(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】噴霧装置および培養装置
(51)【国際特許分類】
B05B 17/06 20060101AFI20220915BHJP
B05B 16/25 20180101ALI20220915BHJP
A61L 2/18 20060101ALI20220915BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220915BHJP
C12M 1/12 20060101ALI20220915BHJP
A61L 101/22 20060101ALN20220915BHJP
A61L 101/06 20060101ALN20220915BHJP
【FI】
B05B17/06
B05B16/25
A61L2/18 102
C12M1/00 K
C12M1/12
A61L101:22
A61L101:06
(21)【出願番号】P 2021554266
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(86)【国際出願番号】 JP2020038225
(87)【国際公開番号】W WO2021085075
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2019197487
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592031097
【氏名又は名称】PHC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雄太
(72)【発明者】
【氏名】関根 寛直
(72)【発明者】
【氏名】青木 光
(72)【発明者】
【氏名】平井 弘樹
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-157275(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0102124(US,A1)
【文献】特開2014-176730(JP,A)
【文献】特開2018-117587(JP,A)
【文献】特表2019-501765(JP,A)
【文献】特表2017-501794(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0308096(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0022927(US,A1)
【文献】特表2019-517382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 12/16-12/36
14/00-16/80
17/00-17/08
A61L 2/00- 2/28
101/22
101/06
C12M 1/00- 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素水を収容する収容空間を有する本体部と、
前記収容空間とは反対側を向く面である外面が、水平面に対して斜め上側を向くように前記本体部の前側に配置され、前記収容空間に収容されている過酸化水素水が通過する貫通孔が形成されており、前記貫通孔を通過する過酸化水素水を噴霧する振動板と、
前記収容空間と前記振動板との間に位置しており、前記収容空間と接続する供給路であって前記収容空間から前記振動板に向かう過酸化水素水が通過する供給路が形成されている内側筒状部と、を備え、
前記振動板側の端部から前記収容空間側の端部までの各位置における、前記内側筒状部の内周面の最上端を結ぶ上端ラインは、前記収容空間に近づくにつれて高くなる形状を有している、噴霧装置。
【請求項2】
前記本体部の下側に位置しており、前記本体部の前側を支持する前脚と、
前記本体部の下側に位置しており、前記本体部の後側を支持し、前記前脚よりも鉛直方向の寸法が短い後脚と、
をさらに備える請求項1に記載の噴霧装置。
【請求項3】
前記本体部には、前記収容空間の外部に流出する過酸化水素水が通過する出口が形成されており、
前記供給路は、前記出口に繋がっている、
請求項1または2に記載の噴霧装置。
【請求項4】
前記内側筒状部の振動板側端から前記内側筒状部の収容空間側端までの寸法は、前記内側筒状部の内径の最小値よりも小さい、
請求項1から3のいずれか一項に記載の噴霧装置。
【請求項5】
前記内側筒状部と、前記本体部に接触する接触部とを有する保持部材をさらに備え、
前記本体部は、前記接触部が接触する底面を有しており、
前記接触部および前記底面の一方には、前記接触部および前記底面の他方に向けて突出し、前記他方に接触する止液用突出部が形成されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の噴霧装置。
【請求項6】
前記内側筒状部と、前記振動板の外周面に向けて突出する位置決め突出部とを有する保持部材をさらに備える、
請求項1から5のいずれか一項に記載の噴霧装置。
【請求項7】
前記内側筒状部と、前記内側筒状部の振動板側端と前記振動板との間に位置しており、前記振動板の前記収容空間側を向く面である内面に接する内側支持部と、前記外面に接触する外側支持部とを有する保持部材をさらに備え、
前記振動板の外周部分は、前記内側支持部および前記外側支持部に挟持されており、前記振動板の中心軸を含む平面による前記内側支持部の断面形状における前記内面側の輪郭は、丸みを帯びており、前記平面による前記外側支持部の断面形状における前記外面側の輪郭は、丸みを帯びている、
請求項1から6のいずれか一項に記載の噴霧装置。
【請求項8】
前記貫通孔を通過した過酸化水素水が通過する噴出孔が形成され、かつ、前記振動板から離れるにしたがって内径が増加するノズルをさらに備え、
前記振動板から前記ノズルの前記振動板側の端部までの距離は、前記ノズルの内径の最小値よりも短く、
前記外面に付着した過酸化水素水は、前記ノズルの内周面に沿って前記本体部の外部に流れる、
請求項1から7のいずれか一項に記載の噴霧装置。
【請求項9】
前記振動板側の端部から、前記振動板から最も遠い側の端部までの各位置における、前記ノズルの内周面の下端を結ぶ下端ラインは、前記振動板から離れるにつれて低くなる形状を有している、
請求項8に記載の噴霧装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の噴霧装置を備える培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、噴霧装置および培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞や微生物などの培養対象物を培養する培養装置内を除染するための装置として、除染液を霧化する超音波霧化器が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されているCO2インキュベータは、特許文献2に開示されている超音波霧化器を備えている。特許文献2に開示されている超音波霧化器は、圧電素子を超音波振動させることで、除染液の液面において除染液を霧化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-60864号公報
【文献】特開2011-36771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示されているような超音波霧化器を用いた場合、発生する除染液の液滴が大きくなりやすく、除染液が拡散しにくい。このため、除染液を培養装置の内部の隅々にまで行き渡らせることが困難だった。
【0006】
本開示は、より小さい液滴を生成することができる噴霧装置およびその噴霧装置を備える培養装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る噴霧装置は、過酸化水素水を収容する収容空間を有する本体部と、前記収容空間とは反対側を向く面である外面が、水平面に対して斜め上側を向くように前記本体部の前側に配置され、前記収容空間に収容されている過酸化水素水が通過する貫通孔が形成されており、前記貫通孔を通過する過酸化水素水を噴霧する振動板と、前記収容空間と前記振動板との間に位置しており、前記収容空間と接続する供給路であって前記収容空間から前記振動板に向かう過酸化水素水が通過する供給路が形成されている内側筒状部と、を備え、前記振動板側の端部から前記収容空間側の端部までの各位置における、前記内側筒状部の内周面の最上端を結ぶ上端ラインは、前記収容空間に近づくにつれて高くなる形状を有している。
【0008】
本開示に係る培養装置は、上述の噴霧装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、より小さい液滴を生成することができる噴霧装置およびその噴霧装置を備える培養装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示に係る培養装置を例示する概略図である。
【
図2】本開示に係る噴霧装置の外観を例示する斜視図である。
【
図3】本開示に係る噴霧装置の鉛直平面による縦断面図である。
【
図4】本開示に係る噴霧装置が備える振動板および保持部材の外観を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は一例であり、本開示はこの実施形態により限定されるものではない。
【0012】
図1は、本開示に係る培養装置1を例示する概略図である。
【0013】
培養装置1は、その内部空間である培養室Rにおいて、植物の育成、植物細胞、組織、および器官の培養、並びに、昆虫の飼育および育成等を行うことができる。以下、培養装置1による培養、飼育、および育成等の対象物を、以下、単に対象物と記載する。
【0014】
培養装置1が、上述した対象物を培養、飼育、育成等するとき、培養室Rは、清浄な状態にされている必要がある。培養装置1は、所定の操作が行われることで培養室Rの除染動作を実行する。
【0015】
噴霧装置100は、培養装置1が除染動作を実行する際に培養室Rに配置される。なお、
図1の1aは、噴霧装置100が配置される面(つまり、配置面)である。噴霧装置100は、除染動作に使用される除染液を内部に収容しており、培養装置1の除染動作時には、除染液を噴霧することで、除染液を霧状にして培養室Rに放出する。なお、噴霧装置100は、培養装置1に備え付けられていてもよい。
【0016】
次に、
図2から
図5を参照して噴霧装置100について説明する。
図2は、噴霧装置100の外観を例示する斜視図である。なお、
図2中の60は、振動することで噴霧装置100の内部の除染液を噴霧する振動板である。振動板60については、後に詳細に説明する。
図3は、振動板60の中心軸CLを含む鉛直平面による噴霧装置100の断面図である。
図4は、振動板60および保持部材61の外観を例示する図である。
図5は、
図3のV-V断面図である。以下、培養装置1による除染動作に使用される除染液は、過酸化水素水であるとして説明する。
【0017】
噴霧装置100は、本体部2、蓋3、支持部材4、脚5および噴霧機構6を備えている。
【0018】
本体部2は、後述する液供給用貯留部71Rを備えており、液供給用貯留部71Rで囲まれた空間である収容空間SR(
図3参照)には過酸化水素水が収容される。
【0019】
本体部2の前側の外面には、窪み21が形成されている。窪み21には、噴霧機構6が配置される。窪み21は、噴霧機構6を構成する保持部材61(後述)が接触する被接触面である底面21Sを有している。本体部2には、底面21Sに開口を有する貫通孔であり、収容空間SRの外部に流出する過酸化水素水が通過する通過孔である出口OHが形成されている。底面21Sは、窪み21の最も後側に位置する面である。底面21Sには、2つの止液用突出部22a、22bが形成されている。
【0020】
止液用突出部22a、22bは、後述する内側保持部材62に向けて突出し、内側保持部材62に接している。止液用突出部22a、22bは、前側から見たときに、出口OHを囲む環状の形状を有している。止液用突出部22bは、止液用突出部22aよりも内径が小さく、止液用突出部22aの内側に位置している。
【0021】
また、本体部2の内部には、液面検出装置7が設けられている。液面検出装置7については後に詳細に説明する。
【0022】
蓋3は、本体部2を上側から覆う部材である。支持部材4は、本体部2の下側に取り付けられており、本体部2を支持する部材である。
【0023】
脚5は、支持部材4の下面に設けられている。脚5は、前側に一対の前脚51を備え、後側に一対の後脚52を備えている。前脚51の鉛直方向の寸法は、後脚52の鉛直方向の寸法よりも長い。よって、噴霧装置100は、配置面1aに対して、支持部材4の前側の端部が、支持部材4の後側の端部よりも上側に位置する。配置面1aに対する支持部材4の傾き角は、例えば、6度である。
【0024】
また、噴霧装置100を側方から見たときの前脚51における下側の輪郭は、尖った部分およびカーブした部分を有しており、前脚51は、配置面1aに略点接触している。また、噴霧装置100を側方から見たときの後脚52における下側の輪郭は、カーブしており、後脚52は、配置面1aに対して略点接触している。
【0025】
よって、前脚51と配置面1aとの接触面積、および、後脚52と配置面1aとの接触面積を極力小さくすることができるので、噴霧装置100によって噴霧された過酸化水素水を、配置面1aにおける支持部材4の下側の領域に対して広範囲に拡散させることができる。
【0026】
次に、
図3から
図5を参照して噴霧機構6について説明する。
【0027】
噴霧機構6は、振動板60、保持部材61、およびノズル64を備えている。
【0028】
振動板60は、噴出部601および被挟持部602を有している。噴出部601は、前側に突出する略ドーム型の形状を有しており、振動板60の中央部に位置している。噴出部601には、過酸化水素水が通過する複数の貫通孔が形成されている。なお、貫通孔は、肉眼では視認できない程微小である。噴出部601は、被挟持部602の振動を受けて前後に振動する。噴出部601が振動すると、過酸化水素水は貫通孔を通過するとともに微細な液滴となって放出される。つまり、振動板60が振動することによって過酸化水素水が噴霧される。噴出部601は、金属製であり、例えば、ニッケル製である。なお、振動板60は、保持部材61によって振動板60の外面が斜め上側を向くように配置されている。このとき、振動板60の中心軸CLと水平面とがなす傾き角は、例えば、6度である。
【0029】
被挟持部602は、振動板60の外周部分である。被挟持部602は、圧電セラミック製である。
図4に示されているように、被挟持部602には、電極Eが取り付けられている。被挟持部602は、噴霧装置100が備える電源から交流電圧が配線EWを介して電極Eに印加されることで圧電効果により前後に振動する。
【0030】
保持部材61は、内側保持部材62と外側保持部材63とから構成されている。なお、内側保持部材62および外側保持部材63は、ともにシリコン製である。
【0031】
図4に示されているように、内側保持部材62は、略円筒状の形状を有する。内側保持部材62は、振動板60を内面側から支持する部材である。内側保持部材62は、接触部621、内側筒状部622、内側支持部623、および、包囲部624を有する。
【0032】
接触部621は、内側保持部材62における後側の壁に相当する部位であり、平板状、かつ、環状の形状を有し、止液用突出部22aおよび22bと接触している。
図3に示されているように、止液用突出部22aおよび22bは、接触部621にくい込んでおり、接触部621における止液用突出部22aおよび22bと接触している部分は弾性変形して凹んでいる。
【0033】
内側筒状部622は、収容空間SRと振動板60との間に位置しており、接触部621の内周側の端部から後側に突出している。内側筒状部622には、供給路62Rが形成されている。内側筒状部622の収容空間SR側の端部は、本体部2の出口OHに挿入されている。これにより、出口OHと供給路62Rとが繋がり、収容空間SR内の過酸化水素水が出口OHおよび供給路62Rを通過して振動板60に導かれる。
【0034】
内側筒状部622の振動板60側の端部から内側筒状部622の収容空間SR側の端部までの寸法Xは、内側筒状部622の内径の最小値よりも小さい。
図3には、内側筒状部622の内径のうちの最小値を示す内径Lminが示されている。本実施形態の場合、内径Lminは、内側筒状部622の振動板60側の端部における内径である。
【0035】
図3には、内側筒状部622の内径が収容空間SR側に近づくにつれて大きくなっていることが示されている。
図3中のIULは、振動板60側の端部から収容空間SR側の端部までの各位置における、内側筒状部622の内周面の最上端を結ぶ上端ラインを示している。上端ラインIULは、収容空間SRに近づくにつれて水平面である配置面1aに対して高くなる形状を有している。
【0036】
内側支持部623は、接触部621の内周側の端部から前側に突出している。内側支持部623は、振動板60と内側筒状部622との間に位置しており、振動板60の被挟持部602の内面に接している。
【0037】
振動板60の中心軸CLを含む平面による内側支持部623の断面形状は、丸みを帯びている。よって、内側支持部623と被挟持部602の内面とは、環状の線を描くように接触している。
【0038】
包囲部624は、接触部621の外周端から前側に延出している筒状の部位である。
図5に示されているように、包囲部624の内周面には、振動板60の外周面に向けて突出し、振動板60の外周面に接する位置決め突出部625が形成されている。位置決め突出部625は、包囲部624の内周面の4箇所に、中心軸CL周りに等間隔となるように設けられている。また、位置決め突出部625は、先端が尖った形状を有している。また、
図4に示されているように、包囲部624には、振動板60の配線EWを通すための配線溝GWが形成されている。
【0039】
外側保持部材63は、環状、かつ、略平板状の形状を有している。外側保持部材63は、振動板60を外面側から支持する部材である。外側保持部材63は、外側保持部材63の内周側の端部から後側に突出している外側支持部631を有する。外側支持部631は、ノズル64と振動板60との間に位置しており、振動板60の被挟持部602の外面に接触している。外側支持部631には、噴出路63Rが形成されている。振動板60によって噴霧された過酸化水素水は、噴出路63Rを通過する。
【0040】
中心軸CLを含む平面による外側支持部631の断面形状は、丸みを帯びている。よって、外側支持部631と被挟持部602の外面とは、環状の線を描くように接触している。
【0041】
次に、
図3を参照して、ノズル64について説明する。
【0042】
ノズル64は、振動板60に形成された微細な貫通孔を通過した霧状の過酸化水素水が通過する噴出孔64Hが形成されている部材である。ノズル64は、振動板60から離れるにしたがって内径が増加している。
図3中のOBLは、振動板60側の端部から、振動板60から最も遠い側の端部までの各位置における、ノズル64の内周面の下端を結ぶ下端ラインを示している。下端ラインOBLは、振動板60から離れるにつれて水平面である配置面1aからの高さが低くなる形状を有している。
【0043】
ノズル64の振動板60側の端部から振動板60の外面までの距離Yは、ノズル64の内径の最小値よりも小さい。
図3には、ノズル64の内径のうちの最小値を示す内径dminが示されている。本実施形態の場合、内径dminは、ノズル64の振動板60側の端部における内径である。
【0044】
なお、振動板60により生成された過酸化水素水の液滴の一部が、噴出路63Rを通過せずに振動板60の外面に付着したとしても、付着した液滴は、振動板60の外面、外側保持部材63の下側の内周面、および、ノズル64の下側の内周面に沿って本体部2の外部に流れ出ることができる。
【0045】
次に、
図3を参照して液面検出装置7について説明する。
【0046】
液面検出装置7は、液貯留部7R、接続管CT、フロートF、および、センサSeを備える。
【0047】
液貯留部7Rは、液供給用貯留部71Rおよび検出用貯留部72Rを有する。液供給用貯留部71Rには、振動板60に向けて供給される過酸化水素水が貯留されている。
【0048】
検出用貯留部72Rは、上側筒状部721、下側筒状部722、および、テーパ状筒状部723を有する。下側筒状部722およびテーパ状筒状部723は、透明な材料で形成されている。
図3中のTCLは、検出用貯留部72Rの中心軸を示している。上側筒状部721は、上部分721A、下部分721B、および、接続部分721Cで構成されている。上部分721Aは、上側筒状部721の最上部の部位であり、液供給用貯留部71Rと同一部材で構成されている。上部分721Aの内周面には、検出用貯留部72Rの中心軸TCLに向けて突出する上側突出片721Fが形成されている。下部分721Bは、上側筒状部721の最下部の部位であり、テーパ状筒状部723および下側筒状部722と一体形成されている。接続部分721Cは、例えば、シリコンチューブであり、上部分721Aと下部分721Bを接続している。
【0049】
下側筒状部722は、上側筒状部721よりも下側に位置する。下側筒状部722の内径は、上側筒状部の内径よりも小さく、かつ、フロートFの外径よりも大きい。検出用貯留部72Rの内周面には、検出用貯留部72Rの中心軸TCLに向けて突出する下側突出片722Fが形成されている。
【0050】
なお、フロートFの可動範囲は、上側突出片721Fと下側突出片722Fとの間である。
【0051】
テーパ状筒状部723は、上側筒状部721と下側筒状部722との間に位置する部位である。テーパ状筒状部723の上端における内径は、上側筒状部721の内径と同じであり、テーパ状筒状部723の下端における内径は、下側筒状部722の内径と同じである。
【0052】
接続管CTは、折れ曲がった管である。接続管CTは、液供給用貯留部71Rおよび検出用貯留部72Rの下側に位置しており、接続管CTの一端が液供給用貯留部71Rに下側から接続し、接続管CTの他端が検出用貯留部72Rに下側から接続している。よって、液供給用貯留部71Rは、検出用貯留部72Rと接続管CTを介して接続しており、液供給用貯留部71R内の過酸化水素水の液面LSと検出用貯留部72R内の過酸化水素水の液面SSの高さは互いに同じになる。
【0053】
フロートFは、検出用貯留部72R内に配置されており、検出用貯留部72R内の過酸化水素水に浮かべられている。したがって、液面SSの高さとフロートFの高さとには一方が決まれば他方が決まる一定の関係がある。フロートFは、不透明な材料で形成されている。
【0054】
センサSeは、例えば、フォトマイクロセンサなどの光電センサである。センサSeは、テーパ状筒状部723の下側に、かつ、下側筒状部722の周囲を取り巻くように配置されている。センサSeは、発光部(不図示)および受光部(不図示)を備えており、発光部が受光部に向けて発する光が遮られたとき、発光部からの光が遮られたことを知らせる検出信号を出力する。本実施形態では、フロートFが発光部からの光を遮る。つまり、受光部において発光部からの光が検出されなくなることでフロートFの位置を検出し、検出したフロートFの位置に基づいて液面SSの位置を検出する。
図3には、振動板60の貫通孔よりも高い位置を示すセンサ検出ラインSSLが示されている。液面SSがセンサ検出ラインSSLに達したときにフロートFが発光部からの光を遮る位置に達するように、検出用貯留部72Rの各部位の寸法や前脚51および後脚52の鉛直方向の寸法が設定されている。
【0055】
次に、除染動作時における噴霧装置100の動作について説明する。
【0056】
まず、使用者は、蓋3を本体部2から取り外し、噴霧装置100の収容空間SRに過酸化水素水を入れ、蓋3を本体部2の上部に被せるように取り付ける。次に、使用者は、培養装置1の扉を開けて配置面1aに噴霧装置100を配置し、噴霧装置100を培養装置1に電気的に接続させる。培養装置1が噴霧装置100に接続されることで、培養装置1は、噴霧装置100を制御可能な状態になる。
【0057】
次に、使用者が、培養装置1の電源を入れ、培養装置1の操作パネル(不図示)で所定の操作を行うと、培養装置1は、噴霧装置100の電源を起動させる。噴霧装置100の電源が交流電圧を被挟持部602に印加すると、被挟持部602は所定の周波数で前後に振動する。
【0058】
被挟持部602が振動することで、噴出部601は被挟持部602の振動に連動して前後に振動する。噴出部601が前後に振動すると、噴出部601の内面に接している過酸化水素水が貫通孔に入り込み、貫通孔を通って外面側に出て行く(つまり、貫通孔を通過する)。過酸化水素水が貫通孔を通過することで、過酸化水素水の微小液滴が形成され、培養室Rに放出される(つまり、噴霧される)。なお、振動板60によって生成される液滴は、貫通孔の径の大きさに応じた大きさとなる。つまり、貫通孔の径の大きさを変更すれば、生成される液滴の大きさを変更することができる。
【0059】
培養室Rに放出された過酸化水素は、培養装置1の送風機(不図示)により、培養室Rの隅々にまで送られる。培養室Rに放出された過酸化水素は、ヒドロキシルラジカルと、水酸化物イオンに分解される。このヒドロキシルラジカルが、培養室Rの汚染物質から電子を奪う連鎖反応を起こすことで培養室Rの汚染物質が除去される。
【0060】
液供給用貯留部71R内の過酸化水素水が振動板60によって噴霧されていくにしたがって、液面LSおよび液面SSが下降する。また、液面SSの下降に伴いフロートFも下降する。
【0061】
培養装置1は、噴霧装置100の電源を起動させてから所定の時間が経過すると、噴霧装置100の電源の稼働を停止させる。これにより、振動板60の振動が停止する。
【0062】
以上により、培養装置1の除染動作が完了する。
【0063】
なお、所定の時間が経過する前に液面LSが所定の位置、例えば、センサ検出ラインSSLに達した場合、培養装置1は、噴霧装置100による過酸化水素水の噴霧を停止させてもよい。
【0064】
液面LS、つまり、液面SSがセンサ検出ラインSSLに達すると、発光部からの光がフロートFによって遮られ、センサSeの受光部が発光部からの光を受光しなくなる。受光部が発光部からの光を受光しなくなると、センサSeは検出信号を培養装置1に出力する。培養装置1は、センサSeからの検出信号が入力されると、噴霧装置100の電源の稼働を停止させ、振動板60の振動を停止させる。
【0065】
なお、振動板60が振動を停止した時、振動板60の少なくともすべての貫通孔は、過酸化水素水で浸された状態にある。
【0066】
本実施形態によれば、振動板60には貫通孔が形成されており、振動板60が振動することで貫通孔を通過する過酸化水素水を噴霧する。よって、噴霧装置100は、貫通孔の径に応じた大きさの過酸化水素水の液滴を生成することができるので、貫通孔の大きさを小さくすることで、より小さい液滴を確実に生成することができる。なお、小さい液滴は、大きい液滴と比べて空気に乗ってより遠くまでたどり着きやすい。したがって、本実施形態の噴霧装置100は、培養室Rの隅々にまで過酸化水素水を拡散させることができる。したがって、本実施形態の噴霧装置100は、効果的に培養室Rの除染を行うことができる。
【0067】
収容空間SRから振動板60に向かう過酸化水素水が通過する供給路62R(すなわち、内側筒状部622)の収容空間SR側の端部から振動板60側の端部までの寸法は、短く形成されている。よって、振動板60の振動によって内面側に発生する気泡は、収容空間SRに移動しやすいため、該気泡が集まることで生成される空気層は大きくならず、該空気層の下端が振動板60の貫通孔に達しない。したがって、該空気層が貫通孔の内面側に達することで過酸化水素水が噴霧されなくなることを防止でき、効果的に噴霧動作を継続することができる。なお、内側筒状部622の収容空間SR側の端部から振動板60側の端部までの寸法は、短いほど望ましい。
【0068】
また、振動板60側の端部から収容空間SR側の端部までの各位置における、内側筒状部622の内周面の最上端を結ぶ上端ラインIULは、収容空間SRに近づくにつれて高くなる形状を有している。したがって、振動板60が振動することで、振動板60の内面において発生する気泡は、供給路62Rの上側に溜まりにくく、収容空間SRに誘導される。したがって、気泡によって形成される空気層が貫通孔の内面側に達することによって過酸化水素水が噴霧されなくなることを防止でき、効果的に噴霧動作を継続することができる。
【0069】
振動板60からノズル64の振動板60側の端部までの距離は短くなるように形成されている。よって、振動板60と外側保持部材63の下側の内周面とにより形成される空間に流れ込んだ過酸化水素水は、ノズル64の内周面に沿って本体部2の外部に円滑に流れる。したがって、振動板60の外面側の過酸化水素水によって貫通孔が塞がれて過酸化水素が噴霧されなくなることを防止でき、効果的に噴霧動作を継続することができる。なお、振動板60からノズル64の振動板60側の端部までの距離は、短いほど望ましい。
【0070】
また、振動板60側の端部から、振動板60から最も遠い側の端部までの各位置における、ノズル64の内周面の下端を結ぶ下端ラインOBLは、振動板60から離れるにしたがって低くなる形状を有しているので、過酸化水素水がより本体部2の外部に流れやすい。したがって、振動板60の外面側に過酸化水素水が貯留しにくくなるので、効果的に噴霧動作を継続することができる。
【0071】
本体部2における、噴霧機構6が配置される部位である窪み21の底面21Sには、止液用突出部22a、22bが形成されており、止液用突出部22a、22bは、噴霧機構6を構成する内側保持部材62の接触部621にくい込んで接触している。よって、噴霧機構6と本体部2との間を面接触させる場合よりも、より確実に噴霧機構6と本体部2との間からの過酸化水素水の漏れを防止することができる。
【0072】
内側保持部材62には、振動板60の外周面に向けて突出する4つの位置決め突出部625が、中心軸CL周りに等間隔に形成されている。よって、振動板60が延在する平面内において、振動板60を特定の位置に保持することができる。さらに、位置決め突出部625は、先端が尖った形状を有しているので、振動板60との接触面積を小さくすることができる。よって、内側保持部材62は、必要以上の力で振動板60を押さえつけないため、振動板60の折れ曲がり等の損傷を防止することができる。
【0073】
振動板60を挟持する内側支持部623および外側支持部631の振動板60の中心軸CLを含む平面による断面形状は、それぞれ丸みを帯びている。よって、振動板60は、内側支持部623および外側支持部631によって略線接触した状態で挟持されている。したがって、電源から交流電圧を印加された被挟持部602の振動が、噴出部601に伝わりやすくなる。つまり、より効果的に噴出部601を振動させることができるので、効率的に過酸化水素水を噴霧することができる。
【0074】
前脚51の鉛直方向の寸法は、後脚52の鉛直方向の寸法よりも長いので、振動板60がその外面が斜め上側を向くように配置することができる。したがって、振動板60によって噴霧された過酸化水素水をより遠くまでとばすことができる。よって、過酸化水素水をより培養室Rに拡散させやすい。
【0075】
(変形例)
上述した実施形態では、内側保持部材62は、以下の(a)および(b)の両方を満たしていたが、(a)および(b)の少なくとも一方を満たしていれば、振動板60の内面側で発生する気泡によって形成される空気層によって過酸化水素水が噴霧されなくなることを防止でき、効果的に噴霧動作を継続することができる。(a)内側筒状部622の収容空間SR側の端部から振動板60側の端部までの寸法が極力短い。(b)内側筒状部622の上端ラインIULは、収容空間SRに近づくにつれて高くなる形状を有する。
【0076】
外側保持部材63の外側支持部631の内径は、振動板60から離れるほど大きくなっていてもよい。その場合、外側支持部631の振動板60から遠い側の端部の内径は、ノズル64の振動板60側の端部の内径と同じであってもよい。この場合、振動板60の外面側の過酸化水素水は、より本体部2の外部に流れやすくなる。
【0077】
止液用突出部が、内側保持部材62の接触部621に形成されていてもよい。この場合、止液用突出部は、本体部2の底面21Sに向けて突出しており、底面21Sに接する。なお、止液用突出部が内側保持部材62の接触部621に形成されている場合に、噴霧機構6が窪み21に配置されると、止液用突出部は接触部621と底面21Sとの間で弾性変形して潰れた状態になる。
【0078】
位置決め突出部625は、3つ以上であればいくつ形成されていてもよい。
【0079】
また、位置決め突出部625は、振動板60に接していなくてもよい。この場合、振動板60が振動することにより、振動板60が延在する平面内において振動板60の位置ずれが発生したとしても、位置ずれした振動板60は位置決め突出部625に接触するので、振動板60の位置ずれを一定の範囲内に抑えることができる。また、振動板60は、常時すべての位置決め突出部625に接していないので、振動板60をその外周側から押さえつけることなく、振動板60を保持することができる。したがって、より振動板60にかかる負荷を低減させることができる。
【0080】
また、内側保持部材62は、包囲部624を有していなくてもよく、替わりに、外側保持部材63が包囲部624に相当する部位を有していてもよい。その場合、該部位に、位置決め突出部が形成される。
【0081】
2019年10月30日出願の特願2019-197487の日本出願に含まれる明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本開示に係る噴霧装置は、培養装置の除染動作に適用することができる。よって、その産業上の利用可能性は多大である。
【符号の説明】
【0083】
1 培養装置
R 培養室
100 噴霧装置
2 本体部
21 窪み
21S 底面
22a,22b 止液用突出部
OH 出口
3 蓋
4 支持部材
5 脚
51 前脚
52 後脚
6 噴霧機構
60 振動板
E 電極
EW 配線
601 噴出部
602 被挟持部
61 保持部材
62 内側保持部材
621 接触部
622 内側筒状部
623 内側支持部
624 包囲部
625 位置決め突出部
62R 供給路
IUL 上端ライン
GW 配線溝
63 外側保持部材
631 外側支持部
63R 噴出路
64 ノズル
64H 噴出孔
OBL 下端ライン
CL 中心軸
SR 収容空間
7 液面検出装置
7R 液貯留部
71R 液供給用貯留部
LS 液面
72R 検出用貯留部
SS 液面
721 上側筒状部
721A 上部分
721B 下部分
721C 接続部分
721F 上側突出片
722 下側筒状部
722F 下側突出片
723 テーパ状筒状部
CT 接続管
TCL 中心軸
SSL センサ検出ライン
F フロート
Se センサ