(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】基板上の電子部品を焼結するための焼結プレス機および方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20220915BHJP
B30B 1/08 20060101ALI20220915BHJP
B30B 15/34 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01L21/52 F
B30B1/08
B30B15/34 Z
(21)【出願番号】P 2019536053
(86)(22)【出願日】2017-12-29
(86)【国際出願番号】 IB2017058520
(87)【国際公開番号】W WO2018122795
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】102017000000191
(32)【優先日】2017-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519232482
【氏名又は名称】エーエムエックス-オートマトリックス エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スチヴァロッチ,ニコラ
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-110744(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0078463(US,A1)
【文献】特表2016-507164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 21/60-21/607
H05K 3/32- 3/34
H05K 13/00-13/08
B30B 1/08
B30B 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(12)上の複数の電子部品(10)の焼結を行うための焼結プレス機であって、圧縮室(26)を共に画定するフロントヘッド(22)およびリアヘッド(24)を有するマルチロッドシリンダ(20)を備えるプレスユニット(14)を備え、前記フロントヘッド(22)において、互いに平行で独立した複数のプレッサロッド(28)が摺動自在に支持されており、
前記複数のプレッサロッド(28)は
それぞれのロッド軸を有し、
前記それぞれのロッド軸は、焼結対象のそれぞれの前記電子部品(10)の重心
が前記それぞれのロッド軸と一致するように配置され得るようになっており、前記複数のプレッサロッド(28)は、それぞれの前記電子部品(10)に印加すべき力に比例する
それぞれのスラスト断
面を有し、焼結対象の各電子部品の面積は既知であり、所定の焼結圧力については、前記圧縮室(26)において、前記圧縮室(26)をリアチャンバ(26’)とフロントチャンバ(26’’)とに密封分割するシール膜(30)が延在し、前記リアチャンバ(26’)は焼結圧力での圧力下で流体の
ための入口通路(32)と流体連通し、
前記フロントチャンバ(26’’)は、略平らな後壁(26a)によって画定されており、前記プレッサロッド(28)の後端部(28’)は前記後壁(26a)から突出しており、前記フロントチャンバ(26’’)の前記後壁(26a)に対する前記プレッサロッド(28)の前記後端部(28’)の突出、したがって前記シール膜(30)と前記後壁(26a)との間の距離が、前記シール膜(30)が略平らでありかつ前記プレッサロッド(28)の前記後端部(28’)に微かに触れるように配置される非アクティブ位置と、各プレッサロッド(28)に焼結圧力を相互に独立して伝達するために前記シール膜(30)が前記プレッサロッド(28)の前記後端部(28’)および前記後壁(26a)の両方に当接するアクティブ位置との間で前記シール膜(30)が変形可能であるように、選択される、焼結プレス機。
【請求項2】
前記シール膜(30)は前記マルチロッドシリンダ(20)の前記フロントヘッド(22)と前記リアヘッド(24)との間で周状に保持される、請求項1に記載のプレス機。
【請求項3】
前記プレスユニット(14)は、前記マルチロッドシリンダ(20)と一体であり、かつ複数のプレッサ加熱部材(42)を摺動自在に支持する加熱ブロック(40)を更に備え、各プレッサ加熱部材(42)は、焼結対象のそれぞれの電子部品(10)に作用するようにそれぞれのプレッサロッド(28)によって作動可能であり、前記加熱ブロック(40)には、前記プレッサ加熱部材(42)を加熱するための加熱手段(44)が設けられ、各プレッサロッド(28)は、それぞれのプレッサ
加熱部材(42)の平らな端面と接触する丸い
前端部(28’’)で終端している、請求項1または2に記載のプレス機。
【請求項4】
前記プレッサ加熱部材(42)
は棒状の形態である、請求項3に記載のプレス機。
【請求項5】
前記プレッサ加熱部材(42)は、前記基板(12)によって画定される平面に対して前記電子部品(10)が傾斜する可能性に適応するように、前記加熱ブロック(40)内に形成されたそれぞれの軸方向シート(46)内で横断方向に間隔を空けて摺動する、請求項3または4に記載のプレス機。
【請求項6】
前記プレスユニット(14)は、前記
プレッサロッド(28)の前端部、または存在する場合には、前記プレッサ加熱部材(42)の前記前端部を越えて延在す
るPTF
Eの保護フィルム(52)を支持する周辺フレーム(50)と、前記保護フィルム(52)に面し、前記保護フィルム(52)を
、前記プレッサロッド(28)の前端部(28’’)および/または前記プレッサ加熱部材(42)の前端部に付着/
前記プレッサロッド(28)の前端部(28’’)および/または前記プレッサ加熱部材(42)の前端部から剥離させるように適合された吸引/吹付手段とを備える、請求項
3~5のいずれか一項に記載のプレス機。
【請求項7】
前記プレスユニット(14)に面し、少なくとも1つの基板(12)を支持するように適合された支持ユニット(60)を備え、前記プレスユニット(14)および支持ユニット(60)の少なくとも一方は、後退停止位置と、前記電子部品(10)が前記プレッサロッド(28)または前記プレッサ加熱部材(42)と係合可能な前進プレス位置との間で、他方に対して軸方向に移動可能である、請求項1から6のいずれか一項に記載のプレス機。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか1項に記載の焼結プレス機を用いて基板上の電子部品を焼結する方法であって、
a)前記電子部品が前記
プレッサロッドまたは前記プレッサ加熱部材の前端部と接触するように、焼結対象の前記電子部品を有する基板を配置するステップと、
b)前記プレッサロッドまたは前記プレッサ加熱部材を所定の焼結温度に加熱するステップと、
c)前記圧縮室を所定の焼結圧力で加圧するステップと、
d)所定の焼結時間の間、前記焼結圧力および前記焼結温度を維持するステップと、
e)前記焼結プレス機から前記基板を取り出すステップと、
を含
み、
前記圧縮室を前記所定の焼結圧力で加圧するステップの間、前記シール膜が、前記プレッサロッドの前記後端部と前記フロントチャンバの前記略平らな後壁との両方に接触するように変形される、
方法。
【請求項9】
前記基板も焼結温度に加熱する、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
ステップa)の前に、保護フィルムを前記
プレッサロッドまたは前記プレッサ加熱部材の端部に付着させる、請求項
8または
9に記載の方法。
【請求項11】
ステップe)の後、前記圧縮室は前記焼結圧力よりも低いが大気圧よりも高い圧力にされ
る、請求項
8~
10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に電子部品を焼結するためのプレス機および当該プレス機を用いた焼結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
よく知られている通り、いくつかの電子用途では、ダイオード、IGBT、サーミスタ、MOSFETなどの集積電子部品は、焼結接着剤の層を介在させて基板に固定される。
【0003】
各部品を正確に焼結するために、各部品をその投影面(projection surface)に比例した力でプレスし、所定の時間の間、所定の温度にさらす必要がある。基板上に固定すべき電子部品は、互いにかなり異なる寸法、すなわち、互いにかなり異なる、対応するケーシングの投影面および厚さを有する可能性があるので、基板の全ての部品に作用する単一のプレッサ部材への圧力の印加は、所望の強度をすべての部品に印加しない。
【0004】
更に、全ての部品にとって、接着剤層の厚さは完全に同一でなく、かつ均一でない可能性があるという事実に起因する更なる複雑さを検討することは価値がある。
【0005】
これらの欠点を除去するために、格子状の個別プレスロールからなるプレス装置が提案されている。しかしながら、この解決策は、実施するのが非常に複雑でかつ高価であることは明らかである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、先行技術による装置の欠点および限界を打開することができる、支持体上の電子部品を焼結するためのプレス機および方法を提供することである。
【0007】
前記目的は、請求項1に記載の焼結プレス機および請求項10に記載の焼結方法によって達成される。
【0008】
従属請求項は、本発明の好ましい実施形態を説明している。
【0009】
一般的な実施形態によれば、焼結プレス機は、圧縮室を共に画定するフロントヘッドとリアヘッドとを有するマルチロッドシリンダを備えるプレスユニットを含む。
【0010】
フロントヘッドには、互いに平行でかつ独立したプレッサ(押圧;presser)ロッドが摺動自在に支持されている。各プレッサロッドは、焼結対象のそれぞれの電子部品と同軸であり、それぞれの電子部品に印加される力に比例するスラスト断面を有し、焼結対象の各電子部品の面積および所定の焼結圧力については既知である。
【0011】
圧縮室では、圧縮室をリアチャンバとフロントチャンバとに密封分割するシール膜が延在する。リアチャンバは、焼結圧力を実現するために、圧力下で流体の入口通路と流体連通している。プレッサロッドの後端部はフロントチャンバ内に突出している。シール膜は、リアチャンバが焼結圧力に加圧されると、シール膜が後端部に当接することによって変形し、各プレッサロッドに焼結圧力を伝達するよう、プレッサロッドの後端部と接触して配置される。
【0012】
したがって、このようなプレス機は、各部品に対してプレッサロッドを使用することにより、焼結対象の各電子部品にその表面に比例したスラスト力をかけることを可能にし、前記プレッサロッドの断面はプレス対象の表面によって選択される。
【0013】
しかしながら、単一の圧縮室を形成する単一のシリンダ、および全てのプレッサロッドに対するシール機能と全てのプレッサロッドに作用してそれらの寸法に適応するように変形するピストン機能との両方を果たす単一のシール膜を使用したことにより、プレス機の構造は少数のコンポーネントからなり、特にコンパクトである。
【0014】
一実施形態では、シール膜は、マルチロッドシリンダのフロントヘッドとリアヘッドとの間で周状に保持される。
【0015】
したがって、シール膜は、圧力下で流体の作用を受けたときに変形するが、圧縮室に対して軸方向に移動することはない。
【0016】
一実施形態では、プレスユニットは、マルチロッドシリンダと一体であり、プレッサ加熱部材を摺動自在に支持する加熱ブロックを更に備える。各プレッサ加熱部材は、それぞれのプレッサロッドと同軸であり、プレッサロッドによって作動され、焼結対象のそれぞれの電子部品に作用することができる。
【0017】
加熱ブロックには、プレッサ加熱部材を加熱するための加熱手段が設けられている。
【0018】
したがって、本実施形態では、焼結工程に必要な熱は、プレス動作を行う部材と同じ部材によって電子部品に伝達される。特定の加熱ブロックを使用することにより、マルチロッドシリンダ構造の単純化が可能になり、結果としてスラスト機能だけでなく、電子部品の加熱も実行される。
【0019】
一実施形態では、プレッサ加熱部材は、焼結対象のそれぞれの電子部品のケーシングの面積に略相当する断面積、または電子部品のケーシングの面積よりも大きい断面積を有する棒状の形態である。プレッサロッドは、対応する電子部品に対して重心位置で作用し、これにより、プレッサ部材は、プレッサロッドから受けるスラスト力を電子部品の表面にできるだけ一様に分布することが可能になる。
【0020】
一実施形態では、プレッサ加熱部材は、基板によって画定される平面に対して電子部品が傾斜する可能性に適応するよう、加熱ブロック内に形成されたそれぞれの軸方向シート(座部;seat)内で横断方向に間隔を空けて摺動する。
【0021】
一実施形態では、プレスユニットは、プレッサロッドの前端部、または存在する場合には、プレッサ加熱部材の前端部を越えて延在する例えばPTFEなどの保護フィルムを支持する周辺フレームを備える。吸引および吹付の手段は、前記保護フィルムの方向に向けられており、当該手段では、プレス動作の前に電気部品に接触するプレッサロッドまたはプレッサ部材の前端部に保護フィルムを付着させるために吸引で作動させることができ、またプレス動作の終了時に当該前端部から保護フィルムを除去するために吹付で作動させることができる。
【0022】
一実施形態では、プレス機は、プレスユニットに面し、少なくとも1つの基板を支持するように適合された支持ユニットを備える。
【0023】
プレスユニットおよび支持ユニットのうちの少なくとも一方は、後退停止位置と前進プレス位置との間で、他方に対して軸方向に移動することができ、電子部品はプレッサロッドまたはプレッサ部材と係合することができる。
【0024】
例えば、プレス機は、プレスユニットと支持ユニットとの両方を支持すると共に、長手方向ガイドが設けられたフレームを備え、プレスユニットと支持ユニットの少なくとも一方は、例えば油圧式または電気式アクチュエータの動作下で、その長手方向ガイドに沿って摺動する。
【0025】
一実施形態では、支持ユニットは、マルチロッドシリンダが及ぼすスラスト力を支持する固定リアクションブロックと、加熱ブロックと、可動リアクションブロックとを備える。
【0026】
加熱ブロックにより、部品の焼結に必要な熱を基板の下からもたらすことが可能になる。
【0027】
一実施形態では、少なくとも1つの変形シリンダは、それぞれの変形センサが関連付けられている固定リアクションブロック内に収容される。
【0028】
より詳細には、固定リアクションブロックは、それぞれの変形センサを備えた変形シリンダを支持しており、変形センサは、プレッサ、基板および可動リアクションブロックを介して圧縮ロッドが及ぼす全圧縮力を変換する。変形センサは150℃より高い温度で作動しなければならないので、石英製の変形センサが好ましい。
【0029】
上記焼結プレス機を用いる焼結方法は、以下の工程を含む。
【0030】
a.電子部品がプレッサロッドまたはプレッサ加熱部材の前端部と接触するように、焼結対象の電子部品を有する基板を配置する。
【0031】
b.プレッサロッドまたはプレッサ加熱部材を所定の焼結温度に加熱する。
【0032】
c.圧縮室を所定の焼結圧力で加圧する。
【0033】
d.所定の焼結時間の間、焼結圧力および焼結温度を維持する。
【0034】
e.焼結プレス機から基板を取り出す。
【0035】
一実施形態では、基板も焼結温度に加熱する。
【0036】
一実施形態では、工程a.)の前に、保護フィルムをプレッサロッドまたはプレッサ加熱部材の端部に付着させる。
【0037】
一実施形態では、工程e.)の後、圧縮室は、焼結圧力よりも低いが大気圧よりも高い圧力にされ、プレッサロッドおよび可能なプレッサ加熱要素は、次の新しい基板と接触する空きホルダとして機能する。
【0038】
本発明による焼結プレス機および方法の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら、単に非限定的な例の目的で提供される好ましい実施形態に関する以下の説明から容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明による焼結プレス機を使用する焼結部の概略平面図である。
【0040】
【0041】
【
図3】基板支持ユニット上の閉じられたプレスユニットの軸方向断面図である。
【0042】
【
図4】プレス機の基板支持ユニットのみの軸方向断面図である。
【0043】
【
図5】プレス機のプレスユニットのみの軸方向断面図である。
【0044】
【
図6】プレスユニットおよび基板支持ユニットの一部の拡大図であり、特に、加圧されていない圧縮室ならびに基板のそれぞれの電子部品と接触しているいくつかのプレッサロッドおよびプレッサ加熱部材が示されている。
【0045】
【
図6a】前の図と同様の図であるが、圧縮室が加圧されている。
【0046】
【
図7】基板の電子部品と接触しているいくつかのプレッサロッドおよびプレッサ加熱部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
添付の図面を参照して、基板12上の電子部品10の焼結を行うために本発明によるプレス機1を使用した、焼結部を以下に説明する。
【0048】
例えば、6つの基板12を収容するように適合されたパレット2に収容された基板12は、焼結プレス機1に到着する。
【0049】
基板12は、パレット2内に形成され、基板12を適切な突起上で支持するように適合されたそれぞれのシート内に配置される。
【0050】
基板12は、焼結接着剤層上に配置された焼結対象の電子部品10(例えば、IGBT、ダイオード、サーミスタ、MOSFET)を運ぶ。部品10は、所定の表面圧力、例えば30MPaで、所定の温度、例えば260℃で180~300秒間、処理されなければならない。
【0051】
焼結されていない基板12を有するパレット2については、電子部品10の位置を変更しないために、適度な速度で衝撃を与えずにスムーズに取り扱わなければならない。
【0052】
電子部品10はファミリー(電子部品群)によって多様化された厚さを有することを考慮して、それらの投影面に比例する力で電子部品10を直接プレスしなければならない。
【0053】
更に、例えば1μ/10mmの、基板-接着剤-電子部品アセンブリの任意の非平行性が補償されなければならない。
【0054】
図1に示すように、一実施形態では、焼結部は、少なくとも1つの、好ましくは2つの150℃までのパレット2の予熱ステーション3と、少なくとも1つの、好ましくは3つの50℃までのパレット2の冷却ステーション4とを備える。
【0055】
一実施形態では、焼結部は、例えば、6-jawセルフセンタリンググリッパを備えた、10kgの6軸タイプの関節ロボット5を備える。ロボット5は、パレット12を以下の間で操作する。
【0056】
-入口コンベア6と2つの予熱ステーション3のリーダ(reader)との間。
【0057】
-2つの予熱ステーション3と焼結プレス機1との間。
【0058】
-焼結プレス機1と3つの冷却ステーション4との間。
【0059】
-3つの冷却ステーション4と出口コンベア7との間。
【0060】
2つの予熱ステーション3は、それぞれの基板12の温度を温度150℃まで上昇させる。
【0061】
例えば、2つの予熱ステーション3は、PIDおよびPWM熱抵抗体PT100によって制御される外装電気カートリッジによって加熱される。
【0062】
図2に全体的に示されている焼結プレス機1は、少なくとも1つの、好ましくは図示されるように6つの基板12のために、頂部でプレスユニット14を支持し、底部で支持ユニット60を支持する垂直に延伸するフレーム8を備える。
【0063】
フレーム8には、長手方向ガイド9が設けられており、長手方向ガイド9に沿って、油圧式または電気式アクチュエータ80によって作動される支持ユニット60が摺動する。
【0064】
一実施形態では、支持ユニット60は、一定の加速および減速動作で、200mmのストロークを作動する。
【0065】
特に、支持ユニット60の上位置は、絶対に変更できず、最大250KNまでの力に動くことなく対抗するよう寸法決めされている。
【0066】
一実施形態では、200mmのストロークは、1Kwのブラシレスギヤードモータ80を用いて3秒以内で達成され、金型交換および保守機能に関しては、減速した速度でのジョグ(寸動)で実施することができる。
【0067】
一実施形態では、フレーム8はまた、焼結中に基板12とプレスユニット14との間に挿入される、例えばPTFEなどの保護フィルム52を交換するための、例えばブラシレスギヤードモータを備えた電動巻取り機90および電動巻戻し機92を支持する。
【0068】
一実施形態では、保護フィルム52は周辺フレーム50によって支持される。一実施形態では、この周辺フレーム50はまた、保護フィルム52の方向に向けられた吸引/吹付手段も支持する。
【0069】
更に、プレス機1は、PTFEフィルムとプレスユニット14との間の空気を吸引するための真空ポンプ(図示せず)を備える。
【0070】
一実施形態では、プレス機1はまた、焼結エリア内の静電荷を除去するための吹付イオン化装置(図示せず)も備える。
【0071】
一実施形態では、フレーム8はまた、支持ユニット60の交換を容易にするために、左右のハンドグリップ94を用いて挿入および除去することができる水平摺動ガイドも支持する。
【0072】
特に、
図3および
図4に示す実施形態では、支持ユニット60は、固定リアクションブロック62を備え、固定リアクションブロック62には、350℃で動作可能な変形センサ70をそれぞれ備える6つの変形シリンダ68が収容されている。
【0073】
支持ユニット60は、外装発熱抵抗体641を収容する加熱ブロック64を更に備える。
【0074】
支持ユニットは、6つの可動リアクションブロック66を更に備え、各可動リアクションブロック66にはそれぞれ温度センサ662が設けられている。
【0075】
特に、
図3および
図5に示す一実施形態では、プレスユニット14は、圧縮室26を共に画定するフロントヘッド22とリアヘッド24とを有するマルチロッド圧縮シリンダ20を備える。
【0076】
フロントヘッド22では、互いに平行かつ独立した複数のプレッサロッド28が摺動自在に支持される。各プレッサロッド28は、焼結対象のそれぞれの電子部品10と同軸でかつ重心にあり、それぞれの電子部品10に印加すべき力に比例するスラスト断面を有し、焼結対象の各電子部品の面積および所定の焼結圧力については既知である。
【0077】
用語「重心の(barycentric)」は、各プレッサロッド28が、それぞれの電子部品10の重心と一致するロッド軸を有することを意味する。
【0078】
圧縮室26内には、圧縮室をリアチャンバ26’とフロントチャンバ26’’とに密封分割するシール膜30が延在する。リアチャンバ26’は、制御流体の入口通路32と流体連通している。プレス機の動作中、制御流体は焼結圧力でリアチャンバ26’に入る。プレッサロッドの後端部28’はフロントチャンバ26’’内に突出している。
【0079】
より正確には、フロントチャンバ26’’は、略平らな底壁26aによって画定され、底壁26aからプレッサロッド28の後端部28’は突出している。
【0080】
圧縮室26内に圧力が存在しない場合、シール膜30は略平らであり、プレッサロッド28の後端部28’にわずかに接触するように配置される(
図6)。
【0081】
リアチャンバ26’が焼結圧力で加圧されると、シール膜30が変形し、それによってシール膜30が各プレッサロッド28の後端部28’に当接し、焼結圧力がプレッサロッド28に伝達される(
図6a)。
【0082】
より正確には、フロントチャンバ26’’の底壁26aに対するプレッサロッド28の後端部28’の突出、したがってシール膜30と前記底壁との間の距離は、リアチャンバ26’が焼結圧力で加圧されてシール膜30が変形するとき、特に
図6aに示すように、膜がプレッサロッド28の後端部28’だけでなくフロントチャンバ26’’の後壁26aにも当接するように選択される。
【0083】
この圧縮室の構成により、シール膜30は、制御流体が所望の焼結圧力でプレッサロッド28の単一の後端部28’に直接作用したかのように挙動する。換言すれば、シール膜30は、互いに独立した複数のシリンダ-ピストンシステムの挙動を模擬していることになる。
【0084】
一実施形態では、シール膜30は、マルチロッドシリンダ20のフロントヘッド22とリアヘッド24との間で周状に保持される。
【0085】
一実施形態では、プレスユニット14は、マルチロッドシリンダ20と一体であり、プレッサ加熱部材42を摺動自在に支持する加熱ブロック40を更に備える。各プレッサ加熱部材42は、それぞれのプレッサロッド28によって作動し、焼結対象のそれぞれの電子部品10に作用することができる。
【0086】
図7の斜視図は、異なる断面(断面積)の4つのプレッサロッド28を示しており、同様にこれらは異なる断面(断面積)のそれぞれのプレッサ加熱部材42に作用する。
【0087】
プレッサ加熱部材42は、支持ユニット60によって支持された基板12上に載っているそれぞれの電子部品10に当接して示されている。
【0088】
一実施形態では、プレッサロッド28は、プレッサ加熱部材42の平坦面42’と接触する丸みを帯びた前端部28’’を有する。例えば、プレッサロッド28の前端部28’’は球状に丸められており、焼結すべき対応する電子部品の重心点に圧縮力を集中させると同時に、プレッサロッド28とプレッサ部材42との間で熱的遮断を行う。このようにして、プレッサ加熱部材42は、プレスし加熱すべき電子部品の表面に容易に適応することができる。
【0089】
一実施形態では、プレッサ加熱部材42は、焼結対象のそれぞれの電子部品10のケーシングの面積に実質的に相当する断面積かまたはそれより大きい断面積を有する棒状の形態である。
【0090】
一実施形態では、マルチロッドシリンダ20は、単一のプレッサロッド28にその断面積に比例する力を与えて、全ての電子部品10に30MPaに相当する圧力を発生させることができる。
【0091】
一実施形態では、各基板12に対して、IGBT用の4つのプレッサロッドおよび部材、ダイオード用のプレッサロッドおよび部材、サーミスタ用の1つのプレッサロッドおよび部材、MOSFET用の1つのプレッサロッドおよび部材が、すなわち合計で48のプレッサ部材とそのプレッサロッドが備えられており、全て独立し、発生させるべきスラスト力に比例した異なる断面積を持つ。
【0092】
一実施形態では、圧縮室26は、最高35MPa(350バール)まで加圧することができる。
【0093】
上記の通り、プレッサ加熱部材42は、基板12上の焼結対象の電子部品10に圧縮力を伝達し加熱するという役割を有する。
【0094】
一実施形態では、加熱ブロック40は、外装抵抗体44および温度センサ45を備える。
【0095】
プレッサ部材42は、基板上の焼結対象の対応する電子部品10に対して重心に押されて、平行度を1μm/10mmに調整できるように適切な間隔で加熱ブロック40内で摺動する。
【0096】
電子部品10の厚さが変化しても、他の部品の焼結圧力に変化を引き起こさないことに留意すべきである。
【0097】
なお、上記の通り、各プレッサロッド28の軸はそれぞれの電子部品10の重心と一致しなければならないが、それぞれのプレッサロッド28の軸に対するプレッサ部材42の形状、断面および位置を、電子部品10の形状および/または基板上でのその位置に従って選択できることに留意すべきである。
【0098】
例えば、互いに非常に接近している、または矩形でない、もしくはサイズが非常に異なるなどの電子部品10を信頼性のある正確な方法で焼結するように、プレッサ部材28を選択することができる。
【0099】
2つの別々の部品、すなわち、略球形の表面28’’を介して接触するよう配置されたプレッサロッド28とプレッサ部材42とを備えるプレスユニット14の各プレッサ部材の実施形態により、マルチロッドシリンダ20と加熱ブロック40との間の熱的遮断が可能になることに留意すべきである。例えば、加熱ブロック40が300℃に達することができる温度で作動している間、冷却回路に接続されたマルチロッドシリンダ20は100℃未満に保つことができる。
【0100】
したがって、冷却されたマルチロッドシリンダ20は、加熱ブロック40よりも摩耗が少なく、交換頻度がはるかに低い。
【0101】
ここで、焼結サイクルについて説明する。
【0102】
焼結工程が進行する間、ロボット5は、入口コンベア6に到着するパレット2を管理し、それらを取り上げ、そして2つの使われていない予熱ステーション3のうちの1つにそれらを配置する。
【0103】
焼結工程の間、ロボット5はまた、3つの冷却ステーション4内に配置されているパレット2も管理する。プログラムされた冷却サイクルの終わりで、ロボットは、対応する冷却ステーションからパレットを取り上げ、それを出口コンベア7内に置く。
【0104】
焼結工程の終わりで、以下の工程が連続して実行される。
【0105】
マルチロッドシリンダ20は、約35MPaから約0.5MPaまで減圧される。このようにして、プレッサ加熱部材42は、所定の力を有する空きホルダとして役割を果たす。
【0106】
マルチロッドシリンダの減圧は、支持ユニット60のリアクションブロック内に収容されている圧力センサによって制御される。
【0107】
支持ユニットは、前進プレス位置から一定の加速および減速された動きをして下降し、200mmのストロークを完了する。
【0108】
周辺フレーム50は10mm降下し、それにより保護フィルム52を解放する。
【0109】
次いで、プレスユニット14の真空ポンプを徐々にパルス加圧して、当該フィルムをプレッサ部材から取り外す。
【0110】
不可欠なフィルムの一部をプレスユニットのプレッサの下に配置するために、保護フィルムの巻戻しリールおよび巻取りリールを作動させる。この操作は、好ましくは、新たに焼結された基板を含むパレットがまだ存在している状態で実施されなければならない。これにより、接着剤またはフィルム残滓が支持ユニット60上に落下すること、またはさらに悪い状況である焼結対象の基板上に落下することが防止される。
【0111】
ロボットはプレス機からパレットを取り上げ、それを3つの冷却ステーションのうちの空いているステーションに配置する。
【0112】
ロボットは、150℃での予熱サイクルを完了した焼結すべき基板を有するパレットを取り上げ、それを支持ユニット60内にゆっくりと置く。
【0113】
次いで、プレスユニット14と保護フィルムとの間を真空状態にして、フィルムをプレスユニット14のプレッサ部材に付着させる。
【0114】
ロボットが衝突エリアを離れるとすぐに、支持ユニット60は、一定の加速および減速動作で上昇する。特に、一実施形態では、パレットおよび対応する基板を有する支持ユニット60の最後の15ミリメートルの移動において、支持ユニット60はプレスユニット14の周辺フレーム50と当たるので、周辺フレーム50は持ち上げられる。支持ユニット60の最後の2ミリメートルの移動において、パレットハウジングの中央に配置されかつ支持ユニット60のそれぞれの可動リアクションブロック上に直接載っている基板は、保護フィルムで覆われたプレッサ部材に当たる。
【0115】
この工程において、わずかに加圧されているプレッサ部材42は後退し、結果として空きホルダとしての役割を果たす。
【0116】
支持ユニット60は、上側ストローク端位置に到達する。
【0117】
マルチロッドシリンダは、プログラムされた圧力で加圧される。
【0118】
マルチロッドシリンダの加圧は、各基板上のプレッサによって印加される累積圧縮力を測定する、対応する変形センサによって制御される。
【0119】
一実施形態では、基板の焼結温度は、下部加熱ブロック64および上部加熱ブロック40に収容されている外装カートリッジ抵抗体によって発生される。
【0120】
一実施形態では、焼結温度は、例えば適切に配置された熱抵抗体PT100を用いて、プレスユニットおよび支持ユニットにおいて独立して制御される。
【0121】
基板は、可動リアクションブロックを通って下から、およびプレッサ部材および保護フィルムを通って上から加熱されるのが好ましい。加熱条件は異なるので、基板への熱伝達の差を補償するために、加熱温度を上下で区別することは可能である。
【0122】
一実施形態では、基板上の電子部品は、プログラムされた時間(例えば300秒)の間、温度260℃に維持され、30MPaでプレスされて、基板上の部品の焼結が行われる。
【0123】
焼結時間が経過すると、マルチロッドシリンダは減圧され、プレス機は上記の通り再び開かれる。
【0124】
当業者は、以下の特許請求の範囲を逸脱することなく、付随的な必要性を満たすために、本発明による焼結プレス機およびその方法の実施形態に対していくつかの変更、調整、適応、または機能的に同等な他のものと交換してもよい。可能な実施形態に属するとして記載された構成の各々は、記載された他の実施形態に関わらず達成され得る。