(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】型枠、コンクリート製品の製造方法及びコンクリート製品
(51)【国際特許分類】
B28B 7/10 20060101AFI20220915BHJP
B28B 7/36 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B28B7/10 B
B28B7/36
(21)【出願番号】P 2019205055
(22)【出願日】2019-11-12
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】592210865
【氏名又は名称】森山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】森山 佳治
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-005805(JP,A)
【文献】特開2004-351813(JP,A)
【文献】特開2005-042328(JP,A)
【文献】特開2005-169819(JP,A)
【文献】実開昭56-168313(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 7/00 - 7/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し、被成形物であるコンクリート基部の外形面を形成する外型枠と、
該外型枠の前記開口部の少なくとも一部を閉塞して配置される内型枠基体と、前記外型枠の前記開口部の反対側に位置する基底面と略対向する姿勢で該内型枠基体に着脱可能に取付けられる被覆部材とを有し、同コンクリート基部の内形面を形成する内型枠とを備え、
前記被覆部材は、コンクリート製であると共に、前記内型枠に取付けられる側の面は平滑であり、前記内型枠に取付けられる側と逆側面は空気溜まり痕が形成されて非平滑である
型枠。
【請求項2】
前記被覆部材の側部に、生コンクリートが浸入可能な凹部が形成されている
請求項1に記載の型枠。
【請求項3】
前記凹部の内面は、空気溜まり痕が形成されている
請求項2に記載の型枠。
【請求項4】
被成形物であるコンクリート基部の内形面の少なくとも一部を被覆する被覆部材が着脱可能に取付けられた内型枠を、前記被覆部材が前記コンクリート基部の外形面を形成する外型枠の開口部の反対側に位置する基底面と略対向する姿勢で、前記外型枠の前記開口部の少なくとも一部を閉塞する位置に配置する内型枠配置工程と、
該内型枠配置工程で配置された内型枠と外型枠との間の空間に、生コンクリートを打設する打設工程と、
該打設工程で、打設された生コンクリートが固化する際コンクリート基部と一体に形成された前記被覆部材を前記内型枠から取外すと共に、前記外型枠から前記コンクリート基部を型抜きする型枠取外し工程とを備え、
前記被覆部材は、コンクリート製であると共に、前記内型枠に取付けられる側の面は平滑であり、前記内型枠に取付けられる側と逆側面は空気溜まり痕が形成されて非平滑である
コンクリート製品の製造方法。
【請求項5】
前記内型枠配置工程の前に、前期内型枠に取付けられる側の面が平滑である前記被覆部材を製造する被覆部材製造工程とを備える
請求項4に記載のコンクリート製品の製造方法。
【請求項6】
内形面の表面に空気溜まり痕による凹凸部分を有するコンクリート基部と、
該コンクリート基部の前記凹凸部分を被覆して同コンクリート基部と一体に形成されると共に、同コンクリート基部と一体に形成された際に同コンクリート基部の表面側に表れる面が平滑面である被覆部材とを備え、
前記被覆部材は、コンクリート製であると共に、前記
平滑面と逆側面は空気溜まり痕が形成されて非平滑である
コンクリート製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠、コンクリート製品の製造方法及びコンクリート製品に関する。詳しくは、コンクリート製品の内形面の表面に空気溜まり痕による凹凸部分が表れるのを抑制可能な型枠、コンクリート製品の製造方法及びコンクリート製品に係るものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製品は、まず、セメント、砂、砂利、水及び混和剤を混成して生コンクリート(固化する前のコンクリート)を生成し、その後、型枠に生コンクリートを打設し、その生コンクリートが型枠の内側の形状に沿って固化することで形成される。
【0003】
この生コンクリートの生成時及び型枠への打設時には、生コンクリート内に空気が混入しやすく、空気泡となって生コンクリート表面に浮き上がり、コンクリート表面の空気泡が集まって一定の大きさの空気溜まりとなることが多々ある。この空気溜まりが残存した状態のまま、生コンクリートが固化すると、コンクリート製品の表面に凹凸の形状が形成される。この場合、コンクリート製品の外観が損なわれることになり、強度には問題がないものの、コンクリート製品の商品価値が下がってしまい、補修するための手間が生じていた。
【0004】
そこで、特許文献1に示す発明「コンクリート製品の製造方法」が提案されている。この発明は、外型枠に生コンクリートを打設した後、生コンクリート中に内型枠を沈めてコンクリート製品を製造するものであり、生コンクリート中に内型枠を沈めることで、空気泡が除去されやすいことを利用したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている「コンクリート製品の製造方法」は、内型枠周辺の生コンクリートの表面の空気泡を除去することはできても、生コンクリートが固化する際、生コンクリート内部から徐々に上昇する空気泡の発生を抑制できるものではない。
【0007】
即ち、特許文献1では、明細書の段落番号[0012]に「外型枠と内型枠で挟まれた底部の気泡、特に底部の型枠表面や補強筋の表面に付着した気泡をも除去することができる」との記載があるが、実際のところ、外型枠に流し込まれた生コンクリートと内型枠の底面の間に、生コンクリート内部から徐々に上昇する空気泡を容易に除去できるものではない。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みて創案されたものであり、コンクリート製品の内形面の表面に空気溜まり痕による凹凸部分が表れるのを抑制可能な型枠、コンクリート製品の製造方法及びコンクリート製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の型枠は、開口部を有し、被成形物であるコンクリート基部の外形面を形成する外型枠と、該外型枠の前記開口部の少なくとも一部を閉塞して配置される内型枠基体と、前記外型枠の前記開口部の反対側に位置する基底面と略対向する姿勢で該内型枠基体に着脱可能に取付けられる被覆部材とを有し、同コンクリート基部の内形面を形成する内型枠とを備える。
【0010】
ここで、外型枠が開口部を有することによって、開口部から外型枠内に生コンクリートを注入することができる。
【0011】
また、被成形物であるコンクリート基部の外形面を形成する外型枠と、コンクリート基部の内形面を形成する内型枠によって、外型枠により外形が模られ、内型枠により内形が模られたコンクリート基部が形成される。
【0012】
また、内型枠が、外型枠の開口部の少なくとも一部を閉塞して配置される内型枠基体を有することによって、外型枠の開口部の開口縁近傍に内型枠基体を配置することができる。これにより、内型枠基体と外型枠の間に、生コンクリートを打設可能な打設用空間が形成される。
【0013】
また、外型枠の開口部の反対側に位置する基底面と略対向する姿勢で内型枠基体に取付けられる被覆部材を有することによって、外型枠と内型枠の打設用空間に生コンクリートが打設された際、生コンクリートは、被覆部材の、外型枠の開口部の反対側に位置する基底面と略対向する側の面に接しながら、被覆部材と一体となって固化する。
【0014】
そして、このとき、生コンクリートが固化してコンクリート基部が形成される過程で、コンクリート基部と被覆部材との間に空気溜まり痕による凹凸部分が形成されるが、この凹凸部分は被覆部材で被覆されるので、凹凸部分がコンクリート製品の表面に表れることを抑制することができる。
【0015】
即ち、コンクリート基部の表面に形成された空気溜まり痕による凹凸部分は、以下のように形成される。まず、生コンクリートが固化する過程で内部に含まれる空気泡が徐々に内型枠側に移動し、生コンクリートと被覆部材の間に空気溜まりが形成される。そして、この空気溜まりが残存した状態で生コンクリートが固化すると、コンクリート基部に空気溜まり痕による不規則な凹凸部分が形成される。なお、空気溜まりは、一定の面積を有するものに限られず、コンクリート基部の表面に表れる微細な空気泡も含むものとする。
【0016】
また、内型枠基体に被覆部材が着脱可能に取付けられたことにより、生コンクリートが固化してコンクリート基部が形成された後、被覆部材を内型枠基体から取外すことができる。即ち、内型枠基体に取付けられた被覆部材は、生コンクリートが固化する過程でコンクリート基部と一体に形成されており、被覆部材を内型枠基体から取外すことで、被覆部材が一部に取込まれたコンクリート製品が製造される。このとき、コンクリート基部に形成された空気溜まり痕による凹凸部分は、内型枠基体から取外された被覆部材によって被覆されるので、コンクリート製品の内形面の表面に空気溜まり痕による凹凸部分が表れるのを抑制することができる。
【0017】
また、被覆部材の、内型枠基体に取付けられる側の面が平滑である場合には、被覆部材によってコンクリート製品の凹凸部分が被覆されるだけでなく、コンクリート製品が被覆部材と一体となって形成された際、被覆部材の平滑面をコンクリート製品の表面側に配置することができる。
【0018】
また、被覆部材の側部に、生コンクリートが浸入可能な凹部が形成されている場合には、凹部に浸入し固化したコンクリートによるアンカー効果によって、被覆部材をコンクリート基部と、より強固に一体に形成することができる。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明のコンクリート製品の製造方法は、被成形物であるコンクリート基部の内形面の少なくとも一部を被覆する被覆部材が着脱可能に取付けられた内型枠を、前記被覆部材が前記コンクリート基部の外形面を形成する外型枠の開口部の反対側に位置する基底面と略対向する姿勢で、前記外型枠の前記開口部の少なくとも一部を閉塞する位置に配置する内型枠配置工程と、該内型枠配置工程で配置された内型枠と外型枠との間の空間に、生コンクリートを打設する打設工程と、該打設工程で、打設された生コンクリートが固化する際コンクリート基部と一体に形成された前記被覆部材を前記内型枠から取外すと共に、前記外型枠から前記コンクリート基部を型抜きする型枠取外し工程とを備える。
【0020】
ここで、被成形物であるコンクリート基部の内形面の少なくとも一部を被覆する被覆部材が着脱可能に取付けられた内型枠を、前記被覆部材が前記コンクリート基部の外形面を形成する外型枠の開口部の反対側に位置する基底面と略対向する姿勢で、前記外型枠の前記開口部の少なくとも一部を閉塞する位置に配置する内型枠配置工程によって、外型枠の開口部の開口縁近傍に内型枠基体を配置することができる。これにより、内型枠基体と外型枠の間に、生コンクリートを打設可能な打設用空間が形成される。
【0021】
また、このとき、外型枠と内型枠基体の間に、外型枠の開口部の反対側に位置する基底面と略対向する姿勢で被覆部材が配置される。これにより、後の工程である打設工程で外型枠と内型枠の打設用空間に生コンクリートが打設された際、生コンクリートと被覆部材の間に空気溜まり痕による凹凸部分が形成されるが、被覆部材によってこの凹凸部分は被覆されるので、コンクリート製品の表面に凹凸部分が表れるのを抑制することができる。
【0022】
また、被覆部材は着脱可能に内型枠に取付けられているので、コンクリート基部と一体に形成されるまでは内型枠に取付けておき、コンクリート基部と一体に形成された後は、内型枠から取外すことができる。
【0023】
また、内型枠配置工程で配置された内型枠と外型枠との間の空間に、生コンクリートを打設する打設工程によって、生コンクリートは、被覆部材の外型枠の開口部の反対側に位置する基底面と略対向する側の面に接しながら、被覆部材と一体となって固化する。このとき、被覆部材はコンクリート基部に形成された凹凸部分を被覆するので、コンクリート製品の内形面の表面に空気溜まり痕による凹凸部分が表れるのを抑制することができる。
【0024】
また、打設工程で、打設された生コンクリートが固化する際コンクリート基部と一体に形成された被覆部材を内型枠から取外すと共に、外型枠からコンクリート基部を型抜きする型枠取外し工程によって、コンクリート基部と被覆部材が一体に形成されたコンクリート製品が製造される。
【0025】
また、内型枠配置工程の前に、内型枠に取付けられる側の面が平滑である被覆部材を製造する被覆部材製造工程によって、後の工程である内型枠配置工程において、平滑面が内型枠に対向する姿勢で被覆部材が内型枠に取付けられる。これにより、被覆部材の平滑面はコンクリート基部の表面側に配置されるので、コンクリート製品の表面の外観を損ねることがない。
【0026】
また、上記課題を解決するために、本発明のコンクリート製品は、内形面の表面に空気溜まり痕による凹凸部分を有するコンクリート基部と、該コンクリート基部の前記凹凸部分を被覆して同コンクリート基部と一体に形成されると共に、同コンクリート基部と一体に形成された際に同コンクリート基部の表面側に表れる面が平滑面である被覆部材とを備える。
【0027】
ここで、内形面の表面に空気溜まり痕による凹凸部分を有するコンクリート基部と、コンクリート基部の凹凸部分を被覆してコンクリート基部と一体に形成される被覆部材によって、被覆部材がコンクリート基部の凹凸部分を被覆しながらコンクリート基部と一体に形成されるので、コンクリート製品の内形面の表面に空気溜まり痕による凹凸部分が表れるのを抑制することができる。
【0028】
また、コンクリート基部と一体に形成された際にコンクリート基部の表面側に配置される面が平滑面である被覆部材によって、コンクリート基部の表面側に被覆部材の平滑面が配置されるので、コンクリート製品の表面の外観を損ねることがない。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る型枠、コンクリート製品の製造方法及びコンクリート製品は、コンクリート製品の内形面の表面に空気溜まり痕による凹凸部分が表れるのを抑制可能な型枠、コンクリート製品の製造方法及びコンクリート製品となっている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施の形態に係る型枠及びコンクリート製品の分解説明図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る外型枠及び内型枠を組み合わせた状態を表す説明図である。
【
図3】
図3(a)は本発明の実施の形態に係る内型枠の側面図であり、
図3(b)は内型枠の正面図である。
【
図4】
図4(a)は本発明の実施の形態に係る被覆板体を製造する際に用いられる型枠の斜視図であり、
図4(b)は、本発明の実施の形態に係る被覆板体を型枠から取外している状態を説明する説明図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るコンクリート製品の製造方法を示す説明図である。
【
図6】本発明の被覆板体の他の形態を表わした説明図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係るコンクリート製品の製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の型枠Aについて、
図1乃至
図4を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0032】
型枠Aは、上部が開口した箱状の外型枠A1と、外型枠A1の内部の所定位置に配置される内型枠A2から成る。外型枠A1と内型枠A2を重ねることで、
図2に示すように、内部に空間SAが生じる。この空間SAに生コンクリート(固化する前のコンクリート)を打設して、コンクリート基部2が形成される。また、このとき、内型枠A2の内型枠A20に取付けられた被覆板体1は、コンクリート基部2と一体となってコンクリート製品Pを形成する。
以下、詳述する。
【0033】
〔型枠Aについて〕
外型枠A1は、台座A10、側板A11、A11及び妻板A12、A12で囲われて、上部に開口部A16が形成された、中空かつ平面視で略四角形の形状を有する。側板A11、A11及び妻板A12、A12は、台座A10に回動可能、かつ
図1に示すような閉じ位置で固定可能に取付けられている。
【0034】
外型枠A1の妻板A12、A12にはクランプ部材A13a、A13aが設けられており、内型枠A2に設けられたクランプ受け部材A13b、A13bと係合することで、内型枠A2を外型枠A1に固定することができる。
【0035】
具体的には、内型枠A2は、内型枠基体A20と被覆板体1とから成り、外型枠A1の上部の開口部分を一部閉塞するようにして、クランプ部材A13a及びクランプ受け部材A13bによって外型枠A1に着脱自在に取付けられている。
【0036】
また、内型枠A2は、
図1において左右方向に長い内型枠基体A20と、内型枠基体A20の下面A20aに着脱可能に取付けられ、左右方向に長い被覆板体1より成る。被覆板体1は本実施の形態においてはコンクリート製であるが、特にこれに限られるものではなく、例えば樹脂製、木製、金属製、ゴム製のものなどを用いることも可能である。
【0037】
また、被覆板体1は、平滑な上面10と、上面10の反対側に位置する非平滑な下面11とを有し、平滑な上面10は、内型枠基体A20の下面A20aに対向して接するように、4つの固定用ボルトA15a、及び4つのインサートナットA15bにより内型枠基体A20に取付けられる。
【0038】
即ち、コンクリート基部2が被覆板体1と一体となって形成された後に内型枠基体A20から被覆板体1を取り外すと、被覆板体1の平滑な上面10は、コンクリート基部2の表面側に配置される。また、非平滑な下面11は、被覆板体1がコンクリート基部2と接して一体に形成される際、被覆板材1の下面11で模られる面で形成された内底面20に接しているので、コンクリート製品Pの表面に表れることはない。よって、コンクリート製品Pの外観を損ねることはない。
【0039】
なお、上面10を内型枠基体A20の下面A20aに取付ける際、ゴム製のマットなどを間に介在させて充分に密着させることも可能である。この場合には、上面10と内型枠基体A20の下面A20aとの間に生コンクリートが浸入して平滑な上面10上に凹凸が形成されるのを防ぐことができる。
【0040】
また、本実施の形態においては、被覆板体1は、4つの固定用ボルトA15a及び4つのインサートナットA15bによって内型枠基体A20に取付けられている。なお、被覆板体1を内型枠基体A20に取付ける手段は、上面10にインサートナットA15bを設けることに限られるものではなく、被覆板体1の側面にインサートナットを設けるなど他の任意の手段を用いることができる。さらに、インサートナットA15bを被覆板体1に取付ける際、被覆板体1の上面10にインサートナットA15bが取付けられるが、このインサートナットA15bは、蓋などの公知の閉塞手段で平らに塞ぐことができるので、上面10を平滑に保つことができる。
【0041】
また、
図1、
図2及び
図3に示すように、外型枠A1の妻板A12、A12には、その上部A12a、A12aから下方に向けて内型枠基体A20の両端部A20b、A20bが隙間なく嵌入可能な幅に切り欠かれた切欠き部A12b、A12bが形成されている。内型枠基体A20の両端部A20b、A20bがこの切欠き部A12b、A12bに嵌合されることで、内型枠基体A20は、外型枠A1に固定して取付けられる。
【0042】
また、内型枠基体A20の長手方向の両側面A20c、A20cには、クランプ部材A13a、A13aと係合可能なクランプ受け部材A13b、A13bが取付けられている。クランプ部材A13a、A13aとクランプ受け部材A13b、A13bが係合することで、内型枠A2は、
図2で示すように、外型枠A1に固定される。なお、外型枠A1と内型枠A2との固定手段は、クランプ部材に限られるものではなく、ネジによる固定など他の任意の手段を用いることができる。
【0043】
また、
図3(a)(b)に示すように、被覆板体1の長手方向の側面12、12には、長手方向と平行に溝12a、12aが設けられている。そして、空間SAに生コンクリートが打設されてこの溝12a、12aに生コンクリートが浸入し、生コンクリートが固化してコンクリート基部2が形成されると、浸入した部分のアンカー効果によりコンクリート基部2と被覆板体1を強固に一体に形成することが可能となる。
【0044】
〔コンクリート基部2について〕
図2に示すように、外型枠A1及び内型枠A2を合わせた際、内部に形成される空間SA内に生コンクリートを打設してコンクリート製品Pのコンクリート基部2が形成される。
【0045】
具体的には、外型枠A1と内型枠A2の間の空間SAに生コンクリートを打設することで、外型枠A1の内面A14と内型枠A2の外周面A21の形状に沿った断面視略「U」字状のコンクリート基部2が形成される。
【0046】
ここで、コンクリート基部2が固化する前、生コンクリートの内部に含まれていた空気泡が徐々に上昇し、内型枠A2に取付けられた被覆板体1の下面11と、下面11と接する、コンクリート基部2の内底面20との間に、
図5(d)、
図5(e)に示すように、空気溜まり21が形成される。この空気溜まり21は、下面11とコンクリート基部2の内底面20との間に形成されることから除去するのが難しく、多くの場合空気溜まり21が残存した状態のままで生コンクリートが固化する。
【0047】
この空気溜まり21が除去されずに残存した状態でコンクリート基部2が固化すると、コンクリート基部2の内底面20には、空気溜まり21の形状を模った凹凸状の空気溜まり痕22が形成される。
【0048】
この空気溜まり痕22は、コンクリート基部2が固化する際、コンクリート基部2と一体となる被覆板体1によって覆われてコンクリート製品Pの表面に表れないので、空気溜まり痕22でコンクリート製品Pの外観を損なわれてしまうことを防止できる。
【0049】
〔被覆板体1について〕
被覆板体1は、本実施例においてはコンクリート製であり、型枠Bにより形成される。型枠Bは、
図4(a)に示すように、上部が開口した中空の形状を有し、台座B1、側板B2、B2及び妻板B3、B3から成る。側板B2、B2及び妻板B3、B3は、台座B1に回動可能、かつ
図4(a)に示すような閉じ位置で固定可能に取付けられており、型枠B内に生コンクリートを打設して被覆板体1を形成することができる。なお、側板B2、B2及び妻板B3、B3は、台座B1から取外して分解可能な構造にすることもできる。
【0050】
また、台座B1には、4つの有底筒状のインサートナットA15bが、
図4(a)及び(b)に示すように、その開口端A15cが台座B1に接した状態で、任意の固定手段により取付けられている。この状態で開口部B4から生コンクリートが型枠B内に打設されると、生コンクリートが固化する際、4つのインサートナットA15bが埋設された状態で被覆部材1が形成される。そして、インサートナットA15bの開口端A15cは被覆板体1の裏面1b側に表れるので、開口端A15c側から固定用ボルトA15aをインサートナットA15bに螺合することができる。
【0051】
ここで、
図4(b)に示すように、型枠Bの開口部B4から露出する被覆板体1の表面1aには、型枠B内に打設された生コンクリート内の空気泡が上昇して空気溜まり13が形成される。この空気溜まり13を全て除去することは困難であるため残存し、生コンクリートが固化する際、表面1aに空気溜まり痕14が形成され、非平滑な面となる。
【0052】
この表面1aを下面11として、被覆板体1を内型枠基体A20に取付けることで、被覆板体1がコンクリート基部2と一体となって結合する際、下面11はコンクリート基部2と接する。これにより、非平滑面である下面11がコンクリート製品Pの表面に表れないようにすることができる。
【0053】
なお、被覆板体1を内型枠基体A20に取付ける際、ゴム製のマットを両者の間に介在させて、被覆板体1と内型枠基体A20を充分に密着させることも考えられる。このようにすることで、空間SAに生コンクリートを打設した際、上面10と内型枠基体A20の下面A20aとの間に生コンクリートが浸入して平滑な上面10上に凹凸が形成されるのを防ぐことができる。
【0054】
一方、表面1aの反対側の面である裏面1bは、台座B1に接している。ここで、空気泡は上方に移動するため裏面1b側には形成されず、裏面1bは平滑な面となる。この裏面1bを上面10として、内型枠基体A20の下面A20aに対向するように取付ける。これにより、コンクリート基部2が形成される際、上面10はコンクリート基部2の表面に表れると共に、被覆板体1がコンクリート基部2に生じた空気溜まり痕22を被覆して隠すので、空気溜まり痕22がコンクリート製品Pの表面に表れることはなく、コンクリート製品Pの外観を損なうことを防止できる。
【0055】
なお、型枠Bの開口部B4から露出する被覆板体1の表面だけでなく、溝12a、12aの下内面領域12b、12bにも、
図4(b)に示すように、空気溜まり15が形成され、その後凹凸のある形状の空気溜まり痕16となる。しかし、溝12a、12aの周りの空気溜まり痕16は、コンクリート基部2に覆われて、コンクリート製品Pの表面に表れることはないので、コンクリート製品Pの外観を損ねることはない。
【0056】
また、被覆板体の他の形状は特に限定されるものでなく、被覆板体1の形状以外にも
図6(a)~(d)に示すような形状が考えられる。例えば、
図6(a)に示す被覆板体1aは、略円弧状に張出して形成された下面1a1付近に空気溜まり(図示せず)が形成される。しかし、この空気溜まり或いはそれにより形成される空気溜まり痕は被覆板体1aで被覆されるので、コンクリート製品Pの表面に表れることはない。
【0057】
また、
図6(b)に示す被覆板体1bは、その下面1b1に複数の凸条部1b2が形成されており、これらの凸条部1b2の間の溝部分に空気溜まり(図示せず)が形成される。しかし、この空気溜まり或いはそれにより形成される空気溜まり痕は被覆板体1bで被覆されるので、コンクリート製品Pの表面に表れることはない。
【0058】
また、
図6(c)に示す被覆板体1cは、その下面1c1の略中央に一本の凸条部1c2が形成されており、これらの凸条部1c2の周囲に空気溜まり(図示せず)が形成される。しかし、この空気溜まり或いはそれにより形成される空気溜まり痕は被覆板体1cで被覆されるので、コンクリート製品Pの表面に表れることはない。
【0059】
また、
図6(d)に示す被覆板体1dは、その下面1d1に、半円状に切り欠かれた一本の溝部1d2が形成されており、これらの溝部1d2に空気溜まり(図示せず)が形成される。しかし、この空気溜まり或いはそれにより形成される空気溜まり痕は被覆板体1dで被覆されるので、コンクリート製品Pの表面に表れることはない。
【0060】
また、被覆板体の長さ及び幅は特に限定されるものではなく、任意に設定することができる。さらに、被覆板体1の厚みについては、被覆板体自体に強度を持たせるため少なくとも約5mm程度の厚さにすることが好ましいが、限定はされず、適宜設定できる。
【0061】
また、コンクリート基部2を被覆板体1と一体として形成する際、コンクリート基部2と被覆板体1との間に、アンカーとして金網などを介在させることも考えられるが、限定はされず、適宜設定できる。これにより、コンクリート基部2に被覆板体1を強固に取付けることができる。
【0062】
〔コンクリート製品Pについて〕
上述したように、コンクリート製品Pは、コンクリート基部2と被覆板体1から成る。コンクリート基部2の内底面20と被覆板体1の下面11を合わせて、コンクリート基部2と被覆板体1を一体に形成することで、コンクリート基部2の形成過程で生じる空気溜まり痕22、及び被覆板体1の形成過程で生じる空気溜まり痕14がコンクリート製品Pの表面に表れることを防止できる。
【0063】
また、コンクリート基部2が固化する際、被覆板体1はコンクリート基部2と一体に形成される。その後、外型枠A1から内型枠基体A20が取り外され、コンクリート基部2と被覆板体1から成るコンクリート製品Pが形成される。
【0064】
このとき、コンクリート基部2の空気溜まり痕22は、被覆板体1によって被覆されて、コンクリート製品Pの表面に表出することがない。また、被覆板体1自体の表面1a(下面11)に形成された凹凸部分がコンクリート基部2と接した状態で、被覆板体1とコンクリート基部2が一体に形成されることにより、下面11に形成された凹凸部分がコンクリート製品Pの表面に表れることはない。
【0065】
〔コンクリート製品Pの製造方法〕
コンクリート製品Pの製造方法は、まず被覆板体1を製造し、その後コンクリート基部2を被覆板体1と一体化しながら形成することで、コンクリート製品Pが形成される。
図4及び
図5を参照しながら説明する。
【0066】
(ST1)第1の打設工程
図4(a)(b)に示すように、型枠Bの開口部B4から生コンクリートを打設して、型枠Bから被覆板体1が形成される。このとき、固化する前の生コンクリートの内部に含まれる空気泡が徐々に上昇し、被覆板体1の表面1aに表れ、
図4(b)に示すように、空気溜まり13が形成される。この空気溜まり13は、被覆板体1が固化する際、凹凸の形状をした空気溜まり痕14となる。このように、表面1aは、空気溜まり痕14が形成された凹凸のある非平滑面となり、後述する下面11としてコンクリート基部2と接して一体化される。
【0067】
また、表面1aの反対側に位置する裏面1bは、
図4(b)に示すように、型枠Bの台座B1に接しており、また空気溜まりも形成されないことから平滑な面となる。この裏面1bを後述する上面10として、コンクリート基部2の表面に表れるように、コンクリート基部2と被覆板体1とを一体化させて固化させる。
【0068】
また、溝12a、12aの下内面領域12b、12bにも空気溜まり15が形成され、その後凹凸のある形状の空気溜まり痕16となる。このとき、
図4(b)に示すように、溝12a、12aの周りの空気溜まり痕16は、コンクリート基部2に覆われて、コンクリート製品Pの表面に表れることはないので、コンクリート製品Pの外観を損ねることはない。
【0069】
(ST2)被覆板体1の取外し工程
図4(b)に示すように、側板B2、B2及び妻板B3、B3を回動して、型枠Bから被覆板体1を取外す。
【0070】
(ST3)内型枠基体A20への被覆板体1の取付け工程
図5(a)に示すように、型枠Bから取り外した被覆板体1を、その平滑な面である上面10が下面A20aに対向して接するように、固定用ボルトA15a、インサートナットA15bを用いて取付ける。
【0071】
具体的には、被覆板体1の上面10側にインサートナットA15bを4か所に埋設する。また、内型枠基体A20の底板A20dの、埋設されたインサートナットA15bと対応する位置に固定用ボルトA15aを取付ける。そして、被覆板体1の上面10と内型枠基体A20の底面A20aを合わせて、固定用ボルトA15aをインサートナットA15bに螺合し、被覆板体1を内型枠基体A20に取付ける。このようにして、被覆板体1が取付けられた内型枠基体A20を内型枠A2とする。なお、本実施の形態において、インサートナットA15bは4か所に設けられているが、これに限られるものではなく、インサートナットの設置数は任意に定めることができる。
【0072】
また、固定用ボルトA15aが被覆板体1の厚みよりも長い場合には、被覆板体1の下面11から固定用ボルトA15aの先端が突出した状態で、被覆板体1が内型枠基体A20に取付られる。これにより、後述する第2の打設工程ST5で、生コンクリートと被覆板体1が接する領域が増えるので、被覆板体1とコンクリート基部2が、より強固に一体となって形成される。
【0073】
(ST4)内型枠A2の取付け工程
図5(b)に示すように、内型枠A2を外型枠A1に、クランプ部材A13a、A13a及びクランプ受け部材A13b、A13bを用いて取付ける。具体的には、型枠Aの妻板A12、A12に設けられたクランプ部材A13a、A13aと、内型枠基体A20の両側面A20c、A20cに設けられたクランプ受け部材A13b、A13bを係合させる。これにより、内型枠A2は外型枠A1に固定される。
【0074】
(ST5)第2の打設工程
図5(c)に示すように、外型枠A1と内型枠A2の間に形成された空間SAに生コンクリートを打設する。このとき、生コンクリートが固化するに伴って、内型枠基体A20に取付けられた被覆板体1は、コンクリート基部2と一体に形成されて、コンクリート製品Pが形成される。
【0075】
(ST6)コンクリート製品Pの形成工程
生コンクリート内に含まれていた空気泡が徐々に上昇して、コンクリート基部2の内底面20と被覆板体1の下面11との間に空気溜まり21が形成される。この空気溜まり21を取り除くことは難しく、生コンクリートが固化する際、空気溜まり21の形状をかたどった空気溜まり痕22が形成される。また、乙面11が非平滑面であることで、空気溜まり21は移動しにくく、内型枠基体A20の側面に沿って上昇することが抑止でき、空気溜まり痕22がコンクリート基部2の上面(
図2で示す、外型枠A1と内型枠A2の間から露出している面)に表れることも抑制できる。
【0076】
また、内型枠基体A20に取付けられた被覆板体1は、空気溜まり痕22を被覆しながらコンクリートの基部2と一体となって固化し、コンクリート製品Pが形成される。このとき、被覆板体1の上面10は内型枠基体A20に向けて取付けられているので、生コンクリートが固化した際、上面10は、コンクリートの基部2の表面側に配置される。これにより、コンクリート基部2の内底面20に形成された空気溜まり痕22は、被覆板体1に被覆されることによりコンクリート製品Pの表面上に表れにくくなる。よって、コンクリート製品Pの外観を損なうことはない。
【0077】
(ST7)型枠取外し工程
図5(d)(e)に示すように、外型枠A1から内型枠A2を取外して、外型枠A1からコンクリート製品Pを型抜きすることにより、コンクリート製品Pが完成する。
【0078】
以上の工程により、コンクリート製品Pの内形面の表面に空気溜まり痕が表れるのが抑制され、表面に凹凸のないコンクリート製品Pが形成される。なお、本実施の形態におけるコンクリート製品Pは、長さ900ミリ、幅490ミリ、高さ300ミリの大きさであり、河川の法面を構成する積みブロックやボックスカルバートとして利用することが可能である。この場合、積みブロックなどは、本実施の形態のコンクリート製品Pとは形状が異なる場合が多いが、被覆板体が着脱可能に内型枠に取付けられている点を説明しやすいように、断面略U字状の形状としている。
【0079】
以上により、本発明に係る型枠、コンクリート製品の製造方法及びコンクリート製品は、コンクリート製品の内形面の表面に空気溜まり痕による凹凸部分が表れるのを抑制可能な型枠、コンクリート製品の製造方法及びコンクリート製品となっている。
【符号の説明】
【0080】
1 被覆板体(被覆部材)
2 コンクリート基部
A 型枠
A1 外型枠
A2 内型枠
A10 台座(基底面)
A16 開口部
A20 内型枠基体
P コンクリート製品