(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】放電灯の封止構造、および当該構造を備える放電灯
(51)【国際特許分類】
H01J 61/36 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
H01J61/36 B
(21)【出願番号】P 2018149833
(22)【出願日】2018-08-09
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】510138741
【氏名又は名称】フェニックス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【氏名又は名称】多田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 浩
(72)【発明者】
【氏名】牛島 真一
(72)【発明者】
【氏名】山田 敬重
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-194953(JP,U)
【文献】実開昭62-047052(JP,U)
【文献】実開昭61-033354(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 61/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部、および前記発光部に続く封止部を有する発光管と、
前記封止部内に挿入され、前記封止部の内壁との間で融着されるガラス部材と、
一端が前記ガラス部材の先端面に取り付けられ、他端が前記発光部内に延びる電極と、
一端が前記電極の一
端に接続され、前記ガラス部材の前記先端面からガラス部材側面に沿って取り付けられる金属箔とを備えており、
前記ガラス部材における前記先端面と前記ガラス部材側面との境界に生じる先端エッジは直線部を含んでおり、
前記金属箔は、前記先端エッジの前記直線部で折れ曲がって、前記先端面から前記ガラス部材側面に沿って
おり、
前記ガラス部材の本体部は円柱状である
放電灯の封止構造。
【請求項2】
前記ガラス部材は、
前記本体部と、前記本体部の先端から延びる先端部とを有しており、
前記先端部は、前記先端面に向けて断面積が減少していく形状となっており、
前記直線部に続く前記先端部の前記ガラス部材側面は平面となっており、
平面状の前記先端部の前記ガラス部材側面と前記本体部の前記ガラス部材側面との境界に中間エッジが形成されている請求項1に記載の封止構造。
【請求項3】
請求項1
または2に係る封止構造を備える放電灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的大型で大電流を必要とする放電灯の封止構造、および当該構造を備える放電灯に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、比較的発光量が多い放電灯は工場等での照明用途や、光化学産業分野といった様々な分野で広く使用されている。
【0003】
とりわけ、より発光量を多くするために大電流を必要とする放電灯においては、発光ガスの主成分である水銀等の封入量が多く、かつ、点灯時における発光管内のガス圧が非常に高く、さらに、これらに伴って発熱量も多いことから、封止部における高い耐熱性および耐圧性が求められている。
【0004】
このような高い耐熱性および耐圧性を実現するため、従前より、特許文献1に示すような封止構造が提案されている。
【0005】
特許文献1に開示された封止構造によれば、給電用の複数枚の金属箔が円柱状のガラス部材の外周において互いに離間した状態で当該ガラス部材の軸方向に帯状に配置されていることから、ガラス製の封止管の内壁とガラス部材の表面とが互いに融着することにより、封止部内を気密できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された封止構造による封止部内の気密性では近年の光量増大の要求に伴う高圧化に耐えることができないおそれがあり、比較的大型で大電流を必要とする放電灯には適用できないおそれがあった。
【0008】
なぜならば、特許文献1に開示された封止構造によれば、
図12に示すように、ガラス部材1は、円柱状の本体部2と、当該本体部2の一方端から延びる円錐台状の先端部3とで一体的に構成されている。そして、短冊状に形成された複数の金属箔4が当該先端部3の先端面5から、先端部3の側面(先端部側面)6および、本体部2の側面(本体部側面)7にかけて各面に沿うようにして取り付けられている。
【0009】
このとき、先端部3の先端面5から先端部側面6にかけて金属箔4が折り曲げられた部分に注目すると、
図13に示すように、先端面5と先端部側面6との境界に生じるエッジ8が円弧状となっているのに対し、金属箔4は平面状である。このことにより、金属箔4を先端面5から先端部側面6に沿って取り付けたとき、金属箔4の幅方向中央部はエッジ8に接しているものの、金属箔4の幅方向両端部はエッジ8から浮いてしまう(図中上側の矢印)。このような「浮き」が生じると、ガラス製の封止管の内壁とガラス部材の表面とを互いに融着させて封止部内を気密させる際、溶融したガラスは粘度が高いことから、この「浮き」の部分に溶融したガラスが浸入できず金属箔4とエッジ8との間に「空間」が生じてしまうおそれがあった。
【0010】
このような「空間」が生じると、例えば放電灯の点灯時に発光管内が高温高圧になった際、応力が集中することによってこの部分を基点として発光管に亀裂が生じ、発光管が破裂するおそれがあった。さらに、上述した「空間」が生じると、当該空間中に未蒸発の発光物質(例えば、水銀)が溜まり、発光に寄与する発光物質の量が変化することによって不所望に発光特性が変わってしまうおそれもあった。
【0011】
このような問題は、先端部側面6と本体部側面7との境界に生じるエッジ9でも同様であり、エッジ9と金属箔4の幅方向両端部との間に生じた「浮き」により(図中下側の矢印)、金属箔4とエッジ9との間に「空間」が生じてしまうおそれがあり、このことが、発光管の破裂や発光特性の変化を引き起こすおそれがあった。
【0012】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、封止部内の気密性をより高めることのできる放電灯の封止構造、および当該構造を備える放電灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一局面によれば、
発光部、および前記発光部に続く封止部を有する発光管と、
前記封止部内に挿入され、前記封止部の内壁との間で融着されるガラス部材と、
一端が前記ガラス部材の先端面に取り付けられ、他端が前記発光部内に延びる電極と、
一端が前記電極の一端に接続され、前記ガラス部材の前記先端面からガラス部材側面に沿って取り付けられる金属箔とを備えており、
前記ガラス部材における前記先端面と前記ガラス部材側面との境界に生じる先端エッジは直線部を含んでおり、
前記金属箔は、前記先端エッジの前記直線部で折れ曲がって、前記先端面から前記ガラス部材側面に沿っており、
前記ガラス部材の本体部は円柱状である
放電灯の封止構造が提供される。
【0014】
好適には、
前記ガラス部材は、柱状の本体部と、前記本体部の先端から延びる先端部とを有しており、
前記先端部は、前記先端面に向けて断面積が減少していく形状となっており、
前記直線部に続く前記先端部の前記ガラス部材側面は平面となっており、
平面状の前記先端部の前記ガラス部材側面と前記本体部の前記ガラス部材側面との境界に中間エッジが形成されている。
【0016】
本発明の他の局面によれば、
上述した封止構造を備える放電灯が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、封止部内の気密性をより高めることのできる放電灯の封止構造、および当該構造を備える放電灯を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態1に係る放電灯100の構造を示す図である。
【
図2】封止部114内を気密させる前における、実施形態1に係る放電灯100の構造を示す図である。
【
図3】陽極として用いられるマウント150の分解図である。
【
図4】陽極として用いられるマウント150の分解斜視図である。
【
図6】ガラス部材152を先端面174の正面から見た図である。
【
図7】金属箔156を取り付けた状態のガラス部材152の斜視図である。
【
図8】金属箔156を取り付けた状態のガラス部材152を先端面174の正面から見た図である。
【
図9】陰極として用いられるマウント120の分解図である。
【
図10】ガラス部材152の先端エッジ178における金属箔156の取り付け状態を示す拡大図である。
【
図11】
図10における仮想線ISとガラス部材152の中心軸とを含む平面でガラス部材152を切断した状態を示す断面の模式図である。
【
図12】特許文献1に開示された封止構造における、ガラス部材1に対する金属箔4の取り付け状態を示す斜視図である。
【
図13】特許文献1に開示された封止構造における、エッジ8およびエッジ9でのガラス部材1に対する金属箔4の取り付け状態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態1に係る放電灯100の構造)
本発明が適用された実施形態1に係る放電灯100における封止構造について、図面を用いて説明する。
図1は、実施形態1に係る放電灯100の構造を示す図である。
図2は、封止部内を気密させる前における、実施形態1に係る放電灯100の構造を示す図である。
【0020】
実施形態1に係る放電灯100は、大略、発光管110と、一対のマウント120,150とを備えている。
【0021】
発光管110は、石英ガラスで形成された管状部材であり、中央部に形成された略球状の発光部112と、当該発光部112に続いて両側から突設された一対の封止部114とを有している。なお、封止部114は1つであってもよい。
【0022】
発光部112の内部は、後述する封止工程を経て、両封止部114で気密封止された内部空間116となる。
【0023】
一対のマウント120,150は、基本的に同じ構造となっており、実施形態1に係る放電灯100は、直流点灯用であることから、陰極として使用されるマウント120に比べて、陽極として使用されるマウント150の方が大きくなっている点が異なる。以下では、陽極として使用されるマウント150の構成について詳説し、然る後、陰極として使用されるマウント120について、マウント150との相違を中心に説明する。
【0024】
陽極として使用されるマウント150は、
図3および
図4に示すように、大略、ガラス部材152と、電極154と、金属箔156と、補助ガラス部材158と、外部リード160と、キャップガラス部材161と、コイル162とで構成されている。
【0025】
ガラス部材152は、発光管110の封止部114内に挿入され、当該封止部114の内壁との間で融着される略円柱状の部材である。実施形態1のガラス部材152は、
図5および
図6に示すように、円柱状の本体部170と、当該本体部170の先端から延びる先端部172とを有している。先端部172は、ガラス部材152における先端面174に向けて断面積が減少していく形状、つまり、先細りのテーパ形状となっている。本体部170と先端部172とは、互いに一体に形成されている。
【0026】
また、ガラス部材152における先端面174と、ガラス部材152の側面であるガラス部材側面176との境界には、先端エッジ178が形成されている。実施形態1では、先端エッジ178には、5つの直線部180が含まれている。
【0027】
さらに、各直線部180に続く、先端部172のガラス部材側面176(以下、「先端部側面181」という。)は平面となっている。以下、この平面の部分を「平面部182」という。また、ガラス部材側面176におけるこの平面部182と、本体部170のガラス部材側面176(以下、「本体部側面184」という。)との境界には、中間エッジ186が形成されている。
【0028】
また、ガラス部材152における先端面174の中央部には、電極154が取り付けられる電極取付用穴188が形成されており、後端面190には、外部リード160が取り付けられる外部リード取付用穴192が形成されている。
【0029】
図3および
図4に戻り、電極154は、ヘッド194と、電極軸196と、集電板198とを備えている。ヘッド194は、例えばタングステン製の略柱状部材であり、実施形態1の放電灯100では、上述のように、陽極マウント150のヘッド194が陰極マウント120のヘッド194よりも大きく形成されている。また、ヘッド194には、電極軸196の先端部が挿設される電極軸挿設穴199が形成されている。
【0030】
電極軸196は、例えばタングステン製の棒状部材であり、一端がガラス部材152の電極取付用穴188(
図5)に挿設されるようになっており、他端がヘッド194に形成された電極軸挿設穴199に挿設されるようになっている。電極軸196は、接着・溶着・ロウ付けその他の手段により、ヘッド194に対して電気的に接続されている。
【0031】
集電板198は、例えばモリブデン製の円板状部材であり、その外径は、ガラス部材152における先端面174からはみ出ない程度の寸法に設定されている。また、集電板198の中央部には、電極軸196が挿通される電極軸貫通孔201が形成されており、当該電極軸貫通孔201に電極軸196が挿通された状態で、集電板198は、接着・溶着・ロウ付けその他の手段により、電極軸196に対して電気的に接続されている。
【0032】
実施形態1では、上述のようにヘッド194と、電極軸196と、集電板198とを互いに組み合わせることで電極154を形成しているが、もちろん、これらを一体的に形成して電極154としてもよい。また、ヘッド194や集電板198は本発明に必須の構成ではないことから、これらを省略して電極154を構成してもよい。
【0033】
金属箔156は、モリブデン製の略短冊状薄板部材であり、その一端が電極154の一端部(実施形態1では、電極154における電極軸196の一端部に取り付けられた集電板198)に対して電気的に接続されており、また、ガラス部材152の先端面174からガラス部材側面176に沿って取り付けられる。さらに、金属箔156の他端は、外部リード160(実施形態1では、外部リード160における外部リード軸206に取り付けられた外部リード集電板208)に対して電気的に接続される。
【0034】
図7および
図8に示すように、金属箔156は、ガラス部材152における先端面174と、ガラス部材152の側面であるガラス部材側面176との境界に形成された先端エッジ178における直線部180の数(実施形態1では5つ)と同じ数だけ用意されており、当該直線部180で折れ曲がることによって先端面174からガラス部材側面176(より正確には、先端部側面181)に沿うようになっている。さらに、金属箔156は、ガラス部材側面176における先端部側面181から本体部側面184からにかけて、中間エッジ186で少し折れ曲がるようにしてガラス部材側面176に沿って取り付けられている。
【0035】
また、金属箔156における中間エッジ186に接する部分から電極154に接続される一端までは、金属箔156の一端に向かうにつれて両側辺が金属箔156の長手方向中心に近づくことによって当該金属箔156の幅方向寸法が漸減するテーパ状に形成されている
【0036】
図3および
図4に戻り、補助ガラス部材158は、電極154におけるヘッド194と、ガラス部材152との間に配設される石英ガラス製の略円筒状部材である。
【0037】
また、補助ガラス部材158は、円柱状の補助ガラス本体部202と、当該補助ガラス本体部202におけるガラス部材152に向かう端からガラス部材152に向けて断面の径を漸減させつつ延びる補助ガラス後端部204とを有している。
【0038】
さらに、補助ガラス部材158には、軸方向中央部に電極154の電極軸196が挿通される電極軸挿通孔200が形成されており、電極軸挿通孔200の径は、ヘッド194に向かう先端部で急に大きくなるように形成されており、電極軸挿通孔200の径が急に大きくなった部分が凹所205となっている。
【0039】
外部リード160は、外部リード軸206と、外部リード集電板208とを備えている。外部リード軸206は、例えばモリブデン製の棒状部材であり、一端がガラス部材152の外部リード取付用穴192(
図5)に挿設されるようになっており、他端が発光管110の封止部114から外部に突設されるようになっている。
【0040】
外部リード集電板208は、例えばモリブデン製の円板状部材であり、その外径は、ガラス部材152における後端面190からはみ出ない程度の寸法に設定されている。また、外部リード集電板208は、その中央部に外部リード軸206を嵌挿するための外部リード嵌挿孔210を有している。
【0041】
外部リード集電板208の外部リード嵌挿孔210に外部リード軸206を嵌挿したうえで、外部リード集電板208が接着・溶着・ロウ付けその他の手段により、外部リード軸206に対して電気的に接続されている。
【0042】
実施形態1では、上述のように外部リード軸206と外部リード集電板208とを互いに組み合わせることで外部リード160を形成しているが、もちろん、これらを一体的に形成して外部リード160としてもよい。また、外部リード集電板208は本発明に必須の構成ではないことから、これを省略して外部リード160を構成してもよい。
【0043】
キャップガラス部材161は、外部リード160(外部リード集電板208)の後端面212に接するように配設される石英ガラス製の略円筒状部材である。
【0044】
また、キャップガラス部材161には、軸方向中央部に外部リード160の外部リード軸206が挿通される外部リード挿通孔214が形成されている。
【0045】
コイル162は、例えばタンタル製の極細棒をコイル状に巻回することで形成されたものであり、電極154における電極軸196が挿通されて、電極154のヘッド194と補助ガラス部材158との間に配設される。
【0046】
このコイル162は、発光部112の内部空間116内に残存する不純物(例えば、水素や酸素)を吸収する「ゲッター」の役割を有している。なお、コイル162は本発明に必須の構成ではないことから、これを省略して放電灯100を構成してもよい。
【0047】
陰極として使用されるマウント120は、
図9に示すように、陽極として使用されるマウント150と基本的に同じ構造となっているが、上述したように、陰極として使用されるマウント120に比べて、陽極として使用されるマウント150の方が大きく形成されている点が異なる。また、マウント120には、コイル162が設けられていない。
【0048】
(実施形態1に係る放電灯100の製造手順)
次に、上述した実施形態1に係る放電灯100の製造手順について、簡単に説明する。先ず、両マウント120,150を組み立てる。
【0049】
具体的には、電極軸196を電極軸貫通孔201に挿通して集電板198を当該電極軸196に固定する。然る後、電極軸196の他端をガラス部材152の先端面174に形成された電極取付用穴188に挿入することにより、ガラス部材152に対して電極軸196および集電板198を取り付ける。
【0050】
また、外部リード軸206を外部リード嵌挿孔210に挿通して外部リード集電板208を当該外部リード軸206に固定する。然る後、外部リード軸206の一端をガラス部材152の後端面190に形成された外部リード取付用穴192に挿入することにより、ガラス部材152に対して外部リード軸206および外部リード集電板208を取り付ける。
【0051】
次に、ガラス部材152の先端面174からガラス部材側面176、そして後端面190に沿って、各金属箔156を貼り付けていく。このとき、各金属箔156の一端が電極154(より具体的には、集電板198)に対して電気的に接続し、他端が外部リード160(より具体的には、外部リード集電板208)に対して電気的に接続する。
【0052】
次に、電極軸196の先端を電極軸挿通孔200に挿通していくことによって補助ガラス部材158を電極軸196に取り付け、当該補助ガラス部材158によって金属箔156の一端と電極154(集電板198)とをガラス部材152の先端面174に押し付ける。然る後、コイル162に電極軸196を挿通することによってコイル162を電極軸196に取り付ける。さらに、電極軸挿設穴199に電極軸196の先端部を挿設固定して当該電極軸196にヘッド194を取り付ける。
【0053】
また、外部リード軸206の先端を外部リード挿通孔214に挿通していくことによってキャップガラス部材161を外部リード軸206に取り付け、当該キャップガラス部材161によって金属箔156の他端と外部リード160(外部リード集電板208)とをガラス部材152の後端面190に押し付ける。
【0054】
以上により、マウント150が完成する。なお、マウント120の組み立て手順も基本的にこれと同じであるから、マウント150の組み立て手順を援用して説明を省略する。
【0055】
マウント120,150を完成させた後、両マウント120,150を発光管110の封止部114に挿入する。このとき、両マウント120,150における両電極154が発光管110の発光部112の内部空間116で互いに対向するようにする。発光管110の内部空間116に必要な発光物質(例えば、水銀やアルゴン)を入れた後、発光管110の封止部114を熱することによって収縮させ、さらに、当該封止部114の内壁と、両マウント120,150におけるガラス部材152、補助ガラス部材158、および、キャップガラス部材161の表面とを互いに融着させることによって発光部112の内部空間116の封止を完了させる。これにより、放電灯100の組み立てが完了する。もちろん、発光部112の内部空間116の封止手順はこれに限定されることはなく、例えば、両方の封止部114を先に封止しておき、然る後、発光部112に接続させた排気管を介して内部空間116に発光物質等を入れてもよい。
【0056】
(実施形態1に係る放電灯100の特徴)
上述した実施形態1に係る放電灯100の封止構造によれば、
図10に示すように、金属箔156は、ガラス部材152における先端面174とガラス部材側面176の一部である先端部側面181における平面部182との境界に生じる先端エッジ178における直線部180で折れ曲がって先端面174および先端部側面181に沿っている。
【0057】
これにより、金属箔156の幅方向全体が先端エッジ178に接することができるので、当該金属箔156が先端エッジ178から不所望に浮いてしまうのを回避することができる。このため、石英ガラス製の発光管110における封止部114の内壁とガラス部材152の表面とを互いに融着させて発光管110の内部空間116を気密させる際に金属箔156と先端エッジ178との間に「空間」が生じてしまうのを回避できる。
【0058】
以上により、点灯時に発光管110が破裂する可能性を低減するとともに、未蒸発の発光物質(例えば、水銀)が溜まり、発光に寄与する発光物質の量が変化することによって不所望に発光特性が変わる可能性も低減することができる。
【0059】
また、先端部側面181と本体部側面184との間に生じる中間エッジ186においても同様の特徴があり、金属箔156がガラス部材側面176に取り付けられる面(先端部側面181における平面部182)は「平面」になっていることから、
図11に示すように、従来の封止構造のように先端部側面181に相当する面が「曲面」である場合と比べて、金属箔156の幅方向中心を通る仮想線ISとガラス部材152の中心軸とを含む平面による断面において平面部182と曲面状の本体部側面184とが成す角度(内角)は大きくなる。(実施形態1における内角θ1 > 従来技術における内角θ2)
【0060】
これにより、金属箔156の幅方向全体が中間エッジ186に接しやすくなるので、当該金属箔156が中間エッジ186から不所望に浮いてしまうのを回避しやすくなる。このため、石英ガラス製の発光管110における封止部114の内壁とガラス部材152の表面とを互いに融着させて発光管110の内部空間116を気密させる際に金属箔156と中間エッジ186との間に「空間」が生じてしまう可能性を低減できる。
【0061】
以上により、点灯時に発光管110が破裂する可能性を低減するとともに、未蒸発の発光物質(例えば、水銀)が溜まり、発光に寄与する発光物質の量が変化することによって不所望に放電灯の発光特性が変わる可能性をさらに低減することができる。
【0062】
(変形例1)
上述した実施形態1では、ガラス部材152は略円柱状に形成されていたが、これに変えて、ガラス部材152を角柱状に形成してもよい。この場合、ガラス部材側面176は、所定枚数の平面で構成されることになる。
【0063】
(変形例2)
上述した実施形態1では、陽極となるマウント150における電極154のヘッド194が陰極となるマウント120のヘッド194よりも大きい直流用の放電灯100について説明したが、両ヘッド194の大きさをほぼ同じにして交流用の放電灯100としてもよい。
【0064】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
100…放電灯
110…発光管、112…発光部、114…封止部、116…内部空間
120…マウント(陰極)
150…マウント(陽極)、152…ガラス部材、154…電極、156…金属箔、158…補助ガラス部材、160…外部リード、161…キャップガラス部材、162…コイル
170…(ガラス部材152の)本体部、172…(ガラス部材152の)先端部、174…(ガラス部材152の)先端面、176…ガラス部材側面、178…先端エッジ、180…直線部、181…先端部側面、182…平面部、184…本体部側面、186…中間エッジ、188…電極取付用穴、190…(ガラス部材152の)後端面、192…外部リード取付用穴、194…ヘッド、196…電極軸、198…集電板、199…電極軸挿設穴、200…電極軸挿通孔、201…電極軸貫通孔、202…補助ガラス本体部、204…補助ガラス後端部、205…(補助ガラス部材158の)凹所、206…外部リード軸、208…外部リード集電板、210…外部リード嵌挿孔、212…(外部リード160の)後端面、214…外部リード挿通孔