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  • 特許-内装継目処理方法及びその構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】内装継目処理方法及びその構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/02 20060101AFI20220915BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20220915BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
E04F13/02 C
E04F13/07 E
E04F13/07 G
E04F13/08 Y
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021198069
(22)【出願日】2021-12-06
【審査請求日】2021-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521152493
【氏名又は名称】TRENCH株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】行方 誠
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-070688(JP,A)
【文献】特開2005-029995(JP,A)
【文献】特開平02-272159(JP,A)
【文献】特開昭58-195660(JP,A)
【文献】特開2002-146990(JP,A)
【文献】特開平10-317630(JP,A)
【文献】特開2007-205024(JP,A)
【文献】特開2017-186891(JP,A)
【文献】特許第6163283(JP,B2)
【文献】特開2010-229630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/02
E04F 13/07
E04F 13/08
E04F 13/06
E04B 1/682
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2内装用ボードの端面を互いに隣接させて配置し、前記第1及び第2内装用ボード間に溝状の継目部を形成する継目形成工程と、
前記継目形成工程の後に、前記継目部に不定形シーリング材を充填し充填部を形成する充填工程と、
前記充填工程の後に、前記継目部を跨ぐように前記第1及び第2内装用ボードの端部にジョイントパテを塗布しジョイントパテ層を形成するパテ塗布工程と
を含む、
内装継目処理方法。
【請求項2】
前記第1及び第2内装用ボードの端部には、前記端面、表面、及び前記端面の一端と前記表面の一端とを接続する傾斜面が設けられている、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記充填工程の後であって前記パテ塗布工程の前に、
前記充填部の上から前記継目部を跨ぐように前記第1及び第2内装用ボードの端部に紙テープを貼付する第1貼付工程と、
前記第1貼付工程の後に、前記紙テープの上から前記継目部を跨ぐように前記第1及び第2内装用ボードの端部にメッシュ状の補強テープを貼付する第2貼付工程と
を含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2貼付工程の後であって前記パテ塗布工程の前に、前記補強テープの上から前記継目部を跨ぐように前記第1及び第2内装用ボードの端部に不定形シーリング材を塗布しシーリング層を形成するシーリング材塗布工程
をさらに含む、
請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記紙テープの幅は前記充填部の幅より広く、前記充填部の外側において前記第1及び第2内装用ボードの前記表面に前記紙テープが直接的に接触されている、
請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記不定形シーリング材は、ポリウレタン系又は変性シリコン系のシーリング材である、
請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
それぞれの端面が互いに隣接して配置された第1及び第2内装用ボードと、
前記第1及び第2内装用ボード間に形成された溝状の継目部と、
前記継目部に充填された不定形シーリング材を含む充填部と、
前記充填部の上に位置し、前記継目部を跨ぐように前記第1及び第2内装用ボードの端部に塗布されたジョイントパテを含むジョイントパテ層と
を備える、
内装継目構造。
【請求項8】
前記第1及び第2内装用ボードの端部には、前記端面、表面、及び前記端面の一端と前記表面の一端とを接続する傾斜面が設けられている、
請求項7に記載の内装継目構造。
【請求項9】
前記充填部と前記ジョイントパテ層との間に位置し、前記充填部の上から前記継目部を跨ぐように前記第1及び第2内装用ボードの端部に貼付された紙テープと、
前記紙テープと前記ジョイントパテ層との間に位置し、前記紙テープの上から前記継目部を跨ぐように前記第1及び第2内装用ボードの端部に貼付されたメッシュ状の補強テープと
をさらに備える、
請求項7又は8に記載の内装継目構造。
【請求項10】
前記紙テープと前記ジョイントパテ層との間に位置し、前記補強テープの上から前記継目部を跨ぐように前記第1及び第2内装用ボードの端部に塗布された不定形シーリング材を含むシーリング層
をさらに備える、
請求項に記載の内装継目構造。
【請求項11】
前記紙テープの幅は前記充填部の幅より広く、前記充填部の外側において前記第1及び第2内装用ボードの前記表面に前記紙テープが直接的に接触されている、
請求項9又は10に記載の内装継目構造。
【請求項12】
前記不定形シーリング材は、ポリウレタン系又は変性シリコン系のシーリング材である、
請求項から11までのいずれか1項に記載の内装継目構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装用ボードの継目を処理するための内装継目処理方法及びその構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種の方法としては、例えば下記の非特許文献1に記載されている方法等を挙げることができる。すなわち、従来方法では、第1及び第2内装用ボードを互いに隣接させて配置し、第1及び第2内装用ボード間に溝状の継目部を形成する。継目部をジョイントパテで埋めた後、そのジョイントパテの上にテープを貼付する。その後に、継目部を跨ぐように第1及び第2内装用ボードの端部にジョイントパテを塗布する。ジョイントパテは、中塗り及び上塗りと2回に分けて塗布する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「石膏ボード施工マニュアル-木製下地・鋼製下地編- 平成25年版」一般社団法人石膏ボード工業会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来方法では、継目部をジョイントパテで埋めた後にテープを貼付することで、第1及び第2内装用ボードの一体化を図っている。しかしながら、例えば地震等の振動を第1及び第2内装用ボードが受けた際、歪みや応力に対応できず、表層のジョイントパテにクラックが生じることがある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的の一つは、表層のジョイントパテにクラックが生じる虞を低減できる内装継目処理方法及びその構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る内装継目処理方法は、一実施の形態において、第1及び第2内装用ボードの端面を互いに隣接させて配置し、第1及び第2内装用ボード間に溝状の継目部を形成する継目形成工程と、継目形成工程の後に、継目部に不定形シーリング材を充填し充填部を形成する充填工程と、充填工程の後に、継目部を跨ぐように第1及び第2内装用ボードの端部にジョイントパテを塗布しジョイントパテ層を形成するパテ塗布工程とを含む。
【0007】
本発明に係る内装継目構造は、一実施の形態において、それぞれの端面が互いに隣接して配置された第1及び第2内装用ボードと、第1及び第2内装用ボード間に形成された溝状の継目部と、継目部に充填された不定形シーリング材を含む充填部と、充填部の上に位置し、継目部を跨ぐように第1及び第2内装用ボードの端部に塗布されたジョイントパテを含むジョイントパテ層とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の内装継目処理方法及びその構造の一実施の形態によれば、継目部に不定形シーリング材を充填し充填部を形成するので、例えば地震等の振動を第1及び第2内装用ボードが受けた際、充填部の不定形シーリング材により歪みや応力を吸収できる。これにより、表層のジョイントパテ層にクラックが生じる虞を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態による内装継目構造を示す正面図である。
図2図1の内装継目構造の断面図である。
図3】本発明の実施の形態による内装継目処理方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0011】
まず、図1及び図2を参照しながら、本発明の実施の形態による内装継目構造について説明する。図1は本発明の実施の形態による内装継目構造を示す正面図であり、図2図1の内装継目構造の断面図である。なお、図1では、理解を容易にするために各部の構成を一部欠いた状態で示している。後述の充填部4、紙テープ5、補強テープ6、シーリング層7及びジョイントパテ層8は、図1における第1及び第2内装用ボード1,2の上端まで延在され得る。
【0012】
以下、縦方向D1、横方向D2及び表裏方向D3との用語を用いて各部の構成を説明することがある。これら縦方向D1、横方向D2及び表裏方向D3は、互いに直交する方向であり得る。縦方向D1、横方向D2及び表裏方向D3は、説明のために図1の向きに従って定義された方向であり、内装継目構造の向きを限定するものではない。例えば、縦方向D1は、鉛直方向に沿ってもよいが、内装継目構造の実施態様によっては水平方向に沿ってもよい。縦方向D1、横方向D2及び表裏方向D3を第1~第3方向と称してもよい。
【0013】
本実施の形態の内装継目構造は、例えばビル又は家屋等の建物の内装の一部を構成することができる。内装は、内壁及び天井を含むことができる。図1及び図2に示すように、本実施の形態の内装継目構造は、第1内装用ボード1、第2内装用ボード2、継目部3、充填部4、紙テープ5、補強テープ6、シーリング層7及びジョイントパテ層8を備える。
【0014】
第1及び第2内装用ボード1,2は、例えば石膏ボード、ベニヤ板又はケイ酸カルシウム板等により構成され得る板状の部材である。第1及び第2内装用ボード1,2は、互いに隣接して配置されている。より具体的には、第1及び第2内装用ボード1,2は、それぞれの端部が互いに隣接するよう配置されている。第1及び第2内装用ボード1,2は、例えば柱、間柱、胴縁又は野縁等の内装下地に沿って配置され得る。図1及び図2では第1及び第2内装用ボード1,2を示しているが、これら第1及び第2内装用ボード1,2に隣接するよう他の内装用ボードがさらに配置されていてよい。
【0015】
図2に特に表れているように、第1及び第2内装用ボード1,2の端部には、表面11、端面12及び傾斜面13が設けられている。
【0016】
表面11は、第1及び第2内装用ボード1,2の表裏方向D3に係る一方の面であり、縦方向D1及び横方向D2に延在されている。表面11は、第1及び第2内装用ボード1,2が内装下地に沿って配置された際に建物の内部空間に向かい得る。
【0017】
端面12は、第1及び第2内装用ボード1,2の横方向D2に係る一方の面であり、縦方向D1及び表裏方向D3に延在されている。第1及び第2内装用ボード1,2は、それぞれの端面12が互いに隣接するよう配置されている。表裏方向D3に係る端面12の延在幅は、第1及び第2内装用ボード1,2の板厚よりも狭くされている。第1及び第2内装用ボード1,2の板厚は、上述の表面11と、図示しない第1及び第2内装用ボード1,2の裏面との間の表裏方向D3に係る距離であり得る。
【0018】
傾斜面13は、横方向D2及び表裏方向D3に対して傾斜して縦方向D1に延在された面であり、横方向D2に係る表面11の一端と表裏方向D3に係る端面12の一端とを接続している。傾斜面13は、第1及び第2内装用ボード1,2の端部の角部が面取りされたかのような面と理解できる。
【0019】
継目部3は、第1及び第2内装用ボード1,2間に形成された溝状の部分(空間)である。継目部3は、縦方向D1に係る第1及び第2内装用ボード1,2の一端から他端まで延在され得る。図示はしていないが、第1又は第2内装用ボード1,2と、その第1又は第2内装用ボード1,2に隣接する他の内装用ボードとの間にも継目部3が形成され得る。上述のように縦方向D1との用語は説明のために図1の向きに従って定義された方向であり、内装継目構造の実施態様によっては、内装継目構造を正面から見たときの継目部3の延在方向は、縦、横又は斜め等の任意の方向であってよい。継目部3は、第1及び第2内装用ボード1,2の表面11を延長した面と傾斜面13とによって区画され得る。本実施の形態の継目部3は、縦方向D1に直交する面(図2に示す面)における断面形状が三角形とされている。しかしながら、継目部3の断面形状は任意であり、例えば、矩形、又は図2に示す形状よりも扁平な三角形等の他の形状であってもよい。すなわち、第1及び第2内装用ボード1,2の端部の形状も他の形状を採り得る。
【0020】
充填部4は、継目部3に充填された不定形シーリング材を含む部分である。充填部4の不定形シーリング材は継目部3内のみに設けられていてもよいが、本実施の形態の充填部4の不定形シーリング材は継目部3から溢れ出るように設けられている。すなわち、本実施の形態の充填部4は、継目部3の内部に設けられた本体41と、本体41と一体に設けられるとともに継目部3から溢出された溢出部42とを有している。
【0021】
充填部4又は本体41の不定形シーリング材は、継目部3を満たしていることが好ましい。しかしながら、充填部4又は本体41に気泡等の他の構成が含まれる場合もある。例えば、縦方向D1に直交する面において、充填部4又は本体41の不定形シーリング材が継目部3の空間の50%以上を占めることが好ましく、70%以上を占めることがより好ましく、90%以上を占めることがさらに好ましい。
【0022】
溢出部42は、横方向D2に関して継目部3の縁を超えて第1及び第2内装用ボード1,2の表面11上に延在されていてよい。溢出部42は、図2に示すように本体41を増肉するように表裏方向D3に厚みを有していてもよい。しかしながら、溢出部42は、第1及び第2内装用ボード1,2の表面11上に延在されるものの、表裏方向D3に係る厚みが極めて薄い薄膜状とされていてもよい。このとき、第1及び第2内装用ボード1,2の表面11と充填部4の上面とは実質的に同一平面をなすことができる。
【0023】
紙テープ5は、充填部4とジョイントパテ層8との間に位置し、充填部4の上から継目部3を跨ぐように第1及び第2内装用ボード1,2の端部に貼付されている。表裏方向D3に沿って紙テープ5を見たとき、紙テープ5は充填部4を覆い隠していてよい。横方向D2に係る紙テープ5の幅は横方向D2に係る充填部4の幅より広く、横方向D2に係る充填部4の外側において第1及び第2内装用ボード1,2の表面11に紙テープ5が直接的に接触していてよい。
【0024】
紙テープ5は、帯状の紙基材と、紙基材の表面(一方の片面)側に設けられた粘着層とを有することができる。紙基材は、和紙で構成され得る。粘着層の粘着力により、紙テープ5が第1及び第2内装用ボード1,2の端部並びに充填部4に貼付され得る。
【0025】
紙テープ5は、紙基材の背面(他方の片面)側に設けられた背面処理層をさらに有していてよい。背面処理層は、コイル状に紙テープ5が巻かれているとき、コイル外側の紙テープ5の粘着層をコイル内側の紙テープ5の背面から容易に剥離させることができるようにするための処理層である。背面処理層は、紙基材の背面側に剥離剤が塗布又は含浸されることで形成され得るものであり、剥離層と呼んでもよい。紙テープ5として、マスキングテープを使用することができる。
【0026】
補強テープ6は、紙テープ5とジョイントパテ層8との間に位置し、継目部3を跨ぐように第1及び第2内装用ボード1,2の端部に貼付されたものである。補強テープ6は、帯状のメッシュ状部材とすることができる。補強テープ6の網目を除き、表裏方向D3に沿って補強テープ6を見たとき、補強テープ6は紙テープ5を覆い隠していてよい。横方向D2に係る補強テープ6の幅は横方向D2に係る紙テープ5の幅より広く、横方向D2に係る紙テープ5の外側において第1及び第2内装用ボード1,2の表面11に補強テープ6が直接的に接触していてよい。
【0027】
補強テープ6は、メッシュ状の基材と、メッシュ状の表面(一方の片面)側に設けられた粘着層とを有することができる。基材は例えばガラス基材等により構成され得る。粘着層の粘着力により、補強テープ6が第1及び第2内装用ボード1,2の端部並びに紙テープ5に貼付され得る。
【0028】
補強テープ6は、紙テープ5の背面に貼付された中央部61と、第1及び第2内装用ボード1,2の端部に貼付された側端部62とを有することができる。紙テープ5の背面に対する中央部61の接着強度は、第1及び第2内装用ボード1,2の端部に対する側端部62の接着強度よりも弱いことがある。すなわち、第1及び第2内装用ボード1,2の端部に側端部62が接着された状態で、中央部61が紙テープ5の背面から剥離されるか又は紙テープ5の背面上を滑ることができる場合がある。紙テープ5が背面処理層を有する場合、中央部61の接着強度をより確実に弱めることができる。
【0029】
シーリング層7は、紙テープ5とジョイントパテ層8との間に位置し、補強テープ6の上から継目部3を跨ぐように第1及び第2内装用ボード1,2の端部に塗布された不定形シーリング材を含む部分である。シーリング層7は、補強テープ6の網目に進入されていてよい。横方向D2に係るシーリング層7の幅は横方向D2に係る補強テープ6の幅より広く、横方向D2に係る補強テープ6の外側において第1及び第2内装用ボード1,2の表面11にシーリング層7が直接的に接触していてよい。
【0030】
図2に示す態様では、シーリング層7が補強テープ6よりも厚くされている。すなわち、補強テープ6の背面はシーリング層7により覆い隠されている。しかしながら、シーリング層7の厚みが補強テープ6の厚み以下であってもよい。補強テープ6の厚みの中にシーリング層7が設けられていてもよい。表裏方向D3に沿って補強テープ6及びシーリング層7を見たとき、補強テープ6の背面がシーリング層7によって覆われている一方で、補強テープ6のメッシュ状の外形が浮き出ていてもよい。
【0031】
充填部4及びシーリング層7に含まれる不定形シーリング材は、例えばシリコン系のシーリング材等の種々のシーリング材であり得るが、ポリウレタン系又は変性シリコン系のシーリング材であることが好ましい。不定形シーリング材は、1成分形シーリング材であってもよいが、2成分形シーリング材であってもよい。不定形シーリング材は、反応硬化型のシーリング材であることが好ましい。1成分形シーリング材の場合、空気中の水分と反応して硬化する湿気硬化型を挙げることができる。また、2成分形シーリング材の場合、基剤が硬化剤と反応して硬化する混合反応硬化型のシーリング材を挙げることができる。
【0032】
ジョイントパテ層8は、充填部4、紙テープ5、補強テープ6及びシーリング層7の上に位置し、継目部3を跨ぐように第1及び第2内装用ボード1,2の端部に塗布されたジョイントパテを含む部分である。本実施の形態のジョイントパテ層8は、下塗りパテ層81と、この下塗りパテ層81の上に設けられた上塗りパテ層82とを有している。横方向D2に係る下塗りパテ層81の幅は横方向D2に係るシーリング層7の幅よりも広く、横方向D2に係る上塗りパテ層82の幅は横方向D2に係る下塗りパテ層81の幅よりも広くてよい。下塗りパテ層81及び上塗りパテ層82のいずれか一方を省略し、ジョイントパテ層8を1層で構成してもよい。これとは逆に、ジョイントパテ層8を3層以上で構成してもよい。
【0033】
次に、図3を参照しながら、本発明の実施の形態による内装継目処理方法について説明する。図3は、本発明の実施の形態による内装継目処理方法を示す説明図である。図1及び図2に示す内装継目構造は、図3に示す内装継目処理方法により製造することができる。内装継目処理方法は、内装継目構造を製造するための製造方法に該当する。本実施の形態の内装継目処理方法により製造される内装継目構造の各部の構成は、上述の通りである。
【0034】
図3に示すように、本実施の形態の内装継目処理方法は、(1)継目形成工程、(2)充填工程、(3)第1貼付工程、(4)第2貼付工程、(5)シーリング材塗布工程及び(6)パテ塗布工程を含んでいる。
【0035】
継目形成工程は、第1及び第2内装用ボード1,2を互いに隣接させて配置し、第1及び第2内装用ボード1,2間に溝状の継目部3を形成する工程である。第1及び第2内装用ボード1,2は、それぞれの端部の端面12が互いに隣接するよう配置される。
【0036】
充填工程は、継目形成工程の後に、継目部3に不定形シーリング材を充填し充填部4を形成する工程である。上述のように、充填部4の不定形シーリング材は継目部3から溢れ出るように設けられていてよい。不定形シーリング材は、任意の方法により充填され得るが、例えばシーリングガン等の治具を用いて継目部3に充填することができる。充填部4の形成予定範囲の両側にマスキングテープを貼付しておいてもよい。また、ヘラ等の治具により充填部4の形状を整えることもできる。
【0037】
第1貼付工程は、充填工程の後に、充填部4の上から継目部3を跨ぐように第1及び第2内装用ボード1,2の端部に紙テープ5を貼付する工程である。第1貼付工程は、充填部4が硬化された後に行うことができる。充填部4は、紙テープ5により覆い隠され得る。
【0038】
第2貼付工程は、第1貼付工程の後に、紙テープ5の上から継目部3を跨ぐように第1及び第2内装用ボード1,2の端部にメッシュ状の補強テープ6を貼付する工程である。
【0039】
シーリング材塗布工程は、第2貼付工程の後に、補強テープ6の上から継目部3を跨ぐように第1及び第2内装用ボード1,2の端部に不定形シーリング材を塗布しシーリング層7を形成する工程である。不定形シーリング材は、任意の方法により塗布され得るが、例えばシーリングガン等の治具を用いて大まかに塗布した後に、ヘラ等の治具により塗り拡げることができる。補強テープ6の網目に不定形シーリング材を押し入れることができる。シーリング層7の形成予定範囲の両側にマスキングテープを貼付しておいてもよい。
【0040】
パテ塗布工程は、第2貼付工程の後に、継目部3を跨ぐように第1及び第2内装用ボード1,2の端部にジョイントパテを塗布しジョイントパテ層8を形成する工程である。パテ塗布工程は、シーリング層7が硬化された後に行うことができる。
【0041】
次に、各部の作用効果について説明する。充填部4の不定形シーリング材は、硬化されたジョイントパテよりも柔軟であり、粘着性、追従性及び/又は弾性を有する。このため、例えば地震等の振動を第1及び第2内装用ボード1,2が受けた際、充填部4の不定形シーリング材により歪みや応力を吸収できる。これにより、表層のジョイントパテ層8にクラックが生じる虞を低減できる。
【0042】
また、不定形シーリング材に代えて、継目部3にジョイントパテを充填することも考えられる。その場合、ジョイントパテとして、乾燥硬化型パテを用いることが考えられる。乾燥硬化型パテを用いる場合、気温等の条件によっては、施工性が悪くなるとともに、施工時間が長くなり、後の工程計画に乱れが生じる。これに対して、特に不定形シーリング材として反応硬化型のシーリング材を用いた場合、不定形シーリング材の硬化時間に対する気温等の影響は小さい。このため、上述のように継目部3に不定形シーリング材を充填することで、施工性を安定させることができるとともに、施工時間が想定以上に長くなることを回避でき、後の工程計画に乱れが生じる虞を低減できる。
【0043】
また、充填部4の上から継目部3を跨ぐように第1及び第2内装用ボード1,2の端部に紙テープ5を貼付するとともに、紙テープ5の上から継目部3を跨ぐように第1及び第2内装用ボード1,2の端部にメッシュ状の補強テープ6を貼付するので、表層のジョイントパテ層8にクラックが生じる虞をより確実に低減できる。より具体的には、充填部4は、第1及び第2内装用ボード1,2の振動又は破断を誘発する動きを吸収して応力を減衰させるとの機能を有し、紙テープ5は、充填部4によって減衰された応力を封じ込めるかのような機能を有する。補強テープ6は、継目部3を跨いで第1及び第2内装用ボード1,2を繋ぐブリッジのような機能を有し、第1及び第2内装用ボード1,2が振動又は破断を誘発する動きを受けた際に、充填部4によって減衰された応力がジョイントパテ層8に伝達される量を大幅に低減できる。補強テープ6自身が応力を吸収するとともに、充填部4等からの応力の伝達を伝えづらくする絶縁作用を補強テープ6が発揮するためである。また、補強テープ6が貼付されていることで、ジョイントパテ層8の接着強度を向上でき、ジョイントパテ層8の安定性を向上できる。
【0044】
特に、紙テープ5に補強テープ6が重ねられることで、紙テープ5の背面に対する補強テープ6の中央部61の接着強度を、第1及び第2内装用ボード1,2の端部に対する補強テープ6の側端部62の接着強度よりも弱くすることができる。このため、例えば地震等の振動を第1及び第2内装用ボード1,2が受けた際、中央部61が紙テープ5の背面から剥離されるか又は紙テープ5の背面上を滑ることで、継目部3に作用する応力が表層のジョイントパテ層8に伝わることを抑えることができ、表層のジョイントパテ層8にクラックが生じる虞をより確実に低減できる。
【0045】
また、補強テープ6の上から継目部3を跨ぐように第1及び第2内装用ボード1,2の端部に不定形シーリング材を塗布しシーリング層7を形成するので、第1及び第2内装用ボード1,2への補強テープ6の一体性を向上できる。特に、補強テープ6の中央部61の接着強度が弱い状態を残しつつ、補強テープ6の一体性を向上できる。また、例えば地震等の振動を第1及び第2内装用ボード1,2が受けた際、シーリング層7の不定形シーリング材により歪みや応力を吸収でき、表層のジョイントパテ層8にクラックが生じる虞をさらに確実に低減できる。
【0046】
不定形シーリング材がポリウレタン系又は変性シリコン系のシーリング材であるので、水をはじきにくく、水混練ジョイントパテを使用した際のジョイントパテ層8の密着性をより確実に確保できる。また、充填部4の上に紙テープ5を貼付する際に、紙テープ5の接着性への影響を抑えることができる。
【0047】
なお、実施の形態では、内装継目構造が第1内装用ボード1、第2内装用ボード2、継目部3、充填部4、紙テープ5、補強テープ6、シーリング層7及びジョイントパテ層8を備えるように説明したが、紙テープ5、補強テープ6及びシーリング層7の少なくとも1つが省略されてもよい。例えば、充填部4の上にジョイントパテ層8が形成されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 :第1内装用ボード
2 :第2内装用ボード
3 :継目部
4 :充填部
5 :紙テープ
6 :補強テープ
7 :シーリング層
8 :ジョイントパテ層
【要約】
【課題】表層のジョイントパテにクラックが生じる虞を低減できる内装継目処理方法及びその構造を提供する。
【解決手段】内装継目処理方法は、第1及び第2内装用ボード1,2を互いに隣接させて配置し、第1及び第2内装用ボード1,2間に溝状の継目部3を形成する継目形成工程と、継目形成工程の後に、継目部3に不定形シーリング材を充填し充填部4を形成する充填工程と、充填工程の後に、継目部3を跨ぐように第1及び第2内装用ボード1,2の端部にジョイントパテを塗布しジョイントパテ層8を形成するパテ塗布工程とを含む。
【選択図】図3
図1
図2
図3