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特許7141912麺線切出し装置、麺類の製造装置、並びに麺類及び即席麺の製造方法
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  • 特許-麺線切出し装置、麺類の製造装置、並びに麺類及び即席麺の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】麺線切出し装置、麺類の製造装置、並びに麺類及び即席麺の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21C 11/24 20060101AFI20220915BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20220915BHJP
【FI】
A21C11/24 A
A23L7/109 J
A23L7/109 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018202831
(22)【出願日】2018-10-29
(65)【公開番号】P2020068662
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000106531
【氏名又は名称】サンヨー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】永山 嘉昭
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-093116(JP,A)
【文献】特開2016-093145(JP,A)
【文献】特開2010-110334(JP,A)
【文献】特開2015-092837(JP,A)
【文献】特開2015-089371(JP,A)
【文献】特開2005-110600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 11/24
A23L 7/109
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向して噛み合うように並列に配置された複数の環状溝部を有する一対の切刃ロールと、
前記切刃ロールの長手方向に沿って延びる板状部と、前記板状部の長辺に、該長辺と略直交する方向に延びる複数の突起部を有するスクレーパであって、前記複数の突起部がそれぞれ前記切刃ロールの前記複数の環状溝部の対応する1つに係合して前記複数の環状溝部にある麺線を前記切刃ロールから剥離するように構成されている、スクレーパと、
前記切刃ロールの長手方向に沿って前記複数の環状溝部の中心からずれて配置された複数の突起部を有する櫛板であって、前記複数の突起部が、前記麺線が前記切刃ロール及び前記スクレーパの前記複数の突起部と接触していない位置で前記麺線と接触するように構成されている、櫛板と
を備える、麺線切出し装置。
【請求項2】
前記櫛板の前記複数の突起部が、前記切刃ロールから剥離しかつ前記スクレーパから離間した麺線の進行方向及び該麺線の幅方向に対して直交する方向に該麺線に力を加える隆起形状を有する、請求項1に記載の麺線切出し装置。
【請求項3】
前記櫛板が、前記切刃ロールの長手方向に沿って延びる板状部と、前記板状部の長辺に、該長辺と略直交する方向に延びる前記複数の突起部とを有しており、前記櫛板の前記板状部が前記スクレーパの前記板状部の上に重ねて配置されている、請求項1又は2のいずれかに記載の麺線切出し装置。
【請求項4】
前記櫛板の前記複数の突起部が、前記切刃ロールの前記複数の環状溝部に対して1つおきに配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の麺線切出し装置。
【請求項5】
前記切刃ロールの前記環状溝部の幅が2.0mm以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の麺線切出し装置。
【請求項6】
前記櫛板の前記複数の突起部の幅が、前記環状溝部の幅の50%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の麺線切出し装置。
【請求項7】
切り出された前記麺線を受容するガイドをさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の麺線切出し装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の麺線切出し装置を含む麺類の製造装置。
【請求項9】
ドウから形成された麺帯を請求項1~7のいずれか一項に記載の麺線切出し装置を用いて複数の麺線に切り出すことを含む、麺類の製造方法。
【請求項10】
ドウから形成された麺帯を請求項1~7のいずれか一項に記載の麺線切出し装置を用いて複数の麺線に切り出すこと、
切り出された前記複数の麺線を蒸煮してα化すること、及び
α化した前記麺線を乾燥すること
を含む、即席麺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、麺線切出し装置、麺線切出し装置を含む麺類の製造装置、並びに麺線切出し装置を用いた麺類及び即席麺の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中華麺、うどん、パスタ等の麺類の機械製麺は、例えば、小麦粉、澱粉等の主原料と、水、食塩、かん水等の副原料とを混練して得られた混練物(「ドウ」ともいう。)を圧延ロールに通してシート状の粗麺帯を形成し、2枚の粗麺帯を複合機により重ね、次の圧延ロールに通して所定の厚みまで薄くすることにより得られた麺帯を、複数の環状溝部を有する一対の切刃ロールを備えた麺線切出し装置を用いて複数の麺線に切断及び分離することを含む。麺帯は、一対の切刃ロールの間に送り込まれて複数の環状溝部により複数の麺線に切断される。切断後、環状溝部に入っている麺線は、切刃ロールの複数の環状溝部に係合する複数の突起部を有するスクレーパによって、それぞれの切刃ロールの環状溝部から取り出される。取り出された麺線は、一方(例えば上側)の切刃ロールから取り出された麺線束と、他方(例えば下側)の切刃ロールから取り出された麺線束とを形成する。2つの麺線束の麺線は、麺線切出し装置の直下に配置されたコンベア上に直接落下するか、あるいはガイドに一旦受容され、ガイドを通る間に鉛直方向に波状に縮れた後、ガイドの出口からコンベア上に移される。その後、麺線は、例えば蒸煮、一食単位への切断、乾燥等の工程を経て麺製品となる。
【0003】
ガイドの内部で麺線を縮れさせることにより、麺線間にすき間を作り、一方(例えば上側)の麺線束の麺線と他方(例えば下側)の麺線束の麺線の接触部分を少なくして、その後の蒸煮及びハンドリングに悪影響を及ぼしうる麺線同士の付着を低減又は防止することが知られている。また、同一の麺線束の隣り合う麺線同士の付着を低減又は防止する試みもなされている。
【0004】
特許文献1(特開平10-210924号公報)は、「円周方向に形成された切刃を長手方向に複数有する円筒状の切刃ロールを前記切刃が互に噛み合わせられた状態で二台平行に設け、帯状の麺生地を麺線に切断する麺切断ロールにおいて、前記切刃間に形成された溝部内に接触し、該溝部から前記麺線を掻き出すスクレーパの該切刃ロールに対する接触角度を10°~50°の範囲としたことを特徴とする麺切断ロール用スクレーパ」を記載している。
【0005】
特許文献2(特開2010-187623号公報)は、「第1切刃ロール210aと、噛合位置10で噛み合うように配置された第2切刃ロールと、複数の第1歯先234aそれぞれが第1回転軸C1を中心に噛合位置10から第1回転方向R1へ5°~90°の位置に配置される第1カスリ230aと、複数の第2歯先243aそれぞれが第1回転軸C1を中心に噛合位置10から第1回転方向R1へ120°~210°の位置に配置される第2カスリ240aと、複数の第3歯先234bそれぞれが第2回転軸C2を中心に噛合位置10から第2回転方向R2へ5°~90°の位置に配置される第3カスリ230bと、複数の第2歯先243bそれぞれが第2回転軸C2を中心に噛合位置10から第2回転方向R2へ120°~210°の位置に配置される第4カスリ240bとを備える」「製麺用切出装置200」を記載している。
【0006】
特許文献3(国際公開第2010/041477号)は、「麺線切出し装置であって、2段階以上の深さを有して交互又は順次に配列するように形成された複数の環状溝部が設けられ、麺帯を多数の麺線に切出す一対の切刃ロールと、長手方向に沿って延在する屈曲部を有する板体によって構成され、前記板体の一方の長辺に設けられて前記複数の環状溝部の各々に係合する櫛歯状の剥離歯を有する麺線剥離板と、前記麺線剥離板の下方に設置され、前記切刃ロールから剥離されて垂下された前記複数の麺線を移送する誘導部と、前記誘導部の下方に設置され、前記複数の麺線を搬送する搬送コンベアと、を含み、複数の前記剥離歯の各々は歯先部を有し、複数の歯先部は、前記剥離歯が係合される前記環状溝部の深さに応じて、前記切刃ロールの周方向における前位置及び後位置において、前記複数の環状溝部に係合していることを特徴とする麺線切出し装置」を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-210924号公報
【文献】特開2010-187623号公報
【文献】国際公開第2010/041477号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
うどん、パスタ等の一部の麺類では広幅の麺線が望まれる場合がある。麺線切出し装置を用いて広幅の麺線を形成する場合、通常は、広幅の環状溝部を有する切刃ロールが用いられる。切刃ロールの環状溝部から取り出された広幅の麺線をガイドの内部で鉛直方向に縮れさせると、麺線が広幅であることに起因して一方の麺線束の麺線と他方の麺線束の麺線の接触面積は依然として大きく、また、同一麺線においては、その縮れた部分前後の広幅部同士の接触面積は狭幅の麺線のときよりも大きくなり、複数の麺線同士又は同一麺線内の付着を十分に低減又は防止することができない。このことは、広幅の麺線をガイドの内部で縮れさせずに直接コンベア上に落下させた場合にさらに顕著である。麺線同士の付着は、蒸煮における麺線の不十分なα化、喫食時の麺線のほぐれ不良などを引き起こす場合があり、製品の品質に多大な悪影響を及ぼすおそれがある。
【0009】
本開示は、麺線同士、特に広幅の麺線同士の付着を低減又は防止することが可能な麺線切出し装置及び麺類の製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、切刃ロールの環状溝部から取り出された麺線に対して、所定方向に外力を加えて麺線の配向を変更することにより、麺線同士の付着を低減又は防止できることを見出して本発明を完成させた。
【0011】
本発明は、以下の実施形態[1]~[10]を包含する。
[1]
相互に対向して噛み合うように並列に配置された複数の環状溝部を有する一対の切刃ロールと、
前記切刃ロールの長手方向に沿って延びる板状部と、前記板状部の長辺に、該長辺と略直交する方向に延びる複数の突起部を有するスクレーパであって、前記複数の突起部がそれぞれ前記切刃ロールの前記複数の環状溝部の対応する1つに係合して前記複数の環状溝部にある麺線を前記切刃ロールから剥離するように構成されている、スクレーパと、
前記切刃ロールの長手方向に沿って前記複数の環状溝部の中心からずれて配置された複数の突起部を有する櫛板であって、前記複数の突起部が、前記麺線が前記切刃ロール及び前記スクレーパの前記複数の突起部と接触していない位置で前記麺線と接触するように構成されている、櫛板と
を備える、麺線切出し装置。
[2]
前記櫛板の前記複数の突起部が、前記切刃ロールから剥離しかつ前記スクレーパから離間した麺線の進行方向及び該麺線の幅方向に対して直交する方向に該麺線に力を加える隆起形状を有する、[1]に記載の麺線切出し装置。
[3]
前記櫛板が、前記切刃ロールの長手方向に沿って延びる板状部と、前記板状部の長辺に、該長辺と略直交する方向に延びる前記複数の突起部とを有しており、前記櫛板の前記板状部が前記スクレーパの前記板状部の上に重ねて配置されている、[1]又は[2]のいずれかに記載の麺線切出し装置。
[4]
前記櫛板の前記複数の突起部が、前記切刃ロールの前記複数の環状溝部に対して1つおきに配置されている、[1]~[3]のいずれかに記載の麺線切出し装置。
[5]
前記切刃ロールの前記環状溝部の幅が2.0mm以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の麺線切出し装置。
[6]
前記櫛板の前記複数の突起部の幅が、前記環状溝部の幅の50%以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の麺線切出し装置。
[7]
切り出された前記麺線を受容するガイドをさらに備える、[1]~[6]のいずれかに記載の麺線切出し装置。
[8]
[1]~[7]のいずれかに記載の麺線切出し装置を含む麺類の製造装置。
[9]
ドウから形成された麺帯を[1]~[7]のいずれかに記載の麺線切出し装置を用いて複数の麺線に切り出すことを含む、麺類の製造方法。
[10]
ドウから形成された麺帯を[1]~[7]のいずれかに記載の麺線切出し装置を用いて複数の麺線に切り出すこと、
切り出された前記複数の麺線を蒸煮してα化すること、及び
α化した前記麺線を乾燥すること
を含む、即席麺の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、麺線同士の付着を低減又は防止することができ、特に広幅の麺線同士の付着を効果的に低減又は防止することができる。本発明によれば、うどん、パスタ等の広幅の麺類及び即席麺を高品質かつ高効率で製造することができる。
【0013】
上述の記載は、本発明の全ての実施形態及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態の麺線切出し装置の切刃ロールの軸方向から見た概略断面図である。
図2A】一実施形態の切刃ロールの環状溝部と櫛板の突起部の位置関係を示す概略断面図である。
図2B】別の実施形態の切刃ロールの環状溝部と櫛板の突起部の位置関係を示す概略断面図である。
図2C】さらに別の実施形態の切刃ロールの環状溝部と櫛板の突起部の位置関係を示す概略断面図である。
図3】切刃ロールから剥離された麺線の配向が櫛板によって変更される様子を説明する概略断面図である。
図4】第1実施形態の麺線切出し装置を麺線が取り出される側の正面から見た概略平面図である。
図5】一実施形態の櫛板及びスクレーパの概略斜視図である。
図6】第2実施形態の麺線切出し装置を麺線が取り出される側の正面から見た概略平面図である。
図7A】櫛板がないときに麺線が縮れる方向を説明する概略斜視図である。
図7B】櫛板により配向が変更された麺線が縮れる方向を説明する概略斜視図である。
図8】一実施形態の麺線切出し装置を用いた麺線の切り出し工程を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の代表的な実施形態を例示する目的で、図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。図面の参照番号について、異なる図面において類似する番号が付された要素は、類似又は対応する要素であることを示す。
【0016】
本開示における「麺類」とは、小麦粉、澱粉、米粉、そば粉、マメ粉等を主原料として含み、線状に加工され、茹でる、煮る、炒める、熱湯を注水する、そのまま又は注水して電子レンジで加熱するなどの調理により喫食可能な状態となる食品を意味する。麺類として、例えば、うどん、きしめん、中華麺、そば、パスタ等が挙げられる。調理前の麺類の状態として、生麺、乾麺、蒸麺、茹で麺、冷凍麺、及び即席麺等が挙げられる。
【0017】
本開示における「即席麺」とは、麺類のうち生麺、蒸麺又は茹で麺を加熱乾燥して、麺に含まれる水分を、油揚げ乾燥の場合は約2~10質量%、熱風乾燥の場合は約6~14.5質量%となるまで除去することにより、長期保存可能とした食品を意味する。製造工程中にα化工程が含まれず、かつ常温又は低温で長時間乾燥させたものを「乾麺」という。本開示において、乾麺は即席麺とは区別され即席麺から除かれる。
【0018】
本開示における「ドウ」とは、主原料と、水、食塩、かん水等の副原料との混練物を意味する。主原料及び副原料の混練には、ニーダ、プラネタリーミキサなどを用いることができる。ドウの形状は一般に不定形であるが、混練した後に押出機等を用いて円筒状、角筒状等に成形されていてもよい。
【0019】
本開示における「麺帯」とは、ドウを麺線の切出しに適した厚みを有するシート状に加工したものを意味する。加工の方法としては、圧延中に形成される中間物である2枚又は3枚の粗麺帯を複合機によって重ねた後、次の圧延ロールでさらに圧延することが挙げられる。別の加工方法としては、ドウを押出機によって直接シート状に押出することが挙げられる。
【0020】
本開示における「麺線」とは、麺線切出し装置によって機械的に麺帯から切り出された麺を意味する。麺線の断面形状は、円形、楕円形、正方形、矩形、又はこれらの形状の一部の組み合わせ若しくは厚さが異なる同一形状の組み合わせによる輪郭を有する形状であってよく、それらの角部は面取りされていてもよい。
【0021】
本開示における「麺線束」とは、並列に配置された複数の環状溝部を有する1つの切刃ロールから取り出される一群の複数の麺線を意味する。一対の切刃ロールを備える麺線切出し装置を用いると、それぞれの切刃ロールから麺線束が取り出される。これらの2つの麺線束は、通常その後の工程で積み重なって処理される。
【0022】
本開示における「麺線の配向」とは、麺線の幅方向の向きを意味する。櫛板によって配向が変更される前の麺線及び配向が変更されていない麺線において、麺線の配向は切刃ロールの長手方向と実質的に一致する。
【0023】
図1に、一実施形態の麺線切出し装置の切刃ロールの軸方向から見た概略断面図を示す。麺線切出し装置100は、相互に対向して噛み合うように並列に配置された複数の環状溝部12a、12bを有する一対の切刃ロール10a、10bと、切刃ロール10a、10bの長手方向に沿って延びる板状部24a、24bと、板状部24a、24bの長辺に、その長辺と略直交する方向に延びる複数の突起部22a、22bを有するスクレーパ20a、20bであって、複数の突起部22a、22bがそれぞれ切刃ロール10a、10bの複数の環状溝部12a、12bの対応する1つに係合して複数の環状溝部12a、12bにある麺線を切刃ロール10a、10bから剥離するように構成されている、スクレーパ20a、20bと、切刃ロール10a、10bの長手方向に沿って複数の環状溝部12a、12bの中心からずれて配置された複数の突起部32a、32bを有する櫛板30a、30bであって、複数の突起部32a、32bが、麺線が切刃ロール10a、10b及びスクレーパ20a、20bの複数の突起部22a、22bと接触していない位置で麺線と接触するように構成されている、櫛板30a、30bとを備える。
【0024】
麺線切出し装置は、必要に応じて、切り出された麺線を受容するガイドをさらに備えてもよい。ガイドは、導管、誘導管、又は「ウェーブボックス」などと呼ばれることもある。切刃ロール、スクレーパ、櫛板、及び任意のガイドは、ステンレス、鉄等を用いて形成された枠状の筐体に取り付けられていてもよい。
【0025】
一対の切刃ロールとして麺線切出し装置に使用される公知のものを使用することができる。一対の切刃ロールは、相互に対向して噛み合うように並列に配置された複数の環状溝部を有する。切刃ロールの複数の環状溝部の間には凸部が存在する。ギアを介して各切刃ロールをモータ等の駆動装置に連結し、一対の切刃ロールを互いに反対方向に回転させながら切刃ロール間に麺帯を通すことにより、一方の切刃ロールの凸部及び他方の切刃ロールの環状溝部により麺帯が麺線へと切断される。麺帯の切断により形成された麺線は、切刃ロールの環状溝部に入り込む。
【0026】
切刃ロールの材料として、ステンレス、鉄等を使用することができる。
【0027】
一実施形態では、一対の切刃ロールは水平方向に並べて配置されて、スクレーパにより剥離された麺線は鉛直方向に移動(落下)する。別の実施形態では、一対の切刃ロールは水平方向から0度超、90度以下の角度を成す方向に並べて配置されて、スクレーパにより剥離された麺線は、斜め下方向に移動しながら落下する。
【0028】
環状溝部の断面は、半円形、半楕円形、正方形、矩形、三角形又はこれらの形状の一部の組み合わせ若しくは環状溝部の深さが異なる同一形状の組み合わせによる輪郭を有する形状であってよく、それらの角部は面取りされていてもよい。環状溝部の間の凸部は、平面、曲面、2つ以上の平面の組み合わせ、又は曲面と1以上の平面の組み合わせとすることができる。
【0029】
一実施形態では、環状溝部の幅は、2.0mm以上、2.3mm以上、2.6mm以上、3.2mm以上、3.5mm以上、3.8mm以上、又は4.5mm以上、30mm以下、15mm以下、又は10mm以下である。環状溝部の幅は、2.3mm以上であることが好ましく、3.2mm以上であることがより好ましく、3.5mm以上であることがさらに好ましい。一実施形態では、環状溝部の幅を、2.0mm~30mm、2.3mm~15mm、又は3.2mm~10mmである。本発明は、このような比較的大きい幅を有する環状溝部により切り出される広幅の麺線に対してより効果的である。本開示において、幅が2.0mm以上の環状溝部を有する切刃ロールから形成される麺類を広幅麺といい、広幅麺として、例えば、うどん、フェトチーネ等の一部のパスタ、佐野ラーメン、喜多方ラーメン、沖縄そば等の特定の地場麺、きしめん、平麺等が挙げられる。環状溝部の幅が30mm以下であれば、上記のような様々な広幅麺を通常の製造工程で製造することができる。
【0030】
スクレーパとして麺線切出し装置に使用される公知のものを使用することができる。スクレーパは、切刃ロールの長手方向に沿って延びる板状部と、板状部の長辺に、その長辺と略直交する方向に延びる複数の突起部を有する。複数の突起部はそれぞれ、切刃ロールの複数の環状溝部の対応する1つに係合して複数の環状溝部にある麺線を切刃ロールから剥離する。1つの切刃ロールから剥離された麺線は、切刃ロールの軸方向に沿って並んだ一群の複数の麺線から構成される麺線束となって、鉛直方向又は斜め下方向に向かって移動する。したがって、一対の切刃ロールから2つの麺線束が形成される。スクレーパは、カスリと呼ばれることもある。切刃ロールには稀に麺線の滓が付着したまま残留することがある。麺線の滓を切刃ロールから除去するために、スクレーパに、対応する複数の環状溝部の間の凸部の1つに接触する複数の突起部を設けてもよい。
【0031】
スクレーパの板状部は複数の突起部を所定位置で保持する支持部材として機能し、複数の突起部に加わる応力を吸収することもできる。スクレーパの板状部を利用して、ボルト等によりスクレーパを筐体に固定することもできる。
【0032】
スクレーパの複数の突起部はまっすぐ伸びていてもよく、屈曲部又は湾曲部を含んでもよい。複数の突起部の角部は面取りされていてもよい。
【0033】
スクレーパは、一枚の板の一方の辺に、櫛歯状の切り込みを入れて複数の突起部を形成することにより得ることができる。板は1つ又は2つ以上の鈍角を有するように折り曲げられていてもよく、複数の突起部に相当する部分、複数の突起部と板状部との境界に相当する部分、又はそれらの両方が屈曲又は湾曲していてもよい。スクレーパの材料として、真鍮、リン青銅、ステンレス等を使用することができる。真鍮及びリン青銅は加工が容易であり、ステンレスは耐久性に優れている。
【0034】
櫛板は、切刃ロールの長手方向に沿って、切刃ロールの複数の環状溝部の中心からずれて配置された複数の突起部を有する。櫛板の複数の突起部は、麺線が切刃ロール及びスクレーパの複数の突起部と接触していない位置で、麺線と接触する。これにより、切刃ロールから剥離して移動している最中の麺線の配向を、麺線の進行方向に直交する面上で回転させることができる。その結果、一方の切刃ロールから形成された麺線束の麺線の広幅部と、他方の切刃ロールから形成された麺線束の麺線の広幅部とが互いに接触しないように麺線束を積み重ねることができ、麺線同士の付着を低減又は防止することができる。
【0035】
図3に、切刃ロールから剥離された麺線の配向が櫛板によって変更される様子を説明する概略断面図を示す。図3では、一方の切刃ロール10aの環状溝部12aにある麺線52aが、環状溝部12aに係合したスクレーパ20aの突起部22aにより切刃ロールから剥離されて斜め下方に移動する。櫛板30aの突起部32aは、麺線52aが切刃ロール10a及びスクレーパ20aの突起部22aと接触していない位置で麺線52aと接触する。櫛板30aの突起部32aは、切刃ロール10aの環状溝部の中心からずれて配置(図3では紙面の鉛直方向に沿って手前側に配置)されているため、麺線52aは、その進行方向と直交する幅の一方の側(図3では紙面の鉛直方向に沿って手前側)で突起部32aに接触して、麺線52aの進行方向及び幅方向と直交する方向に力を受ける。これにより、切刃ロール10aから剥離して移動している麺線52aの配向は、麺線52aの進行方向に直交する面上で回転する。
【0036】
1つの麺線束に含まれる全ての麺線の配向がその進行方向に直交する面上で回転してもよく、1つの麺線束に含まれる一部の麺線の配向がその進行方向に直交する面上で回転するが、残りの麺線の配向はその進行方向に直交する面上で回転しなくてもよい。
【0037】
図1及び図3に示すように、櫛板の複数の突起部は、切刃ロールの複数の環状溝部に係合せず、挿入もされない。したがって、櫛板は切刃ロールの複数の環状溝部にある麺線を剥離する機能を有さない。
【0038】
図4に第1実施形態の麺線切出し装置を麺線が取り出される側の正面から見た概略平面図を示す。図4では、切刃ロール10a、10bの複数の環状溝部12a、12bのそれぞれにスクレーパの複数の突起部22a、22bが係合しており、切刃ロール10a、10bの複数の環状溝部12a、12bのそれぞれに対して櫛板の複数の突起部32a、32bが配置されている。
【0039】
図4では、スクレーパの板状部24a、24bからスクレーパの複数の突起部22a、22bが延びる方向を上方向として、櫛板の板状部34a、34bの側から見たときに、櫛板の突起部32a、32bが全て環状溝部12a、12bの中心から右側にずれている。図4に示す実施形態では、切刃ロール10aによって切り出される上側麺線束の麺線及び切刃ロール10bによって切り出される下側麺線束の麺線の配向は、麺線の進行方向に直交する面上で同じ方向に、すなわちその面上で時計方向に回転する。言い換えると、図4に示す実施形態では、切刃ロール10aによって切り出される上側麺線束の麺線は、図4においてその左側が櫛板の突起部32aに接触してその配向が変更され、一方、切刃ロール10bによって切り出される下側麺線束の麺線は、図4においてその右側が櫛板の突起部32bに接触してその配向が変更される。その結果、コンベアの上から正対して見た場合、上側麺線束と下側麺線束とは、互いに逆方向に配向が変更された状態で積み重なる。別のいくつかの実施形態では、突起部32aが全て環状溝部12aの中心から右側にずれており、かつ突起部32bが全て環状溝部12bの中心から左側にずれているか、突起部32aが全て環状溝部12aの中心から左側にずれており、かつ突起部32bが全て環状溝部12bの中心から右側にずれているか、あるいは、突起部32a、32bが全て環状溝部12a、12bの中心から左側にずれている。
【0040】
第1実施形態において、櫛板の複数の突起部はそれぞれ、切刃ロールの長手方向に沿って隣り合う突起部とは異なる側に環状溝部の中心からずれていてもよい。例えば、スクレーパの板状部からスクレーパの複数の突起部が延びる方向を上方向として、麺線切出し装置を麺線が取り出される側の正面から見たときに、櫛板の1つの突起部が環状溝部の中心から右側にずれている場合、切刃ロールの長手方向に沿って隣にある1つ又は2つの突起部は環状溝部の中心から左側にずれていてもよく、逆もまた同様である。
【0041】
第1実施形態において、櫛板の複数の突起部はそれぞれ、複数の環状溝部の対応する環状溝部の中心から不規則な側にずれていてもよく、不規則な距離でずれていてもよく、又はこれらの組み合わせでずれていてもよい。
【0042】
切刃ロールの環状溝部の中心からずれて配置された、櫛板の突起部の例を図2A図2Cに示す。図2Aでは、切刃ロール10の環状溝部12の中心線Aは、櫛板30の突起部32の中心線Bとは一致しない。図2Bでは、切刃ロール10の環状溝部12の中心線A上に、櫛板30の突起部32が存在しない。図2Cでは、切刃ロール10の環状溝部12の中心線Aに、櫛板30の突起部の一方の側面が一致する。
【0043】
一実施形態では、図5に概略斜視図で示すように、櫛板30は、切刃ロールの長手方向に沿って延びる板状部34と、板状部34の長辺に、その長辺と略直交する方向に延びる複数の突起部32とを有しており、櫛板30の板状部34がスクレーパ20の板状部24の上に重ねて配置されている。櫛板の板状部とスクレーパの板状部とを重ねて、櫛板及びスクレーパを一緒にボルト等で筐体に固定してもよい。
【0044】
櫛板の複数の突起部はまっすぐ伸びていてもよく、屈曲部又は湾曲部を含んでもよい。複数の突起部の角部は面取りされていてもよい。
【0045】
櫛板は、一枚の板の一方の辺に、櫛歯状の切り込みを入れて複数の突起部を形成することにより得ることができる。板は1つ又は2つ以上の鈍角を有するように折り曲げられていてもよく、複数の突起部と板状部との境界に相当する部分が屈曲又は湾曲していてもよい。櫛板を圧縮成形、射出成形、注型などの樹脂成形技術を用いて形成することもできる。図3では櫛板が一枚で構成されているが、突起部を有する二枚以上の部材を重ね合せて櫛板を構成してもよい。
【0046】
櫛板の材料として、例えば、真鍮、リン青銅、ステンレス等の金属材料、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBS)、シリコーンゴムなどのゴム、又はアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂を使用することができる。真鍮、リン青銅、ゴム、及びプラスチックは加工が容易であり、ステンレスは耐久性に優れている。複数の突起部の表面にニッケルなどのメッキ、又はフッ素樹脂等のコーティングが施されていてもよい。
【0047】
一実施形態では、櫛板の複数の突起部は、切刃ロールから剥離しかつスクレーパから離間した麺線の進行方向及び幅方向に対して直交する方向に麺線に力を加える隆起形状を有する。隆起形状を有する突起部の、麺線の進行方向に沿った断面として、鉤状に曲げられた形状、半円形若しくは弓形、三角形、台形等が挙げられる。図1図3及び図5には、麺線の進行方向に沿った断面が鉤状に曲げられた形状を有する突起部32、32a、32bが示されている。
【0048】
一実施形態では、櫛板の複数の突起部の幅は、切刃ロールの環状溝部の幅の50%以下である。図2A図2Cには、櫛板の複数の突起部の幅W2が、切刃ロールの環状溝部の幅W1の50%以下である態様が示されている。櫛板の複数の突起部の幅W2は、図2A及び図2Bでは切刃ロールの環状溝部の幅W1の50%未満であり、図2Cでは切刃ロールの環状溝部の幅W1の50%である。櫛板の複数の突起部の幅は、切刃ロールの環状溝部の幅の45%以下、40%以下、又は33%以下、5%以上、15%以上、又は30%以上であってもよい。一実施形態では、櫛板の複数の突起部の幅は、切刃ロールの環状溝部の幅の5%~45%、15%~40%、又は30%~33%である。
【0049】
第2実施形態では、櫛板の複数の突起部は、切刃ロールの複数の環状溝部に対して1つおきに配置されている。図6にこの実施形態の麺線切出し装置を麺線が取り出される側の正面から見た概略平面図を示す。図6では、切刃ロール10a、10bの複数の環状溝部12a、12bのそれぞれにスクレーパの複数の突起部22a、22bが係合しており、切刃ロール10a、10bの複数の環状溝部12a、12bに対して櫛板の複数の突起部32a、32bが1つおきに配置されている。この実施形態では、1つの麺線束のある麺線は櫛板の突起部と接触してその配向が変更されるが、同じ麺線束の当該麺線に隣り合う麺線は櫛板の突起部と接触せずその配向は変更されない。そのため、当該麺線とそれに隣り合う麺線の広幅部同士は接触しない。これにより、2つの麺線束の麺線同士の付着を低減又は防止しつつ、さらに、1つの麺線束に含まれる、隣り合う麺線同士の付着を低減又は防止することができる。
【0050】
また、第2実施形態では、櫛板の突起部に接触した麺線と接触しなかった麺線との間で、麺線の進行方向(櫛板の突起部に麺線が接触する直前及び接触した直後における麺線が有する速度ベクトルの向き)又は縮れの周期若しくは位相にずれが生じる。具体的には、櫛板の突起部に麺線が接触すると、麺線の進行方向が変更される場合があり、麺線の進行が遅延して麺線の縮れの周期又は位相が変更される場合もある。そのため、1つの麺線束に含まれる麺線の進行方向又は縮れの周期若しくは位相の規則性を失わせて、当該麺線束の単位長さあたりの麺線質量をより均一にすることができる。一般に、麺製品の製造において、麺線を一食単位に切断する工程では、製造誤差等を考慮して、麺線の質量が一食の量目を下回らないように、例えば一食の量目の105%を目標値として麺線が切断される。麺線束の単位長さあたりの麺線質量をより均一にすることで、麺線を一食単位に切断する工程において考慮すべき製造誤差をより小さくすることができる。その結果、一食の量目により近い目標値、すなわちより100%に近い目標値で麺線を切断することができ、麺製品の製造コストを効果的に削減することができる。
【0051】
麺線束の単位長さあたりの麺線質量をより均一にする効果は、広幅麺だけではなく、より幅の狭い麺線においても得ることができる。狭幅の麺線では、麺線の配向が変更されることによる麺線同士の付着を低減又は防止する効果は小さいか、あるいは実質的にないと考えられるが、麺線束に含まれる麺線の進行方向又は縮れの周期若しくは位相のずれは広幅麺と同様に生じる。そのため、狭幅の麺線を含む麺製品においても、一食の量目により近い目標値、すなわちより100%に近い目標値で麺線を切断することができ、麺製品の製造コストを削減することができる。第2実施形態において、環状溝部の幅は、0.75mm以上、1.0mm以上、又は1.25mm以上、30mm以下、15mm以下、又は10mm以下であってもよい。例えば、環状溝部の幅を、0.75mm~30mm、1.0mm~15mm、又は1.25mm~10mmとすることができる。
【0052】
図6では、スクレーパの板状部24a、24bからスクレーパの複数の突起部22a、22bが延びる方向を上方向として、櫛板の板状部34a、34bの側から見たときに、櫛板の突起部32a、32bが全て環状溝部12a、12bの中心から右側にずれている。図6に示す実施形態では、切刃ロール10aによって切り出される上側麺線束の麺線及び切刃ロール10bによって切り出される下側麺線束の麺線のうち、櫛板の突起部32a、32bと接触する麺線の配向は、麺線の進行方向に直交する面上で同じ方向に、すなわちその面上で時計方向に回転する。言い換えると、図6に示す実施形態では、切刃ロール10aによって切り出される上側麺線束の麺線の一部は、図6においてその左側が櫛板の突起部32aに接触してその配向が変更され、一方、切刃ロール10bによって切り出される下側麺線束の麺線の一部は、図6においてその右側が櫛板の突起部32bに接触してその配向が変更される。その結果、コンベアの上から正対して見た場合、上側麺線束と下側麺線束とは、互いに逆方向に配向が変更された状態で積み重なる。別のいくつかの実施形態では、突起部32aが全て環状溝部12aの中心から右側にずれており、かつ突起部32bが全て環状溝部12bの中心から左側にずれているか、突起部32aが全て環状溝部12aの中心から左側にずれており、かつ突起部32bが全て環状溝部12bの中心から右側にずれているか、あるいは、突起部32a、32bが全て環状溝部12a、12bの中心から左側にずれている。
【0053】
第2実施形態において、櫛板の複数の突起部はそれぞれ、切刃ロールの長手方向に沿って隣り合う突起部とは異なる側に環状溝部の中心からずれていてもよい。例えば、スクレーパの板状部からスクレーパの複数の突起部が延びる方向を上方向として、麺線切出し装置を麺線が取り出される側の正面から見たときに、櫛板の1つの突起部が環状溝部の中心から右側にずれている場合、切刃ロールの長手方向に沿って隣にある1つ又は2つの突起部は環状溝部の中心から左側にずれていてもよく、逆もまた同様である。
【0054】
第2実施形態において、櫛板の複数の突起部はそれぞれ、複数の環状溝部の対応する環状溝部の中心から不規則な側にずれていてもよく、不規則な距離でずれていてもよく、又はこれらの組み合わせでずれていてもよい。
【0055】
一実施形態では、麺線切出し装置は、切り出された麺線を受容するガイドをさらに備える。ガイドとして、スクレーパによって切刃ロールから剥離された麺線を一旦受容して、その後、麺線をコンベア上に導く機能を有する、麺線切出し装置に使用される公知のものを使用することができる。ガイドは、切刃ロールの長手方向に沿って配置された、麺線束を分割する仕切り板をさらに備えてもよい。ガイドは、一般に、一対の切刃ロールの直下又は斜め下方であって、かつ一対の切刃ロールとコンベアの間に、垂直方向に麺線が移動するように立てて、又は斜め下方向に麺線が移動するように傾斜して配置される。
【0056】
ガイドは、一般に樋状、板状、又は管状であり、ステンレス、プラスチック等の材料を用いて形成することができる。ガイドの上側は開放されていてもよく、ガイドの上側に開閉可能かつ開口部分の高さを調整可能な蓋を用いてもよい。蓋は、ガイドに取り付けられていてもよく、ガイドと一体であってもよく、ガイドとは別の部分、例えば切刃ロールが装着された筐体に取り付けられてもよい。ガイドと蓋とは同じ材料で形成されてもよく、異なる材料で形成されてもよい。例えば、ガイドをステンレス製としたときに、蓋は軟質プラスチック又はシリコーンゴム製のシートであってもよい。
【0057】
切刃ロールの直下又はガイドの出口の下方にコンベアを配置することができる。コンベアは特に限定されず、金網コンベア又はネットコンベア、ベルトコンベアなどであってよい。切り出された麺線は、コンベア上に直接又はガイドを通って移送される。一対の切刃ロールから形成された2つの麺線束はコンベア上又はガイド上で鉛直方向に積み重ねられて、後工程に移送されて処理される。
【0058】
麺線切出し装置の直下に配置されたコンベアの搬送速度は、一般に切刃ロールの回転速度、すなわち麺線の切出し速度より小さくされる。スクレーパにより切刃ロールから剥離され、櫛板により配向が変更された麺線、又は配向が変更されなかった麺線は、コンベア上に移されたとき、又はガイド上を移動している間に、コンベアの搬送速度と麺線の切出し速度の差による生じる抵抗を受けて縮れる。このように縮れた麺線の状態を、その形状から「ウェーブ」と表現する場合がある。上側に蓋を有するガイドを通して麺線をコンベア上に導く場合、ガイド及び蓋により画定された、より拘束された空間で麺線が縮れるため、麺線の縮れの度合い、すなわち「ウェーブ」の大きさをより均一にすることができる。上側に蓋を有するガイドを用いない場合、麺線に縮れを形成するためには、切刃ロールの直下にコンベアを配置することが望ましい。切刃ロールとコンベアの距離が離れていると麺線に縮れが形成されない場合がある。切刃ロールとコンベアの距離がどの程度で麺線に縮れが形成されるかは、麺線の原材料、製造条件等により異なるので、コンベアは麺線に縮れが形成される程度に切刃ロールの「直下」にあればよい。上側に蓋を有するガイドを用いて麺線に縮れを形成する場合は、コンベアの配置及び切刃ロールとコンベアの距離に制限はない。
【0059】
櫛板の有無による麺線の縮れ方の違いを図7A及び図7Bを参照して説明する。図7Aは、櫛板がないときに麺線が縮れる方向を説明する概略斜視図であり、図7Bは、櫛板により配向が変更された麺線が縮れる方向を説明する概略斜視図である。
【0060】
図7Aでは、z方向に沿って矢印方向に進行する麺線は、原点Oでその配向が変更されない、すなわち麺線の進行方向に直交する面(x-y面)上で回転しない。このことは、図7Aにおいて、2本の引出線に挟まれた麺線の配向を示す両矢印が、z軸が負と正の両方の位置で同一の方向を向いていることにより示されている。麺線はy方向で縮れるため、2つの麺線束が鉛直方向(y方向)に積み重なった状態では、上側の麺線束の麺線の広幅部と下側の麺線束の広幅部との接触面積は大きいため、これらの麺線同士は付着しやすい。
【0061】
図7Bでは、z方向に沿って矢印方向に進行する麺線は、原点Oに配置された櫛板の突起部により、その配向が麺線の進行方向に直交する面(x-y面)上でx軸からy軸に向かって回転する。このことは、図7Bにおいて、2本の引出線に挟まれた麺線の配向を示す両矢印が、z軸が負の位置(麺線が櫛板の突起部に接触する前)と、正の位置(麺線が櫛板の突起部に接触した後)とで異なる方向を向いていることにより示されている。この回転により原点Oで捻れた麺線はx方向で縮れるため、2つの麺線束が鉛直方向(y方向)に積み重なった状態では、x方向で縮れた麺線束の麺線の広幅部が他方の麺線束の麺線とは接触しないため、これらの麺線同士の付着を効果的に低減又は防止することができる。
【0062】
麺線を蒸煮する際に、上記コンベアよりも若干高速で麺線束を搬送するコンベアを上記コンベアの直後又は後工程に配置してもよい。蒸煮を行う際、縮れの密度が高すぎると、麺線表面のα化により麺線同士が結着することがある。しかし、麺線同士の結着を防ぐことができる程度に縮れの密度が疎である麺線束を、切刃ロールの切出し速度とコンベアの搬送速度のみで実現しようとしても、好適な形状の縮れをつくることが難しい場合がある。そこで、麺線切出し装置の直後のコンベア上では縮れが密な状態の麺線束をつくり、その後、蒸煮前に若干高速で麺線束を搬送するコンベアに移して、蒸煮時に麺線同士が結着しない程度に縮れの密度を緩和させることができる。コンベア速度が若干高速になっていることにより、後工程の生産効率を高めることもできる。本発明は、従来技術と比較して、蒸し機内をコンベアが通過する際に生じる麺線同士の結着をより低減することができる。
【0063】
図8に、一実施形態の麺線切出し装置100を用いた麺線の切り出し工程を説明する概略断面図を示す。麺帯50は、互いに反対方向に回転する一対の切刃ロール10a、10bの間を通過する。切刃ロール10a、10bはそれぞれ、麺帯50を複数の麺線52a、52bへと切断する。切刃ロール10a、10bの環状溝部12a、12bに入った麺線52a、52bは、スクレーパ20a、20bの突起部(符号不図示)により切刃ロール10a、10bから剥離されて上側麺線束54a及び下側麺線束54bをそれぞれ形成し、斜め下方に向かって進行する。その後、麺線52a、52bは、櫛板30a、30bの突起部(符号不図示)と接触して、麺線52a、52bの配向は麺線52a、52bの進行方向に直交する面上で回転する。切刃ロール10a、10bの斜め下方、かつ切刃ロール10a、10bとコンベア44の間にガイド40及び蓋42が配置されている。麺線52a、52bは、ガイド40及び蓋42で画定された、拘束された空間を通る間に、コンベア44の搬送速度と切刃ロール10a、10bの回転速度、すなわち麺線の切出し速度の差により縮れる。図8では説明の便宜上、麺線52a、52bの縮れ方向を上下方向としているが、麺線52a、52bの配向が変更されているため、麺線52a、52bは、実際は紙面の鉛直方向に沿って縮れていることに留意されたい。ガイド40の内部又は出口で、麺線52aを含む上側麺線束54aと麺線52bを含む下側麺線束54bとが重ねられて、コンベア44により、蒸煮等の後工程に移送される。
【0064】
一実施形態の麺類の製造装置は、上記麺線切出し装置を含む。麺類の製造装置は、ホッパーなどの主原料及び副原料の供給装置、主原料及び副原料を混練するニーダ、プラネタリーミキサなどの混合装置、押出機、ドウから麺帯を形成する圧延ロール及び複合機、麺線束を搬送するコンベア、麺線に含まれる澱粉質をα化する蒸煮機、麺線束を一食分の長さに切断する切断機、油揚げ乾燥機又は熱風乾燥機、包装機などを含んでもよい。
【0065】
一実施形態の麺類の製造方法は、ドウから形成された麺帯を、上記麺線切出し装置を用いて複数の麺線に切り出すことを含む。
【0066】
一実施形態の即席麺の製造方法は、ドウから形成された麺帯を、上記麺線切出し装置を用いて複数の麺線に切り出すこと、切り出された複数の麺線を蒸煮してα化すること、及びα化した麺線を乾燥することを含む。即席麺は油揚げ麺であってもよく、熱風乾燥麺であってもよい。
【0067】
本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、その精神の範囲内において本発明の様々な変形、構成要素の追加、又は改良が可能である。
【符号の説明】
【0068】
100 麺線切出し装置
10、10a、10b 切刃ロール
12、12a、12b 環状溝部
20、20a、20b スクレーパ
22、22a、22b スクレーパの突起部
24、24a、24b スクレーパの板状部
30、30a、30b 櫛板
32、32a、32b 櫛板の突起部
34、34a、34b 櫛板の板状部
40 ガイド
42 蓋
44 コンベア
50 麺帯
52a、52b 麺線
54a 上側麺線束
54b 下側麺線束
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8