(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】検査対象物の状態評価装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/265 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
G01N29/265
(21)【出願番号】P 2018068351
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】598105732
【氏名又は名称】株式会社シスミック
(73)【特許権者】
【識別番号】591280197
【氏名又は名称】株式会社構造計画研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】592053114
【氏名又は名称】フジタビルメンテナンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 智洋
(72)【発明者】
【氏名】千葉 拓史
(72)【発明者】
【氏名】奥村 洋治
(72)【発明者】
【氏名】三上 貴正
(72)【発明者】
【氏名】岸村 雄平
(72)【発明者】
【氏名】中村 保則
(72)【発明者】
【氏名】相川 梓
(72)【発明者】
【氏名】永易 修
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-142204(JP,A)
【文献】特開平06-347250(JP,A)
【文献】特開平10-170482(JP,A)
【文献】特開平10-142203(JP,A)
【文献】特開2016-205901(JP,A)
【文献】特開2017-198508(JP,A)
【文献】特開平11-019890(JP,A)
【文献】米国特許第04304133(US,A)
【文献】特開昭60-211360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の状態を検出しその検出結果または前記検出結果に基づいて生成される評価結果を示す個別情報と前記検査対象物の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けて評価する検査対象物の状態評価装置であって、
フレームと、
前記検査対象物の平面と対向して前記フレームを支持するフレーム支持部と、
前記検査対象物の状態を検出する検出部と、
前記フレームに設けられ、前記検出部を前記検査対象物の平面に沿って移動させる移動機構と、
前記検査対象物の位置情報を、ローカル位置情報として検出するローカル位置情報検出部と、
前記個別情報と前記位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成する検査対象物評価情報生成部と、
を備え、
前記ローカル位置情報は、前記フレーム上に予め定められた点をフレーム側基準点とする局所座標系における2次元位置情報であ
り、
前記フレーム側基準点を、フレーム側基準点位置情報として検出するフレーム側基準点位置情報検出部と、
前記ローカル位置情報と前記フレーム側基準点位置情報とに基づいて、前記ローカル位置情報を、グローバル位置情報に変換する位置情報変換部とをさらに備え、
前記フレーム側基準点位置情報及び前記グローバル位置情報は、前記検査対象物上に予め定められた点を検査対象物側基準点とする全体座標系における2次元位置情報であり、
前記検査対象物評価情報生成部による前記検査対象物評価情報の生成は、前記個別情報と前記グローバル位置情報とを関連付けることでなされる、
ことを特徴とする検査対象物の状態評価装置。
【請求項2】
前記検査対象物は、鉛直面に沿って延在し、
前記フレーム支持部は、前記フレームの平面が、前記鉛直面と平行するように前記フレームを支持する、
ことを特徴とする請求項1記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項3】
前記検査対象物は、水平面に沿って延在し、
前記フレーム支持部は、前記フレームの平面が、前記水平面と平行するように前記フレームを支持する、
ことを特徴とする請求項1記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項4】
検査対象物の状態を検出しその検出結果または前記検出結果に基づいて生成される評価結果を示す個別情報と前記検査対象物の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けて評価する検査対象物の状態評価装置であって、
単一の平面上で互いに直交する2方向のうち一方のx方向の幅と他方のy方向の高さを有する矩形枠状のフレームと、
前記単一の平面が前記
検査対象物と平行し
て前記フレームを支持するフレーム支持部と、
前記検査対象物の状態を検出する検出部と、
前記フレームに設けられ、前記検出部を前記単一の平面に沿ってx方向およびy方向に移動させる移動機構と、
前記検査対象物の位置情報を、ローカル位置情報として検出するローカル位置情報検出部と、
前記個別情報と前記位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成する検査対象物評価情報生成部と、
を備え、
前記ローカル位置情報は、前記フレーム上に予め定められた点をフレーム側基準点とする局所座標系における2次元位置情報であ
り、
前記フレーム側基準点を、フレーム側基準点位置情報として検出するフレーム側基準点位置情報検出部と、
前記ローカル位置情報と前記フレーム側基準点位置情報とに基づいて、前記ローカル位置情報を、グローバル位置情報に変換する位置情報変換部とをさらに備え、
前記フレーム側基準点位置情報及び前記グローバル位置情報は、前記検査対象物上に予め定められた点を検査対象物側基準点とする全体座標系における2次元位置情報であり、
前記検査対象物評価情報生成部による前記検査対象物評価情報の生成は、前記個別情報と前記グローバル位置情報とを関連付けることでなされる、
ことを特徴とする検査対象物の状態評価装置。
【請求項5】
前記フレーム支持部は、
前記フレームを前記x方向に沿って移動させるX方向移動部と、前記フレームを前記y方向に沿って移動させるY方向移動部との少なくとも一方を備える、
ことを特徴とする請求項
4記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項6】
前記検出部に一体的に設けられた指標部と、
前記指標部と、前記フレームの表面の互いに離れた少なくとも2箇所に設定された複数の基準点とを含む範囲を撮像して画像情報を生成する第1撮像部とを備え、
前記ローカル位置情報検出部による前記ローカル位置情報の検出は、
前記検査対象物の状態の検出がなされた時刻に撮像された前記画像情報に基づいて、前記複数の基準点の位置に対する前記指標部の相対的な位置を示す位置情報を前記ローカル位置情報として生成することでなされる、
ことを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項7】
前記ローカル位置情報検出部は、エンコーダ、グラススケール、測長センサ、レーザ変位計、及び標高センサの一以上であり、
前記ローカル位置情報検出部による前記ローカル位置情報の検出は、
前記検査対象物の状態の検出がなされた時刻における前記検出部の位置情報を前記ローカル位置情報として生成することでなされる、
ことを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項8】
前記検出部は、前記検査対象物周辺の物理量を検出し、
前記第1撮像部は、前記検出部から供給される信号により撮像を行い、前記画像情報を生成する、
ことを特徴とする請求項
6記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項9】
前記検出部は、前記検査対象物を打撃した際に生じる前記物理量を検出する、
ことを特徴とする請求項
8記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項10】
前記検出部によって検出された前記検査対象物の状態を示す個別測定情報に基づいて前記検査対象物の状態を評価して個別評価情報を生成する評価部を備え、
前記個別情報は、前記個別評価情報を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項11】
前記検査対象物は、建物躯体および前記建物躯体に接着された外装材であり、
前記評価部は、前記外装材の損傷の有無を評価する、
ことを特徴とする請求項
10記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項12】
前記フレームは、x方向に間隔をおいてy方向に延在する一対の縦部と、y方向に間隔をおいてx方向に延在し前記一対の縦部の両端を接続する一対の横部とを有し、
前記移動機構は、x方向に延在し前記一対の横部の一方に設けられx方向に移動するx方向テーブルを有するx方向アクチュエータと、y方向に延在しその延在方向の一端が前記x方向テーブルに取着されその延在方向の他端が前記一対の横部の他方に移動可能に配置されy方向に移動するy方向テーブルを有するy方向アクチュエータとを含んで構成され、
前記検出部は前記y方向テーブルに支持されている、
ことを特徴とする請求項1乃至
11のいずれか1項記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項13】
前記y方向アクチュエータの前記延在方向の他端に、前記一対の横部の他方に転動可能に接触する転動輪と、前記一対の横部の他方にx方向に移動可能に結合しかつ前記転動輪が前記一対の横部の他方から離れる方向への移動を阻止する係止爪が設けられている、
ことを特徴とする請求項
12記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項14】
前記y方向テーブルに前記検査対象物側に向かうブラケットが設けられ、
前記検出部は、前記検出部を支持し前記検査対象物上を転動する複数の転動輪と、前記ブラケットと一体にy方向に移動可能かつ前記検査対象物に離間接近する方向に移動可能でさらに前記ブラケットに対してx方向に移動不能に結合する結合部と、前記複数の転動輪を前記検査対象物上に接触する方向に前記検出部を付勢する弾性部材とを備えている、
ことを特徴とする請求項
12または
13記載の検査対象物の状態評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の状態を評価する検査対象物の状態評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外装材(外壁材)の剥離、剥落を未然に防止するため、建物の状態を診断する方法が種々提案されている。
特許文献1には、検査対象物の表面をハンマーで打撃した際に発生する打音をマイクを用いて検出し、マイクからの信号に基づいて打音検出波形を生成し、打音検出波形に発生する1周期分の波形の振幅に基づいて検査対象物の状態を評価する検査対象物の状態評価装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、作業員が検査対象物の表面をハンマーで打撃することから、例えば、ビルなどの高所における検査対象物の状態を評価するためには、高所作業を行なうために足場が必要となったり、あるいは、ビル屋上から吊り下げたゴンドラに乗り込んだ作業員が作業を行なうことになる。
そのため、検査対象物の状態の評価には、作業員に危険が伴うこと、検査対象物の状態を評価するための設備が必要となることは無論のこと、足場の組み立て、解体、あるいは、ゴンドラの設置などに多大な手間が掛かっており、特に大型の高層ビルや倉庫あるいはスタジアムなど検査対象物の面積が広大な場合には設備コストが膨大なものとなり、また、工期の長期化が避けられないものとなっている。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、検査対象物の状態の評価を低コストでかつ効率的に行なう上で有利な検査対象物の状態評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、検査対象物の状態を検出しその検出結果または前記検出結果に基づいて生成される評価結果を示す個別情報と前記検査対象物の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けて評価する検査対象物の状態評価装置であって、フレームと、前記検査対象物の平面と対向して前記フレームを支持するフレーム支持部と、前記検査対象物の状態を検出する検出部と、前記フレームに設けられ、前記検出部を前記検査対象物の平面に沿って移動させる移動機構と、前記検査対象物の位置情報を、ローカル位置情報として検出するローカル位置情報検出部と、前記個別情報と前記位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成する検査対象物評価情報生成部と、を備え、前記ローカル位置情報は、前記フレーム上に予め定められた点をフレーム側基準点とする局所座標系における2次元位置情報であり、前記フレーム側基準点を、フレーム側基準点位置情報として検出するフレーム側基準点位置情報検出部と、前記ローカル位置情報と前記フレーム側基準点位置情報とに基づいて、前記ローカル位置情報を、グローバル位置情報に変換する位置情報変換部とをさらに備え、前記フレーム側基準点位置情報及び前記グローバル位置情報は、前記検査対象物上に予め定められた点を検査対象物側基準点とする全体座標系における2次元位置情報であり、記検査対象物評価情報生成部による前記検査対象物評価情報の生成は、前記個別情報と前記グローバル位置情報とを関連付けることでなされることを特徴とする検査対象物の状態評価装置。
また、本発明の一態様は、前記検査対象物は、鉛直面に沿って延在し、前記フレーム支持部は、前記フレームの平面が、前記鉛直面と平行するように前記フレームを支持することを特徴とする。
また、本発明の一態様は、前記検査対象物は、水平面に沿って延在し、前記フレーム支持部は、前記フレームの平面が、前記水平面と平行するように前記フレームを支持することを特徴とする。
また、本発明の一態様は、検査対象物の状態を検出しその検出結果または前記検出結果に基づいて生成される評価結果を示す個別情報と前記検査対象物の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けて評価する検査対象物の状態評価装置であって、単一の平面上で互いに直交する2方向のうち一方のx方向の幅と他方のy方向の高さを有する矩形枠状のフレームと、前記単一の平面が前記検査対象物と平行して前記フレームを支持するフレーム支持部と、前記検査対象物の状態を検出する検出部と、前記フレームに設けられ、前記検出部を前記単一の平面に沿ってx方向およびy方向に移動させる移動機構と、前記検査対象物の位置情報を、ローカル位置情報として検出するローカル位置情報検出部と、前記個別情報と前記位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成する検査対象物評価情報生成部と、を備え、前記ローカル位置情報は、前記フレーム上に予め定められた点をフレーム側基準点とする局所座標系における2次元位置情報であり、前記フレーム側基準点を、フレーム側基準点位置情報として検出するフレーム側基準点位置情報検出部と、前記ローカル位置情報と前記フレーム側基準点位置情報とに基づいて、前記ローカル位置情報を、グローバル位置情報に変換する位置情報変換部とをさらに備え、前記フレーム側基準点位置情報及び前記グローバル位置情報は、前記検査対象物上に予め定められた点を検査対象物側基準点とする全体座標系における2次元位置情報であり、記検査対象物評価情報生成部による前記検査対象物評価情報の生成は、前記個別情報と前記グローバル位置情報とを関連付けることでなされることを特徴とする。
また、本発明の一態様は、前記フレーム支持部は、前記フレームを前記x方向に沿って移動させるX方向移動部と、前記フレームを前記y方向に沿って移動させるY方向移動部との少なくとも一方を備えることを特徴とする。
また、本発明の一態様は、前記検出部に一体的に設けられた指標部と、前記指標部と、前記フレームの表面の互いに離れた少なくとも2箇所に設定された複数の基準点とを含む範囲を撮像して画像情報を生成する第1撮像部とを備え、前記ローカル位置情報検出部による前記ローカル位置情報の検出は、前記検査対象物の状態の検出がなされた時刻に撮像された前記画像情報に基づいて、前記複数の基準点の位置に対する前記指標部の相対的な位置を示す位置情報を前記ローカル位置情報として生成することでなされることを特徴とする。
また、本発明の一態様は、前記ローカル位置情報検出部は、エンコーダ、グラススケール、測長センサ、レーザ変位計、及び標高センサの一以上であり、前記ローカル位置情報検出部による前記ローカル位置情報の検出は、前記検査対象物の状態の検出がなされた時刻における前記検出部の位置情報を前記ローカル位置情報として生成することでなされることを特徴とする。
また、本発明の一態様は、前記検出部は、前記検査対象物周辺の物理量を検出し、前記第1撮像部は、前記検出部から供給される信号により撮像を行い、前記画像情報を生成することを特徴とする。
また、本発明の一態様は、前記検出部は、前記検査対象物を打撃した際に生じる前記物理量を検出することを特徴とする。
また、本発明の一態様は、前記検出部によって検出された前記検査対象物の状態を示す個別測定情報に基づいて前記検査対象物の状態を評価して個別評価情報を生成する評価部を備え、前記個別情報は、前記個別評価情報を含むことを特徴とする。
また、本発明の一態様は、前記検査対象物は、建物躯体および前記建物躯体に接着された外装材であり、前記評価部は、前記外装材の損傷の有無を評価することを特徴とする。
また、本発明の一態様は、前記フレームは、x方向に間隔をおいてy方向に延在する一対の縦部と、y方向に間隔をおいてx方向に延在し前記一対の縦部の両端を接続する一対の横部とを有し、前記移動機構は、x方向に延在し前記一対の横部の一方に設けられx方向に移動するx方向テーブルを有するx方向アクチュエータと、y方向に延在しその延在方向の一端が前記x方向テーブルに取着されその延在方向の他端が前記一対の横部の他方に移動可能に配置されy方向に移動するy方向テーブルを有するy方向アクチュエータとを含んで構成され、前記検出部は前記y方向テーブルに支持されていることを特徴とする。
また、本発明の一態様は、前記y方向アクチュエータの前記延在方向の他端に、前記一対の横部の他方に転動可能に接触する転動輪と、前記一対の横部の他方にx方向に移動可能に結合しかつ前記転動輪が前記一対の横部の他方から離れる方向への移動を阻止する係止爪が設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一態様は、前記y方向テーブルに前記検査対象物側に向かうブラケットが設けられ、前記検出部は、前記検出部を支持し前記検査対象物上を転動する複数の転動輪と、前記ブラケットと一体にy方向に移動可能かつ前記検査対象物に離間接近する方向に移動可能でさらに前記ブラケットに対してx方向に移動不能に結合する結合部と、前記複数の転動輪を前記検査対象物上に接触する方向に前記検出部を付勢する弾性部材とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、フレームに設けた移動機構を用いて検出部を検査対象物の平面に沿って移動させつつ、検査対象物の状態を検出すると共に、検査対象物の検出箇所の位置情報を、局所座標系における2次元位置情報であるローカル位置情報として検出し、個別情報と位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成することができる。
したがって、従来のように検査対象物の状態を評価するために足場やゴンドラの設置を行なう場合と比較して、設備コストの低減を図れ、工期の短縮化を図る上で有利となり、特に大型の高層ビルや倉庫あるいはスタジアムなど検査対象物の面積が広大な場合において、検査対象物の状態の評価を低コストでかつ効率的に行なう上で有利となる。
また、本発明の一態様によれば、検査対象物が鉛直面に沿って延在する場合に検査対象物の状態の評価を低コストでかつ効率的に行なう上で有利となる。
また、本発明の一態様によれば、検査対象物が水平面に沿って延在する場合に検査対象物の状態の評価を低コストでかつ効率的に行なう上で有利となる。
また、本発明の一態様によれば、フレームに設けた移動機構を用いて検出部をx方向、y方向に移動させつつ、検査対象物の状態を検出すると共に、検査対象物の検出箇所の位置情報を、局所座標系における2次元位置情報であるローカル位置情報として検出し、個別情報と位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成することができる。
したがって、設備コストの低減を図れ、工期の短縮化を図る上で有利となり、特に大型の高層ビルや倉庫あるいはスタジアムなど検査対象物の面積が広大な場合において、検査対象物の状態の評価を低コストでかつ効率的に行なう上で有利となる。
また、本発明の一態様によれば、検査対象物の検出箇所の位置情報を、検査対象物上に予め定められた点を検査対象物側基準点とする全体座標系における2次元位置情報であるグローバル位置情報として求めることができるため、面積が広大な検査対象物の検出箇所の位置情報を正確に特定する上で有利となる。
また、本発明の一態様によれば、フレームをx方向あるいはy方向に的確に移動させることができるため、面積が広大な検査対象物の個別情報を効率的に得る上で有利となる。
また、本発明の一態様によれば、個別情報と位置情報とを関連付けた評価を短時間で的確に行いつつ構成の簡素化を図る上で有利となる。
また、本発明の一態様によれば、ローカル位置情報の検出を的確に行いつつ構成の簡素化を図る上で有利となる。
また、本発明の一態様によれば、第1撮像部は検出部から発せられる信号(撮像トリガ信号)により検査対象物周辺の撮像を行うので、個別情報に対応する画像を特定しやすくする上で有利となる。
また、本発明の一態様によれば、検査対象物を打撃した際に生じる物理量に基づいて検査対象物周辺の撮像を行うので、個別情報に対応する画像を特定しやすくする上で有利となる。
また、本発明によれば、個別測定情報を評価した個別評価情報に基づいて検査対象物の状態を的確に評価する上で有利となる。
また、本発明の一態様によれば、建物躯体に接着された外装材の損傷の有無を評価するので、外装材の損傷の有無を効率的よく評価する上で有利となる。
また、本発明の一態様によれば、x方向アクチュエータおよびy方向アクチュエータを利用することで移動機構の部品点数の削減を図れるため、状態評価装置の構成の簡素化、軽量化を図る上で有利となる。
また、本発明の一態様によれば、係止爪により転動輪が横部上で安定して転動するため、y方向アクチュエータの動作を確実に行なう上で有利となる。
また、本発明の一態様によれば、結合部、弾性部材により検出部が変位することで検査対象物の段差や凹凸が吸収されるため、検出部と検査対象物との間隔を適切な値に保持でき、検出部の検出動作を確実に行なう上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】検査対象物の状態評価装置のフレーム、検出部、移動機構を示す正面図である。
【
図5】(A)は検査対象物側基準点P0を原点とする全体座標系とフレームとの関係を説明する模式図、(B)はフレーム側基準点P1を原点とする局所座標系と検出部との関係を説明する模式図である。
【
図6】フレームのX方向、Y方向に沿った移動を説明する模式図である。
【
図7】第1の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置の動作フローチャートである。
【
図8】(A)は移動機構の変形例を示す正面図、(B)は移動機構の他の変形例を示す正面図である。
【
図9】(A)は第2の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置のフレーム、検出部、移動機構を示す正面図、(B)は(A)のB矢視図、(C)は(A)のC矢視図である。
【
図10】第2の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置の検出部の側面図である。
【
図11】第2の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置の検出部の正面図である。
【
図12】第2の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置の検出部の正面図である。
【
図13】第3の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置の検出部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置(以下、状態評価装置という)について図面を参照して説明する。
まず、
図1を参照して、本実施の形態の状態評価装置10の構成について説明する。
なお、本実施の形態では、状態評価装置10が検査対象物の状態として、建物躯体2に接着されたタイル、モルタル、レンガ、ブロック、外壁パネル、ガラスなどの外装材4の状態を検出して評価するものである場合について説明するが、状態評価装置10が検出する検査対象物の状態は、外装材4の状態に限定されるものではなく、建物外面部のひび割れ、汚損、空洞、温度など従来公知の様々な状態を検出の対象とすることができる。
なお、本明細書において、検査対象物とは建物や構造物であり、検査対象物が建物であった場合、検査対象物は、建物外面部の他、例えば、室内の壁面、室内のコンクリート躯体などを広く含むものである。
また、本明細書において建物外面とは、建物の最も外側に位置する建物の外面をいい、建物外面部とは、タイルやモルタルなどの外装材が設けられていない場合には、建物外面に加え、この建物外面近くの内部の状態を含むものとする。また、建物外面部とは、タイルやモルタルなどの外装材が設けられている場合には、外装材の表面に加え、外装材の表面の内側の外装材部分や外装材の内側の建物躯体2の表面や表面近くの内部を含むものとする。
【0009】
ここで、実施の形態において状態評価装置10で取り扱う各種情報について説明する。
1)個別測定情報:
建物外面部の状態を検出して得られた物理量である。
本実施の形態では、検査対象物を打撃した際に生じる物理量、特に外装材4を打撃した際に発生する打撃力、打音および振動の一以上の物理量が例示される。
2)個別評価情報:
個別測定情報に基づいて建物外面部の状態を評価した情報である。
本実施の形態では、上記打撃力、打音、振動などの個別測定情報に基づいて得られた各検出箇所における浮き(建物躯体2と外装材4との剥離)やひび、欠損・剥落、汚れ等が例示される。
3)個別情報:
状態評価装置10によって検出された検査対象物の状態の検出結果または検出結果に基づいて生成される評価結果を示す情報であり、上述した個別測定情報あるいは個別評価情報の一方または双方をいう。
4)検査対象物評価情報:
個別評価情報と位置情報とを関連付けた情報である。
【0010】
状態評価装置10は、鉛直面または水平面に沿って延在する検査対象物の状態を検出しその検出結果または検出結果に基づいて生成される評価結果を示す個別情報と検査対象物の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けて評価するものである。
本実施の形態では、状態評価装置10は、建物外面部の鉛直面において、外装材4の状態の評価結果と、建物外面部の位置(検査対象物の検出箇所の位置)を示す位置情報とを関連付けて評価する形態について説明する。
【0011】
図1~
図4に示すように、状態評価装置10は、フレーム12と、移動機構14と、検出部16と、指標部18と、第1撮像部20と、第2撮像部22と、フレーム支持部24と、フレーム側基準点位置情報検出部26と、第1コンピュータ28と、第2コンピュータ30などを含んで構成されている。
【0012】
図2、
図3に示すように、フレーム12は、矩形枠状を呈し、単一の平面上で互いに直交する2方向のうち一方のx方向の幅Wと他方のy方向の高さHを有している。
具体的には、フレーム12は、x方向に間隔をおいてy方向に延在する一対の縦部1202と、y方向に間隔をおいてx方向に延在する一対の横部1204とを有している。
また、後述するフレーム支持部24によって単一の平面が建物外面部(鉛直面)と平行し、x方向が水平方向を向き、y方向が鉛直方向を向くようにフレーム12が支持された状態において、フレーム12と建物外面部との間に所定の間隔が形成されるように、フレーム12の建物外面部に対向する箇所には、複数のキャスター1206が設けられおり、フレーム12の移動時に各キャスター1206が建物外面部に沿って転動することでフレーム12の建物外面部に沿った移動が円滑に行なわれるように図られている。
なお、フレーム12は、矩形枠状の代わりに、適宜、多角形枠状、円形枠状、L字型、コの字型などの形状とすることができる。または、
図8(A)、(B)に示すように、移動機構14としてロボットアームを設けてもよい。
【0013】
移動機構14は、フレーム12に設けられ、後述する検出部16を前記単一の平面に沿ってx方向およびy方向に移動させるものである。
本実施の形態では、
図2、
図3に示すように、移動機構14は、x方向移動部32と、y方向移動部34と、駆動制御部36(
図1)とを含んで構成されている。
x方向移動部32は、第1ガイドロッド3202、第1送りねじ3204、第1モータ3206、第1キャリッジ3208を含んで構成されている。
第1ガイドロッド3202および第1送りねじ3204は、一対の縦部1202の上部寄りの箇所でy方向に間隔をおいてx方向に延在して配置され、それらの両端は、一対の上部ブラケット3210を介して一対の縦部1202の箇所に支持されている。
第1モータ3206は、その駆動軸が第1送りねじ3204の一端に連結され、第1送りねじ3204を正逆回転させる。
第1キャリッジ3208は、第1ガイドロッド3202が挿通されるガイド孔3208Aと、第1送りねじ3204が螺合されるねじ孔3208Bとを有している。
【0014】
y方向移動部34は、第2ガイドロッド3402、第2キャリッジ3404、第3ガイドロッド3406、第2送りねじ3408、第2モータ3410、移動体3412を含んで構成されている。
第2ガイドロッド3402は、一対の縦部1202の下部寄りの箇所でx方向に延在して配置され、その両端は、一対の下部ブラケット3414を介して一対の縦部1202の下部に支持されている。
第2キャリッジ3404は、第2ガイドロッド3402が挿通されるガイド孔3404Aを有している。
第3ガイドロッド3406および第2送りねじ3408は、x方向に間隔をおきy方向に延在して配置され、それらの両端は、第1キャリッジ3208および第2キャリッジ3404に支持されている。
第2モータ3410は、その駆動軸が第2送りねじ3408の一端に連結され、第2送りねじ3408を正逆回転させる。
移動体3412は、後述する検出部16を支持するものであり、第3ガイドロッド3406が挿通されるガイド孔3412Aと、第2送りねじ3408が螺合されるねじ孔3412Bとを有している。
したがって、第1キャリッジ3208、第2キャリッジ3404、移動体3412は、第1モータ3206の正逆転により第1送りねじ3204を介してx方向に往復移動される。
また、移動体3412は、第2モータ3410の正逆転により第2送りねじ3408を介してy方向に往復移動される。
すなわち、第1、第2モータ3206、3410の正逆回転により、移動体3412は、フレーム12の内側の領域において前記単一の平面に沿って移動される。
【0015】
図1に示すように、駆動制御部36は、後述する第2コンピュータ30の移動制御部30Eから供給される制御指令に基づいて第1、第2モータ3206、3410の回転制御を行なうものであり、これにより移動体3412がx方向およびy方向に移動される。
また、第1モータ3206、第2モータ3410はそれらの回転量を検出する不図示のエンコーダをそれぞれ備えており、駆動制御部36は、それらエンコーダで検出された回転量に基づいて第1、第2モータ3206、3410の回転制御を行なう。
言い換えると、駆動制御部36は、それらエンコーダで検出された回転量を監視することで移動体3412が予め定められた移動範囲内で移動するように制御する。
なお、ここでは、x方向移動部32及びy方向移動部34はそれぞれ、送りねじ3404、3408を用いているが、x方向移動部32及びy方向移動部34の一方または両方として、ベルトコンベア、リニアアクチュエータ、ロボットアーム等を適宜用いることができる。または、
図8(A)に示すように、移動機構14としてロボットアームを用いてもよい。
この場合、移動機構14は、フレーム12に支持部19を介して設置される。
または、
図8(B)に示すように、一方向(ここでは、y方向)に伸張したフレーム12を用い、移動機構14は、該フレーム12に設けられ且つy方向に移動可能なy方向移動部35と、x方向に伸長可能なx方向移動部33とを用いてもよい。x方向に伸長可能なx方向移動部33としては、ロボットアームを用いることができ、Y方向に移動可能なy方向移動部35としては、送りねじ、ベルトコンベア、またはリニアアクチュエータを用いることができる。
また、x方向移動部32及びy方向移動部34として、ベルトコンベア、リニアアクチュエータ、ロボットアーム等を用いる場合、第1モータ3206及び第2モータ3410は、回転量を検出するエンコーダを設けてもよく、またはエンコーダ以外の位置を検出する機構を設けてもよい。
【0016】
検出部16は、検査対象物周辺の物理量、すなわち建物外面部の状態を検出するものであり、言い換えると、建物外面部の状態を示す個別測定情報を生成するものである。なお、本実施の形態における「個別」とは、一測定箇所(または単位測定時)の、という意味である。
本実施の形態では、検出部16は、移動体3412に支持され、移動体3412と一体に移動される。
また、
図3に示すように、検出部16は、状態を評価すべき外装材4の表面に対向して使用される。
また、本実施の形態では、検出部16は、検査対象物を打撃した際に生じる物理量、特に外装材4を打撃した際に発生する打撃力、打音および振動の一以上の物理量を個別測定情報として検出する。
打撃力、打音、及び振動の一以上の物理量を測定する装置として、マイクロフォンを検出部16に設けることが好ましい。マイクフォンとしては、小型及び軽量なコンデンサマイクフォンを用いることができる。
なお、
図3において符号1602は検査対象物を打撃する打撃ハンマーを示す。
打撃ハンマー1602の先端の形状は、適宜、球状、面状、突起状とすることができる。また、打撃ハンマー1602は、ステンレス鋼製の突起物を用いることができる。
また、状態評価装置10が評価する対象が建物外面部のひび割れや汚損であれば、検出部16は、例えば建物外面部を撮像してひび割れや汚損(検査対象物の色の変化)を検出する撮像装置で構成されることになる。また、状態評価装置10が評価する対象が建物外面部の温度であれば、検出部16は、例えば建物外面部の温度を検出する温度計で構成されることになる。要するに、検出部16は状態評価装置10が評価する対象に対応したものが採用される。
また、本実施の形態では、検出部16により、打撃力、打音および振動の一以上の物理量が検出される毎に、位置検出トリガ信号が検出部16から後述するローカル位置情報検出部28Bに供給されるように構成されているとともに、撮像トリガ信号が第1撮像部20に供給され、撮像を指示するように構成されている。
【0017】
指標部18は、
図2に示すように、検出部16に一体的に設けられ、本実施の形態では、検出部16の筐体が取着される移動体3412の表面に設けられている。
指標部18は、第1撮像部20によって撮像可能であればよく、例えば、記号やマークが付されたシールで指標部18を構成してもよく、点灯あるいは点滅する光源で指標部18を構成してもよい。
【0018】
図2、
図3に示すように、第1撮像部20および第2撮像部22は、フレーム12の一対の縦部1202の上下中間部から建物外面部から離間する方向にそれぞれ突設された脚部1210の先端間に架け渡されたステー13の中間部にブラケット15を介して取着されている。
第1撮像部20は、指標部18と、フレーム12の表面の互いに離れた少なくとも2箇所に設定された複数の基準点P1~P4とを含む範囲を撮像して画像情報を生成するものである。
本実施の形態では、第1撮像部20は、平面視した状態で少なくともフレーム12の外縁の輪郭の内側の全領域を撮像する。
第1撮像部20として、CCDカメラや赤外線カメラなどの静止画あるいは動画を撮像可能な従来公知の様々な撮像装置が使用可能である。
本実施の形態では、第1撮像部20は、検出部16から供給される撮像トリガ信号により検査対象物周辺の撮像を行い、画像情報を生成するものとする。上述のように、本実施の形態では、検出部16は検査対象物を打撃した際に生じる物理量、すなわち打音および振動の一以上を検出するものであり、第1撮像部20は、検出部16から発せられる撮像トリガ信号により撮像を行い、画像情報を生成するものとする。すなわち、上述した検出部16からの撮像トリガ信号に合わせて画像の撮像を行うものとする。
また、第1撮像部20は、常時一定の時間間隔(例えば0.1秒単位)で静止画を撮像したり、または動画を撮像するものであってもよい。
エンコーダで後述するローカル位置情報を得る場合は、前述の物理量をトリガ信号として、エンコーダからローカル位置情報を算出することもできる。
また、エンコーダから得られる情報により、あらかじめ設定した位置間隔で検査対象の個別測定情報である物理量を得ることができる。
【0019】
第2撮像部22も第1撮像部20と同様に、平面視した状態で少なくともフレーム12の外縁の輪郭の内側の全領域を撮像する。
第2撮像部22は、検出部16および建物外面部の状況を常時撮像して画像情報を生成するものであり、この画像情報は、後述する第2コンピュータ30の表示部30Iに表示され、検出部16の動作状態や建物外面部の状態などを監視するために用いられる。
第2撮像部22として、CCDカメラなど後述する第2コンピュータ30の表示部30Iに表示可能な静止画あるいは動画を撮像可能な従来公知の様々な撮像装置が使用可能である。
【0020】
ここで、フレーム12に設けられた複数の基準点P1~P4について説明する。
本例では、フレーム12の表面、具体的には、フレーム12の4つの角部の表面に4つの基準点P1、P2、P3、P4が設けられている。なお、基準点の数は2つ以上であればよい。
各基準点P1、P2、P3、P4は、第1撮像部20によって撮像可能であればよく、例えば、記号やマークが付されたシールをフレーム12の表面に設けて各基準点を構成してもよく、点灯あるいは点滅する光源をフレーム12の表面に取着して各基準点を構成してもよい。
そして、各基準点P1、P2、P3、P4は、それらの距離(座標位置)が既知となっている。
例えば、基準点P1を原点(0,0)とした、この原点を通る互いに直交するX軸、Y軸を設定したときに、他の基準点P2、P3、P4の位置はX座標、Y座標の値がmm単位で既知となっている。
ここで、指標部18の位置は、各基準点P1、P2、P3、P4のうち少なくとも2つの基準点を基にして三角測量の方法によって特定することができる。
本実施の形態では、X軸およびY軸は、フレーム12のx方向(水平方向)およびy方向(鉛直方向)と平行している。
なお、フレーム12に対して、第1撮像部20の位置および角度が一定である場合は、P1~P4の基準点の認識は、少なくとも最初の1回のみ行い、当該情報を再度利用することができる。
【0021】
図4に示すように、フレーム支持部24は、前記単一の平面が建物外面部(鉛直面)と平行し、フレーム12のx方向が水平方向を向き、フレーム12のy方向が鉛直方向を向くようにフレーム12を支持するものである。
本実施の形態では、フレーム支持部24は、建物躯体2の屋上の建物外面部寄りの箇所に設置されている。
フレーム支持部24は、ガイドレール2402と、キャリッジ2404と、架台2406と、2つのウィンチ2408と、2つのプーリ2410と、2つのワイヤ2412と、送りねじ2414と、水平移動用モータ2416と、フレーム移動操作部2418(
図1)とを含んで構成されている。
【0022】
ガイドレール2402は、建築躯体2の屋上の建物外面部寄りの箇所で建物外面部に沿って水平方向に延在して設けられている。
キャリッジ2404は、ガイドレール2402に沿って移動可能に設けられている。
架台2406は、板状を呈し下面がキャリッジ2404の上部に取着され、架台2406の後部には、水平方向に軸心を向けた雌ねじ2407Aが形成されたナット部材2407が設けられている。
2つのウィンチ2408は、ガイドレール2402の延在方向に間隔をおいて架台2406の上面に設けられており、ワイヤ巻取り用のドラム2420と、ドラム2420を正逆回転駆動することでワイヤ2412の繰り出し、巻取りを行なうウィンチモータ2422とを備えている。
【0023】
2つのプーリ2410は、ガイドレール2402の延在方向に間隔をおいて架台2406から立設された2つのアーム2424の先端に回転可能にそれぞれ取着されている。
2つのワイヤ2412は、各ドラム2420に巻回され、ドラム2420から繰り出されたワイヤ2412は各プーリ2410を介して下方に導出され、ワイヤ2412の先端はフレーム12の上部のX方向に間隔をおいた2箇所に連結されている。
送りねじ2414は、ナット部材2407の雌ねじ2407Aに螺合している。
水平移動用モータ2416は、送りねじ2414に連結され送りねじ2414を正逆回転する。
【0024】
フレーム移動操作部2418は、手動操作により水平移動用モータ2416、ウィンチモータ2422の駆動のオン、オフ、駆動方向の切り替えを行なうものである。
したがって、フレーム移動操作部2418により水平移動用モータ2416を正逆回転させると、送りねじ2414を介して架台2406、2つのウィンチ2408、2つのプーリ2410がX方向に移動するため、ワイヤ2412を介してフレーム12が建物外面部に沿ってX方向(水平方向)に移動する。
また、フレーム移動操作部2418により2つのウィンチモータ2422を正逆回転させると、2つのドラム2420によるワイヤ2412の繰り出し、巻取り動作によりワイヤ2412を介してフレーム12が建物外面部に沿ってY方向(鉛直方向)に移動する。
【0025】
したがって、本実施の形態では、フレーム支持部24は、フレーム12をX方向に沿って移動させるX方向移動部24Aと、フレーム12をY方向に沿って移動させるY方向移動部24Bとを含んで構成されている。
X方向移動部24Aは、ガイドレール2402、キャリッジ2404、架台2406、雌ねじ2407A、送りねじ2414、水平移動用モータ2416、フレーム移動操作部2418によって構成されている。
Y方向移動部24Bは、ワイヤ2412、プーリ2410、ウィンチ2408、フレーム移動操作部2418によって構成されている。
【0026】
図2に示すように、第1コンピュータ28はフレーム12の適宜箇所に設置されている。
図1に示すように、第1コンピュータ28は、例えば、マイコン、シーケンサ、ノートブック型コンピュータ、タブレット端末等で構成され、第1コンピュータ28は、検出部16、第1撮像部20、第2撮像部22、及び駆動制御部36と、ケーブルまたは無線で接続されている。
第1コンピュータ28は、CPU、ROM、RAM、タッチパネル、ディスプレイ装置、入出力インターフェースなどを有している。
ROMは例えばフラッシュメモリなどで構成され、制御プログラムなどを格納し、RAMはワーキングエリアを提供するものである。
CPUが制御プログラムを実行することで評価部28Aと、ローカル位置情報検出部28Bと、通信部28Cとが実現される。
【0027】
評価部28Aは、検出部16によって検出された、建物外面部の状態を示す個別測定情報に基づいて建物外面部の状態を評価して、個別評価情報を生成するものである。なお、本実施の形態において、個別情報とは、個別評価情報を含む。
本実施の形態のように、建物躯体2に外装材4が接着されている建物外面部の場合、評価部28Aは、各検出箇所における浮き(建物躯体2と外装材4との剥離)やひび、欠損・剥落、汚れ等の有無を評価する。以下、上記のような好ましくない外装材4の状態を「損傷」という。
以下の説明では、主に建物躯体2に接着された外装材4の浮きを例にして説明する。なお、外装材の剥離によって形成された外装材背面側の評価結果の大小に基づいて、浮きの深さを評価するようにしてもよい。具体的には、評価結果がしきい値a未満の場合には「浮き無し」、しきい値a以上b以下の場合には「深い浮き有」、しきい値bより大の場合には「浅い浮き有り」のように評価してもよい。
評価部28Aによる個別評価情報の生成は、検出部16で検出された打音および振動の一以上の検出信号の周波数、振幅、波長などの検出結果に基づいてなされ、このような個別評価情報の生成の手法として従来公知の様々な手法が採用可能である。
【0028】
ローカル位置情報検出部28Bは、検査対象物の検出箇所の位置を示す位置情報を、フレーム12上に予め定められた点をフレーム側基準点とする局所座標系におけるx方向およびy方向に沿った2次元位置情報であるローカル位置情報として検出するものである。
すなわち、
図5(B)に示すように、フレーム側基準点は、前述した基準点P1~P4の中から定めた1つの基準点とすることが可能であり、例えば、基準点P1をフレーム側基準点とする。
したがって、ローカル位置情報とは、フレーム側基準点を原点とし、当該基準点を通る互いに直交するx軸、y軸によって規定される局所座標系における2次元位置情報であり、ローカル位置情報は、
図5(B)に示すx軸、y軸の座標値(x,y)で示される。
本実施の形態では、局所座標系におけるx軸およびy軸は、フレーム12のx方向(水平方向)およびy方向(鉛直方向)と平行している。なお、局所座標系におけるx軸およびy軸は、フレーム12のx方向およびy方向と平行していればよく、直交せず、任意の角度で交差してもよい。
【0029】
ローカル位置情報検出部28Bについて詳細に説明する。
本実施の形態では、ローカル位置情報検出部28Bは、検査対象物の状態の検出がなされた時刻、本実施の形態では検出部16により外装材4を打撃した際に発生する打音および振動の一以上が検出された時刻に対応して、検出部16から供給される撮像トリガ信号に基づいて第1撮像部20で撮像された画像情報に基づいて、複数の基準点の位置に対する指標部18の相対的な位置、すなわち検出部16の位置を示す位置情報(ローカル位置情報)を生成するものである。言い換えると、検出部16の位置を示す位置情報を、検査対象物の検出箇所の位置情報(ローカル位置情報)として生成するものである。
なお、検出部16により外装材4を打撃した際に発生する打音および振動の一以上が検出された時刻に対応して第1撮像部20で撮像された画像情報とは、検出部16により打音および振動の一以上が検出された時刻と同時刻あるいはほぼ同時刻に第1撮像部20で撮像された画像情報であればよい。
また、第1撮像部20で常時一定の時間間隔ごとに静止画を撮像する場合、ローカル位置情報検出部28Bは、第1撮像部20から時間経過と共に順次供給される画像情報のうち、検出部16から供給される位置検出トリガ信号に対応する画像情報を選択し、この選択された画像情報に基づいて複数の基準点の位置に対する指標部18の相対的な位置を示す位置情報(ローカル位置情報)を生成する。
【0030】
上述したように、第1撮像部20によって撮像された画像情報上において、画素単位で各基準点P1、P2、P3、P4の位置と、指標部18の位置とが特定できるので、これらの位置に基づいて三角測量の方法によって複数の基準点の位置に対する指標部18の相対的な位置を示す位置情報(ローカル位置情報)を生成することが可能である。この位置情報は、前述したように例えば、撮像した画像のピクセル情報を元に換算して、mm単位のx座標、y座標の値で算出することができる。
【0031】
通信部28Cは、検出部16、評価部28A、ローカル位置情報検出部28B、第2撮像部22、駆動制御部36に接続されると共に、第2コンピュータ30の通信部30Gとケーブルまたは無線を介して接続され、各種情報の通信を行なうものである。
【0032】
フレーム側基準点位置情報検出部26は、フレーム側基準点を、検査対象物上に予め定められた点を検査対象物側基準点とする全体座標系におけるX方向およびY方向に沿った2次元位置情報であるフレーム側基準点位置情報として検出するものである。
ここで、
図6に示すように、検査対象物側基準点P0は、検査対象物の表面、すなわち、建物外面部に設けられた予め定められた基準点とすることが可能であり、その位置は任意に定められる。
検査対象物側基準点P0は、例えば、記号やマークが付されたシールを建物外面部の適宜箇所に貼り付けて構成してもよく、点灯あるいは点滅する光源を建物外面部の適宜箇所に取り付けて構成してもよい。あるいは、反射シートや反射プリズムを建物外面部の適宜箇所に取り付けて構成してもよい。
本実施の形態では、
図6に示すように、フレーム側基準位置情報検出部26は、検査対象物から離間した地上に設置されたトータルステーション26Aで構成されている。
トータルステーション26Aは、検査対象物側基準点P0およびフレーム側基準点(例えば基準点P1)をターゲットとしてそれらの測距および測角を行い、検査対象物側基準点P0を通る互いに直交するX軸、Y軸によって規定される全体座標系におけるフレーム側基準点(例えば基準点P1)の2次元位置情報をフレーム側基準点位置情報として検出する。
すなわち、
図5(A)に示すように、フレーム側基準点位置情報(フレーム側基準点(例えば基準点P1)の2次元位置情報)は、検査対象物側基準点P0を原点とし、検査対象物側基準点P0を通る互いに直交するX軸、Y軸によって規定される全体座標系における2次元位置情報であり、X軸、Y軸の座標値(X+x、Y+y)で示される。ただし、x、yは局所座標系におけるフレーム側基準点(例えば基準点P1)のx軸、y軸の座標値を示しており、x=0、y=0である。
本実施の形態では、全体座標系におけるX軸およびY軸は、前述した局所座標系におけるx軸およびy軸とそれぞれ平行しており、したがって、全体座標系におけるX軸およびY軸は、フレーム12のx方向(水平方向)およびy方向(鉛直方向)と平行している。
なお、局所座標系におけるx軸およびy軸は、フレーム12のx方向およびy方向と平行していればよく、直交せず、任意の角度で交差すればよい。
【0033】
第2コンピュータ30は、フレーム12から離間した場所、例えば、作業員が所在する地上に設置されている。
第2コンピュータ30は、例えば、ノートブック型コンピュータ、タブレット端末等で構成されている。
第2コンピュータ30は、CPU、ROM、RAM、キーボード、マウス、ディスプレイ装置、入出力インターフェースなどを有している。
ROMは例えばフラッシュメモリなどで構成され、制御プログラムなどを格納し、RAMはワーキングエリアを提供するものである。
CPUが制御プログラムを実行することで、位置情報変換部30A、検査対象物評価情報生成部30B、表示制御部30C、検出部制御部30D、移動制御部30E、通信部30Gが実現される。
また、ROMあるいはRAMは記憶部30Hとして機能する。
また、キーボード、マウス、及びタッチパネルは、操作部30Fとして機能し、フレーム12に設けられた駆動制御部36に対する遠隔制御の操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ装置は、画像を表示するものであり、例えば、液晶表示装置、EL表示装置などで構成される。ディスプレイ装置は表示部30Iとして機能する。
【0034】
位置情報変換部30Aは、ローカル位置情報とフレーム側基準点位置情報とに基づいて、検査対象物の検出箇所の位置情報であるローカル位置情報を、全体座標系における2次元位置情報であるグローバル位置情報に変換する。
したがって、フレーム支持部24によってフレーム12がX方向、Y方向に移動しても、検査対象物の検出箇所の位置情報を、全体座標系における2次元位置情報であるグローバル位置情報として得ることができる。
ここで、ローカル位置情報、フレーム側基準点位置情報、グローバル位置情報について説明しておく。
すなわち、
図5(B)に示す局所座標系におけるローカル位置情報は、x軸、y軸の座標値(x,y)で示される2次元位置情報である。
また、
図5(A)に示すように、フレーム側基準点位置情報(フレーム側基準点(例えば基準点P1)の2次元位置情報)は、検査対象物側基準点P0を原点とし、検査対象物側基準点P0を通る互いに直交するX軸、Y軸によって規定される全体座標系における2次元位置情報であり、X軸、Y軸の座標値(X+x、Y+y)(ただしx=y=0)で示される。
図5(A)に示すように、全体座標系におけるグローバル位置情報は、ローカル位置情報(2次元位置情報(x,y))と、フレーム側基準点位置情報(2次元位置情報(X,Y)とに基づいて生成される2次元位置情報(X+x,Y+y)である。
【0035】
検査対象物評価情報生成部30Bは、評価部28Aから供給される個別評価情報と、位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成する。
本実施の形態では、検査対象物評価情報生成部30Bは、個別評価情報とグローバル位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成する。
したがって、グローバル位置情報に基づいて検査対象物の検出箇所を特定して個別評価情報を確認できるため、検査対象物が広い面積であり、検査対象物の検出箇所が多数にわたって存在する場合であっても、検査対象物の検出箇所を正確に特定して検査対象物の状態を的確に評価する上で有利となる。
なお、本実施の形態では、検査対象物評価情報生成部30Bは第2コンピュータ30に含まれているが、第1コンピュータ28に含まれていてもよい。
または、第1コンピュータ28は、評価部28A、ローカル位置情報検出部28B、及び通信部28Cのほか、位置情報検出部30A、検出対象物評価情報生成部30B、検出部制御部30D、移動制御部30F、及び記憶部30Hを有し、第2コンピュータ30は、操作部30F、通信部30G、及び表示部30Iを有してもよい。この場合、第2コンピュータ30により、第1コンピュータ28を遠隔操作することができる。
【0036】
記憶部30Hは、第1撮像部20で撮像された画像情報と検査対象物評価情報とを関連付けて記憶するものである。
表示部30Iは、画像を表示するものである。
表示制御部30Cは、表示部30Iに各種情報を表示させるものである。
表示制御部30Cは、画像情報に基づいて建物外面部の画像を表示部30Iに表示させると共に、検査対象物評価情報に含まれる位置情報によって特定される建物外面部の画像上の箇所に、検査対象物評価情報に含まれ位置情報に関連付けられた個別評価情報を表示させる。すなわち、表示部30Iに表示された建物外面部の画像に重ね合わせて、個別評価情報を表示させる。
このような表示は、例えば記憶部30Hに記憶されている建物外面の画像情報上に、個別評価情報に対応するアイコンなどを直接描画することによって行う。表示後は、個別評価情報が書き込まれた画像を、記憶部30Hに保存してもよい。
表示部30Iによる個別評価情報の表示は、例えば個別評価情報をその評価内容に対応付けられた複数種類の色を呈するマークで表示することによって行う。より詳細には、例えば外装材4の浮きが有る箇所は赤色のマークで、外装材4の浮きが無い箇所は青色のマークで表示するなどである。
また、外装材4の浮きの度合いが大きいほど(背面の空洞が深いほど)赤色の濃度を濃くし、外装材4の浮きの度合いが小さいほど(背面の空洞が浅いほど)赤色の濃度を薄くしたマークで表示するようにしてもよい。
なお、評価結果の表示は色の濃淡や種類によって限定されるものではなく、建物外面部の状態の検出結果を示す生データや建物外面部の状態の検出結果を表す数値や、建物外面部の状態の検出結果を表す情報など従来公知の様々な方法を選択してもよい。
【0037】
また、表示部30Iには、第2撮像部22で撮像された画像情報と、前述した個別評価情報が建物外面部の画像に重ね合わせて表示された画像との2種類の画像を同時に、あるいは、それら2種類の画像を、操作部30Fの操作に応じて画面を切り替えて選択的に表示してもよい。
また、表示部30Iとは別の表示部(ディスプレイ)を第2コンピュータ30に接続し、この別の表示部に第2撮像部22で撮像された画像情報を表示してもよい。
第2撮像部22で撮像された画像情報は、検出部16と建物外面部の状況を示しているため、このような画像情報を視認することで、建物外面部に対するフレーム12の位置や姿勢が正常であるかどうか、あるいは、検出部16の移動が正常になされているかどうかといったことを常時監視することができる。
【0038】
移動制御部30Eは、検出部16の移動に関する第1制御指令を生成し、通信部30G及び第1コンピュータ28を介して駆動制御部36に供給するものである。
検出部制御部30Dは、検出部16による検出動作の実行を指示する第2制御指令を生成し、通信部30G及び第1コンピュータ28を介して検出部16に供給するものである。
本実施の形態では、フレーム12の内側の稼動範囲全域において、x方向およびy方向に所定の間隔をおいた予め定められた複数の箇所においてそれぞれ検出部16による検出がなされるように、第1、第2制御指令が生成される。
したがって、
図6に示すように、Y方向の予め定められた位置において、X方向に沿って検出部16を一定距離ΔX移動させる毎に検出部16の検出を実行し、X方向の全長において検出がなされたならば、Y方向に沿って検出部16を一定距離ΔY移動させ、再び、X方向に沿って検出部16を一定距離ΔX移動させる毎に検出部16の検出を実行する。
【0039】
このような動作をY方向の全長にわたって繰り返して行なうことで、建物外面部の全域において、検出部16による検出動作が実行される。
上記一定距離ΔX、ΔYの寸法は、例えばフレーム12の大きさに応じて設定するなど任意である。
なお、フレーム12内で検出部16が移動可能な領域の全域において、検出部16が検出する建物外面部の検出箇所の数の上限値は、検出部16が移動可能な領域のX方向およびY方向の寸法と、上記のΔX、ΔYとに基づいて決定される。
検出部制御部30Dは、検出部16が検出を行なう毎に、検出部16で検出した検出箇所の数を計数し、検出箇所の数が上限値に到達したならば、フレーム12内での検出動作が上限に到達したことを判定し、上限値に到達した場合には、表示制御部30Cを介して表示部30Iにその旨を表示させる。
【0040】
操作部30Fは、第2コンピュータ30に対する操作を行なう他、移動制御部30Eおよび検出部制御部30Dによる制御動作の開始、停止などを操作するものである。
通信部30Gは、各部30A~30Iと接続されると共に、第1コンピュータ28と通信部30Gとケーブルまたは無線を介して接続され、各種情報の通信を行なうものである。
【0041】
次に、
図7のフローチャートを参照して状態評価装置10の動作について説明する。
まず、
図6に示すように、評価対象となる建物躯体2に設けられた外装材4の表面に検査対象物側基準点P0を設置する(ステップS10)。
次に、建物躯体2の屋上にフレーム支持部24を設置すると共に、フレーム支持部24からワイヤ2412を介して検出部16、移動機構14、第1コンピュータ28が設けられたフレーム12を、建物躯体2の建物外面部の外側に設置する(ステップ12)。ここでは、フレーム支持部24によって、フレーム12の前記単一の平面が建物外面部の鉛直面(表面)と平行し、フレーム12のx方向が水平方向を向き、フレーム12のy方向が鉛直方向を向くようにフレーム12を設置する。
また、建物躯体2の近傍の地上の箇所にトータルステーション26Aを設置する(ステップS14)。この際、トータルステーション26Aは、検査対象物側基準点P0の測距および測角と、フレーム12が移動可能な範囲においてフレーム側基準点(例えば基準点P1)の測距および測角とが可能となる箇所に設置される。
なお、フレーム12と第1コンピュータ28との間、第1コンピュータ28と第2コンピュータ30との間、トータルステーション26Aと第2コンピュータ30との間は、それぞれケーブルまたは無線によって接続されている。
次いで、作業者は、トータルステーション26Aを用いて、検査対象物側基準点P0の測距および測角、フレーム側基準点(例えば基準点P1)の測距及び測角を行なう。これにより、トータルステーション26Aによって、全体座標系におけるフレーム側基準点の2次元位置情報がフレーム側基準点位置情報として検出され、第2コンピュータ30の位置情報変換部30Aへ供給される(ステップS16)。
次いで、作業者は、第2コンピュータ30の操作部30Fを操作することにより、検出部制御部30Dによる検出部16の検出動作の制御を開始させる(ステップS18)。
【0042】
次に、検出部16の動作により、外装材4の表面が打撃され打音および振動の一以上が検出され、その検出結果(検出信号)が評価部28Aに供給される(ステップS20)。
また、検出部16により検出を行うと同時に、打音および振動の一以上の検出に合わせて、第1撮像部20で画像の撮像が行われる(ステップS22)。
【0043】
評価部28Aは、検出結果に基づいて外装材4の損傷、例えば浮きの有無を判定すると共に、外装材背面に形成された浮きの深さに基づいて浮きの程度を判定する。
すなわち、評価部28Aは、建物外面部の状態を評価する個別評価情報としての外装材4の損傷の有無および損傷の程度を生成する(ステップS24)。
【0044】
ローカル位置情報検出部28Bは、検出部16による建物外面部の状態の検出がなされた時刻に対応して第1撮像部20で撮像された画像情報に基づいて、複数の基準点P1、P2、P3、P4の位置に対する指標部18の相対的な位置を示すローカル位置情報を生成する(ステップS26)。
次に、位置情報変換部30Aは、ローカル位置情報検出部28Bで検出されたローカル位置情報と、トータルステーション26A(フレーム側基準点位置情報検出部26)で検出されたフレーム側基準点位置情報とに基づいて、検査対象物の検出箇所の位置情報であるローカル位置情報を、全体座標系における2次元位置情報であるグローバル位置情報に変換する(ステップS28)。
【0045】
次に、検査対象物評価情報生成部30Bは、個別評価情報と、検査対象物の検出箇所の位置情報(グローバル位置情報)とを関連付けた検査対象物評価情報を生成し、(ステップS30)、生成された検査対象物評価情報は記憶部30Hに格納される(ステップS32)。
一方、検出部制御部30Dは、検出部16で検出した検出箇所の数が予め定められた上限値に到達したか否かを判定する(ステップS34)。
ステップS34の判定が否定であれば、移動制御部30Eは検出部16を次の検出箇所へ移動させ(ステップS36)、ステップS18に戻り同様の検出動作を繰り返す。
ステップS34の判定が肯定であれば、検出部制御部30Dは、フレーム12が建物外面部の全面を移動したか否かを判定する(ステップS38)。すなわち、検出部16によって、建物外面部全域を検出したかを判断する。
ステップS38の判定が否定であれば、表示制御部30Cを介して表示部30Iにフレーム12の移動を行なう旨を表示する(ステップS40)。
これに応じて作業者が建物躯体2の屋上でフレーム移動操作部2418を制御し、フレーム12をX方向あるいはY方向に所定距離移動させる(ステップS42)。
【0046】
このようなフレーム12の移動操作は、
図6に示すように、X方向に所定距離ΔXずつ移動させ、フレーム12が建物外面部の端に到達したならば、Y方向に所定距離ΔY移動させ、次いで、これまでとは反対方向のX方向に所定距離ΔXずつ移動させることでなされる。
フレーム12のX方向の移動距離は、例えば、ガイドレール2402に対するキャリッジ2404あるいは架台2406の移動距離を、測長センサを用いて検出すればよい。
また、フレーム12のY方向の移動距離は、例えば、ウィンチ2408のドラム2420から繰り出されるワイヤ2412の長さを、エンコーダを用いて検出すればよい。
フレーム12の移動が終了したならば、作業者はステップS18に戻り操作部30Fを操作し、これにより同様の検出動作が繰り返して行なわれる。
ステップS38の判定が肯定であれば、作業者は操作部30Fを操作して状態評価装置10による検出動作を終了させ、一連の検出作業を終了する。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態によれば、フレーム12に設けた移動機構14を用いて検出部16を互いに直交するx方向、y方向に移動させつつ、検査対象物の状態を検出すると共に、検査対象物の検出箇所の位置情報を、局所座標系における2次元位置情報であるローカル位置情報として検出し、個別情報と位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成することができる。
したがって、従来のように検査対象物の状態を評価するために足場やゴンドラの設置を行なう必要がなく、設備コストの低減を図れ、工期の短縮化を図る上で有利となる。
特に、大型の高層ビルや倉庫あるいはスタジアムなど検査対象物の面積が広大な場合は、足場の組み立て、解体、あるいは、ゴンドラの設置などに多大な手間が掛かり、設備コストが膨大なものとなり、また、工期の長期化が避けられないのに対して、本実施の形態によれば、足場やゴンドラなどの設備が不要となることから、検査対象物の状態の評価を低コストでかつ効率的に行なう上で有利となる。
また、高所において作業員が建物の状態を診断しなくてよいため、作業員の墜落や転落の発生を防ぎ、建物の状態の診断を安全に行うことが可能である。
【0048】
また、本実施の形態によれば、フレーム側基準点(例えば基準点P1)を、検査対象物上に予め定められた点を検査対象物側基準点P0とする全体座標系における2次元位置情報であるフレーム側基準点位置情報として検出し、ローカル位置情報とフレーム側基準点位置情報とに基づいて、検査対象物の位置情報であるローカル位置情報を、全体座標系における2次元位置情報であるグローバル位置情報に変換し、個別情報とグローバル位置情報とを関連付けることで、検査対象物評価情報を生成するようにした。
したがって、検査対象物の検出箇所の位置情報を、検査対象物上に予め定められた検査対象物側基準点P0とする全体座標系における2次元位置情報であるグローバル位置情報として求めることができるため、面積が広大な検査対象物の検出箇所の位置情報を正確に特定する上で有利となる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、フレーム支持部24を、フレーム12をX方向に沿って移動させるX方向移動部24Aと、フレーム12をY方向に沿って移動させるY方向移動部24Bとを備えるものとした。
したがって、フレーム12をX方向、Y方向に的確に移動させることができるため、面積が広大な検査対象物の個別情報を効率的に得る上で有利となる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、検出部16に一体的に設けられた指標部18と、フレーム12の表面の互いに離れた少なくとも2箇所に設定された複数の基準点P1~P4とを含む範囲を第1撮像部20により撮像して画像情報を生成し、検査対象物の状態の検出がなされた時刻に撮像された画像情報に基づいて、複数の基準点P1~P4の位置に対する指標部18の相対的な位置を示す位置情報をローカル位置情報として生成するようにした。
したがって、個別情報と位置情報とを関連付けた評価を短時間で的確に行いつつ、構成の簡素化を図る上で有利となる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、撮像トリガ信号が第1撮像部20に供給され、第1撮像部20が、撮像を行い、画像情報を生成するようにした。
また、検出部16は、検査対象物を打撃した際に生じる物理量を検出するようにした。
したがって、一定間隔で常時撮像を行うので、個別情報に対応する画像を特定しやすくする上で有利となる。
【0052】
また、本実施の形態によれば、評価部28Aは、検出部16によって検出された検査対象物の状態を示す個別測定情報に基づいて検査対象物の状態を評価して個別評価情報を生成した。
したがって、個別測定情報を評価した個別評価情報に基づいて検査対象物の状態を的確に評価する上で有利となる。
【0053】
また、本実施の形態によれば、検査対象物を、建物躯体2および建物躯体2に接着された外装材4とし、評価部28Aにより外装材4の損傷の有無を評価するようにした。
したがって、建物躯体2に接着された外装材4の損傷の有無を評価できるので、外装材4の損傷の有無を効率的よく評価する上で有利となる。
【0054】
なお、実施の形態では、検査対象物が建物であり、タイルなどの外装材4の浮きや剥がれなどの接着状態を評価する場合について説明したが、本発明は、タイル、モルタル、レンガ、ブロック、外壁パネル、ガラスなどの外装材4が設けられていない場合には、建物外面に加え、この建物外面近くの内部の状態を評価する場合に広く適用可能である。また、外装材4が設けられている場合には、外装材4の表面に加え、外装材4の表面の内側の外装材4部分や、外装材4の内側の建物躯体2の表面や表面近くの内部を評価する場合に広く適用可能である。
さらに、本発明は、建物の室内の壁面、室内のコンクリート躯体、玄関、廊下、床、天井などを評価する場合に広く適用可能である。
また、本発明は、検査対象物が建物に限定されず、橋梁、ダム、トンネル、道路、通路などの構造物などを評価する場合に広く適用可能である。
【0055】
また、実施の形態では、建物外面部の状態の検出結果に基づいて生成される評価結果を示す個別評価情報と、検査対象物の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成し、また、検査対象物評価情報に含まれる位置情報によって特定される建物外面の画像上の箇所に、検査対象物評価情報に含まれ位置情報に関連付けられた個別評価情報を表示部30Iに表示させる場合について説明した。この場合、個別評価情報は本発明の個別情報に相当する。
しかしながら、個別評価情報に代えて、建物外面部の状態の検出結果を示す個別測定情報と、検査対象物の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成し、また、検査対象物評価情報に含まれる位置情報によって特定される建物外面の画像上の箇所に、検査対象物評価情報に含まれ位置情報に関連付けられた個別測定情報を表示部30Iに表示させるようにしてもよい。この場合、個別測定情報は本発明の個別情報に相当する。
【0056】
例えば、建物外面部の状態として温度を検出する場合、温度の測定値(生データ)を個別測定情報として扱い、温度の測定値(個別測定情報)と検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成し、検査対象物評価情報に含まれる位置情報によって特定される建物外面の画像上の箇所に、検査対象物評価情報に含まれ位置情報に関連付けられた温度の測定値(個別測定情報)を、表示部30Iに表示させるようにしてもよい。
このようにすると、検出部16によって検出された建物外面部の状態を示す個別測定情報そのものを評価する上で有利となる。
【0057】
また、温度の測定値(個別測定情報)と検査対象物の検出箇所の位置を示す位置情報とを関連付けた検査対象物評価情報を生成したのち、検査対象物評価情報に含まれる個別測定情報に基づいて評価を行い、その評価結果を個別評価情報として生成し、この個別評価情報を検査対象物評価情報に含まれる位置情報と関連付けるようにしてもよい。この場合、検査対象物評価情報に含まれる位置情報によって特定される建物外面の画像上の箇所に、位置情報に関連付けられた個別評価情報を、表示部30Iに表示させるようにしてもよい。
このようにすると、個別測定情報を評価した個別評価情報に基づいて建物外面部の状態を的確に評価する上で有利となる。
【0058】
また、本実施の形態では、検査対象物の検出箇所の位置情報を検出するため、検出部16に一体的に設けた指標部18と、フレーム12に設定された複数の基準点P1~P4と、それら指標部18および基準点P1~P4を撮像する第1撮像部20とを設け、ローカル位置情報検出部16が、検査対象物の状態の検出がなされた時刻に撮像された画像情報に基づいて、複数の基準点P1~P4の位置に対する指標部18の相対的な位置を示す位置情報をローカル位置情報(検査対象物の検出箇所の位置情報)として生成するようにした場合について説明した。
しかしながら、ローカル位置情報検出部16は、検査対象物の検出箇所の位置情報をローカル位置情報として検出できればよく、その構成として従来公知の様々なものが採用可能である。
例えば、以下のような構成を用いても良い。
移動機構14を構成するx方向移動部32の第1モータ3206、y方向移動部34の第2モータ3410の回転量を検出するエンコーダを設ける。
それらエンコーダで検出された回転量に基づいて、予め定められた基準点P1~P4に対する検出部16のx方向およびy方向に沿った相対的な位置を検出し、その検出部16の位置をローカル位置情報(検査対象物の検出箇所の位置情報)として生成する。
したがって、ローカル位置情報検出部16は、エンコーダ、グラススケール、測長センサ、レーザ変位計、及び標高センサの一以上であってもよく、ローカル位置情報検出部16によるローカル位置情報の検出は、検査対象物の状態の検出がなされた時刻における検出部16の位置情報をローカル位置情報として生成することでなされるようにしてもよい。
このようにすると、ローカル位置情報の検出を的確に行いつつ構成の簡素化を図る上で有利となる。
【0059】
また、本実施の形態では、フレーム側基準点を、検査対象物上に予め定められた点を検査対象物側基準点P0とする全体座標系における2次元位置情報であるフレーム側基準点位置情報として検出するフレーム側基準点位置情報検出部26を、トータルステーション26Aで構成した場合について説明した。
しかしながら、フレーム側基準点位置情報検出部26は、全体座標系におけるフレーム側基準点のフレーム側基準点位置情報を検出できればよく、その構成として従来公知の様々なものが採用可能である。
例えば、フレーム支持部24のキャリッジ2404のガイドレール2402に沿った位置を測長センサによって検出し、検出結果に基づいてフレーム側基準点(例えば基準点P1)のX方向の位置を検出すると共に、ウィンチ2408のドラム2420から繰り出されるワイヤ2412の長さをエンコーダで検出し、検出結果に基づいてフレーム側基準点のY方向の位置を検出し、それらX方向、Y方向の位置に基づいて全体座標系におけるフレーム側基準点(例えば基準点P1)のフレーム側基準点位置情報を検出してもよい。
あるいは、レーザースキャナーやレーザー変位計によりフレーム側基準点(例えば基準点P1)のX方向、Y方向の位置を検出し、それらX方向、Y方向の位置に基づいて全体座標系におけるフレーム側基準点のフレーム側基準点位置情報を検出してもよい。
あるいは、従来公知のSLAM(Simultaneous Localization And Mapping)とよばれる技術を用い、第1撮像部20(あるいは第2撮像部22)で撮像した建物外面部の画像情報に基づいてX方向、Y方向の自己位置の推定を行うことで全体座標系におけるフレーム側基準点(例えば基準点P1)のフレーム側基準点位置情報を検出してもよい。
【0060】
あるいは、従来公知の視覚慣性オドメトリー(VIO;Visual inertial odometry)とよばれる技術を用い、第1撮像部20(あるいは第2撮像部22)で撮像した建物外面部の画像情報に基づいてX方向、Y方向の自己位置の推定を行うことで、全体座標系におけるフレーム側基準点(例えば基準点P1)のフレーム側基準点位置情報を検出してもよい。なお、この場合、フレーム12の位置ずれを補正するため、壁面に一定のパターンのロープをたらし、該ロープの画像情報を利用することで、フレーム12の位置情報を補正することができる。
あるいは、気圧の変化により標高を測定する標高センサを用いて、全体座標系におけるフレーム側基準点のフレーム側基準点位置情報を検出してもよい。
あるいは、GNSS(Global navigation Satelite System)によりフレーム側基準点(例えば基準点P1)のX方向、Y方向の位置を検出し、それらX方向、Y方向の位置に基づいて全体座標系におけるフレーム側基準点のフレーム側基準点位置情報を検出してもよい。
さらには、上述したフレーム側基準点位置情報検出部26を複数組み合わせて、フレーム側基準点位置情報を検出してもよい。
【0061】
本実施の形態では、状態評価装置10は、建物外面部の鉛直面において、外装材4の状態の評価結果と、建物外面部の位置(検査対象物の検出箇所の位置)を示す位置情報とを関連付けて評価する形態について説明したが、適宜建物外面部または構造物の水平面において、外装材4の状態の評価結果と、建物外面部の位置(検査対象物の検出箇所の位置)を示す位置情報とを関連付けて評価することができる。この場合、フレーム12の平面が、水平面と平行するように、フレーム支持部がフレーム12を支持し、フレーム12を移動させればよい。
【0062】
また、本実施の形態では、フレーム12の内側の稼動範囲全域において、検出部16を移動して検出部16による検出を行ったが、これに限られない。例えば、
図8(A)に示すように、フレーム12に、移動機構14としてロボットアームが用いられる場合、フレーム12の内側だけでなく、外側においても移動体3412を任意に移動させて、移動体3412に含まれる検出部16による検出を行ってもよい。または、
図8(B)に示すように、フレーム12が閉曲線でない場合は、フレーム12の外側において移動体3412を任意に移動させて、移動体3412に含まれる検出部による検出を行ってもよい。
【0063】
(第2の実施の形態)
次に、
図9~
図12を参照して第2の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の部分、部材については第1の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態の変形例であり、状態評価装置のx方向およびy方向への移動機構の構成をより具体的に説明した図である。
図9(A)~(C)に示すように、第1の実施の形態と同様に、フレーム12は、x方向に間隔をおいてy方向に延在する一対の縦部1202と、y方向に間隔をおいてx方向に延在し一対の縦部1202の両端を接続する一対の横部1204とを有し、矩形枠状を呈している。
なお、図中、符号1220は、フレーム12の4つの角部に設けられた台座を示し、台座1220上に複数の基準点P1~P4がそれぞれ設けられている。
【0064】
移動機構14は、第1の実施の形態と同様に、x方向移動部38と、y方向移動部40と、駆動制御部36(
図1)とを含んで構成されている。
x方向移動部38は、x方向に延在し一対の横部1204の一方に設けられたx方向アクチュエータ42を含んで構成されている。
x方向アクチュエータ42は、直線状に延在するケース4202と、x方向に移動可能に設けられたx方向テーブル4204と、ケース4202の延在方向の一端に設けられたx方向モータ4206とを備えている。
x方向アクチュエータ42は、一方の横部1204の建物外面部と対向する前面1204Aに取着されている。
ケース4202内部にはx方向モータ4206の回転をx方向テーブル4204の直線移動に変換する不図示のベルトプーリ機構やボールねじ機構などが組み込まれており、x方向モータ4206の正逆回転によりx方向テーブル4204がx方向に往復直線移動する。
このようなx方向アクチュエータ42として、一軸アクチュエータなど従来公知の様々な市販品が使用可能である。
【0065】
y方向移動部40は、y方向に延在するy方向アクチュエータ44を含んで構成されている。
y方向アクチュエータ44は、直線状に延在するケース4402と、y方向に移動可能に設けられたy方向テーブル4404と、ケース4402の延在方向の一端に設けられたy方向モータ4406とを備えている。
y方向アクチュエータ44は、ケース4402の延在方向の一端がx方向テーブル4204に取着されその延在方向の他端が一対の横部1204の他方に移動可能に配置され、検出部16はy方向テーブル4404に支持されている。
また、y方向アクチュエータ44の延在方向の他端に、一対の横部1204の他方に転動可能に接触する転動輪4408と、一対の横部1204の他方にx方向に移動可能に結合しかつ転動輪4408が一対の横部1204の他方から離れる方向への移動を阻止する係止爪4410が設けられている。
係止爪4410は、横部1204の他方にx方向に沿って延在形成された係止溝1210に係止し、かつ、係止溝1210に沿って移動可能に構成されている。
【0066】
したがって、x方向アクチュエータ42のx方向モータ4206の正逆転によりx方向テーブル4204を介してy方向アクチュエータ44がx方向に往復移動される。
また、y方向アクチュエータ44のy方向モータ4406の正逆転により検出部16を支持するy方向テーブル4404がy方向に往復移動される。
すなわち、各モータ4206、4406の正逆回転により、検出部16は、フレーム1212の内側の領域において前記単一の平面に沿って移動される。
【0067】
なお、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、フレーム12の建物外面部に対向する箇所に複数のキャスター1206を設けてもよいことは無論である。
【0068】
図10、
図12に示すように、y方向テーブル4404に検査対象物側に向かうブラケット46が設けられている。
検出部16は、筐体48と、4つの転動輪50と、結合部52と、弾性部材54とを含んで構成されている。
図10~
図12に示すように、筐体48は、上下に延在する細長状を呈し、矩形板状の底壁4802と、底壁4802の四辺から起立する4つの側壁4804、4806,4808,4810と、4つの側壁4804、4806,4808,4810の上部を接続する矩形板状の上壁4812とを備えている。
底壁4802の中央には不図示の開口が形成され、筐体48内部に支持された打撃ハンマー1602の先端が開口から突出、没入されるように構成されている。
図10乃至
図12に示すように、4つの側壁4804、4806,4808,4810それぞれにマイクフォンカバー59A、59B、59C、59Dが設けられている。また、マイクロフォンカバー59A、59B、59C、59Dには、図示しないが検出部に含まれるマイクロフォンが取着されている。
4つの転動輪50は、対向する一対の側壁4804,4806にそれぞれ設けられた取り付け片4820を介して筐体48に支持されている。
図11に示すように、4つの転動輪50は、360°旋回可能な自在キャスターであり、4つの転動輪50が建物外面部5(検査対象物)に当接した状態で、筐体48の底壁4802と建物外面部5(検査対象物)との間に形成される間隔L(
図11)が(言い換えると、不図示の打撃ハンマーの先端と建物外面部5(検査対象物)との間に形成される間隔が)、検出部16による検出動作を適切に行なうに足る値となるように支持されている。
なお、転動輪50の数は複数であればよく、また、転動輪50として移動方向が規制されないボールキャスターを用いても良い。
【0069】
図10、
図12に示すように、結合部52は、ブラケット46と一体にy方向に移動可能かつ建物外面部5(検査対象物)に離間接近する方向に(言い換えるとx方向およびy方向と直交する方向に)移動可能でさらにブラケット46に対してx方向に移動不能に結合する。
本実施の形態では、結合部52は、レール5202と、スライダ5204と、取り付け板5206とを含んで構成されている。
レール5202は、y方向テーブル4404と反対側のブラケット46の面に取着され、建物外面部5(検査対象物)に離間接近する方向に延在している。
スライダ5204は、レール5202の延在方向に(建物外面部5(検査対象物)に離間接近する方向に)移動可能に、かつ、x方向に移動不能となるようにレール5202に結合されている。
取り付け板5206は、スライダ5204に4つのスペーサ5208を介してねじ結合されると共に、4つのスペーサ5210を介して検出部16の側壁4808にねじ結合されている。
弾性部材54は、4つの転動輪50を建物外面部5(検査対象物)上に接触する方向に検出部16を付勢するものである。
本実施の形態では、弾性部材54は、取り付け板5206から起立する起立部5206Aと、ブラケット46から突設された突設部4602との間に張設された引張コイルスプリングによって構成されている。
なお、4つの転動輪50の検査対象物上に接触する方向における限界位置は、
図10に示すように、レール5202に設けられたストッパ5220がスライダ5204に当接することで決定される。
【0070】
第2の実施の形態によれば、x方向アクチュエータ42およびy方向アクチュエータ44を利用することで移動機構14の部品点数の削減を図れるため、状態評価装置の構成の簡素化、軽量化を図る上で有利となる。
また、係止爪4410により転動輪4408が横部1204上で安定して転動するため、y方向アクチュエータ44の動作を確実に行なう上で有利となる。
また、建物外面部5(検査対象物)に形成された段差や凹凸に各転動輪50が乗り上げても、ブラケット46(y方向テーブル4404)に対して、結合部52及び弾性部材54により検出部16が変位することで段差や凹凸が吸収される。
そのため、検出部16と建物外面部5(検査対象物)との間隔Lを適切な値に保持でき、検出部16の検出動作を確実に行なう上で有利となる。
【0071】
(第3の実施の形態)
次に
図13~
図15を参照して第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態では、第1、第2の実施の形態で説明した検出部16に用いることが可能な構成例について説明する。
すなわち、検出部16は、検査対象物を打撃した際に生じる物理量、特に外装材4を打撃した際に発生する打撃力、打音および振動の一以上の物理量を個別測定情報として検出するものであり、第3の実施の形態では、打音を個別測定情報として検出する場合について説明する。
【0072】
図13から
図15に示すように、検出部16は、筐体48と、3個の転動輪50A、50B、50Cと、打撃部56と、第1マイク58Aと、第2マイク58Bと、第3マイク58Cと、第4マイク58Dと、打撃ハンマー振動センサ60とを含んで構成されている。
筐体48は、矩形状の底壁4802と、底壁4802の四辺から起立する4つの側壁4804、4806、4808、4810と、4つの側壁4804、4806、4808、4810の上部を接続する上壁4812とを備えている。
底壁4802には打撃ハンマー1602が出没する開口4830が設けられている。
3個の転動輪50A、50B、50Cのうち、2個の転動輪50A、50Bは、底壁4802の対向する一対の端面に回転可能に取着され、同軸上に配置されている。
残りの1個の転動輪50Cは、底壁4802の下部に金具51を介して回転可能に取着され、平面視したときに転動輪50Cは、2個の転動輪50A、50Bの軸線と平行する軸線上に配置されている。
そして、3個の転動輪50A、50B、50Cは、それら3個の転動輪50A、50B、50Cの外周面が外装材4の表面に当接された状態で底壁4802の下面と外装材4の表面とが一定の間隔をおいて互いに平行するように設けられている。
なお、転動輪50A~50Cとして、第2の実施の形態のように、360°旋回可能な自在キャスター、あるいは、ボールキャスターを用いると、検出部16の移動を円滑に行なう上で有利となる。
【0073】
図14に示すように、打撃部56は、ソレノイド62と、打撃ハンマー1602とを備えている。
ソレノイド62は、筐体48内の底壁4802上に設けられた台4840上に設置されている。
ソレノイド62は、コイルを備えるソレノイド本体6202と、3個の転動輪50A、50B、50Cが外装材4の表面に当接された状態で外装材4の表面と直交する方向に移動可能に設けられたプランジャ6204とを備えている。
プランジャ6204は、コイルに駆動電流が供給されることでソレノイド本体6202から突出する突出位置に移動され、駆動電流の供給が停止されることでソレノイド本体6202に没入する没入位置に移動されるように構成されている。
【0074】
図14、
図15に示すように、打撃ハンマー1602は、プランジャ6204の下端に設けられ、プランジャ6204の移動により底壁4802の開口4830を介して出没する。
3個の転動輪50A、50B、50Cの外周面が外装材4の表面に当接された状態で、プランジャ6204が突出位置に移動することで打撃ハンマー1602が外装材4の表面を打撃し、プランジャ6204が没入位置に移動することで打撃ハンマー1602が外装材4の表面から離間する。
【0075】
第1マイク58A、第2マイク58B、第3マイク58C及び第4マイク58Dは、打撃ハンマー1602が外装材4の表面を打撃したときに発生する打音を収音して打音に対応する検出信号を生成するもので、打撃ハンマー1602による外装材4への打撃部P1(
図14参照)を中心にして当該中心から等距離(例えばタイル一枚分に相当する距離:53mm)離して対称に配置されている。具体的には、打撃部P1を中心とする半径53mmの円周上に互いに90°の角度をおいて点対称に配置されている。
なお、本実施の形態では、打撃部P1から各マイク58A~58Dまでの距離を53mmとした場合について説明するが、これに限らず、100mm以内であればよい。
【0076】
このように配置された第1マイク58A、第2マイク58B、第3マイク58C及び第4マイク58Dのうち、第1マイク58Aは、
図13、
図15に示すように、筐体48を構成する前面側の側壁4804の外面下部に防振ゴム64Aを介して取着されている。
第2マイク58Bは、
図13、
図15に示すように、筐体48を構成する後面側の側壁4806の外面下部に防振ゴム64Bを介して取着されている。
第3マイク58Cは、
図14、
図15に示すように、筐体48を構成する左面側の側壁4808の外面下部に防振ゴム64Cを介して取着されている。
第4マイク58Dは、
図13、
図14、
図15に示すように、筐体48を構成する右面側の側壁4810の外面下部に防振ゴム64Dを介して取着されている。
本実施の形態では、第1マイク58A、第2マイク58B、第3マイク58C及び第4マイク58Dの4つのマイクを備える場合について説明するが、マイクの数は2つまたは6つ乃至それ以上であってもよい。
また、各マイク58A~58Dの受音面は、外装材4の検査対象面である表面に対して正対するように配置されており、外装材4の表面から各マイク58A~58Dまでの高さは5mm以内であることが望ましい。
【0077】
図14に示すように、打撃ハンマー振動センサ60は、打撃ハンマー1602に取着され、打撃ハンマー1602の外装材4への打撃によって発生する打撃ハンマー1602の振動を検出して振動に対応する検出信号を生成するものである。このような打撃ハンマー振動センサ60として圧電素子など従来公知の様々なセンサが使用可能である。
【0078】
したがって、検出部16は、検査対象物の表面を打撃ハンマー1602で打撃する打撃部56と、打撃部56を中心にして当該中心から等距離で対称に配置されかつ打撃ハンマー1602の打撃によって発生する打音を収音して打音に対応する検出信号を生成する複数のマイク58A~58Dとを備えている。
【0079】
なお、各マイク58A~58Dで生成されたそれぞれの検出信号は、評価部28A(
図1)に供給され、評価部28Aは、それぞれの検出信号の周波数、振幅、波長などの検出結果に基づいて個別評価情報を生成する。
また、打撃ハンマー振動センサ60で検出された打撃ハンマー1602の振動に対応する検出信号は、例えば、マイク58A~58Dで生成されたそれぞれの検出信号の周波数、振幅、波長などをどの時点で検出(特定)するかといった、検出のタイミングを決定するために使用される。
なお、各マイク58A~58Dの検出信号に対して増幅やフィルタリングなどの波形処理を行なうことで打音検出波形をそれぞれ生成する波形生成部を設け、評価部28Aがそれら打音検出波形の周波数、振幅、波長などの検出結果に基づいて個別評価情報を生成するなど任意である。
【0080】
第3の実施の形態によれば、検査対象物を打撃ハンマー1602で打撃した際に発生する打音を、打撃ハンマー1602の打撃点を中心にして当該中心から等距離で対象に配置した4つのマイク58A~58Dにより検出して検出信号を各マイク毎に生成し、この各マイク毎に生成されたそれぞれの検出信号を検査対象物の状態評価に用いることにより、検査対象物の評価判定を効率よく的確に行なう上で有利となる。
【符号の説明】
【0081】
2 建物躯体
4 外装材
10 状態評価装置
12 フレーム
14 移動機構
16 検出部
18 指標部
20 第1撮像部
24 フレーム支持部
24A X方向移動部
24B Y方向移動部
26 フレーム側基準点位置情報検出部
26A トータルステーション
28A 評価部
28B ローカル位置情報検出部
30A 位置情報変換部
30B 検査対象物評価情報生成部
32 x方向移動部
34 y方向移動部
42 x方向アクチュエータ
4204 x方向テーブル
44 y方向アクチュエータ
4404 y方向テーブル
4408 転動輪
4410 係止爪
46 ブラケット
50 転動輪
52 結合部
54 弾性部材
P1~P4 基準点
P0 検査対象物側基準点