(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】音量制御のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
G10L 21/034 20130101AFI20220915BHJP
G10L 21/0364 20130101ALI20220915BHJP
H03G 5/16 20060101ALI20220915BHJP
H04B 1/16 20060101ALI20220915BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
G10L21/034
G10L21/0364
H03G5/16 165
H04B1/16 R
H04R3/00 310
(21)【出願番号】P 2018513904
(86)(22)【出願日】2016-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2016061542
(87)【国際公開番号】W WO2016193033
(87)【国際公開日】2016-12-08
【審査請求日】2018-01-16
【審判番号】
【審判請求日】2020-11-27
(32)【優先日】2015-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500341779
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・シャラー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ウーレ
(72)【発明者】
【氏名】オリバー・ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・ルウィゾート
【合議体】
【審判長】角田 慎治
【審判官】山中 実
【審判官】土居 仁士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/078096(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0253586(US,A1)
【文献】特表2010-513974(JP,A)
【文献】特表2008-504783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 21/034 , G10L 21/0364 , H03G 5/16 165 , H04B 1/16 R, H04R 3/00 310
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの音源(AQ1、AQ2)のための音量制御用装置(10)であって、
前記2つの音源のうちの第1の音源(AQ1)の音声信号をある時間帯にわたって分析し該時間帯の関数として第1のラウドネス値(LW1)を測定し、前記ラウドネス値と前記2つの音源のうちの前記第1の音源(AQ1)と関連付けながら前記ラウドネス値を記憶し、前記2つの音源のうちの第2の音源(AQ2)の音声信号をある時間帯にわたって分析し該時間帯の関数として第2のラウドネス値(LW2)を測定し、前記ラウドネス値と前記2つの音源のうちの前記第2の音源(AQ2)と関連付けながら前記ラウドネス値を記憶するように構成されるラウドネスアナライザ(12)と、
前記対応する第1のラウドネス値(LW1)に基づいて、前記2つの音源のうちの前記現在選択されている第1の音源(AQ1)の前記音声信号を適応し、前記対応する第2のラウドネス値(LW2)に基づいて、前記2つの音源のうちの前記現在選択されている第2の音源(AQ2)の前記音声信号を適応するように構成される音量レギュレータ(14)と、を備え、
学習フェーズ中の時間帯は、各音源(AQ1、AQ2)に対して少なくとも60秒に達し、前記ラウドネスアナライザ(12)は、ラウドネス値(LW1,LW2)が前記それぞれの音源(AQ1、AQ2)に対していまだ記憶されていない場合に、前記学習フェーズを実行し、
適応フェーズ中の時間帯が、前記それぞれの音源(AQ1、AQ2)に対して、少なくとも60秒または300秒に達し、前記ラウドネスアナライザ(12)は、前記適応フェーズ中に前記第1のまたは第2のラウドネス値(LW1,LW2)を適応し、
前記第1のラウドネス値(LW1)の適応(130)は前記適応フェーズ中に実行され、それによって、さらなる第1のラウドネス値(LW1)が測定され、前記第1のラウドネス値(LW1)の適応は、前記さらなる第1のラウドネス値(LW1)が、前記第1のラウドネス値(LW1)を使用して更新され、前記第2のラウドネス値(LW2)の適応(130)は前記適応フェーズ中に実行され、さらなる第2のラウドネス値(LW2)が測定され、前記第2のラウドネス値(LW2)の適応は、前記さらなる第2のラウドネス値(LW2)が、前記第2のラウドネス値(LW2)を使用して更新され、
前記更新は、前記第1のラウドネス値(LW1)の重み付け、および前記さらなる第1のラウドネス値(LW1)の重み付けを包含し、前記更新は、前記第2のラウドネス値(LW2)の重み付け、および前記さらなる第2のラウドネス値(LW2)の重み付けを包含し、
前記音源の動作中、新しい第1のラウドネス値(LW1)は、前記さらなる第1のラウドネス値(LW1)が、記憶された前記第1のラウドネス値(LW1)から、少なくとも10%だけ偏移している場合にのみ記憶され、前記音源の動作中、新しい第2のラウドネス値(LW2)は、前記さらなる第2のラウドネス値(LW2)が、記憶された前記第2のラウドネス値(LW2)から、少なくとも10%だけ偏移している場合にのみ記憶され、
前記重み付けは、前記さらなる第1のラウドネス値(LW1)が、記憶された前記第1のラウドネス値(LW1)よりも、前記新しい第1のラウドネス値(LW1)に対する影響がより小さくなるように選択され、前記重み付けは、前記さらなる第2のラウドネス値(LW2)が、記憶された前記第2のラウドネス値(LW2)よりも、前記新しい第2のラウドネス値(LW2)に対する影響がより小さくなるように選択される装置(10)。
【請求項2】
前記少なくとも2つの音源(AQ1、AQ2)が同じタイプの異なる音源(AQ1、AQ2)であるか、または前記2つの音源(AQ1、AQ2)が2つの異なるラジオ局である、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項3】
前記第1のラウドネス値が、前記2つの音源(AQ1、AQ2)のうちの前記第1の音源の前記測定されたラウドネスの前記時間帯にわたる平均値を表し、前記第2のラウドネス値が、前記2つの音源(AQ1、AQ2)のうちの前記第2の音源の前記測定されたラウドネスの前記時間帯にわたる平均値を表す、請求項1または2に記載の装置(10)。
【請求項4】
前記ラウドネスアナライザ(12)は、前記学習フェーズの間中、前記2つの音源(AQ1、AQ2)のうちの前記選択された第1の音源の前記音声信号を分析し、前記2つの音源(AQ1、AQ2)のうちの前記現在選択されている第1の音源の前記音声信号に対する現在の暫定的な第1のラウドネス値を測定し、前記学習フェーズの間中、前記2つの音源(AQ1、AQ2)のうちの前記選択された第2の音源の前記音声信号を分析し、前記2つの音源(AQ1、AQ2)のうちの前記現在選択されている第2の音源の前記音声信号に対する現在の暫定的な第2のラウドネス値を測定するように構成され、
前記音量レギュレータ(14)は、前記現在の暫定的な第1のラウドネス値に基づいて、前記2つの音源(AQ1、AQ2)のうちの前記現在選択されている第1の音源の前記音声信号を適応し、前記現在の暫定的な第2のラウドネス値に基づいて、前記2つの音源(AQ1、AQ2)のうちの前記現在選択されている第2の音源の前記音声信号を適応するように構成される、請求項1~3のいずれかに記載の装置(10)。
【請求項5】
前記更新は、前記第1のラウドネス値(LW1)の重み付け、および前記さらなる第1のラウドネス値(LW1)の重み付けを包含し、前記重み付けは、前記さらなる第1のラウドネス値(LW1)が、記憶された前記第1のラウドネス値(LW1)よりも、前記新しい第1のラウドネス値(LW1)に対する影響がより小さくなるように選択され、前記更新は、前記第2のラウドネス値(LW2)の重み付け、および前記さらなる第2のラウドネス値(LW2)の重み付けを包含し、前記重み付けは、前記さらなる第2のラウドネス値(LW2)が、記憶された前記第2のラウドネス値(LW2)よりも、前記新しい第2のラウドネス値(LW2)に対する影響がより小さくなるように選択される、請求項1~
4のいずれかに記載の装置(10)。
【請求項6】
前記ラウドネスアナライザ(12)は、前記2つの音源(AQ1、AQ2)のうちの前記現在選択されている第1の音源と第2の音源のうちの少なくとも一方の前記音声信号を分析するように構成される、請求項1~
5のいずれかに記載の装置(10)。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれかに記載の装置(10)を備えるラジオチューナ(40)。
【請求項8】
前記ラジオチューナ(40)は、ダブルチューナとして構成される、請求項
7に記載のラジオチューナ(40)。
【請求項9】
前記ラウドネスアナライザ(12)は、前記現在選択されていない第1の音源と第2の音源のうちの少なくとも一方(AQ1、AQ2)の前記音声信号を分析するように構成される、請求項1~
8のいずれかに記載の装置(10)。
【請求項10】
少なくとも2つの音源(AQ1,AQ2)のための音量制御用方法(100)であって、
前記2つの音源のうちの第1の音源(AQ1)の音声信号をある時間帯にわたって分析し、その時間帯の関数として第1のラウドネス値(LW1)を測定し、前記第1の音源(AQ1)と関連付けながら、前記第1のラウドネス値(LW1)を記憶するステップ(110)と、
前記2つの音源のうちの第2の音源(AQ2)の音声信号をある時間帯にわたって分析し、その時間帯の関数として第2のラウドネス値(LW2)を測定し、前記第2の音源(AQ2)と関連付けながら、前記第2のラウドネス値(LW2)を記憶するステップ(120)と、
前記第1のラウドネス値(LW1)に基づいて、前記第1の音源(AQ1)の前記音声信号の音量を適応させるステップ(130)と、
前記第2のラウドネス値(LW2)に基づいて、前記第2の音源(AQ2)の前記音声信号の音量を適応させるステップ(130)と、を含み、
学習フェーズ中の時間帯は、各音源(AQ1、AQ2)に対して少なくとも60秒に達し、前記ラウドネスアナライザ(12)は、ラウドネス値(LW1,LW2)が前記それぞれの音源(AQ1、AQ2)に対していまだ記憶されていない場合に、前記学習フェーズを実行し、適応フェーズ中の時間帯が、前記それぞれの音源(AQ1、AQ2)に対して、少なくとも60秒または300秒に達し、前記ラウドネスアナライザ(12)は、前記適応フェーズ中に前記第1のまたは第2のラウドネス値(LW1,LW2)を適応し、
前記第1のラウドネス値(LW1)の適応(130)は、前記適応フェーズ中に実行され、それによって、さらなる第1のラウドネス値(LW1)が測定され、前記第1のラウドネス値(LW1)の適応は、前記さらなる第1のラウドネス値(LW1)が、前記第1のラウドネス値(LW1)を使用して更新され、前記第2のラウドネス値(LW2)の適応(130)は、前記適応フェーズ中に実行され、それによって、さらなる第2のラウドネス値(LW2)が測定され、前記第2のラウドネス値(LW2)の適応は、前記さらなる第2のラウドネス値(LW2)が、前記第2のラウドネス値(LW2)を使用して更新され、
前記更新は、前記第1のラウドネス値(LW1)の重み付け、および前記さらなる第1のラウドネス値(LW1)の重み付けを包含し、前記更新は、前記第2のラウドネス値(LW2)の重み付け、および前記さらなる第2のラウドネス値(LW2)の重み付けを包含し、前記重み付けは、前記適応フェーズ中の前記ラウドネス値の適応が、前記学習フェーズ中の前記ラウドネス値の適応より小さい重み付けを示すように選択され、
前記音源の動作中、新しい第1のラウドネス値(LW1)は、前記さらなる第1のラウドネス値(LW1)が、記憶された前記第1のラウドネス値(LW1)から、少なくとも10%だけ偏移している場合にのみ記憶され、前記音源の動作中、新しい第2のラウドネス値(LW2)は、前記さらなる第2のラウドネス値(LW2)が、記憶された前記第2のラウドネス値(LW2)から、少なくとも10%だけ偏移している場合にのみ記憶される方法(100)。
【請求項11】
コンピュータプログラムであって
、請求項
10に記載の前記方法(100)を実行するためのプログラムコードを含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、少なくとも2つの音源に対する音量を制御するための装置および方法、ならびに対応する音量制御を備えるラジオチューナに関し、これらの実施形態はまた、2段階ラウドネス正規化として言及されることもある。さらなる実施形態は、音量制御の方法、またはラウドネス正規化を実行するための対応するコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々なラジオ局の知覚される音量、またはラウドネスは、局によって異なる。Bayern 3またはAntenne Bayern[訳注:独国、Bavaria連邦州の地方ラジオ局]などのいわゆるメインストリーム局は、Bayern Klassikなどのクラシック音楽局と比較してかなりより大きな音で知覚される。
【0003】
現在では、当該違いを、音量つまみの手段により手動で再調整することによって等化される。長期的に見れば、このことは、ユーザにとって煩わしいかもしれない。ラジオが車両の内部で聞かれる場合、運転者は、手動で再調整を実行している間、必然的に交通状況から注意をそらすため、このことは、安全性の面から関連があるとさえ言えるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
信号の機能として、音量、またはラウドネスを(適応的に)調整するいくつかの方法がすでに存在している。例えば、ITU標準BS.1770には、ラウドネスの聴覚補償の計測方法が記載されている。当該方法の欠点は、音声信号が傾聴の間ずっと適応されることである。「ポンピング」(耳に聞こえる高速音量適応)、破裂音を伴う強力な再調整、またはダイナミクスの減少などのアーチファクトが生じる。
【0005】
それらの各々の性質により、当該方法は、透明感のある混じり気のない音響再生の要件を満たすことができない。したがって、車両内の最高級音響システムなどのハイファイ要件を必要とする分野では、例えば当該アルゴリズムは採用されない。米国特許出願第2010/0046765号明細書には、ボリューム制御に対するアプローチが開示されている。ここでの制御は、入力当たりの平均値と短期再調整に基づいている。米国特許出願第2014/014537号明細書は、ラウドネスのレベルを継続的に再調整する複数の入力に対するラウドネス制御に関する。いずれのアプローチでも、ユーザは前記再調整が行われていることに気付き得る。したがって、改良された方法が必要とされる。
【0006】
本発明の目的は、音響再生を実質的に混じり気のないまま残す自動音量制御の概念を提供することである。
【0007】
本目的は、独立請求項により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、少なくとも2つの音源、例えば2つのラジオ局(無線送信機)に対する音量制御用装置を提供する。この装置は、ラウドネスアナライザおよび音量レギュレータを備える。このラウドネスアナライザは、その2つの音源のうちの第1の音源、すなわち例えば、ある時間帯(例えば、1~5分の)にわたって第1の局の音声信号を分析し、その時間帯に関しての関数として第1のラウドネス値を測定し、そして当該ラウドネス値と2つの音源のうちの第1の音源を関連付けながら、当該ラウドネス値を記憶するように構成される。さらに、ラウドネスアナライザは、その2つの音源のうちの第2の音源、すなわち例えば、ある時間帯(例えば、同じ時間帯でもよい)にわたって第2の局の音声信号を分析し、その時間帯に関しての関数として第2のラウドネス値を測定し、そして当該ラウドネス値と2つの音源のうちの第2の音源を関連付けながら、当該ラウドネス値を記憶するように構成される。音量レギュレータは、関連付けられた第1および/または第2のラウドネス値に基づいて、2つの音源のうちの現在選択されている第1および/または第2の音源の音声信号を適応させるように構成される。
【0009】
本発明の基礎をなす知見は、最初に異なる音源またはラジオ局をそれらのラウドネスに関して分析することと、次いで、各関連付けられた音源の分析結果の関数として各音源または各局の音量制御を選択するように、当該分析に基づいて対応するラウドネス情報(ラウドネス値)を記憶することで構成される。その音源に対して確実に代表的な平均値を取得するため、分析は、例えば5分の比較的長い時間帯にわたって実行されることが好ましい(必ずしも必要ではないが)。第2のステップにおける音量制御は、再生の間中その結果により生じる音声信号が、第1および第2の音源に対しておおむね同じ音量またはラウドネスを有するように実行されることが好ましい。またその結果、この文脈の中で正規化に関して述べることも可能となる。この方法は、たとえ数分でなくても通常数秒かかる分析という手段により良好な平均値が取得され、また「ポンピング」および/または「セトリング」などの上述した不利な影響は生じないという利点を有する。このように、音声信号のダイナミクスレンジもまた維持される。各音源が、その各音源と関連付けられそして記憶されるラウドネス値を有するという事実により、正しい音量選択が、言ってみれば音源の選択と同時に、または切り替え最中(遅延無し)にもたらされることが可能となる。
【0010】
上に例示された手順は、ラウドネス正規化におけるメインステージとみなされることができる。また、ある局を最初に選択する際に許容可能な正規化を達成するため、その局はその局と関連付けられるラウドネス値を有してはいないが、短期間の正規化は、プレステージの間中、現在測定されているラウドネス値に基づいて行われることができる。このことは、本方法が、さらなる実施形態に基づいて、暫定ラウドネス値を測定するステップ、および当該暫定ラウドネス値または現在測定されている暫定ラウドネス値に基づいて、現在選択されている音源(局)の音量を正規化するステップを含む理由である。プレステージの間中、当該音量の正規化がそのような時間の間ずっと実行されると、その後、ラウドネス値が、代表的な時間帯(音源毎の学習フェーズ)の範囲にわたって測定され、そして記憶される。当該実施形態によれば、音量の正規化は、プレステージおよびメインステージにさらに分割されるため、自動式2段階音量制御(または2段階ラウドネス正規化)に関しても述べることができる。
【0011】
さらなる実施形態によれば、各音源に対するラウドネス値は、ひとたび測定されそして記憶されると、その音源の動作中ずっと例外的な場合において更新される。この目的のため、音源を選択している間中、そのラウドネスは分析され、万一顕著な偏差がある場合には、ラウドネス値は更新され、そして新たに記憶される。いくつかの実施形態によれば、当該更新は、当該更新がそのラウドネス値、したがって音量適応にほとんど影響を与えないように実行される。その結果、学習フェーズ後に音量の可聴適応は存在しないが、一方、それにもかかわらず、音源内に何らかの変化がある場合には、それに応じて当該変化が考慮に入れられるであろうことが確実に保証される。いくつかの実施形態によれば、ある種の重み付けの効果が本文脈上において与えられ、次いで当該重み付けは、適応フェーズの間中のラウドネス値の適応性が、学習フェーズのラウドネス値の適応性よりも小さく与えられるように選択されるべきである。さらなる実施形態によれば、ラウドネス値の調整は、新しく測定されるラウドネス値が、記憶されているラウドネス値から著しく偏移する場合においてのみ実行されることができる。当該顕著な偏差は、百分率に換算して2%または10%であると表示されることができる。
【0012】
さらなる実施形態によれば、ラウドネス値を更新する当該ステップ、および/または、まださらなる実施形態によれば、新音源(局)の新しいラウドネス値を測定する当該ステップは、アナライザに対する技術的事前要求が与えられる場合、バックグラウンドで実行されることができる。ラジオチューナを例に取ると、このことは特に、第2のチューナ部が、バックグラウンドで第2の局を受信しそしてそれを分析するように提供されることを意味する。それら2つの実施形態は、局を切り替える瞬間に、直ちに測定されるまたは更新されるラウドネス値が存在し、その結果、ラウドネス値が有効に正規化されることができるという利点を有する。
【0013】
さらなる実施形態は、前述した音量制御用装置を備えるラジオチューナに関する。さらなる実施形態によれば、当該ラジオチューナはまた、2つのチューナユニットを備えることもできる。
【0014】
さらなる実施形態の1つは、音量制御のための対応する方法に関し、この方法は、以下のステップ、すなわち、2つの音源のうちの第1の音源の音声信号を分析しそして対応するラウドネス値を記憶するステップと、2つの音源のうちの第2の音源の音声信号を分析しそして対応するラウドネス値を記憶するステップと、ならびにそれぞれの第1および/または第2のラウドネス値に基づいて、第1および/または第2の音源の音声信号の音量を適応させるステップを含む。さらなる実施形態に基づいて、当該方法はまた、コンピュータプログラムにより実行されることもできる。
【0015】
さらなる実施態様が、下位請求項において定義される。実施形態は、添付図面を参照しながら、以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1a】1つの実施形態に基づく、音量制御用装置を示す図である。
【
図1b】さらなる1つの実施形態に基づく、音量制御の対応する方法を示す図である。
【
図2】実施態様に基づく、音量制御のための対応する装置を備えるラジオチューナを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態が、図を参照しながら以下に詳細に説明される前に、同一の構成要素および構造体、または機能上同一の構成要素および構造体は、同一の参照番号で示され、それらの説明は、相互に適用可能であり、および/または交換可能であることに注意すべきである。
【0018】
図1aは、少なくとも2つの音源AQ1およびAQ2の音量制御のための装置10を示す図である。この装置10は、ラウドネスアナライザ12および音量レギュレータ14を備える。さらに、この装置10はまた、メモリ16も備える。このラウドネスアナライザ12は、入力側上に配設され、すなわち、ラウドネスアナライザが音源AQ1およびAQ2に切り替え可能に接続されることができるように配設されている。AQ1およびAQ2の信号は、音響アナライザ12により音量レギュレータ14に送られるか、またはバイパスされるかのどちらか一方である。
【0019】
異なる音源AQ1およびAQ2は、例えば2つの異なるラジオ局を表し得るが、例えばラジオチューナを手段とするかまたはプリアンプを手段とするかして切り替えられるCDおよびラジオなどの他の入力源も表し得る。音源AQ1またはAQ2の(デジタルまたはアナログ)音声信号は、ラウドネスアナライザ12によって受信され、このラウドネスアナライザは、例えば60秒または300秒もしくはそれを超える時間帯にわたって当該信号を分析し、そして各音源AQ1およびAQ2と関連付けられたラウドネス値を、時間帯に関しての関数として測定する。長い時定数(例えば、1~5分)により、実際のラウドネスに相当するラウドネス(LW1またはLW2)のその平均値は、当該局または音源に対して計算されることができる。
【0020】
測定されたラウドネス値(音源AQ1に対するLW1、および音源AQ2に対するLW2)は、メモリ16の中に記憶される。このメモリ16は通常、不揮発性メモリであり、その結果、ラウドネス値LW1またはLW2は、切り替えオフおよび切り替えオンの後でさえも保存されることになろう。また、メモリ16は、例えば最後に調整された短符号の局選択ボタンまたは音量を記憶するように、ほとんどの場合、ラジオチューナ内部にすでに設置されているというこの点にも注意すべきである。音量レギュレータ14は、今のところ、記憶されたラウドネス値LW1またはLW2に基づいて、選択された音源AQ1またはAQ2の音声信号を直接適応させる。
【0021】
この装置10の当該動作はまた、
図1bに示される方法100の手段により説明されることもできる。この方法100は、ステップ110およびステップ120を含み、これらのステップは、別のステップと並行して、または一方のステップの後に別のステップを、(すなわち、現在選択されている音源(AQ1またはAQ2)によって、異なる時期に)実行することができる。ステップ110は、音源AQ1を分析するステップ、そしてラウドネス値LW1を記憶するステップに関連するのに対して、ステップ120は、音源AQ2を分析するステップ、そしてラウドネス値LW2を記憶するステップに関連する。記憶された値LW1およびLW2に基づいて、第3のステップ130は、それぞれ選択された音源の音量を適応させるステップを含む。
【0022】
すでに上述したように、第1のステップにおいて実行されたラウドネス測定およびその適応は、ゆっくりとした制御時間と関連付けられ、その結果、ステップ30において起こる音量の変化は、ほとんど聞き取ることができない。このように、上述した短所は、避けられることが可能となる。
【0023】
それぞれの音源AQ1およびAQ2が、後ほど再度選択される場合、ステップ130は、音量レベルを等化するために繰り返されることができる。局を頻繁に選択するステップが、特定のラジオ局の、ばらつきのない基本的な音量、または平均音量を極めて長い時間帯(数ヶ月~数年まで)にわたって維持するという想定に基づく場合、音量値LW1およびLW2の当該利用は、いわゆる学習フェーズの間中、その音量を等化するために測定され続ける。音量値LW1およびLW2を記憶するステップ、ならびにステップ130を実行するステップにより、任意の局から、事前に記憶されたラウドネス値、出力において直ちに生じる音量の正規化を有する局に切り替えることができるという利点が提供される。その結果、ここでは適応は必要とされず、したがって、ダイナミクスを維持しながら、透明感のある音楽を楽しむことが保証される。
【0024】
また、学習フェーズの最中にも音量の正規化を可能とするため、すなわち、例えば最初にある局を選択する場合、まだラウドネス値を測定することができていない場合、短期間の制御はまた、いわゆるプレステージの間中実行されることもできる(前述された音量正規化におけるメインステージと比較すると)。この目的を達成するため、暫定的なラウドネス値が、飛行のプレステージで、すなわち、局の選択の最初の瞬間を基準として測定され、その音量は当該(現在の)ラウドネス値に基づいて制御される。プレステージにおける当該短期間制御は、結果として現在の音源の粗悪化をもたらし得るが、特にダイナミクスレンジに関しては、正規化は、各時間点および各音源に対しこのようにして保証されることができる。
【0025】
このプレステージの音量正規化は、現在の音源の学習フェーズが完了するまでの時間、例えば60秒~300秒までの時間中ずっと実行され、その結果、メインステージに切り替えることができ、少なくともステップ110またはステップ120はそのプレステージと並行して実行される。
【0026】
方法100、ならびに特にステップ110およびステップ120は、互いに並行して描かれており、特にその理由は、
図2を参照しながら説明されるように、ラウドネス値LW1およびLW2を測定するステップが、さらなる実施形態に基づいて、音源AQ1および音源AQ2を同時に分析する(すなわち、1つの音源に対しては、バックグラウンドにおいて)ことによってもたらせ得るというこの点に注意すべきである。
【0027】
さらなる実施形態によれば、ステップ110およびステップ120は、当初、すなわちいわゆる学習フェーズの最中はもちろんのこと、永続的な動作の最中においても実行される。時間と共にラジオ局の音量において起こり得る変化に対処することができるように、測定はバックグラウンドで受動的に進められる。その測定値が、比較的長い時間帯にわたって、記憶された値から偏移する場合、慎重な再調整が実行されることができる。しかしながら、当該再調整は、音楽のダイナミクスにおいて、それほど顕著な介入を意味するものではない。
【0028】
図1aを参照すると、また、もう1つの選択肢として、音声信号AQ1および/またはAQ2の実際の適応が装置10内部で実行されないようにし、現在選択された音声信号の音量を適応させるために、音量レギュレータ14の手段を使って、装置10は単に音量制御信号を発するのみとすることが可能であることにも注意すべきである。
【0029】
図2は、さらなる実施形態、すなわち第1のチューナ部42を備えるラジオチューナ40を示す図である。この第1のチューナ部42は、アンテナ44に接続され、このため、チューナ42の手段を使って対応するキャリア周波数に切り替えることにより、いくつかのラジオ局(ラジオ送信機)または電波源AQ1およびAQ2を受信しおよび/または選択することができる。
図1aに説明されているように、音量制御のための装置10は、ラジオチューナ42からダウンストリームの方へ接続されている。
【0030】
さらなる実施形態によれば、ラジオチューナ40は、第2の、並列のチューナ部42’を備えることができ、この第2のチューナ部はまたアンテナ44に接続され、とりわけこれを使って、ラウドネスアナライザ12が、第1の電波源(例えば、電波源AQ1)を現在受信するのと並行して第2の電波源(例えば、AQ2)を受信し、そしてその電波源のラウドネスに関して同様に分析することを達成する。その結果、学習フェーズは、通常1~5分かかるが、都合のよいことにバックグラウンドで実行されることが可能である。例えば、このような並行チューナ部(ラジオ受信機)は、現在の高級な車両では標準的である。現在、当該第2のラジオチューナのタスクは、現在の局の音声再生を中断することなく、バックグラウンドで利用可能なラジオ局を調べるステップで構成される。見出されたラジオ局は、ほとんどの場合、利用局一覧としてHMI(車内にあるディスプレイ)にラジオ局の名前(RDS)と共に表示される。したがって、当該並行チューナ42’を使って、見出されたラジオ局のラウドネスを測定することができる。当該局のいずれかに切り替えると、計算されたラウドネス値LWはすでに利用可能であり、その結果、前述したように、音量制御は、実行される必要がある可聴調整をすることなく、動作することができる。
【0031】
当該第2のチューナ42は、その後者がバックグラウンドで動作しているため、学習時間を短縮するまたは回避するのに役立つだけでなく、記憶されているラウドネス値を更新するため、ラウドネス値がすでに記憶されている局を評価するために採用されることもできる。
【0032】
上記の実施形態では、音源は常にラジオ局であると仮定されているが、本明細書で提案された概念は、例えば平均して同じ値に留まるラウドネスを備える他のいかなる音源にもまた適用可能である。
【0033】
上述の長時定数、例えば1分から数分まで、または1時間から数時間まで、または数日間はより短くすることもでき、この場合、最初の利用期間中に可聴調整が起こる欠点を考慮に入れる必要があるというこの点に、もう一度注意すべきである。したがって、このように、音量は、局が再びチューニングされる場合、事前調整されるであろう。
【0034】
上述の実施形態は、常に1つの装置に関する文脈内で説明されているが、さらなる実施形態は、局によって提供された音声信号の音量、またはラウドネスを適応させる方法を提供し、その方法には、他の任意の局から当該局に切り替えるステップの中でその局の実際のラウドネスの値を測定するように、既知の手順、ただし短縮された制御時間に基づいて、ラウドネスの測定および調整を実行するステップと、正規化された音量と共に音声信号を出力するための測定されたラウドネス値を利用するステップが含まれる。
【0035】
いくつかの態様が、1つの装置に関する文脈内で説明されてきたが、当該態様もまた、その対応する方法の説明を代弁するものと理解され、その結果、装置のブロックまたは構造上の構成要素もまた、対応する方法のステップとして、または方法のステップの特徴として理解されるべきである。それとの類推から、方法のステップに関する文脈内で説明されてきた態様、または方法のステップとして説明されてきた態様はまた、対応するブロックもしくは詳細の説明、または対応する装置の特徴も代弁している。いくつかのまたはすべての方法のステップは、マイクロプロセッサ、プログラム可能なコンピュータ、または電子回路などのハードウエア装置によって(またはハードウエア装置を使いながら)実行されることができる。いくつかの実施形態では、いくつかのまたは数個の最も重要な方法のステップは、そのような装置により実行されることができる。
【0036】
実施態様の要件によって、本発明の実施形態は、ハードウエア内またはソフトウエア内で実現されることができる。実施態様は、デジタル記憶媒体、例えばフロッピーディスク、DVD、ブルーレイディスク、CD、ROM、PROM、EPROM、EEPROMもしくはFLASHメモリ、ハードディスク、または他の任意の磁気メモリもしくは光メモリを使って実行できる。当該デジタル記憶媒体は電子的に読み込み可能な制御信号を有し、当該制御信号は、それぞれの方法が実行されるように、プログラム可能なコンピュータシステムと協同できるか、または実際に協同するものである。このようにして、デジタル記憶媒体はコンピュータ読み取り可能である。
【0037】
このため、本発明に基づくいくつかの実施形態は、本明細書に記載の任意の方法が実行されるように、プログラム可能なコンピュータシステムと協同することができる電子的に読み込み可能な制御信号を備えるデータキャリアを含む。
【0038】
一般に、本発明の実施形態は、プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品として実装されることができ、このプログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されるときに任意のこれらの方法を実行するのに有効である。
【0039】
また、このプログラムコードは、例えば機械可読キャリア上に記憶されることもできる。
【0040】
他の実施形態は、本明細書に記載された任意の方法を実行するためのコンピュータプログラムを含み、当該コンピュータプログラムは、機械可読キャリア上に記憶される。
【0041】
したがって、言い換えると、本発明の方法の1つの実施形態は、本明細書に記載された任意の方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムであり、このコンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されると、当該方法が実行される。
【0042】
このため、本発明の方法のさらなる1つの実施形態は、本明細書に記載された任意の方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録されているデータキャリア(またはデジタル記憶媒体またはコンピュータ可読媒体)である。
【0043】
このため、本発明の方法のさらなる1つの実施形態は、本明細書に記載された任意の方法を実行するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは一連の信号である。このデータストリームまたは一連の信号は、例えばデータ通信リンクを経由して、例えばインターネットを経由して転送されるように構成されることができる。
【0044】
さらなる1つの実施形態は、処理手段となる、例えばコンピュータまたはプログラム可能論理回路デバイスを含み、これらは本明細書に記載された任意の方法を実行するように構成されまたは適応される。
【0045】
さらなる1つの実施形態は、本明細書に記載された任意の方法を実行するためのコンピュータプログラムがインストールされているコンピュータを含む。
【0046】
本発明に基づくさらなる1つの実施形態は、本明細書に記載された方法のうちの少なくとも1つを実行するためのコンピュータプログラムを受信機に送信するように構成された装置またはシステムを含む。この送信は、例えば電子的または光学的であってもよい。この受信機は、例えばコンピュータ、携帯型デバイス、メモリデバイス、または類似のデバイスであってもよい。このデバイスまたはシステムは、例えばコンピュータプログラムを受信機に送信するためのファイルサーバを含んでもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、プログラム可能論理回路デバイス(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ、FPGA)を使って、本明細書に記載された方法の機能性のうちのいくつかまたはすべてを実行することができる。いくつかの実施形態では、フィールドプログラマブルゲートアレイは、マイクロプロセッサと協同して本明細書に記載された任意の方法を実行することができる。一般に、これらの方法は、いくつかの実施形態では、任意のハードウエアデバイスによって実行される。当該ハードウエアデバイスは、コンピュータプロセッサ(CPU)などの任意の汎用的に適用可能なハードウエアとしてもよく、またはASICなどの本方法に特化したハードウエアであってもよい。
【0048】
上述した実施形態は、本発明の原理の例示を単に表しているにすぎない。当業者は、本明細書に記載された配設および詳細に関する改善および変形を認めることは、理解されるであろう。このことは、本発明が、実施形態の記載および議論により、本明細書に示されてきた具体的な詳細によってではなく、以下の請求項の範囲によってのみ制限されるべきであるよう意図されている理由である。