IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社水道技術開発機構の特許一覧

<>
  • 特許-筐体装置 図1
  • 特許-筐体装置 図2
  • 特許-筐体装置 図3
  • 特許-筐体装置 図4
  • 特許-筐体装置 図5
  • 特許-筐体装置 図6
  • 特許-筐体装置 図7
  • 特許-筐体装置 図8
  • 特許-筐体装置 図9
  • 特許-筐体装置 図10
  • 特許-筐体装置 図11
  • 特許-筐体装置 図12
  • 特許-筐体装置 図13
  • 特許-筐体装置 図14
  • 特許-筐体装置 図15
  • 特許-筐体装置 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】筐体装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 41/02 20060101AFI20220915BHJP
   F16L 41/16 20060101ALI20220915BHJP
   F16L 41/06 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
F16L41/02
F16L41/16
F16L41/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018191122
(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公開番号】P2020060234
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀川 剛
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-144817(JP,A)
【文献】特開2014-020474(JP,A)
【文献】国際公開第2010/050115(WO,A1)
【文献】特開2016-223564(JP,A)
【文献】特開2007-039942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 41/02
F16L 41/16
F16L 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1分割ケースと第2分割ケースとを含む複数の分割ケースで構成され、シール材を介して流体管の外周面を密封状態で取り囲む分岐ケース体と、
前記第1分割ケースと前記第2分割ケースとの間に端部を挟み込んで前記分岐ケース体に接続される接続管と、
前記分岐ケース体の内周面と前記流体管の外周面との間で管周方向に沿って回動し、前記流体管の管壁に設けられた開口と前記接続管とを連絡する分岐流路を開閉可能に構成された弁体と、を備え、
前記弁体は、一つの第1分割片と一対の第2分割片とを含む複数の分割片を接合することで環状に形成されており、
前記第1分割片は、管周方向に沿って円弧状に湾曲した板状部材で形成され、前記第2分割片は、管軸方向の長さが前記第1分割片よりも小さく且つ管周方向に沿って円弧状に湾曲したバンド状部材で形成されており、
一対の前記第2分割片のうち、一方は前記第1分割片の一端部に接合されて環状をなし、他方は前記第1分割片の他端部に接合されて環状をなす筐体装置。
【請求項2】
前記弁体にギヤが設けられており、
前記ギヤは、前記シール材で区画される密封空間の外側に配置されている請求項1に記載の筐体装置。
【請求項3】
前記弁体が、前記第1分割片の周方向端部と前記第2分割片の周方向端部とを互いに突き合わせた、または、前記第2分割片の周方向端部とそれとは別の前記第2分割片の周方向端部とを互いに突き合わせた接合部を有する請求項1または2に記載の筐体装置。
【請求項4】
前記接合部では、管周方向、管軸方向及び管径方向の三方向でメタルタッチしている請求項3に記載の筐体装置。
【請求項5】
前記第2分割片の周囲に環状のパッキンが装着されており、
前記第2分割片の内周面と前記流体管の外周面との間、及び、前記分岐ケース体の内周面と前記第2分割片の外周面との間が、前記パッキンによって密封可能に構成されている請求項1~4いずれか1項に記載の筐体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管に装着される筐体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道管などの流体管の管壁を不断流状態で穿孔し、それにより設けられた開口を介して分岐流路を形成する工法が知られている。かかる工法では、既設の流体管の外周面を密封状態で取り囲む分岐ケース体と、分岐流路を開閉する弁装置とが用いられる。特許文献1には、弁装置としての仕切弁を備えた分岐管接続装置が記載されている。この仕切弁は、分岐ケース体に接続される本体(弁箱)の内部に弁体を有し、その弁体の昇降動作に応じて分岐流路を開閉可能に構成されている。
【0003】
特許文献2では、分岐ケース体の内周面と流体管の外周面との間に弁体を配置し、その弁体を管周方向に回動させることで分岐流路を開閉する装置が提案されている。これによれば、分岐ケース体に接続される本体(弁箱)が省略されるため、流体管の穿孔に使用する穿孔機の小型化が可能となる。しかし、円弧状の弁体を回動させる構造であるため強度的に不安が残り、分岐流路の開閉操作時のガタツキや位置ずれによる遮断性能の低下が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-309474号公報
【文献】特開2014-20474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、分岐ケース体の内周面と流体管の外周面との間に配置される弁体の強度を高めて遮断性能を良好に発揮できるようにした筐体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る筐体装置は、第1分割ケースと第2分割ケースとを含む複数の分割ケースで構成され、シール材を介して流体管の外周面を密封状態で取り囲む分岐ケース体と、前記第1分割ケースと前記第2分割ケースとの間に端部を挟み込んで前記分岐ケース体に接続される接続管と、前記分岐ケース体の内周面と前記流体管の外周面との間で管周方向に沿って回動し、前記流体管の管壁に設けられた開口と前記接続管とを連絡する分岐流路を開閉可能に構成された弁体と、を備え、前記弁体は、一つの第1分割片と一対の第2分割片とを含む複数の分割片を接合することで環状に形成されており、前記第1分割片は、管周方向に沿って円弧状に湾曲した板状部材で形成され、前記第2分割片は、管軸方向の長さが前記第1分割片よりも小さく且つ管周方向に沿って円弧状に湾曲したバンド状部材で形成されており、一対の前記第2分割片のうち、一方は前記第1分割片の一端部に接合されて環状をなし、他方は前記第1分割片の他端部に接合されて環状をなす
【0007】
上記のように、この筐体装置は、分岐ケース体の内周面と流体管の外周面との間に配置された弁体を備える。弁体は、第1分割片と第2分割片とを含む複数の分割片を接合することで環状に形成されるため、円弧状に形成された従来の弁体と比べて、強度が高められたものとなる。その結果、分岐流路を閉めたときの弁体のガタツキや位置ずれが抑えられ、遮断性能を良好に発揮できる。また、この筐体装置では、分岐ケース体を構成する第1分割ケースと第2分割ケースとの間に接続管の端部が挟み込まれるため、地震などによる外力が接続管に作用したときに、第1分割ケースと第2分割ケースとの間が開きにくいという利点を有する。
【0008】
前記弁体にギヤが設けられており、前記ギヤは、前記シール材で区画される密封空間の外側に配置されていることが好ましい。これにより、流体管の開口から流出した流体がギヤに接触しないため、防食面や維持管理面で有利となる。また、ギヤに塗布された潤滑剤が流体に混入する心配が少ない。
【0009】
前記弁体が、前記第1分割片の周方向端部と前記第2分割片の周方向端部とを互いに突き合わせた、または、前記第2分割片の周方向端部とそれとは別の前記第2分割片の周方向端部とを互いに突き合わせた接合部を有することが好ましい。かかる構成によれば、弁体を環状に組み立てやすい。前記接合部では、管周方向、管軸方向及び管径方向の三方向でメタルタッチしていることが好ましい。これにより、接合部におけるガタツキや位置ずれを防いで、弁体の強度を効果的に高めることができる。
【0010】
前記第2分割片の周囲に環状のパッキンが装着されており、前記第2分割片の内周面と前記流体管の外周面との間、及び、前記分岐ケース体の内周面と前記第2分割片の外周面との間が、前記パッキンによって密封可能に構成されていることが好ましい。これにより、弁体の回動に伴うパッキンの位置ずれを防止できるため、遮断性能をより良好に発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る筐体装置の一例を示す斜視図
図2】筐体装置から第2分割ケースを取り外した状態を示す斜視図
図3】筐体装置を管軸方向から見た側面図
図4】筐体装置の縦断面図
図5】筐体装置の縦断面図
図6】弁体とシール材とを抽出した斜視図
図7】筐体装置から第2分割ケースを取り外した状態を示す斜視図
図8】弁体の斜視図
図9】第1分割片を示す四面図
図10】第2分割片を示す四面図
図11】弁体に装着されるパッキンの(A)三面図と(B)C-C断面図
図12】弁体が有する接合部の拡大図
図13】第1及び第2分割片の周方向端部を示す図
図14】(A)全閉時及び(B)全開時における筐体装置の縦断面図
図15】別実施形態に係る弁体を示す斜視図
図16図15のD-D断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、既設の水道管K(流体管の一例)に装着された筐体装置9を示す。図2は、その筐体装置9から第2分割ケース12を取り外した状態を示す。図3は、その筐体装置9を管軸方向から見た側面図である。本明細書における「管周方向」、「管軸方向」及び「管径方向」は、特筆しない限り、それぞれ水道管Kにおける周方向、軸方向及び径方向を指す。図示の都合上、水道管Kの両側を断面で示しているが、実際には水道管Kが管軸方向に沿って延在しており、その内部を流体である水が流れている。水道管Kはダクタイル鋳鉄で形成されている。
【0014】
図1~3に示すように、筐体装置9は、分岐ケース体1と、接続管2と、弁体3とを備える。分岐ケース体1は、第1分割ケース11と第2分割ケース12とを含む複数の分割ケースで構成され、シール材4(図6参照)を介して水道管Kの外周面を密封状態で取り囲む。本実施形態では、分岐ケース体1が、水道管Kの下側に配置される第1分割ケース11と、水道管Kの上側に配置される第2分割ケース12とで構成され、それらが環状に接合されて水道管Kの一部を包囲している。分岐ケース体1は、例えばダクタイル鋳鉄によって形成される。
【0015】
分岐ケース体1は、上下二つ割り構造の割T字管で形成されており、管周方向の二箇所に分割部10,10を有する。各分割部10では、フランジ状に形成された一対の接合面13,13が互いに対向している。一対の接合面13,13は、それぞれ第1及び第2分割ケース11,12の周方向端部に設けられている。各分割部10には、ボルトとナットで構成された締結具14が装着されている。各接合面13には、締結具14のボルトを挿通するためのボルト孔が設けられている。締結具14で分割部10を締め付けることにより、第1分割ケース11と第2分割ケース12とが互いに接合される。
【0016】
接続管2は、第1分割ケース11と第2分割ケース12との間に端部2aを挟み込んで分岐ケース体1に接続されている。分岐ケース体1から露出した接続管2の端部2bには、図示しない蓋体または分岐管が接続される。端部2bは、フランジを有する受口として形成されているが、これに限定されない。水道管Kの管壁には開口20が設けられており(図5参照)、その開口20と接続管2とを連絡する分岐流路が、水道管Kの管軸方向に沿った本流路から分岐して形成されている。開口20は、ホールソーなどの穿孔機を用いて、水道管Kの管壁を不断水状態で穿孔することにより設けられる。
【0017】
図4は、水道管Kの管軸を含む平面で切断した筐体装置9の縦断面図であり、図1のA-A矢視断面図に相当する。図5は、接続管2の管軸を含む平面で切断した筐体装置9の縦断面図であり、図1のB-B矢視断面図に相当する。図4,5では、いずれも後述する第1分割片31を上方に向けて弁体3が配置されている。図6は、弁体3とシール材4とを抽出して示す斜視図であり、弁体3は簡略的に描いている。分岐ケース体1の内部では密封空間がシール材4によって区画されているため、開口20から流出した水が外部に漏洩しない。
【0018】
図4~6に示すように、シール材4は、複数のパッキンで構成されており、本実施形態では八つのパッキン41~48で構成されている。パッキン41,42は、それぞれ第1分割ケース11に装着される。パッキン43,44は、それぞれ第2分割ケース12に装着される。接続管2の端部2aが挟み込まれる分割部10の隙間はパッキン41及びパッキン43によって密封され、もう一方の分割部10の隙間はパッキン42及びパッキン44によって密封される。パッキン41~44の両端部のうち、一方はパッキン45とパッキン46とがなす環状体に当接し、他方はパッキン47とパッキン48とがなす環状体に当接する。
【0019】
パッキン45,46は、それぞれ円弧状に形成されており、それらが管周方向に連なって環状に延びている。管軸方向における弁体3の一端部の内周面と水道管Kの外周面との隙間、及び、分岐ケース体1の内周面と弁体3の一端部の外周面との隙間は、パッキン45及びパッキン46によって密封される。パッキン47,48は、それぞれ円弧状に形成されており、それらが管周方向に連なって環状に延びている。管軸方向における弁体3の他端部の内周面と水道管Kの外周面との隙間、及び、分岐ケース体1の内周面と弁体3の他端部の外周面との隙間は、パッキン47及びパッキン48によって密封される。
【0020】
弁体3は、分岐ケース体1の内周面と水道管Kの外周面との間で管周方向に沿って回動し、開口20と接続管2とを連絡する分岐流路を開閉可能に構成されている。図2では、接続管2の端部2aが弁体3で閉鎖され、分岐流路が閉じられている。この弁体3を図7のように回動させて端部2aを開放すると、分岐流路が開かれる。図8に示すように、弁体3は、第1分割片31と第2分割片32とを含む複数の分割片を接合することで環状に形成されている。第1分割片31は、管周方向に沿って円弧状に湾曲した板状部材で形成され、第2分割片32は、管軸方向の長さが第1分割片31よりも小さく且つ管周方向に沿って円弧状に湾曲したバンド状部材で形成されている。
【0021】
図9は、第1分割片31を示す四面図であり、図10は、第2分割片32を示す四面図である。図8~10のように、本実施形態の弁体3は、一つの第1分割片31と、一対の第2分割片32,32とで構成されている。一対の第2分割片32,32のうち、一方は第1分割片31の一端部に接合されて環状をなし、他方は第1分割片31の他端部に接合されて環状をなす。弁体3は、一対の分割部30,30を有する周方向二つ割り構造の環状体で形成されている。このように環状に形成された弁体3は、円弧状に形成された弁体と比べて強度が高く、分岐流路の開閉操作時のガタツキや位置ずれを抑えることができ、止水性能(遮断性能)を良好に発揮できる。
【0022】
また、この筐体装置9では、既述のように、分岐ケース体1が上下二つ割り構造であり、その分割部10に接続管2の端部2aが挟み込まれる。かかる構成によれば、締結具14のボルトが鉛直に向けられるため、地震などによる外力が接続管2に作用しても、分割部10の隙間(第1分割ケース11と第2分割ケース12との間)が開きにくい。これに対し、分岐ケース体が左右二つ割り構造であって、締結具のボルトが水平に向けられている場合は、地震などによる外力が接続管に作用したときにボルトが伸長してしまい、分割部の隙間が開きやすい。
【0023】
第1及び第2分割片31,32は、ダクタイル鋳鉄で形成されているが、鋼や樹脂など他の材料で形成してもよい。第1分割片31は、開口20を閉鎖できるよう、管周方向及び管軸方向において開口20よりも大きく形成されている。第1分割片31の外周面にはシール材33が貼り付けられている。シール材33は、分岐流路を閉じる際に接続管2の端面に当接する。シール材33は、環状に形成されているが、これに限られない。弁体3の外周面に代えて、接続管2の端面にシール材33を貼り付けておくことも可能である。第1分割片31は、その四隅から管周方向に突出した四本の連接部31pを有し、その各々に第2分割片32の周方向端部が連接される。
【0024】
図11は、第2分割片32に装着されるパッキン46の(A)三面図と(B)C-C断面図である。パッキン46は、円弧状に延びた中空部46eを有するとともに、それ自体が管周方向に沿って円弧状に湾曲している。中空部46eはパッキン46を管軸方向に貫通しており、パッキン46は環状に形成されている。この環状のパッキン46が第2分割片32の周囲に装着され(図8参照)、第2分割片32の内周面と水道管Kの外周面との間、及び、分岐ケース体1の内周面と第2分割片32の外周面との間が、それぞれパッキン46によって密封される。第2分割片32には、パッキン46を装着するためのパッキン溝32gが管周方向に沿って設けられている。
【0025】
パッキン45,47,48も、パッキン46と同様に環状に形成されている。パッキン45,47は、それぞれ第1分割片31の端部の周囲に装着され、第1分割片31の両端部の内周面と水道管Kの外周面との間、及び、分岐ケース体1の内周面と第1分割片31の両端部の外周面との間は、それぞれパッキン45,47によって密封される。第1分割片31には、パッキン45,47を装着するためのパッキン溝31gが管周方向に沿って設けられている。パッキン48は、パッキン46と同様にして第2分割片32に装着される。かかる装着構造によれば、弁体3と一緒に回動するパッキン46~48の位置ずれを適切に防止できる。
【0026】
パッキン溝31gからパッキン45が部分的にでもはみ出ていると、弁体3を回動させる際に、そのはみ出た部分が、弁体3の内周面と水道管Kの外周面との間、または分岐ケース体1の内周面と弁体3の外周面との間で挟み込まれ、それによって弁体3の回動における抵抗が大きくなる場合がある。そのため、パッキン溝31gの溝幅を通常よりも大きく設定し、パッキン45のはみ出しを抑制することが望ましい。例えば、溝底から開口に向かって溝幅が次第に拡がる形状のパッキン溝31gでは、その開口において、非圧縮状態のパッキン45の側面とパッキン溝31gの溝壁との間に1.5mm以上の隙間が設けられるように設定することが考えられる。パッキン46~48についても、これと同様である。
【0027】
弁体3は、第1分割片31の周方向端部(連接部31pの端部)と第2分割片32の周方向端部とを互いに突き合わせた接合部34を有する。図12,13に拡大して示すように、接合部34には、ボルト35bとナット35nとを備えた接合具35が取り付けられている。本実施形態では、接合部34の各々において、一対の接合具35が管軸方向に間隔を設けて配置されている。これにより、接合具35による締め付けが安定し、第1分割片31に対する第2分割片32の捻じれを防止できる。また、接合部35を締め付けることで、パッキン45,46(及びパッキン47,48)の周方向端部が互いに密着する。
【0028】
第1分割片31及び第2分割片32には、それぞれボルト35bが挿通されるボルト孔31h,32hが形成されている。そのうちボルト35bの頭部に近い方のボルト孔、即ち本実施形態における第2分割片32のボルト孔32hは、楕円状に設けられている。ボルト35bの基端部も楕円状に設けられており、これが楕円状のボルト孔32hに嵌入されている。これによって、第2分割片32に対するボルト35bの回転を防止する回り止め構造が構成されるため、ナット35nを締め付ける際にボルト35bの頭部を固定する必要がなく、施工性が向上する。
【0029】
図12,13に示すように、第1分割片31の周方向端部(連接部31pの端部)と第2分割片32の周方向端部とは互いに嵌まり合う凹凸形状を有し、接合部34では、管周方向、管軸方向及び管径方向の三方向でメタルタッチしている。これにより、接合部34における各方向でのガタツキや位置ずれを防いで、弁体3の強度を効果的に高めることができる。また、接合部34では、パッキン45とパッキン46とが管周方向に連なるように互いに突き合わされている。パッキン45,46の周方向端部は、それぞれ平坦に形成されているため、互いに密着させやすい。パッキン47,48についても、これらと同様である。
【0030】
図2,7及び8に示すように、弁体3にはギヤ36が設けられている。ギヤ36は、管周方向に沿って円弧状に形成されている。ギヤ36は、後述するギヤ50とともに、弁体3を回動させる回動機構を構成する。ギヤ36の端部には、ギヤ50が噛み合わないストッパ部36sが形成されている。ギヤ36は、第1及び第2分割片31,32とは別個の部材として構成され、ネジ37によって固定されている。本実施形態では、ギヤ36が第1分割片31に固定されているが、第2分割片32に固定してもよい。ギヤ36は、例えばダクタイル鋳鉄によって形成されるが、これに限られない。
【0031】
弁体3の回動操作は、分岐ケース体1に設けられる操作部5によって行われる。図2,7のように、操作部5は、弁体3に設けられたギヤ36に噛み合うギヤ50を備える。ギヤ50は、水平方向(より具体的には、水道管Kの管軸方向)に向けられた回転軸50aを有する平歯車で構成されている。分岐ケース体1には、ギヤ50を覆うカバー51が着脱自在に設けられている(図1参照)。このカバー51から露出した回転軸50aを操作することで、弁体3を回動させることができる。上方に向けられた操作軸を有するギヤボックスをカバー51の側方に取り付け、その操作軸を介して回転軸50aを操作することも可能である。
【0032】
図14は、操作部5を通る平面で切断した筐体装置9の縦断面である。分岐ケース体1(の第2分割ケース12)には貫通孔15が設けられており、その貫通孔15を介して分岐ケース体1の内部に侵入したギヤ50の一部がギヤ36に噛み合っている。ギヤ36は、シール材4で区画される密封空間の外側に配置されており、分岐流路を開いた状態でも水に触れないため、操作部5の防食面や維持管理面において有利である。また、貫通孔15の水密性を確保する必要がなく、カバー51を簡易な構造にできる。更に、グリスなどの潤滑剤をギヤ36に塗布している場合でも、水質に影響を及ぼさない。
【0033】
図14(A)は、分岐流路を完全に閉じた全閉時の状態を示し、図2に対応する。この状態では、第1分割片31が開口20に対向し、接続管2の端面にシール材33が当接する。分岐ケース体1の内周面には、ストッパ部36sに当接する位置決め突起16が設けられている。分岐流路を閉じる際には、この位置決め突起16にストッパ部36sが当接するまで、図14の時計回り方向に弁体3を回動させればよい。図14(B)は、分岐流路を完全に開いた全開時の状態を示し、図7に対応する。この状態では、第1分割片31が開口20から遠ざかり、接続管2の端面が開放される。分岐流路を開く際には、ギヤ50がストッパ部36sに係止して回らなくなるまで、図14の反時計回り方向に弁体3を回動させればよい。
【0034】
図4のように、分岐ケース体1には、管軸方向における弁体3の端面に対向して弁体3の回動をガイドするガイド面17が管周方向に沿って設けられている。これにより、弁体3の回動がガイド面17によって管軸方向からガイドされる。分岐ケース体1の軸方向端部は内鍔状に設けられ、その内壁面がガイド面17として形成されている。ガイド面17は、シール材4で区画される密封空間の外側に配置されている。弁体3の一端部では、ギヤ36と突部38とがガイド面17でガイドされ、弁体3の他端部では、一対の突部38,38がガイド面17でガイドされる。突部38は、第1及び第2分割片31,32の側面から管軸方向に突出して設けられている。
【0035】
図4,8に示すように、弁体3の端面であるギヤ36の側面及び突部38の側面には、それぞれ丸みを帯びた形状の隆起部39が設けられている。これにより、弁体3の端面とそれに対向するガイド面17との間隔が確保され、弁体3が管軸方向に偏った状態にならない。その結果、分岐ケース体1の内部で弁体3が引っ掛かることを防いで、弁体3を円滑に回動させることができる。かかる隆起部39をガイド面17に設けることも可能であるが、ギヤ36や突部38を起点とした引っ掛かりを防ぐ観点から、弁体3の端面に隆起部39を設けることが好ましい。
【0036】
本実施形態では、隆起部39が半球状に形成されているため、ガイド面17との接触面が略点状になり、ガイド面17に対して滑り接触しやすく、それ故に弁体3の円滑な回動を妨げない。ギヤ36に設けられた隆起部39は、ネジ37の頭部で形成されているが、これに限られず、弁体3の端面であるギヤ36の側面を局部的に隆起させて形成されたものでもよい。突部38に設けられた隆起部39は、鋳出しによって設けられ、弁体3の端面である突部38の側面を局部的に隆起させて形成されているが、これに限られず、弁体3に取り付けたネジの頭部で形成されたものでもよい。隆起部39を構成するネジには、なべ小ねじが好ましく用いられる。
【0037】
既述のように、弁体3は、一対の分割部30,30を有する周方向二つ割り構造の環状体で形成されている。隆起部39は、その一対の分割部30,30の中間部となる二箇所を含む管周方向の複数箇所に配置されている。これにより、管周方向の複数箇所でバランス良く弁体3の引っ掛かりを防ぐことができる。本実施形態では、ギヤ36の側面に多数の(具体的には十二個の)隆起部39が設けられ、各突部38の側面には隆起部39が一つずつ設けられている。
【0038】
本実施形態では、図3のように、水道管Kの外周面に当接する回転止め突起18を分岐ケース体1に設けて、水道管Kに対する分岐ケース体1の相対回転を阻止している。これにより、操作部5を操作した際に分岐ケース体1が回転することを防いで、確実に弁体3を回動させることができる。回転止め突起18は、管周方向の複数箇所(本実施形態では略等間隔で六箇所)に設けられている。回転止め突起18は、内鍔状に設けられた分岐ケース体1の軸方向端部を局部的に管径方向内側に突出させて形成されている。回転止め突起18は、略台形状に形成されているが、これに限られず、例えばV字状に先細りしたウェッジ形状にして回転止め作用を高めてもよい。
【0039】
分岐ケース体1の分割部10では、一対の接合面13,13がメタルタッチしている。このため、水圧による分岐ケース体1の変形(特に上方への膨らみ)が抑えられる。図3のように、一対の接合面13,13は、管周方向に突出したボス13bを介してメタルタッチするので、締結具14を締め付けた状態でも分割部10には隙間が設けられる。かかる構成によれば、締結具14の過度の締め付けを防いで、分割部10の隙間を常に一定にできるため、分岐ケース体1の内周面と弁体3の外周面との間隔が安定し、弁体3を円滑に回動できる。また、水道管Kの外周面に回転止め突起18が当接した後で、ボス13bのみの無駄な締め付けを抑制することができる。
【0040】
不断水工法によって水道管Kを穿孔する工事について、簡単に説明する。まず、既設の水道管Kの一部を取り囲むようにして第1分割片31と第2分割片32とを環状に連ねて、水道管Kに弁体3を取り付ける。次に、その弁体3を覆うようにして分岐ケース体1を外嵌する。その際、分岐ケース体1の分割部10を締結具14で締め付け、接続管2の端部2aを挟み込むとともに、一対の接合面13,13をメタルタッチさせる。その後、分岐ケース体1の貫通孔15にギヤ50やカバー51などを取り付け、操作部5を設置する。
【0041】
続いて、ホールソーを備えた穿孔機(図示せず)を接続管2に接続する。そして、接続管2を介してホールソーを分岐ケース体1の内部に挿入し、水道管Kの管壁を不断水状態で穿孔して開口20を設ける。ホールソーと干渉しないように、弁体3の第1分割片31を接続管2の端部2aから遠ざけておく(図7参照)ことは、言うまでもない。穿孔が完了したら、切片とともにホールソーを引き戻し、操作部5により弁体3を回動させて接続管2の端部2aを閉鎖する。その後、接続管2からホールソーを備えた穿孔機を撤去し、必要に応じて蓋体や分岐管を接続管2に接続する。
【0042】
上記のような工事により、開口20と接続管2とを連絡する分岐流路が形成される。分岐流路は、弁体3の回動操作に応じて通水状態と止水状態とに切り替えられる。このように、弁体3は、不断水分岐工法における従来の仕切弁の代わりに使用できる。分岐流路を利用して本流路を止水する場合は、接続管2からホールソーを撤去した後に挿入機(図示せず)を接続し、開口20を通じて水道管Kの内部にバルブ(プラグ)を挿入する。止水後に弁体3を撤去し、それを他の工事で再使用することも可能である。このように、弁体3は、不断水インサート工法における従来の作業弁の代わりに使用できる。
【0043】
前述の実施形態では、弁体3と接続管2の端部2aとの間をシール材33で密封する例を示したが、これに限定されず、例えば、弁体3と水道管Kの開口20との間を密封する構造でもよい。その場合、第1分割片31の内周面にシール材を貼り付けておき、そのシール材によって第1分割片31の内周面と水道管Kの外周面との間を密封することが考えられる。かかる構成によれば、分岐流路を閉じた状態では弁体3の周囲に水が行き渡らないため、漏水の懸念が軽減される。
【0044】
前述の実施形態では、ギヤ36が、第1及び第2分割片31,32とは別個の部材として構成されている例を示したが、これに限定されず、弁体を構成する第1分割片または第2分割片と一体的に(即ち、同一の部材として)構成されていてもよい。また、前述の実施形態では、弁体3の回動機構がギヤ36を利用したものであったが、かかる構成に限られず、弁体にギヤが設けられていなくてもよい。
【0045】
前述の実施形態では、弁体3が、一つの第1分割片31と、一対の第2分割片32,32とで構成された例を示したが、これに限られない。例えば、図15,16に示す弁体6のように、一つの第1分割片61と四つの第2分割片62とで構成されたものでもよい。第1分割片61の両端部には、それぞれ環状に連ねた一対の第2分割片62,62がボルト63を介して接続されており、そのうち一つの第2分割片62にギヤ66が設けられている。弁体6は、第2分割片62の周方向端部とそれとは別の第2分割片62の周方向端部とを互いに突き合わせた接合部64を有する。
【0046】
前述の実施形態では、ダクタイル鋳鉄管としての水道管Kに筐体装置を装着する例を示したが、これに限られず、鋼管や塩ビ管など他の材料で形成された流体管を対象にすることもできる。
【0047】
本発明に係る筐体装置は、水道管に適用できるものであるが、これに限られず、水以外の各種の液体、気体などの流体に用いる流体管に幅広く適用できる。
【0048】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 分岐ケース体
2 接続管
3 弁体
4 シール材
5 操作部
9 筐体装置
10 分割部
11 第1分割ケース
12 第2分割ケース
20 開口
31 第1分割片
32 第2分割片
34 接合部
36 ギヤ
46 パッキン
K 水道管(流体管の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16