(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】埋込体留置具
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
A61M37/00 550
(21)【出願番号】P 2019021347
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】石田 昌弘
【審査官】黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-519973(JP,A)
【文献】特開2012-075547(JP,A)
【文献】特表2009-527272(JP,A)
【文献】特表2015-505254(JP,A)
【文献】特表2016-502919(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0202408(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に皮下組織に穿刺可能な穿刺部が形成され、内部に軸方向に延びる内部空間を有する管部材と、
前記内部空間の内径と略同じ径で先端に形成された係止部と、前記係止部から基端側に糸状に延び出た本体部と、を有し、細胞が付着することで組織再生を促す能力を有する材料で形成された埋込体と、
前記管部材の基端側に接続されて前記内部空間に液体を流通させて前記埋込体を前記管部材の内部空間で移動させる移動機構と、
を備え、
前記埋込体は、前記本体部の基端部に接続されたストッパを備え、
前記管部材と前記移動機構との間に設けられ、前記埋込体の前記ストッパ及び前記本体部の基端部を収容する軸孔部と、前記軸孔部内の前記本体部を切断して前記埋込体から前記ストッパを切り離す切断部材と、を有する中間部材を、さらに備えた、埋込体留置具。
【請求項2】
請求項1記載の埋込体留置具であって、前記埋込体の前記係止部は前記本体部よりも大きな径を有する塊状に形成されるとともに、前記内部空間と液密に接触している、埋込体留置具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の埋込体留置具であって、前記内部空間の先端側が屈曲して前記管部材の外周面に開口している、埋込体留置具。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の埋込体留置具であって、前記管部材は周方向に複数に分割されており、分割された前記管部材の各部を別々に抜去可能であり、前記複数に分割された少なくとも1つの管部材が前記軸方向に移動可能である埋込体留置具。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の埋込体留置具であって、前記管部材は、前記埋込体を収納する管部材と、前記管部材の外周を覆うとともに、側部に開口部が設けられた外側管部材と、を備え、前記管部材が前記外側管部材に先立って抜去可能に構成された、埋込体留置具。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の埋込体留置具であって、前記埋込体の本体部は、生体内で分解され、且つ前記本体部よりも伸縮性が低い材料で補強された、埋込体留置具。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の埋込体留置具であって、前記埋込体は超音波撮像装置、X線撮像装置、紫外線照射装置、及び近赤外線撮像装置のいずれかによって留置位置を確認可能な位置確認部を有する、埋込体留置具。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の埋込体留置具であって、前記管部材の外表面が抗菌物質で被覆されている、埋込体留置具。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の埋込体留置具であって、前記液体又は前記埋込体は、抗菌物質及び抗がん剤の少なくとも一方を含む、埋込体留置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚から穿刺して体内に埋込体を留置する埋込体留置具に関する。
【背景技術】
【0002】
機能が低下した組織を治療するために、当該部位に組織再生を促す埋込体を設置する治療法が種々提案されている。例えば、内部に無数の孔が形成された多孔質のコラーゲン繊維を損傷部位に埋入する方法が提案されている(特許文献1)。このようなコラーゲン繊維を埋め込むと周囲に細胞が集まり、損傷組織の再生が促される効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、埋込体は、皮膚組織を切開して、損傷組織を露出させ、埋入するコラーゲン繊維を結紮クリップや組織用接着剤で損傷組織に固定する方法で埋め込まれている。しかし、このような手法では、侵襲が大きく患者への負担が大きいため、より負担の少ない手法が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、低侵襲で簡便に埋込体を損傷部位に留置できる埋込体留置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点は、先端に皮下組織に穿刺可能な穿刺部が形成され、内部に軸方向に延びる内部空間を有する管部材と、前記内部空間の内径と略同じ径で先端に形成された係止部と、前記係止部から基端側に糸状に延び出た本体部と、を有し、細胞が付着することで組織再生を促す能力を有する材料で形成された埋込体と、前記管部材の基端側に接続されて前記内部空間に液体を流通させて前記埋込体を前記管部材の内部空間で移動させる移動機構と、を備え、前記埋込体は、前記本体部の基端部に接続されたストッパを備え、前記管部材と前記移動機構との間に設けられ、前記埋込体の前記ストッパ及び前記本体部の基端部を収容する軸孔部と、前記軸孔部内の前記本体部を切断して前記埋込体から前記ストッパを切り離す切断部材と、を有する中間部材を、さらに備えた、埋込体留置具にある。
【発明の効果】
【0008】
上記観点の埋込体留置具によれば、低侵襲で簡便に埋込体を損傷部位に留置できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る埋込体留置具の断面図である。
【
図2】
図2Aは、
図1の埋込体留置具を生体の皮膚に穿刺した状態の説明図であり、
図2Bは
図1の埋込体留置具の埋込体を生体の皮下組織に送り込む操作を示す説明図である。
【
図3】
図3Aは、
図1の埋込体留置具を引き抜く操作を示す説明図であり、
図3Bは、埋込体留置具を生体から引き抜いた後の埋込体の処理方法を示す説明図である。
【
図4】
図4Aは、
図1の埋込体留置具の製造に使用する埋込体の断面図であり、
図4Bは
図4Aの埋込体を管部材の内部空間に挿入する方法を示す断面図である。
【
図5】
図5Aは、
図4Bの埋込体の剛性部材を切断除去する方法を示す断面図であり、
図5Bは
図5Aの埋込体を管部材の内部空間に押し戻す操作を示す説明図である。
【
図6】
図6Aは、埋込体を管部材の内部空間に挿入する別の方法を示す断面図であり、
図6Bは
図6Aの埋込体の剛性部材を切断除去する方法を示す説明図である。
【
図7】
図7Aは、埋込体を管状部の内部空間に挿入するさらに別の方法を示す断面図であり、
図7Bは、
図7Aの埋込体のストッパを切断除去する方法を示す説明図である。
【
図8】第2実施形態に係る埋込体留置具の断面図である。
【
図9】
図9Aは、
図8の埋込体留置具を皮膚に穿刺する操作を示す説明図であり、
図9Bは
図8の埋込体留置具から埋込体を送り出す操作を示す説明図である。
【
図10】
図10Aは、
図8の埋込体を目的部位に残して埋込体留置具を引き抜く操作を示す説明図であり、
図10Bは
図8の埋込体留置具を引き抜いた後の埋込体の突出部分の処理方法を示す説明図である。
【
図11】第3実施形態に係る埋込体留置具の断面図である。
【
図12】
図11の埋込体留置具を用いた埋込体の埋入方法を示す説明図である。
【
図13】
図13Aは、埋込体を残して管部材を引き抜く際の皮下組織の変形を示す模式図であり、
図13Bは管部材を引き抜いた後に皮下組織が元の形状に復元した際に、埋込体に蛇行が生じる様子を示す模式図である。
【
図16】第5実施形態に係る埋込体留置具の断面図である。
【
図17】
図16の埋込体留置具の管部材の動作を示す斜視図である。
【
図20】第7実施形態に係る埋込体留置具の平面図である。
【
図21】第8実施形態に係る埋込体留置具の管部材の断面図である。
【
図22】第9実施形態に係る埋込体留置具の管部材の断面図である。
【
図23】第10実施形態に係る埋込体留置具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
本実施形態の埋込体留置具10は、
図1に示すように、組織の再生を促す能力を有する埋込体20を内蔵し、目的部位の近傍の皮膚90から穿刺して埋込体20を機能が低下した組織に送り込むために使用される。具体的には、埋込体留置具10は、先端に皮下組織92に穿刺可能な穿刺部14を備えた管部材12と、管部材12の基端側に設けられたハブ本体部16と、ハブ本体部16に接続された移動機構18と、を備えている。
【0012】
管部材12は、埋込体留置具10の軸方向に長く延びた管状の部材であり、その内部には軸方向に延びる貫通孔12a(内部空間)が形成されている。貫通孔12aは、先端から基端部にかけて一定の径を有する断面が円形の孔として形成されている。貫通孔12aの先端側は、穿刺部14において開口する。また、貫通孔12aの基端側は、ハブ本体部16の空洞部16aに開口している。
【0013】
管部材12の先端には、生体の皮膚90に穿刺可能な穿刺部14が形成されている。穿刺部14は、図示のように管部材12の軸に対して傾斜した面で構成されており、その先端に鋭利な針先14aが形成されている。
【0014】
管部材12は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料によって形成することができる。また、管部材12の外径は例えば0.7mm~3.0mm程度とすることができ、貫通孔12aの直径は、0.5mm~1.2mm程度とすることができる。また、管部材12の針先14aからハブ本体部16との接続部までの長さは、100mm~250mm程度とすることができる。
【0015】
ハブ本体部16は、管部材12の基端側に設けられた部材である。ハブ本体部16は、管部材12よりも大きな径に形成された部材であり、円筒状に形成されて、軸方向に所定の長さに延びて形成されている。ハブ本体部16は、管部材12を皮膚90から穿刺して皮下組織92内を押し進める操作力が入力される部分であり、操作力を入力しやすくするべく、手で持ちやすい程度の外径及び長さ(軸方向の長さ)に形成されている。
【0016】
ハブ本体部16の内部には、移動機構18を装着するための空洞部16aが形成されている。空洞部16aは、断面が円形に形成されており、軸方向に延びている。空洞部16aの先端は、管部材12の貫通孔12aと連通する。また、空洞部16aは、軸方向基端側に向けて開口しており、その開口部分から移動機構18を収容可能に構成されている。空洞部16aの内径は移動機構18を構成するシリンジの外径部分を収容可能な大きさに形成されている。空洞部16aは、移動機構18と気密及び液密に接続するために、先端から基端に向けて径が徐々に大きくなるテーパ状に形成されていてもよい。
【0017】
ハブ本体部16は、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン樹脂等の樹脂材料で構成することができる。この場合には、ハブ本体部16と管部材12とは接着剤等で接合されており、ハブ本体部16と管部材12とが一体的に動くように構成されている。また、ハブ本体部16を樹脂材料で構成する場合には、埋込体20の基端部28bを視認可能なように透明な樹脂材料とすると、埋込体20の位置を確認できて好適である。なお、ハブ本体部16は、管部材12と同じ材料で管部材12と一体的に形成してもよい。
【0018】
移動機構18は、例えば、シリンジ等により構成される。移動機構18は、軸方向に長く延びた筒状の筒状部18bと、筒状部18bの内部に設けられたガスケット24と、ガスケット24の基端側に設けられた押し子22とを備えている。移動機構18は、筒状部18bの先端側がハブ本体部16に挿入されて液密及び気密に接合されている。筒状部18bの内部には、ガスケット24によって区画された空室18aが形成されており、その空室18aの内部には、液体30が充填されている。筒状部18bの先端側には、ノズル18cが設けられている。ハブ本体部16の空洞部16aと筒状部18bの空室18aとは、ノズル18cを介して連通している。
【0019】
液体30は、例えば、生理食塩水又はリンゲル液等の液体よりなる。移動機構18は、押し子22を軸方向先端側に押すと、ガスケット24が軸方向先端側に変位して、空室18a内の液体30がノズル18cから流出する。移動機構18から流出した液体30は、空洞部16aを介して管部材12の貫通孔12aに流入し、管部材12の貫通孔12aを軸方向先端側に流通するように構成されている。また、移動機構18の押し子22を軸方向基端側に引くと、ノズル18cを介して空洞部16a内の液体30が空室18a内に吸い込まれ、管部材12の貫通孔12aを先端側から基端側に向けて液体30が流通するように構成されている。
【0020】
埋込体20は、管部材12の貫通孔12aに、係止部26を先端側にして収容されている。埋込体20は、糸状に形成された本体部28と、本体部28の先端部28a(先端)に設けられた係止部26とを備えている。本体部28及び係止部26は、例えば、内部に無数の微細孔が形成された多孔質のコラーゲン繊維からなる。このような多孔質コラーゲン繊維は、生体内に留置すると、周囲から様々な細胞が集まり、機能が低下した組織の再生を促す効果を有することが知られている(特許文献1参照)。本体部28のコラーゲン繊維は例えば、平均直径が乾燥状態で0.4mm程度、湿潤状態で0.6mm程度であり、長さが例えば50mm~300mm程度のものを用いることができる。
【0021】
係止部26は、本体部28の先端部28a側に設けられている。係止部26は、生体内に埋込体20を留置する際に、生体組織に係止して目的部位から移動しないようにするべく、本体部28よりも大きな直径に形成されている。係止部26は、例えば、本体部28を結んだ結び目として構成される。また、係止部26は、本体部28の先端部28aに他の部材を付着させて増径して形成したものであってもよい。
【0022】
係止部26の直径は、管部材12の貫通孔12aの内径と略同じ大きさに形成されている。すなわち、係止部26は、貫通孔12aと密着しており、貫通孔12aに液体30を流通させることに伴って、液体30とともに貫通孔12aを軸方向の先端方向又は基端方向に移動可能に構成されている。
【0023】
なお、埋込体20は、乾燥状態と濡れた状態とでは、太さや長さ方向の寸法等の物性が異なる。そのため、乾燥状態で留置を開始して、留置中に液体30又は生体内の血液等によって徐々に濡れていくと、留置操作の安定の観点から好ましくない。そこで、図示のように、予めハブ本体部16の空洞部16a及び管部材12の貫通孔12aを液体30で満たして、埋込体20の基端から先端の全域を濡れた状態としておくことが好ましい。また、予め空洞部16a及び貫通孔12aを液体30で満たす代わりに、留置の開始の直前に、移動機構18の押し子22を押し込んで埋込体20に液体30と接触させる操作を行ってもよい。
【0024】
上記の埋込体留置具10は、例えば、機能低下したリンパ管があるリンパ節付近に埋込体20を留置する手技に用いることができる。リンパ管の機能低下は、腫瘍の治療の際のリンパ郭清や放射線治療等により生じる。リンパ管が機能不全となると、リンパ液が正常に流れず浮腫を生ずることがある。このような機能不全を改善するために、コラーゲン繊維よりなる埋込体20を留置することで、細胞増殖性及び組織化を誘導して、リンパ管の再生を促すことができる。以下、埋込体留置具10の作用について、その使用方法とともに説明する。
【0025】
図2Aに示すように、埋込体留置具10の管部材12の穿刺部14を、埋込体20を留置する目的部位の近傍の皮膚90に穿刺する。管部材12は、先端に鋭利な針先14aを有するとともに、注射針の針管とさほど変わらない太さに形成されているため、容易に皮膚90及び皮下組織92を貫通することができ、また皮膚90及び皮下組織92へのダメージを最小限に抑えることができる。また、皮膚90の切り口が小さいため、傷口からの感染を最小限に抑えることができる。
【0026】
その後、
図2Bに示すように、皮下組織92の中で管部材12を押し進めてその先端部の穿刺部14を目的部位に移動させる。次に、図示のように押し子22を軸方向先端に向けて押しこむ。これにより、移動機構18から液体30が押し出され、管部材12の貫通孔12aを軸方向先端側に向けて液体30が流通する。
【0027】
貫通孔12a内に収容された埋込体20は、液体30の圧力及び流れによって、貫通孔12aの軸方向先端側に押し出される。そして、埋込体20の係止部26が穿刺部14から突出する。ここで、埋込体20の位置を修正する場合には、移動機構18の押し子22を軸方向基端側に引いて、係止部26を貫通孔12aに引き戻す。その後、管部材12を移動させることで、埋込体20の位置の修正を行える。
【0028】
埋込体20の位置決めが完了したら、
図3Aに示すように、移動機構18の押し子22をさらに押し込んで埋込体20の係止部26を皮下組織92内に突出させる。これにより、係止部26が皮下組織92に係止され、埋込体20の先端の位置が決まる。
【0029】
次に、ハブ本体部16を基端側に引いて、管部材12を皮膚90から引き抜く。これにより、埋込体20が留置位置に残る。この場合、埋込体20自体には、引っ張り力が作用しないため、埋込体20の微細孔等の微細構造のダメージを抑制できる。その結果、細胞の定着性を損なうことなく、埋込体20を目的部位に留置できる。
【0030】
その後、
図3Bに示すように、必要に応じて、皮膚90から突出した埋込体20の基端部28bを切断手段34で切断除去して、埋込体20の埋入が完了する。なお、リンパ組織等の広い組織の再生を促す場合には、複数本の埋込体20を平行に埋め込む場合がある。この場合には、
図2A~
図3Bの操作を繰り返し行うことで、所望の本数の埋込体20を埋入すればよい。
【0031】
次に、
図4A~
図7Bを参照しつつ、本実施形態の埋込体留置具10の製造方法について説明する。
【0032】
埋込体留置具10の製造方法は、ハブ本体部16に管部材12を接合し、その後、管部材12の貫通孔12aに埋込体20を挿入し、最後にハブ本体部16に移動機構18を装着する方法で基本構成される。このような製造方法を実施するにあたっては、管部材12の細い貫通孔12aの内部に埋込体20を効率よく挿入する方法が必要となる。ここでは、埋込体20の貫通孔12aへの挿入方法に着目して説明する。
【0033】
第1の方法は、
図4Aに示すように、埋込体20の係止部26の先端側から剛性の高い剛性部材32が延び出た、前駆部材120を用意する。剛性部材32は、本体部28と同程度の径を有する部材であり、直線状に延びて形成されている。この前駆部材120の剛性部材32は、長尺な本体部28の中央付近に係止部26を形成した後、係止部26の片側から延び出た一方の本体部28に接着剤等の補強部材を浸漬させて固化させることで形成できる。また、剛性部材32は、埋込体20の係止部26に針金等を接合して形成してもよい。
【0034】
次に、
図4Bに示すように、前駆部材120の剛性部材32を、ハブ本体部16の空洞部16a側から管部材12の貫通孔12aに挿入する。剛性部材32は、折れ曲がりにくく形成されているため、位置決めが容易であり、貫通孔12aに容易に剛性部材32を挿入することができる。
【0035】
その後、
図5Aに示すように、貫通孔12a内の剛性部材32を先端側に移動させて貫通孔12aから完全に引き出す。そして、係止部26から先の剛性部材32を、切断手段34で切断除去する。
【0036】
次に、
図5Bに示すように、埋込体20の係止部26を貫通孔12a内に押し戻すことにより、埋込体20の管部材12の貫通孔12aへの挿入が完了する。なお、係止部26の貫通孔12aへの押し戻しは、例えば、エア等の流体を貫通孔12aに吹き込むことで行うことができる。
【0037】
第2の方法は、
図6Aに示すように、埋込体20の本体部28の基端部28bから剛性部材32Aが延び出た前駆部材120Aを用意する。剛性部材32Aは、本体部28と同程度の径を有する部材であり、直線状に延びて形成されている。この前駆部材120Aの剛性部材32Aは、長尺な本体部28の基端側の一部に接着剤等の補強部材を浸漬させて、直線状に引き延ばした状態で固化させて形成できる。また、剛性部材32Aは、本体部28の基端部28bに針金等を接合して形成してもよい。
【0038】
次に、図示のように、前駆部材120Aの剛性部材32Aを管部材12の貫通孔12aに、穿刺部14側から挿入する。剛性部材32Aは、変形しにくいため位置決めが容易であり、貫通孔12aに容易に挿入することができる。その後、剛性部材32Aを基端側に押し込む。
【0039】
次に、
図6Bに示すように、ハブ本体部16の空洞部16a側に突出した剛性部材32Aを基端側に引き出して、前駆部材120Aの係止部26を管部材12の貫通孔12a内に移動させる。そして、本体部28の基端側に延び出た剛性部材32Aを切断手段34で切断除去することで、係止部26が貫通孔12aに挿入された状態の、埋込体20が得られる。
【0040】
第3の方法は、
図7Aに示すように、埋込体20の本体部28の基端側にストッパ36が設けられた前駆部材120Bと、流体の流れで埋込体20の係止部26を管部材12の貫通孔12aに挿入する、挿入冶具38とを用いる。前駆部材120Bのストッパ36は、係止部26及び本体部28が管部材12の貫通孔12aから抜けるのを防止するべく、貫通孔12aの内径よりも大きな直径に形成されている。
【0041】
挿入冶具38は、例えばシリンジ等で構成されており、内部に水又は空気等の流体44とともに、前駆部材120Bが収容されている。図示のように、挿入冶具38をハブ本体部16の空洞部16aに装着し、挿入冶具38の押し子42を押圧してガスケット40を軸方向先端側に移動させる。
【0042】
これにより、挿入冶具38内の流体44が押し出されて管部材12の貫通孔12aに流れ込む。この流体44の流れによって、
図7Bに示すように、前駆部材120Bの係止部26が貫通孔12aに挿入される。
【0043】
ストッパ36を、ハブ本体部16の空洞部16aから引き出し、切断手段34により切断除去することにより、係止部26が貫通孔12aに挿入された状態の埋込体20が得られる。このように、本方法によれば、流体44の流れを利用することにより、細い貫通孔12aに位置決めを行うことなく、埋込体20を貫通孔12aに挿入することができる。
【0044】
さらに別の方法として、埋込体20の本体部28を、生体内で分解され、且つ、本体部28を構成するコラーゲン繊維よりも伸縮性が低い材料で補強した前駆部材で管部材12の貫通孔12aに埋込体20を挿入するようにしてもよい。
【0045】
本実施形態の埋込体留置具10、埋込体20は、以下の効果を奏する。
【0046】
本実施形態の埋込体留置具10は、先端に皮下組織92に穿刺可能な鋭利な針先14aが形成され、内部に軸方向に延びる貫通孔12a(内部空間)を有する管部材12と、貫通孔12aの内径と略同じ径に形成された係止部26と、係止部26から糸状に延び出た本体部28と、を有し、細胞が付着することで組織再生を促す能力を有する材料で形成された埋込体20と、管部材12の基端側に接続されて貫通孔12aに液体30を流通させて埋込体20を管部材12の貫通孔12aで移動させる移動機構18と、を備える。
【0047】
上記の埋込体留置具10によれば、埋込体20が管部材12の内部で保護されるため、埋込体20を目的部位に移送する際に埋込体20に引っ張り力が作用して埋込体20の微細構造にダメージが発生するのを防ぐことができる。また、液体30の作用で埋込体20を移動させることができるため簡単に埋込体20を留置できる。また、管部材12に埋込体20を移送させる機構が不要であるため、管部材12を細くでき、侵襲を減らして、患者の負担を軽減できる。
【0048】
埋込体留置具10において、埋込体20の係止部26は本体部28よりも大きな径を有する塊状に形成されるとともに、貫通孔12a(内部空間)と液密に接触していてもよい。これにより、移動機構18による液体30の圧を効率よく埋込体20に伝えることができ、埋込体20を管部材12内で確実に移動させることができる。
【0049】
埋込体留置具10において、液体30には、生理食塩水又はリンゲル液を用いてもよい。これにより、生体に負担を与えることなく、埋込体20を管部材12から突出させることができる。
【0050】
埋込体留置具10において、移動機構18はシリンジであってもよい。この場合には、押し子22の操作により、容易に液体30の流通を制御することができる。
【0051】
埋込体留置具10において、管部材12の基端側に埋込体20の基端部28bを視認可能な透明な樹脂材料よりなるハブ本体部16を備えていてもよい。これにより、基端部28bの位置から埋込体20の係止部26の突出状態を確認することができ、埋込体20の埋込をより確実に行うことができる。
【0052】
本実施形態の埋込体20は、塊状に形成された係止部26と、係止部26から糸状に延び出た本体部28と、を有し、細胞が付着することで組織再生を促す能力を有する材料で形成されている。この場合、埋込体20の材料として無数の微細孔が形成された多孔質のコラーゲン繊維を用いることができる。このような構成により、係止部26を皮下組織92の目的部位に係止することができ、埋込体20の埋入を正確に行える。
【0053】
(第2実施形態)
図8に示すように、本実施形態の埋込体留置具10Aは、貫通孔12bが側部(外周面)の開口部12cで開口した管部材12Aを備えている点で、
図1に示す埋込体留置具10と異なる。なお、管部材12A以外のハブ本体部16、移動機構18については、
図1の埋込体留置具10と同様であるのでこれらの構成については、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0054】
管部材12Aの内部には軸方向に延びる貫通孔12bが形成されている。貫通孔12bは、基端側がハブ本体部16の空洞部16aに向けて開口している。貫通孔12bは、基端側から先端付近までの大部分が管部材12Aの軸に沿って延在する。貫通孔12bの先端付近は、管部材12Aの側方に向けて湾曲し、管部材12Aの先端付近の側部の外周面の開口部12cにおいて開口している。すなわち、本実施形態の埋込体留置具10Aでは、貫通孔12bに収容された埋込体20が、管部材12Aの側部の外周面から押し出されるように構成されている。
【0055】
管部材12Aの先端部には、先端に向かうにしたがって軸の中心に向けて徐々に縮径する錘状に形成された穿刺部14Aが形成されている。穿刺部14Aの先端部には鋭利な針先14bが形成されている。針先14bは、管部材12Aの軸の延長線上に設けられている。
【0056】
以下、本実施形態の埋込体留置具10Aの作用について、使用方法とともに説明する。
【0057】
図9Aに示すように、埋込体留置具10Aの管部材12Aの穿刺部14Aを皮膚90に穿刺する。さらに、管部材12Aを皮下組織92内で押し進めて、管部材12Aの側部に設けられた開口部12cを目的部位に移動させる。本実施形態の管部材12Aは、針先14bが管部材12Aの軸上に位置するため、押し進める際の直進性に優れる。
【0058】
その後、
図9Bに示すように、埋込体留置具10Aの移動機構18の押し子22を押込み、内部の液体30を押し出す。これにより、液体30が管部材12Aの貫通孔12b内を先端側に向けて流通し、埋込体20の係止部26が先端側に押し出される。そして、図示のように係止部26が貫通孔12bの開口部12cから突出する。その結果、係止部26が皮下組織92に引っ掛かることで、埋込体20の先端が目的部位に係止される。
【0059】
その後、
図10Aに示すように、埋込体留置具10Aを引き抜く。管部材12Aが皮下組織92から引き抜かれるのに伴って、埋込体20が管部材12Aの貫通孔12bから引き出され、皮下組織92内に埋込体20の本体部28が埋め込まれてゆく。
【0060】
その後、
図10Bに示すように、皮膚90から突出した部分の埋込体20の本体部28を、切断手段34で切断除去する。皮膚90からわずかに突出した本体部28は、皮膚90を動かすことで皮膚90内に埋没させることができる。以上のようにして、埋込体20の埋入が完了する。
【0061】
本実施形態の埋込体留置具10Aは、以下の効果を奏する。
【0062】
本実施形態の埋込体留置具10Aは、貫通孔12bの先端側が湾曲して管部材12Aの外周面の開口部12cで開口している。このような構成により、管部材12Aを皮下組織92内で押し進めた際に、皮下組織92が貫通孔12bに詰まって埋込体20の押し出しが困難になる不具合を防ぐことができる。
【0063】
また、埋込体留置具10Aにおいて、管部材12Aの穿刺部14Aの針先14bが管部材12Aの軸上に配置されるように構成してもよい。これにより、穿刺部14Aを皮下組織92内に押し進める際に、軸方向から傾いた向きの抗力を受けにくくなり、管部材12Aの直進性が向上する。これにより、目的部位に簡単且つ正確に管部材12Aを移動させることができる。
【0064】
(第3実施形態)
図11に示すように、本実施形態の埋込体留置具10Bは、ハブ本体部16と移動機構18との間に、中間部材46が装着されるとともに、基端部にストッパ37が設けられた埋込体20Aを用いる点で
図1の埋込体留置具10と異なる。なお、埋込体留置具10Bにおいて、
図1の埋込体留置具10と同様の構成には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0065】
中間部材46は、略円筒状に形成された部材であり、その先端側には、ハブ本体部16の空洞部16aと略同じ外径に形成された接続部51が設けられている。この接続部51が空洞部16aに挿入されて気密及び液密に接合されている。中間部材46の内部には、軸方向に延びる軸孔部46aが形成されている。軸孔部46aの軸方向の中央付近には、内周方向に突出した突起部50が設けられている。突起部50は、周方向の全域に亘って環状に形成されている。突起部50の内周側には液体30が流通可能な円形の開口部50aが形成されている。この突起部50により、軸孔部46aが先端側軸孔部46a1と、基端側軸孔部46a2とに分かれている。
【0066】
基端側軸孔部46a2は、軸方向の基端側に開口しており、その基端部には移動機構18が挿入されている。移動機構18は、基端側軸孔部46a2と液密に接触している。また、基端側軸孔部46a2には、埋込体20Aの基端部に設けられたストッパ37が挿入されている。ストッパ37は、埋込体20Aが突出しすぎるのを防ぐべく、突起部50の中央の開口部50aよりも大きな直径に形成されており、突起部50よりも先端側に移動しないように構成されている。なお、ストッパ37と基端側軸孔部46a2との間に液体30が流通可能とするべく、ストッパ37の外径は、基端側軸孔部46a2の内径よりも小さく形成されている。
【0067】
先端側軸孔部46a1には、埋込体20Aのストッパ37から先端側に向けて本体部28が延びている。また、先端側軸孔部46a1には、その側部から中心軸に向けて切断刃48(切断部材)が突出して設けられている。切断刃48を中心軸に向けて押し込むと、埋込体20Aの本体部28を切断するように構成されている。
【0068】
上記の中間部材46は、ストッパ37の位置を視認可能とするべく、透明な樹脂材料で構成することができる。このように、中間部材46は、埋込体20Aの前進をストッパ37の位置を通じて視覚的に確認することができるように構成されている。
【0069】
本実施形態の埋込体20Aは、係止部26と係止部26から延び出た本体部28と、本体部28の基端部に設けられたストッパ37とを備えている。ストッパ37は、中間部材46の突起部50に係止可能なサイズに形成されている。本体部28の長さは、ストッパ37が突起部50に当接して停止した際に、係止部26が管部材12の先端の穿刺部14から突出可能な長さを有している。
【0070】
また、図示のように、中間部材46の軸孔部46a及びハブ本体部16の空洞部16aは、予め液体30で満たされた状態とすることが好ましい。
【0071】
本実施形態の埋込体留置具10Bは以上のように構成され、以下、その作用について説明する。
【0072】
図12に示すように、埋込体留置具10Bは、管部材12の穿刺部14を皮膚90から穿刺し、皮下組織92内を押し進めて目的部位に穿刺部14を移動させて使用される。
【0073】
その後、図示のように、移動機構18の押し子22を押し込んで液体30を管部材12の貫通孔12aを流通させて、埋込体20Aの係止部26を管部材12から突出させる。その際に、透明な中間部材46を介して埋込体20Aのストッパ37の前進を確認することで、埋込体20Aが前進したことを視覚的に確認することができる。これにより、埋込体20Aの埋入をより確実に行うことができる。
【0074】
その後、切断刃48を径方向中心側に押し込んで本体部28を切断し、埋込体20Aからストッパ37を切り離す。その後、管部材12を皮膚90から引き抜き、皮膚90から突出した本体部28を切断除去して埋込体20Aの埋入が完了する。
【0075】
本実施形態の埋込体留置具10Bは、以下の効果を奏する。
【0076】
埋込体留置具10Bは、埋込体20Aが本体部28の基端部に接続されたストッパ37を備えるとともに、管部材12と移動機構18との間に設けられ、軸方向に延び埋込体20Aのストッパ37及び本体部28の基端部を収容する軸孔部46aと、軸孔部46a内の本体部28を切断して埋込体20Aからストッパ37を切り離す切断刃48と、を有する中間部材46を、さらに備えている。この場合において、中間部材46は透明な樹脂材料で構成してもよい。このように構成することにより、ストッパ37の位置から埋込体20Aの前進を視覚的に確認することができ、埋込体20Aの埋入を確実に行うことができる。
【0077】
上記の埋込体留置具10Bにおいて、基端側軸孔部46a2とストッパ37との間に、液体30を流通させる間隙が設けられていてもよい。これにより、移動機構18の液体30を、中間部材46を介して管部材12の貫通孔12aに流通させることができる。
【0078】
(第4実施形態)
図13A及び
図13Bに示すように、埋込体留置具10を皮下組織92に穿刺して、埋込体20を残して管部材12を引き抜く際に埋込体20が蛇行した状態になってしまうことがある。これは、
図13Aに示すように、管部材12を皮下組織92から引き抜く際に、皮下組織92の管部材12との境界部分94と、管部材12との摩擦抵抗により、境界部分94が白抜き矢印に示すように、管部材12の引き抜き方向に引っ張られてしまうことにより生じる。すなわち、管部材12を完全に引き抜くと、
図13Bの白抜き矢印に示すように、皮下組織92が元の形状に復元する。その際に、境界部分94が収縮して蛇行する。これにより、境界部分94に沿って埋め込まれた埋込体20も蛇行してしまう。このような埋込体20の蛇行は、皮下組織92が柔らかい脂肪組織を多く含む場合に生じやすい。
【0079】
そこで、本実施形態では、埋込体20を蛇行させることなく埋入できる埋込体留置具10Cについて説明する。
図14Aに示すように、本実施形態の埋込体留置具10Cは、半円形状に2分割可能な管部材12B及びハブ本体部16Bを備える。
【0080】
管部材12Bは、鋭利な針先14aが形成された第1管部材52と、第1管部材52に対向して配置された第2管部材54とを備える。第1管部材52及び第2管部材54の内部に軸方向に延びる半円形状の凹部52a、54aが形成されている。第1管部材52及び第2管部材54は、当接部12dにおいて当接して円筒状の管部材12Bを構成し、内部の凹部52a、54aにより、断面が円形の貫通孔12aが構成される。第1管部材52と第2管部材54とは、接着剤等により仮固定されており、貫通孔12aからは液体30が漏洩しないように構成されている。
【0081】
第1管部材52及び第2管部材54の基端部は、ハブ本体部16Bに接合されている。本実施形態のハブ本体部16Bは、
図14Bに示すように、溝状の凹部60が一対設けられている。一対の凹部60は、軸を挟んで対向して設けられており、管部材12Bの当接部12dと周方向の同じ位置に形成されている。この凹部60は容易に引き裂くことができ、ハブ本体部16Bを半円形状に分離させることができる。すなわち、凹部60でハブ本体部16Bを引き裂くと、ハブ本体部16Bが第1ハブ部材56と第2ハブ部材58とに分離する。そして、第1ハブ部材56には、第1管部材52が接合されており、第2ハブ部材58には第2管部材54が接合されている。従って、ハブ本体部16Bを引き裂くことで、第2ハブ部材58及び第2管部材54を、第1ハブ部材56及び第1管部材52から分離可能に構成されている。
【0082】
埋込体留置具10Cにおいて、埋込体20及び移動機構18は、
図1の埋込体留置具10と同様であるのでその説明は省略する。なお、上記の説明では、管部材12B及びハブ本体部16Bを断面が半円形状の2分割とする例で説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、3分割又はそれ以上に複数分割するように構成してもよい。
【0083】
本実施形態の埋込体留置具10Cは以上のように構成され、以下その作用について使用方法とともに説明する。
【0084】
図15Aに示すように、埋込体留置具10Cは、管部材12Bを皮下組織92内に穿刺し、管部材12Bの穿刺部14から埋込体20の係止部26を突出させるまでは、埋込体留置具10と同様の操作となっている。
【0085】
図15Aに示すように、本実施形態の埋込体留置具10Cは、管部材12Bを皮下組織92から引き抜く操作を以下のようにして行う。まず、ハブ本体部16Bから移動機構18を取り除く。次いで、ハブ本体部16Bの凹部60で引き裂く。その後、
図15Bに示すように、第1ハブ部材56及び第1管部材52をそのままの位置に残したまま、第2ハブ部材58及び第2管部材54(
図14A参照)を軸方向基端側に引き抜く。
【0086】
第2管部材54を引き抜く場合には、第2管部材54と皮下組織92との間に摩擦力が働き、皮下組織92を引っ張る力が作用する。しかし、本実施形態の埋込体留置具10Cでは、もう一方の第1管部材52が皮下組織92に残されており、この第1管部材52によって、皮下組織92の延びが阻止される。そして、図示のように、埋込体20の本体部28の半分が露出して、本体部28と皮下組織92とが密着する。
【0087】
次に、第1ハブ部材56及び第1管部材52を引き抜く。この場合には、第1管部材52と皮下組織92との摩擦力で皮下組織92が引き延ばされるが、すでに皮下組織92と密着している埋込体20の本体部28も、皮下組織92とともに一緒に延びる。そのため、第1管部材52を完全に引き抜いた後に皮下組織92が元の形状に復元した場合であっても、埋込体20が蛇行することなく、元の直線状の形状に戻る。このように、本実施形態の埋込体留置具10Cによれば、埋込体20を蛇行させずに埋入できる。
【0088】
本実施形態の埋込体留置具10Cは、以下の効果を奏する。
【0089】
埋込体留置具10Cにおいて、管部材12Bは周方向に複数に分割されており、分割された管部材12Bの各部(第1管部材52及び第2管部材54)を別々に抜去可能であり、複数に分割された少なくとも1つの管部材12Bが軸方向に移動可能に構成されている。これにより、埋込体20が皮下組織92に最初に密着する際に、残された部分の第1管部材52で皮下組織92の延びを防ぐことができる。その結果、その後第1管部材52を除去する場合に皮下組織92が引き延ばされても埋込体20が皮下組織92に追随して延び、埋込体20が蛇行を防止できる。
【0090】
(第5実施形態)
図16に示すように、本実施形態の埋込体留置具10Dは、周方向に分割可能に構成された管部材12Cと、ハブ本体部16Bとを備えている。なお、埋込体留置具10Dにおいて、埋込体20及び移動機構18は、
図1の埋込体留置具10と同様であるのでそれらの説明は省略する。
【0091】
本実施形態の管部材12Cは、傾斜面で構成された穿刺部14よりも基端側で周方向に分割されている。すなわち、管部材12Cは、穿刺部14及び針先14aを備えた第1部材62と、第1部材62と対向配置された第2部材64とを備えている。第1部材62は、穿刺部14の側に先端管部材12eを備えており、先端管部材12eにおいて、全周に亘って形成されている。第1部材62の先端管部材12eより基端側は、半周部分が切り欠かれた切欠部12fとして構成されている。
【0092】
第2部材64は、半円形状に形成されて、切欠部12fを覆うように配置されている。
図17に示すように、第2部材64の先端部には、基端側よりも縮径して形成された係合部64bが形成されており、その係合部64bが第1部材62の先端管部材12eの内周側に係合することで、第1部材62と第2部材64とが周方向に一体的に連結されている。図示のように、第2部材64を基端側に引き抜くと、係合部64bが先端管部材12eから外れて、第1部材62と第2部材64とが分離可能となる。
【0093】
図16に示すように、管部材12Cの基端側には、ハブ本体部16Bが設けられている。ハブ本体部16Bは、
図14A及び
図14Bを参照しつつ説明したハブ本体部16Bと同様であり、溝状の凹部60に沿って引き裂くことで、第1ハブ部材56及び第2ハブ部材58とに分割可能に構成されている。本実施形態では、第1ハブ部材56に第1部材62が接合されており、第2ハブ部材58に第2部材64が接合されている。従って、ハブ本体部16Bを引き裂くことにより、第1ハブ部材56及び第1部材62が一体化した部分と、第2ハブ部材58及び第2部材64が一体化した部分とに、周方向に分割可能に構成されている。
【0094】
本実施形態の埋込体留置具10Dは以上のように構成され、以下その作用について説明する。
【0095】
図18Aに示すように、埋込体留置具10Dは、管部材12Cを引き抜く前に、ハブ本体部16B(
図16参照)を引き裂いて、第1ハブ部材56及び第1部材62と、第2ハブ部材58及び第2部材64とを分割する。その後、第2ハブ部材58及び第2部材64を軸方向に引き抜いて第2部材64を皮下組織92から抜去する。
【0096】
第2部材64を抜去する際には、第1部材62が残っているため、皮下組織92の延びを防ぐことができる。第2部材64を抜去すると、埋込体20が露出して、実線矢印に示すように、皮下組織92の境界部分94と密着して固定される。ただし、先端管部材12eでは、白抜き矢印に示すように、皮下組織92からの圧を先端管部材12eが受けるため、皮下組織92が埋込体20から離間した状態に保たれる。すなわち、先端管部材12eにおいて埋込体20が非固定状態となる。
【0097】
次に、
図18Bに示すように、第1部材62を基端側に引いて、第1部材62を引き抜く操作を行う。この場合には、白抜き矢印に示す部分で埋込体20が皮下組織92の境界部分94からはがれるが、それ以外の部分では皮下組織92に固定された状態となる。第1部材62の引き抜きに伴って、皮下組織92が引き延ばされるが、埋込体20は皮下組織92の延びに追随して延びる。また、その際に、埋込体20の一部を皮下組織92から離間させた部分を設けることにより、皮下組織92と埋込体20との応力を緩和することができ、より馴染みよく埋込体20を皮下組織92内に固定できる。
【0098】
本実施形態の埋込体留置具10Dは、以下の効果を奏する。
【0099】
埋込体留置具10Dにおいて、管部材12Cは、針先14aを備えた第1部材62と、第1部材62から分離可能な第2部材64とを備え、第2部材64は、第1部材62の針先14aの穿刺部14(傾斜面)よりも基端側で第1部材62から分割可能に構成されている。これにより、第1部材62を引き抜く際に、埋込体20と皮下組織92とを部分的に離間させることができ、皮下組織92と埋込体20との応力を緩和することができ、より馴染みよく埋込体20を皮下組織92内に係止することができる。その結果、管部材12Cの引き抜き後の埋込体20の変形をより効果的に防止できる。
【0100】
(第6実施形態)
図19Aに示すように、本実施形態の埋込体留置具10Eは、管部材12の外側に、外側管部材70を装着した点で、
図1の埋込体留置具10と異なる。なお、埋込体留置具10Eにおいて、埋込体留置具10と同様の構成には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0101】
図19Bに示すように、外側管部材70は、軸方向に長く延びた円筒状の部材であり、その内部には挿通孔70aが形成されている。挿通孔70aは、
図19Aに示すように、管部材12が挿通可能な内径に形成されている。なお、図示の例では、挿通孔70aと管部材12との間に隙間が形成されているが、必ずしも隙間を設ける必要はなく、挿通孔70aの内径は管部材12の外径と略同じとしてもよい。
【0102】
外側管部材70は、管部材12に沿って管部材12の穿刺部14付近にまで延びており、管部材12とともに生体の皮下組織92内に穿刺されるように構成されている。外側管部材70の先端部には、穿刺時の抵抗を少なくするべく、先端に向けて径が縮径したテーパ部74が設けられている。
【0103】
外側管部材70の基端側には、外側管部材70を操作するためのハブ部72が設けられている。ハブ部72は、手で持ちやすい程度の外径に形成されている。なお、外側管部材70の先端側は、例えばステンレス鋼等の金属で構成することができ、基端側のハブ部72は、例えば樹脂で構成することができる。
【0104】
本実施形態の埋込体留置具10Eは、外側管部材70を装着した状態で管部材12とともに生体の皮下組織92に穿刺する。そして、管部材12の内部に収容された埋込体20を、移動機構18の液体30の作用で押し出す。その後、内側の管部材12を先に引き抜く。
【0105】
本実施形態においては、管部材12の外周部の大部分が外側管部材70で覆われているため、管部材12を引き抜いても、皮下組織92が引っ張られることがない。そのため、皮下組織92が延びない状態で、管部材12が引き抜かれて、埋込体20が留置される。管部材12が引き抜かれると外側管部材70の開口部70bにおいて、埋込体20が露出して皮下組織92に固定される。
【0106】
その後、外側管部材70を抜去する。この場合には、外側管部材70の開口部70bの先端側の枠部74aにおいて、埋込体20が皮下組織92から離間しつつ引き抜かれる。これにより、皮下組織92からの引き抜きに際して、埋込体20と皮下組織92との間の応力が緩和されるため、馴染みよく埋込体20を皮下組織92内に埋入できる。
【0107】
本実施形態の埋込体留置具10Eは、以下の効果を奏する。
【0108】
上記の埋込体留置具10Eは、埋込体20を収納する管状の管部材12と、管部材12の外周を覆うとともに、側部に開口部70bが設けられた外側管部材70と、を備え、管部材12が外側管部材70に先立って抜去可能に構成されている。これにより、皮下組織92内での、埋込体20の蛇行を防ぐことができる。また、埋込体20と皮下組織92との応力を緩和して、馴染みよく埋込体20を皮下組織92内に埋入できる。
【0109】
(第7実施形態)
図20に示すように、本実施形態の埋込体留置具10Fは、ハブ本体部16Dが透明な樹脂材料で形成されており、その内部に配置された埋込体20の本体部28の基端部28bを視認可能に構成されている。さらに、ハブ本体部16Dには、埋込体20の変位を視覚的に確認可能とするべく、目盛部76が設けられている。
【0110】
本実施形態の埋込体留置具10Fによれば、管部材12の基端側に埋込体20の基端部を視認可能な透明な樹脂材料よりなるハブ本体部16Dを備えている。これにより、埋込体20の前進又は後退を埋込体20の基端部を通じて視覚的に確認することができる。
【0111】
本実施形態の埋込体留置具10Fによれば、ハブ本体部16Dの目盛部76により、埋込体20の変位を視覚的に確認可能であり、基端部28bの位置から、埋込体20の係止部26の位置をより正確に確認可能となっている。これにより、埋込体20の埋入操作を正確に行うことができる。
【0112】
(第8実施形態)
図21に示すように、本実施形態の埋込体留置具10Gは、管部材12の先端付近に、マーカー部材78が設けられている。マーカー部材78は、管部材12の軸周りの全周に亘って環状に設けられている。マーカー部材78は、生体の内部を透視して撮像する手段において、明確な像を発生する確認用物質を含んで構成されている。
【0113】
例えば、撮像手段が超音波撮像装置の場合には、マーカー部材78は、気泡(空気)又は金属を含んで構成することができる。また、例えば、撮像手段がX線撮像装置の場合には、マーカー部材78は、金属又は硫酸バリウム等の原子番号の大きな材料を含んで構成することができる。また、撮像手段が近赤外線撮像装置の場合には、マーカー部材78は、金属を含んで構成することができる。また、マーカー部材78を蛍光物質で構成することにより、皮膚に紫外光を照射することで蛍光を発生させて、マーカー部材78を直接視認するようにしてもよい。
【0114】
本実施形態の埋込体留置具10Gは、管部材12の先端部に位置を示すマーカー部材78が設けられている。これにより、マーカー部材78を介して管部材12の位置を確認できるため、管部材12の穿刺をより正確に行うことができる。
【0115】
(第9実施形態)
図22に示すように、本実施形態の埋込体留置具10Hは、管部材12の外周部が抗菌物質80で被覆されている。その他の構成は、
図1の埋込体留置具10と同様である。なお、本実施形態の埋込体留置具10Hにおいて、液体30に抗菌物質80を含有させてもよい。また、埋込体20を構成する多孔質のコラーゲン繊維の多孔質部分に抗菌物質80を付着させてもよい。
【0116】
本実施形態の埋込体留置具10Hによれば、埋込体20を留置する際及び埋込体20を留置した後の細菌感染を防ぐことができる。
【0117】
(第10実施形態)
図23に示すように、本実施形態の埋込体留置具10Iは、管部材12の基端側に設けられたハブ本体部82が、移動機構と一体化された構成となっている。すなわち、ハブ本体部82は、内部の空洞部82a内にガスケット24Aが挿入されている。空洞部82aのうち、ガスケット24Aの先端側に形成される空洞部82aには、埋込体20を移動させるための液体30が充填されている。ガスケット24Aの基端側には、押し子22Aが設けられており、押し子22Aを先端側に押し込むことにより、液体30を管部材12の貫通孔12a内を流通させることができる。
【0118】
本実施形態の埋込体留置具10Iによれば、ハブ本体部82に移動機構を兼ねるため、装置構成が簡略化される。
【0119】
(第11実施形態)
本実施形態では、埋込体20の様々な諸形態について説明する。
【0120】
図24Aに示す、第11実施形態の第1態様に係る埋込体20Bは、多孔質のコラーゲン繊維よりなる本体部28Aに、抗がん剤を混入させている。このような埋込体20Bは、例えばがん患者のリンパ管再生に用いられることが想定される。がん治療の一環として、転移を防ぐために、リンパ管の除去が行われている。本実施形態の、埋込体20Bは、このようなリンパ管の再生に好適に用いることができる。本実施形態の埋込体20Bによれば、再生したリンパ管にがん細胞が転移するのを防ぐことができる。
【0121】
なお、埋込体20Bに混入させる抗がん剤は、マイクロカプセル内に封入したものであってもよい。この場合には、リンパ管の再生後のタイミングで徐々に抗がん剤成分を放出するように構成するようにしてもよい。これにより、長期間に亘って、リンパ管へのがん細胞の転移を防ぐ効果が得られる。
【0122】
また、本実施形態に示されるように、埋込体20Bには、係止部26が設けられていなくてもよい。本体部28Aが十分な長さで皮下組織と密着するだけでも、埋込体20Bの留置に必要な係止効果が得られる場合がある。
【0123】
図24Bに示す、第11実施形態の第2態様に係る埋込体20Cは、糸状のマーキング部材84(位置確認部)が本体部28Bの側部に接合されている。マーキング部材84は、生体の内部を透視して撮像する手段において、明確な像を発生する確認用物質を含んで構成されている。
【0124】
確認用物質としては、超音波撮像装置の場合には気泡や金属等を用いることができる。また、X線撮像装置に対しては、金属又は硫酸バリウム等の原子番号の大きな物質を用いることができる。さらに、皮膚表面に対して紫外線照射装置から紫外光を照射し皮膚の上から直接目視する手法をとる場合には、確認用物質として、蛍光物質を用いることができる。また、近赤外線を照射して生体内部を透視する近赤外線撮像装置を用いる場合には、確認用物質として、例えば金属を用いることができる。
【0125】
本形態の埋込体20Cによれば、マーキング部材84により、埋込体20Cの位置を直接確認することができるため、所望の位置に高い精度で埋込体20Cを留置することができる。なお、埋込体20Cにおいて、マーキング部材84を本体部28と平行に配置する代わりに、マーキング部材84に含まれる確認用物質を本体部28Bに混ぜ込んでもよい。
【0126】
図24Cに示す、第11実施形態の第3態様に係る埋込体20Dは、本体部28の先端及び基端にマーキング部材86を接合したものである。本形態の埋込体20Dによっても、
図24Bの埋込体20Cと同様の効果が得られる。
【0127】
図24Dに示す、第11実施形態の第4態様に係る埋込体20Eは、本体部28に所定の間隔を隔てて複数のマーキング部材86が設けられている。本形態の埋込体20Eによっても、
図24Bの埋込体20Cと同様の効果が得られる。
【0128】
図24Eに示す、第11実施形態の第5態様に係る埋込体20Fは、係止部88に確認用物質が含まれており、マーキング部材を構成している。本形態の埋込体20Fによっても、
図24Bの埋込体20Cと同様の効果が得られる。
【0129】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0130】
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H、10I…埋込体留置具
12、12A、12B、12C…管部材
12a、12b…貫通孔 14…穿刺部
14a…針先 16、16B、16D、82…ハブ本体部
18…移動機構
20、20A、20B、20C、20D、20E、20F…埋込体
30…液体