(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシング及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 9/00 20060101AFI20220915BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220915BHJP
A61K 35/50 20150101ALI20220915BHJP
A61P 41/00 20060101ALI20220915BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220915BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20220915BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20220915BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A61F9/00
A61P27/02
A61K35/50
A61P41/00
A61K9/70
A61K47/46
A61L27/36 100
A61L27/58
A61L27/36 410
(21)【出願番号】P 2021514262
(86)(22)【出願日】2019-01-10
(86)【国際出願番号】 KR2019000394
(87)【国際公開番号】W WO2019221360
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-11-18
(31)【優先権主張番号】10-2018-0056479
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517354917
【氏名又は名称】キョンブク ナショナル ユニバーシティ インダストリー-アカデミック コーオペレーション ファウンデーション
(73)【特許権者】
【識別番号】517355486
【氏名又は名称】キョンブク ナショナル ユニバーシティ ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ホンギュン
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0189301(US,A1)
【文献】国際公開第2011/074208(WO,A1)
【文献】特表2005-519694(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101088479(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105561393(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/00
A61L 27/36
A61L 27/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)羊膜を鋳型ボディ部のうち、眼の曲率に合わせた凸状の突出部に位置させた後、乾燥させる段階と、
2)前記1)段階の乾燥された羊膜が位置するボディ部とチャンバー部を結合させる段階と、
3)架橋剤を羊膜周辺部のみ浸漬されるようにチャンバー部に満たし、乾燥した羊膜周辺部を部分硬化させる段階と、を含む部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの製造方法。
【請求項2】
前記架橋剤は、カルボジイミド(carbodiimide)、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)、ジアルデヒド澱粉(Dialdehyde Starch、DAS)、グルタルアルデヒド(glutaraldehyde、GA)、ホルムアルデヒド(formaldehyde)、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate、HMDI)、デキストラン(dextran)及びグルコース溶液からなる群から選択された1種以上である、請求項1に記載の部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの製造方法。
【請求項3】
前記3)段階の羊膜周辺部は、羊膜の端から、羊膜の端から羊膜の中心部までの距離3/4地点までであることを特徴とする、請求項1に記載の部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの製造方法。
【請求項4】
前記3)段階の部分硬化は、室温で2~10分間実行されることを特徴とする、請求項1に記載の部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの製造方法。
【請求項5】
4)チャンバー部で架橋剤を除去し、NaBH
4/EtOH溶液をチャンバー体積の1/2だけ満たし、室温で0.5~2分間安定化させる段階をさらに含む、請求項1に記載
の部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの製造方法。
【請求項6】
5)部分硬化された羊膜を得て、コンタクトレンズ型に切断する段階をさらに含む、請求項5に記載の部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの製造方法。
【請求項7】
6)前記5)段階のコンタクトレンズ型に切断された羊膜をグリシンで洗浄する段階をさらに含む、請求項6に記載の部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの製造方法。
【請求項8】
7)前記6)段階のグリシンで洗浄された羊膜を凍結乾燥(lyophilzation)または冷凍する段階をさらに含む、請求項7に記載の部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの製造方法。
【請求項9】
コンタクトレンズ型羊膜ドレッシングにおいて、
前記コンタクトレンズ型羊膜ドレッシングは、羊膜周辺部のみ部分硬化された、部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングであることを特徴とし、
前記羊膜周辺部は、羊膜の端から、羊膜の端か
ら羊膜の中心部までの距離1/2地点までであることを特徴とする、部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシング。
【請求項10】
前記部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングは、架橋剤未処理羊膜に比して2~4倍の引張強度を有することを特徴とする、請求項9に記載の部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシング。
【請求項11】
前記部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングは、全体硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングに比して成長因子分泌能が増加したことを特徴とする、請求項9に記載の部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシング。
【請求項12】
前記部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングは、眼疾患の治療用である、請求項9に記載の部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシング。
【請求項13】
前記部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングは、目の傷治療用である、請求項9に記載の部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分硬化された羊膜を用いて製造されたコンタクトレンズ型の羊膜ドレシング及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
羊膜は、胎盤の最も内側にある膜であって、胎児を包んでおり、母体からの種々の感染症や免疫反応などから胎児を保護するバリアとしての役割を担っている。羊膜は0.2~0.5mmと薄く半透明であり、単純な立方上皮と、厚い基底膜、無血管間葉系間質からなり、平滑筋細胞、神経、リンパ管および血管がないので、移植をしても、拒否反応を示さない特徴があり、最近注目されている。また、羊膜が創傷治癒過程における上皮化を促進させ、瘢痕形成を抑制する役割が知られて以来、今まで多様な眼疾患において羊膜を移植しようとする努力が続けられている。
【0003】
羊膜自体を角膜および結膜に移植するために縫合糸を用いて縫合する技術が試みられたが、手術による縫合は、その過程が複雑という問題があり、最近では羊膜ドレッシングを利用して、眼の創傷治癒が試みられている 。
【0004】
最近、試みられている技術は、プラスチックリングで固定されたレンズタイプと、固定型でない水分吸着型ディスク(シート)タイプがある。レンズタイプの製品は、施術において利便性と羊膜の固定性を持っているが、製品の周辺部が硬いプラスチックで製造され、術後、眼内異物感が高く、患者が不快感を訴えており、角膜に密着しないので治療効果が劣る欠点がある。また、価格においてもやはり高く、一般的な角膜の傷治療に広く活用されるには困難な限界があった。ディスク(シート)タイプの場合、価格において競争力があり、患者の抵抗感を下げ、従来のレンズタイプの問題点を解消したが、固定されず、患者の眼表面から位置がずれる欠点が報告された。このような理由から、縫合しないで固定される羊膜は、現在ほとんど使われてないのが実情である。微細粉塵の増加などといった環境問題と、マルチメディアを持続的に接する生活環境によって市場の眼表面疾患の患者数が増しているにも拘らず、前記のような問題点を全て解消し、効果的に利用できるコンタクトレンズドレッシングが報告されておらず、これを改善できる新しいタイプのコンタクトレンズ型ドレッシングが必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、傷治療効果を有する羊膜を活用し、既存のシート状およびレンズ型の眼用ドレッシングの問題点を解決すべく研究していた中、羊膜周辺部のみ部分硬化させて製造したコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングが、生体適合性に優れ、透明度、引張強度など、レンズ適合性に優れており、成長因子分泌能の増加、角膜の傷再生効果が顕著に優れている点を確認し、本発明を完成するに至った。
【0006】
したがって、本発明の目的は、部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの製造方法及び部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記のような課題を解決するために、本発明は、1)羊膜を鋳型ボディ部のうち、眼の曲率に合わせた凸状の突出部に位置させた後、乾燥させる段階と、2)前記1)段階の乾燥された羊膜が位置するボディ部とチャンバー部とを結合させる段階と、3)架橋剤を羊
膜周辺部のみ浸漬されるようにチャンバー部に満たし、乾燥された羊膜周辺部を部分硬化させる段階とを含む、部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの製造方法及び部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングは、製造方法が容易で、異物感なしにコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングを製造することができ、全体硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングに比して生体適合性に優れ、透明度、引張強度など、レンズ適合性に優れるばかりでなく、傷再生効果も同様に優れているところ、眼の角膜損傷のような眼疾患の治療に有用に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の部分硬化されたコンタクトレンズドレッシングを製造するための鋳型(モールド)の構成を示した図であり、ボディ部(body)、チャンバー部(chamber)と、これを結合した形態を示した図である。
【
図2】グルタルアルデヒドを架橋剤とし、コンタクトレンズ型羊膜ドレッシングを製造する工程と、これにより製造されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングを示した図である。
【
図3】ジアルデヒド澱粉を架橋剤として、コンタクトレンズ型羊膜ドレッシングを製造する工程及びこれにより製造されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングを示した図である。
【
図4】架橋剤が未処理された羊膜、グルタルアルデヒド(GA)、ジアルデヒド澱粉(DAS)を架橋剤として製造された部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの厚さの測定結果を示した図である。
【
図5】コンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの含水前/後の透明度の測定結果を示した図である。
図5のAは、架橋剤が未処理された羊膜、グルタルアルデヒド(GA)、ジアルデヒド澱粉(DAS)を架橋剤として製造された部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの含水前/後の透明度を、様々な波長で測定した結果を示した図である。
図5のBは、架橋剤が未処理された羊膜、グルタルアルデヒド(GA)、ジアルデヒド澱粉(DAS)を架橋剤として製造された部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの含水前/後の透明度を550nmの波長で測定した結果を示した図である。
【
図6】架橋剤の未処理(正常AM)、グルタルアルデヒド(GA)、ジアルデヒド澱粉(DAS)を架橋剤として製造された部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの引張強度を確認した結果を示した図である。X軸Strain=Time X Speed/Grip、Y軸:Stress=Force(kg)/Thickness(m2)、グラフの直線区間の傾き=弾性係数。
図6のAは、架橋剤による引張強度を確認した結果を示したグラフである。
図6のBは、架橋剤による弾性係数および引張強度を示した図である。
【
図7】架橋剤の未処理(正常AM)、ジアルデヒド澱粉(DAS)を架橋剤として製造された部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングのヒトの角膜上皮細胞への細胞毒性があるか否かを細胞付着能により確認した結果を示した図である。
【
図8】架橋剤の未処理(正常AM)、グルタルアルデヒド(GA)、ジアルデヒド澱粉(DAS)を架橋剤として製造された部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの組織学的分析の結果を染色を通じて確認した結果を示した図である。
【
図9】培養液形態の試料の中、DASで部分架橋された羊膜(DAS partial AM)、GAで部分架橋された羊膜(GA partial AM)およびDASで全体架橋された羊膜において、TFGb3、PDGF-AA、EG-VEGF、GDNF、IGFBP-4、BMP-7、NT-3、NT-4成長因子分泌能を比較した結果を示した図である。
【
図10】粉末状態の試料中、DASで部分架橋された羊膜(DAS partial AM)、GAで部分架橋された羊膜(GA partial AM)およびDASで全体架橋された羊膜において、bFGF、HGF、HB-EGF、FGF-7、BDNF、EG-VEGF、GH、IGF-I、IGFBP-6の成長因子分泌能を比較した結果を示した図である。
【
図11】本発明の部分硬化コンタクトレンズ型羊膜ドレッシングのコラゲナーゼ分解に対する抵抗性を確認した結果を示した図である。
【
図12】本発明の部分硬化コンタクトレンズ型羊膜ドレッシングを角膜上皮が損傷したウサギの角膜に着用させた後、角膜上皮の傷回復効果を架橋剤未処理羊膜(non AM)、部分硬化コンタクトレンズ型羊膜ドレッシング(AM cover)実験群から確認された結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、1)羊膜を鋳型ボディ部のうち、眼の曲率に合わせた凸状の突出部に位置させた後、乾燥させる段階と、2)前記1)段階の乾燥された羊膜が位置するボディ部とチャンバー部とを結合させる段階と、3)架橋剤を羊膜周辺部のみ浸漬されるようにチャンバー部に満たし、乾燥された羊膜周辺部を部分硬化させる段階と、を含む部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの製造方法を提供する。
【0012】
本発明の部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの製造方法によれば、簡単な方法で異物感なしにコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングを製造することができ、全体硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングに比して生体適合性に優れ、透明度、引張強度など、レンズ適合性に優れているだけでなく、傷再生効果にも優れたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングを提供することができる。
【0013】
以下において、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の1)段階は、羊膜を鋳型のボディ部のうち、眼の曲率に合わせた凸状の突出部に位置させた後、乾燥させる段階である。これはコンタクトレンズドレッシングの材料となる羊膜を準備する段階を含む。本発明において、羊膜は、哺乳動物由来の羊膜であることができ、好ましくは、ヒト由来の羊膜であることができる。
【0015】
本発明に使用しうる羊膜は、摘出された胎盤から直接収得して使用することができる。具体的には、胎盤を洗浄し、羊膜を絨毛膜から少しずつ剥離してから、上皮が下を向くように広げて絨毛膜と凝血を除去した後、これをコンタクトレンズ型羊膜の製造に用いられることができる。通常、保管方法によって分類される羊膜すべてを本発明のコンタクトレンズ型羊膜の製造に使用可能であり、例えば、凍結乾燥(lyophilized)羊膜、或いは凍結保存(cryopreserved)羊膜などが、本発明のコンタクトトレンズ型羊膜の製造に使用することができる。前記羊膜は、後にガンマ線を用いた滅菌過程を経ることができる。
【0016】
用意された羊膜は、部分架橋されたコンタクトレンズ型に製造するために、眼の曲率に合うように製作された鋳型(mold)ボディ部の突出部に位置させる。鋳型は、羊膜が配され、乾燥されるボディ部、架橋剤と羊膜が架橋される空間を形成するチャンバー部からなることができる。
【0017】
ボディ部とチャンバー部は、3Dプリンターが可能な材料を用いて製造することができ、好ましくは、Polydimethylsiloxane(PDMS)またはPoly
lactic acid(PLA)を用いて製造されることができる。ボディ部は、円柱状に突出部を有するように製造される。ボディ部の突出部は、レンズを製造するための曲率に応じて製造され、モールドの曲率は、目的に応じて適宜に調整することができる。例えば、韓国人に適した羊膜を製造するためには、当分野で周知の参考書籍および統計情報を利用して、韓国人の眼の曲率半径を反映して曲率を設計することができる。モールドのチャンバー部は、架橋剤を投与できるように製造された中空円柱状をしており、ボディ部と結合することができるようにチャンバー部の大きさを調節することができる。
【0018】
羊膜は、ボディ部の突出部に位置させて乾燥することができ、好ましくは、上皮細胞がある面と鋳型が当接するように鋳型の突出部上に羊膜を位置させた後、水分吸着用ペーパーを利用して水分を除去してから自然乾燥させることができる。
【0019】
本発明に使用される羊膜は、単一膜のみで使用することもできるが、2つ以上の羊膜を重ね合わせて製造する形で使用することもでき、この場合、最初の羊膜の乾燥がすべて完了した後、その上に再び羊膜を位置させ、乾燥する過程を繰り返し、複数個の羊膜からなるコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングを製造することができる。
【0020】
本発明の2)段階は、前記1)段階の乾燥された羊膜が位置するボディ部とチャンバー部を結合させる段階である。
【0021】
ボディ部とチャンバー部が結合される場合、ボディ部の円柱状に存在する突出部の先端部分は、チャンバー部の高さよりも高い、又はこれの1/2地点以上に存在するように製造することができる。ボディ部とチャンバー部が結合する場合、チャンバー部とボディ部との間には、架橋剤を含む溶液が存在することができる空間が形成され、架橋剤を含む溶液を注入してボディ部に存在する羊膜と架橋剤との結合を誘導することができる。
【0022】
本発明の3)段階は、架橋剤を羊膜周辺部のみ浸漬されるようにチャンバー部に満たし、乾燥された羊膜周辺部を部分硬化させる段階である。
【0023】
本発明の架橋剤は、羊膜の架橋を誘導することができる当分野で知られた物質を全部制限なく含むことができ、例えば、カルボジイミド(carbodiimide)、EDC(またはEDAC;1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)、ジアルデヒド澱粉(Dialdehyde Starch、DAS)、グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)、ホルムアルデヒド(formaldehyde)、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate、HMDI)、デキストラン(dextran)またはグルコース溶液を含むことができ、好ましくは、ジアルデヒド澱粉(Dialdehyde Starch 、D
AS)またはグルタルアルデヒド(glutaraldehyde)、最も好ましくは、ジアルデヒド澱粉(Dialdehyde Starch 、DAS)を含むことができ
る。
【0024】
架橋剤としてグルタルアルデヒドを使用している場合、0.05~0.3%、好ましくは0.1%のグルタルアルデヒドを用いることができ、これをデキストラン(20%)溶液に溶かして使用することができる。また、架橋剤としてジアルデヒド澱粉を用いる場合、30~50mg/ml、好ましくは45mg/ml濃度のジアルデヒド澱粉を用いることができる。架橋された羊膜は、冷凍保存(cryopreserved)方式、或いは凍結乾燥(lyophilized)方式の処理方法で保管することができ、ガンマ線を用いた滅菌保管処理を追加することができる。
【0025】
本発明において、部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングとは、コンタク
トレンズ型羊膜ドレッシングの一部の部位のみ架橋剤により硬化されたことを意味し、好ましくは、コンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの周辺部のみ部分硬化されたことを意味する。本発明において、コンタクトレンズ型羊膜の「周辺部」とは、羊膜中心部の領域を除いた羊膜の端部を意味し、好ましくは羊膜の端から、羊膜の端から羊膜の中心部までの距離1/3地点まで、より好ましくは、羊膜の端から羊膜の中心部までの距離1/2地点までの距離を意味することができる。このような周辺部のみ部分架橋されたコンタクトレンズ型羊膜を製造するために製造工程上、ボディ部のうち、突出部に位置した乾燥された羊膜がチャンバー部に存在する架橋剤と一部のみ接触するようにすることができ、羊膜周辺部のみ浸漬されるように架橋剤をチャンバー部に満たすことで、このような技術的特徴を達成することができる。
【0026】
本発明において、3)段階の部分硬化は、室温で行われることが好ましく、室温で2~10分、好ましくは室温で5分間行うことができる。
【0027】
本発明の製造方法は、4)チャンバー部で架橋剤を除去し、NaBH4/EtOH溶液をチャンバー体積の1/2だけ満たし、室温で0.5~2分間安定化させる段階をさらに含むことができる。
【0028】
前記4)段階は、架橋剤を除去し、部分架橋反応が起こった部分硬化された羊膜を安定化させる工程であり、架橋剤に近い体積のNaBH4/EtOHを添加して羊膜を安定化させることができる。
【0029】
また、本発明の製造方法は、5)部分硬化された羊膜を得て、コンタクトレンズ型に切断する段階をさらに含むことができる。
【0030】
コンタクトレンズ型に切断する段階は、当分野で周知の通常の技術を利用して実行することができ、例えば、棚(lathe)またはレーザーを利用する回転切削加工などの工程を経て行うことができる。
【0031】
また、本発明の製造方法は、6)前記5)段階のコンタクトレンズ型に切断された羊膜をグリシンで洗浄する段階と、をさらに含むことができる。
【0032】
前記の段階を通じて毒素の除去が行われ、前記洗浄工程は、ジアルデヒド澱粉(DAS)を架橋剤として用いる製造方法に特に適している。
【0033】
洗浄工程で使用されるグリシンは、0.1~0.3MのグリシンPBSであることができ、このような工程を通じて毒素の除去が起こり、より生体適合性に優れた部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングを取得することができる。
【0034】
また、本発明のコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの製造において、前記洗浄された羊膜のドレッシングは、部分硬化されてから凍結乾燥させた後、常温保管したり、或いはこのような処理なしで冷凍保存、例えば-90~-50℃、好ましくは-80~-70℃で冷凍保存することができる。したがって、本発明の製造方法は、7)前記6)段階のグリシンで洗浄された羊膜を凍結乾燥(lyophilzation)または冷凍する段階と、をさらに含むことができる。
【0035】
前記段階の後、ガンマ線を利用して製造されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングを滅菌処理することができる。
【0036】
また、本発明は、部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングを提供する。
【0037】
本発明の前記コンタクトレンズ型羊膜ドレッシングは、羊膜周辺部のみ部分硬化された、部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングであることを特徴とし、前記羊膜周辺部は、羊膜の端から、羊膜端から羊膜の中心部までの距離最大1/2地点までであることを特徴とすることができる。
【0038】
前記のような周辺部架橋によって製造されるコンタクトレンズ型羊膜は、最終的に切断工程を経て羊膜の端から、羊膜の端から羊膜の中心部まで1/3地点が固定され、2/3部分が未固定の羊膜で製造されることができる。
【0039】
本発明の部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングは、完全に硬化したコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングとは異なり、コンタクトレンズ型羊膜周辺部のみ硬化されることにより、生体適合性、引張強度、透明度、成長因子分泌能などがすべて改善される優れた物性を持つことができる。
【0040】
本発明に係る羊膜周辺部のみ部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの特性をすべて保持する場合、その製造方法は、特に制限されないが、好ましくは、本発明の製造方法により、部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングを製造することができる。
【0041】
部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングは、架橋剤未処理の羊膜に比して2~4倍の引張強度を有することを特徴とすることができ、全体硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングに比して成長因子分泌能もまた増加されることを特徴とすることができる。
【0042】
成長因子分泌能は、培養液の状態、粉末状態において全部比較することができ、本発明の部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの場合、2つの状態でいずれも全体硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングに比べ、優れた成長因子分泌能を有する。
【0043】
例えば、本発明の部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングは、ジアルデヒド澱粉で全体架橋された羊膜と比較して、TFGb3、PDGF-AA、EG-VEGF、GDNF、IGFBP-4、BMP-7、NT-3、NT-4(培養液)、bFGF、HGF、HB-EGF、FGF-7、BDNF、EG-VEGF、GH、IGF-I、IGFBP-6(粉末)などにおいて、差がない、又は著しく優れた成長因子分泌能を示すことができ、特にジアルデヒド澱粉を用いて部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの場合、全体硬化されたコンタクトレンズ型羊膜だけでなく、グルタルアルデヒドで部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングと比較しても大幅に優れた成長因子分泌能を示すことができる。
【0044】
また、本発明の部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングは、眼疾患治療用または眼傷治療用であることができる。
【0045】
本発明において、眼疾患または目の傷は、損傷した眼球表面の眼疾患、持続性上皮欠損、持続性結膜潰瘍、周辺部角膜潰瘍、虚血性角膜炎、炎症性角膜炎、 神経栄養因子性角
膜炎、角膜輪部、無虹彩症、水泡角膜症、スティーブンス-ジョンソン症候群、眼類天疱瘡 、シェーグレン症候群、翼状片または偽翼状片、多発内分泌不全、病巣(lesio
n)の切除、結膜腫瘍の切除、幹細胞移植手術、結膜の炎症、急性炎症、化学的及び熱傷急性状態(state)、角膜基質溶解症、リウマチ性角膜症、ウイルス性結膜炎または細菌性潰瘍により特徴される疾患、疾病または状態を含む。
【0046】
本発明において、眼疾患は、例えば、角膜浮腫、角膜混濁、瘢痕、表面の炎症、眼内炎症、角膜血管新生(corneal neovascular disorder)またはドライアイを含むことができる。
【0047】
以下、実施例は、もっぱら本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨に基づいて、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されないということは、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明である。
【実施例】
【0048】
実施例1.コンタクトレンズ型羊膜ドレッシング製剤の製造
1.1.羊膜の準備
合併症のない妊婦の帝王切開によって摘出された胎盤を滅菌した容器に入れ、冷蔵保管してから24時間以内に処理し、隔離保管し、組織適合性評価の認定後、移植可能な冷凍庫に移して保管した。胎盤を医療用容器に入れ、生理食塩水で洗浄し、凝血を除去した。臍帯側から医療用はさみを用いて切開を入れ、羊膜を絨毛膜(chorion)から鉗子を入れて少しずつ剥離した。剥離後、質が良くない辺縁の羊膜は、切り取り、残りの羊膜の部分を得た。分離した羊膜をステンレスプレートに上皮が下を向くように広げた後、手でこすって残っている絨毛膜と凝血を除去し、生理食塩水を使って5回繰り返して洗いだ。
【0049】
細菌学的検査のための検体を得て培養を行った。まず、抗生剤溶液(sterile Earle’s balanced salt solution)(ペニシリン50μg/ml、ストレプトマイシン50μg/ml、ネチルマイシン100μg/ml、アムホテリシンB 2.5μg/mlを含む)に浸漬させ、羊膜(Amniotic membrane)をステンレスプレートに上皮が下を向くように広げた後、NC paper
(nitrocellulose paper with a pore size of 0.45μg)を上に覆って羊膜をNC paperに付着させた。付着後、これを3×3(Cm)又は10×10(Cm)角に切って、DMEM(Dulbecco Modified Eagle Medium)とグリセリンを1:1で混ぜた保管液が入った容器(nalgene bottle)に移し、-70℃で冷凍保存した。全処理過程後に15KGy放射線照射で2次滅菌過程を追加で行った。
【0050】
1.2.モールドの準備及びコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの製造
韓国人の眼の曲率に合うように製作された鋳型(mold)を準備した。使用したモールドのデザイン及び構造を
図1に示した。
図1に示すように、鋳型はボディ部、チャンバー部からなり、ボディとチャンバーを結合してコンタクトレンズの製造に使用した。鋳型のボディ部とチャンバー部は、Polydimethylsiloxane(PDMS)またはPolylacetic acid(LA)で製造した。鋳型のボディ部のうち、突出部上に羊膜を載せ、乾燥させ、チャンバー部には部分架橋を誘導するための架橋剤を満たした後、ボディ部とチャンバー部を結合させ、羊膜の部分架橋を誘導することができる。上皮細胞を除去していない実施例1.1の羊膜を使用し、羊膜の上皮細胞のある面と
鋳型が直接当接するようにボディ部の突出部上に羊膜を載せた後、水分吸着用ペーパーで水分を除去した後、自然乾燥させた。最初の羊膜が乾燥すると、第二の羊膜を再びその上に載せ、十分に自然乾燥させた。
【0051】
架橋剤としては、グルタルアルデヒド(Glutaraldehyde 、以下、「G
A」)、ジアルデヒド澱粉(Dialdehyde Starch 、以下「DAS」)
を用いた。架橋剤は、羊膜周辺部のみ浸漬されるようにチャンバー部に満たしてあげ、羊膜周辺部は、1/3地点まで浸漬して固定するが、拡散によって1/2地点まで固定され
ることができ、結果的に羊膜の端から、羊膜の端から羊膜中心までの距離1/3~1/2以内の位置に浸漬されるように調節した。
【0052】
より具体的にはDAS(BOC sciences、New York、USA)を45mg/mlになるようにPBS(Phosphate-buffered saline)に溶かし、pH7.4に調整した。十分に溶かしたDASを乾燥された羊膜の体積の1/2だけチャンバー部に満たし、羊膜を載せた鋳型のボディ部と結合して、室温で5分間架橋結合させた。
【0053】
0.1%GA(=10mM)(Merck、Darmstadt、Germany )
をデキストラン(20%)溶液に溶かして準備した。GAを鋳型上で乾燥された羊膜の体積の1/2だけチャンバー部に満たし、羊膜を載せた鋳型のボディ部と結合して、室温で5分間架橋させた。
【0054】
架橋剤が含まれた溶液をチャンバーから除去し、1%NaBH
4/EtOH溶液をチャンバーに1/2だけ満たした後、室温で1分間反応させた。架橋結合処理された羊膜の直径が18~22mmになるようにコンタクトレンズ型に切断し、コンタクトレンズ型に切断された架橋結合処理された羊膜を0.2MグリシンPBSで数回洗浄した。最終産物であるコンタクトレンズ型で切断する際、コンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの端から中心部までの距離1/3地点が架橋され、固定され、中心部までの残りの2/3地点は、未固定の形になるように切断した。製作された羊膜は、グリセロール(glycerol)と組織培養液であるDMEM(dulcecco’s modified eagle medium、phenol red free)が1:1で混合された保存液で-80℃で冷凍保存(crypreserved)する方法と、凍結乾燥(lyophilized)方式の処理を経た後、常温保管の2つの方式を使用した。製造されたGA及びDAS処理された部分架橋されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングを、
図2及び
図3に示した。
【0055】
実施例2.
実施例1にて製造されたコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの物性を確認する実験を行った。
【0056】
2.1.羊膜の厚さ及び透明度の測定
羊膜の厚さの測定は、浦項工科大学で行われた。羊膜をスライドグラス上に載せ、Smart Drop(Femtobiomed、Korea)機器を利用して、側面から写真撮影した後、1 pixel当たりの長さで羊膜断面の厚さを計算する方法を使用した。比較対照群として架橋剤が未処理された正常羊膜を用いており、実験群としてGA、DAS架橋処理された羊膜を用いた。厚さを測定した結果を
図4に示した。
【0057】
図4に示すように、架橋剤が未処理された羊膜の厚さは73.12umと示され、GA及びDAS処理で部分架橋された羊膜の厚さは、それぞれ36.36um、53.46umの厚さが示された。これらの結果は、架橋剤処理による部分架橋により、厚さが薄くなることを意味する。
【0058】
透明度は、羊膜の吸光度を測定した後、式(Absorbance=-log(Transmittance(%))/100 )を使用して計算した。架橋処理した羊膜と、
架橋処理していない羊膜を96 well plateのwell大きさに適するように
biopsy punchで切除して入れ、水分を十分に除去してからmicroplate reader(Biotek、Winooski、USA)を用いて、300nm~700nm(10nm単位)の波長を読み込んで、吸光度を測定した。前記の式を使用
して吸光度を透明度に変え、羊膜の透明度を測定し、特に550nmの波長での透明度を比較分析した。透明度を測定した結果を
図5に示した。
【0059】
図5に示すように、架橋剤が未処理された羊膜の含水前とDAS含水前の処理が最も高い透明度を示したが、統計的に有意性はないことが分かった。これらの結果は、DAS及びGA処理による部分硬化時、透明度には影響を与えないことを示す。
【0060】
2.2.引張強度の測定
羊膜の引張強度の測定は、浦項工科大学の研究室の協力を得て進められた。5mmX15mm角に羊膜を切った上、両端をクリップで固定してから引張強度測定装置(自己実験装置、分解能:0.1N)を使用して、一定の力で双方向に引き伸ばした後、引き伸ばし地点から羊膜が切れる瞬間までの値を測定し、時間当たりの力で記録した。これらの結果を
図6に示した。
【0061】
図6に示すように、架橋剤の種類に応じて機械的特性が変化され、GA処理によって部分硬化された羊膜とDAS処理により部分硬化された羊膜が架橋剤未処理の正常羊膜よりも弾性系数と引張強度が増加することを確認した。GA処理された部分硬化羊膜は、引張強度が約4倍増加しており、DAS処理された部分硬化羊膜は引張強度が約3倍増加した。これらの結果は、架橋過程を経た部分硬化羊膜が未処理の正常羊膜よりも物理的強度が著しく増加したことを示す結果である。
【0062】
2.3.細胞生存率の測定
コンタクトレンズで角膜に着用するためには、ヒトの角膜に毒性を示さない必要があり、ヒトの角膜で一次培養したヒト角膜上皮細胞(human cornea epith
elial cell、HCEC)を用いて細胞生存率を確認した。まず、羊膜をコラーゲン1型がコーティングされたディッシュ上に載せ、正常に付着するように軽く乾かした後、HCECをディッシュに分注し、37℃、5%CO
2培養器で48時間培養した。Live and Dead cell Assay(Abcam、Cambridge、
UK)を用いて細胞生存率を確認した。500umX500um領域内の細胞を5回繰り返して係数し、羊膜に付着して生存する細胞の割合を調査し、その結果を
図7に示した。
【0063】
図7に示すように、DASに部分硬化された羊膜実験群は、未処理の正常羊膜に比して付着細胞数及び比率で統計的に差異を示さないので、生体適合性が非常に優れていることを確認した。
【0064】
2.4.組織学的分析
一枚の羊膜は、厚さが薄すぎて分析が難しかったので、羊膜を3枚重ねて固定し、Tissue-Tek OCT compound(Sakura Finetek Eur
ope、Zoeterwoudem、NL)に浸した。試験片を7umの厚さに切り、SuperFrost Plus Microscope slides(Fisher Scientific)に載せ、室温で30分間乾燥させた後、95%EtOHで5分間スライドに固定させ、ヘマトキシリン-エオシン染色した後、光学顕微鏡を用いて観察した。基底膜構成のタンパク質であるコラーゲンIV型は、免疫染色を通じて確認した。スライドに付着した組織をPBSで洗浄し、1%BSAが含まれたブロッキング溶液に1時間反応させ、非-特異的な反応を抑制した。一次抗体は、抗-コラーゲンIV型(1:200、Abcam、Cambridge、UK)を使用しており、4℃で一晩反応させた。一次抗体の洗浄後、Alexa-488が結合されたanti -rabbit(1:
200、Abcam、Cambridge、UK)を二次抗体として使用して、室温で1時間反応させた。核染色は、DAPI(4’、6-diamidino-2-phenylindol)を用いて対比染色し、その結果を
図8に示した。
【0065】
図8に示すように、未処理の正常羊膜と比較して、DASまたはGAで部分硬化された羊膜でもピンク色で表示される細胞が減少されず、コラーゲンIV型が減少されていないことを確認し、特にDASで部分硬化された羊膜からは細胞とコラーゲンIV型が明らかに維持されることを確認した。
【0066】
2.5.成長因子分析
本願発明の方法に基づいて部分架橋処理した羊膜と、処理していない羊膜をそれぞれ凍結乾燥して粉末を得、培養液は、羊膜を細胞培養皿に塗布した上、血清を含まない培地で24時間以上培養して得た。粉末状態の試料と培養液のタンパク質含有量を測定した後、各試料に含まれた成長因子を分析した。Human Growth Factor Array Q1(Raybiotech、Norcross、GA、USA)を用いて、R
aybiotech社から提供される分析ツールを利用して、スタンダードカーブを作成し、濃度を測定した。
【0067】
全体硬化されたコンタクトレンズ型羊膜との比較には、DASを架橋剤として全体硬化されたコンタクトレンズ型羊膜を製造し、成長因子の発現を比較した。全体硬化されたコンタクトレンズ型羊膜は、実施例1と同様の方法で製造するが、DASを乾燥させた羊膜体積と同様にチャンバー部に満たし、羊膜を載せた鋳型のボディ部と結合することにより、全体の羊膜がDASと接触するように準備した後、室温で5分間架橋結合させて製造した。
【0068】
多様な成長因子の分泌量を測定し、培養液の状態で測定した結果を
図9に、凍結乾燥粉末の状態で測定した結果を
図10に示した。
【0069】
図9に示すように、DASに部分硬化された羊膜(DAS partial AM)、GAで部分硬化された羊膜(GA partial AM)は、DASに全体硬化されたAMと比較してTFGb3、PDGF-AA、EG-VEGF、GDNF、IGFBP-4、BMP-7、NT-3、NT-4などにおいて差がない、又は顕著に優れた成長因子分泌能を示した。
【0070】
また、
図10に示すように、凍結乾燥粉末の状態で確認した成長因子分泌能の比較実験においても、培養液の状態と似たような結果を確認した。DASで部分硬化された羊膜(DAS partial AM)、GAで部分硬化された羊膜(GA partial AM)は、DASで全体硬化された羊膜に比してbFGF、HGF、HB-EGF、FGF-7、BDNF、EG-VEGF、GH、IGF-I、IGFBP-6などにおいて同等、又は著しく優れた成長因子分泌能を示した。
【0071】
これらの結果は、全体硬化された羊膜に比べ、部分硬化された羊膜が優れた成長因子分泌能を有することを示す結果である。
【0072】
2.6.コラゲナーゼアッセイ
【0073】
羊膜を眼表面で分解する主な成分であるコラゲナーゼに抵抗性を有すれば、眼表面で分解されず、長い時間留まることができる。したがって、本発明の部分硬化された羊膜がコラゲナーゼを処理しても、容易に分解されない抵抗性を有するか否かを確認するためにコラゲナーゼアッセイを行った。具体的には、実施例1にて製造されたDASで部分硬化された羊膜(DAS partial AM)、GAで部分硬化された羊膜(GA partial AM)と比較対照群である正常羊膜をそれぞれ1X1cm角を用い、これをpH 7.5であるPBS内0.1%コラゲナーゼ溶液(EC 3.4.24.3 、Cl
ostridium histolyticum;Roche、Mannheim、Germany)が入ったペトリ皿に漬け、室温で観察した。ペトリ皿の下に方眼紙を取り付けて、残りの羊膜の目盛りを数える方式で進行し、計算された値は、百分率で算出し、その結果を
図11に示した。
【0074】
図11に示すように、部分硬化された羊膜は、正常羊膜に比して分解酵素に対する抵抗性が増加し、眼表面において比較的長い時間維持されることを確認した。これは眼表面で自然に分解されてなくなる羊膜の特性を約2~3日遅らし、損傷回復期間を延ばすことができる。また、GAで部分硬化された羊膜は、DASで部分硬化された羊膜に比してより大きな抵抗性があることを確認した。
【0075】
2.7.部分硬化されたコンタクトレンズ型羊膜の上皮回復促進効果
白色家兎を用いて動物実験を行い、すべての実験動物は、実験前に、飼育環境に適応させた。手術用ナイフを利用して、ウサギ眼の全角膜上皮細胞を除去した後、本願発明の実施例に基づいてDAS処理によって部分硬化された羊膜をウサギ角膜にコンタクトレンズのように着用させ、24時間観察した。Sodium fluoresceinで染色した後、 細隙灯で撮影し、上皮の回復を観察し、上皮が回復されない面積はImageJ
プログラムを用いて計算した。ウサギの角膜上皮欠損の比較面積の結果とこれに伴う角膜上皮損傷回復効果を
図12に示した。
【0076】
図12に示すように、着用1日経過後、DAS処理によって部分硬化された羊膜をコンタクトレンズのように着用したウサギの角膜では、上皮損傷部位が未着用の角膜より62%水準に減少したことを確認した。これは部分硬化された羊膜をコンタクトレンズのように着用した場合、角膜上皮回復を促進することができることを示す結果である。
【0077】
前記のように架橋剤を用いて羊膜を部分硬化させて製造されるコンタクトレンズ型羊膜ドレッシングの場合、透明度及び引張強度に優れ、製品の競争力があり、全体硬化された羊膜に比べ生体適合性に優れ、成長因子の分泌能に優れ、角膜上皮を効果的に再生させることができるので、多様な眼疾患、特に角膜損傷患者への治療に有用に活用されることができる。