(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】樹脂発泡体複合板及びこれを含む構造体
(51)【国際特許分類】
B32B 5/28 20060101AFI20220915BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20220915BHJP
B32B 27/02 20060101ALI20220915BHJP
B32B 27/04 20060101ALI20220915BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20220915BHJP
C08J 9/14 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B32B5/28 Z
B32B5/24 101
B32B27/02
B32B27/04 Z
B32B27/12
C08J9/14
(21)【出願番号】P 2017160512
(22)【出願日】2017-08-23
【審査請求日】2020-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 久貢
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 政美
【審査官】静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-245982(JP,A)
【文献】特開2001-001436(JP,A)
【文献】特開昭59-143726(JP,A)
【文献】米国特許第04187337(US,A)
【文献】特開2017-087729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C08J9/00-9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂発泡体と、
繊維と、を有し、
前記樹脂発泡体が前記繊維と共存する共存領域が設けられた樹脂発泡体複合板であって、
樹脂塊が前記共存領域上に形成され、
前記樹脂発泡体複合板の主表面における面内の一方向をXとし、前記主表面と直交し、かつ前記主表面から離れる方向をYとして、前記樹脂塊のX方向の大きさをx(mm)、Y方向の大きさをy(mm)とすると、前記樹脂塊は0.1≦x≦1.5かつ0.2≦y≦1.5を満たす前記樹脂塊がX-Y断面において観察され
、
前記樹脂塊の材質と、前記繊維の材質とが同一である、樹脂発泡体複合板。
【請求項2】
前記樹脂塊が、前記樹脂発泡体複合板の前記主表面において25cm
2当たり1個以上存在する、請求項1に記載の樹脂発泡体複合板。
【請求項3】
前記共存領域上に前記繊維を主成分とする繊維体が前記樹脂塊と混在する、請求項1
又は2に記載の樹脂発泡体複合板。
【請求項4】
外部部材と、前記外部部材の片面に設けられた接合材とを更に有し、
前記外部部材と前記樹脂塊とが前記接合材を介して接合している、請求項1乃至
3の何れか一項に記載の樹脂発泡体複合板を含む構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維と樹脂発泡体とが共存する共存領域が設けられた樹脂発泡体複合板、及び該複合板を含む構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂発泡体の表面に面材が直接積層された樹脂発泡体複合板が知られている。
図9に、従来公知の樹脂発泡体複合板900の模式的断面図を示す。樹脂発泡体複合板900は通常、繊維質の材料により構成される面材90の表面に発泡樹脂を供給し、発泡樹脂を硬化させて樹脂発泡体80とすることにより得られる。ここで、樹脂発泡体80が硬化する前には発泡樹脂が面材90に一部浸透する。そのため、こうして形成された樹脂発泡体80と面材90との界面近傍には、樹脂発泡体80が繊維と共存する共存領域82が形成される。
【0003】
樹脂発泡体複合板は、これを単体で使用する他、樹脂シート、樹脂板、金属板、木板等の外部部材と接合させて様々な用途に用いられている。
【0004】
しかし、このような樹脂発泡体複合板では、従来、樹脂発泡体と面材との接合強度が不十分であった。そのため、該樹脂発泡体複合板と外部部材とを面材を介して接合させた製品において、これを使用する際、又はこれを必要とされる場所に設置した後に、面材が樹脂発泡体から剥離する結果、樹脂発泡体複合板と外部部材との一体性が失われてしまう不安があった。
【0005】
これに対して、特許文献1では、樹脂発泡体の片面に、繊維固定部分を面内に有する不織布が積層され、該繊維固定部分の面積の総和が該不織布の表面において占める面積割合が2%以上17%以下である不織布を用いて、樹脂発泡体と面材との接着強度を向上させた樹脂発泡体複合板を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1に記載の樹脂発泡体複合板と外部部材とを接合させた構造体において、樹脂発泡体複合板と外部部材との接合強度は、各層の接合面又は各層の層間の中で最も結びつきが弱い場所に依存することになるが、場合によっては、面材の内部強度、あるいは面材内の層間強度がこれに該当する場合があった。
【0008】
そこで本発明者らは、まず、接合材として流動性のある接着剤を用い、その塗布量を増やしたところ、樹脂発泡体複合板と外部部材との接合強度を十分に高めることができた。しかしその一方で、これを高温環境下においたところ、外部部材と樹脂発泡体複合板との間に空洞が生じるようになり、経時的に接着強度が低下してしまった。これは、接着剤に含まれる溶剤成分が気化して、樹脂発泡体複合板と外部部材とを剥離させる力が働いたことによると思われる。そのため、高温環境下で用いる製品では、接着剤量を増加させる方法は採用できないことが新たに判明した。
更に、特に外部部材にシート状材料を用いた場合には、経時的にシートに変色が起きることも判明した。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑み、樹脂発泡体の表面に面材が直接積層された樹脂発泡体複合板に代表される、樹脂発泡体が繊維と共存する共存領域を有する樹脂発泡体複合板であって、外部部材との接合強度を、より確実に向上させることができると共に、一定量の接合強度を発現するために必要な接合材の使用量を抑えることもでき、環境に優れるとともに高い接合強度を維持しながら、高温環境下でも剥離強度が低下せず、接合材由来の外部部材の変色が生じ難い、優れた樹脂発泡体複合板を提供することを目的とするものである。さらに本発明は、該複合板と外部部材とを含む構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、樹脂塊が樹脂発泡体複合板の共存領域上に形成され、樹脂発泡体複合板の主表面における面内の一方向をXとし、前記主表面と直交し、かつ前記主表面から離れる方向をYとして、前記樹脂塊のX 方向の大きさをx(mm)、Y方向の大きさをy(mm)とすると、0.1≦x≦1.5かつ0.2≦y≦1.5を満たす樹脂塊がX-Y断面において観察される樹脂発泡体複合板が、上記目的を達成するために効果的であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は以下の[1]~[4]を提供する。
[1]樹脂発泡体と、
繊維と、を有し、
前記樹脂発泡体が前記繊維と共存する共存領域が設けられた樹脂発泡体複合板であって、
樹脂塊が前記共存領域上に形成され、
前記樹脂発泡体複合板の主表面における面内の一方向をXとし、前記主表面と直交し、かつ前記主表面から離れる方向をYとして、前記樹脂塊のX方向の大きさをx(mm)、Y方向の大きさをy(mm)とすると、0.1≦x≦1.5かつ0.2≦y≦1.5を満たす前記樹脂塊がX-Y断面において観察され、前記樹脂塊の材質と、前記繊維の材質とが同一である、樹脂発泡体複合板。
[2]前記樹脂塊が、前記樹脂発泡体複合板の前記主表面において25cm2当たり1個以上存在する、[1]に記載の樹脂発泡体複合板。
[3]前記共存領域上に前記繊維を主成分とする繊維体が前記樹脂塊と混在する、[1]又は[2]に記載の樹脂発泡体複合板。
[4]外部部材と、前記外部部材の片面に設けられた接合材とを更に有し、
前記外部部材と前記樹脂塊とが前記接合材を介して接合している、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂発泡体複合板を含む構造体。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂発泡体複合板は、上記構成を有するため、外部部材との接合をより一層確実に、強固にすることができる。また、樹脂発泡体複合板と外部部材との接合において、一定量の接合強度を発現するために必要な接合材の使用量を抑えることもでき、環境に優れるとともに高い接合強度を維持しながら、高温環境下でも剥離強度が低下せず、接合材由来の外部部材の変色が生じ難く、優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態における一態様に従う樹脂発泡体複合板の模式的な斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態における別の態様に従う樹脂発泡体複合板の模式的な斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態による樹脂発泡体複合板を含む構造体の模式的な断面図である。
【
図8】本発明の別の実施形態による樹脂発泡体複合板を含む構造体の模式断面図である。
【
図9】従来技術による樹脂発泡体複合板の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と称する場合がある。)について詳細に説明する。なお、各図面では説明の便宜上、実際の各構成の厚みの比率とは異なり、実際の比率からは誇張して示している。本実施形態の説明に先立ち、
図1~
図6の対応関係を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による樹脂発泡体複合板100の模式的な斜視図であり、
図2は、
図1におけるX-Y面による模式断面図(X-Y断面)である。そして、
図3は、
図2のA部分を拡大した模式断面図である。また、
図4は、本発明の別の実施形態による樹脂発泡体複合板200の模式的な斜視図であり、
図5は、
図2におけるX-Y面による模式断面図(X-Y断面)を示す。そして、
図6は、
図5のB部分を拡大した模式断面図である。なお、同一の構成要素に対しては原則として同一の符号を用いるものとし、重複する説明を省略する。
【0015】
図1~
図3を参照しつつ、まず、本実施形態における一態様に従う樹脂発泡体複合板100を説明する。樹脂発泡体複合板100は、樹脂発泡体10と、繊維20と、を有し、樹脂発泡体10が繊維20と共存する共存領域12が設けられている。そして、樹脂塊30が共存領域12上に形成される。ここで、樹脂発泡体複合板100の主表面100Mにおける面内の一方向をXとし、前記主表面100Mと直交し、かつ主表面100Mから離れる方向をYとして、樹脂塊30のX方向の大きさをx(mm)、Y方向の大きさをy(mm)とすると、前記樹脂塊は
0.1≦x≦1.5かつ
0.2≦y≦1.5を満たす前記樹脂塊がX-Y断面において観察される。
【0016】
なお、本発明の樹脂発泡体複合板における主表面とは、樹脂発泡体複合板において樹脂塊が形成される側の面を指すものとする。
【0017】
前述のとおり、樹脂発泡体複合板100には樹脂発泡体10が繊維20と共存する共存領域12が設けられる。繊維20は、樹脂発泡体10を成形する際に用いられる面材を構成する繊維であり、発泡樹脂が硬化して樹脂発泡体10となる前に発泡樹脂が面材に浸透することにより共存領域12が形成される。従って、本実施形態において樹脂発泡体10と繊維20とが共存する共存領域12は、樹脂発泡体複合板を構成する樹脂発泡体10の最外層を構成している。
【0018】
本実施形態の樹脂発泡体複合板を成形する際に用いられる面材には種々のものを使用することができる。面材は、例えば、織布、不織布のいずれでもよく、不織布であれば、乾式法やスパンボンド法、ニードルパンチ法やウォータージェット法等、種々の製法によって製造された不織布を用いることができ、短繊維によるもの、長繊維によるもの、いずれも使用することができる。
【0019】
これらの面材を構成する繊維は、高温に晒す、薬品で処理する等の方法により溶融処理し、面材内で融着又は固着が生じる材質からなるものであることが好ましい。即ち、高温に晒すことで溶融する熱可塑性樹脂や、接着剤等の接合材に含まれる溶剤、例えば酢酸エチルやメチルエチルケトン等には溶解しないが、他の有機溶剤等には溶解する材質からなる繊維である。
【0020】
このような性質を有する繊維材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、セルロース、などが挙げられる。
中でも、外部部材の剥離強度をより高めたい場合には、伸び率が縦横いずれも45~250%、引張強度が縦100N/5cm以上、横50N/5cm以上で、かつ、縦横いずれの引張強度も600N/5cm以下の面材を用いることが好ましい。また、面材の好ましい目付量は、20g/m2~300g/m2である。
また、面材が不織布の場合には、熱圧着やニードル等により形成された繊維束と繊維束との結節点の密度は、好ましくは5~300個/cm2であり、より好ましくは7~130個/cm2である。また、結節点1か所の大きさは、好ましくは0.05mm2~3mm2である。結節点の密度及び大きさがこの範囲であれば、後述するy/xの値を5以下に維持しやすい。
【0021】
樹脂発泡体複合板100において、共存領域12上に形成される樹脂塊30は、前述の溶融処理が行われることにより、面材内で融着や固着が生じた結果形成されるものである。そして、樹脂発泡体複合板100の主表面100Mにおける面内の一方向をXとし、主表面100Mと直交し、かつ主表面100Mから離れる方向をYとして、X方向の大きさをx(mm)とし、Y方向の大きさをy(mm)とすると、x≧0.1かつy≧0.2を満たす樹脂塊30がX-Y断面において観察される。
【0022】
なお、方向Xは、樹脂発泡体複合板100の面内、特に共存領域12の表面に沿った方向での任意の方向とすることができる。また、
図1に示すように、樹脂塊30は前述の溶融処理により形成することができるため、主表面100Mの面内に点在することとなる。なお、
図1における樹脂塊30の記載が模式的な図示であって、実際の樹脂塊30の個数を表すものではないことは当然に理解される。したがって、主表面100Mに対して垂直な任意のX-Y断面(すなわち、厚み方向断面)を得れば上述の溶融処理を経た樹脂発泡体複合板100のX-Y断面においては、樹脂塊30が観察されることとなる。なお、
図1,2では各構成の表面が平坦面かの如く図示しているが、実際には
図3に示すように、各構成の表面は多少の揺らぎを有する。また、樹脂塊30は前述の溶融処理により形成することができるため、
図3に模式的に示すように、通常は不規則的(非幾何学的)形状となる。樹脂塊30が点在すること、表面に揺らぎがあること、樹脂塊30が不規則的(非幾何学的)形状となることは後述の
図4~
図6においても同様である。
【0023】
前述の樹脂塊30は、少なくとも繊維同士が略一体化した固形物として存在するものをいう。樹脂塊30の大きさは、前記xが、0.1mm以上であり、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1mm以下である。
【0024】
また、前記yは0.2mm以上であり、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1mm以下である。さらに、xおよびyがy/x≧0.3を満たすことが好ましい。なお、yの大きさは、単位面積において単位時間当たり行われた前述の溶融処理の量が多くなれば大きくなる傾向にある。y/xは、好ましくは1以上であり、後述の接合材を介した外部部材との接合力維持の観点から5以内が好ましく、より好ましくは3以内である。
【0025】
加えて、樹脂発泡体複合板100において、樹脂塊30は、樹脂発泡体10と共存している繊維20と、一体化していることが、接合強度維持の点から好ましい。
【0026】
なお、樹脂発泡体複合板の主表面の粘着成分によって、本実施形態の樹脂発泡体複合板の主表面に直接接合し得る埃、塵などは、本発明における樹脂塊には該当しない。これらは極めて弱い外力によって容易にその場所が変わるか否かで判別が可能である。
【0027】
また、前記x、yは後述の(評価方法)「(1)樹脂塊におけるx、yの計測」に記載の方法により測定することができる。
【0028】
本実施形態において樹脂発泡体複合板は、樹脂発泡体と繊維とが共存する共存領域を含むことは前述のとおりである。本実施形態では、樹脂発泡体複合板の主表面において、繊維を主成分とする繊維体25が樹脂塊と混在する場合もあれば繊維体が存在しない場合もあり、いずれの形態であってもよい。なお、繊維体とは、前述した面材から樹脂塊を形成するために溶融させた際に、繊維状の形態を維持した部分である。
図4~6に示す本実施形態による別の態様に従う樹脂発泡体複合板200では、共存領域12上に繊維を主成分とする繊維体25が樹脂塊30と混在している。
【0029】
樹脂発泡体複合板の共存領域12上に繊維体25が存在するか否か、即ち面材を構成する繊維が溶融を経ても樹脂発泡体複合板の主表面に繊維体25として残存するか否かは、樹脂発泡体複合板の主表面の単位面積において単位時間当たりに行われた溶融処理の量に依存する。溶融処理の量が多くなると繊維体25は存在しなくなる。
【0030】
なお、樹脂塊30が存在しない部分の共存領域12の表面(特に
図2,5を参照)には、溶融した面材が薄い層として堆積している場合(図示せず)と、していない場合とがある。
【0031】
また、前述の樹脂塊30は、樹脂発泡体複合板100,200の主表面において25cm2当たり1個以上存在することが好ましい。より好ましくは3個以上、更に好ましくは10個以上、最も好ましくは20個以上である。
【0032】
樹脂塊の個数は、後述の(評価方法)の「(2)樹脂塊の個数」に記載の方法により測定することができる。
【0033】
本発明の、樹脂発泡体複合板と外部部材とを接合させた構造体(以下、「構造体」と称する場合がある。)は、樹脂発泡体複合板と外部部材とが、接合材を介して接合してなる。本発明の構造体は、一般的に、樹脂発泡体複合板の主表面に外部部材を接合させて形成することができる。
【0034】
図7に示すように、樹脂発泡体複合板100を含む構造体300は、外部部材40と、外部部材40の片面に設けられた接合材60とを更に有し、外部部材40と樹脂塊30とが接合材60を介して接合している。
【0035】
また、
図8に示すように、樹脂発泡体複合板200を含む構造体400は、外部部材40と、外部部材40の片面に設けられた接合材60とを更に有し、外部部材40と樹脂塊30とが接合材60を介して接合している。
【0036】
なお、
図7において樹脂塊30が存在していない共存領域12と接合材60の界面には、溶融した面材が薄い層として堆積している場合(図示せず)と、していない場合とがある。
【0037】
ここで、接合材60とは、外部部材40と樹脂発泡体複合板100,200とを接合させる材料であり、例えば、両面粘着シートや接着剤等が挙げられる。
【0038】
接合材60として使用する接着剤としては、外部部材40と樹脂発泡体複合板100,200の主表面100M,200Mの材質に応じて、これらを接着させ得る種類のものが用いられる。
【0039】
外部部材40としては、ボード状材料、シート状材料、フィルム状材料の1およびその組み合わせがある。ボード状材料としては、普通合板、構造用合板、パーティクルボード、OSB、などの木質系ボード、および、木毛セメント板、木片セメント板、石膏ボード、フレキシブルボード、ミディアムデンシティファイバーボード、ケイ酸カルシウム板、ケイ酸マグネシウム板、火山性ガラス質複層板、金属パネルなどがある。金属パネルと接合させた構造体はサンドイッチパネルとして知られている。また、シート状材料としては、塩化ビニルシート、加硫ゴム系シート、非加硫ゴム系シート、熱可塑性オレフィン系シート、エチレン酢酸ビニルシート、改質アスファルト系シート、フィルム状材料としては、ポリエチレンフィルム、プラスチック系防湿フィルム、アスファルト防水紙、アルミニウム箔(孔あり・孔なし)などがある。特に樹脂シートと接合させた構造体は防水断熱パネル等に用いられている。
なお、外部部材40として樹脂シート又は樹脂板に塩化ビニル製の材料を用いる場合に使用する液状接着剤としては、SBR系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、エポキシ系接着剤等を用いることができる。
【0040】
また、図示しないが、本実施形態の樹脂発泡体複合板と、外部部材とを接合させた構造体において、樹脂発泡体複合板の主表面に面材由来の繊維を主成分とする繊維体25が存在する場合、その内部には接合材60が共存していてもよい。
【0041】
ここで、接合剤60が繊維体25と共存するとは、例えば、本実施形態の樹脂発泡体複合板を外部部材と接合させるために、予め樹脂発泡体複合板に接合材60として液状接着剤を塗布した結果、繊維体25を構成する繊維の内部に接着剤が滲み込んだ場合等が挙げられる。
【0042】
本実施形態の樹脂発泡体複合板100,200における樹脂発泡体10としては種々の発泡樹脂が利用可能であるが、耐熱性を有するポリウレタンやポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂や、溶剤耐性のある架橋ポリエチレン、架橋ポリプロピレン、架橋ポリ塩化ビニル等が好ましい。
【0043】
なお、これら樹脂発泡体10を断熱目的で利用する場合には、密度が15kg/m3以上60kg/m3以下であることが好ましい。より好ましくは20kg/m3以上50kg/m3以下である。また、独立気泡率は80%以上が好ましく、より好ましい範囲は85%以上、さらに好ましい範囲は90%以上である。
【0044】
前記密度は、後述の(評価方法)の「(3)樹脂発泡体の密度」に記載の方法により測定される値をいう。また、前記独立気泡率は、後述の(評価方法)の「(4)樹脂発泡体の独立気泡率」に記載の方法により測定される値をいう。
【0045】
樹脂発泡体10を形成する際に用いる発泡剤としては炭化水素を用いることが考えられる。炭化水素としては、炭素数が3~7の環状または鎖状のアルカン、アルケン、アルキンが好ましく、具体的には、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、シクロヘキサン等が挙げられる。中でも、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン等のペンタン類、及びノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン等のブタン類が好適に用いられる。これら炭化水素は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
発泡剤として炭化水素と他の成分との混合物を用いる場合、発泡剤中の炭化水素の含有割合は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。
【0047】
また、発泡剤として、塩素化ハイドロフルオロオレフィン、非塩素化ハイドロフルオロオレフィン等のハイドロフルオロオレフィン系発泡剤を構成成分に用いることも考えられる。塩素化ハイドロフルオロオレフィンとしては、具体的には、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(製品名:Solstice(登録商標)LBA)などが挙げられ、非塩素化ハイドロフルオロオレフィンとしては、具体的には、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(製品名:Solstice(登録商標)1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンなどが挙げられる。塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び/又は非塩素化ハイドロフルオロオレフィンは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。ハイドロフルオロオレフィン系発泡剤を用いると、樹脂塊30を形成する前の状態における樹脂発泡体と面材との接合強度をより高めることができる。
発泡剤として塩素化ハイドロフルオロオレフィン、非塩素化ハイドロフルオロオレフィン等のハイドロフルオロオレフィン系発泡剤と他の発泡剤との混合物を用いる場合、発泡剤中のハイドロフルオロオレフィン系発泡剤の含有割合は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
発泡剤としては、塩素化脂肪族炭化水素等の塩素化炭化水素を使用することもできる。上記塩素化脂肪族炭化水素としては、例えば、炭素数が2~5の直鎖状又は分岐状のもの等が挙げられる。結合している塩素原子の数は1~4が好ましく、例えばジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等が挙げられる。中でも、クロロプロパンであるプロピルクロリド、イソプロピルクロリドがより好ましい。上記塩素化炭化水素は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
発泡剤として塩素化炭化水素と他の成分との混合物を用いる場合、発泡剤中の塩素化炭化水素の含有割合は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。
【0048】
上述した発泡剤は、いずれもそれぞれ組み合わせて使用することができる。例えば、炭化水素と塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び/又は非塩素化ハイドロフルオロオレフィンとの組み合わせ、塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び/又は非塩素化ハイドロフルオロオレフィンと塩素化炭化水素との組み合わせ、炭化水素と塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び/又は非塩素化ハイドロフルオロオレフィンとの組み合わせに更に塩素化炭化水素を加えた組み合わせ等である。発泡剤の使用量は、樹脂発泡体層を形成する際に用いる発泡性樹脂組成物中に含まれる樹脂に対して2~15質量%程度とするとよい。
【0049】
樹脂の発泡時には、発泡核剤を含んでいてもよい。発泡核剤としては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気等の前記発泡剤よりも沸点が50℃以上低い低沸点物質が挙げられる。
【0050】
また、前記発泡核剤は、例えば、水酸化アルミニウム粉、酸化アルミニウム粉、炭酸カルシウム粉、タルク、はくとう土(カオリン)、珪石粉、珪砂、マイカ、珪酸カルシウム粉、ワラストナイト、ガラス粉、ガラスビーズ、フライアッシュ、シリカフューム、石膏粉、ホウ砂、スラグ粉、アルミナセメント、ポルトランドセメント等の無機粉、樹脂発泡体粉のような有機粉等の固体発泡核剤であってもよい。前記発泡核剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
前記発泡核剤の前記発泡剤に対する添加量は、前記発泡剤全量(100質量%)に対して、0.1質量%以上1.0質量%以下が好ましく、0.2質量%以上0.6質量%以下がより好ましい。発泡核剤の添加量が0.1質量%以上であれば均一な発泡が起こりやすく、また、発泡核剤の添加量が1.0質量%以下であれば、樹脂の発泡速度が制御しやすくなるため、樹脂発泡体10を形成する際に、面材に発泡樹脂を浸透させ易く、面材と樹脂発泡体との接合強度が確保しやすくなる。
【0052】
更に前記発泡核剤の他、硬化剤、界面活性剤、可塑剤、難燃剤、増量剤等を含ませることもできる。
硬化剤としては尿素等、樹脂の骨格と架橋体を形成することができる成分を挙げることができる。
界面活性剤としては、例えばエチレンオキサイド-プロピレンオキサイドのブロック共重合体が好ましく用いられる。また、ひまし油アルキレンオキシド付加物、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等も挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このうち、ひまし油アルキレンオキシド付加物又はシリコーン系界面活性剤のいずれか一方を含むことは、発泡体の気泡径が小さくなり、強度が高まる点で好ましく、シリコーン系界面活性は、剤発泡体の難燃性を高められる点でも好ましい。
ひまし油アルキレンオキシド付加物におけるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、又はプロピレンオキシドが好ましい。これらは単独でも2種以上の混合物でもよい。
ひまし油アルキレンオキシド付加物におけるアルキレンオキシドの付加モル数は、ひまし油1モルに対し、20モルを超えて60モル未満が好ましく、21~40モルがより好ましい。かかるひまし油アルキレンオキシド付加物は、ひまし油の長鎖炭化水素基を主体とする疎水性基と、アルキレンオキシドによって形成されるポリオキシアルキレン基を主体とする親水性基とが、分子内でバランス良く配置され、良好な界面活性能が発揮される。これにより、樹脂発泡体の気泡径が小さくなる。また、気泡壁に柔軟性が付与されて、亀裂の発生が防止される。
シリコーン系界面活性剤としては、例えばジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体、オクタメチルシクロテトラシロキサン等のオルガノポリシロキサン系化合物が挙げられる。中でも、より均一でより微細な気泡が得られる点で、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体が好ましく用いられる。
ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体の構造は、例えば、シロキサン鎖の両方の末端にポリエーテル鎖が結合したABA型、複数のシロキサン鎖と複数のポリエーテル鎖が交互に結合した(AB)n型、分岐状のシロキサン鎖の末端のそれぞれにポリエーテル鎖が結合した枝分かれ型、シロキサン鎖の末端以外にポリエーテル鎖が結合したペンダント型等が挙げられる。
ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体としては、例えば、ジメチルポリシロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体が挙げられる。
ポリオキシアルキレンにおけるオキシアルキレン基の炭素数は、2又は3が好ましい。ポリオキシアルキレンを構成するオキシアルキレン基は、1種でも2種以上でもよい。
ジメチルポリシロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体の具体例としては、ジメチルポリシロキサン-ポリオキシエチレン共重合体、ジメチルポリシロキサン-ポリオキシプロピレン共重合体、ジメチルポリシロキサン-ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体等が挙げられる。
ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体としては、末端がアルキル基であるポリエーテル、又は水酸基であるものが好ましく、水酸基であるものがより好ましい。
樹脂発泡体中の界面活性剤の含有量は、樹脂100質量部当り、1~10質量部が好ましく、2~5質量部がより好ましい。界面活性剤の含有量が上記下限値以上であれば、気泡径が均一かつ微細になりやすい。上記上限値以下であれば、独立気泡率が高くなりやすく、好ましい。
樹脂発泡体中の、発泡剤と界面活性剤との質量比は、良好な発泡状態を形成する観点から1:1~6:1が好ましい。
可塑剤としてはアルキレングリコールエーテル等のグリコール系化合物を用いることができる。具体的には、アルキレングリコールアルキルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。
難燃剤としては、赤燐、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、ポリリン酸アンモニウム、塩素含有リン酸エステル等のリン酸エステル類、リン酸アンモニウム類、リン酸メラミン類、リン酸アルミニウム類、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸亜鉛、炭酸アンモニウム、珪灰石(針状フィラー)、膨張黒鉛、シリコーン類、等が挙げられる。
増量剤としては、防火性が高まる点で無機フィラーが好ましい。無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン等の金属の水酸化物や酸化物、亜鉛等の金属粉末;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛等の金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸水素塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、マイカ、タルク、ベントナイト、ゼオライト、シリカゲル等が挙げられる。ただし、発泡体の形成に強酸を使用する場合、金属粉末、炭酸塩は、ポットライフの調整に影響がない範囲で添加する必要がある。これらの無機フィラーは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
なお、これら増量剤は、フッ化水素を捕捉する保護剤としても機能する。発泡剤にフッ素化オレフィンを用いた場合、分解によってフッ化水素を発生させたり、その製造原料として使用されたフッ化水素が不純物として樹脂発泡体に残存することが知られている(特表2014-511930号公報)。このフッ化水素は、シリコーン系界面活性剤の疎水部を構成するシロキサン結合と反応して界面活性作用を低下させる。そこで、上記充填剤は、保護剤として発泡体樹脂に添加されてもよい。
【0053】
(評価方法)
前述した物性値の測定方法を以下に列挙する。
【0054】
(1)樹脂塊におけるx、yの計測
樹脂発泡体複合板、もしくはこれを外部部材と接合させた構造体において、樹脂発泡体複合板の表面に対して任意の25cm2角(5cm×5cm)を設定し、カッター等の切断具により厚み方向に切断して評価サンプルを切り出す。
【0055】
切出した評価サンプルの切断面を、株式会社ハイロックス製デジタルマイクロスコープRH-2000にて観察する。樹脂塊は樹脂発泡体複合板の樹脂発泡体と接しており、この樹脂発泡体との接触長さをxとする。前述のとおり、
図3,6に模式的に示すように、共存領域12および繊維体25の表面は多少の揺らぎを有するものの、面材の溶融処理由来である。そのため、これらの表面の高低差はせいぜい数十μm程度である。そこで、樹脂塊30と、共存領域12または繊維体25との接触面は実質的に平坦面であると仮定し、xを計測した位置の両端を結ぶ基準面からの、樹脂発泡体複合板の厚み方向(垂直方向)の最大距離をyとする。なお、x及びyの値は、デジタルマイクロスコープが有する長さ計測機能を用いて計測することができる。
【0056】
(2)樹脂塊の個数
(1)で切り出した評価サンプルを更に1cm間隔で厚み方向に切断し、5本の棒状とする。この5本のサンプルの全ての切断面を(1)と同様にデジタルマイクロスコープで観測し、x≧0.1かつy≧0.2を満たす樹脂塊の個数を数えて25cm2当たりの樹脂塊の個数とする。
【0057】
(3)樹脂発泡体の密度
樹脂発泡体から任意の厚みで20cm角の直方体を切り出して試料とし、当該試料の質量と体積を測定して求める。JIS K 7222:2005に従い測定する。
【0058】
(4)樹脂発泡体の独立気泡率
樹脂発泡体の厚み方向中心位置において、バンドソー等の切断具を用いて、樹脂発泡体の厚みが25mm以上の場合は25mm角の立方体を試料として切り出す。また、樹脂発泡体の厚みが25mm未満の場合は面材除去(面材由来の繊維体が残存する場合、または、裏面側の面材がある場合)後の厚みを有し、縦横ともに25mmの直方体を試料として切り出す。そして、空気比較式比重計(1000型、東京サイエンス社製)の標準使用方法により、試料体積V(cm3)を測定する。樹脂発泡体における独立気泡率は、下記式の通り前記試料体積Vから、試料質量W(g)と樹脂発泡体を構成する樹脂組成物の密度ρとから計算した気泡壁の体積(W/ρ)を差し引いた値を、試料の外寸から計算した見かけの体積Va(cm3)で割った値であり、ASTM D 2856(C法)に従い測定する。
独立気泡率(%)=((V-W/ρ)/Va)×100
【0059】
(5)外部部材の接着強度
成形した構造体から、幅30mm、長さ150mmの面積で、棒状の構造体を切り出し、評価サンプルとする。外部部材が可撓性を有する材料の場合は、この評価サンプルの長さ方向の端部かつ発泡体の層であって外部部材に近い場所に、評価サンプルの表面に沿って長さ30mmの切り込みを入れ、外部部材を含むつまみ代を作り出し、評価サンプルを固定した上でこのつまみ代をつまみ、島津製作所オートグラフAG-Xにより、85mmの長さに亘って外部部材の90°剥離を行い、強度の平均値をそのサンプルの90°剥離強度とする。外部部材の引張速度は200mm/minとする。
【0060】
外部部材が厚みのある樹脂成形体や金属板、木材等、可撓性を有しない材料の場合は、幅30cm、長さ150cmの評価サンプルに上述と同様の切り込みを入れるとともに、外部部材に貫通孔を設け、該貫通孔を利用して非伸縮性の紐、ロープ、金属部品等を取り付けてつまみ代を作りだし、評価サンプルを固定した上でこのつまみ代をつまみ、島津製作所オートグラフAG-Xにより90°剥離強度試験を行う。外部部材の引張速度は200mm/minとする。
【0061】
なお、本実施形態による共存領域12は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope; SEM)の観察により確認することができる。
【実施例】
【0062】
以下、代表例として樹脂発泡体にフェノール樹脂発泡体を、外部部材に塩化ビニルシートを用いた実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【0063】
(実施例1)
フェノール樹脂発泡体を以下の要領で製造しつつ、本発明による樹脂塊を形成し、樹脂発泡体複合板を作製した。さらに外部部材として塩化ビニルシートを用いて、樹脂発泡体複合板を含む構造体を作製して評価した。
【0064】
<フェノール樹脂の合成>
反応器に52質量%ホルムアルデヒド水溶液3500kgと99質量%フェノール2510kgを仕込み、プロペラ回転式の攪拌機により攪拌し、温調機により反応器内部液温度を40℃に調整した。次いで50質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えながら昇温して、反応を進行させた。オストワルド粘度が60センチストークス(25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、尿素を570kg(ホルムアルデヒド仕込み量の15モル%に相当)添加した。その後、反応液を30℃まで冷却し、パラトルエンスルホン酸一水和物の50質量%水溶液でpHを6.4に中和した。60℃で脱水処理して、得られた反応液(熱硬化型樹脂組成物)の粘度及び水分量を測定したところ、40℃における粘度は5,800mPa・s、水分量は5質量%であった。
【0065】
<フェノール樹脂組成物の調製>
フェノール樹脂を主成分とする脱水後の反応液96.5質量部に対して、界面活性剤としてエチレンオキサイド-プロピレンオキサイドのブロック共重合体(BASF製、製品名「プルロニック(登録商標)F-127」)を3.5質量部の割合で混合した。得られた界面活性剤含有フェノール樹脂組成物100質量部に対して、発泡剤としてシクロペンタン30質量%とトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン70質量%との混合物10.0質量部、発泡核剤として窒素を発泡剤に対して0.3質量%、硬化触媒としてキシレンスルホン酸80質量%とジエチレングリコール20質量%との混合物11質量部を、25℃に温調したミキシングヘッドに供給し、フェノール樹脂組成物を得た。
【0066】
ここで、使用する混合機は、上部側面に界面活性剤含有フェノール樹脂組成物、及び発泡剤の導入口があり、回転子が攪拌する攪拌部の中央付近の側面に硬化触媒の導入口を備え、攪拌部以降はフォームを吐出するためのノズルを有する分配部に繋がっているピンミキサーを使用した。複数のノズルを有し、混合されたフェノール樹脂組成物が均一に分配されるように設計されている。また混合機の中央側面と最下部には系内の温度が測定できるように、温度センサーがセットされている。さらに、混合機温度調整を可能にするための温調用ジャケットを備えている。この温度センサーで計測された温度は、36.4℃であった。
【0067】
<フェノール樹脂発泡体の製造>
JIS L 1913:2010に基づいて、目付量70g/m2、厚み0.46mm、引張強さが縦方向で200N/5cm幅、横方向で70N/5cm幅、伸び率が縦方向で50%、横方向で70%、引裂き強さが縦方向で7.0Nと計測された、1.5mm間隔で直径0.5mmの円形圧着部分を有し、直径20μmの円形断面を有するポリプロピレン繊維からなるスパンボンド不織布を面材として用いた。この不織布を移動させながら、その上にマルチポート分配管を通して前記フェノール樹脂組成物を供給した。
【0068】
不織布上に供給されたフェノール樹脂組成物の上から更に同種の不織布を被覆し、85℃のスラット型ダブルコンベアへ送って15分の滞留時間で硬化させた後、110℃のオーブンで2時間キュアし、厚さ30mmの樹脂発泡体複合板を得た。この際に利用したスラット型ダブルコンベアは、硬化中に発生する水分を外部に放出できるように水分の抜け道が設けられていた。成形したフェノール樹脂発泡体複合板の樹脂発泡体の密度は、フェノール樹脂組成物の密度を1.3kg/cm3として27kg/m3であり、独立気泡率は90%であった。
【0069】
このようにして生産した樹脂発泡体複合板の不織布の面材表面に対して、石崎電機製作所シェアープラジェットPJ-214Aを用いて、面材を構成する繊維(以下、実施例において面材繊維)の表面が溶融して相互に融着を始めるまで高温熱風を吹き付けた。その後、前記(2)の方法により、樹脂発泡体複合板の厚み方向断面を切出して観察したところ、樹脂発泡体複合板の表面に不織布面材の繊維体とともに、0.1≦x≦1、0.2≦y≦1、y/x≧0.3を満たす樹脂塊が3個確認された。
【0070】
続いて、外部部材として塩化ビニルシートを、接合材としてニトリルゴム系液状接着剤を用いて構造体を作製した。具体的には、メチルエチルケトンを55質量%含む、粘度4500mPa・sのニトリルゴム系液状接着剤を、前記溶融させた不織布の面材上に櫛目ごてを用いて1m2当たり300g塗布し、厚さ2mmの塩化ビニルシートの片面にも同様にして液状接着剤を1m2当たり150g塗布した。15分経過後に塩化ビニルシートの接着剤塗布面と樹脂発泡体の接着剤塗布面とを貼り合わせ、構造体とした。これを23℃、湿度50%の環境下に2日間置いた後、前記(5)の方法により塩化ビニルシートの90°剥離強度を測定したところ、25N/25mmであった。高温環境を模擬するため、更にこのサンプルを90℃のオーブンに2週間静置して加熱したが、塩化ビニルシートの外観に変化はなく、90°剥離強度も変化はなかった。引き続き90℃のオーブン内にサンプルを静置し、2か月後(初めの2週間を含む、以下同様)の塩化ビニルシートの外観も観察したが、変色は見られなかった。
【0071】
(実施例2)
上下の面材としてJIS L 1913:2010に基づいて、目付量100g/m2、厚み1.0mm、引張強さが縦方向で245N/5cm幅、横方向で80N/5cm幅、伸び率が縦方向で90%、横方向で140%、引裂き強さが縦方向で9.5Nと計測された、2mm間隔で直径1mmの円形圧着部分を有し、断面が幅40μm、厚み5μmの扁平形をした捲縮ポリプロピレン繊維からなるスパンボンド不織布を用いたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡体複合板を成形した。この樹脂発泡体複合板に、実施例1と同様にして面材繊維の表面の溶融処理を施し、前記(2)の方法により、樹脂発泡体複合板の厚み方向断面を切出して観察したところ、樹脂発泡体複合板の表面に不織布面材の繊維体とともに、0.1≦x≦1、0.2≦y≦1、y/x≧0.3を満たす樹脂塊が10個確認された。その後、実施例1と同様に塩化ビニルシートを外部部材とする構造体を作製し、塩化ビニルシートの90°剥離強度を測定したところ、28N/25mmであった。更にこのサンプルを90℃のオーブンに2週間静置したが、塩化ビニルシートの外観に変化はなく、90°剥離強度も変化はなかった。引き続き90℃のオーブン内にサンプルを静置し、2か月後の塩化ビニルシートの外観も観察したが、変色は見られなかった。
【0072】
(実施例3)
上下の不織布として、実施例2と同じ不織布を用いて樹脂発泡体複合板を成形した後、樹脂発泡体複合板の不織布面材の表面に、石崎電機製作所シェアープラジェットPJ-214Aを用いて、面材繊維の表面が溶融して相互に融着を始めてからも、更にしばらく継続して高温熱風を吹き付けた。その後、前記(2)の方法により、樹脂発泡体複合板の厚み方向断面を切出して観察したところ、樹脂発泡体複合板の表面に不織布面材の繊維体は確認されなかったものの、0.1≦x≦1、0.2≦y≦1、y/x≧0.3を満たす樹脂塊が47個確認された。その後、実施例1と同様に塩化ビニルシートを外部部材とする構造体を作製し、塩化ビニルシートの90°剥離強度を測定したところ、30N/25mmであった。更にこのサンプルを90℃のオーブンに2週間静置したが、塩化ビニルシートの外観に変化はなく、90°剥離強度も変化はなかった。引き続き90℃のオーブン内にサンプルを静置し、2か月後の塩化ビニルシートの外観も観察したが、変色は見られなかった。
【0073】
(実施例4)
発泡剤にイソクロロプロパン30質量%とトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン70質量%との混合物を10.6質量部使用した以外は実施例2と同様にして樹脂発泡体複合板を成形した。この樹脂発泡体複合板に、実施例1と同様にして面材繊維の表面の溶融処理を施し、前記(2)の方法により、樹脂発泡体複合板の厚み方向断面を切出して観察したところ、樹脂発泡体複合板の表面に不織布面材の繊維体とともに、0.1≦x≦1、0.2≦y≦1、y/x≧0.3を満たす樹脂塊が10個確認された。その後、実施例2と同様に塩化ビニルシートを外部部材とする構造体を作製し、塩化ビニルシートの90°剥離強度を測定したところ、28N/25mmであった。更にこのサンプルを90℃のオーブンに2週間静置したが、塩化ビニルシートの外観に変化はなく、90°剥離強度も変化はなかった。引き続き90℃のオーブン内にサンプルを静置し、2か月後の塩化ビニルシートの外観も観察したが、変色は見られなかった。
【0074】
(比較例1)
面材表面の溶融処理を行わない以外は実施例1と同様にして、樹脂発泡体複合板を作製した。前記(2)の方法により、樹脂発泡体複合板の厚み方向断面を切出して観察したが、樹脂塊は確認されなかった。その後、実施例1と同様に塩化ビニルシートを外部部材とする構造体を作製し、塩化ビニルシートの90°剥離強度を測定したところ、16N/25mmであった。
【0075】
(比較例2)
面材表面の溶融処理を行わない以外は実施例2と同様にして、樹脂発泡体複合板を作製した。前記(2)の方法により、樹脂発泡体複合板の厚み方向断面を切出して観察したが、樹脂塊は確認されなかった。その後、実施例1と同様に塩化ビニルシートを外部部材とする構造体を作製し、塩化ビニルシートの90°剥離強度を測定したところ、20N/25mmであった。
【0076】
(比較例3)
面材表面の溶融処理を行わない以外は実施例2と同様にして、樹脂発泡体複合板を作製した。前記(2)の方法により、樹脂発泡体複合板の厚み方向断面を切出して観察したが、樹脂塊は確認されなかった。その後、メチルエチルケトンを55質量%含む、粘度4500mPa・sのニトリルゴム系液状接着剤を、前記溶融させた不織布面材上に櫛目ごてを用いて1m2当たり900g塗布し、厚さ2mmの塩化ビニルシートの片面にも同様にして液状接着剤を1m2当たり400g塗布した。15分経過後に塩化ビニルシートの接着剤塗布面と樹脂発泡体の接着剤塗布面とを貼り合わせ、構造体とした。これを23℃、湿度50%の環境下に2日間置いた後、前記(5)の方法により塩化ビニルシートの90°剥離強度を測定したところ、27N/25mmであった。更にこのサンプルを90℃のオーブンに2週間静置ところ、塩化ビニルシートの表面に膨れが複数生じた。膨れ部分の一つを切り出して確認したところ、塩化ビニルシートと樹脂発泡体複合板との間に空洞が形成されたことが確認された。また、切り出していない膨れ箇所の90°剥離強度を測定したところ、10N/25mmであった。また、同種のサンプルに対して90℃のオーブン内にサンプルを静置し、2か月後の塩化ビニルシートの外観を観察したところ、表面に変色が確認された。
【0077】
以上の作製条件および評価結果を下記表1にまとめる。
【0078】
【表1】
以上の結果から、本発明条件を満足する樹脂塊が形成された実施例1~4では、比較例1,2に比べて構造体の剥離強度が優れることが確認できた。したがって、実施例1~3による樹脂発泡体複合板は、外部部材との接合をより一層確実に、強固にすることが確認できた。
【0079】
また、比較例3による構造体の剥離強度は実施例1~4と同程度であるものの、多量の接合材を必要とし、かつ、高温環境下で膨れや変色が生じてしまうことが確認できた。したがって、本発明条件を満足する実施例1~4による樹脂発泡体複合板は、少ない接合材で外部部材と強固に接合することができ、かつ、高温環境下でも剥離強度を維持することができ、変色が生じない点でも有利である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本実施形態の樹脂発泡体複合板は、従来表面材の層内剥離強度が低いために外部部材との接合強度が十分ではなかった構造体に関して、該接合強度を高めることができ、耐久性及び取り扱い性に優れ、更には高温環境下でも剥離強度を維持しやすく、変色も生じないので意匠性に優れる。本実施形態の構造体は、例えば断熱を必要とする場所で利用可能な製品として用いることができる。
【符号の説明】
【0081】
10 樹脂発泡体
12 共存領域
20 繊維
25 繊維体
30 樹脂塊
40 外部部材
60 接合材
100 樹脂発泡体複合板
200 樹脂発泡体複合板
300 構造体
400 構造体