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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】畦塗り機
(51)【国際特許分類】
   A01B 35/00 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
A01B35/00 B
A01B35/00 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019095953
(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2020188722
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】田副 隼
(72)【発明者】
【氏名】大村 英昭
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-117951(JP,A)
【文献】特開2009-142152(JP,A)
【文献】特開2005-151814(JP,A)
【文献】特開2001-016906(JP,A)
【文献】特開2015-015936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 35/00 - 35/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車に連結されて使用される畦塗り機であって、
土を耕耘して盛り上げる盛土体と、
この盛土体による盛土を締め固めて畦を形成する畦形成体と、
前記盛土体による盛土の側方への移動を規制するサイドカバー手段とを備え、
前記サイドカバー手段は、
互いに非平行状に配置され、互いに長さが異なる上下回動可能な2本の上側アーム及び下側アームと、
これら2本の上側アーム及び下側アームによって支持されたサイドカバー体とを有する
ことを特徴とする畦塗り機。
【請求項2】
走行車に連結されて使用される畦塗り機であって、
土を耕耘して盛り上げる盛土体と、
この盛土体による盛土を締め固めて畦を形成する畦形成体と、
前記盛土体による盛土の側方への移動を規制するサイドカバー手段と、
前記盛土体を覆う盛土体カバー体とを備え、
前記サイドカバー手段は、
互いに非平行状に配置され、互いに長さが異なる上下回動可能な2本の上側アーム及び下側アームと、
これら2本の上側アーム及び下側アームによって支持されたサイドカバー体とを有し、
前記上側アーム及び前記下側アームの各前端部は、前記盛土体カバー体に回動可能に取り付けられ、
前記上側アーム及び前記下側アームの各後端部は、前記サイドカバー体に回動可能に取り付けられている
ことを特徴とする畦塗り機。
【請求項3】
盛土体の前方に位置する畦上面削り体を備え、
走行車によって畦塗り機が持ち上げられた場合において、サイドカバー体が水平姿勢から前下りの傾斜姿勢へと姿勢変更する際の前方移動量は、前記サイドカバー体が前記畦上面削り体に干渉しない程度に小さい
ことを特徴とする請求項1又は2記載の畦塗り機。
【請求項4】
2本の上側アーム及び下側アームは、平面視で重なるように配置されている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の畦塗り機。
【請求項5】
サイドカバー手段は、上側アーム又は下側アームとの係合によりサイドカバー体の下動を規制するストッパー体を有する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の畦塗り機。
【請求項6】
サイドカバー体は、畦上面上の障害物に当接した際に略平行移動により上方に逃げる
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一記載の畦塗り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車に連結されて使用される畦塗り機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された畦塗り機が知られている。この従来の畦塗り機は、盛土体(前処理体)による盛土の側方への移動を規制するサイドカバー体を平行リンク(互いに平行で同じ長さの2本のアーム)により上下動自在に支持して、当該サイドカバー体の高さ調整が自動的に行われるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-46508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のような畦塗り機では、例えば盛土体の耕耘深さを深くした場合には、サイドカバー体が前下りの傾斜姿勢となるため、サイドカバー体が畦上面に追従せず、盛土体による盛土が側方へ漏れるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、盛土体による盛土が側方へ漏れることを防止できる畦塗り機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の畦塗り機は、走行車に連結されて使用される畦塗り機であって、土を耕耘して盛り上げる盛土体と、この盛土体による盛土を締め固めて畦を形成する畦形成体と、前記盛土体による盛土の側方への移動を規制するサイドカバー手段とを備え、前記サイドカバー手段は、互いに非平行状に配置され、互いに長さが異なる上下回動可能な上側アーム及び下側アームと、これら上側アーム及び下側アームによって支持されたサイドカバー体とを有するものである。
【0007】
請求項2記載の畦塗り機は、請求項1記載の畦塗り機において、盛土体の耕耘深さを深くした場合でもサイドカバー体が水平姿勢を維持し、かつ、走行車によって畦塗り機が持ち上げられた場合には前記サイドカバー体が水平姿勢から前下りの傾斜姿勢へと姿勢変更するが、この際における前記サイドカバー体の前方移動量が小さいものである。
【0008】
請求項3記載の畦塗り機は、請求項2記載の畦塗り機において、盛土体の前方に位置する畦上面削り体を備え、走行車によって畦塗り機が持ち上げられた場合において、サイドカバー体が水平姿勢から前下りの傾斜姿勢へと姿勢変更する際の前方移動量は、前記サイドカバー体が前記畦上面削り体に干渉しない程度に小さいものである。
【0009】
請求項4記載の畦塗り機は、請求項1ないし3のいずれか一記載の畦塗り機において、盛土体を覆う盛土体カバー体を備え、上側アーム及び下側アームの各前端部は、前記盛土体カバー体に回動可能に取り付けられ、前記上側アーム及び前記下側アームの各後端部は、サイドカバー体に回動可能に取り付けられているものである。
【0010】
請求項5記載の畦塗り機は、請求項1ないし4のいずれか一記載の畦塗り機において、サイドカバー手段は、上側アーム又は下側アームとの係合によりサイドカバー体の下動を規制するストッパー体を有するものである。
【0011】
請求項6記載の畦塗り機は、請求項1ないし5のいずれか一記載の畦塗り機において、サイドカバー体は、畦上面上の障害物に当接した際に略平行移動により上方に逃げるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、盛土体による盛土が側方へ漏れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る畦塗り機の平面図である。
図2】同上畦塗り機の部分平面図である。
図3】同上畦塗り機の側面図(標準作業状態)である。
図4】同上畦塗り機の側面図(耕耘深さを深くした状態)である。
図5】同上畦塗り機の側面図(持ち上げ状態)である。
図6】(a)及び(b)は、いずれも平行リンクを用いた比較例の側面図である。
図7】本発明の第2の実施の形態に係る畦塗り機の側面図(標準作業状態)である。
図8】同上畦塗り機の側面図(耕耘深さを深くした状態)である。
図9】同上畦塗り機の側面図(持ち上げ状態)である。
図10】本発明の第3の実施の形態に係る畦塗り機の側面図(標準作業状態)である。
図11】同上畦塗り機の側面図(耕耘深さを深くした状態)である。
図12】同上畦塗り機の側面図(持ち上げ状態)である。
図13】同上畦塗り機の側面図(障害物を回避した状態)である。
図14】同上畦塗り機における2本のアームの回動支点の軌跡を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の実施の形態について図1ないし図6を参照して説明する。
【0015】
図中の1は畦塗り機で、この畦塗り機1は、走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結されて使用されるものである。つまり、畦塗り機1は、トラクタの後部に連結され、このトラクタの前進走行により進行方向(前方)に移動しながら畦塗り作業(畦修復作業)をするものである。ただし、圃場の隅部では、畦塗り機1は、リターン作業状態に設定されることで、トラクタのバック走行により畦塗り作業を行うことが可能である。なお、図1図3等に示す方向を当該畦塗り機1の前後、左右、上下の方向とする。
【0016】
トラクタは、図示しないが、トラクタ本体の後部に作業機連結部である3点リンク部(油圧式の作業機装着装置)が設けられている。そして、その3点リンク部にクイックカプラを介して畦塗り機1が連結され、当該畦塗り機1が3点リンク部の作動に基づいて昇降する。つまり、トラクタは、畦塗り機1を昇降させることが可能な作業機連結部である3点リンク部を後部に備えており、例えば圃場の隅部や圃場間での移動時等において、畦塗り機1は3点リンク部の上方回動によって所定の高さ位置(持ち上げ位置)まで持ち上げられ、前傾姿勢(例えば25°前傾した姿勢)となる。
【0017】
畦塗り機1は、図1ないし図3等に示すように、トラクタの後部の3点リンク部に脱着可能に連結された機体2と、所定方向に回転しながら畦(元畦)の上面を削る畦上面削り体3と、この畦上面削り体3の後方で所定方向に回転しながら田面及び畦(元畦)の土を耕耘して盛り上げる盛土体4と、この盛土体4の後方で所定方向に回転しながら盛土体4による盛土を締め固めて畦(新畦)を形成する畦形成体5とを備えている。なお、畦上面削り体3、盛土体4及び畦形成体5によって、作業手段6が構成されている。
【0018】
畦形成体5は、盛土を締め固めて傾斜状の畦側面を形成する截頭円錐状の畦側面形成部(ディスク)8と、盛土を締め固めて水平状の畦上面を形成する円筒状の畦上面形成部(上面ローラ)9とを有している。
【0019】
また、畦塗り機1は、畦上面削り体3を覆う削り体カバー体11と、盛土体4を覆う盛土体カバー体12と、畦形成体5の畦側面形成部8を覆う畦形成体カバー体13とを備えている。そして、盛土体カバー体12の右側の側部には、所望量の盛土が畦上面形成部9に供給されるように盛土体4による盛土の側方(右側方)への移動を規制するサイドカバー手段15が設けられている。
【0020】
機体2は、トラクタの後部の3点リンク部に脱着可能に連結された機枠21を有し、この機枠21の軸保持部22によって入力軸23が回転可能に保持されている。入力軸23はトラクタのPTO軸にジョイントを介して接続され、この入力軸23に入力された動力に基づいて作業手段6が作動する。機枠21には、その作業手段6を支持した可動機枠25が連結手段26を介して連結され、この可動機枠25はシリンダ27の作動により機枠21に対して左右方向に回動する。また、可動機枠25には、畦上面削り体3、盛土体4及び畦形成体5等のほか、方向輪28が設けられている。
【0021】
畦上面削り体3は、可動機枠25の前端側のチェーンケース部29に設けられた回転軸31と、この回転軸31に設けられた複数の削り爪32とを有している。そして、図3から明らかなように、畦上面削り体3は、側面視で盛土体4の前方近傍に位置する。つまり、畦上面削り体3の削り爪32と盛土体4の耕耘爪37とが互いに近接して位置する。
【0022】
盛土体4は、可動機枠25のチェーンケース部30に設けられた回転軸(耕耘軸)36と、この回転軸36に設けられた複数の耕耘爪37とを有している。そして、チェーンケース部30は、後端側の回動支点33、つまり伝動軸34の軸芯を中心として前端側が昇降するように上下回動可能となっており、このチェーンケース部30の中間部には、盛土体4の耕耘深さを調整するための調整手段(耕深調整手段)38が連結されている。また、チェーンケース部30の前端部には取付パイプ部41が立設され、この取付パイプ部41に盛土体カバー体(耕耘部カバー)12のフレーム部42が取り付けられている。なお、盛土体カバー体12は、フレーム部42と、このフレーム部42によって支持されたカバー本体部44と、このカバー本体部44の側面に取り付けられた取付板部10とを有している。
【0023】
調整手段38は、上端部にハンドル39を有し、作業者はハンドル39の回転操作により盛土体4の耕耘深さを調整することが可能である。つまり、ハンドル39の回転操作に基づいて盛土体4が盛土体カバー体12、畦上面削り体3等とともに回動支点33を中心として上下回動し、その結果、盛土体4の畦形成体5に対する上下方向に関する位置が変化して盛土体4の耕耘深さが設定される。
【0024】
ここで、図3は、盛土体4の耕耘深さが標準に設定された標準作業状態を示す図であり、この状態では、盛土体4の下端位置は、畦形成体5の下端位置と同じか、それよりも若干上方に位置する。図4は、盛土体4の耕耘深さが標準よりも深く設定された状態を示す図であり、この状態では、盛土体4の下端位置は、畦形成体5の下端位置よりも下方に位置する。
【0025】
サイドカバー手段15は、互いに非平行状に配置され、互いに長さが異なる上下回動可能な長手状の2本の上側アーム51及び下側アーム52と、これら2本の上側アーム51及び下側アーム52によって支持され、盛土体カバー体12よりも畦側に位置する長手状で板状をなすサイドカバー体(カバー板)53とを有している。なお、互いに非平行状に配置された長さの異なる2本のアーム(回動アーム)51,52は、回動範囲内において互いに平行に位置する場合がある。
【0026】
そして、このサイドカバー手段15では、上側アーム51が下側アーム52よりも短く形成されているが、上側アーム51の長手方向長さ寸法は、下側アーム52の長手方向長さ寸法の半分よりも長い。
【0027】
また、上側アーム51及び下側アーム52の各前端部は、盛土体カバー体12の取付板部10にそれぞれ回動支点56,57を中心として回動可能に取り付けられ、かつ、上側アーム51及び下側アーム52の各後端部は、サイドカバー体53の前後方向中間部、すなわち例えば前後方向の中央付近にそれぞれ回動支点58,59を中心として回動可能に取り付けられている(図3参照)。それゆえ、サイドカバー体53は、盛土体カバー体12に対する2本のアーム51,52の上下回動に基づいて、姿勢変更しながら盛土体カバー体(この盛土体カバー体に対して位置関係が変化しない盛土体)12に対して上下動する。
【0028】
サイドカバー体53は、例えば畦上面に沿った水平姿勢で前後方向に長手方向を有する略矩形板状をなすもの(具体的には例えば略矩形の板状部材の上下端部及び前端部を補強のために折り曲げた略板状をなすもの)で、このサイドカバー体53の前端部下側が湾曲状に形成されている。また、図3に示す標準作業状態では、サイドカバー体53は、水平姿勢(サイドカバー体53の下端縁が水平な畦上面に沿って位置する姿勢)となって畦上面に追従する。そして、図3に示されるように、側面視で、上側アーム51の後端部の回動支点58の下方(真下)に下側アーム51の後端部の回動支点59が位置する。
【0029】
また、サイドカバー体53の後端部には、弾性変形可能な弾性板であるゴム板61を介して板状の可動カバー体62が左右方向に回動可能に設けられている。この可動カバー体62のサイドカバー体53に対する角度は、角度調整板63によって調整可能となっている。つまり、角度調整板63の前端側は、サイドカバー体53に突設された前取付板64にピン65を介して取り付けられ、かつ、角度調整板63の後端側は、可動カバー体62に突設された後取付板66にピン67を介して取り付けられている。そして、作業者は、ピン65,67を挿入する取付孔68の選択により可動カバー体62の角度を調整することが可能である。
【0030】
次に、上記畦塗り機1の作用等を説明する。
【0031】
畦塗り機1を使用して畦塗り作業をする場合、通常は図3に示す標準作業状態に設定して作業を行う。
【0032】
この図3に示す標準作業状態では、サイドカバー手段15のサイドカバー体(土漏れ防止部材)53は、畦上面に載置された状態で水平姿勢となってその畦上面に追従しながら、盛土体4による盛土の側方への移動を規制する。
【0033】
その結果、所望量の盛土が畦形成体5の畦上面形成部9に供給され、これにより、強固な所望硬さの畦上面が形成される。
【0034】
ここで、例えば図4に示すように、ハンドル39の操作によりチェーンケース部30を下方回動させて盛土体4の耕耘深さを深くした場合であっても、サイドカバー体53は水平姿勢(略水平姿勢を含む)を維持する。つまり、盛土体4の耕深を深くした場合には、サイドカバー体53は、2本のアーム51,52の上方回動に基づいて、水平姿勢を維持するように盛土体カバー体(盛土体4)12に対して上動する。なお、ここでいう水平姿勢には、厳密な意味での水平な姿勢には限定されず、畦上面に対して若干傾斜(例えば水平方向に対する傾斜角度が5°以下)した略水平姿勢(図11に示すような姿勢)も含まれる。
【0035】
このため、図6(a)の如く平行リンク(互いに平行で同じ長さの2本のアームa,b)でサイドカバー体53を支持した構成では、サイドカバー体53が畦上面に追従せず、これらサイドカバー体53と畦上面との間に所定以上の大きな隙間Sができて盛土が側方へ漏れるという問題が生じ得るが、本実施の形態ではそのような問題が生じない。よって、所望量の盛土を畦形成体5の畦上面形成部9に供給できる。
【0036】
また、例えば図5に示すように、トラクタの3点リンク部によって畦塗り機1の全体が所定の高さ位置まで持ち上げられた場合には、サイドカバー体53は、盛土体カバー体12に対して下動して水平姿勢から前下りの傾斜姿勢へと姿勢変更するが、この際におけるサイドカバー体53の前方移動量Aが小さい。つまり、この前方移動量Aは、傾斜姿勢のサイドカバー体53の前端部が前方の畦上面削り体(前方部材)3に干渉しない程度に小さい。
【0037】
このため、図6(b)の如く平行リンク(互いに平行で同じ長さの2本のアームa,b)でサイドカバー体53を支持した構成では、サイドカバー体53の前方移動量Bが大きく、サイドカバー体53が畦上面削り体3に接近して干渉するという問題が生じ得るが、本実施の形態ではそのような問題が生じない。すなわち、サイドカバー体53の前方移動量Aは、図6(b)における前方移動量Bよりも小さく(例えばAはBの半分以下)、それゆえ、サイドカバー体53と畦上面削り体3との干渉を防止できる。
【0038】
なお、図5に示す持ち上げ状態では、サイドカバー体53は、前下りの傾斜姿勢となって下限位置(最下げ位置)に位置するが、このサイドカバー体53の下動は、上側アーム51の後端部が下側アーム52に当接することで規制されている。
【0039】
したがって、上述した畦塗り機1によれば、盛土体4の耕耘深さを深くした際にサイドカバー体53が畦上面に追従せず盛土体4による盛土が側方へ漏れてしまうことを防止でき、かつ、トラクタの3点リンク部で畦塗り機1を持ち上げた際にサイドカバー体53が畦上面削り体3に干渉することを防止できる。
【0040】
また、互いに長さが異なる非平行状の上側アーム51及び下側アーム52の各前端部が盛土体カバー体12に回動可能に取り付けられ、かつ、それら上側アーム51及び下側アーム52の各後端部がサイドカバー体53に回動可能に取り付けられているため、盛土の側方への漏れを適切に防止でき、かつ、サイドカバー体53と畦上面削り体3との干渉を適切に防止できる。
【0041】
なお、上記第1の実施の形態では、上側アーム51が下側アーム52よりも短い構成について説明したが、例えば図7ないし図9に示す第2の実施の形態の如く、上側アーム51が下側アーム52よりも長い構成としてもよい。
【0042】
この第2の実施の形態の構成では、下側アーム52が上側アーム51よりも短く形成されているが、下側アーム52の長手方向長さ寸法は、上側アーム51の長手方向長さ寸法の半分よりも長い。また、図9における前方移動量Aもサイドカバー体53が畦上面削り体3に干渉しない程度に小さい。
【0043】
そして、第2の実施の形態でも、盛土体4による盛土が側方へ漏れることを防止でき、かつ、サイドカバー体53が畦上面削り体3に干渉することを防止できる等、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0044】
また、上記第1、2の実施の形態では、上側アーム51の後端部が下側アーム52に当接(係合)することでサイドカバー体53の下動が規制される構成について説明したが、例えば図10ないし図14に示す第3の実施の形態の如く、下側アーム52の前端部がピン状のストッパー体71に当接(係合)することでサイドカバー体53の下動が規制される構成でもよい。ストッパー体71は、盛土体カバー体12の取付板部10に突設されている。なお、図示しないが、下側アーム52ではなく上側アーム51の前端部がストッパー体に当接(係合)することにより、サイドカバー体53の下動が規制される構成とすることも可能である。
【0045】
この第3の実施の形態では、第1の実施の形態と同様、上側アーム51が下側アーム52よりも短い構成であり、また、図12における前方移動量Aもサイドカバー体53が畦上面削り体3に干渉しない程度に小さい。
【0046】
また、第3の実施の形態では、上側アーム51及び下側アーム52の各後端部は、サイドカバー体53の前後方向中間部、すなわち例えば前後方向中央部よりも後側の部分にそれぞれ回動支点58,59を中心として回動可能に取り付けられている。
【0047】
図14に示す参考図は、それら後側の2つの回動支点58,59の軌跡を示すものであり、この参考図からも明らかなように、サイドカバー体53が下側にある場合(ストッパー体71の近接位置)は角度変化が比較的大きいが、サイドカバー体53が少し上動した状態になると角度変化が小さくなる(例えば1°以下となる)。また、上側アーム51の回動支点58の軌跡と下側アーム52の回動支点58の軌跡とが似ている部分が存在する。
【0048】
それゆえ、上記第1、2の実施の形態では、サイドカバー体53の後側が持ち上がらずに、畦上面に障害物があっても上方に逃げることができないが、この第3の実施の形態では、サイドカバー体53の回動範囲の下側においては、そのサイドカバー体53は畦上面に追従するように盛土体カバー体12に対して動くが、例えば畦上面上の障害物(例えば図13に示す石等の障害物O)に当接してそれ以上に持ち上がると、当該サイドカバー体53は平行リンクに似た動き(略平行移動)によって上方へ逃げることができる(図13参照)。
【0049】
そして、第3の実施の形態でも、盛土体4による盛土が側方へ漏れることを防止でき、かつ、サイドカバー体53が畦上面削り体3に干渉することを防止できる等、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0050】
なお、例えば図示しないが、第1、2の実施の形態におけるサイドカバー手段が、上側アーム又は下側アームとの係合によりサイドカバー体の下動を規制するストッパー体を有してもよい。
【0051】
また、例えば第3の実施の形態において、上側アーム51を下側アーム52よりも長く形成することも可能である。
【0052】
さらに、例えば図示しないが、2本のアームの各前端部を盛土体カバー体のフレーム部に取り付けるようにしてもよい。
【0053】
また、調整手段38は、ハンドル39を有した手動式のものには限定されず、例えば図示しないが、電動または油圧のアクチュエータで調整を行うようにしてもよい。
【0054】
なお、本発明のいくつかの実施の形態及びその変形例について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、前記各実施の形態及び各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 畦塗り機
3 畦上面削り体
4 盛土体
5 畦形成体
12 盛土体カバー体
15 サイドカバー手段
51 上側アーム
52 下側アーム
53 サイドカバー体
71 ストッパー体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14