方向へ移動自在に支持されている。エジェクタピン6、6、・・・は、一つずつがそれぞれキャビティ5、5、・・・に対応して位置されている。エジェクタピン6はキャビティ5の中央部に対応して位置され、エジェクタピン6の上端部は穴形成部6aとして設けられている。
【0089】
駆動プレート13には上下方向へ移動可能な可動ピンとして機能するバルブピン15A、15A、・・・が水平方向において離隔した状態で結合されている。バルブピン15Aは上端部が駆動プレート13に結合され、下端部(先端部)がゲート開閉部17として設けられており、バルブピン15Aには穴形成部16が設けられていない。
【0090】
上記のように構成された射出成形用金型1Aにおいて、可動型2と固定型3が突き合わされるとキャビティ5、5、・・・が形成される(
図10参照)。キャビティ5が形成されると、溶融樹脂300がゲート8bからキャビティ5に流動され、キャビティ5に溶融樹脂300が充填される。このときキャビティ5への溶融樹脂300への充填状態は満充填状態ではなく、満充填状態より僅かに少ない充填状態にされていてもよい。
【0091】
キャビティ5に溶融樹脂300が充填されると、駆動プレート13が下方へ移動され、バルブピン15Aが駆動プレート13の移動に伴って下方へ移動されてゲート開閉部17Aによってゲート8bが閉塞される(
図11参照)。従って、ノズル20からの溶融樹脂300のキャビティ5への吐出が停止される。駆動プレート13が下方へ移動されるタイミングは、溶融樹脂300が固化される前の未硬化状態でのタイミングにされている。
【0092】
このとき同時に又は溶融樹脂300のキャビティ5への吐出が停止された直後に、エジェクタピン6が一定量上方へ移動され、溶融樹脂300にエジェクタピン6の穴形成部6aが押し込まれ、穴形成部6aが溶融樹脂300の内部においてキャビティ5に位置される。穴形成部6aがキャビティ300に位置された状態においては、穴形成部6aの先端面(上端面)6bがバルブピン15Aの下端面から離隔して位置される。
【0093】
上記のように、溶融樹脂300のキャビティ5への吐出が停止されると、一定時間経過後に、キャビティ5に充填された溶融樹脂300が冷却されて固化され成形品400が形成される。
【0094】
キャビティ5に充填された溶融樹脂300が冷却されて固化されると、可動型2が下方へ移動されて成形品400とともに固定型3から離隔される(
図12参照)。可動型2が成形品400とともに下方へ移動されると、エジェクタピン6が可動型2に対して上方へ移動され、成形品400がエジェクタピン6によって突き出されてキャビティ5から取り出される。
【0095】
成形品400にはエジェクタピン6の穴形成部6aが成形品400に押し込まれることにより成形穴401が形成される。成形穴401は底を有する形状の穴である。
【0096】
上記のように、射出成形用金型1Aにあっては、ゲート8bが一つのキャビティ5に対して中央部(中心部)に一つ形成されている。
【0097】
従って、キャビティ5の中央部に形成された一つのゲート8bから溶融樹脂300がキャビティ5に充填されるため、成形品400にウエルドラインが形成され難いと共にキャビティ5の各部に均一に溶融樹脂300が流動され、成形品400の成形精度の向上を図ることができる。
【0098】
また、射出成形用金型1と同様に、点対称の形状の成形品400が形成される場合に高い真円度を有する成形品400を形成することができ、ゲート痕の数の低減及び製造コストの低減を図ることもできる。
【0099】
さらに、成形品400に成形穴401を形成するための可動ピンとして成形品400をキャビティ5から取り出すエジェクタピン6が用いられている。
【0100】
従って、成形品400をキャビティ5から取り出すエジェクタピン6によって成形品400に成形穴401が形成されるため、エジェクタピン6が成形品400をキャビティ5から取り出す機能と成形穴401を形成する機能の双方の機能を有し、既存の構造を用いることにより部品点数の削減を図った上で射出成形用金型1Aの高機能化を図ることができる。
【0101】
尚、射出成形用金型1Aにおいても射出成形用金型1と同様に、一つのノズル20が設けられていてもよく、エジェクタピン6を軸回り方向へ回転させて成形品400の成形穴401がネジ穴として形成されてもよく、ノズル20に代えて溶融樹脂300がバルブピン15Aの側方に形成された流路23Xを流動されるノズル20Xが用いられてもよい。
【0102】
<第3の実施の形態に係る射出成形用金型>
次いで、第3の実施の形態に係る射出成形用金型1Bについて説明する(
図13乃至
図15参照)。射出成形用金型1Bはコールドランナとしての機能を有している。
【0103】
射出成形用金型1Bは射出成型機に、その一部の構造として組み付けられ、上下方向において離接される可動型52と固定型53を有している。可動型52には内部空間が形成され、この内部空間が配置空間54とされている。固定型53の下端部には下方に開口された凹部53aとランナ用凹部53bが左右に連続して形成されている。
【0104】
可動型52は固定型53に対して上下方向へ移動されて離接される。可動型52は上面側に固定型53と突き合わされたときに固定型53に形成された凹部53aと組み合わされてキャビティ55として形成される凸部52aを有している。可動型52には凸部52aの側方に連続して上方に開口されたランナ用凹部52bが形成されている。
【0105】
可動型52は、上下方向を向く平板状の取付板57と、取付板57の上方に位置されたキャビティプレート58と、取付板57の外周部とキャビティプレート58の外周部とを連結する連結板59とを有している。取付板57と連結板59とキャビティプレート58によって可動型52の内部に配置空間54が形成される。
【0106】
固定型53の中央部における上面には環状のロケートリング60が取り付けられ、ロケートリング60は射出成型機に組み付けられるときの射出成形機に対する位置決めを行う機能を有している。
【0107】
固定型53には溶融樹脂を供給する樹脂供給部として機能する供給ノズル100が挿入される。供給ノズル100はロケートリング60に挿通された状態で一部が固定型53に挿入される。
【0108】
取付板57には駆動ロッド61、61が上下方向に移動自在に支持されている。駆動ロッド61、61は駆動源200、200によって駆動され、取付板57に対して上下方向へ移動される。
【0109】
可動型52の配置空間54にはガイド軸62、62が配置されている。ガイド軸62、62は上下両端部がそれぞれキャビティプレート58と取付板57に結合されている。
【0110】
ガイド軸62、62には駆動プレート63が上下方向へ移動自在に支持されている。駆動プレート63は外周部にそれぞれガイド軸62、62が挿通されることにより、ガイド軸62、62に支持されている。ガイド軸62、62には駆動プレート63の上側にそれぞれ圧縮コイルバネ64、64が支持されている。従って、駆動プレート63は圧縮コイルバネ64、64によって下方に付勢され、上方への力が付与されていない状態において圧縮コイルバネ64、64の付勢力によって取付板57に上方から押し付けられている。駆動プレート63には駆動ロッド61、61の駆動力が伝達される。
【0111】
駆動プレート63には上下方向へ移動可能な可動ピンとして機能するエジェクタピン56、56、・・・の下端部が結合されている。キャビティ55に後述する溶融樹脂が充填される前の状態においては、エジェクタピン56の上面が凸部52aの上面に一致されている。駆動プレート63には上下方向へ移動可能なランナ用エジェクタピン65がエジェクタピン56、56、・・・の側方において結合されている。エジェクタピン56、56、・・・とランナ用エジェクタピン65は駆動プレート63の上下方向への移動に伴って同時に上下方向へ移動される。エジェクタピン56の上端部は穴形成部56aとして設けられている。
【0112】
固定型53の中央部にはスプル66が設けられている。スプル66は固定型53の中央部において挿入された状態で配置され、上下に延びる略円筒状に形成されている。スプル66は上端部がロケートリング60に嵌合された状態で挿入され、内部の空間がランナ用凹部53bに連通されている。スプル66は上面が供給ノズル100に結合される。
【0113】
スプル66の周囲には図示しないヒータが配置され、ヒータによってスプル66に対して加熱が行われ、スプル66を流動される溶融樹脂の冷却による固化が防止される。
【0114】
上記のように構成された射出成形用金型1Bにおいて、可動型52が固定型53に対して上方へ移動されて可動型52と固定型53が突き合わされ、可動型52に形成された凸部52aと固定型53に形成された凹部53aとによってキャビティ55が形成される(
図13参照)。また、可動型52と固定型53が突き合わされると、可動型52に形成されたランナ用凹部52bと固定型53に形成されたランナ用凹部53bとによってランナ67が形成される。ランナ67はキャビティ55に連通され、ランナ67のキャビティ55側の開口がゲート67aとされる。
【0115】
このとき駆動プレート63は圧縮コイルバネ64、64によって取付板57に上方から押し付けられている。
【0116】
可動型52と固定型53が突き合わされてキャビティ55が形成されると、供給ノズル100から溶融樹脂300がスプル66に供給される。このときヒータによってスプル66が加熱され、溶融樹脂300の冷却による固化が防止される。
【0117】
溶融樹脂300はゲート67aからキャビティ55に流動され、キャビティ55に溶融樹脂300が充填される。このときキャビティ55への溶融樹脂300への充填状態は満充填状態ではなく、満充填状態より僅かに少ない充填状態にされていてもよい。
【0118】
キャビティ55に溶融樹脂300が充填されると、駆動源200、200によってそれぞれ駆動ロッド61、61が上方へ移動され、駆動プレート63が駆動ロッド61、61に押圧されて圧縮コイルバネ64、64の付勢力に反して上方へ移動される(
図14参照)。駆動プレート63が上方へ移動されるタイミングは、溶融樹脂300が固化される前の未硬化状態でのタイミングにされている。
【0119】
駆動プレート63が上方へ移動されるときには、供給ノズル100が、例えば、図示しない開閉ピンによって閉塞され供給ノズル100からの溶融樹脂300のキャビティ55へ向けての吐出が停止される。
【0120】
このとき駆動プレート63の上方への移動に伴ってエジェクタピン56とランナ用エジェクタピン65が一定量上方へ移動され、溶融樹脂300にエジェクタピン56の穴形成部56aが押し込まれ、穴形成部56aが溶融樹脂300の内部においてキャビティ55に位置される。エジェクタピン56がキャビティ300に位置された状態においては、エジェクタピン56の先端面(上端面)56bがキャビティ55を形成する固定型53の壁面(底面)53cから離隔して位置され、先端面56bが壁面53cより下方に位置される。
【0121】
上記のように、溶融樹脂300のキャビティ55への吐出が停止されると、一定時間経過後に、キャビティ55に充填された溶融樹脂300が冷却されて固化され成形品400が形成される。
【0122】
キャビティ55に充填された溶融樹脂300が冷却されて固化されると、可動型52が下方へ移動されて成形品400とともに固定型53から離隔される(
図15参照)。可動型52が成形品400とともに下方へ移動されると、エジェクタピン56とランナ用エジェクタピン65が可動型52に対して上方へ移動され、成形品400がエジェクタピン56、56、・・・によって突き出されてキャビティ55から取り出される。このとき成形品400はランナ66に充填された溶融樹脂300が固化されて形成されたランナ成形部500とともに可動型52から突き出される。ランナ成形部500は成形品400に対して切り取られる部分である。
【0123】
成形品400にはエジェクタピン56の穴形成部56aが成形品400に押し込まれることにより成形穴401が形成される。成形穴401は底を有する形状の穴である。
【0124】
上記のように、射出成形用金型1Bにおいては、エジェクタピン56の上端部がキャビティ55に位置された状態において、エジェクタピン56の先端面56bがキャビティ55を形成する固定型53の壁面53cから離隔して位置されるため、エジェクタピン56によって成形品400に底面を有する成形穴401が形成される。
【0125】
従って、キャビティ55におけるエジェクタピン56の先端面56bの位置を調整することにより成形穴401の深さを自由に設定することが可能になり、成形品400の形状に関する設計の自由度の向上を図ることができる。
【0126】
また、射出成形用金型1Bにあっては、成形品400に成形穴401を形成するための可動ピンとして成形品400をキャビティ55から取り出すエジェクタピン56が用いられている。
【0127】
従って、成形品400をキャビティ55から取り出すエジェクタピン56によって成形品400に成形穴401が形成されるため、エジェクタピン56が成形品400をキャビティ55から取り出す機能と成形穴401を形成する機能の双方の機能を有し、部品点数の削減を図った上で射出成形用金型1Bの高機能化を図ることができる。
【0128】
<まとめ>
上記したように、射出成形用金型1、1A、1Bにあっては、可動ピンとして機能するバルブピン15又はエジェクタピン6、56の先端部が溶融樹脂300が充填されたキャビティ5、55に位置され成形品400に成形穴401を形成する穴形成部16、6a、56aとして設けられている。
【0129】
従って、キャビティ5、55に溶融樹脂300が充填された状態において穴形成部16、6a、56aがキャビティ5、55に位置され、穴形成部16、6a、56aが固化された溶融樹脂300から引き抜かれることにより成形品400に成形穴401が形成される。これにより、バルブピン15とエジェクタピン6、56に対して溶融樹脂300からバルブピン15とエジェクタピン6、56に倒れが生じる方向への圧力が付与され難く、成形品400の成形精度の向上を図ることができる。
【0130】
また、専用の部品を用いることなく成形品400に成形穴401を形成することができるため、製造コストの高騰を来すことなく成形品400に成形穴401を形成することができる。
【0131】
さらに、コアピンを用いて成形穴401を形成する場合のように、キャビティ5に対する溶融樹脂300の射出速度を低く設定したり射出圧力を小さく設定する必要がなく、溶融樹脂300の内部にボイドが生じ難くなり、成形品400の成形精度の向上を図ることもできる。
【0132】
さらにまた、キャビティ5に溶融樹脂300が充填されゲート8b、67aが閉塞された状態においてバルブピン15の一部又はエジェクタピン6、56の一部が溶融樹脂300に押し込まれて成形穴401が形成されるため、溶融樹脂300の冷却時におけるヒケの発生や寸法不良という不具合を発生し難く、成形品400の高い成形精度を確保することができる。
【符号の説明】
【0133】
1 射出成形用金型
2 可動型
2b 壁面
3 固定型
5 キャビティ
6 エジェクタピン
8b ゲート
15 バルブピン
16 穴成形部
16a 先端面
16b 螺溝
20 ノズル
23a 吐出口
300 溶融樹脂
400 成形品
401 成形穴
20X ノズル
1A 射出成形用金型
6a 穴形成部
6b 先端面
15A バルブピン
1B 射出成形用金型
52 可動型
53 固定型
53c 壁面
55 キャビティ
56 エジェクタピン
56a 穴形成部
56b 先端面
67a ゲート