(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】電子部品搭載基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20220915BHJP
H01L 23/13 20060101ALI20220915BHJP
H01L 23/15 20060101ALI20220915BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01L21/52 D
H01L23/12 C
H01L23/14 C
H01L23/14 M
H01L21/52 B
(21)【出願番号】P 2018118419
(22)【出願日】2018-06-22
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】506365131
【氏名又は名称】DOWAメタルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】結城 整哉
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-130989(JP,A)
【文献】特開平06-252182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 23/13
H01L 23/15
H01L 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板の一方の面に電子部品が搭載
されるとともに他方の面にセラミックス基板の一方の面が接合された電子部品搭載基板の製造方法において、
他方の面にセラミックス基板の一方の面が接合された金属板の一方の面に、ニッケル皮膜とパラジウム皮膜と銀皮膜をこの順で形成し、銀皮膜上に銀ペーストを塗布してその上に電子部品を配置した後、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層によって電子部品を金属板の一方の面に接合することを特徴とする、電子部品搭載基板の製造方法。
【請求項2】
前記ニッケル皮膜の厚さが0.5~10μmであることを特徴とする、請求項1に記載の電子部品搭載基板の製造方法。
【請求項3】
前記パラジウム皮膜の厚さが0.05~3μmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の電子部品搭載基板の製造方法。
【請求項4】
前記銀皮膜の厚さが0.05~5μmであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の電子部品搭載基板の製造方法。
【請求項5】
前記電子部品の前記金属板の一方の面に接合される面が、金、銀、銅およびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属またはこれらの合金で被覆されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の電子部品搭載基板の製造方法。
【請求項6】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板の一方の面に電子部品が搭載
されるとともに他方の面にセラミックス基板の一方の面が接合された電子部品搭載基板において、
他方の面にセラミックス基板の一方の面が接合された金属板の一方の面に、ニッケル皮膜とパラジウム皮膜と銀皮膜がこの順で形成され、銀皮膜上に銀接合層により電子部品が接合されていることを特徴とする、電子部品搭載基板。
【請求項7】
前記ニッケル皮膜の厚さが0.5~10μmであることを特徴とする、請求項
6に記載の電子部品搭載基板。
【請求項8】
前記パラジウム皮膜の厚さが0.05~3μmであることを特徴とする、請求項
6または
7に記載の電子部品搭載基板。
【請求項9】
前記銀皮膜の厚さが0.05~5μmであることを特徴とする、請求項
6乃至
8のいずれかに記載の電子部品搭載基板。
【請求項10】
前記電子部品の前記金属板の一方の面に接合される面が、金、銀、銅およびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属またはこれらの合金で被覆されていることを特徴とする、請求項
6乃至
9のいずれかに記載の電子部品搭載基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品搭載基板およびその製造方法に関し、特に、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板がセラミックス基板に接合した金属-セラミックス接合基板の金属板の一方の面に半導体チップなどの電子部品が取り付けられた電子部品搭載基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車、電車、工作機械などの大電流を制御するために、パワーモジュールが使用されている。従来のパワーモジュールでは、ベース板と呼ばれている金属板または複合材の一方の面に金属-セラミックス絶縁基板が固定され、この金属-セラミックス絶縁基板の金属板上に半導体チップが半田付けにより固定されている。
【0003】
近年、銀微粒子を含む銀ペーストを接合材として使用し、被接合物間に接合材を介在させ、被接合物間に圧力を加えながら所定時間加熱して、接合材中の銀を焼結させて、(銀めっきされた銅材などの)被接合物同士を接合することが提案されており(例えば、特許文献1参照)、このような接合材を半田の代わりに使用して、金属-セラミックス絶縁基板の金属板上に半導体チップなどの電子部品を固定する試みがなされている。
【0004】
また、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板の一方の面にニッケルまたはニッケル合金のめっき皮膜を形成し、その上に銀接合層により電子部品を接合することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-80147号公報(段落番号0014-0020、0085)
【文献】特開2014-130989号公報(段落番号0007-0011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように、銀めっきされた銅材に接合材により電子部品を接合したり、特許文献2のように、ニッケルまたはニッケル合金でめっきされた金属板に銀接合層により電子部品を接合する場合、電子部品としてパワー半導体を使用して、そのパワー半導体のオンとオフを数万回以上繰り返すパワーサイクル試験を行うと、パワー半導体が金属板から剥離するおそれがある。
【0007】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板上に電子部品を搭載した電子部品搭載基板において、パワーサイクル試験を行っても電子部品が金属板から剥離するのを防止することができる、電子部品搭載基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板の一方の面に電子部品が搭載された電子部品搭載基板の製造方法において、金属板の一方の面に、ニッケル皮膜とパラジウム皮膜と銀皮膜をこの順で形成し、銀皮膜上に銀ペーストを塗布してその上に電子部品を配置した後、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層によって電子部品を金属板の一方の面に接合することにより、パワーサイクル試験を行っても電子部品が金属板から剥離するのを防止することができる、電子部品搭載基板およびその製造方法を提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明による電子部品搭載基板の製造方法は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板の一方の面に電子部品が搭載された電子部品搭載基板の製造方法において、金属板の一方の面に、ニッケル皮膜とパラジウム皮膜と銀皮膜をこの順で形成し、銀皮膜上に銀ペーストを塗布してその上に電子部品を配置した後、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層によって電子部品を金属板の一方の面に接合することを特徴とする。
【0010】
この電子部品搭載基板の製造方法において、ニッケル皮膜の厚さが0.5~10μmであるのが好ましく、パラジウム皮膜の厚さが0.05~3μmであるのが好ましく、銀皮膜の厚さが0.05~5μmであるのが好ましい。また、電子部品の金属板の一方の面に接合される面が、金、銀、銅およびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属またはこれらの合金で被覆されているのが好ましい。また、金属板の他方の面にセラミックス基板の一方の面を接合するのが好ましい。
【0011】
また、本発明による電子部品搭載基板は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板の一方の面に電子部品が搭載された電子部品搭載基板において、金属板の一方の面に、ニッケル皮膜とパラジウム皮膜と銀皮膜がこの順で形成され、銀皮膜上に銀接合層により電子部品が接合されていることを特徴とする。
【0012】
この電子部品搭載基板において、ニッケル皮膜の厚さが0.5~10μmであるのが好ましく、パラジウム皮膜の厚さが0.05~3μmであるのが好ましく、銀皮膜の厚さが0.05~5μmであるのが好ましい。また、電子部品の金属板の一方の面に接合される面が、金、銀、銅およびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属またはこれらの合金で被覆されているのが好ましい。また、金属板の他方の面にセラミックス基板の一方の面が接合されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板上に電子部品を搭載した電子部品搭載基板において、パワーサイクル試験を行っても電子部品が金属板から剥離するのを防止することができる、電子部品搭載基板およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による電子部品搭載基板の実施の形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明による電子部品搭載基板およびその製造方法の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1および
図2に示すように、本発明による電子部品搭載基板の実施の形態では、平面形状が略矩形の金属板(電子部品搭載用金属板)10の一方の主面に、ニッケル膜12とパラジウム皮膜14と銀皮膜16がこの順に形成され、この銀皮膜16の表面に(銀の焼結体を含む)銀接合層18により電子部品20が接合されている。また、金属板10の他方の主面に、平面形状が略矩形のセラミックス基板22の一方の主面を接合し、このセラミックス基板22の他方の主面に、平面形状が略矩形の放熱用金属板(金属ベース板)24を接合してもよい。
【0017】
電子部品搭載用金属板10および放熱用金属板24は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、導電性や放熱性の観点から、好ましくは99.5質量%以上、さらに好ましくは99.9質量%のアルミニウムを含むのが好ましい。
【0018】
セラミックス基板22は、電子部品としてパワー半導体を搭載して大電流・高電圧が負荷された場合にも優れた絶縁性を発揮するセラミックス基板であるのが好ましく、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al2O3)、窒化珪素(SiN)を主成分とするセラミックス基板であるのが好ましい。
【0019】
電子部品搭載用金属板10の一方の主面(の少なくとも銀接合層18により電子部品20が接合される部分)には、ニッケルまたはニッケル合金からなるニッケル皮膜12が形成されている。このニッケル皮膜12の厚さは、0.5~10μmであるのが好ましい。このニッケル膜12が薄過ぎると、パラジウム皮膜14との密着性が低下し、厚過ぎると導電性が低下し、製造コストが増加する。また、ニッケル皮膜12は、ニッケルめっき皮膜または(ニッケルを85質量%以上含有する)ニッケル合金めっき皮膜であるのが好ましく、電気めっきまたは無電解めっきにより形成することができる。ニッケル合金めっき皮膜の場合、Ni-P合金めっき皮膜でもよく、Ni-B合金めっき皮膜でもよい。Ni-P合金めっき皮膜の場合、パラジウム皮膜14との良好な密着性を得るために、P濃度を6~11質量%にするのが好ましく、6~8質量%にするのがさらに好ましい。このP濃度は、めっき液により調整することができる。
【0020】
ニッケル皮膜12の表面には、パラジウムまたはパラジウム合金からなるパラジウム皮膜14が形成されている。このパラジウム皮膜14をニッケル皮膜12と銀皮膜16の間に設けることにより、ニッケル皮膜12と銀皮膜16の密着性を向上させることができる。パラジウム皮膜14の厚さは、0.05~3μmであるのが好ましい。パラジウム皮膜14が薄過ぎると、ニッケル皮膜12や銀皮膜16との密着性が低下し、厚過ぎると高価なパラジウムの使用量が増えるので製造コストが増加する。また、パラジウム皮膜14は、パラジウムめっき皮膜または(パラジウムを95質量%以上含有する)パラジウム合金めっき皮膜であるのが好ましく、電気めっきまたは無電解めっきにより形成することができる。
【0021】
パラジウム皮膜14の表面には、銀または銀合金からなる銀皮膜16が形成されている。この銀皮膜16は、銀接合層18との密着性を向上させることができる。銀皮膜16の厚さは、0.05~5μmであるのが好ましい。銀皮膜16が薄過ぎると、銀接合層18との密着性が低下し、厚過ぎると製造コストが増大する。また、銀皮膜16は、銀めっき皮膜または(銀を95質量%以上含有する)銀合金めっき皮膜であるのが好ましく、電気めっきまたは無電解めっきにより形成することができる。
【0022】
また、電子部品20の金属板10の一方の主面に接合される面が、金、銀、銅およびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属またはこれらの合金のように、銀接合層18と接合可能な金属で被覆されているのが好ましく、金、銀およびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属またはこれらの合金で(電気めっきまたは無電解めっきにより)めっきされているのが好ましい。
【0023】
本発明による電子部品搭載基板の製造方法の実施の形態では、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板10の一方の主面に電子部品20が搭載された電子部品搭載基板の製造方法において、金属板10の一方の主面(の少なくとも銀ペーストを塗布する部分)に、ニッケル皮膜12とパラジウム皮膜14と銀皮膜16をこの順で形成し、銀皮膜16上に銀ペーストを塗布してその上に電子部品20を配置した後、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層18を形成し、この銀接合層18によって電子部品20を金属板10の一方の面に接合する。
【0024】
なお、銀ペースト中の銀の焼結は、200~500℃に加熱することによって行うのが好ましく、220~400℃に加熱することによって行うのがさらに好ましい。この焼結の際の加熱時間は、1~10分間であるのが好ましい。また、この焼結は、加圧しないで加熱することによって行うことができるが、金属板10に対して電子部品20を加圧しながら加熱することによって行ってもよい。この焼結の際に加圧する圧力は、10MPa以下でよく、2~10MPaであるのが好ましく、3~8MPaであるのがさらに好ましい。
【0025】
また、金属板10の他方の主面に、平面形状が略矩形のセラミックス基板22の一方の主面を接合し、このセラミックス基板22の他方の主面に、平面形状が略矩形の放熱用金属板(金属ベース板)24を接合してもよい。この場合、これらの金属板10とセラミックス基板22の間およびセラミックス基板22と金属ベース板24の間の接合の後、金属板10の一方の主面(電子部品20が接合される面)に、ニッケル皮膜12とパラジウム皮膜14と銀皮膜16をこの順で形成し、銀皮膜16上に銀ペーストを塗布して電子部品20を配置した後、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層18を形成し、この銀接合層18によって電子部品20を金属板10の一方の主面に接合すればよい。なお、金属板10とセラミックス基板22の間およびセラミックス基板22と金属ベース板24の間の接合では、(図示しない)鋳型内にセラミックス基板22を配置した後、セラミックス基板22の両主面に接触するようにアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を注湯した後に溶湯を冷却して固化させることにより、セラミックス基板22の各々の主面に金属板10および金属ベース板24を形成して直接接合させるのが好ましい。
【0026】
また、銀ペーストとして、500℃以下の温度で焼結可能な銀微粒子を含むペーストを使用することができ、炭素数8以下(好ましくは6~8)の有機化合物で被覆された平均一次粒子径1~200nmの銀微粒子が分散媒(好ましくは極性溶媒)に分散した接合材(例えば、DOWAエレクトロニクス株式会社製のPA-HT-1503M-C)を使用するのが好ましい。このような銀微粒子が分散した分散媒に平均一次粒径(D50径)が0.5~3.0μmの銀粒子がさらに分散した接合材(例えば、DOWAエレクトロニクス株式会社製のPA-HT-1001L)を使用してもよい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明による電子部品搭載基板およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0028】
鋳型内に45mm×25mm×0.6mmの大きさのAlN(窒化アルミニウム)からなるセラミックス基板を配置し、このセラミックス基板の両主面に接触するように99.9質量%のアルミニウムの溶湯を注湯した後に溶湯を冷却して固化させることにより、セラミックス基板の各々の主面に45mm×23mm×0.4mmの大きさの(電子部品搭載用)金属板と45mm×23mm×0.4mmの大きさの(放熱用)金属ベース板を形成して、それぞれセラミックス基板の主面に直接接合させ、金属-セラミックス接合基板を作製した。
【0029】
次に、めっきの前処理として、脱脂、化学研磨および酸洗を行い、ダブルジンケート処理(2回亜鉛置換)を行った後、金属-セラミックス接合基板を無電解Ni-Pめっき液(上村工業株式会社製のニムデンNPR-4)に浸漬することによって、(電子部品搭載用)金属板の表面に厚さ4μmの無電解Ni-P合金めっき皮膜(P濃度が7質量%で残部がNiの無電解Ni-Pめっき皮膜)を形成した。
【0030】
次に、このNi-Pめっき皮膜が形成された金属-セラミックス接合基板を、無電解Ni-P合金めっきに対して自己触媒性を有する金属のめっき液として、自己触媒還元型無電解パラジウムめっき液(上村工業株式会社製のアルタレアTDP-30-MW)に浸漬することによって、Ni-P合金めっき皮膜上に厚さ0.1μmのパラジウムめっき皮膜を形成した。
【0031】
次に、このパラジウムめっき皮膜が形成された金属-セラミックス接合基板を、無電解銀めっき液(上村工業株式会社製のアルジェントRSD-4)に浸漬することによって、パラジウムめっき皮膜上に厚さ0.1μmの銀めっき皮膜を形成した。
【0032】
次に、(電子部品搭載用)金属板上の銀めっき皮膜の表面の電子部品搭載部分に、銀ペースト(NBE Tech,LLC社製のNano Tach)をスクリーン印刷により塗布し、その上に電子部品として底面(裏面)が銀めっきされた(縦7.19mm×横6.74mm×厚さ0.07mmの大きさの)パワー半導体シリコンチップ(Fairchild社製のSi-IGBTチップ、型番PCFG75N60SMW)を配置し、大気中において、加圧しないで、250℃で10分間加熱することにより、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層により(電子部品搭載用)金属板にシリコンチップを接合した。なお、この接合後の銀接合層の厚さは約30μmであった。
【0033】
このようにして作製した電子部品搭載基板について、シリコンチップの電極に試験電源を接続し、付加電流を3A、付加電圧を11Vに設定して、50秒間電流を流した後に40秒間電流を流さないようにオン/オフを繰り返すサイクル(電流をオンにすることによりシリコンチップが加熱されて50秒後にシリコンチップの温度が約175℃まで上昇し、電流をオフにすることによち40秒後にシリコンチップの温度が約45℃まで降下するサイクル(ΔT=130℃))を20,000サイクル行うパワーサイクル試験を行った。なお、パワー半導体シリコンチップのゲート-エミッタ間の電圧Vgeとそのシリコンチップの温度との間に線形の関係があることから、予めその線形の関係を求めておき、ゲート-エミッタ間の電圧Vgeからシリコンチップの温度を換算した。このパワーサイクル試験後のシリコンチップの温度の上昇(過渡熱抵抗の上昇)は、初期設定値(175℃)と比べて105%未満であり、シリコンチップに電気的な異常は生じなかった。
【0034】
また、作製した電子部品搭載基板について、(電子部品搭載用)金属板とシリコンチップとの接合部を超音波探傷装置(SAT)(日立建機ファインテック株式会社製のFS100II)により観察したところ、銀接合層にボイドなどの欠陥は確認されず、シリコンチップの剥離も認められなかった。
【0035】
また、比較例として、実施例1の無電解Ni-Pめっき液に代えて、無電解Ni-Pめっき液(上村工業株式会社製のニムデンSX)を使用して無電解Ni-P合金めっき皮膜(リン濃度が10質量%で残部がニッケルの無電解Ni-Pめっき皮膜)を形成し、実施例1の自己触媒還元型無電解パラジウムめっき液に浸漬することによってパラジウムめっき皮膜を形成する代わりに、パラジウム活性処理液(上村工業株式会社製のアクセマルタMPD-22)に浸漬することによって活性化処理を行った以外は、実施例1と同様の方法により、電子部品搭載基板を作製した。この電子部品搭載基板について、実施例1と同様のパワーサイクル試験を行ったところ、9,000サイクル経過後に、ゲート-エミッタ間の電圧Vgeにノイズが生じ、シリコンチップの温度の上昇(過渡熱抵抗の上昇)が初期設定値(175℃)と比べて105%を超えたため、シリコンチップに電気的な異常が生じたと判断した。また、作製した電子部品搭載基板について、(電子部品搭載用)金属板とシリコンチップとの接合部を実施例と同様の超音波探傷装置(SAT)により観察したところ、銀めっき皮膜の一部がニッケルめっき皮膜から剥離していることが確認され、シリコンチップに触れるとシリコンチップが簡単に脱落した。
【符号の説明】
【0036】
10 電子部品搭載用金属板
12 ニッケル皮膜
14 パラジウム皮膜
16 銀皮膜
18 銀接合層
20 電子部品
22 セラミックス基板
24 放熱用金属板(金属ベース板)