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特許7141938音声認識入力装置、音声認識入力プログラム及び医用画像撮像システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】音声認識入力装置、音声認識入力プログラム及び医用画像撮像システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20220915BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20220915BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A61B6/00 320Z
A61B6/03 330A
A61B5/055 370
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018229984
(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公開番号】P2020089641
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天明 宏之助
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-128924(JP,A)
【文献】特開2014-170185(JP,A)
【文献】特開2014-081441(JP,A)
【文献】特開2013-134431(JP,A)
【文献】特開2009-109587(JP,A)
【文献】特開2007-226388(JP,A)
【文献】特開2006-149909(JP,A)
【文献】特開2006-137366(JP,A)
【文献】特開2004-157919(JP,A)
【文献】特開昭64-091199(JP,A)
【文献】特開昭61-122781(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0379993(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14,5/055,
G10L 15/00-15/34,
G06F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部機器に対し操作コマンドを入力する音声認識入力装置であって、
1の操作コマンドについて複数の音声コマンドを対応付けて記録すると共に、音声コマンド毎に当該音声コマンドの使用頻度に応じた重み係数を記録した音声認識データテーブルを記憶した記憶部と、
音声入力を受け付け、該音声入力を認識対象として音声認識処理を行って前記音声入力に対応する音声コマンドを音声認識処理の結果として出力する音声認識部と、
前記音声認識データテーブルを参照して、前記音声コマンドを該音声コマンドに対応して記録された操作コマンドに変換するコマンド変換部と、
前記操作コマンドを前記外部機器に出力する操作決定部と、を備え、
前記音声認識部が、前記音声認識データテーブルを参照して前記音声入力に相当し得る音声コマンド候補を複数選出するとともに音声認識の確からしさの指標を算出し、これら複数の音声コマンド候補夫々について、前記指標と前記重み係数とを乗じることにより最も確からしい音声コマンドを選出し、当該選出した音声コマンドを前記音声入力に対する音声認識処理の結果として出力する、音声認識入力装置。
【請求項2】
前記操作コマンド及び該操作コマンドに対応する前記音声コマンドの少なくとも一方を記録した操作履歴を生成すると共に、該操作履歴を解析した結果に基づいて前記重み係数を更新するコマンド解析部を備えた請求項1記載の音声認識入力装置。
【請求項3】
前記コマンド解析部が、前記操作コマンドの一定期間内における使用頻度又は音声コマンドの積算回数の少なくとも一方に基づいて重み係数を更新する請求項2記載の音声認識入力装置。
【請求項4】
前記記憶部が、前記外部機器の運用状況に対応した複数の音声認識データテーブルを記憶し、
前記音声認識部が、前記外部機器の運用状況に応じて音声認識処理に用いる前記音声認識データテーブルを切り替える請求項1乃至請求項4の何れか1項記載の音声認識入力装置。
【請求項5】
コンピュータにより、医用画像撮像装置に対して音声により操作コマンドを入力させる音声認識入力プログラムであって、
1の操作コマンドについて複数の音声コマンドを対応付けて記録すると共に、音声コマンド毎に当該音声コマンドの使用頻度に応じた重み係数を記録した音声認識データテーブルを参照して、ユーザからの音声入力を認識対象として音声認識処理を行って前記音声入力に対応する音声コマンドを音声認識処理の結果として出力する音声認識ステップと、
前記音声認識データテーブルを参照して、前記音声コマンドを該音声コマンドに対応して記録された操作コマンドに変換するコマンド変換ステップと、
前記医用画像撮像装置に前記操作コマンドを出力する操作決定ステップと、を備え、
前記音声認識ステップにおいて、前記音声認識データテーブルを参照して前記音声入力に相当し得る音声コマンド候補を複数選出するとともに音声認識の確からしさの指標を算出し、これら複数の音声コマンド候補夫々について、前記指標と前記重み係数とを乗じることにより最も確からしい音声コマンドを選出し、当該選出した音声コマンドを前記音声入力に対する音声認識処理の結果として出力させる、音声認識入力プログラム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4の何れか1項記載の音声認識入力装置と、
外部機器として医用画像撮像装置と、を備え
請求項1乃至請求項4の何れか1項記載の音声認識入力装置が、前記医用画像撮像装置に対して音声認識入力により操作指示を行う医用画像撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声認識入力装置、音声認識入力プログラム及び医用画像撮像システムに関し、特に、医用画像撮像装置等の医療機器に接続され、当該医療機器に対してコマンドを出力する音声認識入力装置、音声認識入力プログラム及び医用画像撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターベンション治療の高度化に伴い、X線透視撮影下および軟性内視鏡操作下で血管や消化管の検査又は治療を行うケースが増えている。これら検査又は治療では術者の清潔性が担保される必要があり、手動による機器操作はその清潔性を維持できない。
また、例えば、X線透視撮影装置を用いた検査では、しばしば検査手技を施行する術者の口頭指示のもと、それを補助する術者サポートの医療従事者が機器操作を行うことがある。このような場合、術者から補助役の医療従事者に対する口頭指示等の意思疎通に手間取り、術者の意図通りの機器操作まで時間がかかることがあり、術者が医療従事者による補助がなくとも直接口頭指示によって医療機器の操作を行うことが望まれる。
そこで、手術や検査等に利用される医療機器において、清潔性の確保や操作性向上のために音声認識による操作が望まれている。
【0003】
一方、昨今、音声認識技術は、従来から存在する隠れマルコフモデルを用いた手法に加え、Deep Learningを用いた手法が出現し単語認識のみならず文章としての音声認識処理が可能になるなど認識精度が向上してきている。また、音声認識処理にはサーバやCloudを用いた大規模な機械学習を行いて逐次的に性能を向上させるものがあるが、医療機器は秘匿性を考慮して設計される必要があることから、医療機器に適用される音声認識入力装置は、Cloudやサーバに接続せず非ネットワーク環境下で音声認識処理を行う必要がある。
【0004】
そして、音声認識により操作を行う医療機器の例として、特許文献1には、X線画像診断装置において、操作者の負担を軽減するために、誤作動によって被検者に危害を与える虞のある機能は操作者による手動の操作に基づいて制御し、誤作動によっても被検者に危害を与える虞のない機能については操作者が発生する音声を認識することによって制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-149909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、音声認識処理に用いるデータベースに、例えば、互いに類似した音素を持つ音声操作コマンドが複数個登録されていた場合には、音声認識処理において誤検出を生じさせる可能性がある。すなわち、術者が発した音声が、類似した音素からなる複数の音声操作コマンドのうち何れの音声操作コマンドに該当するか判別ができず、誤検出となる虞がある。この場合、音声認識処理によって操作を行うことができず、結果的に術者はサポートを行う医療従事者に機器操作を指示することとなり、術者の意図通りの機器操作に要する時間を短縮することができない。また、その場合は音声操作コマンドの認識率の向上が必要となるが、その手段は明示されていない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、音声認識処理において、術者の音声による操作指示を正確に認識し、誤検出を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、外部機器に対し操作コマンドを入力する音声認識入力装置であって、1の操作コマンドについて複数の音声コマンドを対応付けて記録すると共に、音声コマンド毎に当該音声コマンドの使用頻度に応じた重み係数を記録した音声認識データテーブルを記憶した記憶部と、音声入力を受け付け、該音声入力を認識対象として音声認識処理を行って前記音声入力に対応する音声コマンドを音声認識処理の結果として出力する音声認識部と、前記音声認識データテーブルを参照して、前記音声コマンドを該音声コマンドに対応して記録された操作コマンドに変換するコマンド変換部と、前記操作コマンドを前記外部機器に出力する操作決定部と、を備え、前記音声認識部が、前記音声入力に相当し得る音声コマンド候補を複数選出し、これら複数の音声コマンド候補夫々に前記重み係数を乗じることにより最も確からしい音声コマンドを前記音声入力に対する音声認識処理の結果として出力する、音声認識入力装置を提供する。
本発明によれば、音声コマンド毎に使用頻度に応じた重み係数を記録したデータテーブルを用いて音声認識処理を行うので、音声による操作指示において音声認識処理の精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、音声認識処理において、誤検出を低減させ、術者の音声による操作指示を正確に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る音声認識入力装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図1の音声認識入力装置の音声認識DBに格納された音声認識データテーブルの一例である。
図3】本発明の第1の実施形態における音声認識入力装置において、重み係数を更新する際に参照する、操作コマンドの使用頻度、操作コマンドコード及びオフセット係数Tの関係を示すグラフである。
図4】本発明の第1の実施形態に係る音声認識入力装置による音声認識入力処理の流れを示すフローチャートである。
図5】本発明の第1の実施形態の変形例における音声認識入力装置において、重み係数を更新する際に参照する、音声コマンドの積算回数、音声コマンドコード及びオフセット係数Vの関係を示すグラフである。
図6】本発明の第2の実施形態に係る音声認識入力装置における音声認識DBに格納されたデータテーブルの一例を示し、(A)は、検査開始情報の状態を示すデータテーブル、(B)は、検査種別の状態を示すデータテーブル、(C)はX線照射情報の状態を示すデータテーブル、(D)は装置運用状況と音声認識DBの分類を示すデータテーブルである。
図7】本発明の第2の実施形態に係る音声認識入力装置において、音声認識データテーブルの切替処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る音声認識入力装置は、当該音声認識入力装置に接続された医用画像撮像装置等の外部機器に対して入力を行うものである。
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る音声認識入力装置について、図面を参照してより詳細に説明する。図1に本実施形態に係る音声認識入力装置の概略構成図を示す。
音声認識入力装置10は、音声認識入力装置10全体を制御する中央処理装置(CPU)11、マイク等の音声入力を受け付ける音声入力I/F(インターフェイス)12、マウスやキーボードなどからなり手動入力を受け付ける手動入力I/F(インターフェイス)13、メモリ14、音声認識アルゴリズムや音声認識処理に必要なデータを格納した音声認識DB15及び音声入力に関するログを収集し記録するログ収集DB16を備え、これらの各構成はシステムバスを介して互いに接続されている。
【0013】
本実施形態において、音声認識入力装置10は、画像撮像装置20と通信可能に接続され、画像撮像装置20に対する種々の入力指示を行う。また、音声認識入力装置10は、画像撮像装置20を介してディスプレイ30と接続され、画像撮像装置20において取得した画像等をディスプレイ30に表示させ、表示させた画像に対して拡大や縮小等の所望の操作指示を行う。画像撮像装置20としては、X線装置、MRI装置、CT装置、PET装置など、医用画像取得のためのハードウェアを適用することができる。
【0014】
音声認識入力装置10によって画像撮像装置等に対して音声による入力指示を行うために、図1に示すように、CPU11は、音声操作処理部120、手動操作処理部130及びシステム操作決定部140の機能を実現する。特に、音声操作処理部120は、音声認識部111、コマンド変換部112及びコマンド解析部113の機能を実現する。
【0015】
なお、CPU11が実現するこれら各部の機能は、図示しない磁気ディスク等のメモリに格納されたプログラムをCPUが予め読み込んで実行することによりソフトウエアとして実現することができる。なお、CPU11に含まれる各部が実行する動作の一部又は全部を、ASIC(application specific integrated circuit)やFPGA(field-programmable gate array)により実現することもできる。
【0016】
音声操作処理部120は、マイク等の音声入力I/F12を介して入力された音声による操作指示(音声入力)を認識して、画像撮像装置20に対して操作指示を行うものであり、音声認識部111、コマンド変換部112及びコマンド解析部113の機能を実現する。
【0017】
音声認識部111は、予め音声認識DB15等に記憶された音声認識アルゴリズムに従って、音声入力I/F12を介して入力された音声による操作指示に対して音声認識処理を行い、認識結果である音声コマンドをコマンド変換部112に出力する。ここで、音声認識処理に際して音声認識部111は、後述する音声認識DB15に格納された音声認識データテーブル(図2参照)を用い、所定の音声認識アルゴリズムに従って音声認識処理を行い、認識結果として音声コマンドを選出する。音声認識部111による音声認識処理の詳細は後述する。
【0018】
コマンド変換部112は、音声認識部111における音声認識処理を経て選出された音声コマンドに対応する操作コマンドに変換し、当該操作コマンドを術者による操作指示としてシステム操作決定部140及びコマンド解析部113に出力する。
【0019】
コマンド解析部113は、コマンド変換部112から、術者による操作指示に係る操作コマンドに関する情報を取得し、操作履歴を生成してログ収集DB16に記録させると共に、当該操作履歴を解析する。ここで、操作コマンドに関する情報として、操作コマンドのみならず、当該操作コマンドに変換される前の音声コマンド等を含めることができる。また、コマンド解析部113は、操作履歴の解析結果に基づいて音声認識データテーブルの重み係数を更新する。重み係数の更新についての詳細は後述する。
【0020】
手動操作処理部130は、手動での操作を行う場合に、マウスやキーボード等の手動入力I/F13を介して入力された操作指示に基づいて当該操作指示に係る操作コマンドを生成し、システム操作決定部140に出力する。
システム操作決定部140は、音声操作処理部120又は手動操作処理部130から入力された操作コマンドを画像撮像装置20に出力すると共に、コマンド解析部113に出力する。
【0021】
音声入力I/F12は、術者等の操作者の発話を音声による操作指示(音声入力)として受け付けて電気信号の音声データに変換し、音声データを音声操作処理部120に出力するものであり、例えばマイク等を適用することができる。
手動入力I/F13は、術者等による手動の操作指示を受け付け、受け付けた操作指示を電気信号に変換して手動操作処理部130に出力するものであり、例えば、マウス、キーボード、タッチパネルなどの入力装置を適用することができる。
【0022】
メモリ14は、CPU11が実行するプログラムや演算処理の途中経過を記憶したり、音声や手動による操作指示を一時的に記憶したりする。
音声認識DB15は、予め定められた音声認識アルゴリズムを格納すると共に、音声認識処理に用いる音声認識データテーブルを記録している。音声認識データテーブルの詳細については後述する。
ログ収集DB16は、コマンド解析部113によって生成された操作履歴などの操作指示に関する情報を取得して記録する。
【0023】
(音声認識処理及び音声認識データテーブルについて)
音声認識データテーブルは、図2に示すように、音声コマンドに関するデータを示す音声コマンドデータdb1と、操作コマンドに関するデータを示す操作コマンドデータdb2と、音声コマンド毎に定められた重み係数を示す重み係数データdb3から構成される。
【0024】
図2に示すように、音声認識データテーブルにおいて、同一の操作コマンドdb21に対して複数の音声コマンドdb11が対応付けて記録されている。このようにすることで、同一の操作指示に対して術者毎に異なる口癖や発話による指示がなされた場合であっても、音声認識処理を経て同一の操作を実現させることができる。また、音声コマンドデータdb1の各音声コマンドに対して、夫々コマンド読みdb12及び音声コマンドコードdb13が対応付けて記録されている。操作コマンドdb21についても、同様に操作コマンド毎に操作コマンドコードdb22が対応付けられて記憶されている。
【0025】
ところで、音声認識部111は、次のように音声認識処理を行う。すなわち、音声認識部111は、まず、音声入力I/Fを介して入力された音声データを音波に変換し、音波から音声データの1文字ずつを音素に分解して特定する。続いて、隠れマルコフモデルに則った統計的機械学習や深層学習モデルを用いた機械学習等の音声認識アルゴリズムを用いて、音声データの音素とコマンド読みdb12の音素との照合を行う。この照合により、音声認識部111は、音声データと類似するコマンド読みdb12を選出し、選出されたコマンド読みに対応する音声コマンドdb11の候補とその確からしさの指標となる得点を出力する。
【0026】
ここで、音声認識処理の一例として、術者が「画像縮小」と発話して操作指示を行う場合について検討する。術者が「画像縮小」と発話した場合、音声認識データテーブルのコマンド読みdb12において「がぞうしゅくしょう」と「がぞうしゅうしゅう」とは途中まで音素が一致している。このため、音声認識部11は、入力される音声データの品質に依存して「がぞうしゅくしょう」を、「画像収集」と誤って認識する虞がある。この場合、術者は操作コマンドdb21の画像縮小を指示したにも拘らず、音声認識の誤認識によって音声コマンドdb11の「がぞうしゅうしゅう」に対応した操作コマンドdb21の「透視記録」が操作コマンドとして選択され、術者の意図しない操作が行われてしまう。
【0027】
そこで、音声認識データテーブルでは、このような誤認識を回避するために重み係数データdb3を音声コマンド毎に対応付けて記録している。重み係数データdb3は、音声認識処理の過程において出力される1以上の音声コマンド候補の各々に付帯した得点に対して乗算する重み係数である。重み係数データdb3に記録された重み係数は、各音声コマンドに対応し、当該音声コマンドの使用頻度等に応じて定められた値である。
【0028】
また、重み係数は、ログ収集DB16に記録された操作履歴をコマンド解析部113が解析した結果に基づいて更新することができる。すなわち、コマンド解析部113が、操作履歴を解析することにより、一定期間内における操作コマンド毎の使用回数を算出し、使用回数に基づいて重み係数を更新するためのオフセット係数Tを算出する。
【0029】
オフセット係数Tは、例えば、図3に示すグラフに従って各操作コマンドに対応する操作コマンドコードが発行された積算回数によって定めることができる。この他、オフセット係数Tは、予め定めた期間における操作コマンドコードの発行総数に対する各操作コマンドの割合に基づいて算出することもできる。コマンド解析部113は、算出されたオフセット係数Tを操作コマンドに対応して記録される各重み係数に乗じることにより重み係数を更新する。
【0030】
なお、コマンド解析部113による操作履歴の解析は、自動的に行うことができる他、術者や装置提供者による操作指示に従って行う等任意のタイミングで行うことができる。また、コマンド解析部113は、音声認識部111の音声認識処理において誤検出が生じた場合には、操作コマンドの使用回数から減算するなどして、重み係数を更新することができる。
【0031】
以下、このように構成された音声認識入力装置10による音声入力処理の流れについて図4のフローチャートに従って説明する。
図4に示すように、音声認識入力装置10が作動すると、音声入力を待機状態となる。音声入力I/Fにおいて音声入力があった場合には(ステップS101)、ステップS102に進み、音声認識部111が音声入力I/F12から音声データの入力を受け付け当該音声データの音素と音声認識DB15に登録された各コマンド読みの音素との照合を行い、コマンド読みに対応して記録された音声コマンドの候補を選出する。この候補の選出は、音声認識の確からしさの指標となる得点に基づいて判断することができる。
【0032】
次のステップS103では、ステップS102によって選出された音声コマンドの候補が1以上あるか否かを判定し、音声コマンドの候補数が1つ以上ない場合にはステップS104に進み音声コマンドなしとしてステップS101に戻る。音声コマンドの候補数が1以上ある場合にはステップS105に進み、音声コマンドの各候補に付与されている得点と、音声認識データテーブルに当該音声コマンドに対応して記録されている重み係数とを乗算する。
【0033】
ステップS106では、ステップS105における得点と重み係数との乗算の結果、最高得点となる音声コマンド候補を選出する。次のステップS107では、最高得点、すなわち、選出された音声コマンド候補の得点が予め定めた閾値より大きいか否かを判定し、最高得点が予め定めた閾値より小さい場合には音声コマンドがなかったとしてステップS104を経て、音声による操作を実行せずに、ステップS101に戻り、音声認識入力装置10は、再度、音声入力を待機する状態となる。このとき、術者へ音声操作を実行しない旨の通知を、例えば合成された音声、アラーム、ディスプレイを用いて行うことができる。
【0034】
最高得点が予め定めた閾値より大きい場合には、ステップS108に進み最高得点を示した音声コマンドを音声認識処理の結果として決定する。決定された音声コマンドはコマンド変換部112に出力され、コマンド変換部112において、音声認識データテーブルを用いて、決定された音声コマンドを、当該音声コマンドに対応する操作コマンドに変換する(S109)。
【0035】
次のステップS110において、コマンド変換部112は、変換された操作コマンドをコマンド解析部113及びシステム操作決定部140に出力する。コマンド解析部113では、入力された操作コマンドを含めて操作履歴を更新生成し、ログ収集DB16に記録させる。システム操作決定部140では、入力された操作コマンドを画像撮像装置20に出力する。画像撮像装置20では、入力された操作コマンドに応じた操作が実行される。
【0036】
このように本実施形態によれば、操作コマンドに対して複数の音声コマンドを対応付けて記録し、かつ、各操作コマンドについて使用頻度の高い順に高い重み係数を持たせ音声認識処理用いることで、術者毎に異なる発話の癖や好みに依存せず精度よく音声認識処理を行うことができる。また、操作コマンドの使用頻度を記録し、当該使用頻度に応じて重み係数を更新することで、経時的に術者の使用頻度の高い操作コマンドについて音声認識処理の精度を向上させることができ、術者の音声による操作指示を正確に認識することができる。
【0037】
(変形例)
上述した第1の実施形態では、コマンド解析部113が操作コマンドの使用頻度に基づいて重み係数を更新する例について説明した。本変形例では、入力された音声コマンドに基づいて重み係数を更新する例について説明する。
【0038】
コマンド解析部113は、操作履歴を解析することにより、コマンド変換部112から入力された操作コマンド変換される前の音声コマンドについて、一定期間内における音声コマンド毎の検出頻度を算出する。そして、算出された音声コマンドの検出頻度に基づいて重み係数を更新するためのオフセット係数Vを算出する。
【0039】
オフセット係数Vは、例えば、図5に示すグラフに従って、各音声コマンドに対応する音声コマンドコードが発行された積算回数によって定めることができる。この他、ある期間の音声コマンドコードの発行総数に対する各音声コマンドの割合に基づいてオフセット係数Vを決定しても良い。
【0040】
コマンド解析部113は、算出されたオフセット係数Vを操作コマンドに対応して記録される各重み係数に乗じることにより重み係数を更新する。この場合にも、コマンド解析部113は、音声認識部111の音声認識処理において誤検出が生じた場合には、音声コマンドの積算回数から減算するなどして、重み係数を更新することが好ましい。
【0041】
このように本変形例では、術者の発話に基づく音声コマンドについて検出頻度の高い順に高い重み係数を持たせ、当該重み係数を音声認識処理用いることで、術者毎に異なる発話の癖や好みに依存せず精度よく音声認識処理を行うことができる。また、音声コマンドの検出回数を記録し、当該検出回数に応じて重み係数を更新することで、経時的に術者の検出頻度の高い音声コマンドについて音声認識の精度を向上させることができる。上述の第1の実施形態に比して更に音声認識の精度を向上させることができ、術者の音声による操作指示を正確に認識することができる。
【0042】
なお、上述の操作コマンドの使用頻度に基づくオフセット係数T及び音声コマンドの検出頻度に基づくオフセット係数Vを共に乗じた結果を重み係数に乗じることにより更新することもできる。この場合には、使用頻度の高い操作コマンド且つ検出頻度の高い音声コマンドの音声認識精度がより向上する。この場合にも、コマンド解析部113は、音声認識部111の音声認識処理において誤検出が生じた場合には、操作コマンドの使用回数及び音声コマンドの積算回数から減算するなどして、重み係数を更新することが好ましい。
【0043】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態及びその変形例においては、音声認識DB15内に1の音声認識データテーブルが格納されている例について説明した。本実施形態においては、音声認識DB15に、音声認識入力装置10が適用される外部装置の運用状況に依存して、図2に示すような音声認識データテーブルが複数格納されており、外部装置の運用状況に応じて音声認識処理に用いるデータテーブルを切り替える。
【0044】
装置の運用状況として、例えば、検査開始前後、検査種別、X線出力の有無等が考えられ、音声認識DBには、予めこれらの状況に応じて複数の音声認識データテーブルtg001~tg***を格納しておく。音声認識データテーブルの一例は、図2に示した通りである。また、音声認識DBには、図6に示すような装置の運用状況を示すデータテーブルが格納され、これらのデータテーブルを参照して適切な音声認識データテーブルを選択する。なお、図6(A)は、検査開始情報の状態を示すデータテーブル、(B)は、検査種別の状態を示すデータテーブル、(C)はX線照射情報の状態を示すデータテーブル、(D)は装置運用状況と音声認識データベースの分類を示すデータテーブルである。
【0045】
以下、音声認識データテーブルtg001~tg***の切り替えの流れについて、図7のフローチャートに従って説明する。
音声認識入力装置10が起動すると、システム操作決定部14が画像撮像装置20から逐次的に装置運用状況に係る情報を取得する(ステップS201)。本実施形態においては、システム操作決定部14が、例えば、検査開始情報、検査種別情報及びX線照射情報を取得する。装置運用状況に係る情報を取得すると、システム操作決定部14は、取得した情報それぞれについて従前の状態と比べて変化があったか否かを判定する(ステップS202)。
【0046】
ステップS202の判定において、検査開始情報、検査種別情報及びX線照射情報のうち何れか少なくとも1つの情報に変化があった場合にステップS203に進み、装置運用状況コマンドStを生成する。装置運用状況コマンドStは、図6(D)に示すように、検査開始情報、検査種別及びX線照射情報の3つの情報からなり、これらの組み合わせに応じて適用すべき音声認識データテーブルが定まるようになっている。
【0047】
システム操作決定部14は、生成された装置運用状況コマンドStを音声認識部111へ出力し(ステップS205)、音声認識部111は、入力された装置運用状況コマンドStに従って音声認識データテーブルを選択し、切り替える。装置運用状況コマンドStの各情報、例えば、検査開始情報が「検査開始後」を示すao1、検査種別が「Abdomen(腹部)」を示す1001、X線照射情報が「照射中」を示すc01である場合には、音声認識データベースtg003が選択される。
【0048】
上述のように音声認識DBに音声認識データテーブルが複数格納されている場合においても、第1の実施形態及びその変形例と同様に、重み係数の更新を行うことができる。
【0049】
コマンド解析部113は、操作履歴を生成する際に、操作コマンドを示す操作コマンドコードや音声コマンドを示す音声コマンドコードと共に、検査開始の有無や検査種別に係るコマンドコード(図6参照)を記録する。このようにすることで、更新が必要な音声認識データベースの重み係数についてのみ更新を行うことができる。
【0050】
このように本実施形態によれば、音声認識入力装置を適用する装置の運用状況に応じて音声認識処理に用いる音声認識データテーブルを切り替えることができる。各音声認識データテーブルは、装置運用状況毎に使用頻度の高い操作、使用頻度の高い音声コマンドに比重を置いた重み係数を定めることができるため、音声認識処理の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0051】
10・・・音声認識入力装置、11・・・CPU、12・・・音声入力I/F、13・・・手動入力I/F、14・・・メモリ、15・・・音声認識DB、16・・・ログ収集DB、20・・・画像撮像装置、30・・・ディスプレイ、111・・・音声認識部、112・・・コマンド変換部、113・・・コマンド解析部、120・・・音声操作処理部、130・・・手動操作処理部、140・・・システム操作決定部、20・・・画像撮像装置、30・・・ディスプレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7