(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】カスタマイズされた装置を設計および作製するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20220915BHJP
A61B 34/10 20160101ALI20220915BHJP
G06T 17/30 20060101ALI20220915BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20220915BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
G06F30/10 100
A61B34/10
G06T17/30
A61B5/107
A61B5/00 Z
(21)【出願番号】P 2018557165
(86)(22)【出願日】2017-01-25
(86)【国際出願番号】 AU2017050056
(87)【国際公開番号】W WO2017127887
(87)【国際公開日】2017-08-03
【審査請求日】2020-01-22
(32)【優先日】2016-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】518263520
【氏名又は名称】3ディーモルヒック ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】パール,ウィリアム シー.エイチ.
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-518519(JP,A)
【文献】特開2010-211680(JP,A)
【文献】特開2007-313852(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0282473(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0094951(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0230566(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/28
A61B 5/00
A61B 5/107
A61B 34/00 -34/10
G06T 17/00 -17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般的な装置
のデジタルモデルを
修正するための方法であって
、前記方法は、
一般的なベース部分の第1のデジタルファイルをインポートする工程と、
ターゲット形状の第2のデジタル
ファイルをインポートする工程と、
前記ターゲット形状に基づいて前記第1のデジタル
ファイルを修正して
カスタマイズされた装置のデジタルモデルを生成する工程であって、前記修正は、
前記一般的なベース部分と前記ターゲット形状との間の射影に基づいてワーピング補間関数を決定することであって、
前記射影は、前記一般的なベース部分に関連づけられたソース点集合の相対位置、および前記ターゲット形状に関連づけられた同じ点の相対位置を決定し、前記一般的なベース部分に関連づけられたソース点集合は、対応するソース点位置を有し、前記ターゲット形状に関連づけられた同じ点は、対応するターゲット点位置を有すること、および
前記ワーピング補間関数を前記一般的なベース
部分の全ての
点に適用して前記
カスタマイズされた装置
のデジタルモデルを生成することであって、前記
カスタマイズされた装置
のデジタルモデルは、前記ターゲット形状に適合するように構成されていること
を含む工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記一般的なベース部分の第1のデジタルファイルは、予め定められたソース点位置のセットに関連づけられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記ターゲット形状に基づいて、前記一般的なベース部分に関連づけられたソース点位置を計算する工程をさらに含み、
前記射影は、前記ターゲット形状から前記一般的なベース部分に前記ターゲット点位置を射影して前記ソース点位置を計算することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記射影は、
前記一般的なベース部分から前記ターゲット形状に前記ソース点位置を射影して前記ターゲット点位置を計算すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記
カスタマイズされた装置
のデジタルモデルをコンピュータ支援製造(CAM)装置にエクスポートするさらなる工程であって、前記CAM装置は、エクスポー
トされ
たモデルに基づいて前記
カスタマイズされた装置を製造するように構成されており、前記CAM装置は、3D印刷のための付加製造装置、コンピュータ数値制御(CNC)マシンフライス加工装置、CNC旋盤、CNCルータ、CNC鋸、液圧プレス、およびCNC曲げ加工機からなる群から選択される工程
を含む、請求項1
乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ワーピング関数は、さらに入力パラメータのセットに基づいており、前記入力パラメータのセットは、前記
カスタマイズされた装置が適合しなければならない1つ以上の寸法、倍率、および空間の点または次元のうちの少なくとも1つを含む、請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ターゲット形状は、
(i)体の一部の理想的な骨モデル、
(ii)体の一部のサーフェススキャン、および
(iii)1つ以上のパラメータのセットであって、前記1つ以上のパラメータのセットは、長さ寸法、および倍率のうちの少なくとも1つを含む、パラメータのセット
から選択される、請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記一般的なベース
部分は、副木、プレート、ロッド、カップ、補綴物、ブレース、埋め込み物、矯正器具、ヘルメット、およびケージからなる群から選択される、請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記
カスタマイズされた装置は、ブレース、副木、切断ガイド、冶具、補綴物、カラー、ヘルメット、外科用プレート、ロッド、カップ、および椎体間スペーサからなる群から選択される、請求項1乃至
8いずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のデジタルファイルは三角形分割頂点境界表現であり、前記修正は、前記ワーピング補間関数を前記一般的なベース部分の全ての頂点に適用する、請求項1乃至9いずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
一般的な医療装置
を修正して患者用のカスタマイズされた
医療装置を製造するためのシステムであって
、前記システムは、
コンピュータ支援製造(CAM)装置と、
プロセッサと、
前記プロセッサ上での実行のためのコンピュータプログラムを格納するためのメモリであって、前記コンピュータプログラムは、
一般的なベース部分の第1のデジタルファイルをインポートすることと、
ターゲット形状の第2のデジタル
ファイルをインポートすることと、
前記ターゲット形状に基づいて前記第1のデジタル
ファイルを修正して
カスタマイズされた装置のデジタルモデルを生成することであって、前記修正は、
前記一般的なベース部分と前記ターゲット形状との間の射影に基づいてワーピング補間関数を決定することであって、
前記射影は、前記一般的なベース部分に関連づけられたソース点集合の相対位置、および前記ターゲット形状に関連づけられた同じ点の相対位置を決定し、前記一般的なベース部分に関連づけられたソース点集合は、対応するソース点位置を有し、前記ターゲット形状に関連づけられた同じ点は、対応するターゲット点位置を有すること
、
前記ワーピング補間関数を前記一般的なベース
部分の全ての点に適用して前記
カスタマイズされた装置
のデジタルモデルを生成することであって、前記
カスタマイズされた装置
のデジタルモデルは、前記ターゲット形状に適合するように構成されていること
、および
前記医療装置のカスタマイズされたデジタルモデルを前記コンピュータ支援製造(CAM)装置にエクスポートするためのさらなる命令であって、前記CAM装置は、エクスポートされカスタマイズされたデジタルモデルに基づいて前記医療装置を製造するように構成されており、前記CAM装置は、3D印刷のための付加製造装置、コンピュータ数値制御(CNC)マシンフライス加工装置、CNC旋盤、CNCルータ、CNC鋸、液圧プレス、およびCNC曲げ加工機からなる群から選択されること
のための命令を含む、メモリと、
を備える、システム。
【請求項12】
前記第1のデジタルファイルは三角形分割頂点境界表現であり、前記修正は、前記ワーピング補間関数を前記一般的なベース部分の全ての頂点に適用する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記一般的なベース
部分の第1のデジタル
ファイルは、前記一般的なベース
部分のための設計マスタファイルである、請求項
11または請求項12のどちらか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記ワーピング関数は、さらに入力パラメータのセットに基づいており、前記入力パラメータのセットは、前記医療装置が適合しなければならない1つ以上の寸法、倍率、および空間の点または次元のうちの少なくとも1つを含む、請求項
11乃至
13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記ターゲット形状は、
(i)体の一部の理想的な骨モデル、
(ii)体の一部のサーフェススキャン、および
(iii)1つ以上のパラメータのセットであって、前記1つ以上のパラメータのセットは、長さ寸法、および倍率のうちの少なくとも1つを含む、パラメータのセット
から選択され
、
さらに、前記一般的なベース部分は、副木、プレート、ロッド、カップ、補綴物、ブレース、埋め込み物、矯正器具、ヘルメット、およびケージからなる群から選択される、請求項
11乃至
14のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、3DMorphic株式会社の名において2016年1月25日に出願された「カスタマイズされた装置を設計および作製するための方法およびシステム」という発明の名称のオーストラリア仮特許出願第2016900216号に関し、その内容全体が完全に本明細書に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、コンピュータ支援設計およびコンピュータ支援製造(CAD/CAM)の技術分野に関する。より詳細には、本開示はコンピュータ支援製造技術を用いたカスタマイズされた装置の設計および作製に関する。
【背景技術】
【0003】
3次元(3D)印刷および/またはラピッドプロトタイピングともいう付加製造は、対象物の3Dモデルを表すデジタルファイルを使用して材料の層状への積層を制御して、その対象物の物理的インスタンスを構築するプロセスを指す。付加製造は、最近では教育、研究および外科訓練目的で正確な解剖モデルを製造するために医学での使用が増加している、今日では既に確立されている製造プロセスである。3Dプリンタの解像度は高く、そのため医学での使用に適するような造形部分の正確性を有する。
【0004】
3D印刷の正確性の高さだけでなく、3Dプリンタが造形することができる材料の範囲も増加している。そのような材料としては様々なプラスチックおよび金属が挙げられる。好適なプラスチックとしては、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ乳酸(PLA)、柔軟なポリ乳酸(SOFT PLA)、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリカーボネート(PC)が挙げられる。好適な金属としては、例えば、鋼、ステンレス鋼、チタン、金および銀が挙げられる。より最近では、生体適合性ポリマーおよびチタンTi6Al4V-ELI(極低不純物(extra low interstitial))およびコバルトクロムなどの生体適合性金属合金の開発により付加製造を医学的用途で使用することができるようになった。
【0005】
医者、例えば整形外科医は患者の治療中に様々な医療装置を使用する。そのような医療装置としては、冶具、切断およびドリルガイドなどの手術器具類ならびに医療処置中に使用されるプレート、カップおよびロッドなどの埋め込み型装置が挙げられる。さらに、副木、ギプスなどの外部装置は関節を固定し、かつ骨折した骨を整骨するのを支援するために使用される。そのような医療装置は典型的に、限られた範囲のサイズでのみ入手可能であり、医師は患者の解剖学的構造に最も一致するサイズを選択して、その問題に対処する。
【0006】
整形外科的処置で使用される外科用プレートは、典型的には1つ以上の骨を固定するように設計された比較的薄い金属(多くの場合、チタンまたはステンレス鋼)のシートである。そのようなプレートは様々な形状およびサイズで入手可能であるが、外科医がプレートを患者固有の解剖学的構造に一致させるように変更しなければならないのが一般的である。そのようなプレートの変更は一般に、外科医が外科手術中にプレートの1つ以上の部分を曲げたり、捻じったり、叩いたり、歪めたり、それ以外の方法で調節したりすることを含む。これらの変更は典型的に、かなり粗野であり、外科医が満足するまでプレートを患者に適合させるように変更するのに何度も繰り返しが必要となる。そのような変更は外科手術中に行うことがあるため、プレートを調節している間に外科手術時間が長引き、それにより麻酔薬をかける時間が長くなり、感染のリスクが高まり、かつ回復期間も長期化する。プレートの曲げた部分における腐食および応力疲労/故障のリスクも高まる。
【0007】
物理的医療装置を変更する代わりの方法は、カスタマイズされた医療装置を製造することである。研究から、カスタマイズされた計画、ガイドおよび埋め込みにより、患者にとってより良好な臨床結果が得られることが分かっている。カスタマイズされた手法により患者の予後がより良好になることが医療分野によって認められつつあるが、カスタムガイドおよび装置の設計に対する現在の手法の技術的スキル、訓練および非自動化は、現在のカスタマイズされた手法が高価かつ時間がかかること意味する。従って大抵の場合、患者固有の手法が使用されるのは比較的稀であり、かつ/または一般的な医療装置が適さない困難な事例の場合のみである。
【0008】
従って、医療装置をカスタマイズするための方法およびシステムを提供することが求められている。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、付加製造、制御ロボット曲げ加工およびマシンフライス加工などのコンピュータ支援製造方法を用いてカスタマイズされた対象物を設計および作製するための方法およびシステムに関する。
【0010】
第1の態様では、本開示は、一般的なベース装置の第1のデジタルモデルを修正するための方法であって、前記第1のデジタルファイルは3D印刷に適した三角形分割頂点境界表現であり、前記方法は、
ターゲット形状の第2のデジタルモデルをインポートする工程と、
前記ターゲット形状に基づいて前記第1のデジタルモデルを修正してカスタマイズされた装置の前記第3のデジタルモデルを生成する工程であって、
一般的なベース部分の第1のデジタルモデルに関連づけられたソース点集合の相対位置およびターゲット形状に射影された同じ点の相対位置に基づいてワーピング補間関数を決定すること、および
ワーピング補間関数を前記一般的なベース部分の全ての頂点に適用して前記カスタマイズされた装置の前記第3のデジタルモデルを生成すること
を含む工程と、
を含み、前記カスタマイズされた装置の第3のデジタルモデルは前記ターゲット形状に適合するように構成されている方法を提供する。
【0011】
第2の態様では、本開示は、一般的な装置のデジタルモデルを修正するための方法であって、
一般的なベース部分の第1のデジタルファイルをインポートする工程と、
ターゲット形状の第2のデジタルファイルをインポートする工程と、
前記ターゲット形状に基づいて前記第1のデジタルファイルを修正してカスタマイズされた装置のデジタルモデルを生成する工程であって、
対応するソース点位置を有する一般的なベース部分に関連づけられた点集合の相対位置および対応するターゲット点位置を有するターゲット形状に関連づけられた同じ点の相対位置を決定する前記一般的なベース部分と前記ターゲット形状との間の射影に基づいて、ワーピング補間関数を決定すること、および
前記ワーピング補間関数を前記一般的なベース部分の全ての点に適用して前記カスタマイズされた装置の前記デジタルモデルを生成すること
を含む工程と、
を含み、前記カスタマイズされた装置のデジタルモデルは前記ターゲット形状に適合するように構成されている方法を提供する。
【0012】
第3の態様では、本開示は、患者のためにカスタマイズされた医療装置の製造方法であって、
一般的なベース部分の第1のデジタルファイルをインポートする工程であって、前記第1のデジタルファイルは3D印刷に適した三角形分割頂点境界表現である工程と、
患者に関する患者パラメータのセットをインポートする工程と、
前記患者パラメータに基づいて前記一般的なベース部分の全ての頂点をワープしてカスタマイズされた医療装置のデジタルモデルを生成する工程と、
前記カスタマイズされた装置の前記デジタルモデルをコンピュータ支援製造(CAM)装置にエクスポートする工程と、
前記カスタマイズされた装置を前記CAM装置によって製造する工程と
を含む方法を提供する。
【0013】
第4の態様では、本開示は、一般的な装置のデジタルモデルを修正してカスタマイズされた装置のデジタルモデルを生成するためのシステムであって、
プロセッサと、
前記プロセッサで実行するための
一般的なベース部分の第1のデジタルファイルをインポートする工程、
ターゲット形状の第2のデジタルファイルをインポートする工程、
前記ターゲット形状に基づいて前記第1のデジタルファイルを修正してカスタマイズされた装置のデジタルモデルを生成する工程であって、
対応するソース点位置を有する一般的なベース部分に関連づけられた点集合の相対位置および対応するターゲット点位置を有するターゲット形状に射影された同じ点の相対位置を決定する前記一般的なベース部分と前記ターゲット形状との間の射影に基づいて、ワーピング補間関数を決定すること、および
ワーピング補間関数を前記一般的なベース部分の前記点に適用して前記カスタマイズされた装置の前記デジタルモデルを生成すること
を含む工程と、
のための命令を含むコンピュータプログラムを格納するためのメモリと
を備え、前記カスタマイズされた装置の前記デジタルモデルは前記ターゲット形状に適合するように構成されているシステムを提供する。
【0014】
第5の態様では、本開示は、一般的な医療装置を修正して患者のためにカスタマイズされた医療装置を製造するためのシステムであって、
コンピュータ支援製造(CAM)装置と、
プロセッサと、
前記プロセッサで実行するための
一般的なベース部分の第1のデジタルファイルをインポートする工程であって、前記第1のデジタルファイルは3D印刷に適した三角形分割頂点境界表現である工程と、
患者に関する患者パラメータのセットをインポートする工程と、
前記患者パラメータに基づいて前記一般的なベース部分の全ての頂点をワープしてカスタマイズされた医療装置のデジタルモデルを生成する工程と、
前記カスタマイズされた装置の前記デジタルモデルを前記CAM装置にエクスポートする工程と、
のための命令を含むコンピュータプログラムを格納するためのメモリと、
を備え、前記CAM装置は、前記エクスポートされたデジタルモデルに基づいて前記カスタマイズされた装置を製造するように構成されているシステムを提供する。
【0015】
別の態様によれば、本開示は、上記方法のうちのいずれか1つを実行するための装置を提供する。
【0016】
別の態様によれば、本開示は、上記方法のうちのいずれか1つを実行するためのコンピュータプログラムを記録しているコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品を提供する。
【0017】
本開示の他の態様も提供する。
【0018】
以下、添付の図面を参照しながら具体例によって本開示の1つ以上の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示に係るベース部分のデジタルモデルをカスタマイズするための方法のフローチャートである。
【
図2A】模型外科用プレートのデジタルモデルのカスタマイズを示す概略図である。
【
図2B】模型外科用プレートのデジタルモデルのカスタマイズを示す概略図である。
【
図3】本開示の1つ以上の実施形態を実施することができるシステムの概略図である。
【
図4】本開示の1つ以上の実施形態を実施することができる汎用コンピュータを備えたシステムの概略ブロック図である。
【
図5】一般的な外科用プレートのモデルのワーピングを用いてその外科用プレートをカスタマイズするための方法のフローチャート500である。
【
図6A】一般的な外科用プレートのモデルのワーピングを示す。
【
図6B】一般的な外科用プレートのモデルのワーピングを示す。
【
図6C】一般的な外科用プレートのモデルのワーピングを示す。
【
図7】
図5および
図6A~
図6Cのワーピングプロセスから得られるカスタマイズされた表面と重ね合わせた
図6Aの元のベースプレートの1つの表面を示す。
【
図8】対応する元の表面点に重ね合わせた
図7のワープされた表面点(番号が付されている)を示す。
【
図9】三角形の角の角度における僅かなばらつきにより一般的な装置とカスタマイズされた装置との形状において全体的な違いが生じることを示す、一般的なプレートからの点とカスタマイズされたプレートからの点とのマッピングを示す。
【
図10】患者から得られた患者パラメータに基づいて一般的な装置をカスタマイズするための方法を示すフローチャートである。
【
図11A】指用副木をカスタマイズするための
図10の方法の適用を示す。
【
図11B】指用副木をカスタマイズするための
図10の方法の適用を示す。
【
図11C】指用副木をカスタマイズするための
図10の方法の適用を示す。
【
図11D】指用副木をカスタマイズするための
図10の方法の適用を示す。
【
図11E】指用副木をカスタマイズするための
図10の方法の適用を示す。
【
図11F】指用副木をカスタマイズするための
図10の方法の適用を示す。
【
図11G】指用副木をカスタマイズするための
図10の方法の適用を示す。
【
図12A】2つの頸椎を安定化させるために使用されるカスタマイズされた前頸部プレートの生成を示す。
【
図12B】2つの頸椎を安定化させるために使用されるカスタマイズされた前頸部プレートの生成を示す。
【
図12C】2つの頸椎を安定化させるために使用されるカスタマイズされた前頸部プレートの生成を示す。
【
図12D】2つの頸椎を安定化させるために使用されるカスタマイズされた前頸部プレートの生成を示す。
【
図12E】2つの頸椎を安定化させるために使用されるカスタマイズされた前頸部プレートの生成を示す。
【
図12F】2つの頸椎を安定化させるために使用されるカスタマイズされた前頸部プレートの生成を示す。
【
図12G】2つの頸椎を安定化させるために使用されるカスタマイズされた前頸部プレートの生成を示す。
【
図12H】2つの頸椎を安定化させるために使用されるカスタマイズされた前頸部プレートの生成を示す。
【
図13A】カスタマイズされた椎体間ケージの生成を示す。
【
図13B】カスタマイズされた椎体間ケージの生成を示す。
【
図13C】カスタマイズされた椎体間ケージの生成を示す。
【
図13D】カスタマイズされた椎体間ケージの生成を示す。
【
図13E】カスタマイズされた椎体間ケージの生成を示す。
【
図13F】カスタマイズされた椎体間ケージの生成を示す。
【
図13G】カスタマイズされた椎体間ケージの生成を示す。
【
図13H】カスタマイズされた椎体間ケージの生成を示す。
【
図13I】カスタマイズされた椎体間ケージの生成を示す。
【
図13J】カスタマイズされた椎体間ケージの生成を示す。
【
図13K】カスタマイズされた椎体間ケージの生成を示す。
【
図14A】ベースモデルをカスタマイズするためのユーザ入力を受け取るためのグラフィカルユーザインタフェースのスクリーンショットを示す。
【
図14B】ベースモデルをカスタマイズするためのユーザ入力を受け取るためのグラフィカルユーザインタフェースのスクリーンショットを示す。
【
図14C】ベースモデルをカスタマイズするためのユーザ入力を受け取るためのグラフィカルユーザインタフェースのスクリーンショットを示す。
【
図14D】ベースモデルをカスタマイズするためのユーザ入力を受け取るためのグラフィカルユーザインタフェースのスクリーンショットを示す。
【
図14E】ベースモデルをカスタマイズするためのユーザ入力を受け取るためのグラフィカルユーザインタフェースのスクリーンショットを示す。
【
図14F】ベースモデルをカスタマイズするためのユーザ入力を受け取るためのグラフィカルユーザインタフェースのスクリーンショットを示す。
【
図14G】ベースモデルをカスタマイズするためのユーザ入力を受け取るためのグラフィカルユーザインタフェースのスクリーンショットを示す。
【
図14H】ベースモデルをカスタマイズするためのユーザ入力を受け取るためのグラフィカルユーザインタフェースのスクリーンショットを示す。
【
図15】骨折および/または骨切り術症例に関する方法を示すフローチャートである。
【
図16A】人工膝関節置換術(TKA)用装置の大腿骨顆部と同様の形状を用いて実証されている、パラメトリック曲面(例えば、本明細書に示されているような非一様有理Bスプライン表面)と、細分割表面(例えば、本明細書に示されているような三角形分割点表面)との表面のコンピュータ支援設計(CAD)境界表現における違いを示す。
【
図16B】人工膝関節置換術(TKA)用装置の大腿骨顆部と同様の形状を用いて実証されている、パラメトリック曲面(例えば、本明細書に示されているような非一様有理Bスプライン表面)と、細分割表面(例えば、本明細書に示されているような三角形分割点表面)との表面のコンピュータ支援設計(CAD)境界表現における違いを示す。
【
図16C】人工膝関節置換術(TKA)用装置の大腿骨顆部と同様の形状を用いて実証されている、パラメトリック曲面(例えば、本明細書に示されているような非一様有理Bスプライン表面)と、細分割表面(例えば、本明細書に示されているような三角形分割点表面)との表面のコンピュータ支援設計(CAD)境界表現における違いを示す。
【
図16D】人工膝関節置換術(TKA)用装置の大腿骨顆部と同様の形状を用いて実証されている、パラメトリック曲面(例えば、本明細書に示されているような非一様有理Bスプライン表面)と、細分割表面(例えば、本明細書に示されているような三角形分割点表面)との表面のコンピュータ支援設計(CAD)境界表現における違いを示す。
【
図16E】人工膝関節置換術(TKA)用装置の大腿骨顆部と同様の形状を用いて実証されている、パラメトリック曲面(例えば、本明細書に示されているような非一様有理Bスプライン表面)と、細分割表面(例えば、本明細書に示されているような三角形分割点表面)との表面のコンピュータ支援設計(CAD)境界表現における違いを示す。
【
図17A】3D空間のワーピングおよび異なるベース部分形状のこの空間への挿入の結果ならびにこれらのベース部分のワープされた空間の異なる領域への挿入の効果を示す。
【
図17B】3D空間のワーピングおよび異なるベース部分形状のこの空間への挿入の結果ならびにこれらのベース部分のワープされた空間の異なる領域への挿入の効果を示す。
【
図17C】3D空間のワーピングおよび異なるベース部分形状のこの空間への挿入の結果ならびにこれらのベース部分のワープされた空間の異なる領域への挿入の効果を示す。
【
図17D】3D空間のワーピングおよび異なるベース部分形状のこの空間への挿入の結果ならびにこれらのベース部分のワープされた空間の異なる領域への挿入の効果を示す。
【
図17E】3D空間のワーピングおよび異なるベース部分形状のこの空間への挿入の結果ならびにこれらのベース部分のワープされた空間の異なる領域への挿入の効果を示す。
【
図17F】3D空間のワーピングおよび異なるベース部分形状のこの空間への挿入の結果ならびにこれらのベース部分のワープされた空間の異なる領域への挿入の効果を示す。
【
図17G】3D空間のワーピングおよび異なるベース部分形状のこの空間への挿入の結果ならびにこれらのベース部分のワープされた空間の異なる領域への挿入の効果を示す。
【
図17H】3D空間のワーピングおよび異なるベース部分形状のこの空間への挿入の結果ならびにこれらのベース部分のワープされた空間の異なる領域への挿入の効果を示す。
【
図18A】形状を補正する外部装置に適用されるような方法を示す、斜頭症ヘルメットの3Dワーピングを示す。
【
図18B】形状を補正する外部装置に適用されるような方法を示す、斜頭症ヘルメットの3Dワーピングを示す。
【
図18C】形状を補正する外部装置に適用されるような方法を示す、斜頭症ヘルメットの3Dワーピングを示す。
【
図18D】形状を補正する外部装置に適用されるような方法を示す、斜頭症ヘルメットの3Dワーピングを示す。
【
図18E】形状を補正する外部装置に適用されるような方法を示す、斜頭症ヘルメットの3Dワーピングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付の図面中の同じ符号を有する方法工程または特徴は、それに反する意図が表現または暗示されていない限り、同じ機能または動作を有するものとみなされる。
【0021】
本開示は、設計された装置のデジタルモデルに基づいて、設計された装置の形状をカスタマイズするためのコンピュータ支援設計(CAD)方法およびシステムを提供する。設計された装置のデジタルモデルは、例えば設計された装置の3Dモデルを表すデジタルファイルであってもよい。本方法は、設計された装置のデジタルモデルの形状を入力パラメータのセットに基づいてワープすなわち変形させて、カスタマイズされた装置のデジタルファイルを生成する。入力パラメータのセットは、例えば限定されるものではないが、カスタマイズされた装置が適合しなければならない1つ以上の寸法、倍率および空間の点または次元が挙げられる。次いで、デジタルファイルをコンピュータ支援製造装置への入力として使用してカスタマイズされた装置を作製してもよい。そのようなコンピュータ支援製造(CAM)装置としては、例えば3Dプリンタおよびフライス盤、旋盤、曲げ加工機、穴あけ機、ルータ、鋸、液圧プレスなどを含むコンピュータ数値制御(CNC)機械が挙げられる。従って、本方法により1つ以上のベースモデルからカスタマイズされた装置を容易に製造することができる。
【0022】
本開示の方法により、ワーピング/カスタマイズアルゴリズムを用いてベースモデルを修正して、カスタマイズされたモデルを生成する。本方法は、可能であれば、予め定められたソース点を使用してこれらを自動化された方法で射影して当該装置のワーピングをガイドするためのターゲット点を生成することによって、ユーザ内およびユーザ間でワーピング結果に違いが生じる可能性を最小限に抑える。他の実施形態では、ターゲット形状のターゲット点をソース装置上に射影してソース点を決定し、ターゲット点からソース点への射影によりワーピングを決定する。
【0023】
カスタマイズプロセス中に、本明細書に記載されている方法は、
1)ベースモデルの設計特徴を維持し、
2)限界寸法(例えばプレートの厚さ)を維持し、
3)自動化システム(一般的な/ベース装置ファイルと共に格納されたソース点ファイル)を有し、それによりユーザの影響/誤りの可能性をなくすか減らすことによって結果を標準化し、かつ
4)特に付加製造(3D印刷)およびCNC機械加工の新しい可能な技術のために最適化された出力ファイルを意図的に生成する。
【0024】
従って、本開示の方法により、現在のボトムアップ式のカスタマイズされた装置設計方法では不可能な効率的で制御可能な(設計制御の点で)、標準化された費用効果が高い方法でカスタム設計された装置を製造することが可能になる。
【0025】
本明細書全体を通して、本方法を副木、プレート、ロッド、カップ、補綴物、埋め込み物、ケージなどの医療装置に関連させて説明する。但し、そのような説明は例示であって本発明を限定するものではない。本開示の方法を使用してあらゆる設計された装置のデジタルモデルをカスタマイズすることができ、かつ建築構成材や機械部品などのあらゆる設計された装置に容易に適用できることは当業者によって容易に理解されるであろう。例えば、建築用途では個々の構成材を特定の敷地のためにカスタマイズすることができる。
【0026】
医療装置に関しては、本開示の方法およびシステムにより特定の患者のためにカスタマイズされた装置の製造が可能になる。そのようなカスタマイズされた装置は整形外科において特に有用であり、外部副木、ブレースおよび矯正器具などのために使用することもできる。
【0027】
整形外科では、プレートを骨に取り付ける際などに、当該装置と骨との可能な限り最良な適合が必要とされる。十分に適合するカスタマイズされたプレートは、処置中に2つの骨断片(計画された骨切り術または外傷骨折によって生じる)を所望の/正しい配置にガイドすることによって外科医を支援することができる。良好な適合により、例えば骨表面からずれているプレートにおけるレバーアームも減少する。レバーアームの増加により、装置/骨へ/から伝達される応力が増加する場合があり、それにより一方または他方の故障の可能性が高まる。いくつかの用途では、当該装置の患者の解剖学的構造への良好な適合により軸外モーメントを減少させることができ、これにより接触している骨の予期せぬ/所望の領域における装置の故障および応力ホットスポットが生じる可能性が減少する。良好な適合により、肩および股関節形成(関節表面置換(joint re-surfacing)または関節置換)において生じ得るような装置間または装置と解剖学的構造との衝突の発生も減少する。衝突は髄内(IM)釘では大腿骨の前方の遠位骨でも生じる可能性があり、これにより患者の疼痛を引き起こしたりIM釘の遠位部が骨を突き抜けたりする可能性がある(特に高齢の骨粗鬆症患者において)。従って、当該装置と骨との界面においてより良好な適合を与えるように装置をカスタマイズすることによって患者の予後がより良好になる。
【0028】
現在のところ、カスタム装置は一般に「ボトムアップ」手法を用いて設計されており、ここでは、患者の(3D再構築された)解剖学的構造の表面は骨表面から外向きにオフセットされている。このオフセット距離は所望の装置の厚さ(+/-製造/モデリング公差)の距離である。これが当該装置の土台となり、その後にネジ穴およびエッジの面取りなどの他の特徴を追加しなければならない。
【0029】
一般的な装置、例えば切断または穴あけガイドなどの器具類をカスタマイズする場合、現在のところ、当該方法では典型的に骨/患者の解剖学的構造を一般的な装置の接触面からブーリアン減算する。このように骨の解剖学的構造を当該装置の接触面からブーリアン減算することにより、当該装置の接触面において骨形状の転写すなわちネガが有効に得られる。当該方法は、いくつかの用途、例えば当該装置の厚さが重要でない患者の解剖学的構造に適合する切断または穴あけガイドの設計に適している。但し、患者の解剖学的構造、特に異常な解剖学的構造は様々であるため、このように患者固有の解剖学的構造に適合するようにカスタマイズされる装置の厚さは当該装置全体にわたって様々であり、異なる患者の解剖学的構造のためにカスタマイズされた同じ装置間で様々であり、かつ本質的に制御されない。荷重に耐えなければならない装置では、装置の厚さにおけるそのような制御されないばらつきにより、当該装置が耐えることができる荷重の大きさが変わる。
【0030】
一構成では、本開示の方法およびシステムは、医療装置会社の製品計画に既に存在する装置をカスタマイズする。これらの装置ならびに既存の物理的対象物には、多くのコンピュータに格納された設計ファイルが付随している。これらは、それに基づき当該装置を作製することができる設計マスタファイルを含む。そのような装置には典型的に設計履歴ファイルが付随しており、それらは当該装置設計の全ての側面の開発を列記し、具体的な設計特徴を含めた理由を説明し、かつ全体として当該装置内におけるそれらの特徴の機能を詳述している。言い換えると、設計マスタファイルは、当該装置の設計履歴中に存在する意図された設計、試験および再設計を通して装置の幾何学的形状を理解するのに利用される。
【0031】
付加製造(3D印刷)は、現在のところ大量生産において費用効果は高くないが、同じ1回限りの装置を製造するための従来の製造ラインプロセスを用いる場合よりも低コストで1回限りの装置を作り出すことができる。1回限りの装置設計の製造は、付加製造技術の使用による別の装置設計と同じくらいに容易に達成することができるが、時間、コストおよび労力は今では設計段階の「上流」にまで及ぶ。この状況では、その負担は製造ではなくカスタム装置の設計に対してのものである。本開示の方法は、カスタマイズされた装置を付加製造(3D印刷)または他のコンピュータ支援製造技術(例えば、CNC機械加工および自動化プレスなど)により効率的に製造することができる設計プロセスを(全ではないとしても少なくとも半)自動化し、かつ標準化する方法を提供する。多くの以前の設計、研究、試験および再設計は、これらの設計マスタファイルの幾何学的形状についても詳述しているため、本方法は既存の設計マスタファイルを使用するように構成されている。
【0032】
本開示によれば、方法は設計された装置の形状をカスタマイズするためのものと定められる。生物医学的設定では、設計された装置は、例えば、限定されるものではないが、プレート、フランジを有するカップ、椎体間ケージ(またはスペーサ)、髄内釘または関節全置換術用装置であってもよい。本方法は、カスタマイズされた装置が患者固有になるように、当該装置の幾何学的形状または幾何学的形状の側面をワープする。本方法は、設計の真の幾何学的部分、例えば半球状カップの幾何学的形状、止めネジ山、平面スリットまたは円筒状ドリルガイド穴(切断ガイド設計の場合)を維持することができると共に、設計パラメータが確実にカスタマイズされた装置において維持されるように装置の幾何学的形状の他の側面(例えばプレート厚)を制御することができる。
【0033】
さらに本方法は、当該装置の3Dモデルにおける点の数ならびにこれらの点の接続性(これは表面/境界表示である)を制御する。一構成では、当該装置の境界表示は、細分割(通常は三角形分割)ポリゴンを用いて表されるが、非一様有理Bスプライン(NURBS)パラメトリック曲面ならびに幾何学的形状(球体、立方体、楕円体、円環体など)などの他の表示を同等に実施してもよい。
【0034】
また、本方法は自動化もしくは半自動化プロセスとして実施してもよく、それにより、カスタマイズされた装置の製造に要する時間を削減し、カスタマイズされた装置の結果の標準化を高め、かつ必要なオペレータ技術レベルを下げ、かつカスタマイズを実施するための訓練を減らす。従って、本方法は、好適な付加製造または他のコンピュータ支援製造方法が利用可能である場合にはいつでも、カスタマイズされた装置を製造するための広範囲の用途に適用することができる。
【0035】
場合によっては、カスタマイズされた装置を個々の体に適合するように作り出してもよい。そのようなカスタマイズされた装置としては、例えば、副木、ブレース、支持装具、衣類、ヘルメットおよび靴が挙げられる。他の事例では、自動車レースまたは航空産業で使用される部品のような機械部品などのカスタマイズされた装置を特定の空間すなわち次元セット内に適合するように作り出してもよい。手術計画およびカスタマイズされた切断ガイドと共に骨切り術で使用されるカスタマイズされたプレートを用いるような他の事例では、骨断片をガイドして互いに対して所望の術後位置合わせを達成するように、患者固有のプレートをカスタマイズしてもよい。
【0036】
1つの用途では、モデルは医療装置であり、本方法は医療装置の既存のベースモデルを特定の患者に適合するようにカスタマイズする。そのような用途では、本方法は既存のベースモデルを特定の患者に適合するように当該装置が取り付けられる骨の3D表面モデルを用いてカスタマイズする。この3Dモデルは、手術鋸切断およびドリル穴の角度を計画し、かつその後に前から存在するガイドおよび装置の幾何学的形状をカスタマイズするために、統計学的に正常な骨モデルと共に非侵襲的CTもしくはMRIスキャンからの連続的な「医用におけるデジタル画像と通信(ダイコム)」(DICOM)データから生成され、かつ/または解剖学的データベースから得られる骨モデルのセットから選択してもよい。得られた患者固有のカスタマイズされたサージカルガイドおよび装置を、付加製造(3D印刷)方法を用いる作製のために最適化する。
【0037】
図1は、本開示に係るベース部分のデジタルモデルをカスタマイズするための方法100のフローチャートである。本方法100は、開始工程105で開始し、工程110に進み、そこではカスタマイズのために元のベース部分形状のファイルをインポートする。このファイルは、例えば、「.stl」、「.ply」、「.obj」または「.wrl」形式のいずれか1つの形式の三角形分割点ファイルあるいは「.step」および「.igs」ファイルなどのジオメトリファイルを含む他の適当なファイル形式であってもよい。カスタマイズのための元のベース部分形状は任意の対象物であってもよい。一例では、元のベース部分形状はアンクルブレースまたは整形外科用プレートである。
【0038】
制御は工程110から工程115に移行し、ここではターゲット形状をインポートする。インポートされるターゲット形状は、ターゲット形状/解剖学的形態の三角形分割点ファイルであってもよい。ベース部分形状がアンクルブレースである例では、ターゲット形状は患者の足および足首のサーフェススキャンであってもよい。サーフェススキャンは、例えば表面レーザまたは構造化照明スキャンを用いて得てもよい。あるいは、ターゲット形態は、患者の特性(例えば、年齢および身長)に基づく解剖学的データベースから選択してもよい。ベース部分形状が整形外科用プレートである例では、ターゲット形態の三角形分割点ファイルは、患者の骨の表面形態に関するCTスキャンまたはMRIデータから得てもよい。
【0039】
別の例では、ターゲット形態の三角形分割点ファイルは、骨形状のデータベースから抽出され得るような計画された術後の骨形状であってもよい。そのような例では、統計学的骨形状の格納されたデータベースを使用してもよく、ここから、患者の解剖学的構造の正常な領域と最良の一致を与えるものであって解剖学的構造の正常でない/異常な領域の補正のためのガイドとしてのターゲット骨形状を選択または生成する。あるいは、計画された術後の骨形態は、損傷した方とは反対の足および足首などの患者の「良好な」解剖学的特徴のスキャンから得てもよい。
【0040】
他の構成では、ターゲット形状は、長さ寸法、倍率またはそれらの組み合わせなどの1つ以上のパラメータのセットである。一般的な部分の形状がアンクルブレースである例では、ターゲット形状は、患者の足および足首の長さ、幅および高さなどのターゲット形状から得られる長さ測定値のセットであってもよい。
【0041】
図2Aは、ターゲット形状220と並べた、
図1の工程110でインポートすることができるような元のベース部分形状210の三角形分割ファイルのグラフィック表示を示す。
図2Aおよび
図2Bの例では、ベース部分形状は整形外科用プレートであり、ターゲット形状は患者の骨である。
【0042】
図1に戻ると、制御は工程115から工程120に移行し、ここではターゲット点位置を計算する。工程125では、元の(ソース)点構成およびターゲット点構成において同
じ点の位置に基づいて、ワーピングすなわち形状変形補間関数を確立する。ターゲット点の計算は点集合230として
図2Aに示されている共に、ワーピング補間関数は
図2Bにマッピング240として示されている。
図1に戻ると、次いで制御は工程130に移行し、ここではワーピング補間関数を元のベース部分の幾何学的形状の点に適用してカスタマイズされた部分のモデルを生成する。
【0043】
制御は工程130から決定工程135に移行し、ここではカスタマイズされた部分のモデルが印刷に適しているか否かを決定する。そのモデルが印刷に適していなければ(「いいえ」)、制御は工程140に移行し、ここではカスタマイズされた部分のモデルを修正する。そのような修正としては、例えば、カスタマイズされた部分の幾何学的形状の微調整または調整およびカスタマイズされた部分の表面に対する色またはテクスチャの追加など、ならびにその部分の三角形分割が付加製造または他のコンピュータ制御された製造ソフトウェアへの入力に適している(例えば、その表面に浮いているシェル、交差する三角形または穴が存在しない)かの確認が挙げられる。制御は工程140から工程135に戻る。工程135においてカスタマイズされた部分のモデルが印刷に適している(「はい」)と判断された場合、制御は工程145に移行し、ここではカスタマイズされた部分のデジタルファイルをエクスポートする。次いで、デジタルファイルを好適な3Dプリンタまたは他のCAM装置(例えば、3Dプリンタ、ロボット曲げ加工機、液圧プレスなど)にアップロードしてカスタマイズされた部分のインスタンスを作製してもよい。制御は工程145から終了工程150に移行し、方法100は終了する。
【0044】
図2Bは、骨220に適合するように修正されたカスタマイズされた部分250を示す。この特定の例では、一般的な外科用プレートのベースモデルは、適当な寸法の外科用プレートを正しい向きで骨に確実に固定することができ、かつ骨の遠位領域(骨切り術後)を正しい(計画された)位置にガイドするように、ターゲット形状(すなわち患者の骨)のパラメータに基づいてワーピングされている。
【0045】
図3は、本開示の一実施形態を実施することができるシステム300の概略ブロック図である。システム300は医学的もしくは生物医学的用途に関し、ここでは、外科用プレート、副木、ブレースおよび支持装具などをカスタマイズして患者固有の装置を製造することができる。システム300は、ユーザが操作することができる計算装置310を備える。この計算装置は、3Dプリンタ315、カメラ335および第1のデータベース325に接続されている。
【0046】
3Dプリンタ315は、カスタマイズされた装置の出力ファイルを計算装置310から受信してカスタマイズされた装置のインスタンスを生成することができる。カメラ335は、患者の画像を取り込むためのレンズを備えた従来のカメラとして実装されていてもよい。次いで、患者に関するパラメータを計算するための計算装置310で実行されるソフトウェアを用いて画像を処理することができる。あるいは、カメラ335は、患者の領域のサーフェススキャンを生成するためのレーザもしくは構造化照明スキャナとして実装されていてもよい。
【0047】
第1のデータベース325は、患者に適合するようにカスタマイズされていてもよいベース部分のモデルを格納する。上述のように、そのようなベース部分としては、副木、ブレース、外科用プレート、カップ、ロッドおよび切断ガイドなどが挙げられる。第1のデータベース325は、ベース部分のそれぞれの予め定められた「ソース」点集合も格納していてもよい。これらのソース点ファイルはベース部分ファイルに関連づけられており、ベース部分と同時にソフトウェアの中にロードされている。第1のデータベース325はターゲット形状のセットも格納していてもよい。本システムがサージカルガイドをカスタマイズするために使用されている事例では、ターゲット形状のセットは様々な異なる体形およびサイズのための正常な骨に関するものであってもよく、この場合、ユーザは所望の術後の状態を表すために正常な骨を選択することができ、あるいは、この工程は患者の骨に最も適した骨モデルが使用されるように自動化することができる。
【0048】
システム300では、計算装置310は、計算装置310と他の計算装置との通信を可能にする通信ネットワーク305に接続されている。通信ネットワーク305は、1つ以上の有線もしくは無線伝送リンクを用いて実装されていてもよく、例えば、携帯電話網、専用通信リンク、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネット、電気通信網またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。電気通信網としては、限定されるものではないが、公衆交換電話網(PSTN)、携帯(モバイル)電話網、ショートメッセージサービス(SMS)網などの電話網またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0049】
図3の例では、システム300は、X線機器380、磁気共鳴画像診断装置(MRIスキャナ)390およびCTスキャナ395を備え、これらはそれぞれ、患者の部分に関する画像を取り込み、かつそれらの画像を通信ネットワーク305を介して計算装置310にアップロードすることができる。
【0050】
ユーザは、計算装置310にアクセスしてデータベース325からベース装置のモデルを選択し、ユーザによって入力されたかカメラ335またはX線機器380またはMRIスキャナ390またはCTスキャナ395によって取り込まれた画像から得られる情報あるいは第1のデータベース325から得られる情報に基づいて当該装置をカスタマイズするためのパラメータのセットをインポートし、次いで、計算装置310の1つ以上のプロセッサで実行されるコンピュータプログラムとして実装された
図1の方法に従って、当該ベース装置から得られるカスタマイズされた装置のデジタルモデルを生成することができる。生成されたデジタルモデルは、通信ネットワークに接続されている3Dプリンタ315または外部3Dプリンタ350などの3Dプリンタ、あるいはフライス盤、曲げ加工機、ルータ、鋸、穴あけ機、旋盤および液圧プレスなどの他のコンピュータ数値制御(CNC-CAM)装置355によって使用するのに適したコンピュータファイルとしての出力のために利用可能である。
【0051】
図3の例では、システム300は、通信ネットワーク305に接続されている外部データベース360をさらに備え、外部データベース360は、計算装置310にアクセスしているユーザによる選択のために利用可能な1つ以上のデジタルモデルを格納している。いくつかの状況では、デジタルモデルをCT、MRIまたはX線データから得てもよい。他の実施形態では、デジタルモデルをコンピュータプログラミングおよびスキャンなどの他の提供源から得てもよい。外部データベース360は、ベース部分のそれぞれのための予め定められた「ソース」点集合も格納している。これらのソース点ファイルはベース部分ファイルに関連づけられており、ベース部分と同時にソフトウェアにロードされる。外部データベース360は任意に、第1のデータベース325に関して上に記載した正常な骨のセットなどのターゲット形状のセットを格納している。そのようなターゲット形状は任意に関連づけられた「ターゲット点」集合と共に格納されていてもよい。
【0052】
システム300は、セントラルサーバ301をさらに備え、セントラルサーバ301は、この実施形態では、その間の通信を可能にするためのバス346に接続されているプロセッサ342およびメモリ344を有する。セントラルサーバ301は、ベース装置の幾何学的形状のモデル、ターゲット形状のセットまたはそれらの組み合わせを格納するためのサーバデータベース370も備える。サーバ301は通信ネットワーク305に接続されている。
【0053】
一構成では、サーバ301は、計算装置310で実行されるウェブブラウザを介してユーザによってアクセス可能な計算装置310のウェブページをホストする。ユーザは、特定の動作または処置または条件などの所望の用途を選択するためにサーバ301によって提供されるユーザインタフェースを計算装置310までナビゲートし、次いで、既存のベース装置のモデルを選択するために、選択した用途に関連する1つ以上のオプションから選択することができる。次いで、ユーザは当該ベース装置のカスタマイズを支配するためにパラメータを入力またはアップロードすることができ、その後すぐに、メモリ344に格納されたコンピュータプログラムをプロセッサ342で実行して
図1の方法を実行し、パラメータに従ってベース形状を変形させてカスタマイズされた装置のモデルを生成する。次いで、ユーザはカスタマイズされた装置を3Dプリンタ315および外部3Dプリンタ350またはCNC機械355などの他のCAM機械のうちのいずれか1つにおいて、選択された材料を用いて3D印刷するかCNC機械加工することを選択することができる。
【0054】
本開示のカスタマイズシステムは、汎用コンピュータまたはコンピュータサーバなどの計算装置を用いて実施してもよい。
図4は、汎用コンピュータ410を備えたシステム400の概略ブロック図である。汎用コンピュータ410は、プロセッサ412、メモリ414、格納媒体416、入力/出力(I/O)インタフェース420および入力/出力(I/O)ポート422などの複数の構成要素を備える。汎用コンピュータ410の構成要素は一般に1つ以上のバス448を用いて通信する。
【0055】
メモリ414は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)またはそれらの組み合わせを用いて実装されていてもよい。格納媒体416は、ハードディスクドライブ、ソリッドステート「フラッシュ」ドライブ、光ディスクドライブまたは他の格納手段のうちの1つ以上として実装されていてもよい。格納媒体416は、オペレーティングシステム、ソフトウェアアプリケーションおよびデータを含む1つ以上のコンピュータプログラムを格納するために利用されてもよい。1つの動作モードでは、格納媒体416に格納された1つ以上のコンピュータプログラムからの命令は、バス448を介してメモリ414にロードされる。次いで、メモリ414にロードされた命令は、実行される命令に従って動作モードを実行するために、バス448またはプロセッサ412による実行のための他の手段を介して利用可能になる。
【0056】
1つ以上の周辺装置がI/Oポート422を介して汎用コンピュータ410に接続されていてもよい。
図4の例では、汎用コンピュータ410は、スピーカ424、カメラ426、表示装置430、入力装置432、プリンタ434および外部格納媒体436のそれぞれに接続されている。スピーカ424はステレオまたはサラウンド音響システムなどにおける1つ以上のスピーカを用いて実装されていてもよい。
図3の計算装置310を実装するために汎用コンピュータ410が利用されている例では、1つ以上の周辺装置は、I/Oポート422に接続されている3Dプリンタ、CNCフライス盤、CNC旋盤、CNCルータまたは鋸、カメラ、外部格納媒体、X線機器、CTスキャナまたはMRIスキャナに関連するものであってもよい。
【0057】
カメラ426は、ウェブカメラまたは他の静止もしくはビデオデジタルカメラであってもよく、特定の実装に応じてI/Oポート422を介して汎用コンピュータ410へ/から情報をダウンロードおよびアップロードしてもよい。例えば、カメラ426によって記録された画像は、汎用コンピュータ410の格納媒体416にアップロードされてもよい。同様に、格納媒体416に格納された画像をカメラ426のメモリまたは格納媒体にダウンロードしてもよい。カメラ426はレンズ系、センサユニットおよび記録媒体を備えていてもよい。カメラ426はデジタルカメラ、X線機器、MRIスキャナ、CTスキャナまたは他の画像診断装置であってもよい。
【0058】
表示装置430は、ブラウン管画面、プラズマ画面または液晶表示装置(LCD)画面などのコンピュータモニタであってもよい。表示装置430は従来の方法でコンピュータ410から情報を受け取ってもよく、ここでは、情報はユーザが見る表示装置430上に表示される。表示装置430は任意に、ユーザが汎用コンピュータ410に入力を与えることができるようにタッチスクリーンを用いて実装されていてもよい。タッチスクリーンは、例えば、静電容量方式タッチスクリーン、抵抗膜方式タッチスクリーン、表面弾性波方式タッチスクリーンなどであってもよい。
【0059】
入力装置432は、ユーザからの入力を受け取るためのキーボード、マウス、スタイラス、ドローイングタブレットまたはそれらの任意の組み合わせであってもよい。外部格納媒体436としては、外部ハードディスクドライブ(HDD)、光学式ドライブ、フロッピーディスクドライブ、フラッシュドライブまたはそれらの任意の組み合わせが挙げられ、これらは、1つ以上のそれらの装置のいずれか1つの単一のインスタンスまたは複数のインスタンスとして実装されていてもよい。例えば、外部格納媒体436は、一連のハードディスクドライブとして実装されていてもよい。
【0060】
I/Oインタフェース420は、汎用計算装置410と他の計算装置との情報の交換を容易にする。I/Oインタフェースは、伝送媒体への結合を可能にするための内部もしくは外部モデムまたはイーサネット接続などを用いて実装されていてもよい。
図4の例では、I/Oインタフェース420は通信ネットワーク438に接続されており、かつ計算装置442に直接接続されている。計算装置442はパーソナルコンピュータとして図示されているが、スマートフォン、ラップトップまたはタブレット装置を用いて同等に具体化されてもよい。汎用コンピュータ410と計算装置442との直接通信は、無線もしくは有線伝送リンクを用いて実装されていてもよい。
【0061】
通信ネットワーク438は1つ以上の有線もしくは無線伝送リンクを用いて実装されていてもよく、例えば、専用通信リンク、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネット、電気通信網またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。電気通信網としては、限定されるものではないが、公衆交換電話網(PSTN)、携帯電話網、ショートメッセージサービス(SMS)網などの電話網またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。汎用コンピュータ410は、通信ネットワーク438を介して携帯電話ハンドセット444、タッチスクリーンスマートフォン446、パーソナルコンピュータ440および計算装置442などの通信ネットワーク438に接続された他の計算装置と通信することができる。
【0062】
汎用コンピュータ410の1つ以上のインスタンスを利用して、本開示に係る装置カスタマイズ方法を実装するためのネットワークに接続された計算装置として機能するサーバを実装してもよい。そのような実施形態では、メモリ414および格納媒体416は、入力パラメータに基づいてベース装置のワーピングに関するデータを格納するために利用される。本装置カスタマイズシステムを実装するためのソフトウェアは、プロセッサ412での実行のためにメモリ414および格納媒体416の一方または両方に格納されている。このソフトウェアは、本明細書に記載されている
図1の方法に従って方法工程を実装するためのコンピュータプログラムコードを含む。
【0063】
3D印刷は、以下の2つの側面により患者固有の装置の製造における使用にとって特に魅力的なものになる。
1)この製造方法は幾何学的複雑さが増しても単純な幾何学的形状よりも製造するのに追加費用がかからないことを意味する。例えば、最適化された内部格子設計などにより好適な装置の剛性を維持しながらも部分重量を減らすために高い幾何学的複雑さを用いる場合、複雑な部分の印刷は、この部分を作り出すために使用される材料が少なくなるので、幾何学的に単純な中実部分を印刷するよりも安価である。このように3D印刷により設計の複雑さを高めることが可能になる。
2)従来のロボット構築ライン製造プロセスでは、新しい設計の製造のために製造ラインを構築するのに時間がかかり、かつそれにより高価になる。成形および鋳造製造プロセスの場合、当該装置設計の最初の型を製造するのは高価である。製造ラインまたは型が構築されると、各個々の装置を製造するのはさらに安価になる。これは付加製造プロセスの場合には該当せず、付加製造プロセスでは、例えば100コピーの同じ(マスタ)設計として100個のカスタマイズされたバージョンの装置を製造するための1単位当たりのコストは同じある(CAD時間は考慮しない)。これにより、付加製造プロセスは装置のカスタマイズに対して実証可能な利点がある製造装置に適用されやすくなる。1つのそのような分野は生物医学装置産業であり、そこでは数多くの研究により患者固有の計画、ガイドおよび装置の使用により患者の臨床結果が向上することが証明されている。
【0064】
3D表面のCADにおける表示
現在のところ、3D表面をCADで表す2つの主な方法、すなわちパラメトリック曲面および等値面(ポリゴン細分割、多くの場合、三角形分割点)が存在する。どちらも異なる種類の境界表現(すなわち体積を取り囲む表面)を記述し、どちらも3D座標点によって構成される。境界表現はボリューム画像データとは異なり、CTもしくはMRIスキャンによって取得されたDICOM画像からのグレースケール値を閾値処理することによって得られる。
【0065】
パラメトリック曲面
パラメトリック曲面は、ベジェ、B-スプラインおよび非一様有理Bスプライン(NURBS)曲線/表面などの曲線および/または表面から構築することができる。これらの場合の曲線および表面は、以下の3つの異なる種類の点によって決定される。
a)境界周囲(表面)または端部(曲線)を定める点(生物医学の事例では標識点であってもよい);表面/曲線は3D空間においてこれらの点に交わるように制約されている(NURBS曲線の構築の例については
図16Aを参照、ここでは、点1(sP1)および点4(eP4)は境界を定める点であり、sは「開始」を表し、eは「終了」を表す)
b)(重みを持つ)制御点(各制御点が有する表面曲率に対する制御レベルを決定するように重み付けられている);点を定める境界内の表面/曲線の曲率は重みを持つ制御点の位置決め、数および相対的重み付けによって決定される(
図16Aは、境界を定める開始(sP1)点と終了(eP4)点との間に制御点としてc1P2およびc2P3を示している。(濃い灰色の実線の)曲線の経路は境界を定める点と制御点との相互関係によって描かれている。
図16Aは、sP1とeP4との間の0.5の点に曲線を示している。この0.5における曲線の位置は(より大きな)破線に沿った0.5の位置によって与えられ、これは両方の点線に沿った道の0.5の点の間の接続として定められ、(次に)これはsP1→c1P2とc1P2→c2P3との間の距離の0.5の点(左側の点線が得られる)とc1P2→c2P3とc2P3→eP4との間の距離の0.5(右側の点線が得られる)との接続として定められている)、および
c)いくつかの表面/曲線では、曲率はノット点に近い場合に表面の曲率を制約する「ノット」によっても制御される(この数学の一分野およびこのように表面を記述するその関連用語は木造船建築から生まれたものであり、ここでは、船体のリブを構成するように延び、かつ船にその外部船体形状を与える各梁の曲率は、木材の中の節によって作り出される梁における硬い領域を考慮しながら、湿らせた梁をそれぞれ両端に固定し、かつウェイトを吊るして梁の曲がり具合を制御することによって生成される)
【0066】
ベジェ、B-スプライン表面およびNURBS表面は、同じスプライン(多項式)曲率数学を採用してそれを表面まで延ばす。従って、表面の正確な位置は、境界点、重みを持つ制御点およびノット点(存在する場合)が組み込まれた多項式のセットを解くことによって計算される。従って、パラメトリックに表される表面は、曲線が無限に割り切れる数学的関数である(CAD NURBS表面表現の例については
図16Bを参照)。
【0067】
スプライン曲線、ベジェおよびNURBS表面をその中に格納することができる一般的なコンピュータ3Dファイル形式としては、IGESおよびSTEPファイルが挙げられる。3D印刷に適したものにするために、これらのファイル形式を「.wrl」または「.stl」などの三角形分割点形式に変換しなければならない。但し、これらの表面によって表される一般的な/既存のベース部分は、制御点およびノット重みなどを調節および/または追加することによってなおカスタマイズすることができる。これが現在にところ、変更すなわちカスタマイズされたパラメトリックCAD装置を作製する方法である。そのような方法は、患者の解剖学的構造から得られる点を間接的に使用することができる(以下を参照)。
【0068】
等値面
等値面は、関連する接続情報により3D点または頂点によって作成される表面である。接続情報は、ソフトウェアにどの点およびどの順序でこれらの点を使用してポリゴン表面を構築することができるかを教える。ポリゴン表面は3つ以上の頂点から構築することができるが、ポリゴン表面が3つの頂点のみから構築されている、言い換えると三角形として構築されている場合、全てのポリゴンが平らであるということが保証される(
図16Bに示されている表面の三角形分割表示については
図16C~
図16Eを参照)。
【0069】
T.Rado(1925年)は、三角形分割頂点法を用いて表面を正確に表すことができるという点で、十分に小さい三角形を用いて全ての表面の幾何学的形状が三角形分割を有することを証明した。これは、より多くの頂点から構築されたポリゴンの場合には該当しない。
【0070】
パラメトリック表面CADファイルと三角形分割表面CADファイルとの違いに関する重要性
CADモデルで表される三角形分割表面とパラメトリックにモデル化された表面との違いは些細なものではないが、表面を3Dモデルでどのように表すか、および点の移動がモデルに対して何をもたらすかは基本的なことである。単一の点をNURBS表面などのパラメトリック表面において移動させると、同じ形状の三角形分割表面において単一の点を移動させる場合とは非常に異なる結果が達成される(
図16Cおよび
図16Eと比較して
図16Bを参照)。
図16Eは、
図16Bにおけるパラメトリック(NURBS)表面と形状において比較可能な高解像度三角形分割表面表現を示す。
図16Cは、(
図16Dおよび
図16Eに図示されているような)同じ形状の低解像度の三角形分割表面であり、ここでは、単一の点を動かした場合の当該装置の表面に対する効果が
図16Dおよび
図16Eに示されている高解像度の三角形分割表面の場合よりも容易に観察される(表面欠陥、表面に穴が形成される可能性およびスパイク状の形態の効果は、高解像度の三角形分割表面において同じである)。
【0071】
NURBS表面の曲率は制御点の位置によって支配されるので、単一の(制御)点の移動により表面の滑らかな変形が生じる(
図16B)。重要なことに、構造(多くの表面の組み合わせ)は全体としてそのままであり、制御点の移動および表面の変形によって、穴、表面欠陥または破壊は導入されない。
【0072】
この形状変化法に関して留意すべき別の重要な点は、制御点が結合されている表面のみが制御点の移動に伴って変化するという点である。言い換えると、制御点を用いるパラメトリックモデリングは当該装置の形状全体には影響を与えない。
図16Aでは、移動された制御点に関連する表面のみが形状を変えるが、これは、例えば当該装置の厚さ、表面積および体積に対して全体として当該装置に影響を与える。
【0073】
パラメトリック表面ファイルにおける制御点は、CADファイル内に特定の構造(順序付けまたはテンプレート)を有し、CADファイル自体に一体化されている。
図16Aは、パラメトリックCADファイル内の全ての点がパラメトリック曲線に対して同じ効果を有するわけではないことを示している。これはパラメトリック曲面にまでも及ぶ。いくつかのパラメトリック点は境界を定める点であるが、他の点は曲線/表面曲率を制御する。パラメトリック曲線/表面ファイル内のこれらの異なる種類の点の順序付けおよびラベリングは固有のものであって交換不可能である。
【0074】
ターゲット形状、例えば患者からの点を使用してパラメトリック表面点の位置をガイドすることができるが、これは、パラメトリック表面制御点をターゲット形状の(上の)点位置に一致させるように移動させることによって達成される。パラメトリック曲線/表面曲率自体を定める(すなわちパラメトリックファイル内の)制御点はパラメトリックファイルの一部である。
【0075】
これは、制御点(ソースおよびターゲット点)がベース装置ファイルとは別個である本開示とは異なる。本開示におけるソースおよびターゲット(制御)点は、ワープされた装置を達成するために当該ベース装置が存在する空間のワーピングを有効に決定する。これらの制御点は当該ベース装置自体とは別個であるため、異なるベース装置を同じソースおよびターゲット(制御)点によってワープすることができる(以下および
図17A~
図17Hを参照)。
【0076】
患者の解剖学的構造に適合するようにNURBS曲線/表面などのパラメトリック曲線/表面ファイルをカスタマイズすることができる別の典型的な方法は、円、球体または円筒体などの幾何学的形状を患者データ点に適合させ、これらの適合された形状から曲線半径などのパラメータを決定することである。例えば、大腿骨顆部の曲線半径は、装着された円を介した平面X線、CTもしくはMRIスライスあるいは装着された球体または円筒体を介したCTもしくはMRIデータに基づく3D再構築から測定することができる。次いで、これらのパラメータを使用して、パラメトリック曲線/表面が患者パラメータに一致するようにパラメトリックファイルの制御点位置を調節することができる。
【0077】
この方法は典型的に、同じように表面点を移動させることによってCT、MRIスライスデータの3D再構築から得られる三角形分割点表面などの境界表示表面の他の形態の形状を変更するために適用することはできない(点を介した三角形分割表面調整の結果についての
図16Cと比較した、点を介したパラメトリック表面調整の結果についての
図16Bを参照)。
【0078】
三角形分割表面ファイルは、3Dプリンタによって使用されるCADファイルの種類である。
【0079】
パラメトリックCAD表面によって表される同じ形状は、三角形分割頂点CAD法によって表すことができる(同じ表面の低解像度および高解像度三角形分割表示についての
図16Dおよび
図16Eと比較して、表面のパラメトリック表示についての
図16Bを参照)。
【0080】
三角形分割表面を構成する点は、パラメトリック表面を支配する点とは異なる方法で表面に影響を与える。
図16Bにおける点と同様の位置にある
図16C(または
図16E)における単一の点を
図16Bにおける点と同様の方向に同様の大きさだけ移動させた場合、その表面の三角形分割表示に対して得られる効果は、視覚的かつ構造的にパラメトリック表面に対する効果とは非常に異なる。三角形分割表面では、移動させた点が構成要素である1つのみまたは複数の(どのように表面がCADソフトウェアで構築されているかに応じて)三角形はそれらの形状を変更させる。構造の形状を構成する残りの三角形は変更されないままである。これにより当該装置形状における滑らかでない変化(
図16Cおよび
図16Eにおけるスパイク)が生じる。これにより、3D印刷に適さない当該構造の三角形分割表示が生じ得る(
図16Cの2つの右側の画像において見ることができるような)穴、表面欠陥または破壊の形成も生じ得る。
【0081】
現在のところ、医学的3D表面モデルの大部分は、連続的なDICOMデータ(CTおよびMRI)から生成されている。このように生成された3D表面モデルは大抵の場合、マーチングキューブ法またはラッパーアルゴリズムあるいはこれらの変形形態を用いて生成される細分割表面モデルである。3D印刷ファイルは常にこれらの同じ三角形分割表面として表されるため、これらのモデルから3D印刷への自然なワークフローが存在する。次にパラメトリック表面「パッチ」を細分割表面に適合させること以外に、パラメトリック表面モデルをCTデータから直接生成することはできない。これは、その結果がユーザの介入、操作および確認を必要とする不完全な解決法である。さらに、例えば階層的なパラメトリックCADモデルの真のCAD表面構造は、かなりのユーザ介入がなければ、単一の自動化工程において三角形分割ファイルから「逆行分析する」ことは非常に難しいかほぼ不可能である。
【0082】
境界表示モデル(パラメトリックおよび三角形分割表面の両方)は、有限要素解析(FEA)への入力に適したボリュームメッシュを生成するために「ソィッド充填」することができる。医療スキャンによって取得された解剖学的データを用いて作業する場合に一般にエンジニアによって用いられる1つの手法は、六角形の要素を構築するために各ボクセルの角の点を使用することである(CTまたはMRI、ボクセルは3D画素である)。これにより、異なる構造の境界表現を構築することを必要とすることなく、スキャンの異なる部分の材料特性と相関させることができるグレースケールなどのCTもしくはMRIスキャンにおけるデータを直接工学モデルに変換することができる。但し、得られるモデルは構造の形状を正確に取り込んでいない。これは、最初にスキャンされた構造の真のアウトラインが当然にボクセルを横切るからである。三角形分割ポリゴンを用いた境界表示は、この真の形状をボクセル表示よりもさらにより正確に取り込むことができる。これはスキャンされた構造の正確な形状が望まれる場合に重要になる。
【0083】
また、三角形分割境界表示は、最も単純な立体幾何学、すなわち4節点四面体を用いてソリッドメッシュされていてもよい。故に、それらのベースとして三角形分割ポリゴン境界表示(または表面三角形)を使用する4節点四面体から構築されたFEAモデルは、モデル化されている構造の真の幾何学的形状をより正確に表し、かつDICOMボクセルデータから直接得られる8節点六面体要素よりもコンピュータでの計算が軽くなる。
【0084】
正確性は高精度および高真性度によって定められる。精度は、設計/工学における公差、画面/コンピュータモニタの解像度またはデジタルカメラの画素数と同様のものである。真性度は、基底構造の表示がそれを取り込む技術によってどの程度厳密に表されているかということである。例えば、魚眼レンズは、写真に取り込まれている実生活の幾何学的形状の低い真性度を有する高精度な写真を提供することができる。
【0085】
故に、多くの3Dソフトウェアプログラムは、三角形分割点表面として、サーフェススキャン法(レーザ、構造化照明、写真測量)あるいはボリュームスキャン法(CT、MRIまたは超音波)のいずれか一方によって得られる境界等値面を表す。ボリュームスキャン法の場合、これらはマーチングキューブ法またはラッパーアルゴリズムあるいはそれらの変形形態によりDICOM画像データを閾値処理することによって構築される境界表示表面であることが多い。
【0086】
現在のところ、全ての付加製造機械は付加製造のために三角形分割頂点ファイルを受け付ける。これらのファイルは通常はステレオリソグラフィー(.stl)ファイル形式であるが、より最近では付加製造機械のいくつかの製造業者(例えば、Stratasys社)は、表面色情報を付加製造機械に伝えることができるようにバーチャルリアリティモデリング言語(VRML:Virtual Reality Modelling Language、「.wrl」)も含めている。
【0087】
現在のところ、付加製造機械は、パラメトリック表面(例えば、IGESおよびSTEP)ファイルを受け付けない。逆に、コンピュータ数値制御(CNC)フライス盤は、IGESおよびSTEPファイルなどのパラメトリック表面ファイルを受け付けるが、一般にSTLなどの三角形分割頂点ファイルは受け付けない。パラメトリック表面ファイルは比較的容易に三角形分割頂点ファイルに変換することができるため、Rhino、Pro/EngineerまたはSolidWorksで設計された装置などの階層的なパラメトリックモデリング方法を用いて設計された装置は3D印刷することができる。但し、三角形分割頂点ファイルをパラメトリック表面ファイルに容易に変換することはできない。その代わりに、B-スプライン曲線、ベジェまたはNURBS表面を三角形分割等値面に当てはめて、CNC機械読取り可能ファイル形式に変換させる。このプロセスは常に満足な結果を与えるものではなく、表面境界を定めるために、あるいは特にパラメトリック曲面を鋭いエッジを含むことが多い設計装置の幾何学的形状に適合させることを試みる場合に、ユーザとの対話を必要とすることが多い。
【0088】
限定されるものではないが、薄板スプライン、ベッセル関数、放射基底補間、動標構線形最適化および他の「可及的に剛直な(as rigid as possible)(ARAP)」変形法などのソースおよびターゲット点を用いる補間関数によるワーピング
本開示は、元のベース形状をターゲット形状に一致させるように変更させる方法を提供する。本明細書に詳述されている有限要素方法および多変量スプライン法ならびにワーピング補間関数法などの、これを達成するためのいくつかの方法が存在する。有限要素方法および多変量スプライン法はどちらも通常は、メッシュにおいて三角形のそれぞれを構成している点の連立方程式を解いてメッシュの全体的歪みを計算することに基づいている。これにより直ちにコンピュータでの計算が重くなり、従って、幾何学的に正確な解剖学的装置または生物医学装置モデルなどにおいてメッシュが多くの点を有する場合に遅くなる。対照的に、ワーピング補間関数法は三角形分割を必要としないため計算するのがさらに速くなる。
【0089】
補間関数(限定されるものではないが、薄板スプラインなどの多項式関数など)、ベッセル関数、放射基底関数、動標構線形最適化および他のARAP変形関数は全て、モデル内の総点よりも少ない点から計算することができる。三角形分割およびモデルの点の接続性は必要とされず、元の(ソース)位置とターゲット位置との対応のみが必要とされるため、本方法はメッシュを含まず、かつ独立している。各方法では、元の点位置をそれらの対応するターゲット位置に変換させる補間関数を計算する。放射基底(多変量)関数を、1次元以上(この場合3次元)に適用可能なものにするために放射状に並んだ一変量関数の線形結合として近似する。一変量の放射基底関数は薄板スプライン関数であってもよいが、ベッセル関数および、多くの場合1/r^2と記載される1/(距離^2)などの単純な距離に基づく関数などの他の多項式関数も同等に使用することができる。本明細書に示されている事例では、放射基底関数は、公知のソース点とターゲット点との補間すなわちワーピング関数を構成する。その後に、この補間関数を使用して、ソースおよびターゲット位置における点の相対的位置決めに従って元の形状のあらゆる点の位置をワープ/カスタマイズされた形状の位置に変更することができる。
【0090】
本明細書に示されている方法は、平滑化の程度および制御点の影響範囲の制御を可能にする異なる補間関数を用いて一様なユークリッド空間の次元を有効に調節またはワープして、ワープされた空間を作り出す。次いで、三角形分割表面モデルをこのワープされた空間の中に入れて、空間のワーピングを制御する関数により三角形分割表面モデルのワーピングを制御する(
図17A~
図17H)。
【0091】
本明細書に示されている方法は、形状のアフィン調節(これはユークリッド空間の剪断である)ではない。形状のアフィン調節は、異なる形状の対象物を達成するためにモデルが異なる比で存在するユークリッド空間の軸を拡大縮小することによって達成することができる。
【0092】
放射基底関数(若干の例外はある)は通常、格子状に組織化されるソースおよびターゲット点を必要とする。これは、元の装置の幾何学的形状に応じて必ずしも好都合であったり、さらには可能であったりするものではない。
【0093】
他方、動標構線形最適化およびARAP法などの他の剛体変形法は、この元の(ソース)およびターゲット点の格子レベルの組織化を必要とせず、従って、組織化されていないソースおよびターゲット点を用いて複雑な幾何学的形状をカスタマイズするために使用することができる。
【0094】
元のベース幾何学的形状をワープ/カスタマイズするために使用される関数は全てメッシュを含まず、かつそれらの構築は、ソースおよびターゲット点のみに依存しているため、他のメッシュに基づくワーピング方法と比較してワープ/カスタマイズされた幾何学的形状を非常に速く計算することができる。
【0095】
本明細書に記載されている方法は、ワークフロー中に骨と装置との間、骨と骨との間または全てにおいて相同な点を特定しない。その代わりに本方法は、当該ベース装置の必ずしもではないが部分に関連づけられた「ソース」点を定め、次いで、これらの同じ点をそれらがターゲット骨/構造の表面に接触または交差するまで射影する。この端部位置における点を「ターゲット点」と呼ぶ。この関数のワーピング部分は、これらのソース点の位置(互いに相対的)における変化によって決定されると共に、この関数の補間部分は、当該ベース装置点からソース点までの距離が当該装置点上の各ソース点の相対的影響にどの程度影響するかを決定する(
図17Aおよび
図17B)。他の構成では、本開示の方法を使用して、ターゲット点をターゲット骨または構造などのターゲット装置から射影して一般的な装置上のソース点に戻す。そのような構成では、ターゲット装置を「ソース」として、一般的な装置を「ターゲット」として想定することができる。
【0096】
当該ベース装置の形状に対する正確な効果は当該ベース装置の異なる領域の異なるソース点への近さによって決まるため、ワーピング関数は補間的である。これは、
図17A~
図17C、
図17Fおよび
図17Gではワープされた格子によって示されている。点の「ソース」すなわち開始位置は、小さい黒色の立方体によって示されている。ターゲット位置は、黒色の矢印が立方体の所望の移動を示した状態で灰色の球体によって示されている。濃い立方体の格子は、ソース点がその中にあるユークリッド3D空間を示す。より薄い灰色の湾曲した格子は、ソース点をそれらのターゲット位置まで移動させるために、この一様なユークリッド空間をどのように曲げる、すなわちワープしなければならないかを示す。この空間のワーピングは各軸に沿って、かつこれらの軸の間で一様でないことに留意されたい。これは、この方法を用いてワープされた装置の得られる形状が、当該装置がワープされた空間のどこに配置されているかによって決まることを意味する(
図17E~
図17H)。同じベース部分または形状が、それを異なる点においてワープされた空間の中に入れた場合に、このベース部分の異なるワープされた形状になる可能性がある(
図17E~
図17H)。
図17E~
図17Hは、ベース部分の最終的なワープされた結果すなわち球体形(
図17E)が、ベース部分がワープされた空間内のどこに入れられたかにどの程度依存するかを示す(
図17F~
図17Hの左側と右側の結果を比較する)。
【0097】
空間が制御点の間でどのように曲がるかは、補間関数(例えば、薄板スプライン、多項式関数、ベッセル関数、1/r^2)によって決まる。このように、補間関数の効果の一部は、最終的なワープされた部分の幾何学的形状がどの程度滑らかであるかを決定することである。ARAP法および他の剛直なワーピング関数により、単純な距離(ソース点からの)関数(例えば1/r^2)などの関数よりも滑らかであって直感的なワープされた幾何学的形状が一般に得られる。
【0098】
本明細書で使用される「補間」という用語のこの使用は、補間が設計された開始点と終了点との間のさらなる点の生成を記述する分野における同じ用語の別の使用とは異なる。この種の補間を使用してメッシュを細分化することができ、より多くの点および三角形によって表される同じ幾何学的形状が得られる。この補間の2つ目の使用を、例えば第1の穴のエッジ点と第2の隣接する穴のエッジ点との間の「ロフティング」において穴を充填するために使用することもできる。
【0099】
本明細書に記載されている方法は、ソースおよびターゲット点を使用して当該装置がその中に位置する空間のワーピングを制御する。これは、パラメトリックCADモデルをカスタマイズするこの他の方法が現在使用しているCADファイルにおいて制御点を調節する方法とは異なる。本明細書に記載されている方法は、当該装置ファイルから抽出され、従って、同じワープされた空間は「その中にドロップされた」任意の装置を有することができる(異なるベース形状を同じワープされた空間内にワープされた結果についての
図17F~
図17Hと比較して、
図17Cおよび
図17Dを参照)。関数によって空間のワーピングを制御する点は当該装置および/または骨ファイルとは完全に別個であり、これはパラメトリックCADモデルにおける制御点の場合には該当しない。パラメトリックCADモデルでは、制御点はモデルの一体化部分である。
【0100】
ワーピング補間関数を確立したら、それを元の装置の三角形分割メッシュを構成する点に適用して、それらのワープ/カスタマイズされた位置を達成することができる。ベース部分とワープされた部分との三角形分割点ID対応が維持される限り、ワープされた部分における点は元の装置と同じ接続性(三角形分割)を有する。このように、本明細書に記載されている方法は正確であるが、コンピュータでの計算においても速く、かつメモリ要求も比較的少なく、かつ滑らかな方法で三角形分割表面幾何学的形状をカスタマイズするために使用することができる。また、本方法により、カスタマイズプロセス中に装置厚およびエッジフィレットなどの当該装置の元の設計特徴を維持することができる。これは、各特徴を全ての新しいカスタム装置のために生成しなければならないボトムアップ式のカスタム設計プロセスを用いた場合や、患者の解剖学的構造を患者の解剖学的構造に接触する当該装置の表面からブーリアン減算して当該装置における解剖学的構造の「ネガ」を残すが、装置厚を制御しなかったり、減算プロセスによって設計特徴が破壊されるのを防止しなかったりする装置の減算カスタマイズを用いた場合には不可能である。
【0101】
ソース点位置は、ベース部分に関連して定めるか当該ベース装置の特徴から抽出することができ、あるいは、それらを予め定めて、ベース部分ファイルがコンピュータプログラムにインポートされる際に同時にインポートされるベース部分ファイルにリンクされた別個のファイルに格納することができる。別の実施形態では、GUIによるユーザとの対話を介してソース点位置を手動で制御/配置することができたり、あるいは、それらをベース部分の幾何学的形状の寸法から得られるパラメータによってパラメトリックに制御したりすることができる。
【0102】
GUIによる対話を介してユーザによってソース点を配置することができるが、この方法は、カスタマイズプロセスを通して制御が少ないため推奨されていない。これにより、それに従いユーザが作り出した得られるカスタマイズされた装置において潜在的な違いが生じる場合があり、これによりカスタマイズ手法を標準化させることに関してさらなる問題が生じる。従って、本明細書において支持される手法は、予め定められた点集合がベース部分の幾何学的形状と共に格納されること、およびこれらのソース点がベース部分ファイルがロードされる際に同時にコンピュータプログラムにロードされることである。これが不可能であれば、ベース部分のソース点についての方法および/または場所に関する命令をベース部分と共に格納し、かつベース部分がコンピュータプログラムにロードされる際にポップアップウィンドウなどを介してアクセス可能にしてもよい。
【0103】
射影したソース点が(ターゲット)患者の解剖学的構造の3D表示の表面と交差するまで、ソース点を射影ベクトルを用いて射影する。射影した点の患者の解剖学的構造との交差点は新しいターゲット点位置を定める。
【0104】
パラメータ、例えば長さ測定値を使用してターゲット点位置を生成する場合には、ターゲット幾何学的形状からそこまでの測定が行われる対応する位置にある元のベース部分/装置と共にソース点を格納する。次いで、点間の距離が測定値に一致するように、これらのソース点を調節する。これらの調節した点はその時点でターゲット位置にある。
【0105】
本開示の方法は、ワープ/カスタマイズされた装置の境界表示、すなわち三角形分割ポリゴン表面の得られる寸法および構造に対する正確な制御を維持することを目指す。本方法は、プレートのカスタマイズの場合に元の(ベース)装置設計の厚さを維持し、かつ全てのカスタマイズのために一般的な装置設計とカスタマイズされた装置設計との間の3D頂点の数および接続性を維持する。この理由は、得られるカスタマイズされた装置において元のベース装置の設計特徴/パラメータを維持するためであり、これらの特徴が当該装置の機械的性能に絶対不可欠である可能性が高いからである。
【0106】
本方法により、装置の特定の設計特徴/領域の幾何学的形状をワープされないままにすることもできる。装置の幾何学的形状の特定の側面の元の幾何学的形状を維持することは、当該装置が正確に機能するために極めて重要になり得る。例えば、ネジと共に使用されるように設計された装置、例えばロッキングプレートでは、ネジがプレートにおいてネジ穴と共になお機能することを保証するためにネジのネジ山の幾何学的形状を調節されないままにすることが必須である。一構成では、本方法は、各装置のジオメトリファイルと共に格納されているソース点を格納するファイルと同様に、ジオメトリファイルと共にワープしてはいけない設計特徴を構成する点のリストを格納している。他の構成では、変化させないままにしなければならない設計特徴の点をユーザによってアクセスされる計算装置に提供されているグラフィカルユーザインタフェース(GUI)との対話を介してユーザが選択することができる。ここでも、別個のファイルにより、より標準化されたカスタマイズされた結果が得られるため、ジオメトリファイルと共に別個のファイルが使用される手法が支持される。
【0107】
当該装置の幾何学的形状の側面は、それらの形状が変更されないという点でワーピングされないままにするように設定することができるが、それらの側面は、隣接する点のワーピングプロセスによって与えられる回転および平行移動に従ってなお回転および平行移動される。このように当該装置は、全体として連続的な幾何学的形状を維持する。
【0108】
図5は、外科用プレートなどのコアワーピングを行うための方法500を示すフローチャートである。この例では、骨に固定される
図2Aおよび
図2Bに示されている外科用プレート210を参照しながら方法500について説明する。方法500は、開始工程505で開始し、工程510に進み、そこでは、骨と接触するか元のベース装置のジオメトリファイルに関連して格納されている予め定められた点に荷重を与えるプレートの表面にある、ユーザによって選択された点と同一面にある点のサブセットを特定する(
図6Aの部分605も参照)。これらの点はソース点である。この例では、ユーザは点(3)を選択する(
図14Eも参照)。ソース点は、最大の長さおよび幅である当該装置の極限寸法にある点を含む。工程515では、当該装置の慣性軸を用いて、ソース点を外向きに射影してワーピング領域の外側に外部固定点を生成する(
図6Aの部分610も参照)。ワーピング領域はその中にワーピング補間関数を大きく制約する領域を定める。
【0109】
図6は、特定されたソース点と共にベース装置のモデル605を示し、次いでベース装置のモデル605を、点(3)の法線ベクトル610を用いて(プレート表面から離れるように)射影する。
【0110】
図5を参照すると、制御は工程520に移行し、ここでは、骨に面する当該装置の表面にあるユーザによって選択された点(3)の法線ベクトルをソース点の全てに割り当て、それらの点(
図6の610)をそれらの点が骨表面にあるポリゴンと交差するまで射影する。骨と交差しないベクトルのために、当該アルゴリズムはそれらの最も近い隣接部を含む大きさを割り当てる。点と骨表面にあるポリゴンとの交差は
図6の615に示されている。これらはターゲット点である。
【0111】
図5を参照すると、工程525では、この場合には薄板スプラインとして示されているワーピング関数を計算し、元のソース点をターゲット点の位置までワープする。これは
図6の620として示されている。
【0112】
次いで、本方法は工程530では、元の装置を構成している点の各点開始位置のためのワーピング補間方程式を解くことによって、一般的な装置全体をワープする。これは
図6の625として示されている。工程535は、ワープされた装置を骨との衝突/交差について確認する。次いで、
図6の630、635および640として示されているように、ワープされたモデルをあらゆる衝突が解決されるまで骨表面から離れるように平行移動させて調節する。制御は工程540に移行し、ここでは、得られたワープされた装置を確認して全ての三角形が有効であるかを確認し、かつユーザがその結果が満足の行くものであることを確認することを促す。ユーザは、ワープされた装置を形状、骨からの距離、当該装置と骨との接触の量および領域などについて確認することができる。次いで、制御は工程545に移行し、ここではワープされた装置の出力ファイルをエクスポートする。制御は終了工程550に移行し、方法500は終了する。
【0113】
図7は、単に例示のために、
図5および
図6を参照しながら上で説明したワーピングプロセスにより生じるカスタマイズされたプレート表面640と重ね合わせた元のプレート605の1つの表面を示す。元のベースプレート表面605の平らな構造が、プレート640が取り付けられる骨の表面により良好に一致することができるカスタマイズされたプレート表面640を生成するようにワープされていることがはっきりと分かる。
【0114】
図8は、対応する元の表面点の上に重ね合わせた
図6のワープされた表面点を示す。
図8は、元のプレート表面およびワープされたプレート表面における三角形のサブセットも示す。
【0115】
図9は、ベースプレート605からの点とカスタマイズされたプレート640とのマッピングを示す。
図9は、元のベースとワープされたプレート/表面幾何学的形状との形状における違いは、元のベース部分と比較してワープされた部分の三角形ポリゴン(三角形)の角における角度の僅かな違いの結果であることを示す。
【0116】
図10は、患者から得られた患者パラメータに基づいてベース装置をカスタマイズするための方法1000を示すフローチャートである。そのような患者パラメータは、例えば、スキャン、X線、キャリパーまたは他の測定装置からの患者の測定値に関するものであってもよい。方法1000は、例えば、副木、矯正器具、ブレースおよび他の装置をカスタマイズするために適用してもよい。
【0117】
方法1000は開始工程1005で開始し、工程1010に進み、ここでは、グローバルx,y,z=0,0,0にある当該装置の質量中心と位置合わせされると共に、当該装置の長さ、幅および深さがx,y,zグローバル軸と位置合わせされるように、ベース装置のモデルを(自動的に)平行移動および回転させる。これは、例えば、2つの部分の質量中心またはベース部分の質量中心をターゲット形状の領域、例えば骨の質量中心と位置合わせすることとは異なる。本明細書に示されている位置合わせは、元のベース部分と解剖学的構造などのターゲット幾何学的形状との剛体レジストレーション位置合わせではなく、グローバル座標系に対する位置合わせである。多くの場合、部分と解剖学的構造とのそのような位置合わせは、現行の方法に記載されている位置合わせを達成するために使用されていないICP(iterative closest point)(反復最近接点)法すなわち対応点法またはその変形形態などの反復レジストレーションプロセスを用いて達成される。
【0118】
制御は工程1015に移行し、ここでは、ユーザは患者パラメータのセットを入力する。次いで、制御は工程1020に移行し、ここでは、各測定/パラメータレベルにおける予め定められたベース装置設計点集合(格子構造であってもよい)をユーザによって定められたターゲットの測定パラメータに一致するように変更する。一構成では、点集合/格子は、データベースまたはコンピュータメモリ(例えば、
図3の325、360、370、344)に一般的な/元の装置の幾何学的形状と共に予め定められて格納されているか、あるいは点集合/格子は、ソフトウェアのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を介したユーザとの対話によって定めることができる。この場合、ユーザは、患者表示(写真、3D表示、平面X線)に対する測定がどこで行われたかを、測定が行われた場所にある点を手動で選択するか、画面上のスライダを使用して予め定められた格子線を正しい位置に移動させることによって定める。これらの点は、ユーザによって定められた測定点において格子(放射基底補間のためのもの)を3Dで射影するために使用される。
【0119】
次いで、以下の工程1025では、3D印刷のためのモデルの三角形および一般的な実現可能性を確認し、次いで、工程1030では、3D印刷または他のコンピュータ支援製造プロセスのために「.stl」ファイルなどのカスタマイズされた装置のモデルをエクスポートする。制御は終了工程1035に移行し、本方法は終了する。
【0120】
図11A~
図11Gは、指用副木をカスタマイズするための
図10の方法の適用を示す。
図11Aおよび
図11Bは、ベースモデルの質量中心がx,y,z=0,0,0に位置すると共に、長さがx軸に沿って、幅がy軸に沿って、深さがz軸に沿って位置するように、グローバル座標系内のランダムな場所から回転および平行移動されている一般的な指用副木のベースモデルを示す。
【0121】
図11Cは、副木が装着される患者に関して測定が行われる点を示す。この例では、この測定は、(1)指先から指関節2と指関節3との中間までの指の長さ、(2)指関節1の幅、(3)指関節2の幅、(4)指関節1の高さ、および(5)指関節2の高さに関するものである。
図11Dは、
図11Cに関連して得られた測定値に従ったアフィンワープを示す。
【0122】
図11Eは、患者の測定値/パラメータに基づく格子の確立を示す。この格子の寸法(公差を含む)が患者パラメータの寸法に一致するように、この格子を変更する。さらに、
図11Eの右下側にあるベクトル場によって表されるパラメトリック変化を達成するためにワーピング補間関数を計算する。
図11Fは、最終的なカスタマイズされた装置を達成するためにアフィン調節された装置へのワーピング補間関数の適用を示す。この最終的な装置は
図11Gに示されている。最終的な装置は当該ベース装置の構造を維持しているが、カスタマイズされた患者固有の幾何学的形状を有することに留意されたい。
【0123】
図15は、骨折および/または骨切り術症例に関する方法1500を示すフローチャートである。方法1500は開始工程1505で開始し、工程1510に進み、そこでは、ユーザは関連する情報のセットと共に骨折した骨の3Dモデルを入力する。関連する情報としては、例えば、骨の名前、患者の年齢および性別、および骨が患者の骨格の左側または右側からのどちらのものであるかが挙げられる。
【0124】
制御は工程1515に移行し、そこでは、ユーザは、(1)近位、(2)遠位関節面(およその中間点)、および骨の長さのおよそ中間点にある(3)前面および(4)後面(または同等の面)にある点を定める。以下の工程1520では、ユーザは、骨切り術の計画された点(5)および骨切り術切断のどちら側を点(6)と同じ位置にそのまま残すかを定める。骨の最初の切断面を計算する。
【0125】
工程1525では、切断(点6)の静的側にある点を分離する。最初の切断面を複製して、静的および動的骨断片のそれぞれのために1つのコピーを維持する。反復最近接点(ICP)アルゴリズムを使用して、切断の静的側を「良好な骨」のモデルと位置合わせする。ICPアルゴリズムから達成される回転および平行移動を動的骨断片に適用する。
【0126】
工程1530では、骨モデルの動的部分を「良好な骨モデル」の非静的側とICP位置合わせする。同じ回転および平行移動行列を最初の切断面のコピーに適用して第2の切断面を生成する。制御は終了工程1535に移行し、方法1500は終了する。
【0127】
図15の方法1500に関連して言及されている「良好な骨モデル」を生成するための多くの異なる方法が存在する。1つの手法は、患者の体の反対側にある「良好な解剖学的構造」を使用することである。従って、患者が右の尺骨を骨折した場合、右の尺骨のために骨折していない左の尺骨を使用して良好な骨モデルのモデルを生成する。CTスキャンを使用して左の尺骨の最初のモデルを生成することができ、次いで、体の矢状方向の正中線(または同等の平面)を中心に鏡映して、次いで、固定された(近位)骨断片の上にICP重ね合わせをすることができる。次いで、「折れた」骨の動的(遠位)断片をこの鏡映した良好な解剖学的構造の遠位部分と位置合わせすることができる。
【0128】
折れた骨のCTスキャンのみが入手可能な状況では、格納された骨図譜からモデルを使用することができる。「図譜」骨モデルは、特定のサイズ、体重、年齢および性別ごとの平均的な骨形状モデルを提供する。従って、患者の特徴に基づいて「図譜」骨を選択し、次いで、これを折れた骨の解剖学的構造の特徴に一致させるためのアフィン(長さ、深さおよび幅)、放射基底、ARAPまたは他のワープ関数を用いてワープすることができる。非常にひどい骨折では、断片長の追加によってその長さを推定することができる。次いで、ワープされた「図譜」骨を、ワープされた「図譜」モデルの遠位部分を骨の残りの断片のためのガイドとして機能させた状態で、静的(近位)骨断片とICP位置合わせすることができる。
【0129】
折れた解剖学的構造のデジタル平面X線のみが入手可能な場合、骨のX線により測定を行い(長さ、幅および深さの推定)(X線源-センサの歪み/拡大係数を考慮して、この情報をX線のデジタルコピーの中に含める)、かつ、これを使用して「図譜」骨のアフィン、放射基底、ARAPまたは他のワープ関数を構築することができる。ワープされた「図譜」骨の表面を、カスタマイズされた切断および/または穴あけ冶具の計画およびワーピングならびに一般的な装置のカスタマイズされた形状へのワープを促進するために直接使用することができる。
【0130】
異常な解剖学的構造の3D再構築のみを用いる他の方法は、標識点を解剖学的構造の良好な領域から手で選択するか、あるいは良好な領域を「図譜」骨にICP適合させ、次いで、この良好な領域の点の公知の(外傷/病状によって冒されている解剖学的構造の割合に応じて正常な点の割合として計算されている)サブセットを使用して解剖学的データベース内の標本の新規な固有形状(eigenshape)空間を創出するかのいずれかである。次いで、この形状空間内の患者の骨の固有スコア(eigenscore)を使用して、患者の解剖学的構造の良好な部分に極めて一致し、かつ残りの骨の断片の位置決めのためのガイドとして機能する固有形状骨全体を作り出すことができる。
【0131】
実施形態の説明
次に、本開示の様々な実施形態について説明する。CADワークフローは、以下のユーザとの対話によって開始する。
1)ユーザはどんな種類の処置をモデル化するかを定める。この例では、以下の処置セットがユーザによる選択のために利用可能である。
a.骨断片の再位置合わせを行わないプレートによる骨折固定
b.骨断片の再位置合わせを行うプレートによる骨折固定
c.骨断片の再位置合わせを行わない髄内(IM)釘による骨折固定
d.骨断片の再位置合わせを行う髄内(IM)釘による骨折固定
e.単一の関節表面置換
f.関節全置換術
g.外部副木、支持装具または矯正器具
h.頸部プレート
i.椎体固定のための椎体間ケージ
j.フランジを有するプレート
k.真の3Dカスタム
2)ユーザは異常な体の一部の3D再構築物をソフトウェアにインポートする。この再構築は、体の一部の境界表示等値面を生成するためのグレースケール閾値処理済DICOMデータ(通常はCTまたはMRI)により得られる。
3)ユーザは、カスタマイズされるベース装置のパラメトリックまたは等値面(三角形分割頂点)表示および射影のための当該装置の関連する予め定められた点(適用可能であれば)をソフトウェアにインポートする。
【0132】
頸部脊椎の椎体間固定装置
椎間板の高さが減少する慢性椎間板変性の事例では、この位置で脊髄から出ている神経根に圧力が加わる可能性がある。この圧力により、痺れ、神経が終了する場所にある組織における刺痛および/または脊椎の周りの局所化疼痛が生じる可能性がある。
【0133】
症状を軽減させ、かつこの問題が再発するのを防止するための1つの方法は椎体間固定を行うことである。この処置では、2つの椎体の間の罹患した椎間板を部分的/完全に除去し、この位置を延伸させ(椎間板の高さを回復させ)、かつ2つの対向する椎体を固定させる。固定を容易にするための整形外科用装置の選択肢としては、後方のロッドとネジ、前方のプレートおよび椎体間ケージ(またはスペーサ)が挙げられる。多くの場合、これらの装置の組み合わせが使用される。
【0134】
以下の例は、頸部(首)脊椎固定を達成するためによく使用される一般的な整形外科用装置のカスタマイズに関する。整形外科用装置は前頸部プレートおよび椎体間ケージである。これらの装置は互いに一緒によく使用される。但し、固定は常に達成されるわけではない。
【0135】
以下の例は、異なる目的を達成するために本開示に記載されている方法の2つの異なる実施を使用する。頸部プレートをワーピング補間関数(この場合は薄板スプライン)を用いてパラメータ(測定値)に合わせてカスタマイズする。他方では、椎体間ケージをARAPワーピング関数を用いて患者固有の形態のためにカスタマイズする。
【0136】
頸部プレート
図12A~
図12Hは、2つの頸椎を固定させる意図でそれらを安定化させるために使用される前頸部プレートへの本方法の適用を示す。そのような事例では、椎間板の高さの減少により、孔を介して脊柱管から側方に出ている神経の圧迫痛が生じる可能性がある。椎骨に取り付けられる
図12Aに示すような前方プレートにより、変性位置を安定化させ、椎間板の高さを回復させ、かつ神経出口を広くするのを助けることができる。
図12Aに示すように、前頸部プレートは椎体に取り付けられることが多く、ネジによって適所に保持される。これらのネジは椎体の皮質骨(外殻)を通って椎体内部の海綿状すなわちスポンジ状の骨の中まで入る。
【0137】
椎間板変性を有する多くの患者では骨の変性も生じる。これは、骨棘の形成(
図12Aにおいて明らかである)、ならびに椎骨のいくつかの領域における骨密度およびミネラル含有量の減少も含む。特に高齢の骨粗鬆症患者において、変性した脊椎の椎体において非常にミネラルが多い良質な骨の減少が認められることが多い。低質の海綿状(スポンジ状)の骨の中でネジが緩む可能性があるため、椎体内部の低質な骨はプレートの取り付けの有効性および寿命について問題を引き起こす可能性がある。このプロセスは不十分なプレートの配置、不十分なプレートの適合または不十分なプレートの設計によって加速される可能性がある。
【0138】
図12Aに示されている前頸部プレートは意図的に平らにしてある。平らなプレートは、ネジの微動を加速させる可能性があり、これにより、プレートが椎体から内側よりも側方にさらに離れるように保持されるため、最終的にネジの緩みが生じ、かつプレートが有効性を失う結果になる。これにより、プレートによってネジに加えられる有効なレバーアームが増加し、プレートの外側面が椎体の皮質表面により近い場合よりもさらに急速にネジを緩ませる可能性がある。
【0139】
さらに、埋め込み中に外科医がネジを使用してプレートを「引っ張って」椎体の皮質骨に接触させる場合、残留する歪みエネルギーがプレート内に蓄えられる。この歪みエネルギーは「引き抜き」力の形態でネジに伝達され、ネジを椎体から脱落させ、かつプレートにその安定化機能を失わせる。
【0140】
従って、潜在的なモーメントアームおよび引き抜き力を最小限に抑えるためには、プレートの外側面を椎体の前面のすぐ近くに維持することが望ましい。椎体の前面が湾曲しているため、湾曲したプレートは、真っ直ぐなプレートよりも利点を有し得る。2つの曲線、すなわち椎体の曲率に対応するための横方向(幅方向)の曲線と、(残りの)椎間板および/または椎体終板までの骨縁に対応するための第2の上下方向(長さ方向)の曲線と有するプレートがさらにより有利であろう。これらの曲線は、個々の患者から測定することができ、あるいは解剖学的研究および/またはデータベースから平均値を得ることができる。
【0141】
多くの時間および努力がプレートの設計履歴および設計マスタファイルに注がれてきたと思われる。本開示の方法は、元のプレート(ベース部分)の設計特徴の全てを保持しながら、真っ直ぐなプレートの既存のベース設計を異なる半径の2つの曲線を含めるように修正および更新するように構成されている。
【0142】
以下の例は、本明細書に記載されている方法を用いてどのようにこれを達成することができるかを示す。与えられている具体例は頸部プレートの修正のためのものであるが、本明細書に開示されている方法のこの側面を使用して、曲線を自動車、航空、消費財、宝石類、矯正器具、衣類および防護服/保護具ならびに他の産業で使用されるものなど、医療装置産業以外のものを含む任意の設計された部分に導入することができることに留意されたい。
【0143】
図12Bは、
図12Aに示されているプレートと比較して単純化された一般的な平らな頸部ベースプレート設計を示す。
【0144】
図12Cは、付随する点の格子と共に
図12Bのプレートを示す。この点の格子は、当該装置をグローバル座標系と位置合わせするとすぐに当該装置の最大および最小のx,y,z座標を用いて生成される。次いで、ユーザは3つの軸全てにおいていくつの点の行を使用すべきかを指定することができる。
図12Cに示されている事例では、5つの行/列がxおよびy軸の両方に使用されると共に、3つの行/列がz軸に使用されている。
【0145】
次いでユーザは、それぞれのxおよびy軸に対して使用される曲率を指定する。これらの曲率は、半径が分からなければ曲線の半径または曲率の最大点の高さによって定めてもよい。
図12Dに示すように、これらの曲線を使用して、それらの射影した点が定められた曲線に一致するまでz軸点の正中線を射影する。
図12Eに示すように、xおよびy軸の両方においてこれを行って、xおよびy軸の曲線の両方を包含する1セットのターゲット点を形成する。
【0146】
次いで、
図12Fに示すように、これらのターゲット点によってワーピング関数を定める。ワーピング関数を定めたら、これを元のプレートに適用する。これにより、
図12Gに示すように、異なるxおよびy軸曲線を含むが元の平らな装置の設計特徴(例えば、表面エッジフィレット)の全てを維持するカスタマイズされたプレートが得られる。
【0147】
図12Hは、元の平らなプレートに重ね合わせた、異なるxおよびy軸曲線を有するカスタマイズされたプレートを示す。全長および幅寸法は一定のままであり、かつ最終的なカスタマイズされたプレートにおける曲率度は、xおよびy軸においてユーザによって定められた曲率によって生成されたターゲット点の曲率度に正確に従っていることに留意されたい。
【0148】
この例は、カスタマイズプロセスを制御するユーザによって定められたパラメータを用いてどのように本カスタマイズ方法を機械的装置に適用することができるかを示す。得られるカスタマイズされた装置は元の装置の設計特徴を維持しているが、この例ではその時点で水平および長手方向の曲率に関するさらなる設計特徴を有している。
【0149】
同じ方法を使用して、例えば大腿、脛骨または上腕骨の髄内(IM)釘の曲率度をカスタマイズすることができる。大腿のIM釘の場合、これらは現在のところ、設定された曲率半径、典型的には2メートル、1.5メートルまたは1メートルの曲率半径のうちの1つを備えている。但し、これらの曲率は全ての患者に適合せず、大き過ぎる半径を有する曲率が髄管の前方の皮質に圧迫痛を与え、これにより骨における局所化応力集中部、潜在的な骨リモデリングおよび疼痛が生じる。
【0150】
カスタマイズされた頸部プレートの作製のために本明細書に明記されている方法を使用して、IM釘の曲率を患者により良好に適合するようにカスタマイズすることができる。患者の骨の曲率は、CTスキャンの3D再構築または平面X線で行われた測定値から計算してもよい。
【0151】
IM釘の曲率は、手動曲げ機、達成される曲がり具合に対する数値制御を伴う曲げ加工機、ロボット曲げ加工、付加製造およびCNCフライス加工を用いるなどの、多くの異なる方法によって達成することができる。
【0152】
頸部ケージ
椎体間ケージは椎体間の高さを回復させるための「スペーサ」として使用される。中心の穴は、時には骨形成タンパク質(骨成長の刺激を助けるためのBMP)または脱ミネラル化骨と共に使用される骨「粉砕物」(自家移植片または同種移植片;「粉砕された」骨)などの材料で「充填」されることが多い。これらは全て、固定の成功の確率を最大化することを目指しており、ここでは骨が対向する椎体の2つの終板から成長して中央で合体する。但し、固定は保証されていない(
図13Bの1および2を参照、13Bの2における2つの椎体の間の白色の線は固定の欠如を示している)。
【0153】
現在のところ、頸部ケージは正確に配置することが難しく、最後には脊椎の解剖学的構造に対して歪んだ状態および/または中心からずれた状態になることが多い(
図13Aを参照)。これは重大な問題ではないが、力がケージを通っていずれかの終板までどのように分散されるかに影響を与える。
【0154】
問題のより多くは、ケージが終板を通って椎体の中に沈下することである(
図13Cを参照)。
図13Dに示すように、ケージは対向する椎体の中に沈下し、そのため椎体間の高さが減少するため、沈下は問題である。これは、椎体間の高さを回復させるという外科手術の主な目標を無効にし、それにより神経根が脊椎から出る空間を増加させる可能性がある。
【0155】
ケージを終板間に配置する前に、外科医は終板骨を「準備する」ことが多い。準備としては、終板の削磨および/またはバリ取りが挙げられる。これは、そうしなければ骨と骨との合体を妨げる軟組織の終板を切除し、かつ骨がケージを通り、かつその周りで成長し始めるように骨を活性化させるのに役立つ。但し、終板骨をあまりに多く除去し、かつ/または準備中に破壊すると、終板の生物力学的完全性が損なわれる可能性がある。これは、特に終板を超えたところにある椎体における骨密度が減少する高齢の骨粗鬆症患者における懸念事項である。
【0156】
従って、患者の解剖学的構造と装置の幾何学的形状との良好な適合を有することが必須であるが、その理由は、これにより
a)当該装置と終板との接触表面積を最大化し、それにより終板骨が弱ってケージを椎体に中に沈下させ得る高い応力(応力=力/領域)の「ホットスポット」を最小化し、
b)当該プレートが周囲の患者解剖学的構造内の所望の/計画された場所の中に自然に「入り込む」ことで、当該プレートのより良好な位置決めが可能になり、これにより、ケージ沈下の可能性を再び増加させ得るケージに加えられる計画されていない「軸外」荷重の発生が減少する
からである。
【0157】
本明細書に詳述されている方法により、
図13Eに示すような椎体間ケージ装置または元の/ベース幾何学的形状を患者固有の解剖学的構造に適合するようにカスタマイズすることができる。本明細書に提供されている例は、
図13Eに示されている一般的なケージをイヌの頸部脊椎に適合するように修正する。
【0158】
第1の工程では、この例では一般的なケージであるベース装置の平らな上面および下面にある点を選択する。
図13Fは、点を選択するための2つの方法を示す。上側の画像は、ケージの平坦な表面と交差する格子線を選択する格子法を示す。次いで、ケージ表面の幾何学的形状の極限範囲にある点を自動選択する。
図13Fの下側の画像では、ケージの上面および下面にある全ての点を選択する。これにより、正確なカスタマイズをもたらすが、大抵の場合、このような数の点は不必要にカスタマイズプロセスの速度を低下させ、特に3Dプリンタ公差および外科医のバリ取りによってなされる僅かな終板形状変更の予測不可能性を考慮すると、特に良好な結果が得られない。
【0159】
点選択のための別の方法は、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)を介したユーザによるものである。そのような点選択法は、標準化されない結果となる可能性があるため、あまり有利ではない。
【0160】
さらに別の点選択法は、一般的な装置のジオメトリファイルが所定の点位置を含む関連するファイルを有することである。この関連するファイルを一般的なジオメトリファイルと同時にコンピュータプログラムにロードし、当該装置の位置に影響を与える全ての動作もこれらの点に適用する。このように、それらの点は元の装置の幾何学的形状に対するそれらの予め定められた位置を維持する。
【0161】
対向する椎体の終板を、この場合はドーベルマン(イヌ)である患者の頸部脊椎(
図13Gでは濃い領域として示されている)の3D表面再構築から分離する。選択された点を有するケージをケージが2つの終板の間に位置するまで操作する。ケージと終板との僅かな重なりが見込まれる。ケージが1つ以上の平面において著しく大き過ぎる場合、最初のアフィンワープを行ってこれを補正することができる。
図13Hは、隣接する椎骨の2つの終板表面の間にある椎体間頸部ケージの側面を示す(
図13Gを参照)。
図13Hは元の点位置も示す。
【0162】
ケージを椎体終板の間の所望の位置に配置したら、射影した点が終板幾何学的形状に交差するまで点を射影ベクトル(
図13Iにおける濃い矢印)に沿って射影する。交差点を使用して点(
図13Iにおける濃い点)のために新しい「ターゲット位置」を定める。終板と交差しない点のために、最も近い終板点の位置に基づく関数を使用して好適な位置(
図13Iにおける薄い灰色の点)を計算することができる。
【0163】
この場合、動標構線形最適化またはARAPワーピング補間関数が当該ベース装置をカスタマイズするのに適している。この関数は、元の点(
図13Jにおける薄い灰色の部分)のそれらの「ターゲット」位置(
図13Jにおける黒色の部分)への再位置決めに基づいて定める。
【0164】
ワーピング関数を確立したら、この関数をベースモデルに適用してカスタマイズされた装置の幾何学的形状(
図13Jの右側の画像に示されている)を生成する。
図13Kに示すように、カスタマイズされた装置は終板の間隔および幾何学的形状に十分適合する。外科手術中にカスタマイズされた幾何学的形状が当該装置をその所望の位置までガイドするのをどのように助け、かつ外科手術後に当該装置をこの位置に保持するのをどのように助けるかに留意されたい。
【0165】
元のベース幾何学的形状のカスタマイズのための同じ方法を子供用斜頭補正ヘルメットまたは任意の他の3D幾何学的形状のカスタマイズなどの2つの対向していない終板が存在する事例で使用することができる(
図17C~
図17Hおよび
図18A~
図18Eおよび以下の説明を参照)。
【0166】
図14A~
図14Hは、ベースモデルをカスタマイズするためにユーザがアクセスすることができるグラフィカルユーザインタフェース(GUI)のスクリーンショットを示す。
図14A~
図14Hの例では、ベースモデルは、骨折または骨切り術後の固定用プレートに関する。
図14Aは、ユーザが外科手術で使用される一般的なベースプレートのコンピュータモデルおよびこの例ではプレートが取り付けられる骨であるターゲット形状のコンピュータモデルをそこから選択またはアップロードすることができる最初の画面をユーザに示す。
【0167】
図14Bは、選択されたベースプレートが画面の左側に示され、ターゲット骨が画面の右側に示されている、分割された画面配置を示す。
図14Cは、ユーザにプレートが取り付けられる骨折または(今後行われる)骨切り術の部位(1)を選択するための画像および指示を示す。
【0168】
骨の断片が再位置合わせされる骨折/骨切り術の場合、ユーザは、固定されたままである骨折/骨切り術の側面にあるさらなる点(2)を選択する。これは
図14Dに示されている。
図14Eは、ユーザに骨に向かって面する当該装置の表面(底面)にある点(3)を選択するように指示する。この点はプレートの平らな表面になければならない。
【0169】
選択された点に基づいてカスタマイズを実行するコンピュータプログラムは、当該装置の慣性軸/主軸を計算する。N個の点を有する点集合Pの質量中心、すなわち平均μを以下のように計算する。
【数1】
【0170】
行列の境界表示を構成する各3D点からμ
pを除算することによって、ベクトル行列の中心をx,y,z=0,0,0に置く。
【数2】
【0171】
正方行列(SM)を転置される中心に置かれた行列(M)の共分散として計算する。
【数3】
【0172】
SMの固有ベクトル(Evecs)を計算する。
【数4】
【0173】
この行列の固有ベクトル(Evecs1)を右手の法則を用いて確認し、最小の回転角度を有するPC軸の向きを選択する。得られるベクトルは、当該装置の主軸、固有軸または慣性軸である。
【0174】
点(3)の法線ベクトルを(方程式(5)を用いて)計算するか、ユーザによって定められた射影ベクトル、すなわち正規化されたグローバルz軸(0,0,1)を射影ベクトルとして使用する。点p2およびp3を有する三角形ポリゴン内にある点(p1)の法線ベクトル(v
n)は、ベクトルv
12(p2-p1)およびv
13(p3-p1)のクロス積によって与えられる。
【数5】
【0175】
このベクトル(v
n)の大きさは、以下の方程式によって与えられる。
【数6】
【0176】
V
nは、以下の方程式によって単位ベクトル(大きさ=1)に正規化することができる。
【数7】
【0177】
カスタマイズのための一般的なプレートは、
a)当該装置の質量中心であるグローバルx,y,z=0,0,0への平行移動(方程式(1)および方程式(2)と同様)、および
b)点(1)および(3)*-1の法線ベクトルが位置合わせされるような点(3)の周りでの回転
によってグローバル座標系軸に自動的に位置合わせされる。
これは以下の方程式によって達成される。
【数8】
【数9】
(式中、RotMatは、当該装置内の全ての点についてRotMatのドット積を計算する場合に所望の位置合わせを達成する3×3の回転行列である)。すなわち、各点(P
xは当該装置内の任意の所与の点である)について、以下を計算する。
【数10】
【0178】
ユーザはプレートの向きが正しいか否かを尋ねられ、正しくない場合、各点のドット積および回転行列を計算して、プレートをグローバルz軸(方程式(11))内の点(3)の周りで180°回転させる。
【数11】
(式中、θ=180
o*(Pi/180)である(すなわち、θはラジアンである))。
【0179】
ガイド向きがなお正しくない場合、ユーザはグローバル/画面/慣性軸内のx,y,zの周りを回転させて位置を調節することができる。
【数12】
【数13】
(式中、θは、回転のための数値を入力するか、x,y,z回転のための画面スライダバーを調節することによってユーザによって指定される)。次いで、プレートをグローバル座標系と正確に位置合わせする。次いで、ターゲット骨の骨折/骨切り術部位を、グローバル座標系内のプレートに対する所望の位置においてプレートに対して同様の方法を用いて位置合わせする。
図14Fは、ターゲット形状および装置の互いに対する相対的位置決めを確認するためにユーザに表示されるスクリーンショットを示す。
【0180】
プレート、フランジ、ガイドベース表面のためのコアTPSワーピング(
図6、
図7、
図9を参照)
この例では、当該装置のソース点を定める。これらのソース点は元の装置ファイルに付随するファイルに格納されているか、あるいは、当該装置の境界ボックスから計算された標準化された格子によってソース点を定めることができる(
図6Aの605を参照)。さらなる選択肢として、点(3)と同一面内にある点の等距離サブセットとしてソース点を定めることができ、あるいは、グラフィカルユーザインタフェースとの対話を介してユーザがソース点を選択することができる。格子アルゴリズムはPC軸の極限にある点および中間点を含む(
図6Aの605を参照)。
【0181】
これらのソース点を全て、点(3)の法線ベクトルに割り当て、それらの点が骨表面にあるポリゴンと交差するまでtransDist(以下の方程式(14))によって射影する(以下の方程式(15)および方程式(16))。
【数14】
【0182】
ベクトルは、定数k*骨のz軸(方程式(14))境界ボックスの大きさの最大の射影を有するように制約されている(
図6Aの610を参照)。射影した点がターゲット形態に「達し損なう」(例えば、ユーザまたは方程式(14)による射影ベクトルセットの大きさによってターゲット形態に到達しない)場合には、関数を使用してターゲット点を配置する。この関数は、射影ベクトル上の位置とターゲット形態上の射影ベクトルに直交する最近接点との組み合わせである。
【0183】
法線ベクトル(v
n)の交差点(pt
int)および三角形ポリゴンは以下の方程式として記載することができる。
【数15】
(式中、v
nはp
1の法線ベクトルであるか、本明細書の事例と同様に、pt(3)の法線ベクトルであり、aは、3つの角座標(tp
1,tp
2,tp
3)によって与えられる三角形のパラメトリック方程式の同等性を解くことによって、sおよびtと共に見つけられるスカラーの大きさであり、かつaは0<s<1および0<t<1の場合のものである)。
【数16】
【0184】
その中に点が位置する三角形は多くの方法で見つけることができる。境界表示内の全てのポリゴンの同等性を解くことにより答えが得られるが、コンピュータでの計算は非常に非効率的である。コンピュータでの計算においてより効率的な方法は、ターゲット表面にあるどの点がp
1+v
nに最も近いかを計算するための最近接関数(nearest function)を使用することである。この点は多くの三角形の角であろう。次いで、ベクトルが三角形のうちのどれを通るか、およびベクトルと三角形表面との交差点(方程式(16))を決定することができる。これが「ターゲット点」位置である(
図6aの615)。
【0185】
次いで、全てのソース点位置をそれらのターゲット位置に当てはめてワーピング補間関数を計算する。これらは補間関数を確立させることができる公知の点である。この関数は、例えば
図6Bの620に示されているような方程式(17)などの薄板スプライン関数であってもよい。
【数17】
【0186】
薄板スプラインは、ソース(制御)点の間にあるベース部分(装置)点に対するワーピング効果を決定する。薄板スプラインは、ベース部分(装置)点のソース(制御)点からの距離を計算する距離関数である。
【0187】
異なる関数は、ソース点位置の間にあるベース部分(装置)点をどのようにワープするかを制御する。
【0188】
これらの関数は、装置点の新しいすなわちワープされた位置をこの点が制御点からどの位離れているかに応じて計算するものであるため補間関数である。このように、これらの関数は、制御点の間にある装置点の新しい位置を計算することができる。故に、これらの関数はワーピング補間関数と呼ばれる。
【0189】
ベース部分(装置)点に対する関数の結果は、ベース部分点のソース点への近さに従い、この関数によって広げられた空間を通して変化する。従って、本明細書に記載されている関数は、ベース部分とは別個であるソースおよびターゲット点のみに応じてベース部分(装置)自体から抽出される。
【0190】
ワーピング補間関数はベース部分(装置)から抽出されるため、同じターゲット形態に適合させるために異なる装置が必要とされる場合に、同じワーピング補間関数を使用することができる。例えば、骨の断片または切断部分を所望の術後位置に位置決めする冶具は、同じワーピング関数をこれらの部分を所望の位置に適合させるために使用されるプレートとして使用することができる。
【0191】
当該分野における補間という用語の別の使用は、欠損している(骨)領域をどのように置換することができるかを記述するためのものである。この用語の使用では、正常すなわち正しい骨の解剖学的構造のモデルを、異常すなわち欠損している解剖学的構造と重ね合わせるか位置合わせする。次いで、重ね合わせた良好な骨モデルに従って欠損している骨の対向するエッジ間を補間することによって骨の欠損している領域を充填する。そのような例では、補間を使用して、骨の解剖学的構造を用いる補間により異常すなわち欠損している骨の解剖学的構造を補正する。従って、この補間は異常すなわち欠損している解剖学的構造に固有であり、かつ一般化したり別の骨/モデルに適用したりすることができない。
【0192】
ワーピングおよび補間という用語は、当該分野では本開示において記載されているプロセスとは異なるプロセスを記述するためにも使用される。ワーピングおよび補間のこの他の使用では、骨モデルを別の領域において欠損部分のある欠陥を有する患者の骨の領域に適合するように形状を変更すなわち「ワープ」してもよい。このモデルは、例えば骨データベースからの「図譜」骨モデルとして統計学的に定めるか、患者自身の解剖学的構造の反対側が正常であればその解剖学的構造を鏡映することによって定めることができる。
【0193】
次いで、変更した骨モデルを使用して欠陥すなわち欠損している骨を置換することができる。次いで、欠陥すなわち欠損している骨のこの置換を、欠陥すなわち欠損している領域に適合させるために装置をモデリングするための始点として使用してもよい。
【0194】
あるいは、変更した骨モデルを使用して、一般的な装置のデータベースから最も適合する装置を選択するのを支援することもできる。この方法を使用して、本開示に示されているカスタマイズ方法のために一般的な装置すなわちベース部分を選択することができるが、これは本明細書に開示されている方法の必要な部分でも不可欠な部分でもない。
【0195】
当該分野における補間の他の使用は本開示における補間の使用とは異なり、ここでは、ソース(制御)点の間の(ターゲット)空間のワーピングを公知の(ソース)点におけるワープの補間によって計算する。
【0196】
一例として、頭蓋の欠損している領域の場合、変更すなわちワープされた統計学的骨モデルの一部を使用して、カスタム頭蓋の金属もしくはポリマープレートの製造を開始してもよい。そのような事例では、統計学的モデルを使用して、損傷または欠損している骨領域のための有効な置換であるようにプレートが必要とする厚さ、曲率およびアウトライン形状を定める。次いで、統計学的モデルのこの部分を例えばブーリアン交差または減算によって統計学的頭蓋モデルの残りの部分から分離することができる。次いで、コンピュータ支援設計(CAD)方法を使用して、例えばプレートを欠陥周囲の骨に取り付けるためのネジ穴によりフランジを追加することによって、この分離した部分を製造および埋め込みに適したプレートのCADモデルに適合させることができる。これを「ボトムアップ式」のカスタマイズされた装置設計プロセスと呼ぶが、それは当該装置の設計を骨表面または骨表面のモデル形状から開始し、かつこの形状を製造可能な装置になるように適合させるからである。
【0197】
これは、本開示とは異なるワーピングの使用である。本開示では空間の形状を変更するワーピング関数を、骨または既に存在している装置(ベース部分)から抽出される、すなわちそれとは別個の点または測定値に基づいて確立する。次いで、このワーピング関数を前から存在する一般的な医療装置(ベース部分)に適用して、患者またはターゲットの解剖学的構造に適合するこの装置のカスタマイズされた形状を達成する。
【0198】
装置の形状を変更すなわちワープするための別の方法は、空間の剪断すなわちアフィンワープによるものである。これは形状の異なる軸、例えば長さ、幅および深さ軸に適用される異なる倍率によって達成される。形状の長さ、幅および深さの拡大縮小の差により「アフィン」形状の変化が生じる。これは、本開示に記載されている変化よりも単純であり、かつ限られた形状変化である。その理由は、形状ワーピングのアフィン方法がその軸の長さ全体に対して形状の均一な歪みを加えるように各軸内に制約されているからである。
【0199】
ワーピング補間関数を計算したら、各点開始位置について補間関数を解いて元の(ベース)装置の点の新しい(ワープされた)位置を計算する(
図625)。ガイドおよびロッキングプレートのワーピングでは、予め定めた領域(ドリル穴、ネジ穴、切断鋸刃用切断ガイド)は、非剛直変換および拡大縮小ができない(すなわち、そのような領域は平行移動および回転させることはできるが、形状を拡大縮小またはワープすることはできない)。
【0200】
次いで、
図6Cの630、635、640に示すように、ワープされた装置を骨との衝突/交差について確認する(装置の点が骨膜(bone envelope)内に存在する場合、装置点を衝突が解決されるまで、-0.1*transDist(方程式(14))*pt3法線ベクトルだけ(当該装置内の各点からのベクトル減算によって)繰り返し平行移動させる)。
【0201】
次いで、得られたワープされた装置に対して以下の確認を行う。すなわち、a)三角形が有効であるかを確認し、かつb)ユーザに結果(形状、骨からの距離、装置と骨との接触量)に問題ないかを確認するように促す。
図14Gは、提示されているワーピングに対する満足度を確認するためにユーザに表示されるスクリーンショットである。結果を受け入れると、
図14Hに示すようなエクスポートディレクトリウィンドウがポップアップされ、3D印刷のための「.stl」または「.wrl」ファイル形式としてエクスポートされる。
【0202】
骨を0,0,0まで平行移動させた平行移動ベクトルのベクトル加法と、び骨表面点(3)法線をグローバルz軸に対して位置合わせした回転行列の反対のドット積とによって、骨および装置を骨の元の位置および向きに戻す。
【0203】
装置(例えば、副木、矯正器具、ブレース、子供の頭部の測定値に基づく斜頭症ヘルメット、防護服、切断/穴あけガイド、
図11A~
図11Cを参照)のユーザ測定(パラメータ)カスタマイズのためのコア方法
この例では、装置をグローバルx,y,z=0,0,0(装置のx軸=長さ、y軸=幅、z軸=深さである)にある質量中心と位置合わせする(上記方程式(1)~(10)および
図11Aおよび
図11Bを参照)。次いで、
図11Cに示すようにユーザは予め定められ測定値を入力する。本方法は、各測定レベルにおいて予め定められた一般的な装置設計格子をユーザによって定められた測定値に一致するように変更し、放射基底補間フィールドを確立する(
図11Dおよび
図11E)。
【0204】
全ての装置座標点を放射基底補間関数における新しいワープされた位置に変換し、ユーザは結果を確認する(
図11Fおよび
図11G)。次いで、その三角形を確認し、そのモデルを3D印刷または他のコンピュータ製造プロセスのための「.stl」ファイルとしてエクスポートする。
【0205】
装置のパラメトリックカスタマイズのためのコア方法(例えば、パラメトリック曲線を頸部固定プレートまたは髄内(IM)釘に追加する、
図12A~
図12Hを参照)
この例では、本方法は、装置をグローバルx,y,z=0,0,0(装置のx軸=長さ、y軸=幅、z軸=深さである)にある当該装置の質量中心と位置合わせする。次いで、ユーザは、予め定められた曲線パラメータ/測定値を入力する。これらのパラメータは、曲線半径の形態または所望の曲線周囲上の3点の形態、またはその上に当該装置の2つの端部が置かれている平坦な表面/平面からの曲線の中間(高い)点における距離の形態であってもよい。
【0206】
定められた曲線パラメータを使用して、(2つの同時曲線のための)円弧または湾曲した平面のいずれかを生成し、これを使用してターゲット点位置(
図12Eおよび
図12Fを参照)を生成する。全ての装置座標点をソースおよびターゲット点によって決定されるワーピング補間関数によって新しいワープされた位置に変換する(
図12G)。ユーザは結果(
図12H)を確認する。このモデルを3D印刷適合性について確認し(交差する三角形、非多様体エッジ、境界表面にある穴を確認して固定し)、このモデルを3D印刷のための「.stl」としてエクスポートする。
【0207】
印刷適合性についての3Dモデルのこの確認は、仮想試験、例えば有限要素解析(FEA)によるモデルの確認とは異なる。このモデルの確認は、製造されたモデルが、このモデルが印刷可能でないことを意味するどんな表面(三角形)誤差もこのモデルが含まないという点で3D印刷に適しているという純粋な確認である。この確認を行ったら、このモデルを仮想試験のためにボリュームメッシュしてFEAにも入力することができる。但し、モデルのFEA試験は新規なものではなく、本開示の固有部分ではない。
【0208】
装置の非構造化ソースおよびターゲット点(真の3D、すなわち、平面でない曲線または格子構造化点)によるカスタマイズのためのコア方法(例えば、椎体間ケージのカスタマイズ、
図13A~
図13Kを参照)
当該装置をグローバルx,y,z=0,0,0(装置のx軸=長さ、y軸=幅、z軸=深さである)にある質量中心と位置合わせする。ターゲット形態をグローバルx,y,z=0,0,0(装置のx軸=長さ、y軸=幅、z軸=深さである)にある質量中心と位置合わせする。装置およびターゲットが所望どおりに位置合わせされ/装置ソース点のターゲット形態への有効な射影を達成するように、装置/ターゲット位置および位置合わせを必要に応じて調節する(
図13Hを参照)。
【0209】
ソース点をターゲット形態と交差するまで射影する。これらの点のこの射影は任意の向きであってもよく、すなわち任意の方向の射影ベクトルを用いてもよい。射影ベクトルとターゲット形態との交差点はターゲット点位置である。射影した点がターゲット形態に「達し損なう」(例えば、ユーザまたは方程式(11)による射影ベクトルセットの大きさによってターゲット形態に到達しない)場合、関数を使用してターゲット点を配置する。この関数は、射影ベクトル上の位置とターゲット形態上の射影ベクトルに直交する最近接点との組み合わせである(
図13Iを参照)。
【0210】
ワーピング補間関数を、例えば動標構線形最適化またはARAP法を用いて形成する。全ての装置座標点を補間関数によって新しいワープされた位置に変換する(
図13Jを参照)。ユーザは結果(
図13Kを参照)を確認し、このモデルを3D印刷適合性について確認し、次いで、このモデルを3D印刷のための「.stl」またはCAMのための他の好適なファイルとしてエクスポートする。
【0211】
装置の非構造化ソースおよびターゲット点(真の3D、すなわち、平面でない、曲線または格子構造化点)によるカスタマイズ(例えば、子供の頭部の表面再構築による子供用斜頭症補正ヘルメットのカスタマイズ、
図18A~
図18Eを参照)のためのコア方法
当該装置をグローバルx,y,z=0,0,0(装置のx軸=長さ、y軸=幅、z軸=深さである)にある質量中心と位置合わせする。この場合、当該装置は、当該ベース装置として「正常な」子供の頭部の形状を有する斜頭症「ヘルメット」である。この「正常な」頭部形状は、子供の頭部形状のデータベースから取得することができ、それは斜頭の子供の頭部形状に年齢および性別的に一致し、「ソース」形態としての役割を果たす。「ターゲット」形態をグローバルx,y,z=0,0,0(装置のx軸=長さ、y軸=幅、z軸=深さである)にある質量中心と位置合わせする。本実施形態では、ターゲット形態は子供の斜頭形状である。
【0212】
この頭部形状は、サーフェススキャン(構造化照明、写真測量またはレーザ)、CTもしくはMRIスキャンなどの多くの異なる方法を用いて、あるいは一般的な頭部形状の形状を長さまたは外周などの測定されたパラメータに一致するように調節すること(この方法に関する上記説明を参照)によって取得することができる。
【0213】
図18Aは、斜頭すなわちターゲット頭部形状とグローバル座標系との位置合わせを示す。耳の僅かに前方にある黒色の点は座標系x,y,z=0,0,0を示す(
図18A)。本実施形態では、z=0よりも大きい点のみが必要とされる(これらは
図18Aでは濃い灰色で示されている)。装置およびターゲットが所望どおりに位置合わせされ/装置ソース点のターゲット形態への有効な射影を達成するように、ターゲットの位置および位置合わせを必要に応じて調節する。
【0214】
図18Bに示すように、ソース点を
図18Aに示す濃い灰色の点の内側にある点からターゲット形態と交差するまで半径方向に射影する。
図18Bは、放射状射影のための点を耳の僅かに前方であってその上にある大きな点として示す。この点の位置を多くの異なる方法を用いて決定することができる。本実施形態では、
図18Aに示す多数の小さい濃い灰色の点に当てはめられる球体の中心点を使用した。より大きな黒色の点は射影した点と表面との交差点である。射影ベクトルとターゲット形態との交差点はターゲット点位置である。
【0215】
射影した点がターゲット形態に「達し損なう」(例えば、ユーザまたは方程式(11)による射影ベクトルセットの大きさによってターゲット形態に到達しない)事例では、関数を使用してターゲット点を配置する。この関数は、射影ベクトル上の位置とターゲット形態上の射影ベクトルへの最近接点との組み合わせである。
【0216】
正常な頭部形態のために、これらの点がソース点を表している状態で(当該装置はこの場合正常な頭部形状を有するため)、このプロセスを繰り返す(
図18Cを参照)。
【0217】
ARAP法を用いてワーピング補間関数を形成する。全ての装置座標点を補間関数によって新しいワープされた位置に変換する。斜頭症ヘルメットのワープされた(頭蓋の骨癒合頭部形状に適合させた)形状が
図18Dに示されている。ヘルメットの2つの半部分は、耳の上の「隙間」を跨ぐ調節可能なストラップによって一緒に保持されていてもよい。これらのストラップにより、ヘルメットにおいてある程度の調節が可能になる。
【0218】
ユーザは結果を確認し、このモデルを3D印刷適合性について確認し、次いで、このモデルを3D印刷のための「.stl」またはCAMのための他の適当なファイル形式としてエクスポートする。
【0219】
本明細書に記載されている斜頭症補正ヘルメットなどの補正の実施形態では、本明細書に記載されている方法により、ベース/一般的な装置とワープされた装置が同じ点の数および接続性を維持しているため、開始および正常な形状の極限間の中間点を実現することができる。補正装置を何ヶ月間も使用することができる例では、ソース形状とターゲット形状との間の多くの装置形状を製造して、患者の形態をより有効かつ快適にガイドすることが望ましい場合がある。
図18Eはこの例を示し、上側(濃い灰色)の装置は開始頭部およびヘルメット形状を表し、かつ下側(薄い灰色)の装置は正常な頭部およびヘルメット形状を表している。
図18Eにおける真ん中の形状は、これらの2つ(開始および終了)の形状間の途中の頭部およびヘルメット形状を表している。
【0220】
図18Eに示すヘルメットなどの補正装置では、製造されるヘルメットの第1の形状は、例えば正常な形状の4分の1であってもよく(すなわち、開始形状と正常な形状との間で4分の1だけ変形させたもの)、第2のヘルメットは(
図18Eの真ん中の形状によって示されるような)正常な形状の2分の1であってもよく、第3のヘルメットは正常な形状の4分の3であってもよく、第4のヘルメットは
図18Eの一番下に示されている正常な形状であってもよい。快適さおよび頭蓋に加えられる圧力の程度は、頭部の形状が変わった際に取り換えることができる可変な厚さ、密度および剛性フォームの使用によって制御することができる。
【0221】
別の実施形態では、本明細書に開示されている方法を使用して、例えばコンピュータ制御された切断装置を用いて、正常な形状のヘルメットの内部に取り付けることができる異なる形状のフォームブロックを計算および切断することができる。これらのフォームブロックは異なる圧力を頭蓋に加えて、形状補正をガイドする。
【0222】
本開示の方法の用途の例
本開示の方法は、多くの異なる産業において多くの用途を有し得る。医療分野に関しては、少なくとも以下の用途が想定される。
a)骨断片の再位置合わせを行わないか最小の骨断片の再位置合わせを行うプレートによる骨折固定
例:1)中手骨の骨折および小さいプレートによる固定、および
例:2)下顎関節頭の骨折
b)骨断片の再位置合わせを行う骨折または骨切り術後のプレートによる固定
例:1)
図6A~
図6Cに示す橈骨の事例
c)骨断片の再位置合わせを行わないか最小の骨断片の再位置合わせを行う髄内(IM)釘による骨折固定
例:1)頭頸部構成要素を含む大腿の髄内(IM)釘、および
例:2)上腕骨のIM釘
d)骨断片の再位置合わせを行う髄内(IM)釘による骨折または骨切り術後の固定
例:1)大腿の髄内(IM)釘、および
例:2)上腕骨のIM釘
e)単一の関節表面置換
例:1)股関節の大腿骨頭、および
2)上腕骨の頭部
f)関節全置換術
例:1)股関節
例:2)膝
例:3)足首、および
例:4)肩
g)椎体間スペーサ
例:1)頸部/胸部/腰部の椎体間スペーサ
h)外部副木、支持装具または矯正器具
例:1)指用副木1、指用副木2
例:2)アンクルブレース、および
例:3)足矯正器具
i)フランジを有するプレートまたはカップ
例:1)フランジを有する寛骨臼カップ、および
例:2)フランジを有するプレート
j)人工補綴物ソケット
k)斜頭症ヘルメット
【産業上の利用可能性】
【0223】
記載されている構成は、コンピュータ支援設計およびコンピュータ支援製造産業ならびに特に医学、生物医学、自動車および航空産業に適用可能である。
【0224】
上記は本発明のいくつかの実施形態のみについての説明であるが、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、それらに対して修正および/または変形を行うことができ、これらの実施形態は例示であって本発明を限定するものではない。
【0225】
本明細書の文脈では、「~を備える」という用語およびその関連する文法構造は、「~を主に含むが必ずしもそれのみを含むものではない」または「~を有する」または「~を含む」を意味し、「~のみからなる」を意味するものではない。「~を備え」および「~を備えて」などの「~を備える」の変形は、それに応じて変わる意味を有する。
【0226】
本明細書全体を通して使用されるように、特に定めがない限り、一般的または関連する対象物を記述するための序数形容詞の「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」などの使用は、それらの一般的または関連する対象物の異なる例が参照されていることを示し、そのように記載されている対象物が、時間的、空間的、ランク付けまたはあらゆる他の方法において所与の順序または配列で提供または位置決めしなければならないということを意味するものではない。
【0227】
本発明について具体例を参照しながら説明してきたが、本発明は多くの他の形態で具体化することができることが当業者によって理解されるであろう。