IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

特許7141907管の接合器、受口側係合部材用のアタッチメント、挿し口側係合部材用のアタッチメントおよび管の接合方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】管の接合器、受口側係合部材用のアタッチメント、挿し口側係合部材用のアタッチメントおよび管の接合方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/00 20060101AFI20220915BHJP
   F16L 21/00 20060101ALI20220915BHJP
   F16B 7/20 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
F16L1/00 V
F16L21/00 E
F16B7/20 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018197077
(22)【出願日】2018-10-19
(65)【公開番号】P2020063819
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸 正蔵
(72)【発明者】
【氏名】金子 正吾
(72)【発明者】
【氏名】小丸 維斗
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-198275(JP,A)
【文献】実開平02-146287(JP,U)
【文献】実公平08-003807(JP,Y2)
【文献】特開平11-153255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/00
F16L 21/00
F16B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の管の受口に他方の管の挿し口を挿入して管同士を接合するための接合器であって、
受口側係合部材を有する操作杆と、
挿し口側係合部材を有する連動体と、
操作杆と連動体との間に設けられた連結部材とを備え、
受口側係合部材は、一方の管に外嵌可能であり、管軸方向において受口に係合自在な一対のアーム部材を有し、
挿し口側係合部材は、対をなす挟持部を有し、他方の管の挿し口に外嵌可能であり、
アーム部材と連結部材の一方の側とが回動自在に連結され、
連動体と連結部材の他方の側とが回動自在に連結され、
受口側係合部材を支点として操作杆を挿し口の挿入方向へ回動した場合、他方の管の挿し口が挿し口側係合部材の挟持部間に挟まれ、挿し口側係合部材が挿し口の挿入方向へ移動し、
受口側係合部材を支点として操作杆を挿し口の離脱方向へ回動して戻した場合、操作杆に連動して連動体の挿し口側係合部材の挟持部が他方の管の挿し口を挟むことを解除するとともに挿し口に対して離脱方向へスライドし、
受口側係合部材を支点として操作杆を挿し口の離脱方向へ回動して戻す際、連動体が挿し口の離脱方向へ回動するときの回動範囲を規制する規制部材が連結部材に備えられていることを特徴とする接合器。
【請求項2】
連結部材の一方の側は二股に分かれて両アーム部材に連結されており、
受口側係合部材の支点からアーム部材と連結部材との連結箇所までの長さが受口の外径の1/2以下に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の接合器。
【請求項3】
受口側係合部材が一方の管に外嵌する方向と、挿し口側係合部材が他方の管の挿し口に外嵌する方向とが異なっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接合器。
【請求項4】
上記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の接合器に取り付けられる受口側係合部材用のアタッチメントであって、
受口側係合部材のアーム部材に着脱自在であり、
アーム部材に装着することにより、一対のアーム部材間の間隔が縮小することを特徴とする受口側係合部材用のアタッチメント。
【請求項5】
上記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の接合器に取り付けられる挿し口側係合部材用のアタッチメントであって、
挿し口側係合部材に着脱自在であり、
挿し口側係合部材に装着することにより、対をなす挟持部間の間隔が縮小することを特徴とする挿し口側係合部材用のアタッチメント。
【請求項6】
上記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の接合器を用いた管の接合方法であって、
一方の管の受口に他方の管の挿し口の先端部を仮挿入し、
接合器の挿し口側係合部材を他方の管の挿し口に外嵌して、挟持部間に挿し口を挿入し、
受口側係合部材を一方の管に外嵌して、管軸方向においてアーム部材を受口に係合し、
受口側係合部材を支点として操作杆を挿し口の挿入方向へ回動させることを特徴とする管の接合方法。
【請求項7】
管が所定の口径よりも小口径である場合、受口側係合部材用のアタッチメントを受口側係合部材のアーム部材に装着し、一対のアーム部材間の間隔を縮小するとともに、挿し口側係合部材用のアタッチメントを挿し口側係合部材に装着し、対をなす挟持部間の間隔を縮小して、一方の管と他方の管とを接合し、
管が所定の口径の場合、受口側係合部材用のアタッチメントと挿し口側係合部材用のアタッチメントとを接合器に装着せずに、一方の管と他方の管とを接合することを特徴とする請求項6に記載の管の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿し口を受口に挿入して管同士を接合するための接合器、接合器に取付可能なアタッチメントおよび接合器を用いた管の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の接合器としては、例えば図24に示すように、受口側係合部材121を有する操作杆122と、挿し口側係合部材123を有する連動体124と、操作杆122と連動体124との間に設けられた連結部材125とを備えたものがある。
【0003】
受口側係合部材121は、上下方向に細長いハンドル126の下端部に設けられており、一方の管127に外嵌可能で、管軸方向Cにおいて受口128に係合自在である。
【0004】
ハンドル126の下部と連結部材125の一端部とは、ボルト129およびナット130により、互いに回動自在に連結されている。また、連動体124の上端部と連結部材125の他端部とは、ボルト131およびナット132により、互いに回動自在に連結されている。
【0005】
挿し口側係合部材123は、対をなす挟持部133を有し、他方の管135の挿し口136に外嵌可能である。受口側係合部材121を支点138として操作杆122を挿し口136の挿入方向Aへ回動した場合、他方の管135の挿し口136が挿し口側係合部材123の挟持部133間に挟まれ、挿し口側係合部材123が挿し口136の挿入方向Aへ移動する。
【0006】
これによると、先ず、図24に示すように、一方の管127の受口128に他方の管135の挿し口136の先端部を仮挿入し、次に、接合器120の挿し口側係合部材123を他方の管135の挿し口136に外嵌して、対をなす挟持部133間に挿し口136を挿入する。さらに、受口側係合部材121を、一方の管127に外嵌して、管軸方向Cにおいて受口128に係合する。
【0007】
その後、ハンドル126の上部に外力を作用させて、図25に示すように、受口側係合部材121を支点138として操作杆122を挿し口136の挿入方向Aへ回動させる。
【0008】
操作杆122の回動に連動して挿し口側係合部材123が挿し口136の挿入方向Aへ傾き、対をなす挟持部133が他方の管135の挿し口136を挟持し、この状態で、操作杆122が回動するのに伴って、挿し口側係合部材123が挿し口136の挿入方向Aへ移動する。これにより、他方の管135の挿し口136が、挿し口側係合部材123の挟持部133間に挟持された状態で、一方の管127の受口128内に挿入される。
【0009】
上記のような管の接合作業において、図24に示すように、作業者が操作杆122を回動させるためにハンドル126の上端部を持って力を加える点を力点139とし、支点138から力点139までの長さをL1とし、力点139に加えられる外力(操作力)をF1とし、支点138からボルト129,ナット130の締結箇所(作用点に相当)までの長さをL2とし、ボルト129,ナット130の締結箇所に作用する力をF2とすると、梃の原理に基づいて、
F1×L1=F2×L2
となり、
F2=F1×L1/L2
となる。
【0010】
ここで、長さL1は長さL2よりも長いので、作業者が力点139に加えた力F1よりも大きな力F2がボルト129,ナット130の締結箇所に作用し、この力F2で挿し口136が受口128内に挿入され、これにより、作業者の小さな力F1(操作力)で、大きな挿入力が挿し口136に作用する。
【0011】
尚、上記のような接合器は例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2017-198275
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら上記の従来形式では、管127,135の呼び径が大きくなると、管127,135同士を接合する際に大きな挿入力が必要となる。このためには、上記長さL1を長くして力F2を増大させるか、或いは、上記長さL2を短くして力F2を増大させればよい。
【0014】
しかしながら、上記長さL1を長くした場合、操作杆122が長くなり、接合器120が大型化するとともに重量が増加し、接合器120の操作や運搬等に多大な労力を要するといった問題がある。
【0015】
このような問題の対策としては、上記のように長さL2を短くして力F2を増大させればよいが、長さL2をあまり短くすると、連結部材125の一端部が受口128に干渉し、管127,135の接合作業に支障を来す虞がある。従って、従来の接合器120では、上記長さL2を短くして大きな挿入力を発生させることには限界があった。
【0016】
本発明は、大型化せずに、大きな挿入力を発生させることができる管の接合器、受口側係合部材用のアタッチメント、挿し口側係合部材用のアタッチメントおよび管の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本第1発明は、一方の管の受口に他方の管の挿し口を挿入して管同士を接合するための接合器であって、
受口側係合部材を有する操作杆と、
挿し口側係合部材を有する連動体と、
操作杆と連動体との間に設けられた連結部材とを備え、
受口側係合部材は、一方の管に外嵌可能であり、管軸方向において受口に係合自在な一対のアーム部材を有し、
挿し口側係合部材は、対をなす挟持部を有し、他方の管の挿し口に外嵌可能であり、
アーム部材と連結部材の一方の側とが回動自在に連結され、
連動体と連結部材の他方の側とが回動自在に連結され、
受口側係合部材を支点として操作杆を挿し口の挿入方向へ回動した場合、他方の管の挿し口が挿し口側係合部材の挟持部間に挟まれ、挿し口側係合部材が挿し口の挿入方向へ移動し、
受口側係合部材を支点として操作杆を挿し口の離脱方向へ回動して戻した場合、操作杆に連動して連動体の挿し口側係合部材の挟持部が他方の管の挿し口を挟むことを解除するとともに挿し口に対して離脱方向へスライドし、
受口側係合部材を支点として操作杆を挿し口の離脱方向へ回動して戻す際、連動体が挿し口の離脱方向へ回動するときの回動範囲を規制する規制部材が連結部材に備えられているものである。
【0018】
これによると、受口側係合部材のアーム部材と連結部材の一方の側とが回動自在に連結されているため、連結部材の一方の側が受口に干渉することを回避しつつ、支点からアーム部材と連結部材の一方の側との連結箇所までの長さを短くすることができ、大型化せずに、大きな挿入力を発生させることができる。
【0019】
本第2発明における接合器は、連結部材の一方の側は二股に分かれて両アーム部材に連結されており、
受口側係合部材の支点からアーム部材と連結部材との連結箇所までの長さが受口の外径の1/2以下に設定されているものである。
【0020】
これによると、一方のアーム部材と連結部材の一方の側との連結箇所および他方のアーム部材と連結部材の一方の側との連結箇所の両連結箇所に、力がそれぞれ均等にバランス良く作用する。これにより、挿し口を受口内にスムーズに挿入することができる。
【0021】
本第3発明における接合器は、受口側係合部材が一方の管に外嵌する方向と、挿し口側係合部材が他方の管の挿し口に外嵌する方向とが異なっているものである。
【0022】
これによると、接合器の挿し口側係合部材を所定の方向から他方の管の挿し口に外嵌して、対をなす挟持部間に挿し口を挿入し、さらに、受口側係合部材を所定の方向とは異なる方向から一方の管に外嵌して、一対のアーム部材間に受口の付け根部分を挿入する。これにより、受口側係合部材が管軸方向において受口に係合する。
【0023】
本第4発明は、上記第1発明から第3発明のいずれか1項に記載の接合器に取り付けられる受口側係合部材用のアタッチメントであって、
受口側係合部材のアーム部材に着脱自在であり、
アーム部材に装着することにより、一対のアーム部材間の間隔が縮小するものである。
【0024】
これによると、受口側係合部材用のアタッチメントをアーム部材に装着することにより、一対のアーム部材間の間隔が縮小するため、所定の呼び径よりも小さな呼び径の管に受口側係合部材を外嵌して、一対のアーム部材を管軸方向において受口に係合させることができる。
【0025】
本第5発明は、上記第1発明から第3発明のいずれか1項に記載の接合器に取り付けられる挿し口側係合部材用のアタッチメントであって、
挿し口側係合部材に着脱自在であり、
挿し口側係合部材に装着することにより、対をなす挟持部間の間隔が縮小するものである。
【0026】
これによると、挿し口側係合部材用のアタッチメントを挿し口側係合部材に装着することにより、対をなす挟持部間の間隔が縮小するため、所定の呼び径よりも小さな呼び径の管の挿し口に挿し口側係合部材を外嵌して、受口側係合部材を支点として操作杆を挿し口の挿入方向へ回動した場合、他方の管の挿し口が挿し口側係合部材の挟持部間に確実に挟まれて、挿し口側係合部材が挿し口の挿入方向へ移動する。
【0027】
本第6発明は、上記第1発明から第3発明のいずれか1項に記載の接合器を用いた管の接合方法であって、
一方の管の受口に他方の管の挿し口の先端部を仮挿入し、
接合器の挿し口側係合部材を他方の管の挿し口に外嵌して、挟持部間に挿し口を挿入し、
受口側係合部材を一方の管に外嵌して、管軸方向においてアーム部材を受口に係合し、
受口側係合部材を支点として操作杆を挿し口の挿入方向へ回動させるものである。
【0028】
本第7発明における管の接合方法は、管が所定の口径よりも小口径である場合、受口側係合部材用のアタッチメントを受口側係合部材のアーム部材に装着し、一対のアーム部材間の間隔を縮小するとともに、挿し口側係合部材用のアタッチメントを挿し口側係合部材に装着し、対をなす挟持部間の間隔を縮小して、一方の管と他方の管とを接合し、
管が所定の口径の場合、受口側係合部材用のアタッチメントと挿し口側係合部材用のアタッチメントとを接合器に装着せずに、一方の管と他方の管とを接合するものである。
【0029】
これによると、接合する管の呼び径に応じて、受口側係合部材用のアタッチメントと挿し口側係合部材用のアタッチメントとを接合器に着脱することにより、共通の接合器を用いて、所定の呼び径の管同士の接合と、所定の呼び径よりも小呼び径の管同士の接合とを行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように本発明によると、接合器を大型化せずに、大きな挿入力を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1の実施の形態における接合器によって接続された管の継手部分の断面図である。
図2】同、接合器の斜視図である。
図3】同、接合器を管にセットしたときの側面図である。
図4】同、接合器の一部拡大斜視図である。
図5】同、接合器を用いて管を接合するときの手順を示す側面図であり、挿し口を受口に仮挿入した状態を示す。
図6】同、接合器を用いて管を接合するときの手順を示す側面図であり、接合器を管にセットした状態を示す。
図7図6におけるX-X矢視図である。
図8図6におけるY-Y矢視図である。
図9】同、接合器を用いて管を接合するときの手順を示す側面図であり、操作杆を挿入方向へ回動した状態を示す。
図10】同、接合器を用いて管を接合するときの手順を示す側面図であり、操作杆をさらに挿入方向へ回動した状態を示す。
図11】同、接合器を用いて管を接合するときの手順を示す側面図であり、操作杆を離脱方向に回動して鉛直位置に戻した様子を示す。
図12】同、接合器を用いて、接合した管を離脱させるときの手順を示す側面図であり、接合器を管にセットした状態を示す。
図13】同、接合器を用いて、接合した管を離脱させるときの手順を示す側面図であり、操作杆を離脱方向に回動した状態を示す。
図14】本発明の第2の実施の形態における接合器の一部と受口側係合部材用のアタッチメントとの斜視図である。
図15】同、受口側係合部材用のアタッチメントを装着した接合器の一部拡大斜視図である。
図16図15におけるX-X矢視図である。
図17図16におけるX-X断面図である。
図18】同、接合器の他部と挿し口側係合部材用のアタッチメントとの斜視図である。
図19】同、挿し口側係合部材用のアタッチメントを装着した接合器の一部拡大斜視図である。
図20図19におけるX-X矢視図である。
図21図20におけるX-X矢視図である。
図22】本発明の第3の実施の形態における接合器の一部と挿し口側係合部材用のアタッチメントとの斜視図である。
図23】同、挿し口側係合部材用のアタッチメントを装着した接合器の一部拡大図である。
図24】従来の接合器を管にセットしたときの側面図である。
図25】同、接合器を用いて管を接合するときの手順を示す側面図であり、操作杆を挿入方向へ回動した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0034】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、図1に示すように、1はプッシュオンタイプの離脱防止管継手であり、互いに接続される一方の管11の端部に形成された受口12に、他方の管13の端部に形成された挿し口14が挿入されている。これらの管11,13はダクタイル鋳鉄管である。
【0035】
受口12の内部には、シール溝2とロックリング収容溝3とが形成されている。シール溝2には、受口12の内周面と挿し口14の外周面との間をシールするゴム(弾性材の一例)製の円環状のシール部材4が嵌め込まれている。
【0036】
ロックリング収容溝3には、ロックリング5と芯出し用部材6とが嵌め込まれている。ロックリング5は、金属製の周方向一つ割りの部材であり、弾性的な縮径力を有することで、挿し口14の外周面に弾性的に抱き付くように構成されている。芯出し用部材6は、ゴム製(又は樹脂製)の円環状の部材であり、挿し口14が受口12に挿入されていないときにロックリング5を受口12に対して芯出し状態に保持する。
【0037】
また、挿し口14の先端部の外周には突部8が形成されており、突部8は受口奥側からロックリング5に係合可能である。
【0038】
図2図4に示すように、21は一方の管11の受口12に他方の管13の挿し口14を挿入して両管11,13同士を接合するための接合器である。接合器21は、操作杆22と、連動体23と、操作杆22と連動体23との間に設けられた連結部材24とを有している。
【0039】
操作杆22は、上下方向に細長い棒状(又はパイプ状)のハンドル26と、ハンドル26の下端部に設けられた受口側係合部材27とを有している。また、連動体23は、上下方向に長い板状の連動フレーム29と、連動フレーム29の下端部に設けられた挿し口側係合部材30とを有している。
【0040】
受口側係合部材27は、門形状の部材であって、管軸方向Cから見て左右方向(一方向の一例)において相対向する一対の平板状のアーム部材32と、両アーム部材32の上端部間に設けられた取付板33とを有している。尚、取付板33はハンドル26の下端部に取り付けられている。
【0041】
また、両アーム部材32間の間隔Bは、拡径した受口12の外径D1(図5参照)よりも小さく、受口12よりも縮径したストレート部分15における管11の外径D2(図5参照)よりも僅かに大きく設定されている。これにより、図3図8に示すように、受口側係合部材27は、一方の管11の上方から受口12の付け根部分(受口12の近傍部分の一例)に外嵌可能であり、管軸方向Cにおいて受口12に係合自在な一対のアーム部材32を有している。
【0042】
挿し口側係合部材30は、左右一側方が開放された横U形状の部材であって、上下方向(一方向とは異なる他方向の一例)において相対向する一対の挟持板36,37(挟持部の一例)と、両挟持板36,37の左右一側端間に設けられた円弧形状の側部板38とを有している。尚、上位の挟持板36は連動フレーム29の下端部に取り付けられている。
【0043】
また、両挟持板36,37間の間隔Eは他方の管13の挿し口14の外径D2(図5参照)よりも僅かに大きく設定されている。これにより、挿し口側係合部材30は他方の管13の一側方から挿し口14に外嵌可能である。
【0044】
このように、受口側係合部材27が一方の管11の受口12の付け根部分に外嵌する方向と、挿し口側係合部材30が他方の管13の挿し口14に外嵌する方向とが管11,13の周方向において90°の角度で異なっている。
【0045】
連結部材24は2本の連結杆61,62を有している。一方のアーム部材32の上部と一方の連結杆61の一端部(一方の側の一例)とは、ボルト41およびナット42等の締結具により、互いに回動自在に連結されている。また、他方のアーム部材32の上部と他方の連結杆62の一端部(一方の側の一例)とは、ボルト41およびナット42等の締結具により、互いに回動自在に連結されている。
【0046】
また、連動体23の連動フレーム29の上端部と両連結杆61,62の他端部(他方の側の一例)とは、ボルト43およびナット44等の締結具により、互いに回動自在に連結されている。
【0047】
尚、上記のようにアーム部材32と連結杆61,62の一端部とを連結しているが、連結杆61,62の一端部に限定されるものではなく、連結杆61,62の一端部よりも若干反対側の他端部寄りの位置で連結してもよい。同様に、連動フレーム29と連結杆61,62の他端部とを連結しているが、連結杆61,62の他端部に限定されるものではなく、連結杆61,62の他端部よりも若干反対側の一端部寄りの位置で連結してもよい。
【0048】
また、図2図3に示すように、連結部材24の他端部にはピン等の規制部材47が着脱自在に設けられている。図11に示すように、連動体23の連動フレーム29が規制部材47に当接することにより、連動体23と連結部材24との角度が所定角度αよりも小さくなることは無く、これにより、連動体23の挿し口14の離脱方向Mへの回動範囲が規制される。
【0049】
上記のような接合器21を用いて管11,13を接合する接合方法を、以下に説明する。
【0050】
先ず、図5に示すように、受口12の内部のシール溝2にシール部材4を嵌め込み、ロックリング収容溝3にロックリング5と芯出し用部材6とを嵌め込んでおく。その後、床51に管11,13を配置し、受口12に挿し口14の先端部を僅かに仮挿入する。
【0051】
次に、図3図6図7に示すように、接合器21の挿し口側係合部材30を他方の管13の一側方から挿し口14に外嵌して、一対の挟持板36,37間に挿し口14を挿入し、さらに、図3図6図8に示すように、受口側係合部材27を一方の管11の上方から受口12の付け根部分に外嵌して、一対のアーム部材32間に受口12の付け根部分を挿入する。これにより、管軸方向Cにおいて両アーム部材32が受口12に係合する。このとき、操作杆22の上端部は鉛直位置Pにある。
【0052】
作業者が、ハンドル26の上端部を手で持ち、図9に示すように受口側係合部材27を支点52として操作杆22を挿し口14の挿入方向A(例えば反時計回り方向)へ回動させる。この操作杆22の回動に伴って、挿し口側係合部材30が上記挿入方向Aへ傾いて所定の傾斜姿勢(図9の点線参照)になり、挿し口14が上下一対の挟持板36,37間に挟まれて、上下一対の挟持板36,37が挿し口14を上下方向(他方向の一例)から挟持する。
【0053】
このような状態で、図10に示すように、操作杆22を挿し口14の挿入方向Aへさらに回動させることにより、挿し口側係合部材30が所定の傾斜姿勢を保ったままで上記挿入方向Aへ移動し、他方の管13の挿し口14が、上下一対の挟持板36,37間に挟持された状態で、一方の管11の受口12内に挿入される。これにより、図1に示すように、挿し口14の突部8がシール部材4の内周とロックリング5の内周とを受口奥側へ通過し、一方の管11と他方の管13とが接続される。
【0054】
尚、図3に示すように、作業者が操作杆22を回動させるためにハンドル26の上端部を持って力を加える点を力点53とし、支点52から力点53までの長さをL1とし、力点53に加えられる外力(操作力)をF1とし、支点52からボルト41,ナット42の締結箇所(作用点に相当)までの長さをL2とし、ボルト41,ナット42の締結箇所に作用する力をF2とすると、梃の原理に基づいて、
F1×L1=F2×L2
となり、
F2=F1×L1/L2
となる。
ここで、長さL1は長さL2よりも長いので、作業者が力点53に加えた力F1よりも大きな力F2がボルト41,ナット42の締結箇所に作用し、この力F2で挿し口14が受口12内に挿入され、これにより、作業者の小さな力F1(操作力)で、大きな挿入力が挿し口14に作用する。
【0055】
また、受口側係合部材27の両アーム部材32と連結部材24の両連結杆61,62の一端部とが締結具(ボルト41,ナット42)を介して回動自在に連結されているため、連結部材24の連結杆61,62の一端部が受口12に干渉することを回避しつつ、上記長さL2(支点52からアーム部材32と連結部材24の一端部との連結箇所までの長さ)を短くすることができ、力F2がさらに増大する。これにより、接合器21を大型化せずに、大きな挿入力を発生させることができる。
【0056】
尚、図3に示すように、床51からアーム部材32と連結部材24との連結箇所までの高さを床51から受口12の上端部までの高さ以下になるように設定することが好ましい。すなわち、上記長さL2を受口12の外径D1の1/2以下に設定することが好ましい。
【0057】
また、図6に示すように、アーム部材32と連結部材24の一端部との連結箇所が、アーム部材32に対して、管11の受口12側とは反対のストレート部15側に設けられているため、接合器21と受口12との干渉を回避しつつ、上記長さL2を短くすることができるため、好適である。
【0058】
また、一方のアーム部材32と一方の連結杆61の一端部との連結箇所および他方のアーム部材32と他方の連結杆62の一端部との連結箇所の両連結箇所に、力F2がそれぞれ半分ずつ均等にバランス良く作用する。これにより、挿し口14を受口12内にスムーズに挿入することができる。
【0059】
また、受口12への挿し口14の挿入量が不足していた場合、図11に示すように、受口側係合部材27の支点52回りに、操作杆22を挿し口14の離脱方向Mへ回動して、操作杆22の上端部を鉛直位置Pに戻す。これにより、操作杆22に連動して連動体23が挿し口14の離脱方向Mへ回動し、一対の挟持板36,37が、挿し口14を挟むことを解除するとともに、挿し口14に対して当初の挟持位置Jよりも離脱方向Mへスライド(変位)するため、挿し口14が受口12内から離脱方向Mへ移動することなく、一対の挟持板36,37が当初の挟持位置Jよりも離脱方向Mへスライドする。
【0060】
この際、連動体23の連動フレーム29が規制部材47に当接することにより、連動体23と連結部材24との角度が所定角度αよりも小さくなることは無く、連動体23の挿し口14の離脱方向Mへの回動範囲が規制される。これにより、連動体23がほぼ鉛直方向の姿勢になり、一対の挟持板36,37による挿し口14の挟み付けが確実に解除され、このような解除状態を保ったままで、挟持板36,37が挿し口14に対して当初の挟持位置Jよりも離脱方向Mへ確実にスライドする。
【0061】
尚、上記所定角度αとは、連動体23が鉛直方向よりもさらに離脱方向Mへ回動して傾くことで、挿し口側係合部材30の両挟持板36,37が挿し口14を挟み込んでしまうのを阻止することが可能な角度である。これにより、挿し口側係合部材30の上位の挟持板36と挿し口14との接触部位が、下位の挟持板37と挿し口14との接触部位よりも、受口12側から遠ざかってしまうような逆姿勢(すなわち図10で示した連動体23の傾斜姿勢とは逆向きの傾斜姿勢)に連動体23がなるのを防止することができる。このため、一対の挟持板36,37が確実に離脱方向Mへスライドする。
【0062】
その後、受口側係合部材27を支点52として、再度、図6図9図10に示すように、操作杆22を鉛直位置Pから挿し口14の挿入方向Aへ回動する。これにより、操作杆22の回動に連動して連動体23が挿し口14の挿入方向Aへ回動し、挿し口側係合部材30が挿し口14の挿入方向Aへ傾き、一対の挟持板36,37が上下から挿し口14を挟み、この状態で、操作杆22が挿し口14の挿入方向Aへさらに回動するのに伴って、挿し口側係合部材30が挿し口14の挿入方向Aへ移動する。これにより、挿し口14が、一対の挟持板36,37間に挟持された状態で、受口12内に挿入される。
【0063】
このように、接合器21を管11,13にセットしたままで、操作杆22を鉛直位置Pから挿し口14の挿入方向Aと離脱方向Mとの両方向へ複数回往復回動することにより、挿し口14が複数回にわたって受口12に挿入される。
【0064】
上記のようにして管11,13同士を接続した後、操作杆22を鉛直位置Pに戻し、受口側係合部材27を受口12の付け根部分から一方の管11の上方へ離脱させ、挿し口側係合部材30を挿し口14から他方の管13の一側方へ離脱させて、接合器21を管11,13から取り外す。
【0065】
また、以下のように、接合器21を用いて、他方の管13を一方の管11から離脱させることもできる。
【0066】
すなわち、図12に示すように、規制部材47を連結部材24から取り外し、一方の管11に接続された他方の管13のストレート部15に接合器21の挿し口側係合部材30を外嵌し、受口側係合部材27を他方の管13の挿し口14に外嵌して、接合器21を他方の管13にセットする。
【0067】
その後、図13に示すように、操作杆22を挿し口14の離脱方向Mへ回動することにより、受口側係合部材27と挿し口側係合部材30とが離脱方向Mへ傾斜し、他方の管13が挿し口側係合部材30の挟持板36,37間に挟まれて、挟持板36,37が他方の管13を上下方向から挟持するとともに、受口側係合部材27の両アーム部材32の下端部が受口12の端面を挿入方向Aへ押す。この時の反力によって、他方の管13の挿し口14が一方の管11の受口12から離脱する。
【0068】
尚、この際、規制部材47を連結部材24から取り外しているため、連動体23と連結部材24との角度が所定角度α(図11参照)よりも小さくなる。
(第2の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、接合器21を用いて、所定の呼び径(例えば呼び径150mm)の管11,13同士を接続しているが、このままでは、接合器21を用いて、所定の呼び径よりも小呼び径(例えば呼び径100mm)の管11,13同士を接続することは困難である。
【0069】
このため、第2の実施の形態では、図14図21に示すように、小呼び径の管11,13同士を接続する場合、接合器21に受口側係合部材用のアタッチメント71と挿し口側係合部材用のアタッチメント73とを取り付ける。
【0070】
図14図17に示すように、受口側係合部材用のアタッチメント71は、アーム部材32に着脱自在であり、アタッチメント本体75と、アタッチメント本体75の外側面に形成された凹部76と、アタッチメント本体75の上下両端部に設けられた取付片77とを有している。取付片77には取付孔78が形成されている。
【0071】
図18図21に示すように、挿し口側係合部材用のアタッチメント73は、挿し口側係合部材30に着脱自在であり、左右一側方が開放された横U形状のアタッチメント本体82と、アタッチメント本体82の外周面に形成された凹部83と、アタッチメント本体82の外周に設けられた取付片84とを有している。取付片84には取付孔85が形成されている。
【0072】
以下、上記構成における作用を説明する。
【0073】
図14図17に示すように、一方の受口側係合部材用のアタッチメント71の凹部76に一方のアーム部材32を嵌め込み、ボルト41を一方のアーム部材32の上部と一方の連結杆61の一端部と一方の受口側係合部材用のアタッチメント71の上部の取付孔78に挿通し、ナット42をボルト41に螺合する。これにより、一方のアーム部材32の内側に一方の受口側係合部材用のアタッチメント71が装着される。
【0074】
また、上記と同様にして、他方のアーム部材32の内側に他方の受口側係合部材用のアタッチメント71を装着する。
【0075】
これにより、一対のアーム部材32間の間隔Bがアタッチメント本体75(2個)分だけ縮小するため、所定の呼び径よりも小呼び径の管11に受口側係合部材27を外嵌して、一対のアーム部材32を管軸方向Cにおいて受口12に係合させることができる。
【0076】
また、図18図21に示すように、挿し口側係合部材用のアタッチメント73の凹部83に挿し口側係合部材30を嵌め込み、ボルト87を挿し口側係合部材用のアタッチメント73の取付孔85に挿通し、ナット88をボルト87に螺合する。これにより、挿し口側係合部材30の内周に挿し口側係合部材用のアタッチメント73が装着され、対をなす挟持板36,37間の間隔Eがアタッチメント本体82分だけ縮小する。
【0077】
このため、所定の呼び径よりも小呼び径の管13の挿し口14に挿し口側係合部材30を外嵌して、受口側係合部材27を支点52として操作杆22を挿し口14の挿入方向Aへ回動した場合、挿し口14が挟持板36,37間に確実に挟まれて、挿し口側係合部材30が挿し口14の挿入方向Aへ移動する。これにより、上記第1の実施の形態と同様な手順で小呼び径の管11,13同士を接続することができる。
【0078】
このように、接合する管11,13の呼び径に応じて、受口側係合部材用のアタッチメント71と挿し口側係合部材用のアタッチメント73とを接合器21に着脱することにより、共通の接合器21を用いて、所定の呼び径の管11,13同士の接合と、所定の呼び径よりも小呼び径の管11,13同士の接合とを行うことができる。
【0079】
尚、図19図20に示すように、挿し口側係合部材用のアタッチメント73を挿し口側係合部材30に装着した場合、ボルト87,ナット88によって、挿し口側係合部材30からのアタッチメント73の脱落を防止することができる。
【0080】
また、図15図16に示すように、ボルト41,ナット42を用いてアーム部材32と連結杆61,62と受口側係合部材用のアタッチメント71とをまとめて締結しているため、部品点数を減らすことができる。
【0081】
上記第2の実施の形態では、図19図20に示すように、ボルト87,ナット88を用いて挿し口側係合部材用のアタッチメント73を挿し口側係合部材30に装着しているが、ボルト87,ナット88を用いず、挿し口側係合部材用のアタッチメント73に取付片84を設けず、面ファスナー等を用いて、挿し口側係合部材用のアタッチメント73を挿し口側係合部材30に着脱自在に装着してもよい。
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、図22図23に示すように、挿し口側係合部材用のアタッチメント95は、挿し口側係合部材30に着脱自在であり、横J形状のアタッチメント本体96と、アタッチメント本体96の外周面に形成された凹部83とを有している。
【0082】
尚、凹部83には面ファスナー(図示省略)が貼り付けられ、挿し口側係合部材30の内周上部にも面ファスナー(図示省略)が貼り付けられている。
【0083】
以下、上記構成における作用を説明する。
【0084】
挿し口側係合部材用のアタッチメント95の凹部83に挿し口側係合部材30のほぼ上半分を嵌め込むことにより、挿し口側係合部材30の内周上部に挿し口側係合部材用のアタッチメント95が装着される。この際、挿し口側係合部材用のアタッチメント95の面ファスナーと挿し口側係合部材30の内周上部の面ファスナーとが付着するため、挿し口側係合部材30からのアタッチメント95の脱落を防止することができる。
【0085】
これにより、挿し口側係合部材30の内周上部に挿し口側係合部材用のアタッチメント95が装着され、対をなす挟持板36,37間の間隔Eがアタッチメント本体96分だけ縮小する。
【0086】
上記第3の実施の形態では、挿し口側係合部材用のアタッチメント95を、挿し口側係合部材30の内周上部に装着しているが、内周下部に装着してもよい。
【0087】
上記各実施の形態では、図4に示すように、連結部材24(連結杆61,62)を両アーム部材32に連結しているが、いずれか片方のアーム部材32のみに連結してもよい。また、連結部材24を2本の連結杆61,62で構成しているが、1本の部材で構成してもよい。
【符号の説明】
【0088】
11 一方の管
12 受口
13 他方の管
14 挿し口
21 接合器
22 操作杆
23 連動体
24 連結部材
27 受口側係合部材
30 挿し口側係合部材
32 アーム部材
36,37 挟持板(挟持部)
52 支点
71 受口側係合部材用のアタッチメント
73,95 挿し口側係合部材用のアタッチメント
A 挿入方向
B 両アーム部材間の間隔
C 管軸方向
E 両挟持板間の間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25