(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】作業機械の制御装置及び作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
E02F9/20 C
(21)【出願番号】P 2018070207
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 洋平
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 将崇
(72)【発明者】
【氏名】今西 康太
(72)【発明者】
【氏名】青島 幸司
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-088625(JP,A)
【文献】特開2017-043885(JP,A)
【文献】特開2000-136549(JP,A)
【文献】特開平05-297942(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152994(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機を有する作業機械に搭載され
掘削対象及び積込対象を含む作業対象を計測する計測装置の計測データを取得する計測データ取得部と、
前記掘削対象の計測データを処理するための第1アルゴリズムと、前記積込対象の計測データを処理するための第2アルゴリズムとを記憶する記憶部と、
前記作業機械の作業モードが、前記作業機のバケットに掘削物が保持されていない状態で、前記作業機械が前記バケットで前記掘削対象を掘削するために前記掘削対象に向かって前進している掘削作業モードであると判定したときに、前記記憶部に記憶されている第1アルゴリズムを選択し、前記バケットに掘削物が保持されている状態で、前記作業機械が前記バケットにより掘削された掘削物を積み込むために前記積込対象に向かって前進している積込作業モードであると判定したときに、前記記憶部に記憶されている第2アルゴリズムを選択するアルゴリズム選択部と、
前記掘削作業モードにおいて、前記第1アルゴリズムに基づいて前記掘削対象の計測データを処理して、前記作業機械から前記掘削対象までの距離を算出し、前記積込作業モードにおいて、前記第2アルゴリズムに基づいて前記積込対象の計測データを処理して、前記作業機械から前記積込対象までの距離を算出する算出部と、を備える
作業機械の制御装置。
【請求項2】
前記算出部により算出された前記作業対象までの距離に基づいて、前記作業機を制御する作業機制御部を備える、
請求項
1に記載の作業機械の制御装置。
【請求項3】
前記バケットが前記掘削対象の掘削物を保持しているか否かを判定する掘削物判定部と、
前記作業機械が前進しているか否かを判定する前後進判定部と、を備え、
前記アルゴリズム選択部は、前記掘削物判定部の判定データ及び前記前後進判定部の判定データに基づいて、前記記憶部に記憶されている第1アルゴリズム又は第2アルゴリズムを選択する、
請求項1又は請求項2に記載の作業機械の制御装置。
【請求項4】
掘削対象及び積込対象を含む作業機械の作業対象を計測する計測装置の計測データを取得することと、
前記掘削対象の計測データを処理するための第1アルゴリズムと、前記積込対象の計測データを処理するための第2アルゴリズムとを記憶部に記憶することと、
前記作業機械の作業モードが、前記作業機械の作業機のバケットに掘削物が保持されていない状態で、前記作業機械が前記バケットで前記掘削対象を掘削するために前記掘削対象に向かって前進している掘削作業モードであると判定したときに、前記記憶部に記憶されている第1アルゴリズムを選択し、前記バケットに掘削物が保持されている状態で、前記作業機械が前記バケットにより掘削された掘削物を積み込むために前記積込対象に向かって前進している積込作業モードであると判定したときに、前記記憶部に記憶されている第2アルゴリズムを選択することと、
前記掘削作業モードにおいて、前記第1アルゴリズムに基づいて前記掘削対象の計測データを処理して、前記作業機械から前記掘削対象までの距離を算出し、前記積込作業モードにおいて、前記第2アルゴリズムに基づいて前記積込対象の計測データを処理して、前記作業機械から前記積込対象までの距離を算出することと、を含む
作業機械の制御方法。
【請求項5】
前記バケットが前記掘削対象の掘削物を保持しているか否かを判定することと、
前記作業機械が前進しているか否かを判定することと、
前記掘削対象の掘削物を保持しているか否かの判定及び前記作業機械が前進しているか否かの判定に基づいて、前記記憶部に記憶されている第1アルゴリズム又は第2アルゴリズムを選択することと、を含む、
請求項4に記載の作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の制御装置及び作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業現場において作業機械が使用される。掘削対象及び積込対象までの距離を求めるための計測器を備える自動掘削機の一例が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械による作業の自動化を実現する場合、作業対象に関するパラメータを取得することが要望される。
【0005】
本発明の態様は、作業対象に関するパラメータを取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、作業機を有する作業機械に搭載され作業対象を計測する計測装置の計測データを取得する計測データ取得部と、前記作業機械の作業に応じて前記計測データを処理する特定のアルゴリズムを選択するアルゴリズム選択部と、前記アルゴリズム選択部により選択された前記アルゴリズムに基づいて前記計測データを処理して、前記作業対象に関するパラメータを算出する算出部と、を備える作業機械の制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、作業対象に関するパラメータを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る作業機械を示す側面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る作業機械の動作を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る作業機械の掘削作業モードを示す模式図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る作業機械の積込作業モードを示す模式図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る作業機械の制御装置を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る作業機械の制御方法を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る作業機械の制御方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る作業機械の制御方法を示す模式図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る作業機械の制御方法を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、本実施形態に係る作業機械の制御方法を示す模式図である。
【
図11】
図11は、本実施形態に係る作業機械の制御方法を示す模式図である。
【
図12】
図12は、コンピュータシステムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[ホイールローダ]
図1は、本実施形態に係る作業機械1の一例を示す側面図である。作業機械1は、作業現場において作業対象に対して所定の作業を実施する。本実施形態においては、作業機械1がアーティキュレート作業機械の一種であるホイールローダ1であることとする。所定の作業は、掘削作業及び積込作業を含む。作業対象は、掘削対象及び積込対象を含む。ホイールローダ1は、掘削対象を掘削する掘削作業、及び掘削作業により掘削した掘削物を積込対象に積み込む積込作業を実施する。積込作業は、掘削物を排出対象に排出する排出作業を含む概念である。掘削対象として、地山、岩山、石炭、及び壁面の少なくとも一つが例示される。地山は、土砂により構成される山であり、岩山は、岩又は石により構成される山である。積込対象として、運搬車両、作業現場の所定エリア、ホッパ、ベルトコンベヤ、及びクラッシャの少なくとも一つが例示される。
【0011】
図1に示すように、ホイールローダ1は、車体2と、運転席が設けられる運転台3と、車体2を支持する走行装置4と、車体2に支持される作業機10と、トランスミッション装置30と、車体2よりも前方の作業対象を計測する三次元計測装置20と、制御装置80とを備える。
【0012】
車体2は、車体前部2Fと車体後部2Rとを含む。車体前部2Fと車体後部2Rとは、関節機構9を介して屈曲可能に連結される。
【0013】
運転台3は、車体2に支持される。ホイールローダ1の少なくとも一部は、運転台3に搭乗した運転者によって操作される。
【0014】
走行装置4は、車体2を支持する。走行装置4は、車輪5を有する。車輪5は、車体2に搭載されているエンジンが発生する駆動力により回転する。タイヤ6が車輪5に装着される。車輪5は、車体前部2Fに装着される2つの前輪5Fと、車体後部2Rに装着される2つの後輪5Rとを含む。タイヤ6は、前輪5Fに装着される前タイヤ6Fと、後輪5Rに装着される後タイヤ6Rとを含む。走行装置4は、地面RSを走行可能である。
【0015】
以下の説明においては、前輪5Fの回転軸と平行な方向を適宜、車幅方向、と称し、地面RSと接触する前タイヤ6Fの接地面と直交する方向を適宜、上下方向、と称し、車幅方向及び上下方向の両方と直交する方向を適宜、前後方向、と称する。ホイールローダ1の車体2が直進状態で走行するとき、前輪5Fの回転軸と後輪5Rの回転軸とは平行である。
【0016】
また、以下の説明においては、車幅方向において車体2の中心に近い位置又は方向を適宜、車幅方向の内側又は内方、と称し、車体2の中心から遠い位置又は方向を適宜、車幅方向の外側又は外方、と称する。また、車幅方向において、運転台3の運転席を基準とする一方を適宜、右側又は右方、と称し、右側又は右方の逆側又は逆方向を適宜、左側又は左方、と称する。また、前後方向において、運転台3の運転席を基準として作業機10に近い位置又は方向を適宜、前側又は前方、と称し、前側又は前方の逆側又は逆方向を適宜、後側又は後方、と称する。また、上下方向において前タイヤ6Fの接地面に近い位置又は方向を適宜、下側又は下方、と称し、下側又は下方の逆側又は逆方向を適宜、上側又は上方、と称する。
【0017】
車体前部2Fは、車体後部2Rよりも前方に配置される。前輪5F及び前タイヤ6Fは、後輪5R及び後タイヤ6Rよりも前方に配置される。前輪5F及び前タイヤ6Fは、車体2の車幅方向の両側に配置される。後輪5R及び後タイヤ6Rは、車体2の車幅方向の両側に配置される。車体前部2Fは、車体後部2Rに対して左右に屈曲する。
【0018】
走行装置4は、駆動装置4Aと、ブレーキ装置4Bと、操舵装置4Cとを有する。駆動装置4Aは、ホイールローダ1を加速させるための駆動力を発生する。駆動装置4Aは、ディーゼルエンジンのような内燃機関を含む。駆動装置4Aで発生した駆動力がトランスミッション装置30を介して車輪5に伝達され、車輪5が回転する。ブレーキ装置4Bは、ホイールローダ1を減速又は停止させるための制動力を発生する。操舵装置4Cは、ホイールローダ1の走行方向を調整可能である。ホイールローダ1の走行方向は、車体前部2Fの向きを含む。操舵装置4Cは、油圧シリンダによって車体前部2Fを屈曲させることによって、ホイールローダ1の走行方向を調整する。
【0019】
本実施形態において、走行装置4は、運転台3に搭乗した運転者によって操作される。作業機10は、制御装置80に制御される。走行装置4を操作する走行操作装置40が運転台3に配置される。運転者は、走行操作装置40を操作して、走行装置4を作動させる。走行操作装置40は、アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングレバー、及び前後進を切り換えるためのシフトレバー41を含む。アクセルペダルが操作されることにより、ホイールローダ1の走行速度が増大する。ブレーキペダルが操作されることにより、ホイールローダ1の走行速度が減少したり走行が停止したりする。ステアリングレバーが操作されることにより、ホイールローダ1が旋回する。シフトレバー41が操作されることにより、ホイールローダ1の前進又は後進が切り換えられる。
【0020】
トランスミッション装置30は、駆動装置4Aで発生した駆動力を車輪5に伝達する。
【0021】
作業機10は、車体前部2Fに回動可能に連結されるブーム11と、ブーム11に回動可能に連結されるバケット12と、ベルクランク15と、リンク16とを有する。
【0022】
ブーム11は、ブームシリンダ13が発生する動力によって作動する。ブームシリンダ13が伸縮することにより、ブーム11は上げ動作又は下げ動作する。
【0023】
バケット12は、刃先を含む先端部12Bを有する作業部材である。バケット12は、前輪5Fよりも前方に配置される。バケット12は、ブーム11の先端部に連結される。バケット12は、バケットシリンダ14が発生する動力によって作動する。バケットシリンダ14が伸縮することにより、バケット12はダンプ動作又はチルト動作する。
【0024】
バケット12のダンプ動作が実施されることにより、バケット12ですくい上げられた掘削物がバケット12から排出される。バケット12のチルト動作が実施されることにより、バケット12は掘削物をすくい取る。
【0025】
[三次元計測装置]
三次元計測装置20は、ホイールローダ1に搭載される。三次元計測装置20は、車体前部2Fよりも前方の作業対象を計測する。作業対象は、作業機10による掘削対象、及び作業機10により掘削された掘削物が積み込まれる積込対象を含む。三次元計測装置20は、三次元計測装置20から作業対象の表面の複数の各計測点までの相対位置を計測して、作業対象の三次元形状を計測する。制御装置80は、計測された作業対象の三次元形状に基づいて、作業対象に関するパラメータを算出する。後述するように、作業対象に関するパラメータは、掘削対象までの距離、積込対象までの距離、掘削対象の安息角、及び積込対象の高さの少なくとも一つを含む。
【0026】
三次元計測装置20は、レーザ計測装置の一種であるレーザレーダ21と、写真計測装置の一種であるステレオカメラ22とを含む。
【0027】
[動作]
図2は、本実施形態に係るホイールローダ1の動作を示す模式図である。ホイールローダ1は、複数の作業モードで作業する。作業モードは、作業機10のバケット12で掘削対象を掘削する掘削作業モードと、掘削作業モードによりバケット12ですくい取った掘削物を積込対象に積み込む積込作業モードとを含む。掘削対象として、地面RSに置かれた地山DSが例示される。積込対象として、地面を走行可能な運搬車両LSのベッセルBE(ダンプボディ)が例示される。運搬車両LSとして、ダンプトラックが例示される。
【0028】
掘削作業モードにおいて、ホイールローダ1は、バケット12に掘削物が保持されていない状態で、バケット12で地山DSを掘削するために地山DSに向かって前進する。ホイールローダ1の運転者は、走行操作装置40を操作して、
図2の矢印M1で示すように、ホイールローダ1を前進させて地山DSに接近させる。ホイールローダ1に搭載されている三次元計測装置20は、地山DSの三次元形状を計測する。制御装置80は、三次元計測装置20の計測データに基づいて、地山DSに関するパラメータとして、ホイールローダ1から地山DSまでの距離を算出し、バケット12で地山DSが掘削されるように、作業機10を制御する。すなわち、制御装置80は、ホイールローダ1が地山DSに接近するように前進している状態で、バケット12の先端部12B及び底面部が地面RSに接触するように、作業機10を制御する。
【0029】
バケット12が地山DSに突入して地山DSがバケット12により掘削され、掘削物がバケット12にすくい取られた後、ホイールローダ1は、バケット12に掘削物が保持されている状態で、地山DSから離れるように後進する。ホイールローダ1の運転者は、走行操作装置40を操作して、
図2の矢印M2で示すように、ホイールローダ1を後進させて地山DSから離間させる。
【0030】
次に、積込作業モードが実施される。積込作業モードにおいて、ホイールローダ1は、バケット12に掘削物が保持されている状態で、バケット12により掘削された掘削物を積み込むために運搬車両LSに向かって前進する。ホイールローダ1の運転者は、走行操作装置40を操作して、
図2の矢印M3で示すように、ホイールローダ1を旋回させながら前進させて運搬車両LSに接近させる。ホイールローダ1に搭載されている三次元計測装置20は、運搬車両LSの三次元形状を計測する。制御装置80は、三次元計測装置20の計測データに基づいて、運搬車両LSに関するパラメータとして、ホイールローダ1から運搬車両LSまでの距離を算出し、バケット12に保持されている掘削物が運搬車両LSのベッセルBEに積み込まれるように、作業機10を制御する。すなわち、制御装置80は、ホイールローダ1が運搬車両LSに接近するように前進している状態で、ブーム11が上げ動作するように、作業機10を制御する。ブーム11が上げ動作し、バケット12がベッセルBEの上方に配置された後、制御装置80は、バケット12がチルト動作するように、作業機10を制御する。これにより、バケット12から掘削物が排出され、ベッセルBEに積み込まれる。
【0031】
バケット12から掘削物が排出され、ベッセルBEに積み込まれた後、ホイールローダ1は、バケット12に掘削物が保持されていない状態で、運搬車両LSから離れるように後進する。運転者は、走行操作装置40を操作して、
図2の矢印M4で示すように、ホイールローダ1を後進させて運搬車両LSから離間させる。
【0032】
運転者及び制御装置80は、ベッセルBEに掘削物が満載されるまで、上述の動作を繰り返す。
【0033】
図3は、本実施形態に係るホイールローダ1の掘削作業モードを示す模式図である。ホイールローダ1の運転者は、走行操作装置40を操作して、ホイールローダ1を前進させて地山DSに接近させる。
【0034】
図3(A)に示すように、ホイールローダ1に搭載されている三次元計測装置20は、地山DSの三次元形状を計測する。制御装置80は、三次元計測装置20の計測データに基づいて、地面RSと地山DSとの境界DPの位置を特定する。
【0035】
図3(B)に示すように、制御装置80は、ホイールローダ1が地山DSに接近するように前進している状態で、三次元計測装置20の計測データに基づいて、地山DSに関するパラメータとして、バケット12の先端部12Bと境界DPとの距離を算出する。制御装置80は、三次元計測装置20の計測データに基づいて、バケット12の先端部12Bが境界DPに接近するように、ブーム11を下げ動作させるとともに、バケット12の角度を制御する。
【0036】
図3(C)に示すように、ホイールローダ1がさらに前進することにより、バケット12の先端部12Bが境界DPから地山DSに挿入される。これにより、地山DSがバケット12により掘削され、バケット12は、掘削物をすくい取ることができる。
【0037】
図4は、本実施形態に係るホイールローダ1の積込作業モードを示す模式図である。ホイールローダ1の運転者は、走行操作装置を操作して、ホイールローダ1を前進させて運搬車両LSに接近させる。
図4(A)に示すように、ホイールローダ1に搭載されている三次元計測装置20は、運搬車両LSの手前側表面の三次元形状を計測する。制御装置80は、三次元計測装置20の計測データに基づいて、地山DSに関するパラメータとして、バケット12の先端部12Bと運搬車両LSとの距離及びベッセルBEの上端部の高さを検出する。ベッセルBEの上端部の高さは、例えば後述する
図10のようにベッセルBEを側面視した際の側壁面におけるおよそ水平な上端部の地面RSからの距離である。
【0038】
図4(B)に示すように、制御装置80は、ホイールローダ1が運搬車両LSに接近するように前進している状態で、三次元計測装置20の計測データに基づいて、バケット12がベッセルBEの上端部よりも上方に配置されるように、且つ、バケット12に保持されている掘削物がバケット12からこぼれないように、バケット12の角度を制御しながら、ブーム11を上げ動作させる。
【0039】
図4(C)に示すように、ブーム11が上げ動作し、バケット12がベッセルBEの上方に配置された後、制御装置80は、バケット12がチルト動作するように、作業機10を制御する。これにより、バケット12から掘削物が排出され、ベッセルBEに積み込まれる。
【0040】
[制御装置]
図5は、本実施形態に係るホイールローダ1の制御装置80を示す機能ブロック図である。制御装置80は、コンピュータシステムを含む。
【0041】
制御装置80に、作業機10、三次元計測装置20、掘削物判定用センサ51、回転センサ52、及び走行操作装置40が接続される。
【0042】
制御装置80は、計測データ取得部81と、記憶部82と、掘削物判定部83と、前後進判定部84と、アルゴリズム選択部85と、算出部86と、作業機制御部87とを有する。
【0043】
計測データ取得部81は、三次元計測装置20の計測データを取得する。
【0044】
記憶部82は、計測データ取得部81により取得された計測データを処理する複数のアルゴリズムを記憶する。アルゴリズムとは、計測データ取得部81により取得された計測データを用いて、所定のデータを出力するための手順、フローチャート、手法、又はプログラムをいう。複数のアルゴリズムに応じて、手順、手法、又はプログラムを異ならせてもよいし、出力されるデータの数又は種類を異ならせてもよい。記憶部82には、ステレオカメラ22で計測された地山DSの計測データを処理するための第1アルゴリズムと、ステレオカメラ22で計測された運搬車両LSの計測データを処理するための第2アルゴリズムとが記憶されている。また、記憶部82には、レーザレーダ21で計測された地山DSの計測データを処理するためのアルゴリズムと、レーザレーダ21で計測された運搬車両LSの計測データを処理するためのアルゴリズムとが記憶されている。レーザレーダ21で計測された地山DSの計測データを処理するためのアルゴリズムは、第1アルゴリズムの一例であり、レーザレーダ21で計測された運搬車両LSの計測データを処理するためのアルゴリズムは、第2アルゴリズムの一例である。
【0045】
掘削物判定部83は、バケット12が掘削物を保持しているか否かを判定する。掘削物判定用センサ51は、検出データを制御装置80に出力する。掘削物判定用センサ51は、重量センサ、ブームシリンダ圧力センサ、ブーム角度センサ、及びバケット角度センサの少なくとも一つを含む。重量センサは、バケット12の重量、バケット12における掘削物の有無、及びバケット12に保持された掘削物の重量の少なくとも一つを検出することができる。ブームシリンダ圧力センサは、ブームシリンダ13の内部空間の作動油の圧力を検出することができる。ブーム角度センサは、車体座標系におけるブーム11の回動角度を検出することができる。バケット角度センサは、車体座標系におけるバケット12の回動角度を検出することができる。掘削物判定部83は、掘削物判定用センサ51の検出データに基づいて、バケット12が掘削物を保持しているか否かを判定する。掘削物判定部83は、重量センサ、ブームシリンダ圧力センサ、ブーム角度センサ、及びバケット角度センサの少なくとも一つの検出信号に基づいて、バケット12が掘削物を保持しているか否かを判定することができる。
【0046】
前後進判定部84は、回転センサ52の検出データに基づいて、ホイールローダ1が前進しているか否かを判定する。回転センサ52は、車輪5の回転速度及び回転方向を検出する。なお、前後進判定部84は、走行操作装置40のシフトレバー41の操作信号に基づいて、ホイールローダ1が前進しているか否かを判定してもよい。
【0047】
アルゴリズム選択部85は、ホイールローダ1の作業に応じて、記憶部82に記憶されている複数のアルゴリズムから、計測データ取得部81により取得された計測データを処理する特定のアルゴリズムを選択する。ホイールローダ1の作業は、ホイールローダ1の作業モード、及びホイールローダ1の作業対象の少なくとも一方を含む。
【0048】
本実施形態において、アルゴリズム選択部85は、掘削物判定部83の判定データ及び前後進判定部84の判定データに基づいて、ホイールローダ1の作業モードを判定し、ホイールローダ1の作業モードに応じて、記憶部82に記憶されている複数のアルゴリズムから、計測データ取得部81により取得された計測データを処理する特定のアルゴリズムを選択する。
【0049】
掘削作業モードにおいて、ホイールローダ1は、バケット12に掘削物が保持されていない状態で、地山DSに向かって前進する。積込作業モードにおいて、ホイールローダ1は、バケット12に掘削物が保持されている状態で、運搬車両LSに向かって前進する。アルゴリズム選択部85は、掘削物判定部83の判定データ及び前後進判定部84の判定データに基づいて、ホイールローダ1がバケット12で地山DSを掘削するために地山DSに向かって前進していると判定したときに、記憶部82に記憶されている複数のアルゴリズムから第1アルゴリズムを選択する。また、アルゴリズム選択部85は、ホイールローダ1がバケット12により掘削された掘削物を積み込むために運搬車両LSに向かって前進していると判定したときに、記憶部82に記憶されている複数のアルゴリズムから第2アルゴリズムを選択する。
【0050】
なお、アルゴリズム選択部85は、ホイールローダ1の作業モードを判定することなく、掘削物判定部83の判定データ及び前後進判定部84の判定データに基づいて、複数のアルゴリズムから特定のアルゴリズムを選択してもよい。アルゴリズム選択部85は、少なくとも掘削物判定部83の判定データに基づいて、作業モードを判定又は特定のアルゴリズムを選択してもよい。
【0051】
算出部86は、アルゴリズム選択部85により選択されたアルゴリズムに基づいて計測データを処理して、作業対象に関するパラメータを算出する。算出部86は、地山DSに関するパラメータを算出するための第1アルゴリズムが選択されたとき、地山DSに関するパラメータとして、ホイールローダ1から地山DSまでの距離を算出する。算出部86は、アルゴリズム選択部85により選択された第1アルゴリズムに基づいて計測データ取得部81により取得された計測データを処理して、ホイールローダ1から地山DSまでの距離を算出する。また、算出部86は、運搬車両LSに関するパラメータを算出するための第2アルゴリズムが選択されたとき、運搬車両LSに関するパラメータとして、ホイールローダ1から運搬車両LSまでの距離を算出する。算出部86は、アルゴリズム選択部85により選択された第2アルゴリズムに基づいて計測データ取得部81により取得された計測データを処理して、ホイールローダ1から運搬車両LSまでの距離を算出する。
【0052】
なお、算出部86は、ホイールローダ1から地山DSまでの距離に加え、地山DSに関するパラメータとして、地山DSの安息角を算出してもよい。本実施形態において、地山DSに関するパラメータは、ホイールローダ1から地山DSまでの距離、地山DSの安息角、地山DSの岩土の質、地山DSを構成する岩土の粒度、地山DSの高さ、地山DSの形状、及び地山DSの体積の少なくとも一つを含む。
【0053】
なお、算出部86は、ホイールローダ1から運搬車両LSまでの距離に加え、運搬車両LSに関するパラメータとして、運搬車両LSのベッセルBEの高さを算出してもよい。本実施形態において、運搬車両LSに関するパラメータは、ホイールローダ1から運搬車両LSまでの距離、運搬車両LSのベッセルBEの高さ、運搬車両LSの全長、ベッセルBEの投入口の全長、及びベッセルBEの上端部から飛び出している岩土の高さの少なくとも一つを含む。
【0054】
ホイールローダ1の作業モードが掘削作業モードであると判定され、アルゴリズム選択部85により第1アルゴリズムが選択された場合、算出部86は、第1アルゴリズムに基づいて地山DSの計測データを処理して、ホイールローダ1から地山DSまでの距離を算出する。ホイールローダ1の作業モードが積込作業モードであると判定され、アルゴリズム選択部85により第2アルゴリズムが選択された場合、算出部86は、第2アルゴリズムに基づいて運搬車両LSの計測データを処理して、ホイールローダ1から運搬車両LSまでの距離を算出する。
【0055】
ホイールローダ1から地山DSまでの距離は、ホイールローダ1から地山DSと地面RSとの境界DPまでの距離、およびホイールローダ1のバケット12の先端部12Bから地山DSと地面RSとの境界DPまでの距離を含む。ホイールローダ1から運搬車両LSまでの距離は、ホイールローダ1からベッセルBSまでの距離、およびホイールローダ1から運搬車両LSまでの距離は、ホイールローダ1のバケット12の先端部12BからベッセルBSの手前側表面までの距離を含む。
【0056】
作業機制御部87は、算出部86により算出された作業対象までの距離に基づいて、作業機10の動作を制御する。作業機制御部87は、算出部86により算出された地山DSの安息角、又はベッセルBEの高さに基づいて、作業機10の動作を制御してもよい。作業機10の動作の制御は、ブームシリンダ13及びバケットシリンダ14の少なくとも一方の動作の制御を含む。ホイールローダ1は、図示しない油圧ポンプと、油圧ポンプからブームシリンダ13に供給される作動油の流量及び方向を制御する図示しないブーム制御弁と、油圧ポンプからバケットシリンダ14に供給される作動油の流量及び方向を制御する図示しないバケット制御弁とを有する。作業機制御部87は、ブーム制御弁に制御信号を出力して、ブームシリンダ13に供給される作動油の流量及び方向を制御することによって、ブーム11の上げ動作、下げ動作、上げ動作の動作速度、及び下げ動作の動作速度を制御することができる。また、作業機制御部87は、バケット制御弁に制御信号を出力して、バケットシリンダ14に供給される作動油の流量及び方向を制御することによって、バケット12のダンプ動作、チルト動作、ダンプ動作の動作速度、及びチルト動作の動作速度を制御することができる。
【0057】
本実施形態において、ホイールローダ1は、トランスミッション制御部88と、走行制御部89とを有する。
【0058】
トランスミッション制御部88は、ホイールローダ1の運転者による走行操作装置40の操作に基づいて、トランスミッション装置30の動作を制御する。トランスミッション装置30の動作の制御は、シフトチェンジの制御を含む。
【0059】
走行制御部89は、ホイールローダ1の運転者による走行操作装置40の操作に基づいて、走行装置4の動作を制御する。走行制御部89は、駆動装置4Aを作動するためのアクセル指令、ブレーキ装置4Bを作動するためのブレーキ指令、及び操舵装置4Cを作動するためのステアリング指令を含む運転指令を出力する。
【0060】
[作業モードの切換]
図6は、本実施形態に係るホイールローダ1の制御方法を示すフローチャートであって、作業モードの切換方法を示す。なお、
図6は、三次元計測装置20としてステレオカメラ22が用いられる処理を示す。
【0061】
図2、
図3、及び
図4を参照して説明したように、掘削作業モードにおいて、ホイールローダ1は、バケット12に掘削物が保持されていない状態で、
図2の矢印M1で示したように、バケット12で地山DSを掘削するために地山DSに向かって前進する。
【0062】
掘削物判定部83は、掘削物判定用センサ51の検出データに基づいて、バケット12が掘削物を保持していないと判定することができる。前後進判定部84は、回転センサ52の検出データに基づいて、ホイールローダ1が前進していると判定することができる。アルゴリズム選択部85は、掘削物判定部83の判定データ及び前後進判定部84の判定データに基づいて、バケット12に掘削物が保持されていない状態で、ホイールローダ1がバケット12で地山DSを掘削するために地山DSに向かって前進していると判定することができる(ステップS1)。
【0063】
アルゴリズム選択部85は、ホイールローダ1が作業機10で地山DSを掘削するために地山DSに向かって前進していると判定したときに、記憶部82に記憶されている複数のアルゴリズムから第1アルゴリズムを選択する(ステップS2)。
【0064】
算出部86は、アルゴリズム選択部85により選択された第1アルゴリズムに基づいて、ステレオカメラ22により計測された地山DSの計測データを処理して、ホイールローダ1から地山DSまでの距離を算出する。
【0065】
地山DSがバケット12により掘削され、掘削物がバケット12に保持された後、ホイールローダ1は、バケット12に掘削物が保持されている状態で、
図2の矢印M2で示したように、地山DSから離れるように後進する。
【0066】
次に、積込作業モードが実施される。積込作業モードにおいて、ホイールローダ1は、バケット12に掘削物が保持されている状態で、
図2の矢印M3で示したように、バケット12により掘削された掘削物を積み込むために運搬車両LSに向かって前進する。
【0067】
掘削物判定部83は、掘削物判定用センサ51の検出データに基づいて、バケット12が掘削物を保持していると判定することができる。前後進判定部84は、回転センサ52の検出データに基づいて、ホイールローダ1が前進していると判定することができる。アルゴリズム選択部85は、掘削物判定部83の判定データ及び前後進判定部84の判定データに基づいて、バケット12に掘削物が保持されている状態で、ホイールローダ1がバケット12により掘削された掘削物を積み込むために運搬車両LSのベッセルBEに向かって前進していると判定することができる(ステップS3)。
【0068】
アルゴリズム選択部85は、ホイールローダ1が作業機10により掘削された掘削物を積み込むために運搬車両LSのベッセルBEに向かって前進していると判定したときに、記憶部82に記憶されている複数のアルゴリズムから第2アルゴリズムを選択する(ステップS4)。
【0069】
算出部86は、アルゴリズム選択部85により選択された第2アルゴリズムに基づいて、三次元計測装置20により計測された運搬車両LSの計測データを処理して、ホイールローダ1から運搬車両LSまでの距離を算出する。
【0070】
バケット12から掘削物が排出され、ベッセルBEに積み込まれた後、ホイールローダ1は、バケット12に掘削物が保持されていない状態で、
図2の矢印M4で示したように、運搬車両LSから離れるように後進する。
【0071】
なお、三次元計測装置20としてレーザレーダ21が用いられる場合、ステップS2においてはレーザレーダ21を用いた場合における第1アルゴリズムが選択され、ステップS5においてはレーザレーダ21を用いた場合における第2アルゴリズムが選択される。
【0072】
[第1アルゴリズムによる処理]
図7は、本実施形態に係るホイールローダ1の制御方法を示すフローチャートであって、ステレオカメラ22による地山DSの計測データを第1アルゴリズムに基づいて処理する方法を示す。
図7に示す処理は、
図6を参照して説明したステップS2のサブルーチンに相当する。
【0073】
ホイールローダ1が作業機10で地山DSを掘削するために地山DSに向かって前進する掘削作業モードにおいて、ステレオカメラ22は、地山DSを計測する。計測データ取得部81は、ステレオカメラ22から、地山DSを計測したステレオカメラ22の計測データを取得する(ステップS201)。
【0074】
図8は、本実施形態に係るホイールローダ1の制御方法を示す模式図であって、ステレオカメラ22による計測方法を模式的に示す。
図8に示すように、ステレオカメラ22は、地山DSの表面の複数の計測点PIのそれぞれとの距離を計測する。
【0075】
地山DSの斜面の位置は、ホイールローダ1の車体座標系において規定される。車体座標系におけるステレオカメラ22の設置位置は、ホイールローダ1の設計データから導出される既知データである。算出部86は、車体座標系におけるステレオカメラ22から地山DSの斜面における複数の計測点PIまでの距離を算出する。地山DSの斜面の位置は、車体座標系におけるステレオカメラ22から地山DSの斜面までの距離によって規定される。算出部86は、地山DSの表面の複数の計測点PIのそれぞれまでの距離に基づいて、地山DSの三次元形状を算出する(ステップS202)。
【0076】
算出部86は、第1アルゴリズムに基づいて、ホイールローダ1から地山DSまでの距離を算出する。算出部86は、複数の計測点PIについて直線フィッティングを実施して、複数の計測点PIに基づいて仮想的な直線ILを算出する。直線ILは、地山DSの斜面の推定形状を示す。すなわち、算出部86は、複数の計測点PIについて直線フィッティングを実施して、地山DSの斜面の位置を算出する(ステップS203)。
【0077】
算出部86は、例えばタイヤ6の接地面に基づいて、地面RSの位置を算出する(ステップS204)。車体座標系におけるタイヤ6の接地面の位置は、ホイールローダ1の設計データから導出される既知データである。4つのタイヤ6のうち少なくとも3つのタイヤ6の接地面によって、車体座標系における地面RSの位置が特定される。
【0078】
なお、算出部86は、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)又は傾斜センサの検出データに基づいて、地面RSの位置を特定してもよい。また、ステレオカメラ22による計測範囲に地面RSが配置される場合、ステレオカメラ22の計測データに基づいて、地面RSの位置が算出されてもよい。また、ステレオカメラ22による計測範囲に地面RSが配置される場合において、タイヤ6の接地面に基づいて地面RSの位置を特定する場合、地面RSにおけるステレオカメラ22の計測点PIの位置データが除去されてもよい。また、計測点PIの位置データを除去する場合、高さ閾値が設定され、その高さ閾値に基づいて計測点PIの位置データが除去されてもよい。
【0079】
地山DSの斜面の位置と地面RSの位置とが算出された後、算出部86は、地山DSの斜面と地面RSとの境界DPの位置を算出する(ステップS205)。
【0080】
算出部86は、ステレオカメラ22から境界DPまでの距離又は作業機10の先端部12Bから境界DPまでの距離を算出する(ステップS206)。算出部86は、ステレオカメラ22から境界DPまでの距離に加え、車体座標系におけるステレオカメラ22の設置位置、作業機10の設置位置、作業機10の寸法、及び作業機10の角度等を用いて、作業機10の先端部12Bから境界DPまでの距離を算出する。
【0081】
作業機制御部87は、算出部86により算出された境界DPまでの距離に基づいて、作業機10を制御する(ステップS207)。
【0082】
以上のように、本実施形態において、第1アルゴリズムによる処理は、ステレオカメラ22の計測データから地山DSの三次元形状を特定し、地山DSの斜面を特定し、境界DPの位置を特定し、ホイールローダ1から境界DPまでの距離を算出することを含む。これにより、
図3を参照して説明したように、作業機制御部87は、ホイールローダ1が地山DSに接近するように前進している状態で、算出部86により算出された境界DPまでの距離に基づいて、バケット12の先端部12Bが境界DPに接近するように、ブーム11を下げ動作させるとともに、バケット12の角度を制御することができる。ホイールローダ1がさらに前進することにより、バケット12の先端部12Bが境界DPから地山DSに挿入される。これにより、地山DSがバケット12により掘削され、バケット12は、掘削物をすくい取ることができる。
【0083】
[第2アルゴリズムによる処理]
図9は、本実施形態に係るホイールローダ1の制御方法を示すフローチャートであって、ステレオカメラ22による運搬車両LSの計測データを第2アルゴリズムに基づいて処理する方法を示す。
図9に示す処理は、
図6を参照して説明したステップS4のサブルーチンに相当する。
【0084】
ホイールローダ1が作業機10による掘削された掘削物を積み込むために運搬車両LSに向かって前進する積込作業モードにおいて、ステレオカメラ22は、運搬車両LSを計測する。計測データ取得部81は、ステレオカメラ22から、運搬車両LSを計測したステレオカメラ22の計測データを取得する(ステップS401)。
【0085】
ステレオカメラ22は、運搬車両LSの表面の複数の計測点PIのそれぞれとの距離を計測する。
【0086】
図10は、本実施形態に係るステレオカメラ22により取得された運搬車両LSを含む画像データの一例を示す図である。なお、
図10においては、計測点PI(点データ)を1つしか記載されていないが、
図10に示す画像データの画素ごとに計測点PIが設定される。ステレオカメラ22は、画像データに対してステレオ処理を行うことにより距離画像を得ることができる。
【0087】
算出部86は、ステレオカメラ22の計測データ(画像データ)に基づいて、車体座標系におけるステレオカメラ22から各画素に写る運搬車両LSの表面における複数の計測点PIまでの距離を算出する。運搬車両LSの表面の位置は、車体座標系におけるステレオカメラ22から運搬車両LSの表面までの距離によって規定される。算出部86は、運搬車両LSの表面の複数の計測点PIのそれぞれまでの距離に基づいて、運搬車両LSの三次元形状を算出する(ステップS402)。
【0088】
次に、算出部86は、ステレオカメラ22からの距離と、その距離を示す計測点PIのデータ数との関係を示すヒストグラムを作成する(ステップS403)。
【0089】
図11は、ステレオカメラ22から計測点PIまでの距離と、各距離に存在する計測点PIのデータ数との関係を示すヒストグラムを示す模式図である。
【0090】
図10に示す画像データにおいては、例えば地面のような運搬車両LS以外の計測対象が含まれているため、
図11に示すように、幅広い距離においてヒストグラムのデータが存在する。一方、
図10に示す画像データにおいては、運搬車両LSの領域が占める割合が大きい。そのため、ヒストグラムにおいて、ステレオカメラ22から運搬車両LSの計測点PIまでの距離においてピークが立つ。算出部86は、ピークが立つ距離をステレオカメラ22から運搬車両LSまでの距離であると判定する。そして、算出部86は、ヒストグラムに基づいて、ホイールローダ1から運搬車両LSまでの距離を算出する(ステップS404)。
【0091】
作業機制御部87は、算出部86により算出された運搬車両LSまでの距離に基づいて、作業機10を制御する(ステップS405)。
【0092】
以上のように、本実施形態において、第1アルゴリズムによる処理は、ステレオカメラ22の計測データから、ステレオカメラ22からの距離と計測点PIのデータ数との関係を示すヒストグラムを作成し、ヒストグラムにおいてピークが立つ距離を運搬車両LSまでの距離であると特定し、ホイールローダ1から運搬車両LSまでの距離を算出することを含む。これにより、
図4を参照して説明したように、作業機制御部87は、ホイールローダ1が運搬車両LSに接近するように前進している状態で、算出部86により算出された運搬車両LSまでの距離に基づいて、バケット12がベッセルBEの上端部よりも上方に配置されるように、且つ、バケット12に保持されている掘削物がバケット12からこぼれないように、バケット12の角度を制御しながら、ブーム11を上げ動作させることができる。ブーム11が上げ動作し、バケット12がベッセルBEの上方に配置された後、作業機制御部87は、バケット12がチルト動作するように、作業機10を制御する。これにより、バケット12から掘削物が排出され、ベッセルBEに積み込まれる。
【0093】
なお、本実施形態においては、三次元計測装置20としてステレオカメラ22が使用され、作業モードに応じて、第1アルゴリズムによる処理と第2アルゴリズムによる処理とが選択される例について説明した。三次元計測装置20としてレーザレーダ21が使用される場合も同様である。レーザレーダ21を用いる場合、作業モードに応じて、レーザレーダ21に適応する第1アルゴリズムによる処理とレーザレーダ21に適応する第2アルゴリズムによる処理とが選択される。
【0094】
[効果]
以上説明したように、本実施形態においては、三次元計測装置20の計測データを処理するアルゴリズムが、ホイールローダ1の作業モードに基づいて切り換えられる。これにより、作業モードに応じて作業対象が変化しても、作業対象に応じて適切なアルゴリズムが選択され、選択されたアルゴリズムに基づいてホイールローダ1から作業対象までの距離が算出される。
【0095】
作業現場においては、三次元計測装置20の計測対象は、例えば地山DSと運搬車両LSといったように形状の差異が大きい場合がある。また、作業機10の制御において必要な情報が作業対象によって異なる。例えば、作業対象が地山DSである場合、作業機10の制御において地山DSの安息角又は境界DPの位置が必要となる。作業対象が運搬車両LSである場合、作業機10の制御においてベッセルBEまでの距離及びベッセルBEの高さが必要となる。作業現場においては、三次元計測装置20は、形状又は必要な情報が異なる作業対象を順次計測する。形状及び作業機10の制御において必要な情報が異なる作業対象までの距離を高精度に算出するためには、作業対象に応じて異なるアルゴリズムを利用することが有効である。三次元計測装置20の計測データを処理するアルゴリズムが1つである場合、作業機10の制御において十分な精度で作業対象までの距離を算出することが困難となる可能性がある。
【0096】
本実施形態によれば、ホイールローダ1の作業モードが判定され、作業モードに応じて計測データを処理するアルゴリズムが選択される。そのため、作業対象が切り換わっても、その計測対象までの距離DSを高精度に算出することができる。すなわち、アルゴリズム選択部85によって異なるアルゴリズムが選択された場合、算出部86は、異なる作業対象に関するパラメータを算出し出力することができる。
【0097】
本実施形態においては、
図2を参照して説明したように、ホイールローダ1は、バケット12に掘削物が保持されていない状態で前進する動作(矢印M1参照)、バケット12に掘削物が保持されている状態で後進する動作(矢印M2参照)、バケット12に掘削物が保持されている状態で前進する動作(矢印M3参照)、及びバケット12に掘削物が保持されていない状態で後進する動作(矢印M4参照)を繰り返す。したがって、アルゴリズム選択部85は、掘削物判定部83の判定データ及び前後進判定部84の判定データに基づいて、記憶部82に記憶されている複数のアルゴリズムから、作業モードに応じた適切なアルゴリズムを選択することができる。
【0098】
本実施形態において、ホイールローダ1から地山DSまでの距離は、ホイールローダ1から地山DSと地面RSとの境界DPまでの距離を含む。これにより、
図3を参照して説明したように、制御装置80は、三次元計測装置20の計測データに基づいて、バケット12の先端部12Bが境界DPに接近するように、ブーム11を下げ動作させるとともに、バケット12の角度を制御することができる。
【0099】
本実施形態において、ホイールローダ1から運搬車両LSまでの距離は、ホイールローダ1から運搬車両LSの手前側表面までの距離を含む。これにより、
図4を参照して説明したように、制御装置80は、三次元計測装置20の計測データに基づいて、バケット12がベッセルBEの上端部よりも上方に配置されるように、且つ、バケット12に保持されている掘削物がバケット12からこぼれないように、バケット12の角度を制御しながら、ブーム11を上げ動作させることができる。また、制御装置80は、ブーム11が上げ動作し、バケット12がベッセルBEの上方に配置された後、バケット12がチルト動作するように、作業機10を制御することができる。
【0100】
[コンピュータシステム]
図12は、コンピュータシステム1000の一例を示すブロック図である。上述の制御装置80は、コンピュータシステム1000を含む。コンピュータシステム1000は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ1001と、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリ1002と、ストレージ1003と、入出力回路を含むインターフェース1004とを有する。上述の制御装置80の機能は、プログラムとしてストレージ1003に記憶されている。プロセッサ1001は、プログラムをストレージ1003から読み出してメインメモリ1002に展開し、プログラムに従って上述の処理を実行する。なお、プログラムは、ネットワークを介してコンピュータシステム1000に配信されてもよい。
【0101】
制御装置80を含むコンピュータシステム1000は、ホイールローダ1に搭載され作業対象の三次元形状を計測する三次元計測装置20の計測データを取得することと、ホイールローダ1の作業に応じて計測データを処理する特定のアルゴリズムを選択することと、選択されたアルゴリズムに基づいて計測データを処理して、作業対象に関するパラメータを算出することと、を実行することができる。
【0102】
[その他の実施形態]
なお、上述の実施形態においては、三次元計測装置20としてレーザレーダ21及びステレオカメラ22の両方がホイールローダ1に設けられることとした。レーザレーダ21及びステレオカメラ22の一方がホイールローダ1に設けられてもよい。また、三次元計測装置20は、作業対象の三次元形状及び作業対象との相対位置を計測できればよく、レーザレーダ21及びステレオカメラ22に限定されない。任意の三次元計測装置20を使用した場合においても、地山DSの計測データを処理するためのアルゴリズムと、運搬車両LSの計測データを処理するためのアルゴリズムとが選択されることにより、作業対象に関するパラメータ算出することができる。
【0103】
なお、上述の各実施形態において、ホイールローダ1が作業を実施する作業現場は、鉱山の採掘現場でもよいし、施工現場又は建設現場でもよい。
【0104】
なお、ホイールローダ1は、除雪作業に使用されてもよいし、農畜産業における作業に使用されてもよいし、林業における作業に使用されてもよい。
【0105】
なお、上述の各実施形態において、作業対象は、掘削対象及び積込対象に限られず、例えば盛土対象、整地対象、及び排土対象が含まれてもよい。また、作業モードは、掘削作業モードおよび積込作業モードに限られず、例えば盛土作業モード、整地作業モード、排土作業モード、除雪作業モード、待機モードが含まれてもよい。
【0106】
なお、上述の各実施形態において、算出部86は、地山DSに関するパラメータとして、ホイールローダ1から地山DSまでの距離、及び地山DSの安息角を算出することとした。算出部86は、地山DSに関する別のパラメータを算出してもよい。また、算出部86は、運搬車両LSにかするパラメータとして、ホイールローダ1から運搬車両LSまでの距離、及びベッセルBEの高さを算出することとした。算出部86は、運搬車両LSに関する別のパラメータを算出してもよい。
【0107】
なお、上述の実施形態において、バケット12は、複数の刃を有してもよいし、ストレート状の刃先を有してもよい。
【0108】
なお、ブーム11の先端部に連結される作業部材は、バケット12でなくてもよく、除雪作業に使用されるスノープラウ又はスノーバケットでもよいし、農畜産業の作業において使用されるベールグラブ又はフォークでもよいし、林業の作業において使用されるフォーク又はバケットでもよい。
【0109】
なお、作業機械は、ホイールローダに限定されず、例えば油圧ショベル又はブルドーザのような作業機を有する作業機械に上述の実施形態で説明した制御装置80及び制御方法を適用することができる。
【0110】
なお、上述の実施形態においては、第1作業モードが掘削作業モードであり、第2作業モードが積込作業モードであることとした。作業モードは、掘削作業モード及び積込作業モードに限定されない。また、上述の実施形態においては、作業モードは第1作業モード及び第2作業モードの2種類の作業モードであることとしたが、3種類以上の作業モードでもよい。
【0111】
上述の実施形態においては、ホイールローダ1に搭載される計測装置が三次元計測装置20であり、計測データ取得部81が取得する計測データが作業対象の三次元形状を示す三次元データであることとしたが、これに限定されない。計測装置として、作業対象を計測する三次元計測装置20のみならず、作業対象を撮影する写真計測装置であるカメラ、及び作業対象の位置を計測する位置計測装置がホイールローダ1に搭載されてもよい。また、計測装置が、上述の掘削物判定用センサ51を含んでもよい。この場合、計測データ取得部81が取得する計測データは、作業対象の三次元データのみならず、カメラによって撮影された作業対象の画像データ、位置計測装置によって計測された作業対象の位置データ、及び掘削物判定用センサ51の検出データの少なくとも一つを含む。
【0112】
なお、上述の実施形態においては、算出部86は、ホイールローダ1から作業対象までの距離として、バケット12の先端部12Bから作業対象までの距離を算出することとした。算出部86は、バケット12の任意の部位(例えば底面部)から作業対象までの距離を算出してもよいし、作業機10の任意の部位から作業対象までの距離を算出してもよいし、車体2の任意の部位から作業対象までの距離を算出してもよい。
【0113】
上述の実施形態においては、アルゴリズム選択部85は、掘削物判定部83の判定データ及び前後進判定部84の判定データに基づいて、ホイールローダ1の作業モードを判定したり、特定のアルゴリズムを選択したりすることとした。アルゴリズム選択部85は、掘削物判定部83の判定データ及び前後進判定部84の判定データとは異なるその他のデータに基づいて、作業モードの判定又はアルゴリズムの選択を行ってもよい。その他のデータとして、例えば三次元計測装置20の計測データである作業対象の三次元データ、掘削物判定用センサ51の検出データ、ホイールローダ1に搭載されたカメラによって撮像された作業対象の画像データ、及びホイールローダ1に搭載された位置計測装置によって計測された作業対象の位置データの少なくとも一つが例示される。
【0114】
上述の実施形態において、アルゴリズム選択部85は、作業モードを判定していたが、その形態に限られず、例えば、作業対象を何らかの手法により判定し、判定された作業対象に応じてアルゴリズムを選択してもよい。作業対象を判定する手法として、三次元計測装置20の計測データである作業対象の三次元データ、掘削物判定用センサ51の検出データ、ホイールローダ1に搭載されたカメラによって撮像された作業対象の画像データ、及びホイールローダ1に搭載された位置計測装置によって計測された作業対象の位置データの少なくとも一つを用いて作業対象を判定する手法が例示される。
【0115】
上述したように、ホイールローダ1の作業は、ホイールローダ1の作業モード及びホイールローダ1の作業対象に対する動作の少なくとも一方を含む概念である。アルゴリズム選択部85は、ホイールローダ1の作業に応じて、アルゴリズムを選択することができる。アルゴリズム選択部85は、ホイールローダ1の作業モードに応じてアルゴリズムを選択したり、及びホイールローダ1の作業対象に応じてアルゴリズムを選択したりすることができる。作業モードとは、ホイールローダ1が所定の動作を行う状態を含む。作業モードは、上述したような掘削作業モード又は積込作業モードのような単一の作業モードに加え、複数の作業モードを包括した作業モードも含む。複数の作業モードを包括した作業モードとして、上述の掘削作業モードM1、地山DSから離れるモードM2、積込作業モードM3、及び運搬車両LSから離れるモードM4の一連の作業モードを含む「Vシェープ作業モード」が例示される。
【0116】
なお、上述の実施形態においては、ホイールローダ1のトランスミッション装置30及び走行操作装置40は、運転者の操作により駆動されることした。トランスミッション制御部88及び走行制御部89が、トランスミッション装置30及び走行装置4を自動制御してもよい。トランスミッション制御部88及び走行制御部89は、算出部86により算出されたホイールローダ1から作業対象までの距離に基づいて、トランスミッション装置30及び走行装置4を制御することができる。
【符号の説明】
【0117】
1…ホイールローダ(作業機械)、2…車体、2F…車体前部、2R…車体後部、3…運転台、4…走行装置、4A…駆動装置、4B…ブレーキ装置、4C…操舵装置、5…車輪、5F…前輪、5R…後輪、6…タイヤ、6F…前タイヤ、6R…後タイヤ、9…関節機構、10…作業機、11…ブーム、12…バケット、12B…先端部、13…ブームシリンダ、14…バケットシリンダ、15…ベルクランク、16…リンク、20…三次元計測装置、21…レーザレーダ、22…ステレオカメラ、30…トランスミッション装置、40…走行操作装置、41…シフトレバー、51…掘削物判定用センサ、52…回転センサ、80…制御装置、81…計測データ取得部、82…記憶部、83…掘削物判定部、84…前後進判定部、85…アルゴリズム選択部、86…算出部、87…作業機制御部、88…トランスミッション制御部、89…走行制御部、BE…ベッセル(積込対象、作業対象)、DS…地山(掘削対象、作業対象)、LS…運搬車両、RS…地面。