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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】抱き枕
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/10 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
A47G9/10 P
A47G9/10 V
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018070953
(22)【出願日】2018-04-02
(65)【公開番号】P2019180476
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000196129
【氏名又は名称】西川株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】山田 志奈乃
【審査官】山田 由希子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-148472(JP,U)
【文献】実開昭53-128111(JP,U)
【文献】登録実用新案第3194451(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非通気性の袋体と、
前記袋体に設けられると共に開閉自在とされており開放された状態で前記袋体の内部に空気を流入させる流入部と、
前記袋体に設けられると共に開閉自在とされており開放された状態で前記袋体の内部から前記袋体の外部に空気を流出させる流出部と、
を備え、
前記流入部は、
前記袋体に設けられた開口部と、前記袋体の前記開口部の内側に設けられて圧縮変形すると共に空気が流通可能な弾性発泡部材とを有し、
圧縮変形された前記弾性発泡部材が元の形状に形状復帰するときに前記弾性発泡部材が前記袋体の内部に空気を吸い込むことによって、前記袋体の内部に空気が流入し、
前記袋体の内部に形成された空間には、前記弾性発泡部材以外は空気のみが設けられる、
抱き枕。
【請求項2】
前記袋体は、前記抱き枕の使用者の身体に沿って延びる形状とされており、
前記流入部及び前記流出部の少なくとも一方は前記袋体の端部に設けられる、
請求項1に記載の抱き枕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体を休めるときに用いられる抱き枕に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、抱き枕については種々のものが知られている。特開2014-168607号公報には、人の身体に沿って延びる棒状の抱き枕が記載されている。この抱き枕は、使用者が抱きかかえる長尺状の本体部と、使用者の頭部を載せるヘッドレスト部とから成る。本体部の内部には、ゴム等の弾性体から成る楕円体状のバルーンが埋設されている。本体部の外部には、バルーンと可撓性チューブを介して接続されたエアポンプが設けられる。
【0003】
可撓性チューブは、本体部の端部から本体部の外部に延び出している。エアポンプにはバルブが設けられており、バルブは制御部(CPU)から信号を受けてエアポンプからバルーンへの空気供給を制御する。制御部は信号をエアポンプとバルブに出力し、エアポンプが駆動すると共にバルブが可撓性チューブの空気路を開放して空気がバルーンに供給されることにより、抱き枕が膨張する。
【0004】
実用新案登録第3194451号公報には、弧状に湾曲した棒状の抱き枕が記載されている。この抱き枕は、綿状繊維体が収容されたエアバッグと、エアバッグを覆うクッション性素材の抱き枕本体と、エアバッグにエアを給排気するエアポンプと、エアポンプの給排気を制御する制御部とを備える。綿状繊維体は、脱脂綿によって構成されており、エアバッグの内部に充填されている。
【0005】
エアポンプは、抱き枕本体から抱き枕本体の外部に延び出すエアホースを介してエアバッグに接続されている。エアポンプは、電源及び操作ボタンを備えており、電源及び操作ボタンの操作によって動作する。制御部は、エアポンプから更に延び出している。制御部は、4秒間の給気時間及び6秒間の排気時間でエアポンプがエアバッグへの給排気を行うように、エアポンプの駆動を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-168607号公報
【文献】実用新案登録第3194451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した抱き枕は、抱き枕本体からエアホースが外部に延び出しており、エアホースの抱き枕本体との反対側の端部にエアポンプが設けられている。このように、抱き枕からエアホースが延び出しており、エアホースの更に先にエアポンプが設けられる場合、抱き枕の使用者にエアホースが絡みついたり、使用者の身体にエアポンプが当接したりすることがある。よって、抱き枕の外部に位置するエアホース又はエアポンプが邪魔になることがあるので、使用者の寝心地を損なう可能性がある。
【0008】
また、前述した抱き枕は、制御部の信号によって給排気が行われることにより膨張又は収縮する。よって、使用者が抱き枕に抱きついているときに抱き枕が勝手に膨張又は収縮することがあるので、使用者は抱き枕の使用を煩わしく感じる可能性がある。従って、抱き枕の使用そのものが煩わしくなることによって使用者は抱き枕のことを快適でないと思うようになり、抱き枕が使われなくなることが多いという現状がある。
【0009】
本発明は、前述した問題に鑑みてなされたものであり、使用者の寝心地を良好にすると共に、快適に使用することができる抱き枕を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る抱き枕は、非通気性の袋体と、袋体に設けられると共に開閉自在とされており開放された状態で袋体の内部に空気を流入させる流入部と、袋体に設けられると共に開閉自在とされており開放された状態で袋体の内部から袋体の外部に空気を流出させる流出部と、を備え、流入部は、袋体に設けられた開口部と、袋体の開口部の内側に設けられて圧縮変形すると共に空気が流通可能な弾性発泡部材とを有し、圧縮変形された弾性発泡部材が元の形状に形状復帰するときに弾性発泡部材が袋体の内部に空気を吸い込むことによって、袋体の内部に空気が流入し、袋体の内部に形成された空間には、弾性発泡部材以外は空気のみが設けられる。
【0011】
この抱き枕では、袋体の内部に空気を流入させる流入部、及び袋体の内部から袋体の外部に空気を流出させる流出部が共に非通気性の袋体に設けられている。よって、流入部及び流出部が袋体そのものに設けられ、抱き枕から外部に延び出すエアホース等は存在しない。従って、抱き枕から外部に延び出す部分が使用者の身体に当接することを抑制することができるので、使用者の寝心地が損なわれる事態を回避することができる。また、この抱き枕では、流入部が開口部と弾性発泡部材とを有し、流入部は、圧縮変形された弾性発泡部材が形状復帰するときに袋体の内部に空気を吸い込むことによって袋体の内部への空気流入を行う。よって、流入部を開放して弾性発泡部材を圧縮変形した状態で圧縮変形を解除すると、弾性発泡部材が膨張しながら袋体の内部への空気流入を行う。従って、流入部を開放した後に弾性発泡部材の圧縮及び圧縮解除を繰り返すことによって袋体の内部への空気流入を容易に行うことができる。また、流出部を開放することによって袋体の内部から袋体の外部への空気流出を容易に行うことができる。よって、袋体の内部への空気流入、及び袋体の外部への空気流出を容易に行うことできるので、抱き枕の膨張及び収縮を容易に行うことができる。従って、使用者の好みに応じて抱き枕の硬さを容易に変更することができるので、使用者の寝心地を良好にすると共に快適に使用可能な抱き枕とすることができる。
【0012】
また、袋体は、抱き枕の使用者の身体に沿って延びる形状とされており、流入部及び流出部の少なくとも一方は袋体の端部に設けられてもよい。この場合、流入部及び流出部の少なくとも一方が袋体の端部に設けられることにより、流入部及び流出部の少なくともいずれかを使用者の背中又は腰に当たりにくくすることができる。従って、使用者に一層快適な寝心地を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る抱き枕によれば、使用者の寝心地を良好にすると共に、快適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る抱き枕を示す平面図である。
図2】(a)は、図1の抱き枕のカバーを示す断面図である。(b)は、図2(a)のカバーとは別のカバーを示す断面図である。
図3図1の抱き枕の流入部を示す斜視図である。
図4】(a)は、図3の流入部を示す断面図である。(b)は、図4(a)の流入部の弾性発泡部材が圧縮変形した例を示す断面図である。(c)は、図4(b)の弾性発泡部材が形状復帰する例を示す断面図である。
図5図1の抱き枕を使用者が使用する例を示す平面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る抱き枕を示す平面図である。
図7】(a)は、実施例に係る圧力分布の結果を示す図である。(b)は、比較例に係る圧力分布の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図面を参照しながら本発明に係る抱き枕の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法等は図面に記載のものに限定されない。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る抱き枕1を示す平面図である。抱き枕1は、非通気性の袋体10によって構成されており、袋体10の内部に収容する空気の量を変更することによって形状及び硬さを調整可能な空気抱き枕である。図1に示されるように、抱き枕1は、全体として、直線状に延びると共に両端のそれぞれが曲げられた形状を成しており、例えば、タツノオトシゴ状とされている。袋体10の材料は、例えば、PVC等のビニル素材、ポリウレタン又はポリエステルであるが、適宜変更可能である。
【0017】
袋体10は、使用者M(図5参照)の腕M1が接触する腕接触部2と、腕接触部2から使用者Mの身体に沿って延びる延在部3と、延在部3の腕接触部2との反対側において使用者Mの脚M2が載せられる脚載せ部4とを備える。延在部3は、使用者Mの身体に沿う第1方向D1に沿って長く延びている。腕接触部2は延在部3の第1方向D1の一端に設けられ、脚載せ部4は延在部3の第1方向D1の他端に設けられる。
【0018】
腕接触部2は延在部3の第1方向D1の一端において第1方向D1と交差する第2方向D2に延び出しており、例えば、脚載せ部4は延在部3の第1方向D1の他端において第2方向D2の反対方向である第3方向D3に延び出している。このように、腕接触部2が延在部3から延び出す第2方向D2と、脚載せ部4が延在部3から延び出す第3方向D3とは、互いに逆側を向いている。
【0019】
腕接触部2は、第2方向D2の先端に位置する第1端部2aと、袋体10の第1方向D1の一端を構成する第2端部2bと、第1端部2aから第2端部2bの反対側に延び出すと共に第1端部2aから延在部3に向かって延びる内側湾曲部2cと、第2端部2bから延在部3に向かって延びる外側湾曲部2dとを有する。一例として、腕接触部2(第2端部2b)の第2方向D2の長さは、20cm以上且つ50cm以下であるが、適宜変更可能である。
【0020】
内側湾曲部2cには、例えば、腕接触部2の内側に向かって延びる複数の皺2eが形成されている。第1端部2aは、例えば、円弧状に湾曲しており、第2端部2bは第1端部2aから外側湾曲部2dに向かって直線状に延びている。内側湾曲部2cは、第1端部2aから腕接触部2の内側に入り込むように湾曲しており、例えば、円弧状に腕接触部2の内側に湾曲している。一例として、内側湾曲部2cの曲率半径は第1端部2aの曲率半径よりも小さくなっており、すなわち、内側湾曲部2cの湾曲度合は第1端部2aの湾曲度合よりもきつくなっている。外側湾曲部2dは、第2端部2bの第1端部2aとの反対側から緩やかに湾曲しており、例えば、円弧状に湾曲している。
【0021】
延在部3は、腕接触部2及び脚載せ部4の間において全体として第1方向D1に延びている。延在部3は、腕接触部2に向かうに従って第3方向D3に傾斜すると共に、脚載せ部4に向かうに従って第2方向D2に傾斜する。よって、腕接触部2、延在部3及び脚載せ部4を含む袋体10は、全体としてZ字状とされている。
【0022】
延在部3は、内側湾曲部2cから延び出すと共に第1方向D1に対して傾斜する第1傾斜部3aと、外側湾曲部2dから延び出すと共に第1方向D1に対して傾斜する第2傾斜部3bと、第1傾斜部3aから脚載せ部4まで延びる第1湾曲部3cと、第2傾斜部3bから脚載せ部4まで延びる第2湾曲部3dとを有する。延在部3の第1方向D1の長さは、例えば、90cm以上且つ110cm以下であるが、適宜変更可能である。延在部3の幅は、例えば、15cm以上且つ50cm以下である。また、延在部3の幅は、腕接触部2から脚載せ部4に向かうに従って徐々に広くなってもよいし、腕接触部2から脚載せ部4に向かうに従って徐々に狭くなってもよい。
【0023】
第1傾斜部3a及び第2傾斜部3bは、例えば、直線状に延びており、互いに略平行に延びている。一例として、第1傾斜部3a及び第2傾斜部3bは、脚載せ部4に向かうに従って第2方向D2側に傾斜している。第1湾曲部3c及び第2湾曲部3dは、例えば、円弧状に湾曲している。第1湾曲部3cの曲率半径は、第2湾曲部3dの曲率半径より小さくてもよいし、第2湾曲部3dの曲率半径と同程度であってもよい。第1湾曲部3c及び第2湾曲部3dは、脚載せ部4に向かうに従って第3方向D3に湾曲しながら延びている。また、延在部3から脚載せ部4に曲がる湾曲度合は、延在部3から腕接触部2に曲がる湾曲度合よりも緩やかである。
【0024】
脚載せ部4は、第3方向D3の先端に位置する第3端部4aと、袋体10の第1方向D1の他端(第2端部2bとの反対側の端部)を構成する第4端部4bと、第3端部4aから第4端部4bの反対側に延び出すと共に第3端部4aから延在部3に向かって延びる内側延在部4cとを有する。
【0025】
脚載せ部4は、例えば、延在部3から第3端部4aに向かうに従って先細りする形状とされており、脚載せ部4の第1方向D1の幅は、腕接触部2の第1方向D1の幅よりも狭い。一例として、第3端部4a、第4端部4b及び内側延在部4cは、共に円弧状に湾曲している。例えば、第4端部4bの曲率半径は内側延在部4cの曲率半径より大きく、内側延在部4cの曲率半径は第3端部4aの曲率半径より大きい。また、脚載せ部4の第3方向D3の長さは、腕接触部2の第2方向D2の長さよりも長く、例えば、25cm以上且つ55cm以下であってもよい。
【0026】
図2(a)及び図2(b)は、袋体10の内部構造を示す断面図である。図2(a)及び図2(b)に示されるように、袋体10は中空とされており、袋体10の内部には空間Sが設けられる。袋体10は、腕接触部2の内部から延在部3の内部を通って脚載せ部4の内部にまで延びる空間Sを有し、袋体10の全体にわたって延びる空間Sを有することによって袋体10の形状を自在に変形可能とされている。一例として、袋体10は、内容物を有しておらず、空間Sの空気によって袋体10の形状が定められる。
【0027】
図2(a)に示されるように、抱き枕1は、例えば、綿11bを内部に含む側地11aを備えると共に袋体10を収容するカバー11を備えていてもよい。このように、袋体10がカバー11に収容されることにより、抱き枕1のクッション性を高めると共にカバー11を変形しやすくすることができる。なお、抱き枕1は、カバー11に代えて、ウレタンを内部に含むと共に袋体10を収容するカバーを備えていてもよい。すなわち、綿11bに代えてウレタンを用いてもよい。
【0028】
図2(b)に示されるように、抱き枕1は、パイプ材12bを内部に含む側地12aを備えると共に袋体10を収容するカバー12を備えていてもよい。パイプ材12bは、例えば、カバー12の内部に満遍なく収容されており、各パイプ材12bは円筒状を呈する。一例として、各パイプ材12bは、ポリエチレン製の中空パイプであるが、パイプ材12bの材料は、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン又はポリウレタンであってもよい。パイプ材12bを有するカバー12によって袋体10を収容する場合には、清涼感が高い抱き枕1とすることができると共に、パイプ材12bの流動性を良好にしてカバー12の過度な変形を抑制することができる。
【0029】
図1に示されるように、抱き枕1は、袋体10の内部(空間S)に空気を流入する流入部5と、袋体10の内部から空気を袋体10の外部に流出する流出部8とを備える。流入部5及び流出部8は、共に開閉自在とされている。流入部5及び流出部8は、例えば、袋体10の第1方向D1の端部に設けられており、共に脚載せ部4に設けられる。一例として、流入部5及び流出部8の材料は、PVC又はポリウレタンであるが、袋体10の材料と同一であってもよく、適宜変更可能である。
【0030】
流入部5及び流出部8が脚載せ部4に設けられることにより、使用者Mの顔M3が流入部5又は流出部8に当たることを抑制することができる。しかしながら、流入部5及び流出部8の少なくともいずれかは、腕接触部2に設けられていてもよい。この場合、袋体10に対する空気の流出入を一層容易に行うことができる。
【0031】
図3は、流入部5を拡大した斜視図である。図4(a)、図4(b)及び図4(c)は、流入部5が袋体10の内部に空気Aを流入する状態の例を示す断面図である。流入部5は、袋体10の内部に空気を吸入する吸気弁である。流入部5は、例えば、手動によって動作する。流入部5は、袋体10の開口10aに取り付けられると共に蓋6cを有する開口部6と、開口部6から見て袋体10の内側に位置する弾性発泡部材7とを備える。また、流出部8は開口部6を備える。流出部8は、弾性発泡部材7を有しないので、流出部8の蓋6cを開放することによって流出部8から空気が袋体10の外部に流出する。
【0032】
開口部6は、袋体10の開口10aに固定されると共に空気Aが流通する流通口6bを有する固定部6aと、固定部6aを覆うように固定部6aに取り付けられる蓋6cと、蓋6cから延び出す紐6dとを有する。固定部6aは内部に流通口6bを有する筒状を成しており、例えば、固定部6aの外周には蓋6cを螺合する雄螺子6eが形成されている。固定部6aの雄螺子6eに蓋6cの内側の雌螺子が螺合することによって固定部6aに蓋6cが取り付けられる。
【0033】
弾性発泡部材7は、開口部6から見て袋体10の内側に設けられており、例えば、流通口6bの下部に配置される。弾性発泡部材7は、変形自在とされたスポンジ部7aと、スポンジ部7aを袋体10の内部に固定する固定部7bとを備える。スポンジ部7aは、例えば、袋体10の内面10bに接触する接触面7cを有し、接触面7cは開口部6を囲むように配置される。
【0034】
例えば、接触面7cは一方向に長く延びる形状とされており、これにより弾性発泡部材7を袋体10の外側から押しやすくすることができる。一例として、接触面7cの形状は長円状であってもよい。固定部7b及び接触面7cは、プラスチック製であってもよいし、可撓性素材によって構成されていてもよい。固定部7bは、例えば、接触面7cを囲む環状とされており、長円状とされていてもよい。
【0035】
スポンジ部7aは、例えば、弾性発泡体であり、一例として発泡ウレタンである。スポンジ部7aを構成する発泡ウレタンは、表面張力が大きく引っ張り込まれて変形しやすいという性質を有する。スポンジ部7aの少なくとも一部は、非通気性生地によって覆われると共に、開口部6及び空間Sに連通する放出孔を有する。非通気性生地の材料は、例えば、TPU(熱可塑性ポリウレタン樹脂)又はPVC(ポリ塩化ビニル)である。スポンジ部7aの内部には空気Aが流通可能とされており、スポンジ部7aの圧縮及び膨張に伴って袋体10の空間Sに空気Aが流入する。
【0036】
次に、袋体10の空間Sに空気Aを流入して袋体10を膨張させる方法について説明する。まず、流出部8の蓋6cを閉じた状態として流入部5の蓋6cを開ける。この状態では、流通口6bの内側に弾性発泡部材7が存在するので空気の流出入は生じない。また、流入部5の蓋6cを開けた状態で固定部7b又は接触面7cを押してスポンジ部7aを圧縮すると、圧縮変形されたスポンジ部7aが膨張するときにスポンジ部7aが空気Aを吸い込む。このとき、スポンジ部7aが袋体10の空間Sに空気Aを吸い込むことによって袋体10が膨張する。
【0037】
このようにスポンジ部7aの圧縮及び膨張を繰り返すことによって空間Sに空気Aが入るので抱き枕1を所望の硬さにすることができる。空間Sから空気Aを抜くときには、流出部8の蓋6cを開放すればよい。具体的には、雄螺子6eに対する流出部8の蓋6cの螺合度合を手で調整することによって、空間Sの空気を抱き枕1の外部に流出することができる。
【0038】
次に、本実施形態に係る抱き枕1の作用効果について詳細に説明する。図5に示されるように、抱き枕1では、袋体10の空間Sに空気を流入させる流入部5、及び袋体10の空間Sから袋体10の外部に空気を流出させる流出部8が共に非通気性の袋体10に設けられている。よって、流入部5及び流出部8が袋体10そのものに設けられ、抱き枕1から外部に延び出すエアホース等は存在しない。従って、抱き枕1から外部に延び出す部分が使用者Mの身体に当接することを抑制することができるので、使用者Mの寝心地が損なわれる事態を回避することができる。
【0039】
また、抱き枕1では、流入部5が開口部6と弾性発泡部材7とを有し、流入部5は、圧縮変形された弾性発泡部材7が形状復帰するときに袋体10の空間Sに空気を吸い込むことによって空間Sへの空気流入を行う。よって、流入部5を開放して弾性発泡部材7を圧縮変形した状態で圧縮変形を解除すると、弾性発泡部材7が袋体10の空間Sに空気流入を行う。従って、流入部5を開放した後に弾性発泡部材7の圧縮及び圧縮解除を繰り返すことによって袋体10の空間Sへの空気流入を容易に行うことができる。また、流出部8を開放することによって袋体10の内部から袋体10の外部への空気流出を容易に行うことができる。
【0040】
よって、袋体10の空間Sへの空気流入、及び袋体10の外部への空気流出を容易に行うことができるので、抱き枕1の膨張及び収縮を容易に行うことができる。従って、使用者Mの好みに応じて抱き枕1の硬さを容易に変更することができるので、使用者Mの寝心地を良好にすると共に快適に使用可能な抱き枕1とすることができる。
【0041】
また、流入部5又は流出部8が操作されることにより、袋体10の空気量の調整を短時間で行うことができるので、抱き枕1を容易に使用者Mの体形に合った形状とすることができる。更に、袋体10(抱き枕1)は、内容物を有しない。すなわち、袋体10の空間Sには弾性発泡部材7以外は空気のみが設けられるので、袋体10の形状を更に変更しやすくすることができる。従って、使用者Mの体形又は好み等に応じて袋体10の形状を自在且つ容易に変形することができるので、快適な抱き枕1を提供することができる。更に、流出部8の蓋6cを開放して袋体10の空気を抜くことによって袋体10をコンパクト且つ軽量化できるので、袋体10の持ち運びを容易に行うことができる。
【0042】
また、袋体10は、抱き枕1の使用者Mの身体に沿って延びる形状とされており、流入部5及び流出部8の少なくとも一方は袋体10の端部に設けられてもよい。この場合、流入部5及び流出部8の少なくとも一方が袋体10の端部に設けられることにより、流入部5及び流出部8の少なくともいずれかを使用者Mの背中M4又は腰M5に当たりにくくすることができる。従って、使用者Mに一層快適な寝心地を提供することができる。
【0043】
また、流入部5(弾性発泡部材7)は、袋体10の端(例えば脚載せ部4の第3端部4a)からずれた位置に設けられる。従って、図4(c)に示されるように、弾性発泡部材7が吸い込んだ空気Aを袋体10の内部において360度方向に放出することができるので、袋体10を効率よく膨らませることができる。その結果、袋体10への空気流入を一層速やかに行うことができる。
【0044】
また、袋体10は、図5に示されるように、腕接触部2及び脚載せ部4を備える。よって、使用者Mは腕M1を腕接触部2に掛けると共に脚M2で脚載せ部4を挟むことができる。従って、腕接触部2に腕M1が載せられて脚載せ部4に脚M2が載せられることにより、袋体10の内部の空気がほどよく移動して袋体10を使用者Mの寝姿勢に合った形状とすることができる。更に、袋体10を適度に張り詰めて安定させることができる。その結果、袋体10によって使用者Mの身体を安定させることができるので、袋体10に対する使用者Mの身体のフィット感を良好にすることができる。
【0045】
また、袋体10が脚載せ部4を備えることにより、脚M2で脚載せ部4を挟み込むことができるので、腰M5から脚M2に向かう身体のラインを斜めから水平に近づけることができる。従って、脚M2を脚載せ部4に載せることによって腰M5にやさしい寝姿勢とすることができるので、腰痛の緩和又は予防に寄与する。更に、袋体10が腕接触部2を備えることにより、横向き寝をする使用者Mの肩M6及び腰M5等にかかる圧力を分散することができるので、横向き寝を長時間快適に行うことができる。従って、本実施形態に係る抱き枕1では、横向き寝をしたときの体圧分散性を高めることによって使用者Mに快適な横向き寝を提供することができるので、いびきの軽減、及び無呼吸症候群の予防にも寄与する。
【0046】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る抱き枕21について図6を参照しながら説明する。抱き枕21は、脚載せ部4を有しない袋体30を備える点が第1実施形態と相違する。抱き枕21は、例えば、使用者Mの腕M1によって抱きかかえられて使用される。以下では、第1実施形態と重複する説明を適宜省略する。図6に示されるように、袋体30は、腕接触部22と、延在部23と、空気流出入部24とを備えており、全体として第1方向D1に長く延びる長方形状(直方体状)とされている。
【0047】
腕接触部22は、第1方向D1の一端に位置すると共に第1方向D1に交差する方向に延びる端部22aと、端部22aの一端から延在部23に向かって延びる第1湾曲部22bと、端部22aの他端から延在部23に向かって延びる第2湾曲部22cとを有する。端部22aは直線状に延在し、第1湾曲部22b及び第2湾曲部22cは僅かに円弧状に湾曲している。
【0048】
延在部23は、第1湾曲部22bから空気流出入部24に向かって直線状に延びる第1延在部23aと、第2湾曲部22cから空気流出入部24に向かって直線状に延びる第2延在部23bとを含んでいる。第1延在部23a及び第2延在部23bは、例えば、共に第1方向D1に沿って互いに略平行に延びている。
【0049】
空気流出入部24は、第1方向D1の他端(腕接触部22との反対側の端部)に設けられる。空気流出入部24は、第1方向D1に交差する方向に延びる端部24aと、端部24aの一端から第1延在部23aにまで延びる第3湾曲部24bと、端部24aの他端から第2延在部23bにまで延びる第4湾曲部24cとを有する。端部24aは直線状に延びており、第3湾曲部24b及び第4湾曲部24cは僅かに円弧状に湾曲している。
【0050】
空気流出入部24は、袋体30の内部に空気を流入する流入部25と、袋体30の内部から袋体30の外部に空気を流出する流出部28とを備える。流入部25及び流出部28は、例えば、第1方向D1の端部に設けられると共に、第1方向D1に交差する方向に沿って並んで配置されている。流入部25は開口部26と弾性発泡部材27とを有し、流出部28は開口部26を有する。
【0051】
流入部25及び流出部28の構成は、第1実施形態の流入部5及び流出部8の構成と同様であるが、開口部26の形状が開口部6の形状と異なっている。具体的には、開口部6は雄螺子6eに蓋6cを螺合することによって袋体10の開閉を行うが、開口部26はキャップ26aの着脱によって袋体30の開閉を行う。なお、弾性発泡部材27の構成は例えば弾性発泡部材7の構成と同一である。
【0052】
以上、第2実施形態に係る抱き枕21では、袋体30の内部に空気を流入させる流入部25、及び袋体30の内部から袋体30の外部に空気を流出させる流出部28が共に非通気性の袋体30に設けられる。よって、流入部25及び流出部28が袋体30そのものに設けられ、抱き枕21から外部に延び出すエアホース等は存在しない。従って、抱き枕21から外部に延び出す部分が使用者Mの身体に当接することを抑制することができる。
【0053】
また、流入部25は開口部26と弾性発泡部材27とを有し、流入部25は圧縮変形された弾性発泡部材27が元の形状(圧縮前の形状)に形状復帰するときに袋体30の内部に空気を吸い込むことによって袋体30の内部への空気流入を行う。よって、弾性発泡部材27の圧縮及び圧縮解除を繰り返すことによって袋体30の内部への空気流入を容易に行うことができるので第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0054】
以上、本発明に係る抱き枕の実施形態について説明したが、本発明は、前述した各実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形してもよい。すなわち、抱き枕の各部の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、上記の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0055】
例えば、前述の実施形態では、腕接触部2、延在部3及び脚載せ部4を含む袋体10を備える抱き枕1と、腕接触部22、延在部23及び空気流出入部24を含む袋体30を備える抱き枕21と、について説明した。しかしながら、これらの抱き枕1,21は、使用者Mの頭部が載せられる枕として使用されてもよい。
【0056】
また、前述の実施形態では、腕接触部2の内部から延在部3の内部を通って脚載せ部4の内部にまで延びる空間Sを有すると共に内容物を有しない袋体10について説明した。しかしながら、袋体の内部に内容物が収容されてもよい。例えば、腕接触部2の内部、及び脚載せ部4の内部のみに弾性発泡体等の内容物が収容されてもよい。また、袋体の内部にマチ部が設けられていてもよく、マチ部によって袋体の内部が複数の空間に区画されていてもよい。
【0057】
(実施例)
以下では、第1実施形態の抱き枕1の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。図5に示されるように、実施例では抱き枕1を用いたときの体圧分散を測定し、比較例では抱き枕を用いないときの体圧分散を測定した。
【0058】
測定の結果を図7(a)及び図7(b)に示しており、図7(a)は実施例の体圧分散の測定結果、図7(b)は比較例の体圧分散の測定結果をそれぞれ示している。図7(a)及び図7(b)は、敷き寝具に付与される圧力の値をマトリクス状に示しており、色が濃い部分には高い圧力がかかっており、色が薄い部分には低い圧力しかかかっていないことを示している。
【0059】
図7(b)に示されるように、抱き枕1を用いない比較例の場合には、使用者Mの腰M5及び脚M2のあたりに高い圧力がかかっていることが分かる。一方、図7(a)に示されるように、抱き枕1を用いた実施例の場合には、腰M5及び脚M2にかかっていた圧力が緩和されており、抱き枕1によって使用者Mの体圧が分散されていることが分かる。
【0060】
また、体圧分散を10人の使用者Mに対して測定する実験を行った。この実験では、各使用者Mに対し、最大体圧(mmHg)、平均体圧(mmHg)、及び敷き寝具への接地面積(cm)を測定した。その結果、実施例における最大体圧の10人の平均値は28mmHgとなり、実施例における平均体圧の10人の平均値は9mmHgとなった。一方、比較例における最大体圧の10人の平均値は60mmHgとなり、比較例における平均体圧の10人の平均値は12mmHgとなった。従って、抱き枕1を用いた実施例では、最大体圧及び平均体圧を共に低下できることが分かった。
【0061】
また、実験の結果、実施例における接地面積の10人の平均値は3250cmとなり、比較例における接地面積の10人の平均値は2300cmとなった。このように、抱き枕1を用いた実施例では、敷き寝具に対する接地面積を広くできることが分かった。以上のように、抱き枕1を用いた場合には、接地面積を広くして体圧を抑えることにより、体圧分散性を確実に高められることが分かった。
【符号の説明】
【0062】
1,21…抱き枕、2,22…腕接触部、2a…第1端部、2b…第2端部、2c…内側湾曲部、2d…外側湾曲部、2e…皺、3,23…延在部、3a…第1傾斜部、3b…第2傾斜部、3c…第1湾曲部、3d…第2湾曲部、4…脚載せ部、4a…第3端部、4b…第4端部、4c…内側延在部、5,25…流入部、6,26…開口部、6a…固定部、6b…流通口、6c…蓋、6d…紐、6e…雄螺子、7,27…弾性発泡部材、7a…スポンジ部、7b…固定部、7c…接触面、8,28…流出部、10,30…袋体、10a…開口、10b…内面、11,12…カバー、11a,12a…側地、11b…綿、12b…パイプ材、22a…端部、22b…第1湾曲部、22c…第2湾曲部、23a…第1延在部、23b…第2延在部、24…空気流出入部、24a…端部、24b…第3湾曲部、24c…第4湾曲部、26a…キャップ、A…空気、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…第3方向、M…使用者、M1…腕、M2…脚、M3…顔、M4…背中、M5…腰、M6…肩、S…空間(内部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7