(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】油揚げ用品質改良剤
(51)【国際特許分類】
A23L 11/45 20210101AFI20220915BHJP
【FI】
A23L11/45 108Z
(21)【出願番号】P 2018162315
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】児玉 教佑
(72)【発明者】
【氏名】富樫 博純
(72)【発明者】
【氏名】杉山 寛子
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-034950(JP,A)
【文献】特開2016-158571(JP,A)
【文献】特開2009-112269(JP,A)
【文献】特開2005-185122(JP,A)
【文献】特開2005-073506(JP,A)
【文献】特開2008-199922(JP,A)
【文献】特開平01-005470(JP,A)
【文献】特開昭61-139356(JP,A)
【文献】特開昭58-111655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 11/00-11/70
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂加工澱粉を有効成分とする油揚げ用品質改良剤。
【請求項2】
油脂加工澱粉がモノグリセリン脂肪酸エステル又はグリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有する請求項1に記載の油揚げ用品質改良剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の油揚げ用品質改良剤を含有する油揚げ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油揚げ用品質改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油揚げは、豆乳に凝固剤を加えてタンパク質を不溶凝集させた後圧搾して水を切って得た豆腐生地(油揚げ用生地)を、110~120℃程度の低温の油で揚げて十分に膨張させた後に、160~200℃程度の高温の油で揚げて水を蒸発させる方法で製造されてきた。
【0003】
油揚げの製造では、油揚げ用生地を面積比で2.5~3倍程度に十分に膨張させ、且つ、表面の凹凸が少なく、内部の海綿状の組織が細かい均一性のある油揚げを得ることが好ましいとされている。しかし、このような油揚げを得るためには、油揚げ用生地の調製条件や、油で揚げる際の温度・時間のコントロールが容易ではなく、高度な熟練を要する。また、油揚げの食感に関しては、「軽いサクミ」のあるものが好まれる向きもあるが、従来の油揚げにはない、歯ごたえのある食感を油揚げに付与できれば、油揚げの新たな需要創出につながると考えられる。
【0004】
油揚げの表面及び内部の状態や食感の改良に関する技術としては、例えば、豆乳と空気と凝固剤を、分散機を用いて空気の均一分散と凝固剤による豆乳の凝固を同時に行い、得られた生地を油で揚げることを特徴とする油揚げの製造方法(特許文献1)、ショ糖脂肪酸エステル、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリドのいずれか1種以上を含有して成る油脂組成物によって、油ちょうされたことを特徴とする油揚げ(特許文献2)等が開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1の技術は、油揚げの表面及び内部の状態の改善が主目的であり、食感の改良については特に考慮されていない。また、特許文献2の技術によれば、「軽いサクミ」のある油揚げが得られるが、これは歯ごたえのある食感が付与されたものとは言えない。
【0006】
従って、表面及び内部の状態が均一で、且つ歯ごたえのある食感が付与された油揚げを製造可能な技術は、未だに確立できていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-223718号公報
【文献】特開平10-165129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、表面及び内部の状態が均一で、且つ歯ごたえのある食感が付与された油揚げを製造可能な油揚げ用品質改良剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、油脂加工澱粉を油揚げに添加することにより、上記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の(1)~(3)からなっている。
(1)油脂加工澱粉を有効成分とする油揚げ用品質改良剤。
(2)油脂加工澱粉がモノグリセリン脂肪酸エステル又はグリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有する前記(1)に記載の油揚げ用品質改良剤。
(3)前記(1)又は(2)に記載の油揚げ用品質改良剤を含有する油揚げ。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油揚げ用品質改良剤を使用することにより、表面及び内部の状態が均一で、且つ歯ごたえのある食感が付与された油揚げを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の油揚げ用品質改良剤は、油脂加工澱粉を有効成分とする。
【0013】
本発明で用いられる油脂加工澱粉は、油脂を吸着した澱粉を熟成処理したものであれば特に制限はないが、本発明の効果が更に高まる観点から、モノグリセリン脂肪酸エステル又はグリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有する油脂組成物を吸着した澱粉を熟成処理して得られる油脂加工澱粉(即ち、モノグリセリン脂肪酸エステル又はグリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有する油脂加工澱粉)であることが好ましい。
【0014】
本発明で用いられる油脂加工澱粉の原料となる澱粉としては、タピオカ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉、エンドウ豆澱粉、あるいはこれらの澱粉に、架橋処理を施した加工澱粉(例えば、リン酸架橋澱粉等)、アセチル化処理を施した加工澱粉、エステル化処理を施した加工澱粉(例えば、酢酸澱粉等)、エーテル化処理を施した加工澱粉(例えば、ヒドロキシプロピル澱粉等)、酸化処理を施した加工澱粉(例えば、ジアルデヒド澱粉等)、酸処理を施した加工澱粉、湿熱処理を施した加工澱粉、更に架橋、アセチル化、エステル化、エーテル化等の処理を2以上組み合わせて施した加工澱粉等が挙げられる。これらの中でも、コーンスターチ又はリン酸架橋タピオカ澱粉が好ましく、リン酸架橋タピオカ澱粉がより好ましい。これら澱粉は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0015】
本発明で用いられる油脂加工澱粉の原料となる油脂としては、食用可能な油脂であれば特に制限はなく、例えば、サフラワー油、大豆油、菜種油、綿実油、ヒマワリ油、米糠油、コーン油、椰子油、パーム油、パーム核油、カポック油、落花生油、オリーブ油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックコーン油及びハイオレイックヒマワリ油等の植物油脂、牛脂、ラード、魚油及び乳脂等の動物油脂、更にこれら動植物油脂を分別、水素添加又はエステル交換したもの、並びに中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等が挙げられる他、プロピレングリコールジ脂肪酸エステルもこれらに含まれる。これらの中でも、サフラワー油、大豆油、ヒマワリ油又はコーン油が好ましい。また、上記油脂の一部又は全部の代替品として油分を多く含む穀粉、例えば、生大豆粉等を用いても良い。
【0016】
本発明で用いられる油脂加工澱粉が含有し得るモノグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンと脂肪酸とのエステルであり、エステル化反応、エステル交換反応等自体公知の方法で製造される。該エステルは、モノエステル体(モノグリセリド)、ジエステル体(ジグリセリド)のいずれであってもよく、あるいはそれらの混合物であっても良い。
【0017】
モノグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば、炭素数6~24の直鎖状の飽和又は不飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等)が挙げられる。これらの中でも、炭素数16~18の直鎖状の飽和又は不飽和脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等)が好ましい。これら脂肪酸は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0018】
モノグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポエムOL-200V(商品名;モノグリセリンオレイン酸エステル;理研ビタミン社製)、エマルジーOL-100H(商品名;モノグリセリンオレイン酸エステル;理研ビタミン社製)等が商業的に販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0019】
本発明で用いられる油脂加工澱粉が含有し得るグリセリン有機酸脂肪酸エステルは、グリセリン、有機酸及び脂肪酸のエステルであり、モノグリセリンモノ脂肪酸エステルと有機酸(又は有機酸の酸無水物)との反応、又はグリセリンと有機酸と脂肪酸との反応により製造される。グリセリン有機酸脂肪酸エステルの種類としては、例えば、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルが好ましい。これらグリセリン有機酸脂肪酸エステルは、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0020】
グリセリン有機酸脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば、炭素数6~24の直鎖状の飽和又は不飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等)が挙げられる。これらの中でも、炭素数16~18の直鎖状の飽和又は不飽和脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等)が好ましい。これら脂肪酸は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0021】
グリセリン有機酸脂肪酸エステルとしては、ポエムW-10(商品名;グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル;理研ビタミン社製)、ポエムW-60(商品名;グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル;理研ビタミン社製)、ポエムB-10(商品名;グリセリンコハク酸脂肪酸エステル;理研ビタミン社製)、ポエムK-30(商品名;グリセリンクエン酸脂肪酸エステル;理研ビタミン社製)等が商業的に販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0022】
本発明で用いられる油脂加工澱粉の製造において、モノグリセリン脂肪酸エステル又はグリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有する油脂組成物を用いる場合、該油脂組成物の調製方法に特に制限はないが、例えば、油脂及びモノグリセリン脂肪酸エステル又はグリセリン有機酸脂肪酸エステルを混合し、50~90℃に加熱及び溶融することにより調製できる。調製された油脂組成物中の油脂とモノグリセリン脂肪酸エステル又はグリセリン有機酸脂肪酸エステルとの割合(油脂/モノグリセリン脂肪酸エステル又はグリセリン有機酸脂肪酸エステル)は、通常1/99~99/1(質量比)であり、好ましくは60/40~20/80(質量比)である。
【0023】
上記油脂又は油脂組成物(以下、「油脂等」という)を澱粉に吸着させる方法としては、澱粉粒が破壊されない状態で澱粉の表面に油脂等を吸着させる方法であれば特に制限はないが、乾燥処理を伴う方法であって、その表面に油脂等が吸着した粉末又は顆粒状の澱粉を調製する方法が好ましい。より具体的には、例えば、(a)平衡水分を保った澱粉若しくは水分含有量を20~40質量%に調整した澱粉を流動層乾燥機中で流動状態とし、そこに油脂等を噴霧し乾燥する方法、(b)水分含有量を10~50質量%に調整した澱粉のケーキに油脂等を添加し、混合及び分散した後、棚段式通風乾燥機等を用いて乾燥し、粉末化する方法、(c)水分含有量を60~70質量%に調整したスラリー状の澱粉に油脂等を添加し、混合及び分散した後、噴霧乾燥機又はドラムドライヤー等を用いて乾燥し、粉末化する方法等を実施することができる。これら方法により調製される粉末又は顆粒状の澱粉は、好ましくは水分含有量が8~18質量%、より好ましくは10~14質量%に調整される。
【0024】
澱粉に対する油脂又は油脂組成物中の油脂の吸着量は、澱粉100質量部に対して、例えば、0.001~9質量部、好ましくは0.02~3質量部、より好ましくは0.05~0.9質量部である。
【0025】
澱粉に対するモノグリセリン脂肪酸エステル又はグリセリン有機酸脂肪酸エステルの吸着量は、澱粉100質量部に対して、例えば、0.002~12質量部、好ましくは0.04~4質量部、より好ましくは0.1~1.2質量部である。
【0026】
油脂等を吸着した澱粉(以下、単に「澱粉」ともいう)は、熟成処理される。熟成処理は、熟成温度30~70℃、熟成期間1時間~20日間の範囲で行うことができる。熟成期間は、澱粉に対する油脂等の吸着量、熟成温度等に応じて適宜調整することが好ましい。例えば、熟成温度が高い程、比較的短期に設定することが好ましい。より具体的には、例えば、澱粉100質量部に対する油脂等の吸着量が0.4質量部、熟成温度が60℃の場合、好ましい熟成期間は7~14日である。
【0027】
かくして得られる油脂加工澱粉は、そのまま油揚げ用品質改良剤として用いることができるが、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の任意の成分を配合した油揚げ用品質改良剤を調製しても良い。そのような成分としては、例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル及びグリセリン有機酸脂肪酸エステル以外の食品用乳化剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0028】
モノグリセリン脂肪酸エステル及びグリセリン有機酸脂肪酸エステル以外の食品用乳化剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。ここで、レシチンには、分別レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチン等が含まれる。
【0029】
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、茶抽出物等が挙げられる。
【0030】
本発明の油揚げ用品質改良剤の使用方法に特に制限はなく、例えば、油揚げの製造において、豆乳に添加することができる。
【0031】
豆乳の調製方法に特に制限はなく、大豆を原料とする公知の方法により調製することができる。例えば(1)大豆を水に浸漬する段階、(2)大豆を磨砕し「呉」を調製する段階、(3)「呉」を蒸煮する段階、(4)蒸煮した「呉」を絞り豆乳とおからを分離する段階、(5)分離した豆乳を容器・タンクへ注ぐ段階を順次実施することにより豆乳を調製することができる。尚、「生絞り法」により豆乳を得る場合には、上記段階の(3)と(4)はそれぞれ、(3)「呉」を絞り生豆乳と生おからを分離する段階、(4)生豆乳を蒸煮する段階となる。
【0032】
本発明の油揚げ用品質改良剤を豆乳に添加する方法に特に制限はないが、例えば、該改良剤を豆乳に加えて混合する方法が挙げられる。この際、該改良剤を直接豆乳に加えることもできるが、混合効率を高める観点から、予め該改良剤を水に懸濁したものを加えることが好ましい。また、該改良剤を豆乳に添加する際の豆乳の温度に特に制限はなく、例えば、通常の油揚げの製造における凝固開始時の温度(60~80℃)であれば良い。また、混合に用いる装置に特に制限はなく、バッチ式、連続式のいずれであっても良いが、例えばTKホモミクサー(プライミクス社製)又はクレアミックス(エムテクニック社製)等の高速回転式分散・乳化機のような強い撹拌力を有するものの他、スタティックミキサー〔例えばノリタケカンパニーリミテド社製(型式:1-N33-131-F)、日本フローコントロール社製(型式:100-806)等〕やOHRミキサー(OHR流体工学研究所社製)等の静止型ミキサー又はスリーワンモータ(新東科学社製)等のプロペラ式攪拌機のような撹拌力が比較的弱いものを用いても良い。
【0033】
豆乳に対する本発明の油揚げ用品質改良剤の添加量に特に制限はないが、例えば豆乳の全固形分量100質量部に対し1.0~100.0質量部、好ましくは5.0~80.0質量部、より好ましくは10.0~60.0質量部となるように調整することができる。
【0034】
本発明の油揚げ用品質改良剤を添加した豆乳を用いて油揚げを製造する方法に特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。例えば、上記豆乳を凝固させて得た凝固物を割砕し、圧搾及び成形して得た豆腐生地(油揚げ用生地)を油ちょうして油揚げを製造することができる。
【0035】
凝固に用いる凝固剤としては、例えば塩化マグネシウム(にがり)、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、グルコノデルタラクトン、硫酸マグネシウム、粗製海水塩化マグネシウム等が挙げられる。これら凝固剤は、予め水に溶解したものを豆乳に添加することが好ましい。
【0036】
油ちょうは、油の温度を変化させて2段階に分けて行うことが好ましく、例えば110~120℃で行った後、160~200℃で行うことができる。また、油ちょうに替えて、特開2010-239866号公報に記載された加熱調理方法を実施しても良い。
【0037】
本発明の製造方法により得られる油揚げは、油ちょう後に着味液等に浸漬する処理、乾燥処理又は加圧加熱殺菌処理等を行っても良い。
【0038】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
[油揚げ用品質改良剤の調製]
(1)原材料
1)サフラワーサラダ油(サミット製油社製)
2)モノグリセリン脂肪酸エステル(商品名:ポエムOL-200V;モノグリセリンオレイン酸エステル;理研ビタミン社製)
3)グリセリン有機酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムW-60;グリセリンジアセチル酒石酸ステアリン酸エステル;理研ビタミン社製)
4)リン酸架橋タピオカ澱粉(商品名:ネオビスT-100;日本食品化工社製)
5)コーンスターチ(商品名:コーンスターチホワイト;日本コーンスターチ社製)
6)ヒドロキシプロピルリン酸架橋タピオカ澱粉(商品名:あさがお;松谷化学工業社製)
7)アセチル化タピオカ澱粉(商品名:さくら2;松谷化学工業社製)
8)タピオカ澱粉(商品名:タピオカスターチ;ギャバン社製)
9)馬鈴薯澱粉(商品名:片栗粉;三幸社製)
【0040】
(2)油揚げ用品質改良剤の配合
上記原材料を用いて調製した油揚げ用品質改良剤1~10の配合組成を表1に示す。このうち、油揚げ用品質改良剤1~4は本発明に係る実施例であり、油揚げ用品質改良剤5~10はそれらに対する比較例である。
【0041】
【0042】
(3)油揚げ用品質改良剤の調製方法
(3-1)油揚げ用品質改良剤1について
表1に示した配合割合に従って、水分含有量12.5質量%に調湿したリン酸架橋タピオカ澱粉に対して60℃に加熱したサフラワーサラダ油を添加し、高速攪拌混合機(型式:レーディゲミキサーFM130D;松坂技研社製)で10分間混合した。得られた混合物をトレーに広げて機内温度60℃の棚段式通風乾燥機で水分含有量12.0質量%まで乾燥し、乾燥物を粉砕し、得られた粉末をポリエチレン製の袋に詰めて60℃で2週間熟成し、油脂加工澱粉(油揚げ用品質改良剤1)30kgを得た。
【0043】
(3-2)油揚げ用品質改良剤2~4について
表1に示した配合割合に従って、サフラワーサラダ油とモノグリセリン脂肪酸エステル又はグリセリン有機酸脂肪酸エステルを混合し、60℃に加熱及び溶融して油脂組成物を得た。続いて、表1に示した配合割合に従って、水分含有量12.5質量%に調湿したリン酸架橋タピオカ澱粉又はコーンスターチに対して前記油脂組成物を添加し、高速攪拌混合機(型式:レーディゲミキサーFM130D;松坂技研社製)で10分間混合した。得られた混合物をトレーに広げて機内温度60℃の棚段式通風乾燥機で水分含有量12.0質量%まで乾燥し、乾燥物を粉砕し、得られた粉末をポリエチレン製の袋に詰めて60℃で2週間熟成し、油脂加工澱粉(油揚げ用品質改良剤2~4)各30kgを得た。
【0044】
(3-3)油揚げ用品質改良剤5~10について
油揚げ用品質改良剤5~10は、原材料が1種類のみであるため、当該原材料そのものを油揚げ用品質改良剤5~10とした。
【0045】
[豆乳の調製]
生大豆4kgを15kgの水道水に14時間浸漬し、水切りした。得られた浸漬大豆に全量が約32kgとなるように水を加えながらグラインダーで摩砕し、「呉」を調製した。「呉」を煮釜に入れ、液温が約93℃に達するまで加熱した。93℃に達温後、直ちに16kgの戻し水を加え、次いで脱水機(型式:アトムMTS-SP1;丸井工業社製)を用いて豆乳とおからに分離し、豆乳(固形分含有量3.9質量%)約50kgを得た。尚、摩砕から蒸煮までの一連の操作は、小型豆乳プラント(型式:ミニホープS;高井製作所社製)を用いて実施した。
【0046】
[油揚げの製造]
[製造例1]
65℃の豆乳2500gを500mLビーカーに500gずつ分注し、これに油揚げ用品質改良剤1の20質量%水懸濁液25.0g及び塩化カルシウム〔商品名:塩化カルシウム(食品添加物);富士フィルム和光純薬社製〕の5質量%水溶液40gを加え、スリーワンモータ(型式:BL1200;新東科学社製)を用いて約500rpmで15秒間撹拌及び混合した。
凝固した各豆乳をそのまま約5分間静置し、その後沈殿した凝固物を上清と共に不織布を敷いた小孔の空いた型箱(65mm×65mm×65mm)に流し込んだ。各型箱の内容物の上に蓋を載せ、蓋の上に250gの重石を載せて約15分間圧搾し、次に750gの重石に換えて約15分間圧搾し、最後に1.5kgの重石に換えて約60分間圧搾して油揚げ用生地(計5枚)を作製した。
得られた油揚げ用生地を正方形状(55mm×55mm)にカットし、これをなたね油を用いて、低温(約110℃)で9分間油ちょうし、続いて高温(約160℃)で9分間油ちょうし、計5枚の油揚げ1を得た。
【0047】
[製造例2]
製造例1において、油揚げ用品質改良剤1の20質量%水懸濁液25.0gに代えて油揚げ用品質改良剤2の20質量%水懸濁液12.5gを用いたこと以外は、製造例1と同様の操作により計5枚の油揚げ2を得た。
【0048】
[製造例3]
製造例1において、油揚げ用品質改良剤1の20質量%水懸濁液25.0gに代えて油揚げ用品質改良剤2の20質量%水懸濁液25.0gを用いたこと以外は、製造例1と同様の操作により計5枚の油揚げ3を得た。
【0049】
[製造例4]
製造例1において、油揚げ用品質改良剤1の20質量%水懸濁液25.0gに代えて油揚げ用品質改良剤3の20質量%水懸濁液12.5gを用いたこと以外は、製造例1と同様の操作により計5枚の油揚げ4を得た。
【0050】
[製造例5]
製造例1において、油揚げ用品質改良剤1の20質量%水懸濁液25.0gに代えて油揚げ用品質改良剤3の20質量%水懸濁液25.0gを用いたこと以外は、製造例1と同様の操作により計5枚の油揚げ5を得た。
【0051】
[製造例6]
製造例1において、油揚げ用品質改良剤1の20質量%水懸濁液25.0gに代えて油揚げ用品質改良剤3の20質量%水懸濁液50.0gを用いたこと以外は、製造例1と同様の操作により計5枚の油揚げ6を得た。
【0052】
[製造例7]
製造例1において、油揚げ用品質改良剤1の20質量%水懸濁液25.0gに代えて油揚げ用品質改良剤4の20質量%水懸濁液25.0gを用いたこと以外は、製造例1と同様の操作により計5枚の油揚げ7を得た。
【0053】
[製造例8]
製造例1において、油揚げ用品質改良剤1の20質量%水懸濁液25.0gに代えて油揚げ用品質改良剤5の20質量%水懸濁液12.5gを用いたこと以外は、製造例1と同様の操作により計5枚の油揚げ8を得た。
【0054】
[製造例9]
製造例1において、油揚げ用品質改良剤1の20質量%水懸濁液25.0gに代えて油揚げ用品質改良剤6の20質量%水懸濁液12.5gを用いたこと以外は、製造例1と同様の操作により計5枚の油揚げ9を得た。
【0055】
[製造例10]
製造例1において、油揚げ用品質改良剤1の20質量%水懸濁液25.0gに代えて油揚げ用品質改良剤7の20質量%水懸濁液12.5gを用いたこと以外は、製造例1と同様の操作により計5枚の油揚げ10を得た。
【0056】
[製造例11]
製造例1において、油揚げ用品質改良剤1の20質量%水懸濁液25.0gに代えて油揚げ用品質改良剤8の20質量%水懸濁液12.5gを用いたこと以外は、製造例1と同様の操作により計5枚の油揚げ11を得た。
【0057】
[製造例12]
製造例1において、油揚げ用品質改良剤1の20質量%水懸濁液25.0gに代えて油揚げ用品質改良剤9の20質量%水懸濁液12.5gを用いたこと以外は、製造例1と同様の操作により計5枚の油揚げ12を得た。
【0058】
[製造例13]
製造例1において、油揚げ用品質改良剤1の20質量%水懸濁液25.0gに代えて油揚げ用品質改良剤10の20質量%水懸濁液12.5gを用いたこと以外は、製造例1と同様の操作により計5枚の油揚げ13を得た。
【0059】
[製造例14]
製造例1において、油揚げ用品質改良剤1の20質量%水懸濁液25.0gを添加しなかったこと以外は、製造例1と同様の操作により計5枚の油揚げ14を得た。
【0060】
ここで、上述した製造例1~14で製造した油揚げ1~14について、豆乳100質量部に対する油揚げ用品質改良剤1~10の添加量を表2及び表3に示す。
【0061】
【0062】
【0063】
[官能評価試験]
油揚げ1~14の表面の状態を観察し、続いてこれらを適宜カットして油揚げ内部の海綿状の組織の状態を観察した。その後これらを喫食し、歯ごたえについて食感を評価した。試験では、何ら添加せずに製造した油揚げ14を基準(対照)とし、表4に示す評価基準に従って10名のパネラーで油揚げ1~13を評価し、評点の平均値を求め、以下の基準に従って記号化した。結果を表5に示す。
◎:極めて良好 平均点3.5以上
○:良好 平均点2.5以上、3.5未満
△:やや悪い 平均点1.5以上、2.5未満
×:悪い 平均点1.5未満
【0064】
【0065】
【0066】
油脂加工澱粉からなる本発明の油揚げ用品質改良剤1~4を添加した油揚げ1~7は、表面、内部及び歯ごたえの全ての評価項目において「○」以上の優れた結果であった。これに対し、油脂加工澱粉以外の澱粉からなる油揚げ用品質改良剤5~10を添加した油揚げ8~13は、いずれかの評価項目において「△」以下であり、本発明に比べて劣っていた。