(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】生理状態評価装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20220915BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20220915BHJP
A61B 7/04 20060101ALI20220915BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20220915BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20220915BHJP
A61B 5/256 20210101ALI20220915BHJP
A61B 5/291 20210101ALI20220915BHJP
A61B 5/297 20210101ALI20220915BHJP
A61B 5/01 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A61B5/16 130
A61B5/08
A61B7/04 E
A61B5/02 G
A61B5/02 H
A61B5/02 310G
A61B5/1455
A61B5/256 130
A61B5/291
A61B5/297
A61B5/01 350
(21)【出願番号】P 2018130879
(22)【出願日】2018-07-10
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】506310865
【氏名又は名称】CYBERDYNE株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山海 嘉之
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0150499(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1483065(KR,B1)
【文献】国際公開第2018/004279(WO,A1)
【文献】特表2018-504157(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0014741(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0150498(US,A1)
【文献】特表2009-528140(JP,A)
【文献】特開2005-040374(JP,A)
【文献】ASHIDA,N. et al.,Trial of Measurement of Sleep Apnea Syndrome with Sound Monitoring and SpO2 at home,2009 11th International Conference on e-Health Networking, Applications and Services (Healthcom 2009),IEEE,2009年12月,p.66-69
【文献】DAVIES,P. et al.,The relationship between body temperature, heart rate and respiratory rate in children,Emergency Medicine Journal,2009年,Vol.26,p.641-643
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/0538
A61B 5/06 - 5/398
A61B 7/00 - 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の耳介内に装着した際、外耳孔と部分的に当接するように構成された生理状態評価装置において、
前記被検者の前記外耳孔の軟骨部位を介して前記被検者の喉頭及び咽頭から発生される振動を音響信号として集音する骨伝導集音部と、
前記被検者の血管を循環する血液の脈動を光学的に検出し、当該脈動による光強度変化に基づいて脈拍数及び血中酸素飽和度をそれぞれ測定する血液状態測定部と、
前記被検者の左右の外耳孔表面の電位をそれぞれ検出する一対の導電電極を有し、当該被検者の脳波及び眼球運動を検出する生体信号検出部と、
前記骨伝導集音部による音響信号に基づいて、前記被検者の呼吸の音質、回数、一回換気量及びリズムを呼吸状態として検出する呼吸状態検出部と、
前記呼吸状態検出部により検出された呼吸状態と、前記血液状態測定部により測定された脈拍数及び血中酸素飽和度と、前記生体信号検出部により検出された脳波及び眼球運動とに基づいて、睡眠時における前記被検者の健康状態を評価する睡眠状態評価部と、
赤外線方式により前記被検者の鼓膜温度を検出する体温検出部と
を備え
、
前記睡眠状態評価部は、前記血液状態測定部により測定された脈拍数と前記体温検出部により検出された鼓膜温度との同期タイミングに基づいて、睡眠時における前記被検者の健康状態を評価する
ことを特徴とする生理状態評価装置。
【請求項2】
前記睡眠状態評価部は、前記骨伝導集音部により得られた前記音響信号のうち、前記被検者の発話音及び咳音を示す成分に基づいて、睡眠時における前記被検者の健康状態を評価する
ことを特徴とする請求項
1に記載の生理状態評価装置。
【請求項3】
前記被検者の外耳道の軟骨部位を介して振動に変換された音響信号を内耳に伝達する骨伝導放音部をさらに備え、
前記睡眠状態評価部は、前記被検者の健康状態に応じたフィードバック指示内容を、音響信号として前記骨伝導放音部に出力する
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の生理状態評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の生理状態としての睡眠状態を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明者が、被検者の生理状態としての睡眠状態(睡眠時における被検者の健康状態)を評価することの実用性について鋭意検討した結果、最も効率が良いのはイヤホン型のセンサデバイスである、との知見を得るに至った。なぜなら、耳をセンサデバイスの装着場所とすれば、被検者が睡眠中に寝返りなど動いても睡眠状態の評価に使用する生体情報を問題なく計測でき、さらに耳の中は様々な種類の生体情報が取得しやすいため、生体情報の取得が効率的であると共に睡眠状態の評価の正確性が高いことと考えられるからである。
【0003】
生体情報の計測、及び、睡眠状態の評価に関し、特許文献1から4がある。特許文献1は、測定された寝息呼吸音を解析して、睡眠状態や睡眠時における無呼吸及び低呼吸状態を判定することを開示している。特許文献2は、イヤホンに血流量や血圧等の測定するセンサを備えた音響機器を開示している。特許文献3は、被検者の呼吸運動に基づいて睡眠段階を決定したり、非呼吸運動を解析して睡眠段階を分類したりすることを開示している。特許文献4は、睡眠中の脈波または心拍または心電または体動または脳波のうち少なくとも1種類の睡眠生理データを計測して、当該データに基づいて睡眠状態をモニタリングすることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-002189号公報
【文献】特開2016-055155号公報
【文献】国際公開第2014/047310号パンフレット
【文献】特開2007-319238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者が更なる検討を鋭意行った結果、センサデバイスとしてのイヤホンのタイプは、耳介挿入タイプであることが望ましい、との知見を得るに至った。なぜなら、生体情報の取得が効率的であると共に睡眠状態の評価の正確性が高いことに加えて、被検者がデバイスを装着したまま被検者の睡眠状態を本人にストレスを与えることなく評価できると考えられるためである。
【0006】
睡眠時の無呼吸症候群や低呼吸などの睡眠障害といった睡眠状態を本願発明者が得た知見に従い評価することは、特許文献1から4を組み合わせても実現することはできない。
【0007】
具体的には、特許文献1に開示の技術では、鼻部周辺にデバイスを保持させる必要がある。特許文献2に開示の技術では、デバイスがイヤホンタイプであるが、当該デバイスは生体情報を取得するにすぎない。特許文献2は、睡眠状態の評価を開示も示唆もしていない。特許文献3に開示の技術では、マスクを装着する必要がある。特許文献4は、睡眠生理データに基づき睡眠状況を算出して提示するものの、耳介内にセンサを挿入することは開示も示唆もしていない。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、生体情報の取得が効率的であると共に睡眠状態の評価の正確性が高く、且つ、被検者の睡眠時の健康状態を本人にストレスを与えることなく評価することができる生理状態評価装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため、被検者の耳介内に装着した際に外耳孔と部分的に当接するように構成された生理状態評価装置に、被検者の外耳孔の軟骨部位を介して被検者の喉頭及び咽頭から発生される振動を音響信号として集音する骨伝導集音部と、被検者の血管を循環する血液の脈動を光学的に検出し当該脈動による光強度変化に基づいて脈拍数及び血中酸素飽和度をそれぞれ測定する血液状態測定部と、被検者の左右の外耳孔表面の電位をそれぞれ検出する一対の導電電極を有し当該被検者の脳波及び眼球運動を検出する生体信号検出部と、骨伝導集音部による音響信号に基づいて被検者の呼吸の音質、回数、一回換気量及びリズムを呼吸状態として検出する呼吸状態検出部と、呼吸状態検出部により検出された呼吸状態と血液状態測定部により測定された脈拍数及び血中酸素飽和度と生体信号検出部により検出された脳波及び眼球運動とに基づいて睡眠時における被検者の健康状態を評価する睡眠状態評価部とを備えるようにした。
【0010】
本発明によれば、物理的に支障が生じない(横になっても安定して計測可能な)耳介挿入タイプのイヤホンをバイタルセンサとして用いて就寝時に被検者の生体情報を計測することにより、被検者の睡眠時の健康状態を本人にストレスを与えることなく効率的且つ正確に評価することが可能となる。
【0011】
生理状態評価装置に、赤外線方式により被検者の鼓膜温度を測定する検出する体温検出部をさらに備えるようにしてもよい。睡眠状態評価部は、血液状態測定部により測定された脈拍数と体温検出部により検出された鼓膜温度との同期タイミングに基づいて、睡眠時における被検者の健康状態を評価してよい。
【0012】
この結果、測定された脈拍数と検出された鼓膜温度との同期タイミングも絡めて複合的に判断することにより、より一層睡眠状態を正確に判断することが可能となる。
【0013】
睡眠状態評価部は、骨伝導集音部により得られた音響信号のうち、被検者の発話音及び咳音を示す成分に基づいて、睡眠時における被検者の健康状態を評価してもよい。
【0014】
この結果、被検者の発話音及び咳音(例えば、咳や嚥下障害といった被検者の喉に関連する不具合)も絡めて複合的に判断することにより、より一層睡眠状態を正確に判断することが可能となる。
【0015】
生理状態評価装置に、被検者の外耳道の軟骨部位を介して振動に変換された音響信号を内耳に伝達する骨伝導放音部をさらに備えるようにしてもよい。睡眠状態評価部は、被検者の健康状態に応じたフィードバック指示内容を、音響信号として骨伝導放音部に出力してもよい。
【0016】
この結果、被検者の生体情報を測定するデバイスそれ自体を介して被検者にフィードバック指示内容を伝えることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
上述したように、物理的に支障が生じない耳介挿入タイプのイヤホンをバイタルセンサとして用いて就寝時に被検者の生体情報を計測することにより、被検者の睡眠時の健康状態を本人にストレスを与えることなく効率的且つ正確に評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施の形態による生理状態評価装置が有する右側イヤホンの外観斜視図である。
【
図2】
図1に示す右側イヤホンが装着された被検者の右側耳介の外観図である。
【
図3】第1の実施の形態による生理状態評価装置の構成図である。
【
図4】第2の実施の形態による生理状態評価装置が有する右側イヤホンの外観斜視図である。
【
図5】
図4に示す右側イヤホンが装着された被検者の右側耳介の外観図である。
【
図6】第3の実施の形態による生理状態評価装置が有する右側イヤホンの外観斜視図である。
【
図7】
図6に示す右側イヤホンが装着された被検者の右側耳介の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の幾つかの実施の形態を説明する。
[第1の実施の形態]
【0020】
図1は、第1の実施の形態による生理状態評価装置が有する右側イヤホンの外観斜視図である。
図2は、
図1に示す右側イヤホンが装着された被検者の右側耳介の外観図である。
図1及び
図2は、右側イヤホンの外観を代表的に示しているが、左側イヤホンの外観も同様である。
【0021】
右側イヤホン100Rは、被検者の右側耳介201R内に装着されその際に外耳孔202Rと部分的に当接する(例えば、耳珠あるいは対耳珠に当接する)先端部111Rと、先端部112Rに接続された基端部112Rとを有する。
【0022】
先端部111Rが、生体情報をそれぞれ検出(測定)するための複数種類のセンサを有する。先端部111Rにイヤーパッド121Rが取り付けられている。イヤーパッド121Rは、導電性ゴムから成っており、上述の複数種類のセンサのうちの少なくとも一種類のセンサ(例えば骨伝導マイク)を有する。複数種類のセンサの各々について、当該センサにより検出(測定)された値を示す電気信号が、例えばイヤーパッド121R(導電性ゴム)を介して、基端部112Rに送られる。
【0023】
図3は、第1の実施の形態による生理状態評価装置の構成図である。
【0024】
生理状態評価装置300は、右側イヤホン100Rと、左側イヤホン100Lと、右側イヤホン100R及び左側イヤホン100Lと通信する評価ユニット360とを有する。
【0025】
まず、イヤホン100R及び100Lの各々の構成について、右側イヤホン100Rを代表的に例に取り説明する(左側イヤホン100Lの構成は、右側イヤホン100Rと同じあるため、詳細な図示及び説明を省略する)。
【0026】
右側イヤホン100Rは、上述した複数種類のセンサの一例として、骨伝導マイク311と、鼓膜温度センサ312と、脈動センサ313と、集音マイク314と、電極315とを有する。また、右側イヤホン100Rは、制御部340と、通信部345とを有する。骨伝導マイク311、鼓膜温度センサ312、脈動センサ313、集音マイク314及び電極315の少なくとも一つ(例えば全て)が、例えば先端部111R(
図1参照)に備えられる。少なくとも制御部340及び通信部345が、例えば基端部112R(
図1参照)に備えられる。
【0027】
骨伝導マイク311は、骨伝導集音部の一例であり、被検者の外耳孔202R(
図2参照)の軟骨部位を介して被検者の喉頭及び咽頭から発生される振動を音響信号として集音する。具体的には、例えば、骨伝導マイク311は、振動ピックアップ321と、増幅器322と、信号処理部323とを有する。振動ピックアップ321は、圧電素子を振動部位(外耳孔201R)に接触させ、振動による変形によって圧電素子に生じる電位を検出する圧電式の振動ピックアップ(圧電式加速度ピックアップ)である。このような振動を示す信号が、増幅器322により増幅され、信号処理部323によって所定の処理が施されて、制御部340に入力される。空気振動によって伝達する外界音は人体によって遮断されるため、発声した音声のみを骨伝導マイク311は検出可能である。
【0028】
鼓膜温度センサ312は、体温検出部の一例であり、赤外線方式により被検者の鼓膜温度を検出する。鼓膜温度センサ312により検出された鼓膜温度を示す電気信号が、制御部340に入力される。なお、耳孔温度(耳の中の温度)は脳の温度に近く、脳が生み出す(生体)リズムを反映するが、耳孔温度が脈拍数と同期して変動するような時は体調が良く、両者のリズムが狂うと体調が崩れやすい。そこで、鼓膜は脳内の体温調節中枢、すなわち視床下部と血液供給を共有するため、本実施の形態のように、鼓膜の赤外線温度を測定する鼓膜温度センサ312が設けられることで、中核温を正確に後述の睡眠状態評価に反映することができる。中核温の変化は、他の部位よりも耳においてより速くかつより正確に反映される。
【0029】
脈動センサ313は、血液状態測定部の一部分、具体的には、被検者の血管を循環する血液の脈動を光学的に検出する機能の一例である。血液状態測定部の残りの部分、すなわち、当該脈動による光強度変化に基づいて脈拍数及び血中酸素飽和度をそれぞれ測定する機能は、制御部340により実現される。すなわち、制御部340は、脈動センサ313からの電気信号に基づき、当該電気信号が示す脈動による光強度変化に基づいて脈拍数及び血中酸素飽和度をそれぞれ検出(推定)する。なお、血液状態測定部の上記残りの部分は、制御部340に代えて、評価ユニット360における図示しないプロセッサ(またはハードウェア回路)によって実現されてもよい。
【0030】
集音マイク314は、空気振動によって伝達する外界音を音響信号として集音する。集音マイク314は、呼吸状態検出部の一部分、すなわち、被検者の呼吸の音を検出する機能の一例である。呼吸状態検出部の残りの部分、すなわち、骨伝導集音部による音響信号に基づいて、被検者の呼吸の音質、回数、一回換気量及びリズムを呼吸状態として検出する機能は、制御部340により実現される。すなわち、制御部340は、集音マイク314からの音響信号と、骨伝導マイク311からの音響信号とを基に、被検者の呼吸の音質、回数、一回換気量及びリズムを呼吸状態として検出する。なお、呼吸状態検出部の上記残りの部分は、制御部340に代えて、評価ユニット360における図示しないプロセッサ(またはハードウェア回路)によって実現されてもよい。
【0031】
電極315は、被検者の右側の外耳孔表面の電位を検出する。すなわち、電極315は、生体信号検出部が有する一対の導電電極(被検者の左右の外耳孔表面の電位をそれぞれ検出する一対の導電電極)のうちの一方(右側)の電極の一例である。電極315からの電気信号は、通信部345を介して(または、制御部340と評価ユニット360との通信経路とは異なる経路を介して)、評価ユニット360に入力される。生体信号検出部の残りの部分(一対の導電電極以外の部分)は、評価ユニット360における脳波/眼球運動検出部373により実現される。脳波/眼球運動検出部373は、一対の導電電極からの電気信号に基づき、被検者の脳波及び眼球運動を検出する。脳波及び眼球運動の検出のためには、脳を間に挟んで2箇所を短絡させる必要があるため、両方の耳介にイヤホンを装着することに加えて、両方のイヤホン100R及び100Lが本実施の形態のように有線でつながれている場合に、生体信号検出部の実現が可能である。
【0032】
制御部340は、一つ以上のプログラムをイヤホン100R内の図示しないプロセッサにより実行することと、イヤホン100R内の一つ以上のハードウェア回路とうちの少なくとも一つにより実現される。制御部340は、骨伝導マイク311、鼓膜温度センサ312、脈動センサ313及び集音マイク314からの信号に基づき複数種類の生体情報(例えば、鼓膜温度、脈拍数、血中酸素飽和度及び呼吸状態)を検出(測定)し、検出した生体情報(例えば数値)を、通信部345を介して評価ユニット360に送信する。また、制御部340は、評価ユニット360からの情報をスピーカ330経由で出力する。評価ユニット360からの情報の少なくとも一部の一例が、被検者の睡眠状態(睡眠時における健康状態)に応じたフィードバック指示内容である。
【0033】
通信部345は、評価ユニット360に対する通信インターフェース機器である。通信部345に、評価ユニット360との通信のためのケーブルが接続される。
【0034】
スピーカ330は、被検者の外耳道の軟骨部位を介して振動に変換された音響信号を内耳に伝達する骨伝導放音部の一例である。スピーカ330は、制御部340からの情報の一例である、被検者の健康状態に応じたフィードバック指示内容(音響信号)を出力する。
【0035】
以上が、イヤホン100Rについての説明である。上述の例によれば、制御部340が、鼓膜温度、脈拍数、血中酸素飽和度及び呼吸状態といった生体情報を検出(測定)する。
【0036】
ここで、例えば、脈拍数、血中酸素飽和度及び呼吸状態は、以下に例示の<呼吸のルール>及び<心臓のルール>をベースに検出される。当該<呼吸のルール>及び<心臓のルール>は、例えば、プロセッサによって実行されることで制御部340としての機能を発揮するためのプログラムに記述されていてもよいし、イヤホン100R内の図示しない記憶部に<呼吸のルール>及び<心臓のルール>を示す情報が格納されていてプロセッサが当該情報を参照して脈拍数、血中酸素飽和度及び呼吸状態を検出してもよい。なお、下記のルールにおいて、各数値は一例でよい。また、被検者の年齢、身長及び体重といった身体的な情報が、評価ユニット360経由でイヤホン100R(及び100L)に送られ、そのような身体的な情報を用いて生体情報が検出されてもよい。また、そのような身体的な情報は、評価ユニット360内の記憶部372に格納され、睡眠状態の評価に使用されてもよい。また、<呼吸のルール>及び<心臓のルール>を示す情報や被検者の身体的な情報は評価ユニット360の記憶部372に格納されて、評価ユニット360内の図示しないプロセッサが、一つ以上のプログラムを実行することで、制御部340に代えて、骨伝導マイク311、鼓膜温度センサ312、脈動センサ313及び集音マイク314からの信号に基づき複数種類の生体情報(例えば、鼓膜温度、脈拍数、血中酸素飽和度及び呼吸状態)を、<呼吸のルール>及び<心臓のルール>を示す情報(必要に応じて、被検者の身体的な情報)を参照して検出してもよい。
【0037】
<呼吸のルール>
(X1)イベント持続時間の測定:呼吸音のタイミングに合わせて呼吸周期を測定する。基準となる呼吸振幅が容易に特定できない場合、及び基準となる呼吸変動が大きい場合、呼吸振幅の明らかな持続的増加、あるいは酸素飽和度の低下があり、イベントに伴った2%以上の酸素飽和度の改善があった場合にイベントの終了と判定する。
(X2)無呼吸の判定:呼吸周期及び酸素飽和度に基づき推定した温度気流において、最大信号の振れがイベント前のベースラインから90%以上低下している。
(X2a)無呼吸の基準を満たし、気流停止している全期間で吸気努力の持続または増加を伴う場合、無呼吸は閉塞性と判定する。
(X2b)無呼吸の基準を満たし、気流停止している全期間で吸気努力が消失している場合、無呼吸は中枢性と判定する。
(X2c)無呼吸の基準を満たし、イベントの初期部で吸気努力が消失し、その後に吸気努力が再開する場合、無呼吸は混合性と判定する。
(X3)低呼吸の判定:呼吸音から推定した一回換気量を測定する。いびきは、骨伝導マイク311に集音マイク314も併せて検出されてもよい。
(X3a)最大信号の振れがイベント前のベースラインより30%以上低下し、かつ信号振幅の30%以上の減少が10秒以上持続し、酸素飽和度がイベント前のベースラインから3%以上低下あるいは覚醒反応を伴う場合は、呼吸イベントは低呼吸と判定する。
(X3b)(i)イベント中のいびき、(ii)吸気時に一回換気量の測定信号の平坦化が基準呼吸に比較して増加、(iii)イベント前の呼吸では認めなかった胸腹部の奇異性運動を表す呼吸音がイベント中に見られる、のいずれかを満たす場合、閉塞性低呼吸と判定する。
(X3c)(X3b)における(i)から(iii)のいずれも満たさない場合、中枢性低呼吸と判定する。
【0038】
<心臓のルール>
(Y1)成人において、洞性心拍数が持続的に90回/分を超えた場合、睡眠中の洞性頻拍と判定する。
(Y2)6歳から成人において、洞性心拍数が持続的に40回/分未満の場合、睡眠中の徐脈と判定する。
(Y3)6歳から成人において、心拍停止が3秒を超えて持続した場合、心静止と判定する。
(Y4)心拍数が100回/分を超え、QRS時間が120msec以上で3拍以上連続するリズムは、広いQRS幅の頻拍と判定する。
(Y5)心拍数が100回/分を超え、QRS時間が120msec未満で3拍以上連続するリズムは、狭いQRS幅の頻拍と判定する。
(Y6)心室リズムが不規則であり、一定のp波の代わりに大きさ、形、出現時期の異なる急速な上下動が認められる場合、心房細動と判定する。
【0039】
評価ユニット360は、イヤホン100R及び100Lと有線通信する通信機である。評価ユニット360は、通信部371、記憶部372、脳波/眼球運動検出部373及び睡眠状態評価部374を有する。脳波/眼球運動検出部373及び睡眠状態評価部374の少なくとも一つは、一つ以上のプログラムを評価ユニット360内の図示しないプロセッサにより実行することと、評価ユニット360内の一つ以上のハードウェア回路とうちの少なくとも一つにより実現される。
【0040】
通信部371は、イヤホン100R及び100Lに対する通信インターフェース機器である。通信部371に、イヤホン100R及び100Lとの通信のためのケーブルが接続される。
【0041】
記憶部372は、一つ以上の記憶デバイス、例えば一つ以上のメモリである。記憶部372は、少なくとも一つの不揮発性の記憶デバイスを含んでもよい。記憶部372には、睡眠状態評価部374による評価の結果を示す情報が蓄積されてもよいし、睡眠状態の評価の際に睡眠状態評価部374により参照(又は更新)される情報が蓄積されてもよい。
【0042】
脳波/眼球運動検出部373は、上述したように、一対の導電電極(右側イヤホン100Rにある電極315と、左側イヤホン100Lにある電極(図示せず)からの電気信号に基づき、被検者の脳波及び眼球運動を検出する。
【0043】
睡眠状態評価部374は、呼吸状態と、脈拍数及び血中酸素飽和度とに基づいて、睡眠状態を評価する。この段落で言う「呼吸状態」、「脈拍数」及び「血中酸素飽和度」の各々は、イヤホン100R及び100Lの各々において検出された生体情報であり、イヤホン100R及び100Lからの情報の一例である。
【0044】
本実施の形態では、被検者の健康状態の評価のための生体情報を、被検者の睡眠時に取得する。睡眠時の被検者の健康状態の評価は、呼吸状態と、脈拍数及び血中酸素飽和度と、脳波及び眼球運動とに基づく。呼吸状態は、被検者の呼吸の音質、回数、一回換気量及びリズムに基づく。脈拍数及び血中酸素飽和度は、被検者の血管を循環する血液の脈動による光強度変化に基づく。脳波及び眼球運動は、被検者の左右の外耳孔表面の電位をそれぞれ検出する一対の導電電極からの信号に基づく。これらを効率的に且つ被検者の睡眠時にストレスなく取得するために、被検者の外耳孔に挿入するイヤホンがバイタルセンサとして実現され、そのようなイヤホンからの生体情報に基づき睡眠状態を評価する装置が生理状態評価装置300として実現される。つまり、本願発明者の様々な観点での鋭意検討した結果として、生理状態評価装置300が実現される。生理状態評価装置300により、被検者の睡眠状態を本人にストレスを与えることなく効率的且つ正確に評価することが可能となる。
【0045】
また、本実施の形態では、睡眠状態評価部374は、脈動センサ313による測定結果に基づく脈拍数と鼓膜温度センサ312の検出結果に基づく鼓膜温度との同期タイミングに基づいて、睡眠状態を評価する。上述したように、耳孔温度が脈拍数と同期して変動するような時は体調が良く、両者のリズムが狂うと体調が崩れやすい。イヤホンとしてのバイタルセンサには、脈動センサ313に加えて鼓膜温度センサ312が備えられる。これにより、より一層睡眠状態を正確に判断することが可能となる。
【0046】
また、本実施の形態では、睡眠状態評価部374は、集音マイク314からの音響信号(つまり検出された外界音)に基づき、骨伝導マイク311からの音響信号のうち被検者の発話音及び咳音を抽出し、当該発話音及び咳音に基づいて、睡眠状態を評価する。これにより、被検者の発話音及び咳音(例えば、咳や嚥下障害といった被検者の喉に関連する不具合)も絡めて複合的な判断がされ、結果として、より一層睡眠状態を正確に判断することが可能となる。なお、被検者の発話音及び咳音の抽出は、睡眠状態評価部374に代えて制御部340により行われてもよい。
【0047】
また、本実施の形態では、睡眠状態評価部374は、睡眠状態の評価結果に基づき、被検者の健康状態に応じたフィードバック指示内容を、音響信号としてイヤホン100Rのスピーカ330(及びイヤホン100Lのスピーカ)に出力する。これにより、被検者の生体情報を測定するデバイスそれ自体を介して被検者にフィードバック指示内容を伝えることが可能となる。
【0048】
なお、フィードバック指示内容は、例えば次のように特定されてよい。すなわち、記憶部372が、予め、評価結果とフィードバック指示内容との関係を示す情報であるフィードバック制御情報を格納してよい。睡眠状態評価部374は、睡眠状態の評価結果に適合したフィードバック指示内容を、フィードバック制御情報から特定し、特定したフィードバック指示内容を、イヤホン100Rのスピーカ330(及びイヤホン100Lのスピーカ)に出力してよい。
【0049】
また、本実施の形態では、例えば、睡眠状態評価部374は、例えば定期的に、以下に例示の<睡眠段階の判定ルール>をベースに、被検者の睡眠状態を評価してもよい(例えば、被検者の睡眠段階を判定し、被検者の睡眠時間及び当該睡眠時間における各睡眠段階の比率を基に、睡眠状態を評価してもよい)。以下に例示の<睡眠段階の判定ルール>は、成人に適用されるルールでよい。被検者が成人か否かは、例えば上述した身体的な情報から睡眠状態評価部374により特定されてよい。また、下記のルールにおいて、各数値は一例でよい。
【0050】
<睡眠段階の判定ルール>
【0051】
当該判定ルールは、被検者の睡眠時に取得された呼吸状態(被検者の呼吸の音質、回数、一回換気量及びリズムに基づく)、脈拍数及び血中酸素飽和度(被検者の血管を循環する血液の脈動による光強度変化に基づく)、及び、脳波及び眼球運動(被検者の左右の外耳孔表面の電位をそれぞれ検出する一対の導電電極からの信号に基づく)を基に特定される段階が、下記の5段階のうちのいずれに該当するかを判定するためのルールである。
(1)ステージW(覚醒)
(2)ステージN1(ノンレム1)
(3)ステージN2(ノンレム2)
(4)ステージN3(ノンレム3)
(5)ステージR(レム)
【0052】
<<(1)ステージW(覚醒)>>
【0053】
エポック(30秒単位)の50%超で以下の(1a)又は(1b)のいずれか一方又は両方が検出された場合、エポックはステージWと判定される。
(1a)後頭部のアルファ律動(開眼時にアルファ律動が生じる個人)。
(1b)ステージWに伴うその他の所見(全ての個人)。
【0054】
なお、「その他の所見」とは、以下のうちの少なくとも一つでよい。
(1b-1)瞬目(0.5~2Hz)。
(1b-2)正常あるいは高い顎筋緊張を伴った急速眼球運動。
(1b-3)読書眼球運動。
【0055】
また、「アルファ律動」(成人と年長小児での後頭部優位律動)は、連続する8~13Hzの正弦波活動である。「瞬目」とは、覚醒時に開眼あるいは閉眼で出現する0.5~2Hzの垂直性の両側眼球運動である。「急速眼球運動」とは、不規則で急峻な波形を示す両側眼球運動で、最初の振れの持続時間は通常500msec未満である。「読書眼球運動」とは、読書している時に緩徐相から逆方向への急速相に移行する一連の両側眼球運動である。
【0056】
<<(2)ステージN1(ノンレム1)>>
【0057】
アルファ律動のみられる個人では、アルファ律動が減少し、低振幅で様々な周波数が混在するEEG活動(主に4~7Hzの周波数の低振幅活動)がエポックの50%超を占めた場合、当該エポックはステージN1と判定される。
【0058】
アルファ律動のみられない個人では、以下の(2a)又は(2b)の現象のうちのいずれかが最初に出現した場合に、当該エポックはステージN1(ノンレム1)と判定される。
(2a)ステージWより1Hz以上低下した背景活動を伴う4~7HzのEEG活動。
(2b)緩徐眼球運動。
【0059】
なお、「緩徐眼球運動」は、比較的規則正しい正弦波の両側眼球運動で、最初の振れの持続時間は通常500msecより長い。閉眼時の覚醒とステージN1でみられる。
【0060】
エポックの大部分がステージN1の基準(低振幅で様々な周波数が混在するEEG活動、LAMF)を満たす場合、他の睡眠段階のエビデンスがみられなければ当該エポックはステージN1と判定される。後続する低振幅で様々な周波数が混在するEEG活動を伴うエポックは、他の睡眠段階(通常はステージW、ステージN2あるいはステージR)のエビデンスが出現するまではステージN1と判定される。
【0061】
覚醒反応がステージN2睡眠を中断した場合、他の睡眠段階のエビデンスが出現するまで、EEGがK複合や睡眠紡錘波を伴わず、低振幅で様々な周波数が混在する活動を示したら、直後の部分はステージN1と判定される。
【0062】
覚醒反応がステージRを中断した場合、低振幅で様々な周波数が混在する活動が後続し、後頭部優位律動を伴わず、かつ緩徐眼球運動を伴うようなら、たとえ顎EMG活動が(ステージRレベルで)低いままであっても、眼球運動を含む部分はステージN1と判定される。他に睡眠段階のエビデンス、通常はステージN2あるいはステージRが出現するまでは、ステージN1の判定が継続する。
【0063】
なお、「K複合」とは、明瞭な陰性鋭波と、直後の陽性部分からなり、背景EEGとは明確に区別される。総持続時間は0.5秒以上であり、通常、最大振幅は前頭部誘導で記録される。K複合に伴って覚醒反応が出現することがあるが、覚醒反応はK複合と同時、あるいはK複合終了時点から1秒以内の開始でなければならない。
【0064】
<<(3)ステージN2(ノンレム2)>>
【0065】
以下の(3a)及び(3b)のいずれか、あるいは両方がエポックの前半部分あるいは直前のエポックの後半部分に認められた場合、ステージN2判定の開始とする(N3基準を満たさない場合)。
(3a)覚醒反応を伴わないK複合。
(3b)睡眠紡錘波。
【0066】
なお、「睡眠紡錘波」は、周波数11~16Hz(多くは12~14Hz)の明瞭な波形で、持続時間は0.5秒以上、通常最大振幅は中心部誘導でみられる。
【0067】
エポックの大部分がステージN2の基準を満たす場合、そのエポックはステージN2と判定される。上記(3a)あるいは(3b)の波形と同じあるいは直後のエポックに覚醒反応がみられる場合、覚醒反応のみられる直前の部分はステージN2と考えられる。
【0068】
K複合や睡眠紡錘波を伴わない、低振幅で様々な周波数が混在するEEG(LAMF)のエポックは、上記(3a)及び(3b)のいずれかが直前のエポックに認められる場合、あるいは覚醒反応による中断がなければステージN2の継続と判定される。
【0069】
ステージN3直後の、ステージN3の基準を満たさないエポックが、覚醒反応による中断がなく、ステージWあるいはステージRの基準を満たさなければ、ステージN2と判定される。
【0070】
以下の(3c)~(3g)のイベントのうちの一つでも出現した場合、ステージN2の判定は終了する。
(3c)ステージWへの移行。
(3d)覚醒反応とその直後の低振幅で様々な周波数が混在するEEG活動(LAMF、覚醒反応を伴わないK複合あるいは睡眠紡錘波が起こるまでステージN1への移行)。これはそのエポックがステージRの基準を満たさないと考えられる。
(3e)粗体動と直後の緩徐眼球運動、低振幅で様々な周波数が混在するEEG活動(LAMF)が、覚醒反応を伴わないK複合あるいは睡眠紡錘波を伴わない(粗体動直後のエポックはステージN1と判定し、緩徐眼球運動がみられなければステージN2と判定)。なお、「粗体動」は、体動と筋活動によるアーチファクトによりエポックの半分以上のEEG活動が不明瞭になり、睡眠段階が判定できなくなるような体動(もしアルファ律動がエポックの部分的(15秒未満の持続時間)にでも認められれば、ステージWと判定する)。
(3f)ステージN3への移行。
(3g)ステージRへの移行。
【0071】
<<(4)ステージN3(ノンレム3)>>
【0072】
エポックの20%以上で徐波活動が認められる場合、年齢に関係なく当該エポックがステージN3と判定される。
【0073】
なお、「徐波活動」は、周波数0.5Hzの波形で、ピーク間の振幅は75μVを超え、対側の耳あるいは乳様突起を基準にして前頭部で測定される。
【0074】
<<(5)ステージR(レム)>>
【0075】
エポックに以下の(5a)~(5c)の現象すべてが認められる場合、当該エポックはステージRと判定される(確定ステージR)。
(5a)K複合あるいは睡眠紡錘波を伴わないLAMFが混在するEEG活動。
(5b)エポックの大部分の顎EMG低緊張および急速眼球運動の随伴。
(5c)エポック内のあらゆる位置での急速眼球運動。
【0076】
なお、「顎EMG低緊張」とは、顎誘導でのベースラインのEMG活動が他のいずれの睡眠段階よりも高くない状態である。
【0077】
確定ステージRのエポックに先行および隣接する睡眠部分は、急速眼球運動がなく、以下の(5d)~(5g)のすべてが認められる場合、ステージRと判定される。
(5d)EEGがK複合あるいは睡眠紡錘波を伴わないLAMFを示す。
(5e)顎EMG低緊張(ステージRレベル)。
(5f)覚醒反応による中断がない。
(5g)覚醒反応直後の緩徐眼球運動あるいはステージWを伴わない。
【0078】
ステージRの基準を満たす部分がエポックの大部分に認められる場合、そのエポックはステージRと判定される。ステージRルールは、ステージN2ルールよりも優先される。
【0079】
一つ以上の確定ステージRのエポック直後の睡眠部分は急速眼球運動がなく、以下(5h)~(5j)のすべてが認められる場合、ステージR継続と判定される。
(5h)EEGがK複合あるいは睡眠紡錘波を伴わないLAMFを示す。
(5i)エポックの大部分で顎EMG低緊張(ステージRレベル)。
(5j)覚醒反応による中断がない。
【0080】
以下の(5k)~(5o)のうちの一つ以上の事象が出現した場合、ステージRは終了とする。
(5k)ステージWあるいはN3への移行。
(5l)ステージRレベル以上の顎EMG増加がエポックの大部分で認められ、ステージN1基準が満たされる場合。
(5m)覚醒反応が生じ、その直後にLAMFと緩徐眼球運動が見られた場合(エポックをステージN1と判定する:もし緩徐眼球運動がなく、顎EMGが低値のままであった場合、引き続きステージRと判定される)。
(5n)粗体動に引き続き、緩徐眼球運動とLAMFで、覚醒反応を伴わないK複合あるいは睡眠紡錘波がみられない場合(粗体動直後のエポックはステージN1と判定する:もし緩徐眼球運動がみられず、顎EMGが低値のままであった場合、引き続きステージRと判定される)。
(5o)エポックの前半に覚醒反応を伴わないK複合や睡眠紡錘波が一つ以上出現し、顎EMGが低値のままであっても急速眼球運動がない場合(エポックはステージN2と判定される)。
【0081】
顎EMG活動低下に加え、急速眼球運動、睡眠紡錘波やK複合が混在する部分は、以下の(5p)~(5r)のように判定される。
(5p)急速眼球運動による中断を伴わない、二つのK複合、二つの睡眠紡錘波、あるいはK複合と睡眠紡錘波の間の部分はステージN2と考えられる。
(5q)K複合あるいは睡眠紡錘波を伴わない急速眼球運動およびその睡眠レベルの顎緊張が認められる部分はステージRと考えられる。
(5r)エポックの大部分にステージN2と考えられる部分が認められれば、ステージN2と判定される。エポックの大部分にステージRと考えられる部分が認められれば、ステージRと判定される。
[第2の実施の形態]
【0082】
第2の実施の形態を説明する。その際、第1の実施の形態との相違点を主に説明し、第1の実施の形態との共通点の説明を省略または簡略する(これは、第3の実施の形態の説明についても同様である)。
【0083】
図4は、第2の実施の形態による生理状態評価装置が有する右側イヤホンの外観斜視図である。
図5は、
図4に示す右側イヤホンが装着された被検者の右側耳介の外観図である。
【0084】
右側イヤホン450Rの先端部411Rの基端側に、イヤーフック(例えば対輪の上脚と下脚間に挿入され上脚の裏に接触し固定されるイヤーフック)400Rが備えられる。イヤーパッド121Rに加えてイヤーフック400Rも、導電性ゴムから成っている。イヤーフック400Rが、上述の複数種類のセンサのうちの少なくとも一種類のセンサ(例えば骨伝導マイク)を有する。
【0085】
本実施の形態によれば、睡眠時に耳介からイヤホン450Rが脱落して睡眠状態が評価できなかったということが生じる可能性を低減することができる。
[第3の実施の形態]
【0086】
図6は、第3の実施の形態による生理状態評価装置が有する右側イヤホンの外観斜視図である。
図7は、
図6に示す右側イヤホンが装着された被検者の右側耳介の外観図である。
【0087】
右側イヤホン650Rに、耳掛け部(耳輪の裏に沿って耳介の裏に掛かる部材)600Rが備えられる。耳掛け部600Rは、右側イヤホン650Rの先端部611Rの基端側から耳輪の裏に沿って耳介の裏に回るように延びている。イヤーパッド121Rに加えて耳掛け部600Rも、導電性ゴムから成っている。耳掛け部600Rが、上述の複数種類のセンサのうちの少なくとも一種類のセンサ(例えば骨伝導マイク)を有する。
【0088】
本実施の形態によれば、睡眠時に耳介からイヤホン650Rが脱落して睡眠状態が評価できなかったということが生じる可能性を低減することができる。
【0089】
以上、幾つかの実施の形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこれらの実施の形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実行することが可能である。
【0090】
例えば、第1の実施の形態から第3の実施の形態の少なくとも一つにおいて、下記のうちの少なくとも一つが採用されてもよい。
・鼓膜温度センサ312、集音マイク314、電極315、スピーカ330、及び、脳波/眼球運動検出部373のうちの少なくとも一つが無くてもよい。
・イヤホン100R及び100Lは同じ構成でなくてよい。例えば、脈動センサ313が右側イヤホン100Rにあるが左側イヤホン100Lにはなく、骨伝導マイク311が右側イヤホン100Rにないが左側イヤホン100Lにあってもよい。
・イヤホン100R及び100Lのうちの一方がなくてもよい。
・イヤホン100R及び100Lと評価ユニット360間の通信は、無線通信でもよい。
・評価ユニット360を実現する機器それ自体は、スマートフォンのような計算機でよく、生理状態評価装置300のいわゆる専用品でなくてもよい。この場合、少なくとも睡眠状態評価部374は、計算機内のプロセッサによってアプリケーションプログラムのようなプログラムが実行されることで実現されてもよい。
【0091】
また、例えば、睡眠状態評価部374は、フィードバック指示内容を記憶部372に蓄積しておき、イヤホン100R及び100Lが有する複数種類のセンサのうちの少なくとも一つの検出結果(または図示しないタイマ)から所定のイベント(例えば被検者から予め指定されたイベント)の発生が推定されたとき(例えば、被検者が起床したことが推定されたとき、または、被検者から予め指定された時刻になったとき)、当該フィードバック指示内容を音響信号としてスピーカ330(骨伝導放音部の一例)に出力してもよい。これにより、被検者の睡眠を妨げること無しに被検者にとって適切なタイミングでフィードバック指示内容を被検者に伝えることが可能となる。
【符号の説明】
【0092】
100R…右側イヤホン、100L…左側イヤホン、300…生理状態評価装置、360…評価ユニット