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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】火力調節装置
(51)【国際特許分類】
   F23K 5/00 20060101AFI20220915BHJP
   F23N 5/26 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
F23K5/00 301C
F23N5/26 U
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019080160
(22)【出願日】2019-04-19
(65)【公開番号】P2020176785
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】岸 隆行
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-17715(JP,A)
【文献】特開2003-14229(JP,A)
【文献】特開平9-196371(JP,A)
【文献】特開2016-11778(JP,A)
【文献】特開平10-2556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/00
F23N 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流路が内部に形成された本体と、ガス流路を通じてガスバーナへ供給する燃料ガスの供給量を進退によって調節する、本体に保持されたニードル弁と、水平方向に揺動自在として本体に取り付けられ、揺動時にニードル弁を進退させる、樹脂製の火力調節レバーと、ガスバーナの点火を押し操作によって実行する操作釦とを備えた火力調節装置であって、
火力調節レバーは、操作釦の押し操作方向端部に対向して位置する羽根部を有し、点火時の操作釦の押し操作に伴い羽根部を介して火力調節レバーが、ガスバーナへの燃料ガスの供給量を点火に適した範囲内の量とする位置にニードル弁を移動させる点火適合範囲内位置に揺動されるものにおいて、
火力調節レバーの羽根部は、操作釦の押し操作方向端部側に向かって突出する突起部を有し、操作釦の押し操作方向端部が突起部に当接することによって、羽根部を介して火力調節レバーが揺動されることを特徴とする火力調節装置。
【請求項2】
請求項1記載の火力調節装置であって、
羽根部は、ガスバーナへの燃料ガスの供給量を減少させる火力調節レバーの弱火側への揺動操作で操作釦に接近する方向に揺動する第1半部と、ガスバーナへの燃料ガスの供給量を増加させる火力調節レバーの強火側への揺動操作で操作釦に接近する方向に揺動する第2半部とを有するものにおいて、
突起部として、第1半部に設けられた第1突起部と、第2半部に設けられた第2突起部とを有し、火力調節レバーが点火適合範囲内位置より弱火側に揺動されている状態で操作釦が点火時に押し操作されたとき、操作釦の押し操作方向端部が第1突起部に当接して、火力調節レバーが強火側に向かって点火適合範囲内位置に揺動され、火力調節レバーが点火適合範囲内位置より強火側に揺動されている状態で操作釦が点火時に押し操作されたとき、操作釦の押し操作方向端部が第2突起部に当接して、火力調節レバーが弱火側に向かって点火適合範囲内位置に揺動されることを特徴とする火力調節装置。
【請求項3】
請求項2記載の火力調節装置であって、
操作釦が、ガスバーナの消火をも押し操作によって実行する点消火釦であり、
当該点消火釦を、ガスバーナが消火される始端の消火位置からガスバーナに点火される終端の点火位置まで押し操作した後、点消火釦の消火位置側への復動を、ガスバーナの燃焼を継続させる、点火位置と消火位置との間の燃焼位置で係止すると共に、点消火釦を、燃焼位置から当該燃焼位置と点火位置との間の係止解除位置に押し操作した後に、消火位置に復動させるプッシュプッシュ機構を備えるものにおいて、
火力調節レバーがガスバーナへの燃料ガスの供給量を最小量とする弱火位置に存する状態で点消火釦が係止解除位置に押し操作されても、点消火釦の押し操作方向端部は第1突起部に当接しないことを特徴とする火力調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス流路が内部に形成された本体と、ガス流路を通じてガスバーナへ供給する燃料ガスの供給量を進退によって調節する、本体に保持されたニードル弁と、水平方向に揺動自在として本体に取り付けられ、揺動時にニードル弁を進退させる、樹脂製の火力調節レバーと、ガスバーナの点火を押し操作によって実行する操作釦とを備えた火力調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の火力調節装置として、火力調節レバーは、操作釦の押し操作方向端部に対向して位置する羽根部を有し、点火時の操作釦の押し操作に伴い羽根部を介して火力調節レバーが、ガスバーナへの燃料ガスの供給量を点火に適した範囲内の量とする位置にニードル弁を移動させる点火適合範囲内位置に揺動されるものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
このものでは、羽根部は、ガスバーナへの燃料ガスの供給量を減少させる火力調節レバーの弱火側への揺動操作で操作釦に接近する方向に揺動する第1半部と、ガスバーナへの燃料ガスの供給量を増加させる火力調節レバーの強火側への揺動操作で操作釦に接近する方向に揺動する第2半部とを有している。火力調節レバーが点火適合範囲内位置より弱火側に揺動されている状態で操作釦が点火時に押し操作されたとき、操作釦の押し操作方向端部が第1半部に当接して、第1半部を介して火力調節レバーが点火適合範囲内位置に揺動され、火力調節レバーが点火適合範囲内位置より強火側に揺動されている状態で操作釦が点火時に押し操作されたとき、操作釦の押し操作方向端部が第2半部に当接して、第2半部を介して火力調節レバーが点火適合範囲内位置に揺動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-17715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1記載の樹脂製の火力調節レバーは、操作釦の寸法や押し操作のストローク等のバラツキを考慮して設計されるが、成形条件を適正にコントロールしても、ヒケ、反り等の成形不良を完全になくすことは難しい。当該成形不良は、火力調節レバーの寸法のバラツキとして現れる。寸法のバラツキが特に羽根部に現れると、羽根部が、操作釦の押し操作方向端部が当接すべき位置に存せず、操作釦の押し操作によって火力調節レバーを点火適合範囲内位置に揺動させることができない場合がある。この場合、点火時に、点火に適した範囲内の量の燃料ガスが供給されず、ガスバーナに点火されなかったり、点火に適した範囲を超える量の燃料ガスが供給されて、通常点火時よりも大きな音を発してガスバーナに点火されたりする等の不具合が発生する。
【0006】
羽根部の成形不良対策としては、成形金型の成形面の修正で対処せざるを得ない。然し、羽根部全体に対応する成形面を修正することは、容易ではなく、コストの高騰を招く。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、成形不良に対する成形金型の成形面の修正を容易として、コストの高騰を抑制できる火力調節装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、ガス流路が内部に形成された本体と、ガス流路を通じてガスバーナへ供給する燃料ガスの供給量を進退によって調節する、本体に保持されたニードル弁と、水平方向に揺動自在として本体に取り付けられ、揺動時にニードル弁を進退させる、樹脂製の火力調節レバーと、ガスバーナの点火を押し操作によって実行する操作釦とを備えた火力調節装置であって、火力調節レバーは、操作釦の押し操作方向端部に対向して位置する羽根部を有し、点火時の操作釦の押し操作に伴い羽根部を介して火力調節レバーが、ガスバーナへの燃料ガスの供給量を点火に適した範囲内の量とする位置にニードル弁を移動させる点火適合範囲内位置に揺動されるものにおいて、火力調節レバーの羽根部は、操作釦の押し操作方向端部側に向かって突出する突起部を有し、操作釦の押し操作方向端部が突起部に当接することによって、羽根部を介して火力調節レバーが揺動されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、点火時の操作釦の押し操作に伴う羽根部を介しての火力調節レバーの点火適合範囲内位置への揺動を、羽根部が有する突起部への操作釦の押し操作方向端部の当接によって実行するため、樹脂成形品である火力調節レバーに成形不良が生じて、操作釦の押し操作によって火力調節レバーを点火適合範囲内位置に揺動させることができない場合、成形金型の成形面の修正箇所は、羽根部全体ではなく、突起部に対応する部分のみに限定される。従って、樹脂製の火力調節レバーの成形不良に対する成形金型の成形面の修正は、容易となり、コストの高騰を抑制できる。
【0010】
本発明において、上記従来例と同様に、羽根部が、ガスバーナへの燃料ガスの供給量を減少させる火力調節レバーの弱火側への揺動操作で操作釦に接近する方向に揺動する第1半部と、ガスバーナへの燃料ガスの供給量を増加させる火力調節レバーの強火側への揺動操作で操作釦に接近する方向に揺動する第2半部とを有する場合は、突起部として、第1半部に設けられた第1突起部と、第2半部に設けられた第2突起部とを有し、火力調節レバーが点火適合範囲内位置より弱火側に揺動されている状態で操作釦が点火時に押し操作されたとき、操作釦の押し操作方向端部が第1突起部に当接して、火力調節レバーが強火側に向かって点火適合範囲内位置に揺動され、火力調節レバーが点火適合範囲内位置より強火側に揺動されている状態で操作釦が点火時に押し操作されたとき、操作釦の押し操作方向端部が第2突起部に当接して、火力調節レバーが弱火側に向かって点火適合範囲内位置に揺動されるようにすればよい。
【0011】
ところで、操作釦が、ガスバーナの消火をも押し操作によって実行する点消火釦であり、当該点消火釦を、ガスバーナが消火される始端の消火位置からガスバーナに点火される終端の点火位置まで押し操作した後、点消火釦の消火位置側への復動を、ガスバーナの燃焼を継続させる、点火位置と消火位置との間の燃焼位置で係止すると共に、点消火釦を、燃焼位置から当該燃焼位置と点火位置との間の係止解除位置に押し操作した後に、消火位置に復動させるプッシュプッシュ機構を備える場合、火力調節レバーがガスバーナへの燃料ガスの供給量を最小量とする弱火位置に存する状態で消火時に点消火釦が係止解除位置に押し操作されたとき、点消火釦の押し操作方向端部が第1突起部に当接すると、火力調節レバーが弱火位置から点火適合範囲内位置方向に揺動されてガスバーナへの燃料ガスの供給量が増大するため、燃焼炎は消火に至るまでに一瞬大きくなり、使用者は違和感を覚える。
【0012】
そこで、本発明においては、上記の場合、火力調節レバーがガスバーナへの燃料ガスの供給量を最小量とする弱火位置に存する状態で点消火釦が係止解除位置に押し操作されても、点消火釦の押し操作方向端部は第1突起部に当接しないことが望ましい。これによれば、火力調節レバーが弱火位置に存する状態で係止解除位置に点消火釦を押し操作して消火する際に、火力調節レバーが弱火位置から点火適合範囲内位置方向に揺動されることはない。従って、燃焼炎が一瞬大きくなることなく、ガスバーナは弱火のまま消火され、使用者に違和感を与えない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の火力調節装置の一実施形態をガスバーナへの点火前の状態として示す斜視図。
図2図1に示す火力調節装置の分解図。
図3図1に示す火力調節装置のX-X断面図。
図4図3に示すプッシュプッシュ機構の概略下面図。
図5図1に示す火力調節装置の火力調節レバーの斜視図。
図6】(I),(II),(III),(IV),(V)は、夫々、図3に示す点消火釦の操作状態と共に、点消火釦の各操作状態における火力調節レバーの動作及びプッシュプッシュ機構の状態を示す要部下面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1及び図2を参照して、本実施形態の火力調節装置Aについて説明する。尚、以下の説明における「上」、「下」、「左」及び「右」は、図1の図示に準拠する。
【0015】
火力調節装置Aは、本体1と、ニードル弁2と、火力調節レバー3と、操作釦4とを備えている。本体1には、下側前端部にガイド部材5が取り付けられると共に、下側後端部にバルブユニット6が取り付けられている。ニードル弁2は、前後方向に進退するように本体1の上端部に保持されている。ニードル弁2の前端部は、本体1の前端部よりも前方に突出して、当該前端部に、上方にのびる第1係合ピン21が突設されている。火力調節レバー3は、樹脂製で、後端部に上壁部31を有し、上壁部31の後端部でネジ7によって本体1の上端部に水平方向(即ち、左右方向)に揺動自在に連結されている。
【0016】
ニードル弁2と火力調節レバー3の上壁部31との間には、前後方向に直線状にのびる第1ガイド穴81が開設された金属製のガイド板8が介設されている。ガイド板8は後端部で本体1に締結されている。また、ガイド板8は、左端から垂下して設けられた脚部82を有し、脚部82の下端部は、本体1とガイド部材5とに跨るように配置される。ニードル弁2の前端部に突設された第1係合ピン21は、ガイド板8の第1ガイド穴81に挿入されると共に、火力調節レバー3の上壁部31の前後方向の中間部に開設された、後述する第2ガイド穴311に挿入されて、上壁部31の上端面から上方に突出している。
【0017】
本実施形態の火力調節装置Aは、操作釦4に、図外のガスバーナの点消火の両方を押し操作によって実行する点消火釦41を採用している。点消火釦41は、本体部411と、本体部411の上端の左右両側に沿ってのびると共に、上方に突出する一対の押圧部412,412とを備え、後方への押し操作が可能とされている。各押圧部412,412の後端部は、本体部411の後端部よりも後方に突出し、押し操作方向端部4aを構成している。ガイド部材5は中空の部材であり、ガイド部材5の内部に点消火釦41が挿入される。ガイド部材5には、上端部の左右に一対のレール部51,51が形成されている。左側のレール部51の内部に左側の押圧部412が挿入されると共に、右側のレール部51に右側の押圧部412が挿入されて、各レール部51,51が各押圧部412,412をガイドする。
【0018】
図3を参照して、本体1の内部には、下端からニードル弁2の後端部に向かって上方にまっすぐのびる上流側ガス流路111と、上流側ガス流路111の下流端から、ニードル弁2の進入方向に曲がり、本体1の後端に向かってのびる下流側ガス流路112とからなるガス流路11が形成されている。本体1でのニードル弁2の保持状態は、前端部が後端部よりも下方に位置する前下がりの傾斜姿勢となっている。このため、下流側ガス流路112の下流端は上流端よりも上方に配置されている。また、下流側ガス流路112の下流側端部に噴出ノズル112aが設けられている。上記の如くのニードル弁2の傾斜姿勢に対応してガイド板8も、後端部を除いて前下がりの傾斜姿勢となっている。点消火釦41の本体部411が挿入されるガイド部材5の内部には、戻しバネ52が設けられ、戻しバネ52は、点消火釦41を押し操作方向と反対方向(即ち、復動方向)に付勢する。
【0019】
また、本実施形態の火力調節装置Aは、後述するプッシュプッシュ機構9を備えてもいる。プッシュプッシュ機構9は、ガイド溝91とガイド溝91に係合する第2係合ピン92とから構成される。ガイド溝91は、点消火釦41の本体411の下端部に形成され、第2係合ピン92は、線材921の折曲によって形成されている。
【0020】
バルブユニット6は、下方に開口する流入口611と、本体1の内部に形成されたガス流路11の上流側ガス流路111に連通する流出口612とを有する、前後方向に長手のバルブケーシング61と、バルブケーシング61の後部に収納した電磁安全弁62と、バルブケーシング61の前部に収納した主弁63とを備えている。電磁安全弁62及び主弁63が開弁すると、流入口611から流出口612に燃料ガスが流れる。
【0021】
主弁63は、バルブケーシング61の前端部から内部に挿入される操作ロッド64に取り付けられている。操作ロッド64は、ガイド部材5の後端部に開設された開口を通じて点消火釦41の本体部411の後端に当接可能とされている。上記の如くのバルブユニット6は、プッシュプッシュ機構9によって以下のように動作する。点消火釦41が、後述する消火位置から点火位置まで後方に押し操作されると、点消火釦41の本体部411の後端が前端に当接して操作ロッド64が後方に押動され、電磁安全弁62が押圧開弁されると共に、主弁63も開弁され、当該状態で電磁安全弁62が通電されて開弁状態に保持される。押し操作が解除されると、戻しバネ52の付勢力によって点消火釦41は、後述する燃焼位置に復動して係止される。このとき、操作ロッド64が前方に移動し、電磁安全弁62の押圧が解除されるが、主弁63は燃焼位置では開弁状態を維持する。次いで、消火のために点消火釦41が押し操作されて後述する係止解除位置に達した後、消火位置に復動する際に、操作ロッド64が前方に移動することによって主弁63は閉弁される。尚、電磁安全弁62は、ガスバーナが失火して図外の火炎検知素子が火炎を検知しなくなったときに閉弁し、生ガスの放出を防止する。
【0022】
図4を参照して、プッシュプッシュ機構9の概略を説明する。尚、図4の左側が図1の図示の「後」に相当し、図4の右側が「前」に相当する。ガイド溝91は平面視でほぼハート形の形状を有する。ガイド溝91は、ガスバーナが消火状態にあるときの点消火釦41の始端である、後述する消火位置から、図3に示す点消火釦41の後端が操作ロッド64の前端に当接するときに対応するa点を経由して、ガスバーナに点火されるときの点消火釦41の終端である、後述する点火位置に対応するb点に向かって一部湾曲して後方にのびる第1溝部911と、a点とb点との間の中間に位置し、ガスバーナの燃焼を継続させる、後述する燃焼位置に対応するc点に向かって斜め後方にのびる第2溝部912と、点消火釦41の後述する係止解除位置に対応するd点に向かって斜め前方にのびる第3溝部913と、d点からa点に向かって湾曲して後方にのびる第4溝部914とから構成されている。また、ガイド溝91には、4つの段差K,L,M,Nが存し、ガイド溝91の上面の高さは以下の如くである。即ち、b点寄りの段差K近傍に位置する第1溝部911の部分の方が第2溝部912よりも低く、c点寄りの段差L近傍に位置する第2溝部912の部分の方が第3溝部913よりも低い。また、d点寄りの段差M近傍に位置する第3溝部913の部分の方が第4溝部914よりも低く、a点よりも段差N近傍に位置する第4溝部914の部分の方が第1溝部911よりも低い。
【0023】
点消火釦41が消火位置から点火位置に押し操作されると、ガイド溝91が後方に移動し、第2係合ピン92がa点に変位したとき、上記の如く、点消火釦41の後端が操作ロッド64の前端に当接する。操作ロッド64が後方に押動され、バルブユニット6の電磁安全弁62及び主弁63が開弁され、燃料ガスが本体1のガス流路11に流入する。この後、第2係合ピン92はb点へと変位する。第2係合ピン92がb点に変位すると、ガスバーナに点火される(点火位置)。点火位置で点消火釦41の押し操作が解除されると、図3に示す戻しバネ52の付勢力によって点消火釦41が押し操作方向と反対方向に復動され、ガイド溝91が前方に移動する。このとき、第2係合ピン92は、段差Kによって第1溝部911側への逆行を阻止され、第2溝部912を通ってc点に変位すると共に、c点付近の第3溝部913の前方側壁によってc点で係止される。このため、点消火釦41は、復動が阻止されて燃焼位置に保持され、バルブユニット6の主弁63が開弁状態に維持される。この後、点消火釦41が燃焼位置から押し操作されると、ガイド溝91の後方への移動に伴い、第2係合ピン92は、段差Lによって第2溝部912側への逆行を阻止されて、第3溝部913を通ってd点に変位する。このとき、点消火釦41の押し操作は係止解除位置で規制される。次いで、点消火釦41の押し操作が解除されると、戻しバネ52の付勢力によって点消火釦41が復動され、ガイド溝91が前方に移動する。このとき、第2係合ピン92は、段差Mによって第3溝部913側への逆行が阻止されて、第4溝部914に沿ってa点に復帰する。この後、点消火釦41の操作ロッド64との当接が解除されて、点消火釦41は消火位置に戻り、バルブユニット6の主弁63が閉弁して燃料ガスの供給が停止されてガスバーナが消火される。
【0024】
図5を参照して、火力調節レバー3の上壁部31には、上記の如く、前後方向の中間部に第2ガイド穴311が開設されている。第2ガイド穴311は、左側から右側にかけて後方に向かう円弧状の形状を有している。上壁部31の左右両側端には、垂下してのびる側壁部32,32が設けられ、各側壁部32は、下端で底壁部33によって連結されている。底壁部33の中央部には、下方にのび、円弧状に湾曲して前方に突出する摺動部34が設けられている。摺動部34の内周面は、図2に示す本体1の下側前端部においてガイド部材5の後端部の近傍位置に設けられた受け部12の外周面に当接可能とされている。これら側壁部32,32、底壁部33、及び摺動部34も樹脂製であり、火力調節レバー3と一体に成形されている。
【0025】
本実施形態の火力調節装置Aでは、ガスバーナの燃焼中に、火力調節レバー3を水平方向(左右方向)に揺動させると、図3に示す如く、第1係合ピン21が、ガイド板8に形成された第1ガイド穴81及び上壁部31に形成された第2ガイド穴311によってガイドされて、前後方向に移動し、この第1係合ピン21の前後方向の移動に伴われてニードル弁2が進退する。従って、火力調節装置Aは、ガス流路11を通じてのガスバーナへの燃料ガスの供給量を火力調節レバー3の水平方向(左右方向)の揺動によって調節できる。具体的には、火力調節レバー3を左方向に揺動させると、ガスバーナの燃焼炎が弱火になり、右方向に揺動させると強火になる。
【0026】
また、上記の如く、火力調節レバー3は、上壁部31を含め、側壁部32,32、及び底壁部33も樹脂製であるが、火力調節レバー3の揺動時に、火力調節レバー3の前端部に押し下げ方向の力が作用したとしても、摺動部34の内周面が本体1の受け部12の外周面に当接するため、火力調節レバー3が下方に撓むのを抑制できる。また、火力調節レバー3の前端部に作用する押し下げ方向の力によって火力調節レバー3が多少なりとも下方に撓む場合にも、ネジ7によって本体1の上端部に連結された上壁部31の後端部に応力が集中するのを抑制できる。更に、本実施形態の火力調節装置Aでは、上記の如く、ニードル弁2及び後端部を除くガイド板8が共に前下がりの傾斜姿勢となっているため、揺動時に下方に撓む火力調節レバー3が、ニードル弁2及びガイド板8と干渉することはなく、水平方向(左右方向)の揺動によってガスバーナへの燃料ガスの供給量を調節できる。
【0027】
そして、本実施形態の火力調節装置Aでは、火力調節レバー3は、操作釦4としての点消火釦41の押し操作方向端部4a,4aに対向して位置する羽根部35を有している。羽根部35は、摺動部34を挟んで左右両側に位置し、底壁部33から下方にのびるように設けられている。具体的には、羽根部35は、火力調節レバー3の弱火側への揺動操作(左方向の揺動操作)で点消火釦41に接近する方向に揺動する第1半部351と、火力調節レバー3の強火側への揺動操作(右方向の揺動操作)で点消火釦41に接近する方向に揺動する第2半部352とからなる。第1半部351及び第2半部352は共に平板状の形状を有している。また、第1半部351には、前面から前方に突出する第1突起部361が突起部36として設けられ、第2半部352にも、前面から前方に突出する第2突起部362が突起部36として設けられている。第1突起部361は、第2突起部362よりも摺動部34に近い位置、即ち、火力調節レバー3の揺動軸に近い位置に存している。上記の如くの羽根部35は、ガスバーナに点火させる際の点消火釦41の押し操作に伴い火力調節レバー3を、ガスバーナへの燃料ガスの供給量を点火に適した範囲内の量とする位置にニードル弁2を移動させる点火適合範囲内位置に揺動させるための部位である。
【0028】
図6を参照して、羽根部35を介した火力調節レバー3の点火適合範囲内位置への揺動について、点消火釦41の押し操作と共に説明する。尚、図6に示す(I),(II),(III),(IV),(V)の各状態における「上」「下」「左」「右」は、夫々、図1に図示の「左」「右」「後」「前」に相当する。
【0029】
状態(I)は、燃料ガスがガスバーナに供給されない消火状態である。消火状態では、点消火釦41の押し操作方向先端部4a,4aの先端が消火位置EPに位置して、図1に示す如く、点消火釦41の後側の一部がガイド部材5の内部に挿入されているが、図3に示す如く、点消火釦41の後端は、操作ロッド64の前方に位置する。
【0030】
点消火釦41の操作位置には、上記の如く、点消火釦41を押し切った点火位置IPと、点火後に点消火釦41が復動されて係止される燃焼位置CPと、燃焼位置CPから点消火釦41が押し操作され、係止解除される係止解除位置RPとが存する。各位置IP,CP,RPは、消火位置EPと同様に、点消火釦41の押し操作方向端部4a,4aの先端位置である。消火位置EPを基準とする点火位置IP、燃焼位置CP、係止解除位置RPの夫々までの距離をd,d,dとすると、d>d>dの関係となっている。また、本実施形態の火力調節装置Aでは、点消火釦41の右側の押し操作方向端部4aは、先端から右側端にかけて斜め後方に傾斜する傾斜面4aを有し、左側の押し操作方向端部4aは、先端から左側端にかけて斜め後方に傾斜する傾斜面4aを有している。
【0031】
消火位置EPでは、火力調節レバー3は、ガスバーナへの燃料ガスの供給量を最小量とする弱火位置LPからガスバーナへの燃料ガスの供給量を最大量とする強火位置HPまでの範囲内で揺動自在であり、任意の位置に位置する。尚、状態(I)では、火力調節レバー3は、若干弱火位置LP側に揺動されている。即ち、火力調節レバー3が、点火適合範囲内位置より弱火側に揺動された状態になっている。この状態からガスバーナを点火させるように点消火釦41が押し操作されたときが状態(II)である。状態(II)では、点消火釦41の押し操作方向端部4a,4aが、燃焼位置CP及び係止解除位置RPを超えて点火位置IPに接近して位置し、右側の押し操作方向端部4aが、羽根部35の第1半部351に設けられた第1突起部361に当接する。プッシュプッシュ機構9では、ガイド溝91が後方に移動し、第2係合ピン92が、第1溝部911のa点を超えた位置に変位する。図3に示すバルブユニット6では、操作ロッド64が点消火釦41の本体部411に当接して後方に押動されて、電磁安全弁62及び主弁63が開弁され、燃料ガスが本体1のガス流路11に流入している。
【0032】
状態(II)から点消火釦41が更に押し操作され、点火位置IPに到達したときが状態(III)である。状態(III)では、右側の押し操作方向端部4aが第1突起部361と当接したまま点消火釦41が押し操作され、左側の押し操作方向端部4aは第2突起部362と当接しないため、火力調節レバー3が、第1半部351を介して右方向に揺動されて、ガスバーナへの燃料ガスの供給量を点火に適した範囲内の量とする点火適合範囲内位置に存する。従って、ガスバーナに点火される。このとき、プッシュプッシュ機構9では第2係合ピン92がガイド溝91のb点に変位する。尚、点火位置IPでは、第2半部352の第2突起部362は、点消火釦41の左側の押し操作方向端部4aと傾斜面4aで接触する若しくは摺接する、又は非接触のいずれかであり、左側の押し操作方向端部4aによって後方に押圧されることはない。
【0033】
次に、点消火釦41の押し操作が解除されたときが状態(IV)である。状態(IV)では、図3に示す戻しバネ52の付勢力を受けて点消火釦41が押し操作方向と反対方向に復動されて、右側の押し操作方向端部4aは第1突起部361から離間する。このとき、プッシュプッシュ機構9では、ガイド溝91が前方に移動して第2係合ピン92が第2溝部912を通ってc点で係止されるため、点消火釦41は燃焼位置CPに保持される。バルブユニット6の主弁63が開弁状態に維持されて、ガスバーナは燃焼を継続する。ガスバーナの燃焼中には、火力調節レバー3を水平方向(左右方向)に揺動させることによって、図2及び図3に示すニードル弁2を前後方向に移動させることができ、ガス流路11の下流側ガス流路112に設けられた噴出ノズル112aから噴出させてガスバーナに供給する燃料ガスの供給量を調節し、弱火から強火の範囲で火力を調節できる。
【0034】
消火時に、点消火釦41が押し操作されたときが状態(V)である。プッシュプッシュ機構9では、ガイド溝91が後方に移動して第2係合ピン92は第3溝部913を通ってd点に変位し、点消火釦41の押し操作は、押し方操作方向端部4a,4aの先端が係止解除位置RPで規制される。このとき、火力調節レバー3が弱火位置LPに存する状態(状態(V)の左側図示)では、点消火釦41の右側の押し操作方向端部4aは第1突起部361に当接しない。点消火釦41の押し操作によって右側の押し操作方向端部4aが接近する第1突起部361は、先端と右側の押し操作方向端部4aとの間にクリアランスCが存するように、羽根部35の第1半部351に形成されている。点消火釦41の左側の押し操作方向端部4aは、火力調節レバー3が弱火位置LPに存する状態では、第2突起部362と最も離れた位置に存するため、第2突起部362とは当然当接しない。
【0035】
同様に、状態(V)では、火力調節レバー3が強火位置HPに存する状態(状態(V)の右側図示)でも、点消火釦41の左側の押し操作方向端部4aは第2突起部362に当接しない。点消火釦41の押し操作によって左側の押し操作方向端部4aが接近する第2突起部362は、先端と左側の押し操作方向端部4aの傾斜面4aとの間にクリアランスCが存するように、羽根部35の第2半部352に形成されている。点消火釦41の右側の押し操作方向端部4aは、火力調節レバー3が強火位置HPに存する状態では、第1突起部361と最も離れた位置に存するため、第1突起部361とは当然当接しない。従って、本実施形態の火力調節装置Aでは、消火時に、点消火釦41の押し操作に伴う火力調節レバー3の点火適合範囲内位置方向への揺動は起こらない。
【0036】
次いで、点消火釦41の押し操作が解除されると、図3に示す戻しバネ52の付勢力によって点消火釦41が押し操作方向と反対方向に復動され、ガイド溝91が前方に移動して第2係合ピン92が第4溝部914を通り、状態(I)に戻る。点消火釦41は消火位置EPに戻って、図3に示すバルブユニット6の主弁63が閉弁し、燃料ガスの供給が停止されてガスバーナが消火される。
【0037】
尚、点火時に火力調節レバー3を点火適合範囲内位置に揺動させることに関し、以上では、火力調節レバー3が弱火側に若干揺動された状態で説明したが、火力調節レバー3が点火適合範囲内位置よりも強火側に揺動された状態でも、本実施形態の火力調節装置Aは同様に動作する。即ち、火力調節レバー3が強火側に揺動された状態では、点火時に、点消火釦41の左側の押し操作方向端部4aの傾斜面4aが、羽根部35の第2半部352に設けられた第2突起部362に当接して、第2半部352を介して火力調節レバー3を点火適合範囲内位置に揺動させる。
【0038】
また、係止解除位置RPでのクリアランスC,Cは、点消火釦41の燃焼位置CPから係止解除位置RPまでのストロークや押し操作方向端部4a,4aの形状、また、火力調節レバー3の揺動角度等を考慮して、第1突起部361及び第2突起部362の大きさや形状、第1半部351での第1突起部361の形成位置及び第2半部352での第2突起部362の形成位置等を適宜決定することによって形成される。尚、第1突起部361及び第2突起部362の先端部の形状については、点消火釦41の押し操作方向端部4a,4aが当接するときに作用する押圧力が分散せずに第1半部351及び第2半部352に伝達されるような形状とするのが望ましい。具体的には、点消火釦41の押し操作方向端部4a,4aが当接する部分の面積ができる限り小さくなるような円筒面の他、点消火釦41の押し操作方向に直交する又は鋭角に交差する平面を、第1突起部361及び第2突起部362が先端部に有すること等が例示される。
【0039】
本実施形態の火力調節装置Aは、上記の如く、点火時の操作釦4としての点消火釦41の押し操作に伴う羽根部35を介しての火力調節レバー3の点火適合範囲内位置への揺動を、羽根部35が有する突起部36としての第1突起部361及び第2突起部362への点消火釦41の押し操作方向端部4a,4aの当接によって実行する。このため、樹脂成形品である火力調節レバー3に成形不良が生じて、点消火釦41の押し操作によって火力調節レバー3を点火適合範囲内位置に揺動させることができない場合、成形金型の成形面の修正箇所は、羽根部35の全体ではなく、第1突起部361又は第2突起部362のいずれか一方又は両方に対応する部分のみに限定される。従って、樹脂製の火力調節レバー3の成形不良に対する成形金型の成形面の修正は、容易となり、コストの高騰を抑制できる。
【0040】
また、本実施形態の火力調節装置Aは、火力調節レバー3が弱火位置LPに存する状態で点消火釦41を押し操作して消火する際に、点消火釦41の押し操作方向端部4aが第1突起部361に当接しないため、火力調節レバー3が点火適合範囲内位置方向に揺動されることはない。従って、燃焼炎が一瞬大きくなることなく、ガスバーナは弱火のまま消火され、使用者に違和感を与えない。
【0041】
以上、本発明を一実施形態に関して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、火力調節レバー3が強火位置HPに存する状態で点消火釦41を押し操作して消火する際に、点消火釦41の左側の押し操作方向端部4aが第2突起部362に当接しないが、これは特に限定的ではない。点消火釦41の左側の押し操作方向端部4aが第2突起部362に当接しても、火力調節レバー3は、強火位置HPよりも燃料ガスの供給量が少ない点火適合範囲内位置に揺動して、消火前に燃焼炎は強火から中火、弱火の順に小さくなるため、使用者に違和感を与えない。また、プッシュプッシュ機構9は省略可能である。この場合、操作釦4は、点火のみを行う点火釦と、消火のみを行う消火釦とから構成することができ、突起部36は、点火釦の押し操作方向端部が当接し、消火釦の押し操作方向端部は当接しないように羽根部35に設けることができる。更に、羽根部35の形状は、羽根部35を構成する第1半部351及び第2半部352の夫々の形状も含め、点火時の押し操作に伴い操作釦4の押し操作方向端部4aが突起部36に当接して火力調節レバー3を揺動できる限りにおいて、任意の形状とすることができる。
【符号の説明】
【0042】
A…火力調節装置、1…本体、11…ガス流路、2…ニードル弁、3…火力調節レバー、35…羽根部、351…羽根部35の第1半部、352…羽根部35の第2半部、4…操作釦、41…点消火釦、4a…操作釦4(点消火釦41)の押し操作方向端部、36…突起部、361…第1突起部、362…第2突起部、9…プッシュプッシュ機構、EP…消火位置、IP…点火位置、CP…燃焼位置、RP…係止解除位置、LP…弱火位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6