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特許7141911繊維製品用消臭剤および繊維製品の消臭・風合い改善方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】繊維製品用消臭剤および繊維製品の消臭・風合い改善方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 11/76 20060101AFI20220915BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20220915BHJP
   D06M 13/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
D06M11/76
A61L9/01 B
A61L9/01 H
D06M13/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018202655
(22)【出願日】2018-10-29
(65)【公開番号】P2020070501
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】大島 務
(72)【発明者】
【氏名】市村 由美子
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-530014(JP,A)
【文献】特許第3090951(JP,B2)
【文献】特開2003-095905(JP,A)
【文献】特開2004-049889(JP,A)
【文献】特開2005-143770(JP,A)
【文献】特開2019-099546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00 - 9/22
D06M 10/00 - 16/00
D06M 19/00 - 23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)消臭成分・剛軟度付与成分として炭酸水素ナトリウムと、
(B)消臭成分・剛軟度調整成分として植物抽出物と、
(C)水と、
を含有し、前記炭酸水素ナトリウムの配合量が0.05質量%以上0.15質量%以下であることを特徴とする繊維製品用消臭剤。
【請求項2】
前記植物抽出物が、サトウキビ抽出物、柿抽出物、イチョウ抽出物、イチジク抽出物、レンギョウ抽出物から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の繊維製品用消臭剤。
【請求項3】
前記炭酸水素ナトリウムと前記植物抽出物の配合比が1:0.5~1:5であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の繊維製品用消臭剤。
【請求項4】
(A)消臭成分・剛軟度付与成分として炭酸水素ナトリウムと、(B)消臭成分・剛軟度調整成分として植物抽出物と、(C)水と、を含有する繊維製品用消臭剤を、繊維製品に5~100g/m 2 噴霧した後、乾燥することを特徴とす繊維製品の消臭・風合い改善方法
【請求項5】
前記繊維製品用消臭剤を噴霧し、乾燥させた前記繊維製品を、JIS L1096に記載の45°カンチレバー法にて測定したときの剛軟度の増加率が110%~145%であることを特徴とする請求項4に記載の繊維製品の消臭・風合い改善方法。
【請求項6】
前記植物抽出物が、サトウキビ抽出物、柿抽出物、イチョウ抽出物、イチジク抽出物、レンギョウ抽出物から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の繊維製品の消臭・風合い改善方法。
【請求項7】
前記炭酸水素ナトリウムの配合量が0.05質量%以上0.15質量%以下であることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の繊維製品の消臭・風合い改善方法。
【請求項8】
前記炭酸水素ナトリウムと前記植物抽出物の配合比が1:0.5~1:5であることを特徴とする請求項7に記載の繊維製品の消臭・風合い改善方法。
【請求項9】
前記繊維製品が、ポリエステル繊維製であることを特徴とする請求項4乃至請求項8のいずれかに記載の繊維製品の消臭・風合い改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類、繊維製品に付着した悪臭に対して好適に使用される繊維製品用消臭剤及び繊維製品の消臭・風合い改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タバコ、焼き肉、ペットなどの臭いは、衣類や繊維製品に付着して悪臭を発する。しかし、一般的に使用されている消臭剤は代表的な悪臭とされるアンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、メチルメルカプタン、イソ吉草酸などには効果があっても、タバコ臭や焼き肉臭等の複合悪臭に対しては性能的に十分とは言い難い。
【0003】
そこで、衣類、繊維製品に付着したタバコ、焼き肉、ペットなどの臭いを効果的に消臭する繊維製品用消臭剤として、特許文献1には、柿抽出物を0.01~5.0重量%と、乳酸ナトリウムを0.1~2.0重量%含有することを特徴とする繊維製品用消臭剤組成物および繊維製品の消臭方法が開示されている。また、繰り返し使用しても衣類、繊維製品の風合いを悪化させないことも記載されている。
【0004】
一方、洗濯を繰り返すことによって衣服の織構造が緩んだり繊維が傷んだりしてハリやコシが衰えると、外観が悪くなり着用時の感触も悪くなるという問題があった。綿や合成繊維等の衣服のハリやコシを向上させる手法としては、糊剤等を用いて高分子で繊維表面をコートする手法が一般的に知られているが、これらの方法においては、塗布量が不均一化して局部的に製膜した場合にゴワつきが生じたり外観を損なったりしてしまう。
【0005】
そこで、特許文献2には、重合度2ないし3のオリゴ糖から選ばれる少なくとも1種を含有し、処理後に乾燥するだけの操作で良好なハリやコシを付与し、かつ、ゴワつき感を生じさせない繊維の風合い改善剤および繊維製品用仕上げ剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-146673号公報
【文献】特開2004-36064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、繊維製品の消臭処理と風合いの改善処理の両方を行いたい場合、特許文献1のような消臭剤組成物と特許文献2のような風合い改善剤とを個別に準備して処理する必要がある。そのため、処理工程数やコストが増加するという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、繊維製品に付着したタバコ臭、汗臭、尿臭、ペット臭、焼き肉臭等の種々の悪臭を効果的に消臭するとともに、繊維の風合い改善処理も同時に行うことができる繊維製品用消臭剤および繊維製品の消臭・風合い改善方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、(A)消臭成分・剛軟度付与成分として炭酸水素ナトリウムと、(B)消臭成分・剛軟度調整成分として植物抽出物と、(C)水と、を含有し、前記炭酸水素ナトリウムの配合量が0.05質量%以上0.15質量%以下である繊維製品用消臭剤である。
【0010】
また本発明は、上記構成の繊維製品用消臭剤において、前記植物抽出物が、サトウキビ抽出物、柿抽出物、イチョウ抽出物、イチジク抽出物、レンギョウ抽出物から選ばれた1種以上であることを特徴としている。
【0012】
また本発明は、上記構成の繊維製品用消臭剤において、前記炭酸水素ナトリウムと前記植物抽出物の配合比が1:0.5~1:5であることを特徴としている。
【0013】
また本発明は、(A)消臭成分・剛軟度付与成分として炭酸水素ナトリウムと、(B)消臭成分・剛軟度調整成分として植物抽出物と、(C)水と、を含有する繊維製品用消臭剤を、繊維製品に5~100g/m2噴霧した後、乾燥することを特徴とする繊維製品の消臭・風合い改善方法である。
【0014】
また本発明は、上記構成の繊維製品の消臭・風合い改善方法において、前記繊維製品用消臭剤を噴霧し、乾燥させた前記繊維製品を、JIS L1096に記載の45°カンチレバー法にて測定したときの剛軟度の増加率が110%~145%であることを特徴としている。
【0015】
また本発明は、上記構成の繊維製品の消臭・風合い改善方法において、前記植物抽出物が、サトウキビ抽出物、柿抽出物、イチョウ抽出物、イチジク抽出物、レンギョウ抽出物から選ばれた1種以上であることを特徴としている。
【0016】
また本発明は、上記構成の繊維製品の消臭・風合い改善方法において、前記炭酸水素ナトリウムの配合量が0.05質量%以上0.15質量%以下であることを特徴としている。
【0017】
また本発明は、上記構成の繊維製品の消臭・風合い改善方法において、前記炭酸水素ナトリウムと前記植物抽出物の配合比が1:0.5~1:5であることを特徴としている。
【0018】
また本発明は、上記構成の繊維製品の消臭・風合い改善方法において、前記繊維製品が、ポリエステル繊維製であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の構成によれば、(A)消臭成分・剛軟度付与成分として炭酸水素ナトリウムと、(B)消臭成分・剛軟度調整成分として植物抽出物と、(C)水と、を含有することにより、タバコ臭、汗臭に対して消臭効果のある炭酸水素ナトリウムと、尿臭、ペット臭に対して消臭効果のある植物抽出物の相乗効果によって幅広い悪臭を効果的に消臭可能な繊維製品用消臭剤となる。また、炭酸水素ナトリウムが繊維製品に対する剛軟度付与成分として作用するとともに、植物抽出物が炭酸水素ナトリウムの剛軟度付与性能を調整する剛軟度調整成分として作用するため、繊維製品に適度なハリやコシを与えることができる。また、炭酸水素ナトリウムの配合量を0.05質量%以上0.15質量%以下とすることにより、タバコ臭、汗臭に対する十分な消臭効果を有し、且つ繊維製品に対する適度な剛軟度付与効果が得られる繊維製品用消臭剤となる。
【0020】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の繊維製品用消臭剤において、植物抽出物としてサトウキビ抽出物、柿抽出物、イチョウ抽出物、イチジク抽出物、レンギョウ抽出物から選ばれた1種以上を用いることにより、尿臭、ペット臭に対する消臭効果が高く剛軟度調整性能にも優れた繊維製品用消臭剤となる。
【0022】
また、本発明の第の構成によれば、上記第1又は第2の構成の繊維製品用消臭剤において、炭酸水素ナトリウムと植物抽出物の配合比を1:0.5~1:5とすることにより、尿臭、ペット臭に対する消臭効果および剛軟度調整効果が必要十分であり、安全性やコスト面においても優れた繊維製品用消臭剤となる。
【0023】
また、本発明の第の構成によれば、(A)消臭成分・剛軟度付与成分として炭酸水素ナトリウムと、(B)消臭成分・剛軟度調整成分として植物抽出物と、(C)水と、を含有する繊維製品用消臭剤を、繊維製品に5~100g/m2噴霧した後、乾燥することにより、タバコ臭、汗臭、尿臭、ペット臭等を効果的に消臭することができ、且つ、繊維製品に適度なハリやコシを付与することができる繊維製品の消臭・風合い改善方法となる。
【0024】
また、本発明の第の構成によれば、上記第の構成の繊維製品の消臭・風合い改善方法において、繊維製品用消臭剤を噴霧し、乾燥させた繊維製品を、JIS L1096に記載の45°カンチレバー法にて測定したときの剛軟度の増加率を110%~145%の範囲とすることにより、繊維製品に付与されるハリやコシをゴワつきの発生しない適切な範囲とすることができる。
【0025】
また、本発明の第の構成によれば、上記第又は第の構成の繊維製品の消臭・風合い改善方法において、植物抽出物としてサトウキビ抽出物、柿抽出物、イチョウ抽出物、イチジク抽出物、レンギョウ抽出物から選ばれた1種以上を用いることにより、尿臭、ペット臭に対する消臭効果が高く剛軟度調整性能にも優れた繊維製品の消臭・風合い改善方法となる。
【0026】
また、本発明の第の構成によれば、上記第乃至第の構成の繊維製品の消臭・風合い改善方法において、炭酸水素ナトリウムの配合量を0.05質量%以上0.15質量%以下とすることにより、タバコ臭、汗臭に対する十分な消臭効果を有し、且つ繊維製品に対する適度な剛軟度付与効果が得られる繊維製品の消臭・風合い改善方法となる。
【0027】
また、本発明の第の構成によれば、上記第の構成の繊維製品の消臭・風合い改善方法において、炭酸水素ナトリウムと植物抽出物の配合比を1:0.5~1:5とすることにより、タバコ臭、汗臭、尿臭、ペット臭等に対する消臭効果および剛軟度調整効果が必要十分であり、安全性やコスト面においても優れた繊維製品の消臭・風合い改善方法となる。
【0028】
また、本発明の第の構成によれば、上記第4乃至第のいずれかの構成の繊維製品の消臭・風合い改善方法において、対象となる繊維製品をポリエステル繊維製とすることにより、特に良好な剛軟度付与効果が得られる繊維製品の消臭・風合い改善方法となる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の繊維製品用消臭剤について詳細に説明する。本発明の繊維製品用消臭剤は、(A)消臭成分・剛軟度付与成分としての炭酸水素ナトリウムと、(B)消臭成分・剛軟度調整成分としての植物抽出物と、を(C)水に混合して水溶液としたものである。
【0030】
本発明の繊維製品用消臭剤に(A)消臭成分・剛軟度付与成分として配合される炭酸水素ナトリウムは、タバコ臭、汗臭に対する優れた消臭効果を有する。また炭酸水素ナトリウムは、繊維製品に対してハリやコシを付与する性質を有する。この性質を利用して、本発明では炭酸水素ナトリウムを消臭成分として配合するとともに、繊維製品にハリやコシを付与する剛軟度付与剤として配合している。従来、炭酸水素ナトリウムが消臭効果を有することは知られていたが、繊維製品の剛軟度付与剤として作用することは、本発明者らによって初めて発見された知見である。
【0031】
炭酸水素ナトリウムによる剛軟度付与効果が期待できる繊維としては、ポリエステル、ナイロン、レーヨン等の合成繊維が挙げられる。後述する実施例に示すように、特にポリエステル繊維に対して高い剛軟度付与効果を有する。
【0032】
炭酸水素ナトリウムの配合量が少なすぎると剛軟度付与効果が十分でなくなり、多すぎると剛軟度付与効果が強くなり過ぎてしまう。後述の実施例において示すように、炭酸水素ナトリウムの配合量は繊維製品用消臭剤全体に対して0.05質量%以上0.15質量%以下とすることが好ましい。
【0033】
本発明の繊維製品用消臭剤に(B)消臭成分・剛軟度調整成分として配合される植物抽出物は、植物由来の成分が悪臭を不揮発性化・中和・分解する効果と、植物由来の香気成分で悪臭をマスキングする効果とがあり、両方の相乗効果により消臭すると考えられる。特に、尿臭、ペット臭、焼き肉臭等に対する優れた消臭効果を有する。また植物抽出物は、炭酸水素ナトリウムによって繊維製品に付与される剛軟度を緩和する性質を有する。この性質を利用して、本発明では植物抽出物を消臭成分として配合するとともに、繊維製品のハリやコシを調整する剛軟度調整剤として配合している。従来、植物抽出物が消臭効果を有することは知られていたが、繊維製品の剛軟度調整剤として作用することは、本発明者らによって初めて発見された知見である。
【0034】
上記の植物抽出物としては、サトウキビ、柿、イチョウ、イチジク、レンギョウ、茶、竹、カタバミ、ドクダミ、ツガ、クロマツ、カラマツ、アカマツ、キリ、ヒイラギ、モクセイ、ライラック、キンモクセイ、フキ、ツワブキ、クリ、ハンノキ、コナラ、ザクロ、ゼンマイ、タニウツギ、カキノキ、オオバコ、ヨモギ、ヤマモミジ、サルスベリ、シロバナハギ、アセビ、シダ、ヤマナラシ、コバノトネリコ等の抽出物が挙げられる。これらの中でも、特にサトウキビ抽出物、柿抽出物、イチョウ抽出物、イチジク抽出物、レンギョウ抽出物が好ましい。上記の植物抽出物は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0035】
サトウキビ抽出物としては、(1)サトウキビを圧搾して得られた圧搾汁を原料として、合成吸着剤樹脂に通液、吸着した成分を回収する樹脂分離により得られる水溶性の不揮発性成分を主成分としたもの、(2)サトウキビの圧搾汁を濃縮する際に得られる揮発性成分を樹脂に吸着分離することにより得られる画分からなるもの、(3)サトウキビを圧搾した際に得られるバガスから熱水抽出することにより得られる水溶性成分からなるもの、(4)サトウキビの圧搾汁を原料として、クロマト分離を行うことにより得られる不揮発性成分からなり、サトウキビ抽出物(1)とは組成の異なるものが挙げられる。このうち、消臭効果の観点からサトウキビ抽出物(2)が好ましい。サトウキビ抽出物としては、例えば三井製糖(株)製の「MSX-245」を使用することができる。
【0036】
柿抽出物としては、柿の未熟実の搾汁又は搾汁から糖分を除去した無糖搾汁液、またはそれらの脱水濃縮物が挙げられる。柿抽出物として、例えばリリース科学工業(株)製の「パンシルFG-60」を使用することができる。
【0037】
イチョウ抽出物、イチジク抽出物、レンギョウ抽出物としては、例えばイチョウ抽出物、イチジク抽出物、レンギョウ抽出物の混合物を含むパナソニック化成(株)製の「スーパーピュリエールA-100」を使用することができる。
【0038】
植物抽出物の配合量が少なすぎると消臭効果および剛軟度調整効果が十分でなく、多すぎると非常に高価なものになり、汎用性がなくなってしまう。後述の実施例において示すように、植物抽出物の配合量は炭酸水素ナトリウム:植物抽出物=1:0.5~1:5となるように配合することが好ましい。
【0039】
本発明には、必要に応じてエタノールを配合しても良い。本発明の繊維製品用消臭剤に加えられるエタノールとしては、例えば発酵エタノール、合成エタノール等が挙げられ、変性剤が添加されていても良い。変性剤としては、例えばメタノール、アセトアルデヒド、プロピオン酸エチル、食品用フレーバー等が挙げられ、中でも食品用フレーバーが好適に用いられる。
【0040】
本発明の繊維製品用消臭剤には、必要に応じて界面活性剤を配合することができる。本発明の繊維製品用消臭剤に配合される界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも好適に用いられる。アニオン界面活性剤の例としては、例えば脂肪酸石けん、アルキルベンゼンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、α―オレフィンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などが挙げられる。
【0041】
カチオン界面活性剤の例としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、塩化ベンザルコニウム等の第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0042】
ノニオン界面活性剤の例としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシドなどが挙げられる。
【0043】
両性界面活性剤の例としては、ベタイン型界面活性剤が挙げられる。具体的には、ラウリル-N,N-ジメチル酢酸ベタイン、ラウリルアミドプロピル-N,N-ジメチル酢酸ベタイン、ヤシアルキルアミドプロピル-N,N-ジメチルヒドロキシプロピルスルホベタイン等が挙げられる。
【0044】
本発明の繊維製品用消臭剤は、水系タイプであり、溶媒としては主に水が用いられる。水としては、イオン交換水や逆浸透膜水等の精製水や、通常の水道水や工業用水、海洋深層水等が挙げられる。
【0045】
更に、本発明の繊維製品用消臭剤には、その他の成分として、必要に応じて、無機抗菌剤、有機抗菌剤、防藻剤、防錆剤、溶剤、キレート剤、香料、消臭成分等を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することにより、抗菌効果、防藻効果、防錆効果、洗浄効果、芳香性、消臭性等を付与するようにしてもよい。
【0046】
こうして得られた本発明の繊維製品用消臭剤を、繊維製品に対してトリガースプレー又はエアゾールスプレーでスプレーすることにより消臭効果、風合い改善効果を得ることができる。好ましくは繊維製品用消臭剤を繊維製品1平方メートル当たり5gから100gをスプレーすることが望ましい。5g以下であると十分な消臭効果、風合い改善効果が認められず、100g以上では対象物が完全に濡れてしまい乾燥に時間がかかるとともに消臭効率や風合い改善効果も良くない。
【0047】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。以下、実施例により本発明の効果について更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。
【実施例1】
【0048】
[試験液の調製]
(A)消臭成分・剛軟度付与成分として、炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業社製)、(B)消臭成分・剛軟度調整成分として、サトウキビ抽出物(MSX-245、三井製糖社製)、柿抽出物(パンシルFG-60、リリース科学工業社製)、イチョウ、イチジク、レンギョウ抽出物の混合物(スーパーピュリエールA-100、パナソニック化成社製)を表1、表2に示す配合割合(質量%)で配合し、(C)イオン交換水を加えて100重量%として試験液(本発明1~17)を得た。
【0049】
(A)消臭成分・剛軟度付与成分として、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、乳酸ナトリウム(以上、和光純薬工業社製)、(B)消臭成分・剛軟度調整成分として、サトウキビ抽出物(MSX-245、三井製糖社製)、柿抽出物(パンシルFG-60、リリース科学工業社製)、イチョウ、イチジク、レンギョウ抽出物の混合物(スーパーピュリエールA-100、パナソニック化成社製)を表3、表4に示す配合割合(質量%)で配合し、(C)イオン交換水を加えて100重量%として試験液(比較例1~18)を得た。
【実施例2】
【0050】
[消臭効果の確認試験]
タバコ臭、汗臭または尿臭を付着させた綿布(5×5cm)に、本発明、比較例の試験液をトリガースプレーで20cmの距離から3回スプレー(付着量約0.07g)し、1000mLの三角フラスコに入れ、直後及び60分後に8人のパネラーによって官能評価を行った。
【0051】
評価基準としては、タバコ臭、汗臭または尿臭を感じない場合を○、タバコ臭、汗臭または尿臭とわかるが弱い場合を△、タバコ臭、汗臭または尿臭と明らかにわかる場合を×とした。
【0052】
[剛軟度増加率の測定試験]
ポリエステル布(テトロンタフタ布:厚さ0.10mm、坪量約60g/m2、東レ社製)の試験片(2cm×15cm)5枚に本発明、比較例の試験液をトリガースプレーで20cmの距離から3回スプレー(付着量約0.08g)し、乾燥させた。乾燥後の試験片の剛軟度をJIS L1096に記載の45°カンチレバー法により測定した。具体的には、水平の台の一端が45°の斜面をもつ測定器の上に各試験片を置き、適当な方法で水平の台の上を緩やかに滑らせた。そして、試験片の一端が自重と自身の柔らかさにより45°の斜面に接触した時点で、試験片が移動した長さ(mm)を測定し、その平均値を剛軟度とした。そして、試験液を塗布する前の布に対する剛軟度の増加率を算出した。
【0053】
[風合い改善効果についての評価試験]
前記[剛軟度増加率の測定試験]にて用いた測定後の試験布および同サイズの未処理布について、5名の評価者の触感の比較による評価を行った。評価基準は、未処理布との差が感じられない場合、あるいはゴワツキを感じた場合を×とし、適度なコシのある触感を感じた場合を○とし、全員の評価結果を平均したものを最終評価とした。消臭効果、剛軟度増加率の測定結果、風合い改善効果の評価試験結果を試験液の配合と併せて表1~表4に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
表1、表2に示すように、炭酸水素ナトリウムを0.05~0.15質量%配合し、サトウキビ抽出物、柿抽出物、またはイチョウ、イチジク、レンギョウ抽出物の混合物を炭酸水素ナトリウムに対する配合比が1:0.5~1:5となるように配合した本発明1~17では、タバコ臭、汗臭、尿臭のいずれに対しても優れた消臭効果を示した。また、乾燥後の試験片の剛軟度増加率がいずれも110%~145%の範囲となり、適度なハリやコシが付与されて風合いが改善された。
【0059】
これに対し、表3、表4に示すように、炭酸水素ナトリウムのみを配合した比較例1では、尿臭に対する消臭効果がなく、乾燥後の試験片の剛軟度増加率も145%を超えてしまいゴワつきが発生した。また、サトウキビ抽出物、柿抽出物、植物抽出物のみを配合した比較例2~4では、タバコ臭、汗臭に対する消臭効果が十分でなく、乾燥後の試験片の剛軟度増加率も110%未満となり風合い改善効果も認められなかった。
【0060】
また、炭酸水素ナトリウムに対するサトウキビ抽出物、柿抽出物の配合比を1:0.25とした比較例5、6では尿臭に対する消臭効果が十分でなく、乾燥後の試験片の剛軟度増加率も145%を超えてしまいゴワつきが発生した。炭酸水素ナトリウムの配合量を0.2質量%とした比較例7~10では、サトウキビ抽出物の配合量に関係なく乾燥後の試験片の剛軟度増加率が145%を超えてしまいゴワつきが発生した。一方、炭酸水素ナトリウムの配合量を0.05質量%未満とした比較例11、12では、タバコ臭、汗臭、尿臭に対する消臭効果は認められたが乾燥後の試験片の剛軟度増加率が110%未満となり風合い改善効果が認められなかった。
【0061】
また、炭酸水素ナトリウムに代えて炭酸水素カリウムを配合した比較例13、14では、サトウキビ抽出物の配合の有無に係わらずタバコ臭、汗臭、尿臭に対する消臭効果が十分ではなく、乾燥後の試験片の剛軟度増加率も110%未満となり風合い改善効果も認められなかった。また、炭酸水素ナトリウムに代えて炭酸ナトリウムを配合した比較例15、16では、試験片の剛軟度増加率が114%、119%となり風合い改善効果は認められたが、汗臭、尿臭に対する消臭効果が認められなかった。さらに、炭酸水素ナトリウムに代えて乳酸ナトリウムを配合した比較例17、18では、サトウキビ抽出物の配合の有無に係わらずタバコ臭、汗臭、尿臭に対する消臭効果が十分ではなく、乾燥後の試験片の剛軟度増加率も110%未満となり風合い改善効果も認められなかった。
【0062】
以上の結果から、炭酸水素ナトリウムの配合量を0.05質量%以上0.15質量%以下とし、サトウキビ抽出物、柿抽出物、またはイチョウ、イチジク、レンギョウ抽出物の混合物を炭酸水素ナトリウムに対し1:0.5~1:5の配合比で配合することで、タバコ臭、汗臭、尿臭に対して優れた消臭効果を有し、且つ、処理後の繊維製品の風合い改善効果も得られることが確認された。
【実施例3】
【0063】
[繊維製品用消臭剤の作製]
消臭成分・剛軟度付与成分として炭酸水素ナトリウムを0.1質量%、消臭成分・剛軟度調整成分としてサトウキビ抽出物(MSX-245、三井製糖社製)を0.1質量%、カチオン性界面活性剤としてニッサンカチオンF2-50R(塩化ベンザルコニウム50%含有、日油社製)0.2質量%、95度エタノールを5質量%、香料(フローラル系)を0.01質量%加えたものに、最終的にバランスとして精製水を加えて100質量%に調製し、よく混合して繊維製品用消臭剤を作製した。
【0064】
作製された繊維製品用消臭剤を、トリガースプレー(1回の吐出量が約0.7cc)を用いてタバコ臭、汗臭、尿臭の付着したポリエステル製の繊維製品に適量噴霧した結果、いずれの臭気もほとんど消臭した。さらに、繊維製品に適度なハリやコシを付与することができ、風合いも改善された。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、繊維製品に付着したタバコ臭、汗臭、尿臭、ペット臭等の種々の悪臭に対して顕著な消臭効果を有し、且つ、消臭と同時に繊維製品にハリやコシも付与することができる繊維製品用消臭剤として好適に用いられる。