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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】カーポート
(51)【国際特許分類】
   H02S 20/10 20140101AFI20220915BHJP
   H02S 20/23 20140101ALI20220915BHJP
   H02S 20/24 20140101ALI20220915BHJP
   E04H 6/02 20060101ALI20220915BHJP
   E04D 13/18 20180101ALI20220915BHJP
【FI】
H02S20/10 T
H02S20/10 D
H02S20/23 A
H02S20/24
E04H6/02 A ETD
E04D13/18
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022523567
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2021025013
【審査請求日】2022-07-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513256675
【氏名又は名称】ネクストエナジー・アンド・リソース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】内山 雄司
(72)【発明者】
【氏名】竹山 正樹
(72)【発明者】
【氏名】丸山 祥一
(72)【発明者】
【氏名】小土橋 恵佑
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-17315(JP,A)
【文献】特開2012-28584(JP,A)
【文献】特開2010-209515(JP,A)
【文献】特開2015-158114(JP,A)
【文献】特開2011-236674(JP,A)
【文献】特開2013-189761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 20/10
H02S 20/23
H02S 20/24
E04H 6/02
E04D 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向及び前記第一方向に交差する第二方向に、それぞれ複数の太陽電池モジュールが並設されてなる屋根部材と、前記第一方向に沿って設けられた複数の第一桟とを備え、前記太陽電池モジュールは、隣接する第一桟に対向する一辺がそれぞれ載置されて架設され、前記第一方向における複数の前記太陽電池モジュールは、全体として連続して傾斜するようにして設置され、複数の前記太陽電池モジュールの間の前記第二方向における隙間からは前記第一桟が臨むように構成されているカーポートであって、
前記第一方向において互いに隣接する前記太陽電池モジュール間の間隙には、第二方向に沿って前記第一桟に流れ込む水流を形成するための嵌合部材が嵌合され、
前記嵌合部材は、前記第一方向の傾斜上側にある前記太陽電池モジュールとは離間しつつ、かつ、前記第一方向の傾斜下側にある前記太陽電池モジュールの傾斜上側の側面の少なくとも一部に当接するように設置される接続部と、
前記接続部から延設され、前記第一方向の傾斜上側にある前記太陽電池モジュールの下面の傾斜下側端部に当接される下フランジ部と、を備えたことを特徴とするカーポート
【請求項2】
前記嵌合部材は、前記接続部から延設され、前記第一方向の傾斜下側にある前記太陽電池モジュールの上面の傾斜上側の端部に上から当接される上フランジ部と、を有することを特徴とする請求項1記載のカーポート
【請求項3】
記嵌合部材には、前記第一桟と係合する係合部が形成され、当該係合部が前記第一桟と係合して前記嵌合部材が前記第一桟に固定されることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のカーポート
【請求項4】
前記係合部は、前記第一桟に形成された凸部に嵌合する切り欠き部であることを特徴とする請求項3記載のカーポート
【請求項5】
前記第一桟の上面には、前記凸部により画成された凹部がその長手方向に亘って形成され、前記嵌合部材の前記切り欠き部の外側端部が当該凹部に挿入されることを特徴とする請求項4記載のカーポート。
【請求項6】
前記接続部が、前記第一方向の傾斜下側にある前記太陽電池モジュールの傾斜上側の前記側面の全面に当接して設置されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のカーポート。
【請求項7】
前記下フランジ部が、その先端部に、上方に立ち上がった立ち上がり部を有し、該立ち上がり部が前記太陽電池モジュールの外周枠内に収容されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のカーポート。
【請求項8】
前記嵌合部材は、前記接続部から前記第一方向の傾斜上側にある前記太陽電池モジュール側に向かって延設された延設部を有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のカーポート
【請求項9】
前記延設部は、前記接続部から前記第一方向の傾斜上側にある前記太陽電池モジュール側、かつ、上側に向かって延設されたことを特徴とする請求項8に記載のカーポート
【請求項10】
前記嵌合部材は、前記第一方向の傾斜上側にある前記太陽電池モジュールの傾斜下側の側面に当接する当接部材を備えたことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のカーポート
【請求項11】
前記嵌合部材は、前記第一方向の傾斜上側にある前記太陽電池モジュールの傾斜下側の側面に当接する当接部材を備え、前記当接部材を前記延設部の長手方向両端部に備えたことを特徴とする請求項に記載のカーポート。
【請求項12】
前記当接部材は、前記接続部に固定されたシール部材であることを特徴とする請求項11記載のカーポート
【請求項13】
前記延設部が、前記シール部材の少なくとも一部を平面視で覆うように設けられることを特徴とする請求項12記載のカーポート
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーポートに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールを用いた太陽光発電システムでは、発電量を多くするためには日照を十分に得る必要がある。そのため、日当たりのよい住宅の屋根、ビルの屋上等に太陽電池モジュールを設置したものが普及されてきたが、近年、カーポートの屋根部分に太陽電池モジュールを設けたものが提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1における太陽電池モジュール付カーポートでは、縦レールは、駐車場前方から後方に向かって下り傾斜となるように一対の支柱によって支持され、複数の横レールである保持部材が、複数の太陽電池モジュールのそれぞれを、縦方向にあっては隙間なく、横方向にあっては横レールに沿って隙間が空くように保持している。しかしながら、実際のところ、太陽電池モジュールには製造公差があり、隙間なく設置することは難しい。このため、この太陽電池モジュール間の隙間から雨水等が漏れてくる可能性がある。
【0004】
この点、特許文献2における太陽電池モジュール付カーポートでは、太陽電池モジュールの縦方向においても、太陽電池モジュール間に隙間を設けて、その隙間に接合部材を嵌合させている。断面視においてT字状の接合部材は、太陽電池モジュールをその支持構造に設置した後に、太陽電池モジュールの上から、ウェブを隙間に挿入して、フランジ部分が太陽電池モジュール上面に当接するように設ける。このように接合部材を太陽電池モジュール間の隙間に嵌入していることから、隙間から生じる雨漏りを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021―14764号公報
【文献】特開2016-141971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2における構成では、太陽電池モジュールの上から、ウェブを隙間に挿入して、フランジ部分が太陽電池モジュール上面に当接するように設けることから、施工性が低いという問題がある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、隣接する太陽電池モジュール間に生じる隙間からの雨水などの漏れを抑制でき、かつ、施工性の高いカーポートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るカーポートは、第一方向及び前記第一方向に交差する第二方向に、それぞれ複数の太陽電池モジュールが並設されてなる屋根部材を備え、前記第一方向における複数の前記太陽電池モジュールは、全体として連続して傾斜するようにして設置されるカーポートであって、前記第一方向において互いに隣接する前記太陽電池モジュール間の間隙には、第二方向に沿った水流を形成するための嵌合部材が嵌合され、前記嵌合部材は、前記第一方向の傾斜上側にある前記太陽電池モジュールとは離間しつつ、かつ、前記第一方向の傾斜下側にある前記太陽電池モジュールの傾斜上側の側面の少なくとも一部に当接するように設置される接続部と、前記接続部から延設され、前記第一方向の傾斜上側にある前記太陽電池モジュールの下面の傾斜下側端部に当接される下フランジ部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
嵌合部材は、前記第一方向の傾斜上側にある前記太陽電池モジュールとは離間しつつ、かつ、前記第一方向の傾斜下側にある前記太陽電池モジュールの傾斜上側の側面の少なくとも一部に当接するように設置される接続部と、前記接続部から延設され、前記第一方向の傾斜上側にある前記太陽電池モジュールの下面の傾斜下側端部に当接される下フランジ部とを備えることで、傾斜上側の太陽電池モジュールと嵌合部材とにより、第二方向に沿った水流を形成する溝部を形成することができる。これにより、本発明のカーポートにおいては、隣接する太陽電池モジュール間に生じる隙間からの雨水などの漏れを抑制することができる。
【0010】
前記嵌合部材は、前記接続部から延設され、前記第一方向の傾斜下側にある前記太陽電池モジュールの上面の傾斜上側の端部に上から当接される上フランジ部と、を有することが好ましい。上フランジ部を有することで、さらに傾斜下側の太陽電池モジュールと嵌合部材との間からの水漏れを抑制することが可能である。
【0011】
第一方向に沿って設けられた複数の第一桟を備え、前記太陽電池モジュールは、隣接する第一桟に対向する一辺がそれぞれ載置されて架設され、前記嵌合部材には、前記第一桟と係合する係合部が形成され、当該係合部が前記第一桟と係合して前記嵌合部材が前記第一桟に固定されることが好ましい。嵌合部材には、前記第一桟と係合する係合部が形成され、当該係合部が前記第一桟と係合して前記嵌合部材が前記第一桟に固定されることで、嵌合部材を所望の位置に簡易に固定することが可能である。
【0012】
前記係合部は、前記第一桟に形成された凸部に嵌合する切り欠き部であることが好ましい。このような切り欠き部を嵌合部材が有することで、簡易に嵌合部材を第一桟に係合せしめることが可能であるとともに、第一桟間の距離を保持することが可能である。
【0013】
前記第一桟の上面には、前記凸部により画成された凹部がその長手方向に亘って形成され、前記嵌合部材の前記切り欠き部の外側端部が当該凹部に挿入されることが好ましい。嵌合部材の切り欠き部を前記第一桟に形成された凸部に嵌合せしめると、前記嵌合部材の前記切り欠き部の外側端部が当該凹部に挿入されるので、嵌合部材により形成された溝部の水がより確実に第一桟の凹部に流入することになり、さらに確実に水漏れを防止することが可能である。
【0014】
前記接続部が、前記第一方向の傾斜下側にある前記太陽電池モジュールの傾斜上側の前記側面の全面に当接して設置されることが好ましい。このように設けられていることで、嵌合部材と傾斜上側にある太陽電池モジュールとの間に形成される溝部の容積が大きくなるので、より水を第二方向に流すことが容易となり、水漏れを防止することができる。
【0015】
前記下フランジ部が、その先端部に、上方に立ち上がった立ち上がり部を有することが好ましい。このような立ち上がり部を備えたことで、より嵌合部材と傾斜上側にある太陽電池モジュールとの間に形成される溝部の容積が大きくなるので、さらに水を第二方向に流すことが容易となり、水漏れを防止することができる。
【0016】
前記嵌合部材は、前記接続部から前記第一方向の傾斜上側にある前記太陽電池モジュール側に向かって延設された延設部を有することが好ましい。このような延設部を設けていることで、溝部の内部を区画することができ、より確実に水を貯留することが可能である。
【0017】
前記延設部は、前記接続部から前記第一方向の傾斜上側にある前記太陽電池モジュール側、かつ、上側に向かって延設されたことが好ましい。このように形成されたことで、より溝部の内部を区画することができ、傾斜上側の太陽電池モジュールからの水を溝部上部に貯留してより水漏れを抑制することが可能である。
【0018】
前記嵌合部材は、前記第一方向の傾斜上側にある前記太陽電池モジュールの傾斜下側の側面に当接する当接部材を備えたことが好ましい。このような当接部材を備えることで、傾斜上側の太陽電池モジュールとの距離を適切に保持することができるとともに、太陽電池モジュールに製造公差があったとしてもそれを吸収することが可能である。
【0019】
前記嵌合部材は、前記当接部材を前記延設部の長手方向両端部に備えたことが好ましい。このような当接部材を設けることで、傾斜上側の太陽電池モジュールとの距離を適切に保持することができる。また、当接部材が太陽電池モジュールの側面両端部のみに当接することで、太陽電池モジュールの側面中央部に製造公差があったとしても当接部材と干渉することがなく、さらに溝部に水が流れ込むことが妨げられにくい。
【0020】
前記当接部材は、前記接続部に固定されたシール部材であることが好ましい。このようなシール部材を設けることで、より太陽電池モジュールに製造公差があったとしてもそれを吸収することが可能である。
【0021】
前記延設部が、前記シール部材の少なくとも一部を平面視で覆うように設けられることが好ましい。シール部材の劣化を防止することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明のカーポートによれば、隣接する太陽電池モジュール間に生じる隙間からの雨水などの漏れを抑制でき、かつ、施工性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第一実施形態にかかるカーポートを示す斜視図である。
図2】本発明の第一実施形態にかかる上桟の斜視図である。
図3】本発明の第一実施形態にかかるカーポートの一部側面模式図である。
図4】本発明の第一実施形態にかかるカーポートの一部上面図である。
図5】本発明の第一実施形態にかかるカーポートの一部断面図である
図6】本発明の第一実施形態にかかる嵌合部材を示す斜視図である。
図7】本発明の第一実施形態にかかる嵌合部材と上桟との関係を示す正面図である。
図8】本発明の第二実施形態にかかるカーポートにおける嵌合部材の端部での一部断面図である。
図9】本発明の第二実施形態にかかる嵌合部材を示す斜視図である。
図10】本発明の第二実施形態にかかるカーポートにおける嵌合部材の中央部での一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係るカーポートについて添付図面を参照して詳細に説明する。ただし、この実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
また、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」等の表記は、或る構成要素を他の構成要素と区別するために使用されるものであって、当該構成要素の数、順序又は優先度等を限定するためのものではない。例えば、「第1要素」及び「第2要素」との記載が存在する場合、「第1要素」及び「第2要素」という2つの要素のみが採用されることを意味するものではないし、「第1要素」が「第2要素」に先行しなければならないことを意味するものでもない。また、各実施形態において、同じ部材については同じ参照番号を付しているが、部材の設置位置により同じ部材同士を区別する際には、参照番号にa、b、、、とアルファベットを付すことにより区別を行う。
【0026】
(第一実施形態)
【0027】
図1に示すカーポート1は、支持部材としての支柱11、下桟12および上桟(第一桟)13と、カーポート1の屋根として機能する複数の太陽電池モジュール14からなる屋根部材とを備える。
【0028】
本実施形態では、支柱11は、図1に示す第一方向に沿って2列、第一方向と直交する第二方向に沿って3列となるように設置することで、合計6本が地面に対して垂直となるように立設されている。第二方向に沿って立設した3本の支柱11に亘って2本の下桟12a、12bが、それぞれ固定されている。即ち、カーポート1では、図3に示すように、2本の下桟12a、12bが、第二方向において互いに平行となるようにそれぞれ3本の支柱11にコネクタ111a、111bを介して固定されている。この時に、下桟12aのコネクタ111aが下桟12bのコネクタ111bよりも所望の高さ分だけ高くなるように調整されて設置されているので、下桟12aが下桟12bよりも高い位置で固定されている。
【0029】
そして、これらの2本の下桟12a、12bに対して、第一方向に沿った、互いに平行な11本の上桟13が、下桟12a、12bに架設された状態で、連結部材121a、121b(図3参照)により下桟12aと下桟12bとの上部に固定されている。11本の上桟13は、それぞれ所定の間隔で互いに離間している。下桟12a、12bが第二方向に沿っており、かつ、上桟13が第一方向に沿っていることから、上面視において、上桟13と下桟12とは直角をなしている。
【0030】
上桟13は、図2に示すように、その長手方向に亘って一対の側壁131が設けられ、側壁131の上部には、それぞれ板状部132が設けられている。板状部132は、その上面が上桟13の底面と平行となるように形成されている。側壁131により上桟13の内部に画成された凹部133は、一対の板状部132の間の間隙134に臨んでいる。また、凹部133は、上桟13の両端で開口している。
【0031】
上桟13は、この間隙134を上にして下桟12a、12b上に架設されている。この時に、下桟12aのコネクタ111aが下桟12bのコネクタ111bよりも所望の高さ分だけ高くなるように調整されて設置されているので、下桟12a、12b上に架設されている各上桟13も、下桟12a側が高く、下桟12b側が相対的に低くなるように傾斜がついて下桟12a、12bに固定されている。即ち、上桟13は、第一方向において傾斜するようにして固定されている。この下桟12a側から下桟12b側への傾斜を本実施形態における傾斜方向とし、それぞれ高い方を傾斜上側、低い方を傾斜下側としている。
【0032】
なお、本実施形態では、説明のため下桟12a、12bは一本の第二方向に長い棒状の部材としたが、例えば短い棒状の部材を2以上接合して下桟12a、12bとしてもよい。上桟13も同様である。
【0033】
そして、この上桟13上に上面視において長方形状である太陽電池モジュール14が固定される。本実施形態では、各太陽電池モジュール14は、第一方向に沿って3段、かつ、第二方向に沿って10列となるように第一方向及び第二方向に沿って並設されている。具体的には、各太陽電池モジュール14の各長辺が上桟13に載置されて隣接する上桟13間にわたって架設されている。
【0034】
各太陽電池モジュール14は、上桟13が第一方向において傾斜するように設けられていることで、図3に示すように、太陽電池モジュール14も第一方向において連続して傾斜するように設置されている。なお、図3においては、同一の太陽電池モジュールを、傾斜上側から太陽電池モジュール14a、14b、14cとしている。即ち、カーポート1では、太陽電池モジュールは、太陽電池モジュール14aの図3中左端部が最も高く、太陽電池モジュール14cの図3中右端部が最も低くなるようにそれぞれが設置されている。このように設けられていることで、雨が降った場合等には、水流は傾斜方向に沿って、即ち、傾斜上側にある太陽電池モジュール14aから傾斜下側にある太陽電池モジュール14cに向かって雨水が各太陽電池モジュール14の表面を流れるように構成されている。
【0035】
図4に示すように、第一方向及び第二方向のいずれにおいても、太陽電池モジュール14は、隣接する太陽電池モジュール14間に隙間を設けて上桟13上に固定されている。第二方向における隙間からは、上桟13の上面に設けられた凹部133が臨む間隙134が臨んでいる。この凹部133は雨樋として機能する。
【0036】
他方で、第一方向における太陽電池モジュール14の間の隙間、即ち太陽電池モジュール14b、14cの短辺間には、嵌合部材20が設置されている。嵌合部材20は、互いに隣接する上桟13の間にわたり架設されている。この嵌合部材20と傾斜上側の太陽電池モジュール14bとにより溝部30が形成されて、この溝部30により雨水が第二方向へ向かって流れるように案内されている。そして、この雨水は、上桟13の凹部133に流れ込んで雨樋としての機能を有する凹部133を通過して、最も低い位置にある太陽電池モジュール14の下端から排出される。
【0037】
以下、図5~7を用いてこの点を詳細に説明する。
【0038】
嵌合部材20は、傾斜上側にある太陽電池モジュール14bの底面の下側端部141に当接する下フランジ部21と、傾斜下側にある太陽電池モジュール14cの上面の上側端部142に当接する上フランジ部22と、下フランジ部21及び上フランジ部22とを接続する接続部23とを備える。接続部23に対して、下フランジ部21と上フランジ部22とは、逆方向に延設されていることになる。
【0039】
嵌合部材20の接続部23は、上フランジ部22に直接接続され、傾斜下側の太陽電池モジュール14cの上側面144に当接する上壁面部24を備える。さらに、接続部23は、上壁面部24から、上流側の太陽電池モジュール14bに向かって延設されて段差を形成する段差部25と、段差部25の端部から延設され、上壁面部24と平行である壁面部26とを備える。壁面部26は、太陽電池モジュール14b、14cのいずれからも離間している。また、接続部23は、壁面部26から延設されて下フランジ部21に直接接続される下壁面部27を備える。すなわち、接続部23は、上壁面部24、段差部25、壁面部26、および下壁面部27からなる。
【0040】
このように第一方向における太陽電池モジュール14b、14c間の隙間に設けられた嵌合部材20において、接続部23が、第一方向の傾斜上側にある太陽電池モジュール14bとは離間しつつ、かつ、傾斜下側にある太陽電池モジュール14cの傾斜上側の上側面144に当接するように設置され、かつ、下フランジ部21が傾斜上側にある太陽電池モジュール14bの底面の下側端部141に当接するように設けられていることで、太陽電池モジュール14bの下側面143と接続部23と下フランジ部21とにより、溝部30が形成されている。
【0041】
この溝部30が、カーポート1の第二方向における雨樋として機能する。図4に戻り、この溝部30が太陽電池モジュール14b、14cの短辺間に亘って形成されていることで、太陽電池モジュール14bから傾斜により流れてきた雨水はこの溝部30により流入する。この場合に、嵌合部材20も傾斜方向に沿って傾斜して設けられていることから、下フランジ部21と傾斜上側の太陽電池モジュール14との間に水は侵入しにくく、水が溝部30に貯留される。そして、溝部30に貯留された水が第二方向に流されて、第二方向における太陽電池モジュール14b、14c間の隙間に到達し、この隙間に開口している上桟13の凹部133に流入する。そして、凹部133に流入した水は、傾斜下側から排出される。
【0042】
このように、本実施形態では、太陽電池モジュール14b、14c間の第二方向における隙間には、開口した上桟13の凹部133が存在し、かつ第一方向における隙間には、溝部30が形成されていることで、すべての太陽電池モジュール14間の隙間に画成された水路が設けられていることでカーポート1の屋根部分から水が漏れることが抑制される。さらには、本実施形態の嵌合部材20は、太陽電池モジュール14を上桟13に設置する際に同時に設置することができるので、太陽電池モジュール14を設置した後に太陽電池モジュール14の上から施工する必要がなく、施工性がよい。
【0043】
また、嵌合部材20に上フランジ部22が設けられていることで、仮に溝部30から水が溢れるような場合であっても、上フランジ部22により、傾斜下側の太陽電池モジュール14cと嵌合部材20との間に水が浸入する虞がなく、よりカーポート1の屋根部分の間から雨水が漏れ出すことを抑制することができる。
【0044】
嵌合部材20は、壁面部26から延設されて傾斜下側の太陽電池モジュール14cの上側面144に当接する当接部(係合部)31を備える。当接部31は、図5に示すように、下フランジ部21よりもさらに下方に延設されている。
【0045】
嵌合部材20の当接部31には、その長手方向の両端部近辺に切り欠き部32が設けられている。この切り欠き部32が上桟13の側壁131に嵌合する。すなわち、上桟13の側壁131が凸部となり、切り欠き部32が凹部となって互いに係合する。これにより、嵌合部材20が板状部132上に載置された状態で上桟13間に架設される。このように切り欠き部32が設けられていることで、単純な構成で上桟13と嵌合部材20の係合性を高めて安定的に保持することができ、また、このように上桟13に嵌合部材20を係合させることで、上桟13の間隔を適切に保持することが可能である。さらに、嵌合部材20の当接部31の切り欠き部32の外側にある端部33が凹部133に挿入されているので、溝部30に貯留された水が端部33から凹部133に確実に流入するように誘導することが可能である。
【0046】
また、嵌合部材20は、壁面部26に付着されたシール部材(当接部材)34と、段差部25から上流側の太陽電池モジュール14bに向かいつつ、かつ、上側に向かって延設され、溝部30の開口からシール部材34を覆う延設部35とを備える。シール部材34は、太陽電池モジュール14bの下側面143に押圧されてシールする。シール部材34を設けることで、太陽電池モジュール14の製造公差によるそりにシール部材34が馴染んで、止水性が高まる。シール部材34としては、押圧されて当該部分でシールすることができればよく、軟質性シール部材、さらに不燃性を有するものでより好ましく、例えばニトリルゴム材が好適に用いられる。
【0047】
また、上壁面部24と段差部25,そして延設部35とにより、第一溝部301が形成されており、さらには、太陽電池モジュール14bの下側面143と延設部35とシール部材34とにより第二溝部302が形成されている。即ち、延設部35は、溝部30を区画してこの第一溝部301と第二溝部302とを構成している。本実施形態では、雨水が太陽電池モジュール14bからこの溝部30に流入した場合に、まず、水は第一溝部301に流入し、第二方向に流れ、雨水等の量が多くなった場合には、第二溝部302にも流入するように構成されている。このように溝部30が延設部35により二つの部分により構成されていることで、まず上方の溝部30である第一溝部301に水が流入するので、なるべく部材間の接合部分に水がたまることを抑制し、雨水をより確実に溝部30に保持することが可能である。また、延設部35がシール部材34を覆うように設けられていることで、日光によるシール部材34の劣化を抑制することができる。
【0048】
(第二実施形態)
【0049】
本発明の第二実施形態について、図8図10を用いて説明する。本実施形態では、第一実施形態における嵌合部材20とは異なる形状の嵌合部材50を用いている点以外は全て同一であり、同一の部材については同一の参照符号を用いて説明する。
【0050】
図8、9に示すように、本実施形態のカーポート5に用いられる嵌合部材50は、傾斜上側にある太陽電池モジュール14bの底面の下側端部141に当接する下フランジ部51と、傾斜下側にある太陽電池モジュール14cの上面の上側端部142に当接する上フランジ部52と、下フランジ部51及び上フランジ部52とを接続する接続部53とを備える。第一実施形態と同様に、接続部53に対して、下フランジ部51と上フランジ部52とは、逆方向に延設されていることになる。
【0051】
本実施形態では、嵌合部材50の接続部53は、下フランジ部51及び上フランジ部52に直接接続され、傾斜下側の太陽電池モジュール14cの上側面144全体に当接する。
【0052】
このように、第一方向における太陽電池モジュール14b、14c間の隙間に設けられた嵌合部材50において、接続部53が、第一方向の傾斜上側にある太陽電池モジュール14bとは離間しつつ、かつ、傾斜下側にある太陽電池モジュール14cの上側面144の全面に当接するように設置され、かつ、下フランジ部51が傾斜上側にある太陽電池モジュール14bの底面の下側端部141に当接するように設けられていることで、太陽電池モジュール14bの下側面143と接続部53と下フランジ部51とにより、溝部60が形成されている。
【0053】
この溝部60も、本実施形態のカーポートの第二方向における雨樋として機能する。即ち、この溝部60が太陽電池モジュール14b、14cの短辺に亘って形成されていることで、太陽電池モジュール14bから傾斜により流れてきた雨水はこの溝部60に流入する。この場合に、嵌合部材50も傾斜方向に沿って傾斜して設けられていることから、下フランジ部51と傾斜上側の太陽電池モジュール14との間に水は侵入しにくく、水が溝部60に貯留される。
【0054】
溝部60は、第一実施形態の溝部30よりも容量が大きいため、より水を貯留することが可能である。第一実施形態では壁面部26に設けられていたシール部材34の下部に水が浸入した場合、接続部23の下壁面部27と下側面143との距離が近いため、第二方向(溝部30における水流方向)における断面積が狭く水が流れにくい場合も考えられるが、本実施形態の溝部60の場合、接続部53と下側面143との距離が第一実施形態よりも長いため、第二方向における断面積が広いことから、第一実施形態に比べて、水の貯留量がより多く、かつ、水が第二方向により流れやすい。したがって、本実施形態の嵌合部材50を用いたカーポート5では、すべての太陽電池モジュール14間の隙間に十分な流量の水路が形成されていることで、屋根部分から水が漏れることがさらに抑制される。さらには、本実施形態の嵌合部材50も、太陽電池モジュール14を上桟13に設置する際に同時に設置することができるので、太陽電池モジュール14を設置した後に太陽電池モジュール14の上から施工する必要がなく、施工性がよい。
【0055】
また、嵌合部材50の下フランジ部51には、その長手方向における端部を除き、その短手方向端部、即ち下フランジ部51の先端から上方に立ち上がった立ち上がり部54が形成されている。図8に示すように、この立ち上がり部54は、太陽電池モジュール14bにおいて太陽電池パネルを支持する外周枠145内に収納される。このように立ち上がり部54を下フランジ部51に形成することで、太陽電池モジュール14bの下側面143と接続部53と下フランジ部51とにより形成された溝部60から太陽電池モジュール14bと下フランジ51との当接部から水が太陽電池モジュール14bの外周枠145の内側空間146に漏れたとしても、この立ち上がり54で受けることができ、水漏れを抑制することが可能である。
【0056】
さらに、嵌合部材50には、延設部61が設けられている。延設部61は、接続部53から、その長手方向に亘って傾斜上側の太陽電池モジュール14bに向かって延設されつつ、その端部には、延設部61に対して直交する図8中上下方向に延びた面を構成する延設フランジ部62が設けられている。即ち、この延設部61及び延設フランジ部62は、断面視においてT字状となる。また、この延設部61には、図9に示すようにその長手方向の両端部にスペーサー(当接部材)63が設けられている。断面視においてT字状の延設部61及び延設フランジ部62が設けられていることで、スペーサー63を嵌合部材50に固定することができる。
【0057】
図10に示すように、スペーサー63は、太陽電池モジュール14bの下側面143に当接する。スペーサー63を設けることで、太陽電池モジュール14bに対して嵌合部材50が位置決めされ、接続部53と太陽電池モジュール14bとの距離を適切に保持することができる。本実施形態では、このスペーサー63はアルミからなる。
【0058】
以上、本発明にかかるカーポートについて説明したが、本発明にかかるカーポートは、上述した各実施形態には限定されない。例えば、嵌合部材20は上述した実施形態の形状に限定されず、少なくとも下フランジ部21、51と接続部23、53とをそれぞれ有してればよく、各実施形態において上フランジ部22、52を有していなくてもよい。また、第一実施形態の下フランジ部21において、第二実施形態の立ち上がり部54を有するように構成する等、適宜変更が可能である。
【0059】
また、上記した各実施形態においては、当接部材として太陽電池モジュール14bの下側面に当接する部材としては、シール部材34とスペーサー63とを示したが、形状、設置位置、設置個数はこれに限定されない。例えば、第二実施形態において、スペーサー63は延設部61の長手方向両端部にそれぞれひとつずつ設けたが、これに限定されず、延設部61の長手方向に亘って所定の距離離間して3以上設けてもよいし、延設部61の長手方向に対して、例えば中央部に1つだけ設けてもよい。また、第一実施形態において、シール部材34を有していなくてもよく、また、シール部材34が接続部23の両面に設けられていてもよい。
【0060】
上記した各実施形態においては、第二方向においては上桟13の凹部133が雨樋として機能するように構成したが、これに限定されない。上桟13とは別に、太陽電池モジュール14間に雨樋として機能する別の部材を設けてもよい。
【0061】
さらに、第二実施形態において、延設部61及び延設フランジ部62の断面視における形状はT字状であったが、これに限定されない。スペーサー63を固定することができればどのような形状であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 カーポート
5 カーポート
11 支柱
12 下桟
13 上桟
14 太陽電池モジュール
20 嵌合部材
21 下フランジ部
22 上フランジ部
23 接続部
24 上壁面部
25 段差部
26 壁面部
27 下壁面部
30 溝部
31 当接部
32 切り欠き部
33 端部
34 シール部材
35 延設部
50 嵌合部材
51 下フランジ部
52 上フランジ部
53 接続部
54 立ち上がり部
60 溝部
61 延設部
62 延設フランジ部
63 スペーサー
【要約】
本発明のカーポート1は、第一方向及び第一方向に交差する第二方向に、それぞれ複数の太陽電池モジュール14が並設されてなる屋根部材を備える。第一方向において互いに隣接する太陽電池モジュール14間の間隙には、第二方向に沿った水流を形成するための嵌合部材20が嵌合され、嵌合部材20は、第一方向の傾斜上側にある太陽電池モジュール14とは離間しつつ、かつ、第一方向の傾斜下側にある太陽電池モジュール14の傾斜上側の側面の少なくとも一部に当接するように設置される接続部23と、接続部23から延設され、第一方向の傾斜上側にある太陽電池モジュール14の下面の傾斜下側端部に当接される下フランジ部22と、を備える。このようなカーポート1は、隣接する太陽電池モジュール間に生じる隙間からの雨水などの漏れを抑制でき、かつ、施工性が高い。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10