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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】吹出口装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/06 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
F24F13/06 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018007265
(22)【出願日】2018-01-19
(65)【公開番号】P2019124438
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301062226
【氏名又は名称】株式会社日本設計
(73)【特許権者】
【識別番号】000164553
【氏名又は名称】空研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591219429
【氏名又は名称】空調技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】矢島 大督
(72)【発明者】
【氏名】栫 弘之
(72)【発明者】
【氏名】中島 洋一
(72)【発明者】
【氏名】上野 景太
(72)【発明者】
【氏名】住吉 佑真
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-290910(JP,A)
【文献】特開平09-145139(JP,A)
【文献】特開平11-294841(JP,A)
【文献】特開2000-046409(JP,A)
【文献】実開平01-153438(JP,U)
【文献】実開平01-063949(JP,U)
【文献】特開2014-126313(JP,A)
【文献】特開2011-052926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊支された天井材による天井面が形成されず天井躯体を露出させた空気調和対象空間で、天井躯体から吊り下げて配設され、空気調和対象空間に調和空気を吹出す吹出口装置において、
中空の略箱状体として形成され、上面に調和空気を供給される開口部を設けられると共に、側面に横長のスリット状とされる調和空気吹出用の開口部を設けられ、天井躯体から吊り下げて配設される吹出口本体と、
前記吹出口本体の内部における前記側面の開口部近傍部分に、開口部長手方向と平行な向きの傾動中心軸周りに傾動可能として配置される複数の案内羽根と、
前記吹出口本体内に配設され、調和空気の温度に応じて作動して案内羽根を傾動可能とする羽根駆動部と、
吹出口本体における各開口の案内羽根より内側の部位に、開口の正面方向に対し傾けた配置で複数並べて設けられ、調和空気を案内して吹出気流に横方向の速度成分を与える気流偏向板とを備え
前記吹出口本体が、天井躯体から所定距離離れた空気調和対象空間の所定位置に固定されて、天井躯体の空気調和対象空間に露出した状態が維持されることを
特徴とする吹出口装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の吹出口装置において、
前記吹出口本体の下面の少なくとも一部が、多数の孔が所定パターンで穿設された有孔部とされてなり、
調和空気の一部が、前記有孔部の各孔を通じて室内空間に下向きの気流として吹出すことを
特徴とする吹出口装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載の吹出口装置において、
前記吹出口本体の内部に、前記有孔部全体を上から覆える大きさの遮蔽板を上下位置調整可能に設けることを
特徴とする吹出口装置。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載の吹出口装置において、
前記吹出口本体の各側面の外側に、開口部以外の側面全体を覆うように取り付けられ、側面に対し断熱状態とされるカバーを備えることを
特徴とする吹出口装置。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれかに記載の吹出口装置において、
前記吹出口本体の下面が、吹出口本体内部の調和空気により温度変化し、室内空間内の物体や室内空気に対し熱放射で熱を放出する、又は、室内空間内の物体や室内空気からの熱放射を受けて熱を吸収する、放射熱授受部とされることを
特徴とする吹出口装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和の対象となる室内空間のうち、天井材が省略され、天井躯体が室内空間に露出した、いわゆるスケルトン天井とされた室内空間で、天井躯体から吊り下げて配設され、吹出用開口部分から室内空間に対し調和空気を吹出す吹出口装置に関する。
【背景技術】
【0002】
在来天井やシステム天井等の一般的な吊り構造の天井(二重天井)を構成する天井材が省略され、コンクリートスラブやデッキプレート等の天井躯体が室内空間に露出した、いわゆるスケルトン天井とされた室内空間において、吹出口を設けて空気調和を行う場合、入手性等の観点から、従来の吊り構造の天井設置型の吹出口装置を流用する、具体的には、吹出口装置を天井躯体から吊り下げ設置して、こうした室内空間への空気調和に用いるのが一般的であった。
【0003】
従来の天井設置型の吹出口装置の例としては、特開2000-249393号公報や特開2001-133030号公報に記載されるものがある。
【0004】
こうした従来の吹出口装置をスケルトン天井の室内空間に設けた場合、天井躯体の下側に、吊り下げ支持された吹出口装置と、この吹出口装置に調和空気を供給するダクトとが、それぞれ室内空間に露出した状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-249393号公報
【文献】特開2001-133030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の天井設置型の吹出口装置は、前記各特許文献に示されるように、吊り構造の天井面にほぼ一致する下面の開口部から調和空気を吹出すものとなっている。そして、冷房時等の水平吹出の場合には、流体の流れが流れ近傍の平滑な面に引き寄せられる性質を利用して、開口部から斜め下方に吹出した調和空気の気流を周囲の天井面に引き寄せ、そのまま天井面に沿って流れる気流とすることで、調和空気を実質的に水平方向に進行させ、調和空気の気流の室内空間における到達距離を確保する仕組みとなっていた。
【0007】
こうした従来の吹出口装置をスケルトン天井の室内空間への空気調和に流用すると、スケルトン天井とされた室内空間においては、吊支された天井材による天井面が形成されず、また、天井躯体から吊り下げて設置される吹出口は、その下面が天井躯体から大きく離れる状態となることで、従来同様の水平吹出として下面開口部から吹出される調和空気を、天井躯体などの水平面に沿って進ませることはできなかった。
【0008】
このため、従来の吹出口装置をスケルトン天井の室内空間に用いた場合、調和空気の気流の水平方向への到達距離を十分に伸ばすことができず、室内空間に対する空気調和能力が不足する、という課題を有していた。
【0009】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、スケルトン天井に対応した吊り下げ設置状態でも、水平吹出の場合における気流の到達範囲を十分に大きくして、室内空間に対する空気調和効果を確保できる、吹出口装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る吹出口装置は、吊支された天井材による天井面が形成されず天井躯体を露出させた空気調和対象空間で、天井躯体から吊り下げて配設され、空気調和対象空間に調和空気を吹出す吹出口装置において、中空の略箱状体として形成され、上面に調和空気を供給される開口部を設けられると共に、側面に横長のスリット状とされる調和空気吹出用の開口部を設けられ、天井躯体から吊り下げて配設される吹出口本体と、前記吹出口本体の内部における前記側面の開口部近傍部分に、開口部長手方向と平行な向きの傾動中心軸周りに傾動可能として配置される複数の案内羽根と、前記吹出口本体内に配設され、調和空気の温度に応じて作動して案内羽根を傾動可能とする羽根駆動部と、吹出口本体における各開口の案内羽根より内側の部位に、開口の正面方向に対し傾けた配置で複数並べて設けられ、調和空気を案内して吹出気流に横方向の速度成分を与える気流偏向板とを備え、前記吹出口本体が、天井躯体から所定距離離れた空気調和対象空間の所定位置に固定されて、天井躯体の空気調和対象空間に露出した状態が維持されるものである。
【0011】
このように本発明によれば、天井躯体から吊り下げて設けられる略箱状の吹出口本体の側面に、横長スリット状の吹出用開口部を設けると共に、開口部に設けた案内羽根の向き調整で、調和空気の気流の吹出方向を水平から斜め下向きまでの間で可変として、冷房時に対応する水平吹出の場合には、横向きの開口部から調和空気の気流を直進させられることにより、開口部から吹出された気流が開口部正面の各方向に進むこととなり、天井躯体からの吊り下げ設置で吹出口周囲に天井面が存在せず、気流が天井面に付着する性質を利用できない状態であっても、開口部から吹出された気流が十分な到達距離を確保しつつ進行できる。また、案内羽根の向きを変えて気流の吹出方向を斜め下向きとすると、暖房時に対応でき、開口部から斜め下向きに吹出された温かい調和空気をすぐに上昇させることなく進行させて、室内空間における到達距離を十分に確保できる。
【0012】
さらに、各開口部の案内羽根より内側の部位に、開口部の正面方向に対し傾けた気流偏向板を設けて、各開口部の正面方向に対する横方向(左右方向)への気流の進行速度成分の大きさを調整することで、気流の正面側への到達距離と横方向への拡散範囲のバランスを適切なものとすることができる。
【0013】
また、本発明に係る吹出口装置は必要に応じて、前記吹出口本体の下面の少なくとも一部が、多数の孔が所定パターンで穿設された有孔部とされてなり、調和空気の一部が、前記有孔部の各孔を通じて室内空間に下向きの気流として吹出すものである。
【0014】
このように本発明によれば、吹出口本体の下面に多数の孔が所定パターンで穿設された有孔部を配置し、この有孔部の各孔を通じて一部の調和空気が下向きの気流として吹出すことにより、側面の開口部からの吹出のみでは、気流が開口部正面方向に向かう関係で、吹出口本体の直下に調和空気の気流が到達しにくい状況であっても、有孔部から下方に調和空気の一部を吹き出して、吹出口本体下方の居住域にも調和空気を送り込むことができ、空気調和の対象とならない部分が生じるのを防いで、吹出口位置を中心として室内空間の広い範囲に適切に空気調和を行える。
【0015】
特に暖房の場合、側面の開口部からの吹出のみでは、気流が室内空気に比べて軽く上昇しやすい暖気であるために、到達範囲が限定され、室内空気との混合による拡散が吹出口本体下方までは進まずに、温かい空気が吹出口本体の下方に到達しにくい状況であっても、有孔部から下方に調和空気の一部を吹き出すことにより、暖房の際に、上昇しやすい暖気をスムーズに室内空間の下方に向かわせることができ、暖房の効率を高められる。
【0016】
また、本発明に係る吹出口装置は必要に応じて、前記吹出口本体の内部に、前記有孔部全体を上から覆える大きさの遮蔽板を上下位置調整可能に設けるものである。
【0017】
このように本発明によれば、有孔部の上側に遮蔽板を上下位置調整可能に設け、吹出口本体の内部で遮蔽板を上下移動させると、遮蔽板と有孔部のある下面との間隔が変わるのに伴い、吹出口本体内における有孔部への調和空気の進行度合いを変化させられることにより、有孔部からの調和空気の吹出量を遮蔽板の位置調整で増減でき、有孔部の各孔を通じて下向きの気流として吹出す調和空気の、吹出口本体下方の領域への到達度合いを調整可能となり、室内空間の状況に応じた空気調和をより適切に実行できる。
【0018】
また、本発明に係る吹出口装置は必要に応じて、前記吹出口本体の各側面の外側に、開口部以外の側面全体を覆うように取り付けられ、側面に対し断熱状態とされるカバーを備えるものである。
【0019】
このように本発明によれば、吹出口本体の各側面に、開口部以外の側面各部を覆うカバーを取り付け、吹出口本体の側面と室内空気との接触を阻止することに加え、吹出口本体側面とカバーとの間で熱が伝わりにくい状態とすることにより、例えば冷房時には、温度の低下した吹出口本体側面に温かい室内空気が接触しないことに加え、カバーの表面温度が室内空気の温度に対し低下することがなく、吹出口本体側面部分における結露発生を確実に防止できる。また、例えば、表裏両面に接着剤又は粘着剤を配置した、断熱性のある材質からなるテープ材又はシート材を用いて、カバーを吹出口本体側面に対し貼り付けることで、カバーの側面に対する断熱状態を得るようにした場合には、カバーの断熱構造を簡易に形成でき、吹出口全体のコストを抑えられる。
【0020】
さらに、吹出口本体の各面をなす板状の部材同士を一体に接合するねじやリベット等の部品が吹出口本体側面に一部露出している場合に、そうした吹出口本体の側面がカバーで覆われることで、側面がカバーのみ見える状態となって美観が向上し、室内空間に違和感を与えることなく設置できる。
【0021】
また、本発明に係る吹出口装置は必要に応じて、前記吹出口本体の下面が、吹出口本体内部の調和空気により温度変化し、室内空間内の物体や室内空気に対し熱放射で熱を放出する、又は、室内空間内の物体や室内空気からの熱放射を受けて熱を吸収する、放射熱授受部とされるものである。
【0022】
このように本発明によれば、吹出口本体下面を、吹出口本体内部の調和空気の温度に応じた温度に変化して、室内空間の空気や各物体に対し放射熱をやり取りする放射熱授受部として、調和空気の吹出だけでなく熱放射で室内空間に対し温度変化を生じさせられることにより、室内空間における調和空気の気流の到達しにくい領域に対しても調和空気の影響を与えることができ、例えば調和空気の温度が高い暖房の場合は、吹出口本体下面の下方の居住域に熱を放射することで、居住域内の人からの放熱を少なくして体感温度を高められ、また、調和空気の温度が低い冷房の場合は、下方の居住域から放射される熱を吸収することで、人からの放熱を促して体感温度を低くすることができ、室内空間の快適性をより一層向上させられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置の吊り下げ設置状態説明図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置の正面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置の底面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置における吹出口本体内の気流偏向板及び案内枠の横断面説明図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置における案内羽根の横向き状態説明図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置における冷房時の吹出状態説明図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置における案内羽根の斜め向き状態説明図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置における暖房時の吹出状態説明図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る吹出口装置における遮蔽板の吹出口本体内への配設状態説明図である。
図10】本発明の第3の実施形態に係る吹出口装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置を前記図1ないし図8に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係る吹出口装置1は、空気調和対象の室内空間における天井躯体60から吊り下げて配設され、側面に調和空気吹出用の開口部12を設けられる略箱状の吹出口本体10と、この吹出口本体10の内部における側面の開口部近傍部分に傾動可能として配置される複数の案内羽根20と、吹出口本体10内で案内羽根20を調和空気の温度に応じて動かす羽根駆動部30と、吹出口本体10における案内羽根20より内側の部位に配設されて調和空気を案内する気流偏向板40とを備える構成である。
【0025】
前記吹出口本体10は、六面からなる中空の略箱状体として形成され、室内空間の天井躯体60から吊り下げて配設され、上面に調和空気を供給される開口部11を設けられると共に、各側面に横長のスリット状とされる調和空気吹出用の開口部12をそれぞれ設けられる構成である。
【0026】
吹出口本体10の上面における開口部11の周囲には、円筒状のネック部11aが突出状態で配設される。また、吹出口本体10上面には、吊りボルト等の支持具との連結用として、上方向に突出する吊支部11bが配設される構成である。
【0027】
この吊支部11bが、天井躯体60に固定されて室内空間側に突出状態とされた公知の吊りボルト等の支持具に連結固定されることで、吹出口本体10は天井躯体60から所定距離離れた室内空間の所定位置に固定される構成である(図1参照)。
【0028】
吹出口本体10内部には、各案内羽根20の周囲を取り囲む細長い矩形状の案内枠13が各側面ごとに二つずつ配設される。
前記案内枠13は、案内羽根20が収まる矩形開口断面の開口部分を有する、金属等の強度の高い材質製の枠状体として形成され、開口部分に調和空気を流通可能とする構成である。また、案内枠13の室内空間側の端部は先細状に形成され、側面の開口部12における開口面に位置するようにされる。
【0029】
また、吹出口本体10の各側面の外側には、これら側面に対し断熱状態とされるカバー10aが、開口部12以外の側面全体を覆うように取り付けられる。
このカバー10aは、例えば、表裏両面に接着剤又は粘着剤を配置した、断熱性のある材質からなるテープ材又はシート材を用いて、吹出口本体側面に対し貼り付け、カバー10aと側面間における、テープ材等とその貼り付け箇所以外における空気層とで、カバー10aの側面に対する断熱状態を得るようにすることができる。
【0030】
この開口部12以外の側面各部を覆うカバー10aで、吹出口本体10の側面と室内空気との接触を阻止することに加え、吹出口本体側面とカバー10aとの間で熱が伝わりにくい状態とすることで、例えば冷房時には、温度の低下した吹出口本体側面に温かい室内空気が接触しないことに加え、カバーの表面温度が室内空気の温度に対し低下することがなく、吹出口本体側面部分における結露発生を確実に防止できる。
【0031】
この他、吹出口本体10の各面をなす板状の部材同士を一体に接合するねじやリベット等の部品が吹出口本体側面に一部露出している場合に、そうした吹出口本体10の側面がカバー10aで覆われることで、側面がカバー10aのみ見える状態となって美観が向上し、室内空間に違和感を与えることなく設置できる。
【0032】
さらに、吹出口本体10の下面における中央の所定領域は、多数の孔を所定パターンで穿設した有孔部14とされる構成である。この有孔部14の開口率は、調和空気が孔を通過することで生じる下向きの気流について、冷房の場合に吹出口装置直下で気流速度が十分に低下せずドラフトとなるのを防ぐために、数%程度とするのが好ましい。
【0033】
この吹出口本体10は、天井躯体60から吊り下げて天井躯体60から離れた配置として室内空間に位置しており、ネック部11aをダクト61に接続して供給される調和空気を取込み、この調和空気を側面の開口部12から室内空間に吹出すと共に、調和空気の一部を、有孔部14の各孔を通じて室内空間に下向きの気流として吹出す仕組みである。
【0034】
前記案内羽根20は、略T字状断面形状を有する細長い部材としてそれぞれ形成され、吹出口本体10内の開口部12近傍部分で、且つ案内枠13の開口部分の中央部となる位置に、各端部を案内枠13に軸支されて、開口部12の長手方向と平行な向きの傾動中心軸周りに傾動可能として、上下に二つ並べて配置される構成である。この案内羽根20が、その傾斜角度を調整されることで、調和空気の吹出気流を所定の吹出方向に案内できる仕組みである。
【0035】
前記羽根駆動部30は、公知のワックス式のサーモエレメント31とばね32を利用したものであり、吹出口本体10内の案内羽根20配設箇所近傍にそれぞれ配設され、調和空気の温度に応じて作動する、具体的には、サーモエレメント31の全長が周囲の調和空気の温度変化に応じて変化することを利用して、案内羽根20を傾動可能とする構成である。
【0036】
前記サーモエレメント31は、周囲の雰囲気温度の変化に対応してエレメント本体31aからのニードル部31bの突出量を変化させ、全長、すなわちエレメント本体31a端部と反対側のニードル部31b先端部との間隔、を変える公知の装置である。吹出口本体10内に一体に取付けられる支持部材15の一端部にニードル部31bを固定して配設される一方、エレメント本体31aをリンク部33の一端部に連結し、案内羽根20に他端部を連結されるリンク部33を介して案内羽根20を動かせる状態とされる。これに加えて、エレメント本体31aと支持部材15他端部との間にばね32が配設され、エレメント本体31aがニードル部31bを没入させる向きに付勢される仕組みとなっている。なお、このサーモエレメント31とばね32を組み合わせた機構自体は公知のものであり、詳細な説明を省略する。
【0037】
この羽根駆動部30が、周囲の調和空気の温度に応じてサーモエレメント31がその全長を変えてリンク部33を変位させることによって、リンク部33に端部を連結された各案内羽根20がそれぞれの傾動中心軸周りに傾動して、向きを変化させる仕組みである。
【0038】
冷房時の冷えた調和空気で冷却されてニードル部31bの突出を維持できず、ばね32の付勢力で押し縮められてサーモエレメント31の全長が最も縮んだ状態では、案内羽根20はその開口部12側の端部が側方を向いて、羽根全体がほぼ水平となる横向き状態となる。
【0039】
一方、暖房時の温かい調和空気で温められてサーモエレメント31の全長が最も伸びた状態では、案内羽根20は、開口部12側の端部が下方を向いて、羽根全体が傾いた斜め向き状態となる。
こうして、羽根駆動部30が調和空気の温度に応じて各案内羽根20を傾動させることで、案内羽根20を横向きと斜め向きのいずれかに切替可能となっている。
【0040】
前記気流偏向板40は、略板状体で形成され、吹出口本体10における各開口部12の案内羽根20より内側の部位に、開口部12の正面方向に対し傾けた状態で、且つ開口部12の長手方向に所定間隔で複数並んだ配置として複数設けられ、調和空気を案内して吹出気流に開口部12の正面方向に対する横(左右)方向の速度成分を与えるものである。
各気流偏向板40は、その端部を、吹出口本体10内側で開口部12の長手方向と平行に配置される仕切板45に取付けられて、吹出口本体10に対し一体に固定される。
【0041】
気流偏向板40は、開口部12の正面方向に対する傾斜角度を複数通りに設定されており、各気流偏向板40で調和空気の気流を案内することで、開口部12から吹出される調和空気の気流に、気流偏向板40の傾斜角度に応じた横(左右)方向の速度成分を与えられる仕組みである。
【0042】
気流偏向板40の傾斜角度は、気流偏向板40の位置が開口部12の中心位置から離れるほど、その開口部12の正面方向からの傾きを大きくする値として設定される。
これら気流偏向板40で案内された調和空気の気流は、室内空間70へ吹出すと、横(左右)方向に徐々に広がるように室内空間を進み、室内の広い範囲に拡散することとなる。
【0043】
気流偏向板40は、下向きのダクト61から吹出口本体10内に所定の流入速度をもって流入した調和空気が、吹出口本体10内の一部に偏って流れる状態を是正して、側面の開口部12から調和空気の気流が偏りなく吹き出すようにする整流機能も有する。
【0044】
前記仕切板45は、吹出口本体10における気流偏向板40より内側の位置に、開口部12の長手方向に架設される状態として配設されるものである。この仕切板45は、吹出口本体10内に、気流偏向板40間への調和空気の流入を許容する隙間が生じるように配置され、各気流偏向板40の一端を取り付けられて各気流偏向板40を支持固定する。
【0045】
仕切板45は、吹出口本体10のコーナ部寄り部分を遮蔽して、気流偏向板40の間を通過した調和空気の気流のみが開口部12を出て室内空間に達するようにしており、気流偏向板40による案内性能を最大限に発揮できるようにしている。
【0046】
具体的には、気流偏向板40と仕切板45は一体構造とされ、仕切板をなす板体の一部を切り起こして所定の傾斜状態となるまで折り曲げて気流偏向板40とすると共に、この折り曲げにより生じた開口部分を取り囲む枠状の残り部分を仕切板45としている。この場合、仕切板45の開口部分が、気流偏向板40に案内される調和空気の通路となる仕組みである。
【0047】
なお、気流偏向板40は、案内する調和空気の気流が開口部12の正面方向に対し横に広がるように、その向きを設定される構成とされるが、これに限られるものではなく、空気調和の状況に応じて、気流偏向板の向きを、開口部12の正面方向に一致する向きや、案内する調和空気の気流が開口部12の正面方向に対し横方向に狭まるような向きとして設定することもでき、調和空気の気流の横方向への拡散より正面方向への到達距離を重視する場合に適することとなる。
【0048】
次に、前記構成に基づく吹出口装置による室内空間への空気調和状態について説明する。前提として、ダクト61を通じて吹出口装置1に対し調和空気が継続的に供給される状況にあるものとする。
【0049】
ダクト61から送られた調和空気は、吹出口本体10上面のネック部11aで囲まれた開口部11を通じて吹出口本体10内に進入する。
そして、調和空気は吹出口本体10の内部を進み、気流偏向板40の間を通って、室内空間寄りに位置する案内枠13に達する。
【0050】
また、調和空気は、吹出口本体10内部を各方向に向かう中で、その一部が羽根駆動部30に接し、雰囲気として羽根駆動部30を温める又は冷やす結果、羽根駆動部30の温度は調和空気の温度に追随するものとなる。
【0051】
温度変化によりその長さを変化させる性質を有する羽根駆動部30が、調和空気に近い又は調和空気と同じ温度となるのに伴って、羽根駆動部30は温度に応じた所定の長さをなし、この羽根駆動部30と連結する案内羽根20を、調和空気の温度に対応させてあらかじめ設定された所定の傾斜状態に移行させる。
【0052】
案内枠13に達した調和空気が、案内枠内面と案内羽根20との間を進んで開口部12へ向かう中で、こうした案内羽根20の傾斜状態に応じて進行状態を調整された上で、開口部12から室内空間へ吹出すこととなる。
【0053】
冷房の場合、ダクト61から送られた温度の低い調和空気が吹出口本体10に入ると、調和空気に接して羽根駆動部30のサーモエレメント31はその長さを小さくする状態となって、リンク部33を吹出口本体10の側端部寄り位置に変位させ、このリンク部33を介して案内羽根20を傾動させて、先端を案内枠13の内側壁から離した横向き状態とする。
【0054】
調和空気は、案内枠13内を進む中で、横向き状態の案内羽根20外周に沿って開口部12側へ真っ直ぐに進行する。こうして調和空気の気流は、吹出方向を水平として、開口部12から室内空間70へ吹出す(図5参照)。
【0055】
この案内羽根20が横向き状態とされて、開口部12から調和空気を水平に吹出す状態では、冷えて室内空気より重い調和空気を、すぐには下降させずに室内空間の遠方まで到達させることができ、調和空気が吹出口装置の高さ位置から床面に達するまでに室内空間に十分拡散できることとなり、居住域でドラフトを生じさせずに冷房が行えることに加え、冷えた調和空気が吹出口装置のある室内空間上部の比較的暖かい室内空気を誘引し、これらと速やかに混合するため、短時間に室内を冷すことができるなど、優れた空気調和効果を発揮できる。
【0056】
また、調和空気の一部を吹出口本体10下面の有孔部14からも吹出すことで、側面の開口部12から吹出された調和空気の気流が到達しにくい吹出口本体10直下の居住域にも調和空気を送り込むことができ、空気調和の対象から漏らすことなく調和空気を到達させて冷房効果を与えられる。
【0057】
なお、調和空気が吹出口本体10内を進んで案内枠13へ向かう途中で、調和空気の気流が複数並んだ各気流偏向板40の間を通り、これら気流偏向板40に案内されて開口部12の正面方向に対する横(左右)方向の速度成分を与えられることで、開口部12の正面方向に吹出気流が集中しすぎることが無くなり、開口部12の全域から均等に調和空気の気流を吹出せることとなる。また、調和空気の進行方向を絞り込まないことで、室内空間が狭い場合に冷気の気流が速度を低下させずに居住域に達してドラフトとなるのを防止できる。
【0058】
一方、暖房の場合は、ダクト61から送られた温かい調和空気がネック部11aを通じて吹出口本体10内に入ると、調和空気に接して羽根駆動部30のサーモエレメント31はその長さを大きくする状態となって、リンク部33を吹出口本体10の中央寄り位置に変位させ、このリンク部33を介して案内羽根20を傾動させ、案内羽根20先端を案内枠13の下側の内側壁に寄せて、案内羽根20を斜め向き状態とする。
【0059】
調和空気は、案内枠13内を進む中で、斜め向き状態の案内羽根20外周に沿って次第に下向きに進行することとなる。こうして調和空気の気流は、吹出方向を斜め下向きとして、開口部12から室内空間70へ吹出す(図7参照)。
【0060】
この案内羽根20が斜め向き状態とされて、開口部12から調和空気を斜め下向きに吹出す状態では、温かく室内空気より軽い調和空気を、すぐに上昇させることなく室内空間の遠方まで到達させることができ、温かい調和空気を室内空間の居住域まで十分に拡散させて効率よく暖房を行える。また、温かい調和空気はより温度の低い室内空気を誘引し、これらと速やかに混合するため、室内空気の温度を上げる効果が大きく、短時間に室内を暖められると共に、室内空気との温度差が急速に縮小することとなり、斜め下向きの吹出気流でも居住域でのドラフトを感じにくくすることができる。
【0061】
さらに、調和空気の一部を吹出口本体10下面の有孔部14からも吹出すことで、側面の開口部12から吹出された調和空気の気流が到達しにくい吹出口本体10直下の居住域にも調和空気を送り込むことができ、軽く上昇しやすい温かな調和空気をスムーズに室内空間の下方の居住域に向かわせることができ、暖房の効率を高められる。
【0062】
このように、本実施形態に係る吹出口装置においては、開口が横向きとなるようにして天井躯体60から吊り下げて設けられる略箱状の吹出口本体10の側面に横長スリット状の吹出用開口部12を設けると共に、開口部12に設けた案内羽根20の向き調整で、調和空気の気流の吹出方向を水平から斜め下向きまでの間で可変として、冷房時に対応する水平吹出の場合には、横向きの開口部12から調和空気の気流を直進させられることから、開口部12から吹出された気流が開口部正面の各方向に進むこととなり、天井躯体60からの吊り下げ設置で吹出口周囲に天井面が存在せず、気流が天井面に付着する性質を利用できない状態であっても、開口部12から吹出された気流が十分な到達距離を確保しつつ進行できる。また、案内羽根20の向きを変えて気流の吹出方向を斜め下向きとすると、暖房時に対応でき、開口部12から斜め下向きに吹出された温かい調和空気をすぐに上昇させることなく進行させて、室内空間における到達距離を十分に確保できる。
【0063】
さらに、各開口部12の案内羽根20より内側の部位に、開口部12の正面方向に対し傾けた気流偏向板40を設けて、各開口部12の正面方向に対する横方向(左右方向)への気流の進行速度成分の大きさを調整することで、気流の正面側への到達距離と横方向への拡散範囲のバランスを適切なものとすることができる。
【0064】
なお、前記実施形態に係る吹出口装置においては、箱状体である吹出口本体10の四つの側面のいずれにも開口部12を設け、各開口部12から調和空気を吹き出して、吹出口本体10から室内空間の四方向に調和空気を送り出す構成としているが、これに限らず、空気調和対象空間の大きさや他の吹出口装置の配置等条件に応じて、吹出口本体10の開口部12を設ける側面を限定し、その開口部12のある側面のみで調和空気吹出を実行するようにして、吹出口本体10から室内空間の三方向以下に調和空気を送り出す構成としてもかまわない。
【0065】
また、前記実施形態に係る吹出口装置においては、吹出口本体10の下面に有孔部14を設け、有孔部の各孔から調和空気を送り出して、室内空間における吹出口装置直下の領域に向かわせる構成としているが、これに限られるものではなく、例えば、空気調和対象となる室内空間が小さいなど、開口部12を出た調和空気の気流の影響が吹出口装置直下の領域にも及びやすい場合には、吹出口本体10の下面に有孔部を設けず、調和空気を側面の開口部12のみから吹出す構成とすることもできる。
【0066】
(本発明の第2の実施形態)
前記第1の実施形態に係る吹出口装置においては、吹出口本体10内部に、側面の開口部12近くに設けられる案内枠13や案内羽根20、羽根駆動部30、気流偏向板40以外の部品を特に設けない構成としているが、この他、第2の実施形態として、図9に示すように、吹出口本体10内部のうち、吹出口本体下面の有孔部14の上方にあたる部位に、有孔部14全体を上から覆える大きさの遮蔽板16を上下位置調整可能に設ける構成とすることもできる。
【0067】
この場合、遮蔽板16を上下移動させて有孔部14のある下面との間隔を変え、吹出口本体10内における有孔部14への調和空気の進行度合いを変化させられることで、有孔部14からの調和空気の吹出量を遮蔽板16の位置調整で増減でき、有孔部14の各孔を通じて下向きの気流として吹出す調和空気の、吹出口本体下方の領域への到達度合いを調整可能となり、室内空間の状況に応じた空気調和をより適切に実行できる。
【0068】
遮蔽板16の上下位置調整機構としては、例えば、吹出口本体10内で上下端部を回動可能に軸支されると共に、中間部分を遮蔽板16に螺合させてなる調整用ねじ軸を、吹出口本体10に取り付けたモータの作動により回動させる機構を設け、調整用ねじ軸を吹出口本体10に対し回動させ、調整用ねじ軸が遮蔽板16に対し相対的に螺動するのに伴って遮蔽板16を移動させ、遮蔽板16の上下位置を調整可能とする構成を用いるようにすることができる。
【0069】
(本発明の第3の実施形態)
前記第1の実施形態に係る吹出口装置においては、吹出口本体10の側面の開口部12と、下面の有孔部14の各孔とをそれぞれ出た調和空気により、室内空間の空気調和を実行可能な構成としているが、この他、第3の実施形態として、図10に示すように、吹出口本体10の下面が、内部の調和空気により温度変化して、室内空間内の物体や室内空気に対し熱放射で熱を放出する、又は、室内空間内の物体や室内空気からの熱放射を受けて熱を吸収する、放射熱授受部17とされて、空気調和によるものと合わせて、こうした熱の放射による冷暖房効果も得られるようにする構成とすることもできる。
【0070】
この場合、吹出口本体下面の放射熱授受部17を通じた熱放射でも、室内空間に対し温度変化を生じさせられることで、室内空間における調和空気の気流の到達しにくい領域に対しても調和空気の影響を与えることができ、例えば調和空気の温度が高い暖房の場合は、吹出口本体下面の下方の居住域に熱を放射することで、居住域内の人からの放熱を少なくして体感温度を高められ、また、調和空気の温度が低い冷房の場合は、下方の居住域から放射される熱を吸収することで、人からの放熱を促して体感温度を低くすることができ、室内空間の快適性をより一層向上させられる。
【符号の説明】
【0071】
1 吹出口装置
10 吹出口本体
10a カバー
11、12 開口部
11a ネック部
11b 吊支部
13 案内枠
14 有孔部
15 支持部材
16 遮蔽板
17 放射熱授受部
20 案内羽根
30 羽根駆動部
31 サーモエレメント
31a エレメント本体
31b ニードル部
32 ばね
33 リンク部
40 気流偏向板
45 仕切板
60 天井躯体
61 ダクト
70 室内空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10