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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】振れ止め装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/00 20060101AFI20220915BHJP
   F16B 1/00 20060101ALI20220915BHJP
   F16M 13/02 20060101ALI20220915BHJP
   F24F 1/0047 20190101ALI20220915BHJP
【FI】
E04B9/00 F
F16B1/00 A
F16M13/02 C
F24F1/0047
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019190766
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2021067006
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-06-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398034319
【氏名又は名称】エヌパット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】生野 真
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-152053(JP,A)
【文献】特開平10-132373(JP,A)
【文献】特開平10-82556(JP,A)
【文献】特開平7-19590(JP,A)
【文献】実開昭63-187615(JP,U)
【文献】実開昭57-24415(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00
F16B 1/00
F16M 13/02
F24F 1/0047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱形形状を有し、左右両側面にボルト部材を取り付けるための取付片が設けられた天井吊り下げ物に装着される振れ止め装置であって、
前記天井吊り下げ物の上面に沿うように配置され、左右両端部が前記天井吊り下げ物の左右両側面よりも更に左右方向に突出して前記取付片の上方位置まで延設され、当該左右両端部に前記ボルト部材の上部を挿通する挿通部が形成された連結部材と、
前記取付片に取り付けられた前記ボルト部材の上部が前記挿通部に挿通された状態で前記ボルト部材の上部を前記連結部材に連結固定する固定部材と、
を備え、
前記固定部材は、前記連結部材を前記ボルト部材の軸方向に沿って押圧することにより、前記連結部材を前記天井吊り下げ物の上面に押し付けた状態で固定することを特徴とする振れ止め装置。
【請求項2】
前記連結部材の左右両端部には、前記天井吊り下げ物を天井構造から吊り下げた状態に支持する吊りボルトを取り付けるための取付部が更に設けられることを特徴とする請求項1に記載の振れ止め装置。
【請求項3】
前記取付部は、防振部材を備えており、前記防振部材を介して前記吊りボルトを前記連結部材に取り付けることを特徴とする請求項2に記載の振れ止め装置。
【請求項4】
前記吊りボルトの上端部には、前記天井構造に取り付けられたボルトに固定するための天井設置金具が予め取り付けられることを特徴とする請求項2又は3に記載の振れ止め装置。
【請求項5】
前記天井吊り下げ物の上面に押し付けられた状態の前記連結部材が前記天井吊り下げ物に対して左右方向に相対変位することを規制する第1規制部材、
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の振れ止め装置。
【請求項6】
前記天井吊り下げ物の上面に押し付けられた状態の前記連結部材が前記天井吊り下げ物に対して左右方向に直交する前後方向に相対変位することを規制する第2規制部材、
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の振れ止め装置。
【請求項7】
箱形形状を有し、左右両側面の複数箇所にボルト部材を取り付けるための取付片が設けられた天井吊り下げ物に装着される振れ止め装置であって、
前記天井吊り下げ物の上面に沿うように配置され、左右両端部が前記天井吊り下げ物の左右両側面よりも更に左右方向に突出して前記取付片の上方位置まで延設され、当該左右両端部に前記ボルト部材の上部を挿通する挿通部が形成された第1連結部材と、
前記第1連結部材と平行な状態で前記天井吊り下げ物の上面に沿うように配置され、左右両端部が前記天井吊り下げ物の左右両側面よりも更に左右方向に突出して前記取付片の上方位置まで延設され、当該左右両端部に前記ボルト部材の上部を挿通する挿通部が形成された第2連結部材と、
前記取付片に取り付けられた前記ボルト部材の上部が前記第1連結部材の左右両端部に形成された前記挿通部に挿通された状態で前記ボルト部材の上部を前記第1連結部材に連結固定する第1固定部材と、
前記取付片に取り付けられた前記ボルト部材の上部が前記第2連結部材の左右両端部に形成された前記挿通部に挿通された状態で前記ボルト部材の上部を前記第2連結部材に連結固定する第2固定部材と、
を備え、
前記第1固定部材及び前記第2固定部材は、前記第1連結部材及び前記第2連結部材のそれぞれを前記ボルト部材の軸方向に沿って押圧することにより、前記第1連結部材及び前記第2連結部材のそれぞれを前記天井吊り下げ物の上面に押し付けた状態で固定することを特徴とする振れ止め装置。
【請求項8】
前記第1連結部材と前記第2連結部材とを結合して前記第1連結部材と前記第2連結部材とを一体化させる結合部材、
を更に備えることを特徴とする請求項7に記載の振れ止め装置。
【請求項9】
前記第1連結部材及び前記第2連結部材のそれぞれの左右両端部には、前記天井吊り下げ物を天井構造から吊り下げた状態に支持する吊りボルトを取り付けるための取付部が更に設けられることを特徴とする請求項7又は8に記載の振れ止め装置。
【請求項10】
前記取付部は、防振部材を備えており、前記防振部材を介して前記吊りボルトを前記第1連結部材及び前記第2連結部材のそれぞれに取り付けることを特徴とする請求項9に記載の振れ止め装置。
【請求項11】
前記吊りボルトの上端部には、前記天井構造に取り付けられたボルトに固定するための天井設置金具が予め取り付けられることを特徴とする請求項9又は10に記載の振れ止め装置。
【請求項12】
前記天井吊り下げ物の上面に押し付けられた状態の前記第1連結部材及び前記第2連結部材が前記天井吊り下げ物に対して左右方向に相対変位することを規制する第1規制部材、
を更に備えることを特徴とする請求項7乃至11のいずれかに記載の振れ止め装置。
【請求項13】
前記天井吊り下げ物の上面に押し付けられた状態の前記第1連結部材及び前記第2連結部材が前記天井吊り下げ物に対して左右方向に直交する前後方向に相対変位することを規制する第2規制部材、
を更に備えることを特徴とする請求項7乃至12のいずれかに記載の振れ止め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井空間に設置される空気調和機などの天井吊り下げ物を振れ止めするための振れ止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井空間に吊り下げられた状態に設置される空気調和機が知られている(例えば、特許文献1,2)。この空気調和機は、平面視略矩形状であり、互いに平行な二つの側面のそれぞれの下部近傍位置に、吊りボルトなどのボルト部材を連結するための一対の取付片を備えている。そのような空気調和機を天井空間に設置する場合、二つの側面のそれぞれに設けられている一対の取付片に対して、天井スラブなどの天井構造から垂下するボルト部材の下端部が連結される。すなわち、空気調和機は、合計4本のボルト部材によって互いに平行な二つの側面の下部近傍が支持された状態で天井空間に設置される。
【0003】
図13は、空気調和機300を天井空間に設置した状態における従来の支持構造200を示す図である。図13に示すように、従来の支持構造200は、天井スラブなどの天井構造3から吊りボルトなどのボルト部材209が垂下しており、そのボルト部材209の下端部において空気調和機300を支持する構造である。空気調和機300は、側面の下部近傍位置にボルト部材209を連結するための一対の取付片311,311を備えており、その一対の取付片311,311にボルト部材209の下端部が連結される。これにより、空気調和機300は、天井空間に吊り下げられた状態で支持される。
【0004】
空気調和機300がボルト部材209によって吊り下げられた状態に設置されると、空気調和機300を振れ止めするためのブレース213がボルト部材209に取り付けられる。ブレース213は、互いに隣り合う2本のボルト部材209どうしを連結するように斜め方向に配置され、一方のボルト部材209の上部と他方のボルト部材209の下部とを連結固定する。隣り合う2本のボルト部材209,209の間に2本のブレース213が交叉配置されることにより、ボルト部材209,209が固定され、空気調和機300を振れ止めすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-71789号公報
【文献】特開2001-330272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の支持構造200は、ブレース213を空気調和機300の上面よりも高い位置でボルト部材209,209に連結する構造である。そのため、ボルト部材209,209の下部(図13に示す領域Rの部分)においてブレース213による振れ止め効果を得られない。その結果、地震発生時にはボルト部材209,209の下部が振動し、それに伴って空気調和機300も振動してしまうという問題がある。
【0007】
また、この種の空気調和機300は、装置本体に対して冷媒配管や送風ダクトなどが接続されるため、装置本体が振動すると、それらの接続部が破損してしまい、地震が収まった後にも正常稼働することができなくなるという問題もある。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、空気調和機などの天井吊り下げ物の振れ止め効果を従来よりも効果的に発揮できるようにした振れ止め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、箱形形状を有し、左右両側面にボルト部材を取り付けるための取付片が設けられた天井吊り下げ物に装着される振れ止め装置であって、前記天井吊り下げ物の上面に沿うように配置され、左右両端部が前記天井吊り下げ物の左右両側面よりも更に左右方向に突出して前記取付片の上方位置まで延設され、当該左右両端部に前記ボルト部材の上部を挿通する挿通部が形成された連結部材と、前記取付片に取り付けられた前記ボルト部材の上部が前記挿通部に挿通された状態で前記ボルト部材の上部を前記連結部材に連結固定する固定部材と、を備え、前記固定部材は、前記連結部材を前記ボルト部材の軸方向に沿って押圧することにより、前記連結部材を前記天井吊り下げ物の上面に押し付けた状態で固定することを特徴とする構成である。
【0010】
第2に、本発明は、上記第1の構成を有する振れ止め装置において、前記連結部材の左右両端部には、前記天井吊り下げ物を天井構造から吊り下げた状態に支持する吊りボルトを取り付けるための取付部が更に設けられることを特徴とする構成である。
【0011】
第3に、本発明は、上記第2の構成を有する振れ止め装置において、前記取付部は、防振部材を備えており、前記防振部材を介して前記吊りボルトを前記連結部材に取り付けることを特徴とする構成である。
【0012】
第4に、本発明は、上記第2又は第3の構成を有する振れ止め装置において、前記吊りボルトの上端部には、前記天井構造に取り付けられたボルトに固定するための天井設置金具が予め取り付けられることを特徴とする構成である。
【0013】
第5に、本発明は、上記第1乃至第4のいずれかの構成を有する振れ止め装置において、前記天井吊り下げ物の上面に押し付けられた状態の前記連結部材が前記天井吊り下げ物に対して左右方向に相対変位することを規制する第1規制部材、を更に備えることを特徴とする構成である。
【0014】
第6に、本発明は、上記第1乃至第5のいずれかの構成を有する振れ止め装置において、前記天井吊り下げ物の上面に押し付けられた状態の前記連結部材が前記天井吊り下げ物に対して左右方向に直交する前後方向に相対変位することを規制する第2規制部材、を更に備えることを特徴とする構成である。
【0015】
第7に、本発明は、箱形形状を有し、左右両側面の複数箇所にボルト部材を取り付けるための取付片が設けられた天井吊り下げ物に装着される振れ止め装置であって、前記天井吊り下げ物の上面に沿うように配置され、左右両端部が前記天井吊り下げ物の左右両側面よりも更に左右方向に突出して前記取付片の上方位置まで延設され、当該左右両端部に前記ボルト部材の上部を挿通する挿通部が形成された第1連結部材と、前記第1連結部材と平行な状態で前記天井吊り下げ物の上面に沿うように配置され、左右両端部が前記天井吊り下げ物の左右両側面よりも更に左右方向に突出して前記取付片の上方位置まで延設され、当該左右両端部に前記ボルト部材の上部を挿通する挿通部が形成された第2連結部材と、前記取付片に取り付けられた前記ボルト部材の上部が前記第1連結部材の左右両端部に形成された前記挿通部に挿通された状態で前記ボルト部材の上部を前記第1連結部材に連結固定する第1固定部材と、前記取付片に取り付けられた前記ボルト部材の上部が前記第2連結部材の左右両端部に形成された前記挿通部に挿通された状態で前記ボルト部材の上部を前記第2連結部材に連結固定する第2固定部材と、を備え、前記第1固定部材及び前記第2固定部材は、前記第1連結部材及び前記第2連結部材のそれぞれを前記ボルト部材の軸方向に沿って押圧することにより、前記第1連結部材及び前記第2連結部材のそれぞれを前記天井吊り下げ物の上面に押し付けた状態で固定することを特徴とする構成である。
【0016】
第8に、本発明は、上記第7の構成を有する振れ止め装置において、前記第1連結部材と前記第2連結部材とを結合して前記第1連結部材と前記第2連結部材とを一体化させる結合部材、を更に備えることを特徴とする構成である。
【0017】
第9に、本発明は、上記第7又は第8の構成を有する振れ止め装置において、前記第1連結部材及び前記第2連結部材のそれぞれの左右両端部には、前記天井吊り下げ物を天井構造から吊り下げた状態に支持する吊りボルトを取り付けるための取付部が更に設けられることを特徴とする構成である。
【0018】
第10に、本発明は、上記第9の構成を有する振れ止め装置において、前記取付部は、防振部材を備えており、前記防振部材を介して前記吊りボルトを前記第1連結部材及び前記第2連結部材のそれぞれに取り付けることを特徴とする構成である。
【0019】
第11に、本発明は、上記第9又は第10の構成を有する振れ止め装置において、前記吊りボルトの上端部には、前記天井構造に取り付けられたボルトに固定するための天井設置金具が予め取り付けられることを特徴とする構成である。
【0020】
第12に、本発明は、上記第7乃至第11のいずれかの構成を有する振れ止め装置において、前記天井吊り下げ物の上面に押し付けられた状態の前記第1連結部材及び前記第2連結部材が前記天井吊り下げ物に対して左右方向に相対変位することを規制する第1規制部材、を更に備えることを特徴とする構成である。
【0021】
第13に、本発明は、上記第7乃至第12のいずれかの構成を有する振れ止め装置において、前記天井吊り下げ物の上面に押し付けられた状態の前記第1連結部材及び前記第2連結部材が前記天井吊り下げ物に対して左右方向に直交する前後方向に相対変位することを規制する第2規制部材、を更に備えることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、空気調和機などの天井吊り下げ物の振れ止め効果を従来よりも効果的に発揮できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】振れ止め装置を用いた天井吊り下げ物の支持構造を示す斜視図である。
図2】振れ止め装置の構成例を示す分解斜視図である。
図3】第1規制部材の一構成例を示す図である。
図4】第2規制部材の一構成例を示す図である。
図5】防振部材の一例を示す図である。
図6】振れ止め装置が天井吊り下げ物に取り付けられた状態を示す正面図である。
図7】振れ止め装置が天井吊り下げ物に取り付けられた状態を示す左側面図である。
図8】床面作業で天井吊り下げ物に取り付けられる振れ止め装置の一構成例を示す斜視図である。
図9】天井設置金具の取り付け態様の一例を示す拡大図である。
図10】振れ止め装置を取り付けた天井設置金具を天井空間に設置する態様を例示する図である。
図11】複数の吊りボルト間に斜め補強材となるブレースを交叉配置した構成例を示す側面図である。
図12】振れ止め装置の変形例を示す図である。
図13】空気調和機を天井空間に設置した状態における従来の支持構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態である振れ止め装置1を用いた天井吊り下げ物100の支持構造を示す斜視図である。図1に示すXYZ三次元座標系は、XY平面を水平面とし、Z方向を鉛直方向とする座標系であり、他の図においても共通する座標系である。本実施形態の振れ止め装置1は、天井吊り下げ物100を天井空間に吊り下げた状態で支持する吊りボルト9の下部に接続され、天井吊り下げ物100を振れ止めする装置である。本実施形態では、天井吊り下げ物100として、隠蔽式の空気調和機を例示する。隠蔽式の空気調和機は、天井スラブなどの天井構造と天井パネルとの間の天井空間に隠蔽された状態で設置される。
【0026】
天井吊り下げ物100は、内部に熱交換器が設けられた平面視略矩形状の箱形ユニットであり、上面及び下面を除く水平方向の周囲に4つの側面101,102,103,104を有している。本明細書では、それら4つの側面101,102,103,104のうち、Y方向に直交する2つの側面101,102を天井吊り下げ物100の正面101及び背面102と称し、X方向に直交する2つの側面103,104のそれぞれを天井吊り下げ物100の左側面103及び右側面104と称する。
【0027】
例えば、天井吊り下げ物100の左側面103には、冷媒配管などを接続するための接続部が設けられている。また、左側面103の前後方向の両端下部の所定位置には、吊りボルト9などのボルト部材の下端部を接続するための一対の取付片110,110が設けられている。また、左側面103の反対側に位置し、左側面103と平行な右側面104にも、同様に、両端下部の所定位置に、図示を省略する一対の取付片110,110が設けられている。例えば、左側面103に設けられる一対の取付片110,110と、右側面104に設けられる一対の取付片110,110は、天井吊り下げ物100の前後方向(Y方向)において互いに同じ位置に設けられる。
【0028】
天井吊り下げ物100の正面101には、熱交換された空気を吹き出すための吹出口105が設けられている。また、背面102には、空気を内部の熱交換器に導くための吸気口(図示省略)が設けられる。つまり、この天井吊り下げ物100は、背面102に設けられている吸気口から空気を吸い込み、内部の熱交換機で熱交換を行ってから正面101に設けられている吹出口105から熱交換された空気を吹き出すように構成される。尚、正面101の吹出口105には、図示を省略する吹出ユニットを別途接続することが可能であり、また背面102の吸気口には、図示を省略する吸気ユニットを別途接続することが可能である。
【0029】
この天井吊り下げ物100は、天井空間に垂下する4本の吊りボルト9によって天井空間に吊り下げられた状態に支持される。本実施形態では、振れ止め装置1が箱形形状を成す天井吊り下げ物100の外面に対して装着固定され、4本の吊りボルト9はその振れ止め装置1に対して取り付けられることにより、天井吊り下げ物100を支持する。以下、振れ止め装置1の詳細について説明する。
【0030】
図2は、振れ止め装置1の構成例を示す分解斜視図である。振れ止め装置1は、天井吊り下げ物100の左右両側面103,104に設けられた取付片110に取り付けられる複数のボルト部材50と、天井吊り下げ物100の上面に沿うように配置される第1連結部材10と、第1連結部材10と平行な状態で天井吊り下げ物100の上面に沿うように配置される第2連結部材11と、第1連結部材10と第2連結部材11とを結合させて一体化する結合部材20,21と、天井吊り下げ物100の左右両側面103,104において取付片110に取り付けられた一対のボルト部材50の上部を第1連結部材10の左右両端部に連結固定する第1固定部材15と、天井吊り下げ物100の左右両側面103,104において取付片110に取り付けられた一対のボルト部材50の上部を第2連結部材11の左右両端部に連結固定する第2固定部材17と、を備えている。
【0031】
第1連結部材10は、例えばL型のアングル鋼(山形鋼)によって構成され、天井吊り下げ物100の上面と平行な平板部10aと、平板部10aに対して直角を成す縦板部10bとを有しており、高い剛性を備えている。この第1連結部材10は、天井吊り下げ物100の左右方向(X方向)に沿って配置され、平板部10aの下面が天井吊り下げ物100の上面に接触した状態に配置される。第1連結部材10は、長手方向(X方向)の寸法が天井吊り下げ物100の左右方向の寸法よりも大きく、左右両端部が天井吊り下げ物100の左右両側面よりも更に左右方向に突出し、取付片110の上方位置まで延設される。
【0032】
第1連結部材10は、その左右両端部に、結合部材20,21を挿通するための挿通部12と、ボルト部材50を挿通するための挿通部13と、吊りボルト9を挿通するための挿通部14とを有している。挿通部12は、第1連結部材10の縦板部10bに形成される。また、挿通部13,14は、第1連結部材10の平板部10aに形成される。これら挿通部12,13,14は、例えば丸孔として形成される。ただし、挿通部12,13,14は、丸孔に限られるものではなく、例えばU字状に切り欠いた切欠部として形成されるものであっても構わない。尚、挿通部14は、天井吊り下げ物100を天井構造から吊り下げた状態で支持する吊りボルト9の下部を取り付けるための取付部14aとして機能するものである。
【0033】
また第2連結部材11は、第1連結部材10と同様に、例えばL型のアングル鋼(山形鋼)によって構成され、天井吊り下げ物100の上面と平行な平板部11aと、平板部11aに対して直角を成す縦板部11bとを有しており、高い剛性を備えている。この第2連結部材11は、天井吊り下げ物100の上面位置において、第1連結部材10と所定間隔を隔てた位置で第1連結部材10と平行に配置される。この第2連結部材11は、第1連結部材10と同様に、天井吊り下げ物100の左右方向(X方向)に沿って配置され、平板部11aの下面が天井吊り下げ物100の上面に接触した状態に配置される。第2連結部材11は、長手方向(X方向)の寸法が天井吊り下げ物100の左右方向の寸法よりも大きく、左右両端部が天井吊り下げ物100の左右両側面よりも更に左右方向に突出し、取付片110の上方位置まで延設される。
【0034】
第2連結部材11は、第1連結部材10と同様に、その左右両端部に、結合部材20,21を挿通するための挿通部12と、ボルト部材50を挿通するための挿通部13と、吊りボルト9を挿通するための挿通部14とを有している。
【0035】
本実施形態では、天井吊り下げ物100の左右両則面に対して合計4本のボルト部材50が取り付けられる。すなわち、天井吊り下げ物100の左側面103の下部近傍に設けられている2つの取付片110に対してそれぞれ1本ずつボルト部材50の下部が接続される。また、天井吊り下げ物100の右側面104の下部近傍に設けられている2つの取付片に対しても、それぞれ1本ずつボルト部材50の下部が接続される。これら4本のボルト部材50は、その下部が取付片110に挿通された状態で2つのナット73,73が取付片110を挟み込んだ状態で締め付けられることにより、取付片110に固定される。
【0036】
4本のボルト部材50は、その下部が取付片110に固定されるだけでは上部の振動を抑制することができない。そこで本実施形態では、各ボルト部材50の上部を、第1固定部材15又は第2固定部材17によって第1連結部材10又は第2連結部材11に固定するようにしている。すなわち、ボルト部材50の上部は、第1連結部材10又は第2連結部材11の挿通部13に挿通され、挿通部13から上方に突出する部分に第1固定部材15又は第2固定部材17が取り付けられることにより、第1連結部材10又は第2連結部材11に固定される。第1固定部材15及び第2固定部材17は、ボルト部材50に装着可能なナットによって構成され、ボルト部材50の表面に形成された雄螺子と螺合する。第1固定部材15は、第1連結部材10の平板部10aから上方に突出するボルト部材50に装着される。そして第1固定部材15が第1連結部材10の平板部10aに対して締着されることにより、ボルト部材50の上部が第1連結部材10に固定される。また、第2固定部材17は、第2連結部材11の平板部11aから上方に突出するボルト部材50に装着される。そして第2固定部材17が第2連結部材11の平板部11aに対して締着されることにより、ボルト部材50の上部が第2連結部材11に固定される。つまり、4本のボルト部材50の上部は、第1連結部材10及び第2連結部材11の左右両端部に固定される。
【0037】
第1固定部材15が第1連結部材10の平板部10aに対して締め付けられると、第1連結部材10は、ボルト部材50からの軸力を受ける。この軸力は、第1連結部材10を天井吊り下げ物100の上面に押し付ける力として作用する。そのため、第1連結部材10は、第1固定部材15が平板部10aに対して締着されることにより、天井吊り下げ物100の上面に接触した状態で固定される。これにより、ボルト部材50の下部と上部の双方を天井吊り下げ物100の側面において固定することが可能であり、ボルト部材50の振れ止め効果を発揮する。
【0038】
また、第2連結部材11についても同様である。すなわち、第2固定部材17が第2連結部材11の平板部11aに対して締め付けられると、第2連結部材11は、ボルト部材50からの軸力を受ける。この軸力は、第2連結部材11を天井吊り下げ物100の上面に押し付ける力として作用する。そのため、第2連結部材11は、第2固定部材17が平板部11aに対して締着されることにより、天井吊り下げ物100の上面に接触した状態で固定される。これにより、ボルト部材50の下部と上部の双方を天井吊り下げ物100の側面において固定することが可能であり、ボルト部材50の振れ止め効果を発揮する。
【0039】
結合部材20,21は、例えば外周面に雄螺子が形成されたボルト部材によって構成される。結合部材20,21は、所定間隔離れた位置にある第1連結部材10と第2連結部材11とを平行な状態のままで相互に結合させて一体化する部材である。このような結合部材20,21は、例えばボルト状の部材によって構成され、天井吊り下げ物100の前後方向(Y方向)に所定長さを有し、その両端部が第1連結部材10及び第2連結部材11のそれぞれに連結される。すなわち、結合部材20,21は、両端部が第1連結部材10の縦板部10b及び第2連結部材11の縦板部11bに形成された挿通部12に挿通された状態で第1連結部材10及び第2連結部材11に固定される。例えば、結合部材20の両端部には2つのナット24,25が装着され、それら2つのナット24,25が第1連結部材10の縦板部10b及び第2連結部材11の縦板部11bのそれぞれを挟み込むようにして締着される。同様に、結合部材21の両端部にも2つのナット26,27が装着され、それら2つのナット26,27が第1連結部材10の縦板部10b及び第2連結部材11の縦板部11bを挟み込むようにして締着される。このように複数の結合部材20,21が天井吊り下げ物100の左右方向において異なる位置で第1連結部材10と第2連結部材11とを相互に連結することにより、第1連結部材10と第2連結部材11とは互いに平行な状態を保持する状態に一体化される。したがって、仮に地震が発生したとしても、結合部材20,21は、第1連結部材10と第2連結部材11との相対的な変位や姿勢変化を抑制することができる。
【0040】
また振れ止め装置1は、XY平面内において第1連結部材10及び第2連結部材11の横滑りを防止するため、第1規制部材30と、第2規制部材40とを備えている。第1規制部材30は、振れ止め装置1が天井吊り下げ物100に対して左右方向(X方向)に相対変位することを規制する部材である。また、第2規制部材40は、振れ止め装置1が天井吊り下げ物100に対して左右方向(X方向)に直交する前後方向(Y方向)に相対変位することを規制する部材である。
【0041】
図3は、第1規制部材30の一構成例を示す図である。第1規制部材30は、天井吊り下げ物100の左右両側面の4箇所に設置される部材であり、例えば図3に示すように横板部31と縦板部32とが互いに直角を成す概略L型の金属部材によって構成される。横板部31には、ボルト部材50を挿通するための挿通部33が設けられている。挿通部33は、例えば図3に示すようにボルト部材50の外径よりも若干大きい丸孔として形成される。ただし、挿通部33は、丸孔に限られるものではなく、横板部31をU字状に切り欠いた切欠部として形成されるものであっても構わない。
【0042】
第1規制部材30は、挿通部33にボルト部材50が挿通された状態でボルト部材50に取り付けられる。例えば図2に示すように、第1規制部材30は、ボルト部材50に装着されるナット16,18によって横板部31の下面側が支持されることによってボルト部材50に取り付けられる。例えば、第1連結部材10の下面側に設けられる第1規制部材30は、ナット16によって支持される。また、第2連結部材11の下面側に設けられる第1規制部材30は、ナット18によって支持される。ナット16,18は、横板部31の下面側を上方に押し上げる方向に締め付けられる。そのため、第1規制部材30は、横板部31の上面を第1連結部材10又は第2連結部材11の下面に押し付けた状態で固定される。また、横板部31の挿通部33にボルト部材50が挿通されると、縦板部32は、天井吊り下げ物100の左側面103又は右側面104と接合した状態となる。そのため、横板部31がボルト部材50に固定されると、縦板部32が天井吊り下げ物100の左側面103又は右側面104を押圧する。
【0043】
このような第1規制部材30が天井吊り下げ物100の左右両側面103及び104の合計4箇所に取り付けられる。それら4つの第1規制部材30は、天井吊り下げ物100とボルト部材50との間隔を一定の状態に保持する。そのため、第1規制部材30は、振れ止め装置1が天井吊り下げ物100に対して左右方向(X方向)に相対変位することを規制することができる。
【0044】
尚、上記においては、第1規制部材30の横板部31の上面が第1連結部材10又は第2連結部材11の下面に押し付けた状態で固定される場合を例示したが、これに限られるものではない。すなわち、第1規制部材30は、ボルト部材50の任意の高さ位置に取り付けることが可能である。
【0045】
図4は、第2規制部材40の一構成例を示す図である。第2規制部材40は、天井吊り下げ物100の正面101及び背面102の合計4箇所に設置される部材であり、例えば図4に示すように縦板部41と横板部42と縦板部43とを有し、縦板部41と横板部42とが互いに直角を成し、且つ、横板部42と縦板部43とが互いに直角を成す概略Z型の金属部材によって構成される。縦板部41には、結合部材20,21を挿通するための挿通部44が設けられている。挿通部44は、例えば図4に示すようにボルト部材として構成される結合部材20,21の外径よりも若干大きい丸孔として形成される。ただし、挿通部44は、丸孔に限られるものではなく、縦板部41をU字状に切り欠いた切欠部として形成されるものであっても構わない。
【0046】
第2規制部材40は、図2に示すように第1連結部材10の縦板部10b又は第2連結部材11の縦板部11bに添設された状態で第1連結部材10又は第2連結部材11に固定される。具体的に説明すると、第2規制部材40は、縦板部41を第1連結部材10の縦板部10b又は第2連結部材11の縦板部11bに接合させた状態で挿通部44の位置と挿通部12の位置とを一致させ、結合部材20,21の先端をそれら挿通部12,44に挿通して2つのナット24,25を締着することにより、縦板部41が第1連結部材10又は第2連結部材11の縦板部10b,11bに固定される。
【0047】
2つの縦板部41,43を繋ぐ横板部42の長さL(図4参照)は、下方に折れ曲がった縦板部43が天井吊り下げ物100の正面101又は背面102の上端部に係合できるように天井吊り下げ物100のサイズに応じて予め調整される。例えば、第1連結部材10の縦板部10bに固定される第2規制部材40の場合、横板部42の長さLは、第1連結部材の縦板部10bから天井吊り下げ物100の背面102までの長さと同様の長さに形成される。また、第2連結部材11の縦板部11bに固定される第2規制部材40の場合、横板部42の長さLは、第2連結部材の縦板部11bから天井吊り下げ物100の正面101までの長さと同様の長さに形成される。したがって、振れ止め装置1に設けられる4つの第2規制部材40のうち、第1連結部材10に固定される2つの第2規制部材40と、第2連結部材11に固定される他の2つの第2規制部材40とは、横板部42の長さLが互いに異なるものであっても良い。
【0048】
そして第2規制部材40が第1連結部材10又は第2連結部材11に固定されると、縦板部43は、天井吊り下げ物100の正面101又は背面102の上端部と係合した状態となり、振れ止め装置1が天井吊り下げ物100に対して前後方向(Y方向)に相対変位することを規制することができる。
【0049】
このように第1規制部材30及び第2規制部材40は、振れ止め装置1が天井吊り下げ物100に対してX方向及びY方向に相対変位することを規制し、振れ止め装置1を天井吊り下げ物100に位置決めした状態に固定することができる。
【0050】
また、第1連結部材10及び第2連結部材11の両端部において吊りボルト9を取り付けるための挿通部14には予め防振部材60が取り付けられる。図5は、その防振部材60の一例を示す図である。防振部材60は、金属性のコイルバネなどで構成される弾性部材62と、弾性部材62の上部に設けられる装着部61と、弾性部材62の下部に設けられるリング部材67とを備える構成である。装着部61は、ゴムなどのように柔軟性と弾性とを有する材料によって形成される。同様に、リング部材67もゴムなどのように柔軟性と弾性とを有する材料によって形成される。装着部61は、弾性部材62の上部を嵌め込んだ状態で支持し、第1連結部材10又は第2連結部材11の挿通部14に装着される。この装着部61は、概略円筒状の部材であり、上部63が挿通部14に嵌め込み易くなるように傘状の形状となっており、下部64が挿通部14の下面に係合するリング状となっている。また、上部63と下部64との間には、挿通部14に嵌め込むための環状溝65が形成されている。そして装着部61には、中央部を上下に貫通する孔66が設けられている。この孔66の内径は、吊りボルト9の外径よりも若干大きい直径として形成される。また、リング部材67は、弾性部材62の下部を嵌め込んだ状態で弾性部材62に取り付けられる。リング部材67の中央には吊りボルト9を挿通可能な孔が形成されている。
【0051】
上記のような防振部材60は、図2に示すように装着部61が第1連結部材10又は第2連結部材11の両端部に設けられる挿通部14に装着された状態で第1連結部材10又は第2連結部材11に取り付けられる。そして吊りボルト9は、その下端部が防振部材60に挿通され、防振部材60の下側に突出する部分にワッシャー76とナット77とが装着されて、振れ止め装置1に取り付けられる。吊りボルト9の下部が防振部材60を介して振れ止め装置1に取り付けられることにより、天井吊り下げ物100が稼働中に振動したとしても、その振動が吊りボルト9に伝わることはない。すなわち、防振部材60は、天井吊り下げ物100の振動が吊りボルト9に伝播することを抑制する機能を有している。振れ止め装置1は、この防振機能を備えることにより、天井吊り下げ物100が正常稼働している状態において、吊りボルト9の上端部が繋がる天井スラブなどの天井構造に対して天井吊り下げ物100の振動を伝えることがないようにしている。
【0052】
上記のように本実施形態の振れ止め装置1は、天井吊り下げ物100の左右両側面に設けられている取付片110にボルト部材50の下部を固定し、そのボルト部材50の上部を第1連結部材10又は第2連結部材11の両端部に固定する。第1連結部材10は、ボルト部材50に装着される第1固定部材15が締め付けられることにより、ボルト部材50の軸力が作用して天井吊り下げ物100の上面を押圧する状態に取り付けられる。また、第2連結部材11は、ボルト部材50に装着される第2固定部材17が締め付けられることにより、第1連結部材10と同様にボルト部材50の軸力によって天井吊り下げ物100の上面を押圧する状態に取り付けられる。そのため、天井吊り下げ物100の左右両側面に取り付けられるボルト部材50は、第1連結部材10又は第2連結部材11と、取付片110との間に軸力を作用させた状態で固定されるため、天井吊り下げ物100と一体構造を成す。そのため、仮に地震が発生した場合であっても、振れ止め装置1は、ボルト部材50が天井吊り下げ物100とは異なる振れ方をすることを有効に防止することができる。
【0053】
図6は、振れ止め装置1が天井吊り下げ物100に取り付けられた状態を示す正面図である。図6に示すように、振れ止め装置1は、天井スラブなどの天井構造から垂下する複数の吊りボルト9の下部に対し、第1連結部材10又は第2連結部材11の両端部が防振部材60を介して取り付けられる。また、振れ止め装置1は、第1連結部材10及び第2連結部材11の下面が天井吊り下げ物100の上面に密着し、ボルト部材50の軸力によって第1連結部材10及び第2連結部材11が天井吊り下げ物100の上面を押圧した状態に取り付けられる。そのため、天井吊り下げ物100の左右両側面に設けられた取付片110に取り付けられるボルト部材50は、天井吊り下げ物100に対してX方向に相対変位することがない。つまり、振れ止め装置1は、天井吊り下げ物100の取付片110に接続されるボルト部材50の振れ止め効果を発揮するのである。また、ボルト部材50に取り付けられる第1規制部材30は、図6に示すように、縦板部32が天井吊り下げ物100の左右両側面に接合しているため、ボルト部材50の上部が天井吊り下げ物100に対してX方向に左右方向に相対変位することを防止する。そのため、第1連結部材10及び第2連結部材11は、天井吊り下げ物100の上面においてX方向の位置が固定されており、仮に大規模地震が発生したとしても天井吊り下げ物100の上面をX方向に滑って移動することがない。
【0054】
図7は、振れ止め装置1が天井吊り下げ物100に取り付けられた状態を示す左側面図である。図7に示すように、振れ止め装置1は、第1連結部材10及び第2連結部材11のそれぞれが取付片110の上部に配置され、取付片110から上方に向かって延びるボルト部材50の上部を第1連結部材10及び第2連結部材11のそれぞれに固定している。また第1連結部材10及び第2連結部材11のそれぞれは、結合部材20,21によって相互に連結され、Y方向に相対変位しないように固定されている。さらに、第1連結部材及び第2連結部材11のそれぞれには、第2規制部材40が取り付けられている。第1連結部材10に取り付けられる第2規制部材40は、先端の縦板部43が天井吊り下げ物100の背面102の上縁部に係合しており、第1連結部材10が天井吊り下げ物100の背面102から離れる方向(-Y方向)に移動することを規制している。また、第2連結部材11に取り付けられる第2規制部材40は、先端の縦板部43が天井吊り下げ物100の正面101の上縁部に係合しており、第2連結部材11が天井吊り下げ物100の正面101から離れる方向(+Y方向)に移動することを規制している。そのため、第1連結部材10及び第2連結部材11は、結合部材20,21と第2規制部材40によって天井吊り下げ物100の上面においてY方向の位置が固定されており、仮に大規模地震が発生したとしても天井吊り下げ物100の上面をY方向に滑って移動することがない。
【0055】
このように振れ止め装置1は、天井吊り下げ物100の外側に対して位置決めされた状態に取り付けられる。そのため、振れ止め装置1は、天井吊り下げ物100と一体構造物となり、天井吊り下げ物100を支持するボルト部材50が天井吊り下げ物100に対して相対変位してしまうことによる振動を有効に防止することが可能である。したがって、本実施形態の振れ止め装置1を用いれば、天井吊り下げ物100を支持するボルト部材50の下部が振動してしまうことを有効に防止することが可能であり、従来よりも天井吊り下げ物100の振動を抑制することができる。尚、吊りボルト9には、従来のブレース213(図13参照)を用いて補強することにより、吊りボルト9の振れ止め効果を得ることができる。
【0056】
ところで、上記のような振れ止め装置1は、天井吊り下げ物100が天井空間に設置される前に、床面作業で天井吊り下げ物100に予め取り付けておくことが好ましい。この場合、第1連結部材10及び第2連結部材11の左右両端部に設けられる挿通部14にも予め吊りボルト9を取り付けておくようにしても良い。ただし、天井スラブなどの天井構造に取り付けられる吊りボルト9の下部を予め床面作業で振れ止め装置1に取り付けてしまうと、天井吊り下げ物100を天井空間の所定高さ位置まで持ち上げたとき、吊りボルト9の上端部を天井構造に固定しなければならない。そこで、床面作業で振れ止め装置1に吊りボルト9の下部を予め取り付けておくときには、その吊りボルト9の上端部に天井設置金具を予め取り付けておくことが好ましい。
【0057】
図8は、床面作業で天井吊り下げ物100に取り付けられる振れ止め装置1の一構成例を示す斜視図である。図8に示す振れ止め装置1が図1に示した振れ止め装置1と異なる点は、吊りボルト9の上端部に天井設置金具80が取り付けられている点である。図8に示すように、天井吊り下げ物100を床面に設置した状態で振れ止め装置1が天井吊り下げ物100に取り付けられる。床面作業で振れ止め装置1を天井吊り下げ物100に取り付けることにより、簡単且つ効率的に振れ止め装置1を天井吊り下げ物100に取り付けることができる。
【0058】
天井吊り下げ物100に振れ止め装置1を取り付けると、それに引き続き、床面作業で第1連結部材10及び第2連結部材11の左右両端部に防振部材60を介して吊りボルト9の下部が取り付けられる。つまり、吊りボルト9の上端部が天井スラブなどの天井構造には固定されていない状態で、吊りボルト9の下部が振れ止め装置1に取り付けられることになる。そして床面作業で振れ止め装置1に吊りボルト9の下部が取り付けられると、その吊りボルト9の上端部に対し、天井設置金具80が取り付けられる。この天井設置金具80も床面作業で吊りボルト9の上端部に予め取り付けられる。
【0059】
図9は、天井設置金具80の取り付け態様の一例を示す拡大図である。図9に示すように、天井設置金具80は、吊りボルト9の上端部に装着される金属製部材であり、概略コ字状の形態を有している。すなわち、天井設置金具80は、平板部81と、平板部81の両側において互いに平行な状態で立設する一対の側板部82とを有する。例えば、平板部81は長方形状に形成される。また、平板部81には、円形状の第1の孔84と、その第1の孔84に隣接し、平板部81の長手方向に沿って形成される長孔状の第2の孔85とが形成される。第1の孔84は、例えば吊りボルト9の上端部を挿通する孔であり、吊りボルト9の外径よりも若干大きい内径の孔である。第2の孔85は、天井構造に取り付けられるアンカーボルトやインサートに装着されるボルトなどのボルト部材を挿通するための孔であり、それらボルト部材の直径よりも若干大きい内幅の長孔である。
【0060】
尚、上記とは反対に、第1の孔84に対して天井構造に取り付けられるアンカーボルトやインサートに装着されるボルトなどを挿通し、第2の孔75に対して吊りボルト9の上端部を挿通するようにしても良い。また、第1の孔84と第2の孔85は、必ずしも区分けした状態に形成する必要はないため、第1の孔84と第2の孔85とを連通させた長孔状の1つの取付孔を形成し、その1つの取付孔に対し、天井構造に取り付けられるボルト部材と共に、吊りボルト9を挿通するようにしても良い。
【0061】
一対の側板部82は、平板部81の長手方向において中央部よりも両端部の高さが高くなっており、この両端部が天井スラブやデッキプレートなどの天井構造に対して当接する接合部83として形成される。側板部82の長手方向中央部が両端部の接合部83よりも低くなることにより、接合部83が天井構造に当接した状態であっても高さの低い中央部を窓として天井設置金具80の内側の状態を目視で確認することが可能であるという利点がある。また、デッキプレートが山部と谷部とを有する波形形状であり、且つ、山部の中央にインサート装着用の溝部が形成されている場合、側板部82の中央に高さの低い部分を設けておくことで、天井設置金具80をデッキプレートの溝部に干渉させることなく、接合部83をデッキプレートの下面に当接させた状態に設置することができるという利点もある。
【0062】
このような天井設置金具80は、ロングナット88とナット89とを用いて吊りボルト9の上端部に取り付けられる。すなわち、吊りボルト9の上端部にまずロングナット88を装着し、ロングナット88の上端から吊りボルト9の先端を突出させた状態とし、その突出した先端を、天井設置金具80の第1の孔84に挿通してナット89を装着する。これにより、天井設置金具80が吊りボルト9の上端部に仮止めされた状態となる。ここで、一対の側板部82に設けられる接合部83の高さHは、少なくともナット89の高さ寸法以上であれば良い。ただし、天井設置金具80がインサートに装着されるボルトに取り付けられることを想定すれば、接合部83の高さHは、天井構造から下方に突出した状態となるインサートの高さ寸法よりも高くなるように予め設計しておくことが好ましい。
【0063】
ロングナット88は、軸方向に所定長さを有しており、吊りボルト9の雄螺子と螺合する雌螺子を有している。天井設置金具80は、ロングナット88が吊りボルト9に取り付けられた状態で平板部81の下面がロングナット88の上面に支持される。天井設置金具80において吊りボルト9が挿通される第1の孔84は吊りボルト9の外径よりも若干大きいため、天井設置金具80は、第1の孔84に対して吊りボルト9が挿通された状態になると、吊りボルト9の軸回りに回動可能な状態となる。そして天井設置金具80が吊りボルト9から抜け落ちることを防止するため、吊りボルト9の先端にはナット89が取り付けられる。尚、ナット89は、吊りボルト9の先端から抜け落ちないようにするための緩み止め機能や抜け止め機能を有するものを用いることが好ましい。
【0064】
上記のように天井設置金具80は、吊りボルト9の上端部に対し、ロングナット88とナット89とで平板部81が挟み込まれることによって取り付けられる。ロングナット88が天井設置金具80の下面に対してきつく締着されていない状態のとき、上述したように天井設置金具80は、吊りボルト9の軸回りに回動可能である。つまり、天井設置金具80は仮止め状態のとき、吊りボルト9の軸周りに回動する。これに対し、ロングナット88が天井設置金具80の下面に対してきつく締着された状態になると、天井設置金具80はロングナット88とナット89とに挟まれた状態で固定されるため、吊りボルト9の軸回りに回動しない状態となる。そして床面作業では、天井設置金具80を仮止め状態として吊りボルト9の上端部に取り付けておく。
【0065】
図10は、振れ止め装置1を取り付けた天井吊り下げ物100を天井空間に設置する態様を例示する図である。上記のように天井吊り下げ物100に対して振れ止め装置1が取り付けられると、図示を省略する昇降機などを用いて天井吊り下げ物100を天井空間に持ち上げる。このとき、天井スラブなどの天井構造3には、図10に示すように予めボルト部材4が設置されており、そのボルト部材4に対して吊りボルト9の上端部に取り付けられた天井設置金具80が連結される。ボルト部材4は、例えば天井スラブなどの天井構造に取り付けられるアンカーボルトやインサートに装着されるボルトなどの部材である。例えば、4本の吊りボルト9を天井構造に取り付ける場合、天井構造には予め4本のボルト部材4が設置される。このとき、各ボルト部材4の設置位置に誤差が生じることがある。そのような場合であっても、天井設置金具80は、吊りボルト9の軸周りに回動可能であるため、第2の孔85をボルト部材4の位置に適合するように回動させることができる。そして第2の孔85にボルト部材4を挿通し、天井設置金具80の下面に突出するボルト部材4の先端にナット5を締着することで天井設置金具80を天井構造3に取り付けることができる。例えば、図10に示すように互いにY方向に沿って配置される2本のボルト部材4の間隔W1が所定間隔(2本の吊りボルト9の間隔)よりも小さい場合であっても、天井設置金具80を回動させることにより、2本のボルト部材4に対して天井設置金具80を設置することができるのである。そして天井設置金具80を天井構造3に固定した後、天井設置金具80の下部に位置するロングナット88を締めて付けて固定することにより、振れ止め装置1を天井構造3に固定することができる。したがって、本実施形態の振れ止め装置1は、天井吊り下げ物100を天井空間に吊り下げた状態に設置する際の作業も簡単且つ効率的に行うことが可能である。
【0066】
また、天井構造3から下方に突出するボルト部材4が多少傾斜している場合であっても、天井設置金具80は、傾斜したボルト部材4を第2の孔85に挿通することが可能である。そのため、本実施形態の振れ止め装置1は、ボルト部材4が多少傾斜している場合であっても、そのボルト部材4を利用して天井吊り下げ物100を支持する振れ止め装置1を天井構造3に固定することが可能である。
【0067】
次に、図11は、複数の吊りボルト9間に斜め補強材となるブレース91を交叉配置した構成例を示す側面図である。例えば吊りボルト9の長さが所定長さ以上である場合、振れ止め装置1は、図11に示すように複数の吊りボルト9間にブレース91を交叉配置して吊りボルト9を振れ止めすることが好ましい。すなわち、図11に示すように各吊りボルト9の上部と下部にブレース連結金具90を取り付け、互いに隣接する吊りボルト9間にブレース91を斜め方向に配置し、ブレース91の一方の端部を一方の吊りボルト9の上部に取り付けられたブレース連結金具90に連結し、ブレース91の他方の端部を他方の吊りボルト9の下部に取り付けられたブレース連結金具90に連結する。このようにして2本の吊りボルト9間に2本のブレース91を交叉配置した状態に取り付ける。そして本実施形態の振れ止め装置1は、図11に示すように複数の吊りボルト9間にブレース91を取り付ける作業も床面作業として行うことができる。そのため、本実施形態の振れ止め装置1を用いれば、複数の吊りボルト9間にブレース91を取り付ける作業を高所作業として行う必要がなく、安全に且つ効率的にブレース91を取り付けることが可能である。
【0068】
以上のように本実施形態の振れ止め装置1は、箱形形状を有する天井吊り下げ物100の左右両側面103,104の下部近傍の複数箇所に設けられた取付片110に取り付けられるボルト部材50の振れ止め効果を良好に発揮する。すなわち、振れ止め装置1は、互いに平行な状態で天井吊り下げ物100の上面に沿うように配置される第1連結部材10及び第2連結部材11を有し、第1固定部材15がボルト部材50の上部を第1連結部材10に連結固定すると共に、第2固定部材17がボルト部材50の上部を第2連結部材11に連結固定するように構成される。そして第1固定部材15及び第2固定部材17は、第1連結部材10及び第2連結部材11のそれぞれをボルト部材50の軸方向に沿って押圧することにより、第1連結部材10及び第2連結部材11のそれぞれを天井吊り下げ物100の上面に押し付けた状態で固定する。このような構成によれば、ボルト部材50の上部と下部とを天井吊り下げ物100に固定することができるため、ボルト部材50の振動を有効に防止することができるのである。
【0069】
また、本実施形態の振れ止め装置1は、第1連結部材10と第2連結部材11とを結合して第1連結部材10と第2連結部材11とを一体化させる結合部材20,21を備えている。この結合部材20,21により、第1連結部材10と第2連結部材11とが一体化するので、仮に地震が発生しても、第1連結部材10と第2連結部材11とが相対変位することを抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態の振れ止め装置1は、第1連結部材10及び第2連結部材11のそれぞれの左右両端部に、天井吊り下げ物100を天井構造から吊り下げた状態に支持する吊りボルト9を取り付けるための取付部14aを有している。この取付部14aには、防振部材60が取り付けられ、防振部材60を介して吊りボルト9を第1連結部材10及び第2連結部材11のそれぞれに取り付けるようにしている。そのため、天井吊り下げ物100の稼働中に天井吊り下げ物100が振動を発生させたとしても、その振動が吊りボルト9に伝わることを抑制することが可能であり、上のフロアを静寂な状態に維持することができる。
【0071】
また、本実施形態の振れ止め装置1は、吊りボルト9の上端部に、天井構造に取り付けられたボルト部材4に固定するための天井設置金具80を予め取り付けることが可能である。吊りボルト9の上端部に天井設置金具80を予め取り付けておくことにより、天井吊り下げ物100を天井空間に吊り下げた状態に設置する際の作業効率を向上させることができるという利点がある。
【0072】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態において説明したものに限定されるものではない。すなわち、本発明には、上記各実施形態において説明したものに種々の変形例を適用したものの含まれる。
【0073】
例えば、上記実施形態では、振れ止め装置1が、天井吊り下げ物100の取付片110と第1連結部材10又は第2連結部材11との間に、吊りボルト9とは異なるボルト部材50を取り付ける例を説明した。しかし、上述した振れ止め装置1は、そのような取り付け態様に限られるものではない。例えば、吊りボルト9の下端部が取付片110に取り付けられる場合であっても、振れ止め装置1は、天井吊り下げ物100の左右両側面103,104において吊りボルト9の下部の振動を抑制できるように取り付けることが可能である。図12は、その取り付け態様を例示する図である。図12に示す例では、吊りボルト9の下部が天井吊り下げ物100の取付片110に接続されている。振れ止め装置1は、その吊りボルト9を第1連結部材10及び第2連結部材11の挿通部13に挿通し、取付片110の上方の位置で吊りボルト9を天井吊り下げ物100に固定している。そのため、図12に示すような取り付け態様であっても、吊りボルト9の下部の振動を抑制することができる。
【0074】
また、上記実施形態では、天井吊り下げ物100の左右両側面103,104の下部近傍位置に取付片110が設けられる場合を例示した。しかし、取付片110は、必ずしも天井吊り下げ物100の左右両側面103,104の下部近傍に設けられていなくてもよく、例えば左右両側面103,104の中央位置に設けられていても良いし、また中央位置よりも若干上側の位置に設けられていても良い。すなわち、天井吊り下げ物100の左右両側面103,104において取付片110は、天井吊り下げ物100の上面高さ位置よりも低い位置に設けられているものであれば良い。
【0075】
また、上記実施形態では、第1連結部材10と第2連結部材11とが別体として構成され、結合部材20,21を用いて第1連結部材10と第2連結部材11とを結合して一体化する例を説明した。しかし、上述した第1連結部材10と第2連結部材とは予め一体化された1つの連結部材として構成されるものであっても構わない。
【0076】
また、上記実施形態では、天井吊り下げ物100の一例として隠蔽式の空気調和機を例示した。しかし、上述した振れ止め装置1を適用可能な物体は、必ずしも空気調和機に限られない。すなわち、上述した振れ止め装置1は、箱形形状を有する物体であれば、どのような物体であっても良好な振れ止め効果を発揮させることができる装置である。
【符号の説明】
【0077】
1…振れ止め装置、10…第1連結部材(連結部材)、11…第2連結部材(連結部材)、14…挿通部、14a…取付部、15…第1固定部材(固定部材)、17…第2固定部材(固定部材)、20,21…結合部材、30…第1規制部材、40…第2規制部材、100…天井吊り下げ物。
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