(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】洗掘抑制体および洗掘抑制方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/12 20060101AFI20220915BHJP
E02D 27/52 20060101ALI20220915BHJP
E02D 27/32 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
E02D27/52 A
E02D27/32 A
(21)【出願番号】P 2021197780
(22)【出願日】2021-12-06
【審査請求日】2021-12-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】武田 将英
(72)【発明者】
【氏名】石坂 修
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 高二朗
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-178611(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110144977(CN,A)
【文献】特開2020-041315(JP,A)
【文献】特許第6960550(JP,B1)
【文献】特開昭61-277708(JP,A)
【文献】中国実用新案第211257097(CN,U)
【文献】中国実用新案第211773369(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0003369(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00-27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭が打設された水底地盤の洗掘を抑制する洗掘抑制体において、
透水性を有し、かつ、前記水底地盤の土砂が通り抜けることを抑制する多孔構造が複数層重なった状態で、前記水底地盤上の前記杭の根元部分
の外周面の全周に当接した状態で環状に外嵌めされる本体部を有することを特徴とする洗掘抑制体。
【請求項2】
杭が打設された水底地盤の洗掘を抑制する洗掘抑制体において、
透水性を有し、かつ、前記水底地盤の土砂が通り抜けることを抑制する多孔構造が複数層重なった状態で、前記水底地盤上の前記杭の根元部分に環状に外嵌めされる本体部を有し、
前記本体部が、網状部材により形成されている筒状で環状になる袋部材と、網状部材により形成されて前記袋部材に充填される芯部材とを有する
ことを特徴とする洗掘抑制体。
【請求項3】
杭が打設された水底地盤の洗掘を抑制する洗掘抑制体において、
透水性を有し、かつ、前記水底地盤の土砂が通り抜けることを抑制する多孔構造が複数層重なった状態で、前記水底地盤上の前記杭の根元部分に環状に外嵌めされる本体部を有し、
前記本体部が、シート状の網状部材がロール状に巻かれて前記シート状の網状部材が複数層重なった構造である
ことを特徴とする洗掘抑制体。
【請求項4】
前記本体部を前記杭に締め付ける紐状体を有する請求項1~3のいずれかに記載の洗掘抑制体。
【請求項5】
前記本体部が、複数の分割体で構成されている請求項1~4のいずれかに記載の
洗掘抑制体。
【請求項6】
杭を打設した水底地盤の洗掘を抑制する洗掘抑制方法において、
洗掘抑制体を構成する透水性を有し、かつ、前記水底地盤の土砂が通り抜けることを抑制する多孔構造が複数層重なった状態の本体部を、前記水底地盤上の前記杭の根元部分
の外周面の全周に当接させた状態で環状に外嵌めすることを特徴とする洗掘抑制方法。
【請求項7】
杭を打設した水底地盤の洗掘を抑制する洗掘抑制方法において、
洗掘抑制体を構成する透水性を有し、かつ、前記水底地盤の土砂が通り抜けることを抑制する多孔構造が複数層重なった状態の本体部を、前記水底地盤上の前記杭の根元部分に環状に外嵌めし、
前記本体部
は、網状部材により形成されている筒状で環状になる袋部材と、網状部材により形成されて前記袋部材に充填される芯部材とを有する構成にする
ことを特徴とする洗掘抑制方法。
【請求項8】
杭を打設した水底地盤の洗掘を抑制する洗掘抑制方法において、
洗掘抑制体を構成する透水性を有し、かつ、前記水底地盤の土砂が通り抜けることを抑制する多孔構造が複数層重なった状態の本体部を、前記水底地盤上の前記杭の根元部分に環状に外嵌めし、
前記本体部
は、シート状の網状部材がロール状に巻かれて前記シート状の網状部材が複数層重なった構造にする
ことを特徴とする洗掘抑制方法。
【請求項9】
前記水底地盤に打設した前記杭の周辺領域を洗掘抑制シートで被覆し、前記杭の外周面と前記洗掘抑制シートとの間のすき間を前記本体部によって塞いだ状態にする請求項6~8のいずれかに記載の洗掘抑制方法。
【請求項10】
前記本体部を複数の分割体で構成する請求項6~9のいずれかに記載の洗掘抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗掘抑制体および洗掘抑制方法に関し、さらに詳しくは、簡素な構成でありながら、杭が打設された水底地盤の洗掘を効果的に抑制できる洗掘抑制体および洗掘抑制方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洋上風力発電装置は水底に打設した杭(パイル)の上部に、風車を有する上部構造体を固定した構造になっている。杭に波浪や潮流による水流が当たると下降流が生じ、水底地盤上の杭の根元付近において水底地盤を洗掘する馬蹄形渦および後流渦が発生する。水底地盤の洗掘が進行すると杭の支持力が低下し、杭の傾倒などの要因となる。
【0003】
そこで、杭を打設した水底地盤の洗掘を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の発明では、洋上風車の基礎杭が貫通可能な筒状の壁部と、その壁部の下端部から外方向に延在する底面部とを備えた基礎補助構造物を水底に据付けて、その基礎補助構造物に基礎杭を挿通させた状態で打設する。しかしながら、この方法では、水底から水上まで延在する重厚長大な基礎補助構造物を製造する必要があり、基礎補助構造物の搬送作業や据付作業にも多大なコストと労力を要する。また、水流が基礎補助構造物に当たることで生じる下降流が基礎補助構造物の外側に伝播するため、基礎補助構造物の外側の水底地盤が洗掘される恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、簡素な構成でありながら、杭が打設された水底地盤の洗掘を効果的に抑制できる洗掘抑制体および洗掘抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の洗掘抑制体は、杭が打設された水底地盤の洗掘を抑制する洗掘抑制体において、透水性を有し、かつ、前記水底地盤の土砂が通り抜けることを抑制する多孔構造が複数層重なった状態で、前記水底地盤上の前記杭の根元部分の外周面の全周に当接した状態で環状に外嵌めされる本体部を有することを特徴とする。
本発明の別の洗掘抑制体は、杭が打設された水底地盤の洗掘を抑制する洗掘抑制体において、透水性を有し、かつ、前記水底地盤の土砂が通り抜けることを抑制する多孔構造が複数層重なった状態で、前記水底地盤上の前記杭の根元部分に環状に外嵌めされる本体部を有し、前記本体部が、網状部材により形成されている筒状で環状になる袋部材と、網状部材により形成されて前記袋部材に充填される芯部材とを有することを特徴とする。
本発明のさらに別の洗掘抑制体は、杭が打設された水底地盤の洗掘を抑制する洗掘抑制体において、透水性を有し、かつ、前記水底地盤の土砂が通り抜けることを抑制する多孔構造が複数層重なった状態で、前記水底地盤上の前記杭の根元部分に環状に外嵌めされる本体部を有し、前記本体部が、シート状の網状部材がロール状に巻かれて前記シート状の網状部材が複数層重なった構造であることを特徴とする。
【0007】
本発明の洗掘抑制方法は、杭を打設した水底地盤の洗掘を抑制する洗掘抑制方法において、洗掘抑制体を構成する透水性を有し、かつ、前記水底地盤の土砂が通り抜けることを抑制する多孔構造が複数層重なった状態の本体部を、前記水底地盤上の前記杭の根元部分の外周面の全周に当接させた状態で環状に外嵌めすることを特徴とする。
本発明の別の洗掘抑制方法は、杭を打設した水底地盤の洗掘を抑制する洗掘抑制方法において、洗掘抑制体を構成する透水性を有し、かつ、前記水底地盤の土砂が通り抜けることを抑制する多孔構造が複数層重なった状態の本体部を、前記水底地盤上の前記杭の根元部分に環状に外嵌めし、前記本体部は、網状部材により形成されている筒状で環状になる袋部材と、網状部材により形成されて前記袋部材に充填される芯部材とを有する構成にすることを特徴とする。
本発明のさらに別の洗掘抑制方法は、杭を打設した水底地盤の洗掘を抑制する洗掘抑制方法において、洗掘抑制体を構成する透水性を有し、かつ、前記水底地盤の土砂が通り抜けることを抑制する多孔構造が複数層重なった状態の本体部を、前記水底地盤上の前記杭の根元部分に環状に外嵌めし、前記本体部は、シート状の網状部材がロール状に巻かれて前記シート状の網状部材が複数層重なった構造にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、洗掘抑制体を構成する透水性を有して多孔構造である本体部を水底地盤上の杭の根元部分に環状に外嵌めすることで、水流が杭に当たることで生じる下降流が本体部の多孔構造に流入して効果的に減衰され、杭の根元付近において馬蹄形渦および後流渦が発生し難くなる。さらに、本体部により杭の根元付近の水底土砂が飛散することを抑えることができる。それ故、簡素な構成でありながら、杭が打設された水底地盤の洗掘を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る実施形態の洗掘抑制体が杭に設置された状態を側面視で例示する説明図である。
【
図2】
図1の洗掘抑制体を拡大して縦断面視で例示する説明図である。
【
図3】
図1の洗掘抑制体を横断面視で例示する説明図である。
【
図4】
図2の本体部が杭の根元付近の水底の窪みに嵌っている状態を縦断面視で例示する説明図である。
【
図5】
図1の洗掘抑制体に加えてさらに小型の洗掘抑制体が杭に設置された状態を縦断面視で例示する説明図である。
【
図6】水底地盤上に形成したフィルター層とアーマー層の上に洗掘抑制体が設置された状態を側面視で例示する説明図である。
【
図7】本発明に係る別の実施形態の洗掘抑制体が杭に設置された状態を縦断面視で例示する説明図である。
【
図8】
図7の洗掘抑制体を横断面視で例示する説明図である。
【
図9】
図7の袋詰根固材を設置する以前の状態を横断面視で例示する説明図である。
【
図10】本発明に係るさらに別の実施形態の洗掘抑制体が杭に設置された状態を縦断面視で例示する説明図である。
【
図11】
図10の洗掘抑制体を横断面視で例示する説明図である。
【
図12】
図10の洗掘抑制体を杭に設置する以前の状態を平面視で例示する説明図である。
【
図13】
図12の状態から杭を水底地盤に打設し、洗掘抑制シートに錘部材を設置した状態を横断面視で例示する説明図である。
【
図14】本発明に係るさらに別の実施形態の洗掘抑制体が杭に設置された状態を横断面視で例示する説明図である。
【
図15】
図14の洗掘抑制体を杭に設置する以前の状態を横断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の洗掘抑制体および洗掘抑制方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1~
図3に例示する本発明の洗掘抑制体1は、杭30が打設された水底地盤Gの洗掘を抑制する。この実施形態では、洋上風力発電装置20の基礎となる杭(パイル)30に設置した洗掘抑制体1を例示している。洋上風力発電装置20は、油圧ハンマ等の杭打機を使用して杭30を水底地盤Gに打設した後に、杭30の上部に風車を有する上部構造体40を固定することで構築する。
【0012】
図2および
図3に示すように、洗掘抑制体1は、透水性を有し、かつ、水底地盤Gの土砂が通り抜けることを抑制する多孔構造である本体部2を有している。本体部2は、水底地盤G上の杭30の根元部分に環状に外嵌めされる。この実施形態の洗掘抑制体1はさらに、本体部2を杭30に締め付ける紐状体4を有している。
【0013】
本体部2の多孔構造は、多数の空隙が入り組んだ構造であることが好ましい。本体部2は、例えば、網状部材によって形成される。より具体的には、本体部2は、例えば、シート状の網状部材をロール状(巻物状)に巻くことで形成される。本体部2を前述した構造にする場合には、重なり合う網状部材の網目どうしがずれるように巻き、シート状の網状部材が例えば、5層以上、好ましくは10層以上、より好ましくは30層以上重なる構造にすることが好ましい。この実施形態の本体部2は、紐状体4が挿通可能な筒状に形成されている。この本体部2は、湾曲可能な管体の外側に、シート状の網状部材がロール状に巻かれた筒状の構造になっていて、管体の貫通孔3に紐状体4が挿通する構成になっている。
【0014】
本体部2は、他にも例えば、糸状樹脂が立体的に絡み合った網状部材(立体網状樹脂材)によって形成することもできる。本体部2は、他にも例えば、網状部材により形成されている筒状で環状になる袋部材と、網状部材により形成されて袋部材に充填される芯部材とを有する構成にすることもできる。言い換えると、本体部2は、網状の袋部材の中に、芯部材としてシート状の網状部材や糸状樹脂が立体的に絡み合った網状部材を詰めた構造にすることもできる。袋部材と芯部材は同じ素材で形成することもできるし、異なる素材で形成することもできる。
【0015】
本体部2の多孔構造の1つ1つの空隙(網目)の開口面積(開孔面積)は、例えば、100mm2~10000mm2程度、より好ましくは2500mm2~6500mm2程度であるとよい。本体部2の多孔構造の開口率は、例えば、20%~80%、より好ましくは30%~70%であるとよい。本体部2は伸縮性を有することが好ましい。本体部2を形成する素材は特に限定されないが、例えば、ポリエステルやポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成繊維で形成するとよい。
【0016】
図3に示すように、この実施形態の本体部2は、複数の分割体2aで構成されている。それぞれの分割体2aの貫通孔3に紐状体4が挿通していて、紐状体4により複数の分割体2aが連結されている。
【0017】
この実施形態では、円筒状の本体部2を例示しているが、本体部2は杭30に環状に外嵌めできる形状であればよく、例えば、多角筒状や円柱状、多角柱状などのその他の形状にすることもできる。本体部2は複数の分割体2aで構成する場合に限らず、例えば、1本の長尺の部材で構成することもできる。
【0018】
本体部2の比重は、杭30が打設されている水域の水(淡水或いは海水)の比重よりも大きいことが好ましい。具体的には、本体部2の比重は1.05以上、より好ましくは1.20以上であるとよい。本体部2を比較的比重の小さい素材で形成する場合には、本体部2に錘を設けて比重を調整することもできる。
【0019】
水底地盤Gに打設された杭30に洗掘抑制体1を設置する作業は例えば、潜水士が行う。本体部2は、杭30の根元部分の外周面に当接させた状態で外嵌めすることが好ましい。この実施形態では、それぞれの分割体2aの貫通孔3に紐状体4を通して複数の分割体2aを連結することで本体部2を形成する。そして、隣り合う分割体2aの端部どうしを当接させた状態で、本体部2を杭30の根元部分の外周面の全周に当接させた状態で環状に外嵌めする。次いで、紐状体4により、本体部2を杭30の外周面に締め付けた状態で、紐状体4の端部どうしを固定具5で固定する。本体部2は、下端部を水底地盤Gに接地させた状態にする。
【0020】
紐状体4によって本体部2を締め付ける強さは、本体部2が杭30の外周面に当接した状態を維持しつつ、本体部2が水底地盤Gに当接する位置まで自重で自然に下降する程度の強さに設定するとよい。
図4に示すように、杭30の打設時に杭30の根元付近の水底地盤Gに窪みが生じている場合には、洗掘抑制体1を水底地盤Gの窪みに嵌め込むように設置するとよい。
【0021】
このように、本発明では、洗掘抑制体1を構成する透水性を有して多孔構造である本体部2を水底地盤G上の杭30の根元部分に環状に外嵌する。これにより、水流が杭30に当たることで生じる下降流DFが本体部2の多孔構造に流入して効果的に減衰され、杭30の根元付近において洗掘の原因となる馬蹄形渦および後流渦が発生し難くなる。さらに、本体部2によって杭30の根元付近の水底地盤Gが覆われることで、杭30の根元付近の水底土砂が飛散することを抑えることができる。また、下降流DFの水の勢いが本体部2によって減衰されることで、本体部2よりも外側の水底地盤Gも洗掘され難くなる。そのため、簡素な構成でありながら、杭30が打設された水底地盤Gの洗掘を効果的に抑制できる。
【0022】
本発明では、従来技術のように重厚長大な構造物を製造する必要はなく、洗掘抑制体1は簡易に比較的低コストで作成できる。さらに、洗掘抑制体1を杭30に設置する作業は、比較的容易に短時間で行える。洗掘抑制体1は、新規に打設する杭30に限らず、既設の杭30に対しても容易に設置できる。また、本体部2は基本的には20年~30年程度は交換する必要がなく、長期間に渡って水底地盤Gの洗掘を抑制できる。例えば、杭30のメンテナンスや劣化調査等で杭30から洗掘抑制体1を取り外す必要が生じた場合にも、洗掘抑制体1は杭30から容易に取り外すことが可能であり、洗掘抑制体1を杭30に再度装着する作業も容易に短時間で行える。それ故、当業者にとって非常に有益である。
【0023】
本体部2が伸縮性を有する構成にすると、杭30に本体部2を外嵌めしたときに、本体部2が杭30の外周面の形状に合わせて変形することで、杭30の外周面と本体部2との間にすき間がより生じ難くなる。また、本体部2が水底地盤Gの形状に合わせて変形することで、水底地盤Gと本体部2との間にもすき間がより生じ難くなる。さらに、伸縮性を有する本体部2を杭30に適度な締め付け強さで外嵌めすることで、本体部2が杭30の外周面に当接した状態を維持しつつ、本体部2が水底地盤Gに当接する位置まで自重で自然に下降する構成にすることができる。それ故、杭30の根元付近の水底土砂が流出するすき間が生じ難くなり、水底地盤Gの洗掘を抑制するにはより一層有利になる。特に、本体部2を網状部材によって形成すると、本体部2を杭30に外嵌めしたときに、杭30の外周面の形状に合わせて網状部材が伸縮するため、杭30の根元付近の水底土砂が流出するすき間が生じ難くなり、水底地盤Gの洗掘を抑制するには非常に有利になる。
【0024】
本体部2の比重が1.05以上、より好ましくは1.20以上であると、本体部2が水域の水(淡水や海水)の比重よりも大きいことで、本体部2が水流の力を受けた場合にも本体部2が水底地盤Gから浮き難くなる。また、例えば、長期間にわたって杭30の根元部分の水底地盤Gが徐々に洗掘されて杭30の根元部分に窪みが生じた場合にも、本体部2が自重により自然に下降して、本体部2が水底地盤Gの窪みに嵌り込んだ状態となる。それ故、本体部2と水底地盤Gとの間にすき間が生じ難くなり、水底地盤Gの洗掘を長期間に渡って抑制するには益々有利になる。
【0025】
紐状体4によって本体部2を杭30に締め付けた構成にすると、杭30に対して本体部2を簡易に安定して巻装できる。さらに、紐状体4を用いることで、本体部2を杭30に締め付ける力を、本体部2が杭30の外周面に当接した状態を維持しつつ、本体部2が水底地盤Gに当接する位置まで自重で自然に下降する程度の強さに調整し易くなる。
【0026】
本体部2を複数の分割体2aで構成すると、本体部2が分割体2aどうしの継ぎ目部分でより曲がり易くなるので、本体部2を杭30に外嵌めし易くなる。また、例えば、本体部2(分割体2a)を柔軟性の低い素材で形成した場合にも、複数の湾曲した分割体2aをそれぞれ杭30の外周面に嵌め込むように設置することで、杭30の全周に本体部2を外嵌めすることが可能になる。さらに、本体部2を複数の分割体2aに分離できるので搬送をより行い易くなる。本体部2を紐状体4が挿通可能な筒状にすると、本体部2を複数の分割体2aで構成する場合にも、本体部2を杭30に外嵌めする作業を非常に容易に行える。
【0027】
上記では、水底地盤Gに杭30を打設した後に、洗掘抑制体1を巻装する場合を例示したが、例えば、杭30に予め洗掘抑制体1を巻装しておき、洗掘抑制体1を装着した状態の杭30を水底地盤Gに打設することもできる。この場合には、杭30を打設し終えたときに洗掘抑制体1が水底地盤G上の杭30の根元部分に位置するように、打設前の杭30に対する洗掘抑制体1の設置位置を設定しておくとよい。
【0028】
図5に洗掘抑制体1を使用した洗掘抑制構造の別の実施形態を例示する。この実施形態では、
図1~
図4に例示した洗掘抑制構造に加えて、さらに、杭30の根元部分に小型の洗掘抑制体1Aを設置している。即ち、この実施形態では、1本の杭30に対して複数の洗掘抑制体1、1Aを設置している。
【0029】
図5に示すように、この実施形態では、比較的大きい主となる洗掘抑制体1の内側の下側面と杭30の外周面との間にある空間に、小型の洗掘抑制体1Aを巻装している。小型の洗掘抑制体1Aも主となる洗掘抑制体1と同様に、透水性を有し、かつ、水底地盤Gの土砂が通り抜けることを抑制する多孔構造である本体部2を有して構成されている。小型の洗掘抑制体1Aは主となる洗掘抑制体1よりも細く形成されている。
【0030】
この実施形態では、まず、小型の洗掘抑制体1Aの本体部2を、杭30の根元部分の外周面に当接させた状態で外嵌めする。そして、紐状体4などを用いて、小型の洗掘抑制体1Aの本体部2を杭30の外周面に締め付けた状態で固定する。次いで、小型の洗掘抑制体1Aの上から被せるようにして、主となる洗掘抑制体1の本体部2を、杭30の根元部分の外周面に巻装する。
【0031】
主となる洗掘抑制体1の本体部2を複数の分割体2aで構成する場合には、本体部2の分割体2aどうしの継ぎ目部分に微小なすき間が生じる場合もあるが、このように、小型の洗掘抑制体1Aを設置することでそのすき間を塞ぐことができる。それ故、前述したすき間に下降流DFが流れ込んだ場合にも、その下降流DFの勢いを小型の洗掘抑制体1Aの本体部2によって減衰させることができる。また、小型の洗掘抑制体1Aの本体部2は、径が比較的小さいため、1本の長尺部材や少数の分割体2aで形成した場合にも湾曲し易く、小型の洗掘抑制体1Aの本体部2と杭の外周面との間にはすき間が生じ難い。それ故、小型の洗掘抑制体1Aを付設することで、杭30の根元付近の水底土砂がより飛散し難くなり、水底地盤Gの洗掘を抑制するにはより一層有利になる。
【0032】
この実施形態では、主となる洗掘抑制体1の内側の下側面と杭30の外周面との間にある空間に、小型の洗掘抑制体1Aを設置した場合を例示したが、例えば、複数の洗掘抑制体1を上下方向に重ねて設置することもできる。上下方向に複数の洗掘抑制体1を重ねることで、下降流DFを減衰させる効果と水底土砂の飛散を抑制する効果がより高くなり、洗掘を抑制するには有利になる。
【0033】
図6に洗掘抑制体1を使用した洗掘抑制構造のさらに別の実施形態を例示する。この実施形態では、打設した杭30の周囲の水底地盤G上に比較的粒径が小さい石材(粒径が例えば、5mm~20mm程度)を敷き詰めたフィルター層50を形成している。そして、フィルター層50の上に比較的粒径の大きい石材(粒径が例えば、20mm~50mm程度)を敷き詰めたアーマー層51を形成している。そして、アーマー層51の上に洗掘抑制体1を設置している。
【0034】
このように、水底地盤G上にフィルター層50とアーマー層51を設けると、フィルター層50とアーマー層51によって杭30の周辺領域の水底地盤Gが洗掘されることを抑制できる。さらに、フィルター層50およびアーマー層51の上方に洗掘抑制体1を設置することで、下降流DFによってフィルター層50およびアーマー層51を形成している石材が流されることを抑制できる。それ故、フィルター層50およびアーマー層51の洗掘抑制機能を長期間に渡って維持することができ、杭30の周辺領域の洗掘を抑制するには益々有利になる。
【0035】
図7~
図9に本発明の洗掘抑制体1を使用した洗掘抑制構造のさらに別の実施形態を例示する。
図9に示すように、この実施形態の洗掘抑制体1の本体部2は杭30に対して外側に突出して延在する突出シート部2bを有している。この実施形態の本体部2を構成する分割体2aは、透水性を有して水底地盤Gの土砂が通り抜けることを抑制するシート部材をロール状(巻物状)に巻いた構造になっている。そして、本体部2(分割体2a)のロール状の部分からシート部材の後部(尻尾部分)を引き出すことで、その引き出した部分が突出シート部2bとして機能する構成になっている。
【0036】
図7および
図8に示す洗掘抑制構造を形成する場合には、まず、
図9に示すように、本体部2を、杭30の根元部分に巻装する。そして、それぞれの分割体2aに設けられている突出シート部2bを外側に向かって広げて、突出シート部2bを水底地盤G上に敷いた状態にする。この際、隣り合う分割体2aの突出シート部2bの端部どうしが重なり、隣り合う突出シート部2bどうしの間にすき間が生じない構成にすることが好ましい。この実施形態では、それぞれの突出シート部2bが杭30に対して内側から外側に向かって広がる扇状に形成されていることで、隣り合う突出シート部2bの端部どうしが重なり合う構成になっている。次いで、
図7および
図8に示すように、突出シート部2bの上に錘部材12を設置する。この実施形態では、錘部材12として袋に石材を詰めた袋詰根固材12aを設置している。
【0037】
このように、本体部2が突出シート部2bを有する構成にすると、杭30に本体部2を外嵌めするとともに突出シート部2bによって水底地盤Gを速やかに覆うことができる。それ故、少ない作業工数でより広い範囲の洗掘を早期により確実に抑制できる。なお、この実施形態では、本体部2を形成する複数の分割体2aにそれぞれ突出シート部2bを設けた場合を例示したが、例えば、本体部2を1本の長尺部材や少数の分割体2aで構成する場合にも、本体部2の外周側に延在方向の異なる複数の突出シート部2bを設けておけば、前述した実施形態と同様に突出シート部2bによって杭30の周辺領域を覆うことができる。
【0038】
この実施形態では、本体部2(分割体2a)の多孔構造を形成するシート部材の後部を突出シート部2bとして機能させているが、例えば、本体部2の多孔構造を有する部位に突出シート部2bを形成する別のシート部材を付設した構成にすることもできる。突出シート部2bは透水性を有し、かつ、水底地盤Gの土砂が通り抜けることを抑制できる構成であれば、形状やサイズはこの実施形態に限定されず、他にも様々な構成にすることできる。
【0039】
図10~
図13に本発明の洗掘抑制体1を使用した洗掘抑制構造のさらに別の実施形態を例示する。この実施形態では、洗掘抑制体1に加えて、さらに、洗掘抑制シート6を設けている。また、
図1~
図4に例示した実施形態と洗掘抑制体1の構造が若干異なっている。
【0040】
図10および
図11に示すように、この実施形態では、水底地盤Gに打設した杭30の周辺領域を洗掘抑制シート6で被覆し、杭30の外周面と洗掘抑制シート6との間のすき間を洗掘抑制体1の本体部2によって塞いでいる。この実施形態では、水底地盤G上に洗掘抑制シート6を敷設した後に、杭30を洗掘抑制シート6に貫通させて水底地盤Gに打設し、その後、杭30に洗掘抑制体1を設置する場合を例示している。
【0041】
洗掘抑制シート6は透水性を有することが好ましい。洗掘抑制シート6は、例えば、水底地盤Gの土砂が通過しない程度に目が細かい布材やメッシュ材で構成される。この実施形態の洗掘抑制シート6は、透水性を有して杭30の周辺領域の水底土砂の飛散を抑制する透水性シート部材7と、伸び抑制シート部材8とを有して構成されている。伸び抑制シート部材8は、透水性シート部材7よりも伸縮性が低いシート部材で構成される。伸び抑制シート部材8は、非伸縮性のシート部材で構成することが好ましい。伸び抑制シート部材8は任意で設けることができ、例えば、洗掘抑制シート6が伸び抑制シート部材8を有さない構成にすることもできる。
【0042】
透水性シート部材7が伸縮性を有する場合に、透水性シート部材7だけでは、杭30を洗掘抑制シート6(透水性シート部材7)に貫通させて水底地盤Gに打設する際に、透水性シート部材7に意図しない伸びや撚れが生じ、杭30が透水性シート部材7に円滑に貫通し難い場合がある。そこで、この実施形態では、杭30を洗掘抑制シート6の打設目標範囲に貫通させて水底地盤Gに打設する際に、透水性シート部材7の打設目標範囲の伸びを抑制する伸び抑制シート部材8を、透水性シート部材7の打設目標範囲に重ねて一体化している。この実施形態では、透水性シート部材7と伸び抑制シート部材8とを縫い合わせて一体化しているが、例えば、透水性シート部材7に伸び抑制シート部材8を接着剤や溶着等により接着することもできる。
【0043】
この実施形態では、伸び抑制シート部材8を透水性シート部材7の上側に重ねているが、伸び抑制シート部材8を透水性シート部材7の下側に重ねた構成にすることもできる。また、例えば、透水性シート部材7の上側と下側にそれぞれ伸び抑制シート部材8を重ねた構成にすることもできる。洗掘抑制シート6は、例えば、透水性シート部材7を2枚以上重ねた構造や伸び抑制シート部材8を3枚以上重ねた構造にすることもできる。
【0044】
この実施形態では、さらに、杭30が洗掘抑制シート6の打設目標範囲に貫通して水底地盤Gに打設される際に、洗掘抑制シート6の打設目標範囲を緊張した状態(張った状態)に維持する緊張維持構造として、洗掘抑制シート6の打設目標範囲を囲む仕切り枠部9が設けられている。この実施形態では、仕切り枠部9として帯状のベルトが、洗掘抑制シート6の打設目標範囲を囲むように平面視で環状に配置されている。この実施形態の仕切り枠部9(ベルト)は、透水性シート部材7および伸び抑制シート部材8に縫い付けられて、透水性シート部材7および伸び抑制シート部材8と一体化されている。
【0045】
洗掘抑制シート6の周縁には、洗掘抑制シート6の撚れを抑制する周縁部10が設けられている。この実施形態では、周縁部10として帯状のベルトが、洗掘抑制シート6(透水性シート部材7)の周縁に平面視で環状に縫い付けられて一体化されている。
【0046】
仕切り枠部9と周縁部10にはそれぞれ、錘部材12を連結可能な連結部11が設けられている。この実施形態では、錘部材12として金属製のチェーンが用いられており、仕切り枠部9の連結部11と周縁部10の連結部11とにそれぞれ錘部材12(チェーン)が連結具13によって連結されている。連結部11は任意で設けることができる。例えば、仕切り枠部9または周縁部10のいずれか一方だけに連結部11を設けることもできる。仕切り枠部9と周縁部10は、帯状のベルトに限らず、例えば、板状部材や棒状部材などで構成することもできる。
図12に示すように、洗掘抑制シート6の打設目標範囲には杭30を貫通させ易いように放射状にスリットを形成しておくとよい。
【0047】
この洗掘抑制構造を構築する作業手順は以下の通りである。
図12に示すように、吊治具等を用いて洗掘抑制シート6を水底地盤Gに向かって吊り降ろし、水底地盤G上に洗掘抑制シート6を敷く。次いで、
図13に示すように、洗掘抑制シート6に錘部材12を設置して洗掘抑制シート6を水底地盤G上に固定する。この実施形態では、仕切り枠部9と周縁部10に設けられている連結部11に錘部材12としてチェーンを連結具13によって連結する。例えば、陸上や船上で予め洗掘抑制シート6に錘部材12を連結しておき、錘部材12が連結された状態の洗掘抑制シート6を水底地盤G上に敷設することもできる。
【0048】
次いで、透水性シート部材7と伸び抑制シート部材8とが重なっている洗掘抑制シート6の打設目標範囲を貫通させて杭30を水底地盤Gに打設する。杭30を洗掘抑制シート6の打設目標範囲に貫通させる際には、洗掘抑制シート6の打設目標範囲(透水性シート部材7の打設目標範囲および伸び抑制シート部材8)を緊張させた状態にすることが好ましい。
【0049】
その後、
図10および
図11に示すように、水底地盤G上の杭30の根元部分に洗掘抑制体1を設置する。具体的には、水底地盤G上の杭30の根元部分に本体部2を環状に外嵌めすることにより、杭30の外周面と洗掘抑制シート6との間のすき間を本体部2によって塞いだ状態にする。この実施形態では、円柱状の本体部2を杭30の外周に環状に外嵌めし、本体部2の外周に環状に巻き付けた紐状体4によって、本体部2を杭30に締め付けて、紐状体4の端部どうしを固定具5によって固定している。
【0050】
この実施形態のように、水底地盤Gに打設した杭30の周辺領域を洗掘抑制シート6で被覆し、杭30の外周面と洗掘抑制シート6との間のすき間を本体部2によって塞いだ状態にすると、杭30の周辺領域の広い範囲が洗掘抑制シート6によって覆われることで、水底地盤Gの洗掘を抑制するにはより有利になる。透水性を有する洗掘抑制シート6を用いると、水底地盤Gに敷設した洗掘抑制シート6の揚圧力が高まることを抑制でき、洗掘抑制シート6がより浮き難くなるので、洗掘抑制シート6を水底地盤Gにより安定して敷設できる。透水性を有する洗掘抑制シート6を用いることで、吊治具等を用いて洗掘抑制シート6を水底地盤Gに向かって吊り降ろす作業も行い易くなる。
【0051】
杭30を打設した後に、杭30の周囲に水底地盤Gの洗掘を抑制する石材を敷き詰める工法では、杭30を打設してから石材を敷き詰め終わるまでに多くの時間を要し、施工が完了するまでに杭30の周辺領域の洗掘が進行してしまう可能性がある。それに対して、この実施形態のように、水底地盤G上に洗掘抑制シート6を敷設した後に、杭30を洗掘抑制シート6に貫通させて水底地盤Gに打設すると、杭30を水底地盤Gに打設した時点で、洗掘抑制シート6により杭30の周辺領域の水底地盤Gの洗掘が抑制された状態になる。また、洗掘抑制シート6に杭30を貫通させると、洗掘抑制シート6の一部が杭30に追従して水底地盤G中に挿入された状態になるので、杭30の根元部分において杭30の外周面と洗掘抑制シート6の貫通孔の内周縁との間にすき間が生じ難くなる。さらに、杭30の外周面と洗掘抑制シート6の貫通孔の内周縁との間にすき間がある場合にも、杭30の根元部分に洗掘抑制体1を設置することで、そのすき間を速やかに塞ぐことができる。それ故、この洗掘抑制シート6と洗掘抑制体1を使用した洗掘抑制方法は、杭30の周辺領域の洗掘を抑制するには非常に有利である。
【0052】
洗掘抑制シート6に仕切り枠部9を設けると、仕切り枠部9によって洗掘抑制シート6の打設目標範囲の外周が拘束されることで、杭30を洗掘抑制シート6の打設目標範囲に貫通させる際に、洗掘抑制シート6の打設目標範囲が緊張した状態に維持される。これにより、杭30の打設時に洗掘抑制シート6の打設目標範囲が弛むことや撚れることをより確実に抑制できるので、洗掘抑制シート6に杭30を円滑に貫通させ易くなる。また、仕切り枠部9を設けることで、杭30を洗掘抑制シート6に貫通させる際に、洗掘抑制シート6の打設目標範囲に生じる裂け目が仕切り枠部9よりも外側に広がることを堰き止めることができる。さらに、仕切り枠部9に連結部11を設けると、仕切り枠部9の連結部11に錘部材12を連結することで、杭30を洗掘抑制シート6に貫通させる際に、洗掘抑制シート6の打設目標範囲が弛むことや撚れることをより確実に抑制できる。それ故、洗掘抑制シート6に杭30をより円滑に貫通させ易くなる。
【0053】
洗掘抑制シート6に周縁部10を設けると、水中において洗掘抑制シート6を安定して敷設し易くなる。さらに、周縁部10に連結部11を設けると、周縁部10の連結部11に錘部材12を連結することで、水中において洗掘抑制シート6が暴れ難くなり、洗掘抑制シート6をより敷設し易くなる。また、水中において洗掘抑制シート6が弛むことや浮き上がることを効果的に抑制でき、洗掘抑制シート6により水底土砂の飛散を抑制するにはより有利になる。
【0054】
洗掘抑制シート6が、透水性シート部材7と、透水性シート部材7の打設目標範囲に重ねて一体化された伸び抑制シート部材8とを有する構成にすると、杭30を洗掘抑制シート6に貫通させる際に、透水性シート部材7よりも伸縮性の低い伸び抑制シート部材8によって、透水性シート部材7の打設目標範囲が伸びることを抑制できる。それ故、洗掘抑制シート6に杭30をより円滑に貫通させ易くなる。
【0055】
図14および
図15に本発明の洗掘抑制体1を使用した洗掘抑制構造のさらに別の実施形態を示す。この実施形態では、
図10~
図13に例示した実施形態と、洗掘抑制シート6および錘部材12の構成が異なっている。この実施形態では、既設の杭30に対して洗掘抑制シート6を敷設し、その後に杭30に洗掘抑制体1を設置する場合を例示している。
【0056】
図15に示すように、この実施形態では、水底地盤Gに打設されている杭30を囲むように、杭30の周辺領域の水底地盤G上に複数枚の洗掘抑制シート6を敷設している。そして、洗掘抑制シート6上に袋体に石材を詰めた錘部材12(袋詰根固材12a)を載置することで、洗掘抑制シート6を水底地盤G上に固定している。このように、複数枚の洗掘抑制シート6を敷設する場合には、隣り合う洗掘抑制シート6の端部どうしをオーバーラップさせた状態で敷設することが好ましい。その後、
図14に示すように、水底地盤G上の杭30の根元部分に本体部2を環状に外嵌めし、杭30の外周面と洗掘抑制シート6との間のすき間を本体部2によって塞いでいる。
【0057】
このように、既設の杭30に対して洗掘抑制シート6を敷設する場合にも、杭30の周辺領域の広い範囲が洗掘抑制シート6によって覆われることで、水底地盤Gの洗掘を抑制するにはより有利になる。さらに、杭30の根元部分に洗掘抑制体1の本体部2を外嵌めすることで、杭30の外周面と洗掘抑制シート6との間のすき間を簡易に塞ぐことができ、杭30が打設された水底地盤Gの洗掘を効果的に抑制できる。
【0058】
なお、洗掘抑制体1は、洋上風力発電装置20を構成する杭30に限らず、その他の水底地盤Gに打設される杭30に設置することもできる。上記で例示した実施形態では、紐状体4の端部どうしを固定具5によって固定する場合を例示したが、例えば、紐状体4の端部どうしを結んで固定することもできる。杭30に対して本体部2を外嵌めする構造は上記で例示した実施形態に限定されず、例えば、紐状体4を用いずに、本体部2の対向する端部にそれぞれフックなどの連結具を設けておき、本体部2の端部どうしを連結することで、本体部2を杭30に外嵌めすることもできる。また、下降流DFの勢いを抑制するには、上記で例示したように、洗掘抑制シート6の上側に洗掘抑制体1を設置することが好ましいが、例えば、先に杭30に洗掘抑制体1を設置しておき、その後、洗掘抑制体1の上側に洗掘抑制シート6を被せて敷設した場合にも、杭30が打設された水底地盤Gの洗掘を抑制することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 洗掘抑制体
1A 小型の洗掘抑制体
2 本体部
2a 分割体
2b 突出シート部
3 貫通孔
4 紐状体
5 固定具
6 洗掘抑制シート
7 透水性シート部材
8 伸び抑制シート部材
9 仕切り枠部
10 周縁部
11 連結部
12 錘部材
12a 袋詰根固材
13 連結具
20 洋上風力発電装置
30 杭
40 上部構造体
50 フィルター層
51 アーマー層
G 水底地盤
DF 下降流
【要約】
【課題】簡素な構成でありながら、杭が打設された水底地盤の洗掘を効果的に抑制できる洗掘抑制体および洗掘抑制方法を提供する。
【解決手段】洗掘抑制体1を構成する透水性を有し、かつ、水底地盤Gの土砂が通り抜けることを抑制する多孔構造である本体部2を、水底地盤G上の杭30の根元部分に環状に外嵌めすることで、杭30の根元部分における馬蹄形渦および後流渦の発生と水底土砂の飛散を抑制する。
【選択図】
図2