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  • -ダンプトラックのテールゲート機構 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】ダンプトラックのテールゲート機構
(51)【国際特許分類】
   B60P 1/267 20060101AFI20220915BHJP
   B60P 1/26 20060101ALI20220915BHJP
   B62D 33/023 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B60P1/267 B
B60P1/26 F
B62D33/023 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018153607
(22)【出願日】2018-08-17
(65)【公開番号】P2020026252
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】594122911
【氏名又は名称】亀山 賢次
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀山 賢次
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-098080(JP,U)
【文献】実開昭54-026217(JP,U)
【文献】特開2010-070103(JP,A)
【文献】特開昭54-035916(JP,A)
【文献】特開昭56-138030(JP,A)
【文献】実開昭50-033412(JP,U)
【文献】実公昭62-001784(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/26 - 1/267
B62D 33/023-33/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台の後方傾動に応じてテールゲートが下開きし、開口部から積荷を重力によって排出するダンプトラックのテールゲート機構において、
前記荷台は、荷台後端下部の荷台傾動軸を中心としてシャシフレームに対して水平位置から最大後方傾動位置まで傾動可能に設置され
前記荷台の後端面形状を、荷台上端から荷台底面側に向かうほど車両後方の後端面位置になる傾斜後端面による形状にし、
前記テールゲートは、前記荷台が水平状態であるときに前記傾斜後端面に接触閉鎖し、前記荷台が後方傾動するときに荷台傾斜角度に応じてゲート下端面が下開きするように、前記荷台に対してヒンジピンにより回動可能に吊り下げ支持され
前記ヒンジピンは、前記荷台の後方上端部に設けられた荷台側支持ブラケットと、前記テールゲートのゲート上端部に設けられたゲート側支持ブラケットとを貫通して取り付けられ
前記ヒンジピンの位置を、前記荷台の後方上端角位置より後方側へオフセットさせた位置であって、かつ、前記荷台の上端面より上方側へオフセットさせた位置に設定し、
前記ヒンジピンの後方側へのオフセット量を、前記荷台の最後端位置を上限として設定する
ことを特徴とするダンプトラックのテールゲート機構。
【請求項2】
請求項1に記載されたダンプトラックのテールゲート機構において、
前記テールゲートと前記ゲート側支持ブラケットを、外力を加えることなく前記ヒンジピンにより重力にしたがって吊り下げ支持した場合、前記テールゲートと垂直線とがなす角度を第1ゲート傾斜角度というとき、
前記第1ゲート傾斜角度が、前記テールゲートを開放したときに下方に向かって開き角度になる位置に前記ヒンジピンを設定する
ことを特徴とするダンプトラックのテールゲート機構。
【請求項3】
請求項2に記載されたダンプトラックのテールゲート機構において、
前記テールゲートと前記ゲート側支持ブラケットを、外力を加えることなく前記ヒンジピンにより重力にしたがって吊り下げ支持した場合、前記テールゲートと水平線とがなす荷台側角度を第2ゲート傾斜角度というとき、
前記第2ゲート傾斜角度が、前記荷台の前記傾斜後端面による後端面傾斜角度以上になる位置に前記ヒンジピンを設定する
ことを特徴とするダンプトラックのテールゲート機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台の後方傾動に応じてテールゲートが下開きし、開口部から土砂等の積荷を重力によって排出するダンプトラックのテールゲート機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダンプトラックのテールゲート開閉装置としては、荷台(ベッセル)の両側板の車両後方の上端位置に、テールゲートの上端部をヒンジピンにより回動可能に支持するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ダンプトラックにおけるテールゲートの開閉機構としては、シャーシーと荷台(ベッセル)とテールゲートとに跨って荷台の傾動に連動するリンク機構を設け、テールゲートを大きく開放できるものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平02-98080号公報
【文献】特開平08-164783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された装置にあっては、荷台の後端面形状を、荷台上端から荷台底面側に向かうほど車両後方の後端面位置になる傾斜後端面による形状にしている。このため、荷台の後方傾動に応じてテールゲートを下開きするとき、荷台傾斜角度が所定角度に達するまでは荷台の傾斜後端面がテールゲートにより閉じられたままとなり、開口部の開口面積が狭くなる。この結果、開口部から土砂等の積荷を重力により排出する際、積荷排出の作業効率が低下してしまう、という問題があった。
【0005】
一方、特許文献2に記載された機構にあっては、荷台の後端面形状を、荷台上端から荷台底面側に向かうほど車両後方の後端面位置になる傾斜後端面による形状にしているが、荷台の後方傾動に連動するリンク機構によりテールゲートが大きく開放方向に変位する。しかし、シャーシーと荷台とテールゲートとに跨って介装されたリンク機構が、荷台側板の両側スペースに配置された大掛かりな機構になる。このため、部品点数が増大し、コスト増や積荷容量縮小を招いてしまう、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、荷台が傾斜後端面形状であるにもかかわらず、部品点数を増大させない簡単な構成によって荷台の後方傾動時に積荷を排出する広い開口面積を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、荷台の後方傾動に応じてテールゲートが下開きし、開口部から積荷を重力によって排出するダンプトラックのテールゲート機構において、
荷台の後端面形状を傾斜後端面形状にし、テールゲートを吊り下げ支持するヒンジピンの位置を、荷台の後方上端角位置より後方側へオフセットさせた位置であって、かつ、荷台の上端面より上方側へオフセットさせた位置に設定する。ヒンジピンの後方側へのオフセット量を、荷台の最後端位置を上限として設定する。
【発明の効果】
【0008】
この結果、荷台が傾斜後端面形状であるにもかかわらず、簡単な構成によって荷台の後方傾動時に積荷を重力により排出する広い開口面積を確保することができる。さらに、車両後方側へ突出するテールゲート機構を採用しながらも、シャシフレームや荷台へ影響を及ぼすことが無く、シャシフレームや荷台の設計変更を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1のテールゲート機構が適用されたトラクタ&トレーラ車のトレーラを示す全体側面図である。
図2】実施例1のテールゲート機構を示すトレーラ後部拡大側面図である。
図3】実施例1のテールゲート機構におけるヒンジピン設定構成を示す側面図である。
図4】実施例1のテールゲート機構におけるヒンジピン設定構成を示す側面図である。
図5】比較例1のテールゲート機構を示すトレーラ後部拡大図である。
図6】比較例1のテールゲート機構において荷台の後方傾動時における開口部形成作用を示す拡大側面図である。
図7】比較例2のテールゲート機構を示すトレーラ後部拡大図である。
図8】比較例2のテールゲート機構において荷台の後方傾動時における開口部形成作用を示す拡大側面図である。
図9】実施例1のテールゲート機構において荷台後方傾動時のテールゲート開放作用を示す全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のダンプトラックのテールゲート機構を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
実施例1におけるテールゲート機構は、エンジンを搭載したトラクタ(牽引車)と、荷台を設けたトレーラ(被牽引車)との切り離しができる連結トラックであるトラクタ&トレーラ車(ダンプトラックの一例)に適用したものである。以下、実施例1の構成を、「全体構成」、「テールゲート機構の詳細構成」に分けて説明する。
【0012】
[全体構成]
図1は、実施例1のテールゲート機構が適用されたトラクタ&トレーラ車のトレーラを示す。以下、図1に基づいて全体構成を説明する。
【0013】
トレーラTは、図1に示すように、シャシフレーム1の下面側に弾性支持されたタイヤ2と、シャシフレーム1の上面側に後方傾動可能に架装された荷台3と、荷台3の後端面に配置されたテールゲート4と、を備えている。
【0014】
シャシフレーム1は、トレーラTの車体構造体であり、フレーム前部に延設されたトラクタ連結部1aと、荷台3を架装するフレーム本体部1bと、フレーム後端位置に設けられたリヤバンパー部1cと、を有する。
【0015】
タイヤ2は、第1タイヤ2aと第2タイヤ2bと第3タイヤ2cを有し、側面視で車両前後方向に3個連なって設けられた3連タイヤである。各タイヤ2a,2b,2cと、シャシフレーム1との間には、図外のリーフスプリングによる車軸懸架式サスペンションが介装される。
【0016】
荷台3は、荷台後端下部の荷台傾動軸Sを中心とし、リヤダンプ方式によりシャシフレーム1に対して図1に示す水平位置から最大後方傾動位置(図9参照)まで傾動可能に設置されている。この荷台3は、左右一対の側板3aと、前端板3bと、底板3cとを一体に有する。ここで、荷台3を構成する左右一対の側板3aの後端面形状は、図1に示すように、荷台上端から荷台底面側に向かうほど車両後方の後端面位置になる傾斜後端面3dによる形状にしている。
【0017】
テールゲート4は、荷台3に対してヒンジピン5により回動可能に吊り下げ支持され、荷台3が図1に示すように水平状態であるときに傾斜後端面3dに接触閉鎖する。荷台3が後方傾動するときに荷台傾斜角度θcに応じてゲート下端面が下開きする。
【0018】
即ち、荷台3が水平状態であるとき、左右一対の側板3aと前端板3bと底板3cとテールゲート4によって荷物を積む箱状の部分が構成される。そして、荷台3の後方傾動に応じてテールゲート4が下開きし、開口部から積荷を重力によって排出する。以下、テールゲート4のヒンジピン5による吊り下げ支持機構を“テールゲート機構A”という。
【0019】
なお、図1において、6はシャシフレーム1の下面に配置された油圧ユニットであり、7はシャシフレーム1と荷台3の前端部とを繋ぎ、油圧伸長により荷台3を後方傾動させる油圧ダンプ機構である。
【0020】
[テールゲート機構の詳細構成]
図2は、実施例1のテールゲート機構Aを示す。図3及び図4は、実施例1のテールゲート機構Aにおけるヒンジピン設定構成を示す。以下、図2図4に基づいてテールゲート機構Aの詳細構成を説明する。
【0021】
テールゲート機構Aは、図2に示すように、テールゲート4と、ヒンジピン5と、荷台側支持ブラケット8と、ゲート側支持ブラケット9と、を備える。
【0022】
ヒンジピン5は、荷台3の後方上端部に設けられた荷台側支持ブラケット8と、テールゲート4のゲート上端部に設けられたゲート側支持ブラケット9とを車幅方向に貫通して取り付けられる。
【0023】
荷台側支持ブラケット8は、左右一対の側板3aの後方上端面から突出して設けられ、図2に示すように、荷台固定位置から垂直に延びた後、車両後方側に所定角度により傾斜しながら延びる側面視形状とされる。
【0024】
ゲート側支持ブラケット9は、テールゲート4のゲート上端部の左右位置に設けられ、図2に示すように、ゲート上面とゲート外側面に跨るゲート固定位置から車両後方側に所定角度により傾斜しながら延びる側面視形状とされる。なお、図2に示すテールゲート4の閉鎖位置においては、荷台側支持ブラケット8の傾斜角度が、ゲート側支持ブラケット9の傾斜角度より大きく設定される。
【0025】
ヒンジピン5の位置は、図2に示すように、荷台3の後方上端角位置Pより後方側へオフセットさせた位置であって、かつ、荷台3の上端面Uより上方側へオフセットさせた位置に設定される。
【0026】
ここで、荷台3の後方上端角位置Pより後方側へオフセットさせたヒンジピン5の位置は、後方側へのオフセット量Loffを、荷台3の最後端位置Lendを上限として設定される。また、荷台3の上端面Uより上方側へオフセットさせたヒンジピン5の位置は、上方側へのオフセット量Hoffを、荷台3の高さ制限位置Hlimitを上限として設定される。
【0027】
なお、図2において、10は、テールゲート4を荷台3の傾斜後端面3dに押し当てて閉鎖したとき、閉鎖状態でテールゲート4を荷台3に固定するため、テールゲート4の下部と荷台3との間に設けられたテールゲート閉鎖固定具である。
【0028】
ヒンジピン5のオフセット量Loffとオフセット量Hoffによる具体的な位置設定は、下記の点を考慮して決定される。
【0029】
テールゲート4とゲート側支持ブラケット9を、図3に示すように、外力を加えることなくヒンジピン5により重力にしたがって吊り下げ支持した場合、テールゲート4と垂直線VLとがなす角度を第1ゲート傾斜角度θg1という。このとき、第1ゲート傾斜角度θg1が、テールゲート4を開放したときに下方に向かって開き角度になる位置にヒンジピン5が設定される(θg1>0)。
【0030】
ここで、第1ゲート傾斜角度θg1は、テールゲート4の閉鎖性能による制限があるものの大きい角度であるほどテールゲート4の開口角度θopenが大きくなるという関係にある。よって、許容される範囲で第1ゲート傾斜角度θg1を大きな角度に設定する。なお、「テールゲート4の開口角度θopen」とは、図3に示すように、テールゲート4を開放したとき、荷台3の傾斜後端面3dとテールゲート4がなす拡がり角度をいい、傾斜後端面3dとテールゲート4とを延長した交点を仮想支持点5’とする。
【0031】
テールゲート4とゲート側支持ブラケット9を、図4に示すように、外力を加えることなくヒンジピン5により重力にしたがって吊り下げ支持した場合、水平線HLとテールゲート4とがなす荷台側角度を第2ゲート傾斜角度θg2という。このとき、第2ゲート傾斜角度θg2が、荷台3の傾斜後端面3dによる後端面傾斜角度θr以上になる位置にヒンジピン5が設定される(θg2≧θr)。
【0032】
ここで、第2ゲート傾斜角度θg2と後端面傾斜角度θrの関係は、角度差(θg2-θr)が小さいほど荷台3の後方傾動に対して早期にテールゲート4の開放を開始し、テールゲート4の開口角度θopenを大きな角度にすることができる。一方、角度差(θg2-θr)が大きいほどテールゲート4の傾斜後端面3dに対する閉鎖力を高くすることができる。よって、第2ゲート傾斜角度θg2は、荷台3の後端面傾斜角度θrに基づいて、テールゲート4の開口角度θopenと、テールゲート4による閉鎖力とが両立する好適な角度に設定される。ちなみに、開口角度θopenは、
θopen=θc-(θg2-θr) …(1)
の式(1)によりあらわすことができる。
【0033】
次に、実施例1の作用を、「背景技術と課題について」、「荷台後方傾動時のテールゲート開放作用」に分けて説明する。
【0034】
[背景技術と課題について]
図5は、比較例1のテールゲート機構を示し、図6は、比較例1のテールゲート機構において荷台の後方傾動時における開口部形成作用を示す。図7は、比較例2のテールゲート機構を示し、図8は、比較例2のテールゲート機構において荷台の後方傾動時における開口部形成作用を示す。以下、図5図8に基づいて背景技術と課題について説明する。
【0035】
比較例1は、図5に示すように、荷台の後端面形状を垂直後端面による形状にし、テールゲートは、荷台の後方上端角位置から上方に少しオフセットした位置に配置されるヒンジピンにより回動可能に吊り下げ支持した例である。
【0036】
この比較例1の場合、荷台の後端面形状が垂直後端面形状であるため、荷台の後方傾動に対して早期にテールゲートの開放を開始し、図6に示すように、開口角度を大きな角度にすることができる。
【0037】
これに対し、荷台の後端面形状を、荷台上端から荷台底面側に向かうほど車両後方の後端面位置になる傾斜後端面による形状にしたいという要求がある。つまり、車両保安基準にしたがって荷台の重心位置を車両前方に移動させたい。しかし、荷台の後方傾動(ダンプ動作)により積荷を排出する際、タイヤに積荷が落下しないようにするためには荷台の後端底面を車両前方に移動させたくない。この結果、荷台の後端面形状を、傾斜後端面形状としている。
【0038】
比較例2は、図7に示すように、荷台の後端面形状を傾斜後端面形状にし、テールゲートは、荷台の後方上端角位置から上方に少しオフセットした位置に配置されるヒンジピンにより回動可能に吊り下げ支持した例である。
【0039】
しかし、比較例2の場合、荷台の後端面形状を傾斜後端面形状にしたことに伴い、荷台を後方傾動するとき、荷台傾斜角度が後端面傾斜角度になるまでテールゲートが傾斜後端面を閉鎖したままとなる。つまり、図8に示すように、荷台傾斜角度を最大傾動角度にしても、荷台傾斜角度から後端面傾斜角度を差し引いた狭い角度が、テールゲートの開口角度になる。このため、テールゲートの開口角度により形成される開口部から土砂等の積荷を重力により排出する際、積荷排出の作業効率が低下してしまう、という課題があった。
【0040】
[荷台後方傾動時のテールゲート開放作用]
本発明者は、荷台の後端面形状を傾斜後端面形状にしたことに伴って発生した上記課題に着目した。そして、課題を解決する手段として、テールゲート4を吊り下げ支持するヒンジピン5の位置を、荷台3の後方上端角位置Pより後方側へオフセットさせた位置であって、かつ、荷台3の上端面Uより上方側へオフセットさせた位置に設定する手段を採用した。
【0041】
即ち、ヒンジピン5を後方側と上方側へオフセットさせた位置とするテールゲート機構Aを採用することで、吊り下げ支持状態のテールゲート4を、垂直配置ではなく、荷台3の傾斜後端面3dと同じ方向に傾斜配置させることができる。このため、荷台3を後方傾動させたとき、荷台傾斜角度θcが僅かな角度となったタイミングであって、後端面傾斜角度θrになる前のタイミングでテールゲート4が傾斜後端面3dを離れ始める。
よって、荷台3の後方傾動時におけるテールゲート4の開放作用により、図9に示すように、荷台3の後方傾動時に積荷を重力により排出する広い開口角度θopenが確保されることになる。この結果、ヒンジピン5を後方側と上方側へオフセットさせた位置とする簡単な構成のテールゲート機構Aとしながらも、土砂等の積荷を重力により排出する際、積荷排出の作業効率を向上させることができる。
【0042】
上記のように、実施例1のトレーラTのテールゲート機構Aにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0043】
(1) 荷台3の後方傾動に応じてテールゲート4が下開きし、開口部から積荷を重力によって排出するダンプトラック(トレーラT)のテールゲート機構Aにおいて、
荷台3は、荷台後端下部の荷台傾動軸Sを中心としてシャシフレーム1に対して水平位置から最大後方傾動位置まで傾動可能に設置し、
荷台3の後端面形状を、荷台上端から荷台底面側に向かうほど車両後方の後端面位置になる傾斜後端面3dによる形状にし、
テールゲート4は、荷台3が水平状態であるときに傾斜後端面3dに接触閉鎖し、荷台3が後方傾動するときに荷台傾斜角度θcに応じてゲート下端面が下開きするように、荷台3に対してヒンジピン5により回動可能に吊り下げ支持し、
ヒンジピン5は、荷台3の後方上端部に設けられた荷台側支持ブラケット8と、テールゲート4のゲート上端部に設けられたゲート側支持ブラケット9とを貫通して取り付け、
ヒンジピン5の位置を、荷台3の後方上端角位置Pより後方側へオフセットさせた位置であって、かつ、荷台3の上端面Uより上方側へオフセットさせた位置に設定する。
このため、荷台3が傾斜後端面形状であるにもかかわらず、部品点数を増大させない簡単な構成によって荷台3の後方傾動時(ダンプ時)に積荷を排出する広い開口面積を確保することができる。
【0044】
(2) テールゲート4とゲート側支持ブラケット9を、外力を加えることなくヒンジピン5により重力にしたがって吊り下げ支持した場合、垂直線VLとテールゲート4とがなす角度を第1ゲート傾斜角度θg1というとき、
第1ゲート傾斜角度θg1が、テールゲート4を開放したときに下方に向かって開き角度になる位置にヒンジピン5を設定する。
このため、荷台3の後方傾動により積荷を重力によって排出する際、スムーズな積荷排出性能を確保することができる。さらに、テールゲート4の第1ゲート傾斜角度θg1の設定により、テールゲート4の下方に向かう開き角度を積荷の種類等によって適切にコントロールすることができる。
【0045】
(3) テールゲート4とゲート側支持ブラケット9を、外力を加えることなくヒンジピン5により重力にしたがって吊り下げ支持した場合、水平線HLとテールゲート4とがなす荷台側角度を第2ゲート傾斜角度θg2というとき、
第2ゲート傾斜角度θg2が、荷台3の傾斜後端面3dによる後端面傾斜角度θr以上になる位置にヒンジピン5を設定する。
このため、テールゲート4の第2ゲート傾斜角度θg2の設定により、荷台3が後方傾動を開始してから、テールゲート4が傾斜後端面3dを離れ始めるタイミングを適切にコントロールすることができる。さらに、テールゲート4の第2ゲート傾斜角度θg2の設定により、テールゲート4の開口角度θopenと、テールゲート4による閉鎖力と、を両立させることもできる。
【0046】
(4) ヒンジピン5の後方側へのオフセット量Loffを、荷台3の最後端位置Lendを上限として設定する。
このため、車両後方側へ突出するテールゲート機構Aを採用しながらも、シャシフレーム1や荷台3へ影響を及ぼすことが無く、シャシフレーム1や荷台3の設計変更を回避することができる。
【0047】
以上、本発明のダンプトラックのテールゲート機構を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0048】
実施例1では、第2ゲート傾斜角度θg2として、荷台3の後端面傾斜角度θrに基づいて、テールゲート4の開口角度θopenと、テールゲート4による閉鎖力とが両立する好適な角度に設定する例を示した。しかし、第2ゲート傾斜角度θg2として、例えば、後端面傾斜角度θrに第2ゲート傾斜角度θg2を一致させると、上記式(1)から明らかなように、荷台3が後方傾動を開始するタイミングでテールゲート4の開放を開始することも可能である。
【0049】
実施例1では、本発明のダンプトラックのテールゲート機構を、トラクタ&トレーラ車であって側面視で3個のタイヤが連なって設けられるトレーラに適用する例を示した。しかし、本発明のダンプトラックのテールゲート機構は、砂利等を運搬する一般的なダンプトラック等に対しても勿論適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
T トレーラ
A テールゲート機構
1 シャシフレーム
2 タイヤ
3 荷台
3d 傾斜後端面
4 テールゲート
S 荷台傾動軸
θc 荷台傾斜角度
5 ヒンジピン
8 荷台側支持ブラケット
9 ゲート側支持ブラケット
P 荷台3の後方上端角位置
U 荷台3の上端面
VL 垂直線
θg1 第1ゲート傾斜角度
HL 水平線
θg2 第2ゲート傾斜角度
θr 後端面傾斜角度
θopen テールゲート4の開口角度
Loff 後方側へのオフセット量
Lend 荷台3の最後端位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9