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  • 特許-コンロ用バーナ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】コンロ用バーナ
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/06 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
F23D14/06 L
F23D14/06 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019076199
(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公開番号】P2020173077
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】林 周作
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-164611(JP,A)
【文献】特開2018-189255(JP,A)
【文献】特開平8-270913(JP,A)
【文献】特開平3-79015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合気が供給される混合気室と、当該混合気室を上方から覆う上壁部と、当該上壁部の下方に位置する環状の周壁部とを備え、周壁部には、当該周壁部を貫通して混合気を噴出する炎孔通路が周方向の間隔を存して複数開設され、各炎孔通路の中心軸線である第1軸線が径方向に対し周方向一方に傾いたコンロ用バーナであって、
炎孔通路の下流端を炎口とし、当該炎口が開口する周壁部の面を炎口面として、上壁部の上面に、当該上面に落下した煮こぼれ汁が炎口面に流下することを防止する環状の堤部が立設され、当該堤部の周方向の一部に切欠き溝が形成されると共に、周壁部の炎口面の炎口よりも上方位置又は当該炎口面側に位置する上壁部の周面のいずれか一方に、全周に亘り、径方向に張り出す庇部が設けられるものにおいて、
切欠き溝の中心軸線である第2軸線が径方向に対し周方向他方に傾いて、当該第2軸線が、切欠き溝の下方に位置する炎孔通路の第1軸線と平面視で実質的に直交することを特徴とするコンロ用バーナ。
【請求項2】
前記庇部の上面が、張り出し方向に向かって下方に傾くテーパ面であることを特徴とする請求項1記載のコンロ用バーナ。
【請求項3】
前記周壁部の炎口面は、炎口の高さ範囲において、下方に向けて混合気の噴出方向の反対側に傾いていることを特徴とする請求項1又は2記載のコンロ用バーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合気が供給される混合気室と、当該混合気室を上方から覆う上壁部と、当該上壁部の下方に位置する環状の周壁部とを備え、周壁部には、当該周壁部を貫通して混合気を噴出する炎孔通路が周方向の間隔を存して複数開設されたコンロ用バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炎孔通路の下流端を炎口とし、当該炎口が開口する周壁部の面を炎口面として、上壁部の上面に、当該上面に落下した煮こぼれ汁が炎口面に流下することを防止する環状の堤部が立設され、当該堤部の周方向の一部に切欠き溝が形成されると共に、炎口面側に位置する上壁部の周面に、全周に亘り、径方向に張り出す庇部が設けられるコンロ用バーナが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載のコンロ用バーナでは、上壁部の上面に落下し、堤部で堰き止めきれない煮こぼれ汁を切欠き溝を介して流下させるが、庇部によって流下する煮こぼれ汁が炎口面の各炎口にかかることを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-189255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
然し、内炎式、外炎式を問わず、コンロ用バーナでは、庇部を設けても、切欠き溝から流下する煮こぼれ汁が、少量であったり、粘度が高かったりする等によって流速が遅い場合、煮こぼれ汁が、庇部の下面を伝い炎口に向かって回り込み、炎口から炎孔通路の内部に浸入する現象が確認された。特に、炎口から噴出する混合気の噴出量が少ない場合、その現象は顕著であった。
【0006】
本発明は、切欠き溝から流下する煮こぼれ汁が炎孔通路の内部に浸入することをより効果的に防止できるようにしたコンロ用バーナを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、混合気が供給される混合気室と、当該混合気室を上方から覆う上壁部と、当該上壁部の下方に位置する環状の周壁部とを備え、周壁部には、当該周壁部を貫通して混合気を噴出する炎孔通路が周方向の間隔を存して複数開設され、各炎孔通路の中心軸線である第1軸線が径方向に対し周方向一方に傾いたコンロ用バーナであって、炎孔通路の下流端を炎口とし、当該炎口が開口する周壁部の面を炎口面として、上壁部の上面に、当該上面に落下した煮こぼれ汁が炎口面に流下することを防止する環状の堤部が立設され、当該堤部の周方向の一部に切欠き溝が形成されると共に、周壁部の炎口面の炎口よりも上方位置又は当該炎口面側に位置する上壁部の周面のいずれか一方に、全周に亘り、径方向に張り出す庇部が設けられるものにおいて、切欠き溝の中心軸線である第2軸線が径方向に対し周方向他方に傾いて、当該第2軸線が、切欠き溝の下方に位置する炎孔通路の第1軸線と平面視で実質的に直交することを特徴とする。
【0008】
煮こぼれ汁の炎孔通路の内部への浸入は、切欠き溝の第2軸線と当該切欠き溝の下方(特に、切欠き溝の直下及びその近傍)に位置する炎孔通路の第1軸線とが平面視で一致する又は互いにほぼ平行となる場合に起こりやすい。然し、本発明によれば、切欠き溝の第2軸線が切欠き溝の下方に位置する炎孔通路の第1軸線と平面視で実質的に直交するため、切欠き溝から流下する煮こぼれ汁が、流速が遅く、庇部の下面を伝い炎口に向かって回り込んでも、炎口付近までの浸入にとどめることができる。従って、炎孔通路の内部への浸入をより効果的に防止できる。炎口付近に浸入した煮こぼれ汁は、その後に炎口から噴出する混合気によって炎口の外方に吹き飛すことができるため、炎口の詰まりは生じにくい。
【0009】
また、本発明においては、庇部の上面が、張り出し方向に向かって下方に傾くテーパ面であることが望ましい。これによれば、庇部の上面の張り出し方向先端で煮こぼれ汁を切って流下させることができ、煮こぼれ汁の庇部の下面伝いが起こりにくくなる。従って、煮こぼれ汁の炎孔通路の内部への浸入を更に防止できる。
【0010】
また、本発明においては、周壁部の炎口面は、炎口の高さ範囲において、下方に向けて混合気の噴出方向の反対側に傾いていることが望ましい。これによれば、煮こぼれ汁の一部が庇部の下面を伝い炎口の上端部に向かって回り込んだとしても、煮こぼれ汁は、炎口の下端から離れたところに滴下して、炎口にかかることを防止できる。従って、煮こぼれ汁の炎孔通路の内部への浸入を更に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のコンロ用バーナの一実施形態の要部斜視図。
図2図1に示すコンロ用バーナのA-A線で切断した断面図。
図3図1に示すコンロ用バーナの要部平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態であるコンロ用バーナ1を以下に説明する。コンロ用バーナ1は内炎式バーナである。コンロ用バーナ1は、環状のバーナボディ2と、バーナボディ2上に設けられた環状のバーナヘッド3と、バーナボディ2と一体に形成された混合管4とから構成されている。
【0013】
バーナボディ2は、板金製であり、底壁部21と、底壁部21の外周部に対する接合部から上方に立ち上がる外周壁部22とから構成され、底壁部21と外周壁部22との間に、燃焼ガスと一次空気との混合気が供給される混合気室23を形成している。混合気室23は、混合管4と連通している。混合管4の上流端の流入口41に臨む、図示省略したガスノズルから噴射される燃料ガスと流入口41から吸引される一次空気との混合気が、混合管4を介して混合気室23内に供給される。
【0014】
バーナヘッド3は、鋳物製であり、径方向に2分割されて互いに別体とされた、外周部を形成する台座部31と内周部を形成する本体部32とから構成されている。そして、台座部31と本体部32の上端部とによってコンロ用バーナ1の上壁部11を形成している。台座部31は、バーナボディ2の外周壁部22の上端部に固定され、径方向内方に張り出すフランジ部311を有する。本体部32は、上端外周部を形成するフランジ部321と、フランジ部321の内周端部から垂下する周壁部322とから構成されている。本体部32は、台座部31に着脱自在であり、フランジ部321を台座部31のフランジ部311上に載置することによって、本体部32は台座部31に着座する。この着座時に、周壁部322の下端が、バーナボディ2の底壁部21の内周端部上に載置される。そして、本体部32の周壁部322によってコンロ用バーナ1の周壁部12を形成し、周壁部322(12)は上壁部11の下方に位置する。
【0015】
バーナヘッド3の本体部32の周壁部322(12)には、下面から上方に凹入する、炎孔通路5を形成する溝が周方向の間隔を存して複数形成されている。各溝は、周壁部322(12)の台座部31への着座時に、下端がバーナボディ2の底壁部21の内周端部によって閉塞され、コンロ用バーナ1の周壁部12に、周壁部12を貫通する複数の炎孔通路5が周方向の間隔を存して開設される。各炎孔通路5は、下流端に炎口51を有し、バーナボディ2の混合気室23と連通して、混合気室23内に混合管4を介して供給される混合気を炎口51からコンロ用バーナ1の径方向内方に噴出する。
【0016】
また、コンロ用バーナ1では、バーナヘッド3の本体部32の上面内周端部に、環状の堤部6が立設され、堤部6は、本体部32の上面(コンロ用バーナ1の上壁部11の上面)に落下した煮こぼれ汁が、本体部32の周壁部322(12)の炎口51が開口する面である炎口面322a(コンロ用バーナ1の周壁部12の炎口面121)に流下することを防止する。堤部6には、周方向の一部に切欠き溝61が複数形成されている。
【0017】
更に、コンロ用バーナ1では、バーナヘッド3の本体部32の周壁部322(12)の炎口面322a(121)は、図2の点線円内に拡大して示す如く、炎口51の高さ範囲において、下方に向けて混合気の噴出方向の反対側に傾いている。
【0018】
そして、コンロ用バーナ1では、バーナヘッド3において、本体部32の周壁部322(12)の炎口面322a(121)の炎口51より上方位置に、全周に亘り、径方向に張り出す庇部7が設けられている。庇部7の上面71は、上記点線円内に拡大して示す如く、張り出し方向に向かって下方に傾くテーパ面となっている。
【0019】
図3を参照して、バーナヘッド3の本体部32の周壁部322(12)に開設された各炎孔通路5の中心軸線である第1軸線cは、周壁部322(12)の径方向(図3の二点鎖線で示す方向)に対し傾き角αで周方向一方に傾いている。この傾きによって、コンロ用バーナ1の燃焼炎が周方向一方に旋回し、調理用器の加熱効率が向上する。堤部6の一部に形成された各切欠き溝61の中心軸線である第2軸線Cは、径方向に対し傾き角βで周方向他方に傾くと共に、切欠き溝61の下方、即ち、切欠き溝61の直及びその近傍に位置する2つの炎孔通路5a,5bの第1軸線c,cと平面視で実質的に直交している。ここで、「実質的に直交」とは、切欠き溝61の第2軸線Cと炎孔通路の第1軸線c,cとのなす角θ,θが正に90°であることを意図しない。誤差等を含め、例えば、80°~100°程度等の範囲を許容する。
【0020】
ところで、バーナヘッド3の本体部32の上面に落下した煮こぼれ汁の一部は、切欠き溝61を第2軸線Cに沿って径方向外端から径方向内端に向かって流れ、庇部7の上面71の張り出し方向先端から本体部32の径方向内部に流出する。煮こぼれ汁が少量であったり、粘度が高かったりする等によって煮こぼれ汁の流速が遅い場合、流出する煮こぼれ汁は、庇部7の下面72を伝い周壁部322(12)の炎口51に向かって回り込む。このときの煮こぼれ汁の回り込み方向は、煮こぼれ汁が切欠き溝61を第2軸線Cに沿って径方向外端から径方向内端に向かって流れる時と反対方向になる。従って、炎孔通路5の第1軸線cが切欠き溝61の第2軸線Cと平面視で一致する又は互いにほぼ平行であると、上記の如く回り込んだ煮こぼれ汁は、炎口51の上端から炎孔通路5の内部に浸入することになる。
【0021】
然し、上記実施形態のコンロ用バーナ1では、切欠き溝61の第2軸線Cが切欠き溝61の下方に位置する炎孔通路5a,5bの第1軸線c,cと平面視で実質的に直交するため、上記の如く回り込む煮こぼれ汁は、炎口51a,51bの高さ方向にのびる2つの口縁の内、煮こぼれ汁の回り込み方向で庇部7の上面71の張り出し方向先端からの距離が遠い一方の口縁又は当該口縁付近に位置する炎孔通路5a,5bの内壁部で断ち切られて、滴下する。従って、庇部7の下面72を伝い炎口51a,51bに向かって煮こぼれ汁が回り込んでも、煮こぼれ汁の浸入は炎口51a,51b付近までにとどめることができ、炎孔通路5a,5bの内部への煮こぼれ汁の浸入をより効果的に防止できる。尚、炎口51a,51b付近に浸入した煮こぼれ汁は、その後に炎口51a,51bから噴出する混合気によって炎口51a,51bの外方に吹き飛すことができるため、炎口51a,51bの詰まりは生じにくい。
【0022】
また、庇部7の上面71が、張り出し方向に向かって下方に傾くテーパ面であるため、庇部7の上面71の張り出し方向先端で煮こぼれ汁を切って流下させることができ、煮こぼれ汁の庇部7の下面伝いが起こりにくくなる。従って、煮こぼれ汁の炎孔通路5a,5bの内部への浸入を更に防止できる。
【0023】
更に、周壁部322(12)の炎口面322a(121)が、炎口51の高さ範囲において、下方に向けて混合気の噴出方向の反対側に傾いているため、煮こぼれ汁の一部が庇部7の下面72を伝い炎口51a,51bの上端部に向かって回り込んだとしても、煮こぼれ汁は、炎口51a,51bの下端から離れたところに滴下して、炎口51a,51bにかかることを防止できる。従って、煮こぼれ汁の炎孔通路5の内部への浸入を更に防止できる。
【0024】
以上、本発明を一実施形態に関して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、庇部7は、周壁部12の炎口面121に設けられているが、炎口面121側に位置する上壁部11の周面に設けてもよい。また、上記実施形態では、切欠き溝61の下方に位置する炎孔通路5を2つの炎孔通路5a,5bとしているが、切欠き溝61の下方に位置する炎孔通路5の個数は、各炎孔通路5の周方向の間隔、傾き角αや、切欠き溝61の個数、傾き角β等によって異なり、1つ又は3つ以上の場合もある。
【0025】
更に、バーナヘッド3は、台座部31と本体部32とが一体のものであってもよい。更にまた、バーナボディ2の底壁部21を板金製としているが、鋳物製とすることも可能である。この場合、底壁部21の内周端部に環状壁を立設し、この環状壁に炎孔通路5となる溝を形成して、環状壁の上面に着座するようにバーナヘッド3を設けてもよい。この場合のバーナヘッド3は環状又は板状の蓋等とすることができる。そして、上記実施形態は内炎式バーナであるが、本発明は外炎式バーナにも等しく適用できる。この場合、堤部6は上壁部11の上面外周端部に立設され、バーナヘッド3はバーナキャップと呼称されてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1…コンロ用バーナ、11…上壁部、12…周壁部、121…炎口面、23…混合気室、5,5a,5b…炎孔通路、51,51a,51b…炎口、6…堤部、61…切欠き溝、7…庇部、71…庇部7の上面、c…炎孔通路5の第1軸線、c,c…炎孔通路5a,5bの第1軸線、C…切欠き溝6の第2軸線。
図1
図2
図3