(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】非接触電力伝送装置及び非接触電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/40 20160101AFI20220915BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220915BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20220915BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20220915BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20220915BHJP
B60L 53/38 20190101ALI20220915BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J7/00 301D
H02J50/10
H02J7/00 P
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/38
(21)【出願番号】P 2018217270
(22)【出願日】2018-11-20
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】小林 茂
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-074856(JP,A)
【文献】特開2011-045236(JP,A)
【文献】特開2006-121791(JP,A)
【文献】特表2017-536067(JP,A)
【文献】特表2017-515445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00-13/00
B60L15/00-58/40
B60M1/00-7/00
H01F38/14
H01F38/18
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J50/00-50/90
H04B5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の移動方向に延びて前記移動体内の受電コイルに非接触電力伝送し、前記移動方向に沿って互いに間隔を空けて設けられ、前記間隔の前記移動方向に沿った長さが前記受電コイルの前記移動方向に沿った長さより短い複数の送電コイルと、
各々の前記送電コイルを独立の位相で駆動する複数の送電電源と、
前記移動方向に沿って互いに隣り合う前記送電コイルについて、一の前記送電コイルの発生磁界が他の前記送電コイルの発生磁界より強い一の期間と、一の前記送電コイルの発生磁界が他の前記送電コイルの発生磁界より弱い他の期間と、が前記移動体の移動位置に関わらず交互に出現するように、前記複数の送電電源を制御する送電制御部と、
を備えることを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項2】
前記送電制御部は、前記一の期間及び前記他の期間を等しい長さに制御する
ことを特徴とする、請求項1に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項3】
隣り合う前記送電コイルのうちの発生磁界がより強い前記送電コイルと、前記受電コイルと、が互いに対向する領域の前記移動方向に沿った長さが、前記受電コイルの前記移動方向に沿った長さにほぼ等しいときには、発生磁界がより強い前記送電コイルが、前記移動体内の負荷での消費電力を供給することが可能になるように、前記送電制御部は、前記一の期間及び前記他の期間を短すぎない長めの長さに制御する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項4】
隣り合う前記送電コイルについて、一の前記送電コイルの発生磁界が有限値であり、他の前記送電コイルの発生磁界がほぼ0である前記一の期間と、一の前記送電コイルの発生磁界がほぼ0であり、他の前記送電コイルの発生磁界が有限値である前記他の期間と、が交互に出現するように、前記送電制御部は、前記複数の送電電源を制御する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の非接触電力伝送装置。
【請求項5】
隣り合う前記送電コイルのうちの発生磁界が有限値である前記送電コイルと、前記受電コイルと、が互いに対向する領域の前記移動方向に沿った長さが、前記受電コイルの前記移動方向に沿った長さのほぼ半分又はそれ以下であるときでも、発生磁界が有限値である前記送電コイルは、前記受電コイルに非接触電力伝送することが可能である
ことを特徴とする、請求項4に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項6】
隣り合う前記送電コイルのうちの発生磁界がほぼ0である前記送電コイルと、前記受電コイルと、が互いに対向する領域の前記移動方向に沿った長さが、前記受電コイルの前記移動方向に沿った長さにほぼ等しいときでも、発生磁界がほぼ0である前記送電コイルが、発生磁界が有限値である状態に遷移し、前記受電コイルに非接触電力伝送し、前記移動体内の蓄電素子を電池切れにしないことが可能になるように、前記送電制御部は、前記一の期間及び前記他の期間を長すぎない短めの長さに制御する
ことを特徴とする、請求項4又は5に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項7】
隣り合う前記送電コイルについて、一の前記送電コイルの発生磁界がより大きい有限値であり、他の前記送電コイルの発生磁界がより小さい有限値である前記一の期間と、一の前記送電コイルの発生磁界がより小さい有限値であり、他の前記送電コイルの発生磁界がより大きい有限値である前記他の期間と、が交互に出現するように、前記送電制御部は、前記複数の送電電源を制御する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の非接触電力伝送装置。
【請求項8】
隣り合う前記送電コイルのうちの発生磁界がより大きい有限値である前記送電コイルと、前記受電コイルと、が互いに対向する領域の前記移動方向に沿った長さが、前記受電コイルの前記移動方向に沿った長さのほぼ半分であるときでも、発生磁界がより大きい有限値である前記送電コイルは、前記受電コイルに非接触電力伝送することが可能である
ことを特徴とする、請求項7に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項9】
隣り合う前記送電コイルのうちの発生磁界がより小さい有限値である前記送電コイルと、前記受電コイルと、が互いに対向する領域の前記移動方向に沿った長さが、前記受電コイルの前記移動方向に沿った長さにほぼ等しいときでも、(1)発生磁界がより小さい有限値である前記送電コイルは、前記受電コイルに非接触電力伝送することが可能である、又は、(2)発生磁界がより小さい有限値である前記送電コイルが、発生磁界がより大きい有限値である状態に遷移し、前記受電コイルに非接触電力伝送し、前記移動体内の蓄電素子を電池切れにしないことが可能になるように、前記送電制御部は、前記一の期間及び前記他の期間を長すぎない短めの長さに制御する
ことを特徴とする、請求項7又は8に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の非接触電力伝送装置と、
前記受電コイルと、受電電力を蓄電する蓄電素子と、を設ける前記移動体と、
を備えることを特徴とする非接触電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体内の受電コイルに非接触電力伝送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体内の受電コイルに非接触電力伝送する技術が、電動車両、電子機器搭載カート、FA(Factory Automation)用製造パレット、及び、これらに装着された電子タグに対して、非接触電力伝送する目的で適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の非接触電力伝送システムの構成を
図1に示す。従来技術の非接触電力伝送システムSは、直流電源1、送電ユニット2-1、2-2、2-3、2-4及び移動体3-1、3-2、3-3から構成される。送電ユニット2-1、2-2、2-3、2-4は、移動方向に延びて移動方向に沿って互いに間隔を詰めてこの順序で設けられる。移動体3-1は、送電ユニット2-1上に位置し、移動体3-2は、送電ユニット2-2と送電ユニット2-3との境界上に位置し、移動体3-3は、送電ユニット2-4上に位置する。
【0005】
送電ユニット2-m(m=1~4)は、送電電源21-m、送電コイル22-m及び移動体ガイド23-mから構成される。移動体3-n(n=1~3)は、受電コイル31-n、受電電源32-n、蓄電素子33-n及び負荷34-nから構成される。
【0006】
直流電源1は、送電電源21-mに直流電圧を出力する。送電電源21-mは、直流電圧を交流電圧に変換し、それぞれ、送電コイル22-mを独立の位相で駆動する。送電コイル22-mは、移動方向に延びて受電コイル31-nに非接触電力伝送し、移動方向に沿って互いに間隔を空けて設けられる。ここで、上記間隔の移動方向に沿った長さは、受電コイル31-nの移動方向に沿った長さより短い。よって、受電コイル31-nは、移動方向に沿って互いに隣り合う送電コイル22-mの境界上に位置し得る。
【0007】
移動体ガイド23-mは、移動方向に延びて移動方向に沿って互いに間隔を詰めて設けられる。受電コイル31-nは、送電コイル22-mから非接触電力伝送される。受電電源32-nは、交流電圧を直流電圧に変換し、それぞれ、蓄電素子33-nに受電電力を供給する。蓄電素子33-nは、受電電力を蓄電し、それぞれ、負荷34-nに蓄電電力を供給する。負荷34-nは、移動体3-nの移動機構(台車等)、移動体3-nの駆動機構(搬送機等)及び移動体3-nに装着された電子タグ等である。
【0008】
従来技術の送受電コイル間の磁界結合を
図2に示す。上記のように、送電電源21-mは、それぞれ、送電コイル22-mを独立の位相で駆動する。よって、送電コイル22-mは、それぞれ、独立の位相で磁界を発生させる。最良の場合は、移動方向に沿って互いに隣り合う送電コイル22-mは、互いに同相で磁界を発生させる。最悪の場合は、移動方向に沿って互いに隣り合う送電コイル22-mは、互いに逆相で磁界を発生させる。
図2では、最悪の場合における送受電コイル間の磁界結合について説明する。
【0009】
送電コイル22-1、22-2、22-3、22-4の発生磁界は、上面図ではそれぞれ、紙面手前方向、紙面奥行方向、紙面手前方向、紙面奥行方向であり、側面図ではそれぞれ、紙面上向き方向、紙面下向き方向、紙面上向き方向、紙面下向き方向である。
【0010】
受電コイル31-1は、送電コイル22-1上に位置する。そして、受電コイル31-1と送電コイル22-1との間の鎖交磁界は、上面図では紙面手前方向であり、側面図では紙面上向き方向であり、十分に大きい有限値である。よって、送電コイル22-1から受電コイル31-1への非接触電力伝送は、最悪の場合でも可能である。
【0011】
受電コイル31-3は、送電コイル22-4上に位置する。そして、受電コイル31-3と送電コイル22-4との間の鎖交磁界は、上面図では紙面奥行方向であり、側面図では紙面下向き方向であり、十分に大きい有限値である。よって、送電コイル22-4から受電コイル31-3への非接触電力伝送は、最悪の場合でも可能である。
【0012】
受電コイル31-2は、送電コイル22-2、22-3の境界上に位置する。ここで、受電コイル31-2と送電コイル22-2との間の鎖交磁界は、上面図では紙面奥行方向であり、側面図では紙面下向き方向であり、十分に大きい有限値である。そして、受電コイル31-2と送電コイル22-3との間の鎖交磁界は、上面図では紙面手前方向であり、側面図では紙面上向き方向であり、十分に大きい有限値である。しかし、受電コイル31-2と送電コイル22-2との間の鎖交磁界と、受電コイル31-2と送電コイル22-3との間の鎖交磁界とは、相殺を生じさせる。よって、送電コイル22-2、22-3から受電コイル31-2への非接触電力伝送は、最悪の場合では不能である。
【0013】
そこで、他の技術として、移動体3-nの移動範囲にわたって、送電コイル22-mを1個の送電コイルにまとめる方法がある。しかし、移動距離の増減、移動軌道の変更及び負荷台数の増減に対して、送電コイル及び送電電源の再設計及び交換が必要である。
【0014】
そして、他の技術として、移動体3-nの移動位置を検出して、送電コイル22-mをON/OFF制御する方法もある(特許文献1を参照)。しかし、高速で移動し得て台数が増減し得る移動体3-nの移動位置を検出する装置が必要である。
【0015】
さらに、他の技術として、送電電源21-mの駆動位相を同期させて、送電コイル22-mの磁界位相を同期させる方法もある。しかし、高周波の電圧を出力する送電電源21-mの駆動位相を高速の通信を通して同期させる装置が必要である。
【0016】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、移動体内の受電コイルに非接触電力伝送するにあたり、移動方向に延びる複数の送電コイルを移動方向に沿って互いに間隔を空けて設けたうえで、移動体の移動位置を検出せず、複数の送電電源の駆動位相を同期させず、移動範囲内の任意位置で非接触電力伝送を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するために、受電コイルが移動方向に沿って互いに隣り合う送電コイルの境界上に位置するときであっても、受電コイルと一の送電コイルとの間の鎖交磁界と、受電コイルと他の送電コイルとの間の鎖交磁界とが、相殺を生じさせないようにする。
【0018】
具体的には、まず、一の期間において、一の送電コイルの発生磁界を他の送電コイルの発生磁界より強くする。しかし、当該一の期間では、他の送電コイル上に位置する受電コイルは、非接触電力伝送されない可能性がある。そのために、次に、他の期間において、一の送電コイルの発生磁界を他の送電コイルの発生磁界より弱くする。そして、当該一の期間と当該他の期間とを、移動体の移動位置に関わらず交互に出現させる。
【0019】
具体的には、本開示は、移動体の移動方向に延びて前記移動体内の受電コイルに非接触電力伝送し、前記移動方向に沿って互いに間隔を空けて設けられ、前記間隔の前記移動方向に沿った長さが前記受電コイルの前記移動方向に沿った長さより短い複数の送電コイルと、各々の前記送電コイルを独立の位相で駆動する複数の送電電源と、前記移動方向に沿って互いに隣り合う前記送電コイルについて、一の前記送電コイルの発生磁界が他の前記送電コイルの発生磁界より強い一の期間と、一の前記送電コイルの発生磁界が他の前記送電コイルの発生磁界より弱い他の期間と、が前記移動体の移動位置に関わらず交互に出現するように、前記複数の送電電源を制御する送電制御部と、を備えることを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0020】
この構成によれば、移動方向に延びる複数の送電コイルを移動方向に沿って互いに間隔を空けて設けたうえで、移動体の移動位置を検出せず、複数の送電電源の駆動位相を同期させず、移動範囲内の任意位置で非接触電力伝送を可能にすることができる。
【0021】
また、本開示は、前記送電制御部は、前記一の期間及び前記他の期間を等しい長さに制御することを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0022】
この構成によれば、移動範囲内の任意位置で均等な非接触電力伝送を可能にすることができる。そして、移動方向に沿って互いに隣り合う送電コイルの境界上の位置であっても、1個の送電コイル上の位置と比べて、非接触電力伝送効率が若干低くなるだけである。
【0023】
また、本開示は、隣り合う前記送電コイルのうちの発生磁界がより強い前記送電コイルと、前記受電コイルと、が互いに対向する領域の前記移動方向に沿った長さが、前記受電コイルの前記移動方向に沿った長さにほぼ等しいときには、発生磁界がより強い前記送電コイルが、前記移動体内の負荷での消費電力を供給することが可能になるように、前記送電制御部は、前記一の期間及び前記他の期間を短すぎない長めの長さに制御することを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0024】
この構成によれば、受電コイルが発生磁界のより強い送電コイル上に位置するときには、移動体内の負荷での消費電力に見合う非接触電力伝送を可能にすることができる。
【0025】
また、本開示は、隣り合う前記送電コイルについて、一の前記送電コイルの発生磁界が有限値であり、他の前記送電コイルの発生磁界がほぼ0である前記一の期間と、一の前記送電コイルの発生磁界がほぼ0であり、他の前記送電コイルの発生磁界が有限値である前記他の期間と、が交互に出現するように、前記送電制御部は、前記複数の送電電源を制御することを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0026】
この構成によれば、受電コイルが移動方向に沿って互いに隣り合う送電コイルの境界上に位置するときであっても、受電コイルと一の送電コイルとの間の鎖交磁界と、受電コイルと他の送電コイルとの間の鎖交磁界とが、全く相殺を生じさせないようにできる。
【0027】
また、本開示は、隣り合う前記送電コイルのうちの発生磁界が有限値である前記送電コイルと、前記受電コイルと、が互いに対向する領域の前記移動方向に沿った長さが、前記受電コイルの前記移動方向に沿った長さのほぼ半分又はそれ以下であるときでも、発生磁界が有限値である前記送電コイルは、前記受電コイルに非接触電力伝送することが可能であることを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0028】
この構成によれば、受電コイルが移動方向に沿って互いに隣り合う送電コイルの境界上に位置するときであっても、受電コイルに非接触電力伝送することができる。
【0029】
また、本開示は、隣り合う前記送電コイルのうちの発生磁界がほぼ0である前記送電コイルと、前記受電コイルと、が互いに対向する領域の前記移動方向に沿った長さが、前記受電コイルの前記移動方向に沿った長さにほぼ等しいときでも、発生磁界がほぼ0である前記送電コイルが、発生磁界が有限値である状態に遷移し、前記受電コイルに非接触電力伝送し、前記移動体内の蓄電素子を電池切れにしないことが可能になるように、前記送電制御部は、前記一の期間及び前記他の期間を長すぎない短めの長さに制御することを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0030】
この構成によれば、受電コイルが発生磁界のほぼ0である送電コイル上に位置するときであっても、移動体内の蓄電素子が電池切れになる前に、その送電コイルの発生磁界が有限値になるため、受電コイルに非接触電力伝送することができる。
【0031】
また、本開示は、隣り合う前記送電コイルについて、一の前記送電コイルの発生磁界がより大きい有限値であり、他の前記送電コイルの発生磁界がより小さい有限値である前記一の期間と、一の前記送電コイルの発生磁界がより小さい有限値であり、他の前記送電コイルの発生磁界がより大きい有限値である前記他の期間と、が交互に出現するように、前記送電制御部は、前記複数の送電電源を制御することを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0032】
この構成によれば、受電コイルが移動方向に沿って互いに隣り合う送電コイルの境界上に位置するときであっても、受電コイルと一の送電コイルとの間の鎖交磁界と、受電コイルと他の送電コイルとの間の鎖交磁界とが、一部相殺を生じさせないようにできる。
【0033】
また、本開示は、隣り合う前記送電コイルのうちの発生磁界がより大きい有限値である前記送電コイルと、前記受電コイルと、が互いに対向する領域の前記移動方向に沿った長さが、前記受電コイルの前記移動方向に沿った長さのほぼ半分であるときでも、発生磁界がより大きい有限値である前記送電コイルは、前記受電コイルに非接触電力伝送することが可能であることを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0034】
この構成によれば、受電コイルが移動方向に沿って互いに隣り合う送電コイルの境界上に位置するときであっても、受電コイルに非接触電力伝送することができる。
【0035】
また、本開示は、隣り合う前記送電コイルのうちの発生磁界がより小さい有限値である前記送電コイルと、前記受電コイルと、が互いに対向する領域の前記移動方向に沿った長さが、前記受電コイルの前記移動方向に沿った長さにほぼ等しいときでも、(1)発生磁界がより小さい有限値である前記送電コイルは、前記受電コイルに非接触電力伝送することが可能である、又は、(2)発生磁界がより小さい有限値である前記送電コイルが、発生磁界がより大きい有限値である状態に遷移し、前記受電コイルに非接触電力伝送し、前記移動体内の蓄電素子を電池切れにしないことが可能になるように、前記送電制御部は、前記一の期間及び前記他の期間を長すぎない短めの長さに制御することを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0036】
この構成によれば、受電コイルが発生磁界のより小さい有限値である送電コイル上に位置するときであっても、(1)その送電コイルの発生磁界がある程度は大きければ、受電コイルに非接触電力伝送することができ、(2)その送電コイルの発生磁界がその程度に大きくなくても、移動体内の蓄電素子が電池切れになる前に、その送電コイルの発生磁界がより大きい有限値になるため、受電コイルに非接触電力伝送することができる。
【0037】
また、本開示は、以上に記載の非接触電力伝送装置と、前記受電コイルと、受電電力を蓄電する蓄電素子と、を設ける前記移動体と、を備えることを特徴とする非接触電力伝送システムである。
【0038】
この構成によれば、受電コイルが発生磁界のより弱い送電コイル上に位置するときであっても、受信コイルへの非接触電力伝送を待たずに、負荷への電力供給を行なえる。
【発明の効果】
【0039】
このように、本開示は、移動体内の受電コイルに非接触電力伝送するにあたり、移動方向に延びる複数の送電コイルを移動方向に沿って互いに間隔を空けて設けたうえで、移動体の移動位置を検出せず、複数の送電電源の駆動位相を同期させず、移動範囲内の任意位置で非接触電力伝送を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】従来技術の非接触電力伝送システムの構成を示す図である。
【
図2】従来技術の送受電コイル間の磁界結合を示す図である。
【
図3】本開示の第1実施形態の非接触電力伝送システムの構成を示す図である。
【
図4】本開示の第1実施形態の非接触電力伝送システムの構成を示す図である。
【
図5】本開示の第1実施形態の送受電コイル間の磁界結合を示す図である。
【
図6】本開示の第2実施形態の非接触電力伝送システムの構成を示す図である。
【
図7】本開示の第2実施形態の非接触電力伝送システムの構成を示す図である。
【
図8】本開示の第2実施形態の送受電コイル間の磁界結合を示す図である。
【
図9】本開示の送受電コイルのコイル形状及び位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0042】
(本開示の第1実施形態の非接触電力伝送システム)
本開示の第1実施形態の非接触電力伝送システムの構成を
図3及び
図4に示す。
図3に示した非接触電力伝送システムSは、従来技術の非接触電力伝送システムSに加えて、送電制御部4及び送電スイッチ5から構成される。
図4に示した非接触電力伝送システムSは、従来技術の非接触電力伝送システムSに加えて、送電制御部4から構成される。
【0043】
本開示の第1実施形態では、移動体3-nの移動方向に沿って互いに隣り合う送電コイル22-mについて、一の送電コイル22-mの発生磁界が有限値であり、他の送電コイル22-mの発生磁界がほぼ0である一の期間と、一の送電コイル22-mの発生磁界がほぼ0であり、他の送電コイル22-mの発生磁界が有限値である他の期間と、が移動体3-nの移動位置に関わらず交互に出現するように、送電制御部4(及び送電スイッチ5)は、複数の送電電源21-mを制御する。
【0044】
図3に示した非接触電力伝送システムSでは、送電スイッチ5の入力端子には、直流電源1が接続され、送電スイッチ5の第1出力端子には、送電電源21-1、21-3が接続され、送電スイッチ5の第2出力端子には、送電電源21-2、21-4が接続される。そして、当該一の期間では、送電制御部4は、送電スイッチ5の入力端子と第1出力端子とを接続することにより、直流電源1と送電電源21-1、21-3とを接続する。一方で、当該他の期間では、送電制御部4は、送電スイッチ5の入力端子と第2出力端子とを接続することにより、直流電源1と送電電源21-2、21-4とを接続する。
【0045】
図4に示した非接触電力伝送システムSでは、送電制御部4は、各々の送電電源21-mに対して、ON制御信号又はOFF制御信号を出力する。つまり、当該一の期間では、送電制御部4は、送電電源21-1、21-3に対して、ON制御信号を出力する一方で、送電電源21-2、21-4に対して、OFF制御信号を出力する。一方で、当該他の期間では、送電制御部4は、送電電源21-1、21-3に対して、OFF制御信号を出力する一方で、送電電源21-2、21-4に対して、ON制御信号を出力する。
【0046】
本開示の第1実施形態の送受電コイル間の磁界結合を
図5に示す。上記のように、送電電源21-mは、それぞれ、送電コイル22-mを独立の位相で駆動する。よって、送電コイル22-mは、それぞれ、独立の位相で磁界を発生させる。最良の場合は、移動方向に沿って互いに隣り合う送電コイル22-mは、互いに同相で磁界を発生させる。最悪の場合は、移動方向に沿って互いに隣り合う送電コイル22-mは、互いに逆相で磁界を発生させる。
図5では、最悪の場合における送受電コイル間の磁界結合について説明する。
【0047】
図5の上半分に示したように、当該一の期間では、送電コイル22-1、22-3の発生磁界は、上面図ではそれぞれ、紙面手前方向、紙面手前方向であり、側面図ではそれぞれ、紙面上向き方向、紙面上向き方向であり、十分に大きい有限値である。一方で、送電コイル22-2、22-4の発生磁界は、ほぼ0であると言える。
【0048】
受電コイル31-1は、送電コイル22-1上に位置する。そして、受電コイル31-1と送電コイル22-1との間の鎖交磁界は、上面図では紙面手前方向であり、側面図では紙面上向き方向であり、十分に大きい有限値である。よって、送電コイル22-1から受電コイル31-1への非接触電力伝送は、最悪の場合でも可能である。
【0049】
ここで、隣り合う送電コイル22-1、22-2のうちの発生磁界が有限値である送電コイル22-1と、受電コイル31-1と、が互いに対向する領域の移動方向に沿った長さは、受電コイル31-1の移動方向に沿った長さにほぼ等しい。このときには、発生磁界が有限値である送電コイル22-1が、移動体3-1内の負荷34-1での消費電力を供給することが可能になるように、送電制御部4は、当該一の期間(及び当該他の期間)を短すぎない長めの長さに制御することが望ましい。そして、送電電源21-1の最大出力は、送電ユニット2-1上に位置可能な移動体3-nの最大台数と、各移動体3-n内の負荷34-n及びそれ以外での消費電力と、に基づいて設定することが望ましい。
【0050】
受電コイル31-2は、送電コイル22-2、22-3の境界上に位置する。ここで、受電コイル31-2と送電コイル22-2との間の鎖交磁界は、ほぼ0である。そして、受電コイル31-2と送電コイル22-3との間の鎖交磁界は、上面図では紙面手前方向であり、側面図では紙面上向き方向であり、十分に大きい有限値である。つまり、受電コイル31-2と送電コイル22-3との間の鎖交磁界は、受電コイル31-2と送電コイル22-2との間の鎖交磁界により、全く相殺されない。よって、送電コイル22-2、22-3から受電コイル31-2への非接触電力伝送は、最悪の場合でも可能である。
【0051】
ここで、隣り合う送電コイル22-2、22-3のうちの発生磁界が有限値である送電コイル22-3と、受電コイル31-2と、が互いに対向する領域の移動方向に沿った長さは、受電コイル31-2の移動方向に沿った長さのほぼ半分又はそれ以下になることがあり得る。このときでも、発生磁界が有限値である送電コイル22-3は、受電コイル31-2に非接触電力伝送することが可能であることが望ましい。
【0052】
受電コイル31-3は、送電コイル22-4上に位置する。そして、受電コイル31-3と送電コイル22-4との間の鎖交磁界は、ほぼ0である。よって、送電コイル22-4から受電コイル31-3への非接触電力伝送は、最良の場合でも不能である。もっとも、蓄電素子33-3から負荷34-3への電力供給は、当該一の期間でも可能である。
【0053】
ここで、隣り合う送電コイル22-3、22-4のうちの発生磁界がほぼ0である送電コイル22-4と、受電コイル31-3と、が互いに対向する領域の移動方向に沿った長さは、受電コイル31-3の移動方向に沿った長さにほぼ等しい。このときでも、発生磁界がほぼ0である送電コイル22-4が、
図5の下半分に示すように、発生磁界が有限値である状態に遷移し、受電コイル31-3に非接触電力伝送し、移動体3-3内の蓄電素子33-3を電池切れにしないことが可能になるように、送電制御部4は、当該一の期間(及び当該他の期間)を長すぎない短めの長さに制御することが望ましい。
【0054】
図5の下半分に示したように、当該他の期間では、送電コイル22-2、22-4の発生磁界は、上面図ではそれぞれ、紙面奥行方向、紙面奥行方向であり、側面図ではそれぞれ、紙面下向き方向、紙面下向き方向であり、十分に大きい有限値である。一方で、送電コイル22-1、22-3の発生磁界は、ほぼ0であると言える。
【0055】
受電コイル31-3は、送電コイル22-4上に位置する。そして、受電コイル31-3と送電コイル22-4との間の鎖交磁界は、上面図では紙面奥行方向であり、側面図では紙面下向き方向であり、十分に大きい有限値である。よって、送電コイル22-4から受電コイル31-3への非接触電力伝送は、最悪の場合でも可能である。
【0056】
受電コイル31-2は、送電コイル22-2、22-3の境界上に位置する。ここで、受電コイル31-2と送電コイル22-2との間の鎖交磁界は、上面図では紙面奥行方向であり、側面図では紙面下向き方向であり、十分に大きい有限値である。そして、受電コイル31-2と送電コイル22-3との間の鎖交磁界は、ほぼ0である。つまり、受電コイル31-2と送電コイル22-2との間の鎖交磁界は、受電コイル31-2と送電コイル22-3との間の鎖交磁界により、全く相殺されない。よって、送電コイル22-2、22-3から受電コイル31-2への非接触電力伝送は、最悪の場合でも可能である。
【0057】
受電コイル31-1は、送電コイル22-1上に位置する。そして、受電コイル31-1と送電コイル22-1との間の鎖交磁界は、ほぼ0である。よって、送電コイル22-1から受電コイル31-1への非接触電力伝送は、最良の場合でも不能である。もっとも、蓄電素子33-1から負荷34-1への電力供給は、当該他の期間でも可能である。
【0058】
ところで、送電制御部4は、当該一の期間及び当該他の期間を等しい長さに制御することが望ましい。すると、移動体3-nの移動範囲内の任意位置で均等な非接触電力伝送を可能にすることができる。そして、移動体3-nの移動方向に沿って互いに隣り合う送電コイル22-mの境界上の位置であっても、ある1個の送電コイル22-m上の位置と比べて、非接触電力伝送効率が若干低くなるだけである。
【0059】
このように、移動体3-n内の受電コイル31-nに非接触電力伝送するにあたり、移動方向に延びる複数の送電コイル22-mを移動方向に沿って互いに間隔を空けて設けたうえで、移動体3-nの移動位置を検出せず、複数の送電電源21-mの駆動位相を同期させず、移動範囲内の任意位置で非接触電力伝送を可能にすることができる。
【0060】
(本開示の第2実施形態の非接触電力伝送システム)
本開示の第2実施形態の非接触電力伝送システムの構成を
図6及び
図7に示す。
図6に示した非接触電力伝送システムSは、従来技術の非接触電力伝送システムSに加えて、送電制御部4、直流電源1に代わる高出力電源6、直流電源1に代わる低出力電源7及び送電スイッチ8から構成される。
図7に示した非接触電力伝送システムSは、従来技術の非接触電力伝送システムSに加えて、送電制御部4から構成される。
【0061】
本開示の第2実施形態では、移動体3-nの移動方向に沿って互いに隣り合う送電コイル22-mについて、一の送電コイル22-mの発生磁界がより大きい有限値であり、他の送電コイル22-mの発生磁界がより小さい有限値である一の期間と、一の送電コイル22-mの発生磁界がより小さい有限値であり、他の送電コイル22-mの発生磁界がより大きい有限値である他の期間と、が移動体3-nの移動位置に関わらず交互に出現するように、送電制御部4(及び送電スイッチ8)は、複数の送電電源21-mを制御する。
【0062】
図6に示した非接触電力伝送システムSでは、送電スイッチ8の第1入力端子には、高出力電源6が接続され、送電スイッチ8の第2入力端子には、低出力電源7が接続され、送電スイッチ8の第1出力端子には、送電電源21-1、21-3が接続され、送電スイッチ8の第2出力端子には、送電電源21-2、21-4が接続される。そして、当該一の期間では、送電制御部4は、送電スイッチ8の第1入力端子と第1出力端子とを接続するとともに、送電スイッチ8の第2入力端子と第2出力端子とを接続することにより、高出力電源6と送電電源21-1、21-3とを接続し、低出力電源7と送電電源21-2、21-4とを接続する。一方で、当該他の期間では、送電制御部4は、送電スイッチ8の第1入力端子と第2出力端子とを接続するとともに、送電スイッチ8の第2入力端子と第1出力端子とを接続することにより、高出力電源6と送電電源21-2、21-4とを接続し、低出力電源7と送電電源21-1、21-3とを接続する。
【0063】
図7に示した非接触電力伝送システムSでは、送電制御部4は、各々の送電電源21-mに対して、高出力制御信号又は低出力制御信号を出力する。つまり、当該一の期間では、送電制御部4は、送電電源21-1、21-3に対して、高出力制御信号を出力する一方で、送電電源21-2、21-4に対して、低出力制御信号を出力する。一方で、当該他の期間では、送電制御部4は、送電電源21-1、21-3に対して、低出力制御信号を出力する一方で、送電電源21-2、21-4に対して、高出力制御信号を出力する。
【0064】
本開示の第2実施形態の送受電コイル間の磁界結合を
図8に示す。上記のように、送電電源21-mは、それぞれ、送電コイル22-mを独立の位相で駆動する。よって、送電コイル22-mは、それぞれ、独立の位相で磁界を発生させる。最良の場合は、移動方向に沿って互いに隣り合う送電コイル22-mは、互いに同相で磁界を発生させる。最悪の場合は、移動方向に沿って互いに隣り合う送電コイル22-mは、互いに逆相で磁界を発生させる。
図8では、最悪の場合における送受電コイル間の磁界結合について説明する。
【0065】
図8の上半分に示したように、当該一の期間では、送電コイル22-1、22-3の発生磁界は、上面図ではそれぞれ、紙面手前方向、紙面手前方向であり、側面図ではそれぞれ、紙面上向き方向、紙面上向き方向であり、より大きい有限値である。一方で、送電コイル22-2、22-4の発生磁界は、上面図ではそれぞれ、紙面奥行方向、紙面奥行方向であり、側面図ではそれぞれ、紙面下向き方向、紙面下向き方向であり、より小さい有限値である。
【0066】
受電コイル31-1は、送電コイル22-1上に位置する。そして、受電コイル31-1と送電コイル22-1との間の鎖交磁界は、上面図では紙面手前方向であり、側面図では紙面上向き方向であり、より大きい有限値である。よって、送電コイル22-1から受電コイル31-1への非接触電力伝送は、最悪の場合でも可能である。
【0067】
ここで、隣り合う送電コイル22-1、22-2のうちの発生磁界がより大きい有限値である送電コイル22-1と、受電コイル31-1と、が互いに対向する領域の移動方向に沿った長さは、受電コイル31-1の移動方向に沿った長さにほぼ等しい。このときには、発生磁界がより大きい有限値である送電コイル22-1が、移動体3-1内の負荷34-1での消費電力を供給することが可能になるように、送電制御部4は、当該一の期間(及び当該他の期間)を短すぎない長めの長さに制御することが望ましい。そして、送電電源21-1の最大出力は、送電ユニット2-1上に位置可能な移動体3-nの最大台数と、各移動体3-n内の負荷34-n及びそれ以外での消費電力と、に基づいて設定することが望ましい。
【0068】
受電コイル31-2は、送電コイル22-2、22-3の境界上に位置する。ここで、受電コイル31-2と送電コイル22-2との間の鎖交磁界は、上面図では紙面奥行方向であり、側面図では紙面下向き方向であり、より小さい有限値である。そして、受電コイル31-2と送電コイル22-3との間の鎖交磁界は、上面図では紙面手前方向であり、側面図では紙面上向き方向であり、より大きい有限値である。つまり、受電コイル31-2と送電コイル22-3との間の鎖交磁界は、受電コイル31-2と送電コイル22-2との間の鎖交磁界により、一部しか相殺されない。よって、送電コイル22-2、22-3から受電コイル31-2への非接触電力伝送は、最悪の場合でも可能である。
【0069】
ここで、隣り合う送電コイル22-2、22-3のうちの発生磁界がより大きい有限値である送電コイル22-3と、受電コイル31-2と、が互いに対向する領域の移動方向に沿った長さは、受電コイル31-2の移動方向に沿った長さのほぼ半分になることがあり得る。このときでも、発生磁界がより大きい有限値である送電コイル22-3は、受電コイル31-2に非接触電力伝送することが可能であることが望ましい。
【0070】
受電コイル31-3は、送電コイル22-4上に位置する。そして、受電コイル31-3と送電コイル22-4との間の鎖交磁界は、上面図では紙面奥行方向であり、側面図では紙面下向き方向であり、より小さい有限値である。よって、送電コイル22-4から受電コイル31-3への非接触電力伝送は、最悪の場合でも可能である。たとえ、送電コイル22-4から受電コイル31-3への非接触電力伝送が、最悪の場合には不能でも、蓄電素子33-3から負荷34-3への電力供給は、当該一の期間でも可能である。
【0071】
ここで、隣り合う送電コイル22-3、22-4のうちの発生磁界がより小さい有限値である送電コイル22-4と、受電コイル31-3と、が互いに対向する領域の移動方向に沿った長さは、受電コイル31-3の移動方向に沿った長さにほぼ等しい。このときでも、発生磁界がより小さい有限値である送電コイル22-4が、
図8の下半分に示すように、発生磁界がより大きい有限値である状態に遷移し、受電コイル31-3に非接触電力伝送し、移動体3-3内の蓄電素子33-3を電池切れにしないことが可能になるように、送電制御部4は、当該一の期間(及び当該他の期間)を長すぎない短めの長さに制御することが望ましい。
【0072】
図8の下半分に示したように、当該他の期間では、送電コイル22-2、22-4の発生磁界は、上面図ではそれぞれ、紙面奥行方向、紙面奥行方向であり、側面図ではそれぞれ、紙面下向き方向、紙面下向き方向であり、より大きい有限値である。一方で、送電コイル22-1、22-3の発生磁界は、上面図ではそれぞれ、紙面手前方向、紙面手前方向であり、側面図ではそれぞれ、紙面上向き方向、紙面上向き方向であり、より小さい有限値である。
【0073】
受電コイル31-3は、送電コイル22-4上に位置する。そして、受電コイル31-3と送電コイル22-4との間の鎖交磁界は、上面図では紙面奥行方向であり、側面図では紙面下向き方向であり、より大きい有限値である。よって、送電コイル22-4から受電コイル31-3への非接触電力伝送は、最悪の場合でも可能である。
【0074】
受電コイル31-2は、送電コイル22-2、22-3の境界上に位置する。ここで、受電コイル31-2と送電コイル22-2との間の鎖交磁界は、上面図では紙面奥行方向であり、側面図では紙面下向き方向であり、より大きい有限値である。そして、受電コイル31-2と送電コイル22-3との間の鎖交磁界は、上面図では紙面手前方向であり、側面図では紙面上向き方向であり、より小さい有限値である。つまり、受電コイル31-2と送電コイル22-2との間の鎖交磁界は、受電コイル31-2と送電コイル22-3との間の鎖交磁界により、一部しか相殺されない。よって、送電コイル22-2、22-3から受電コイル31-2への非接触電力伝送は、最悪の場合でも可能である。
【0075】
受電コイル31-1は、送電コイル22-1上に位置する。そして、受電コイル31-1と送電コイル22-1との間の鎖交磁界は、上面図では紙面手前方向であり、側面図では紙面上向き方向であり、より小さい有限値である。よって、送電コイル22-1から受電コイル31-1への非接触電力伝送は、最悪の場合でも可能である。たとえ、送電コイル22-1から受電コイル31-1への非接触電力伝送が、最悪の場合には不能でも、蓄電素子33-1から負荷34-1への電力供給は、当該一の期間でも可能である。
【0076】
ところで、送電制御部4は、当該一の期間及び当該他の期間を等しい長さに制御することが望ましい。すると、移動体3-nの移動範囲内の任意位置で均等な非接触電力伝送を可能にすることができる。そして、移動体3-nの移動方向に沿って互いに隣り合う送電コイル22-mの境界上の位置であっても、ある1個の送電コイル22-m上の位置と比べて、非接触電力伝送効率が若干低くなるだけである。
【0077】
このように、移動体3-n内の受電コイル31-nに非接触電力伝送するにあたり、移動方向に延びる複数の送電コイル22-mを移動方向に沿って互いに間隔を空けて設けたうえで、移動体3-nの移動位置を検出せず、複数の送電電源21-mの駆動位相を同期させず、移動範囲内の任意位置で非接触電力伝送を可能にすることができる。
【0078】
(本開示の送受電コイルのコイル形状及び位置関係)
本開示の送受電コイルのコイル形状及び位置関係を
図9に示す。
図9では、送電コイル22-1、22-2及び受電コイル31-1のみを抽出する。
【0079】
図9の上段では、送電コイル22-1、22-2及び受電コイル31-1は、それぞれ、移動体3-nの移動方向と平行な方向に延びる平行二線と、平行二線の末端を接続する末端二線と、を備える。受電コア35-1は、受電コイル31-1のコアであり、送電コイル22-1、22-2の平行二線の間の溝を貫通しない。よって、受電コイル31-1が送電コイル22-1、22-2の境界上を通過する際の構造上の問題はない。
【0080】
図9の中段では、送電コイル22-1、22-2及び受電コイル31-1は、それぞれ、移動体3-nの移動方向と平行な方向に延びる平行二線と、平行二線の末端を接続する末端二線と、を備える。受電コア35-1は、受電コイル31-1のコアであり、送電コイル22-1、22-2の平行二線の間の溝を貫通する。そこで、送電コイル22-1、22-2の末端二線を
図9の紙面下向きに屈曲させることにより、受電コア35-1が送電コイル22-1、22-2の末端二線と干渉することなく、受電コイル31-1が送電コイル22-1、22-2の境界上を通過することができる。
【0081】
図9の下段では、送電コイル22-1、22-2及び受電コイル31-1は、それぞれ、移動体3-nの移動方向と平行な方向に延びるコアと、コアに巻回される導線と、を備える。ここで、
図9の上段及び中段に示した溝の問題はない。よって、受電コイル31-1が送電コイル22-1、22-2の境界上を通過する際の構造上の問題はない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本開示の非接触電力伝送装置及び非接触電力伝送システムは、電動車両、電子機器搭載カート、FA(Factory Automation)用製造パレット、及び、これらに装着された電子タグに対して、非接触電力伝送する目的で適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
S:非接触電力伝送システム
1:直流電源
2-1、2-2、2-3、2-4:送電ユニット
3-1、3-2、3-3:移動体
4:送電制御部
5:送電スイッチ
6:高出力電源
7:低出力電源
8:送電スイッチ
21-1、21-2、21-3、21-4:送電電源
22-1、22-2、22-3、22-4:送電コイル
23-1、23-2、23-3、23-4:移動体ガイド
31-1、31-2、31-3:受電コイル
32-1、32-2、32-3:受電電源
33-1、33-2、33-3:蓄電素子
34-1、34-2、34-3:負荷
35-1:受電コア