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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】水分散紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 17/64 20060101AFI20220915BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
D21H17/64
B32B29/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019041083
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2020143399
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000176637
【氏名又は名称】日本製紙パピリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】石野 良明
(72)【発明者】
【氏名】岸本 雅樹
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-299498(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221016(WO,A1)
【文献】特開平06-192991(JP,A)
【文献】特開平09-049188(JP,A)
【文献】国際公開第2019/130968(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/088179(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 17/64
B32B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙用繊維と水溶性アルカリ性化合物とを含有する基紙を有し、
前記製紙用繊維のカナダ標準ろ水度が500mlCSF以上750mlCSF以下であることを特徴とする水分散紙(ただし、製紙用繊維として、繊維状カルボキシアルキルセルロースを含むものを除く)
【請求項2】
前記基紙が、カルボキシアルキルセルロース塩を含有することを特徴とする請求項1に記載の水分散紙。
【請求項3】
前記基紙が、水不溶性粉体、水難溶性粉体のいずれか、または両方を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の水分散紙。
【請求項4】
少なくとも一方の面上に粘着剤層を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の水分散紙。
【請求項5】
少なくとも一方の面上に水系塗料による塗工層を有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の水分散紙。
【請求項6】
前記基紙の一方の面上に前記粘着剤層、他方の面上に前記塗工層を有することを特徴とする請求項5に記載の水分散紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水分散紙に関し、より詳細には、粘着層や塗工層を設けた後も水分散性に優れた水分散紙に関する。
【背景技術】
【0002】
水に速やかに分散する水分散紙(水解紙、水溶性紙とも称される)は、トイレタリー用消臭シート、包装用紙、機密文書用紙、水分散性ラベルなどの用途に広く用いられている(特許文献1、2、3等)。水分散紙は、その用途に応じて、基紙の少なくとも一面上に粘着剤層、消臭剤層や印刷・印字適性を高める印字受理層等の水系塗料による塗工層が設けられる場合がある。
粘着剤層や塗工層を設けた水分散紙は、基紙単独の場合よりも水分散性が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-104860号公報
【文献】特開2000-170100号公報
【文献】特開2007-237634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、水分散性に優れた水分散紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
水分散紙を水中に投じた際の水分散を促進する要素として、
1)繊維間の水素結合開裂による繊維同士の分離
2)水溶性高分子塗工層の溶解による繊維間空隙の増大
3)カルボキシメチルセルロース塩の膨潤、溶解による繊維間空隙の増大
4)水分散性粉体の脱落による繊維間空隙の増大
などが挙げられる。
【0006】
本発明者等は水分散性の更なる改善の方法を鋭意検討した結果、基紙に特定範囲のろ水度の製紙用繊維を用い、水中での繊維同士の分離促進のため水溶性アルカリ性化合物を含有させることで水分散性が向上すること、カルボキシアルキルセルロース塩を含有させることにより、さらに水分散性が高まることを見出して本発明を完成した。
【0007】
具体的には、本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
1.製紙用繊維と水溶性アルカリ性化合物とを含有する基紙を有し、
前記製紙用繊維のカナダ標準ろ水度が500mlCSF以上750mlCSF以下であることを特徴とする水分散紙。
2.前記基紙が、カルボキシアルキルセルロース塩を含有することを特徴とする1.に記載の水分散紙。
3.前記基紙が、水不溶性粉体、水難溶性粉体のいずれか、または両方を含有することを特徴とする1.または2.に記載の水分散紙。
4.少なくとも一方の面上に粘着剤層を有することを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の水分散紙。
5.少なくとも一方の面上に水系塗料による塗工層を有することを特徴とする1.~4.のいずれかに記載の水分散紙。
6.前記基紙の一方の面上に前記粘着剤層、他方の面上に前記塗工層を有することを特徴とする5.に記載の水分散紙。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水分散紙は、基紙の水分散性に優れている。本発明の水分散紙は基紙の水分散性に優れているため、粘着剤層や塗工層を設けた後も高い水分散性を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の水分散紙は、製紙用繊維と水溶性アルカリ性化合物を含有する基紙を有し、この製紙用繊維のカナダ標準ろ水度が500mlCSF以上750mlCSF以下であることを特徴とする。
【0010】
「基紙」
本発明の水分散紙は、基紙が製紙用繊維と水溶性アルカリ性化合物を含有し、必要に応じて水不溶性粉体、水難溶性粉体のいずれか、または両方を含有する。本発明の水分散紙は、従来の水溶紙を抄造する際に配合されてきた水不溶性の繊維状カルボキシアルキルセルロースを使用することなく、製紙用繊維と水溶性アルカリ性化合物により高い水分散性を付与していることが特徴である。更に、本発明の水分散紙は、基紙に水溶性のカルボキシアルキルセルロース塩を含有することでより高い水分散性が得られるという特徴を有する。本発明の水分散紙は、基紙が高い水分散性を備えているため、粘着剤層や塗工層を設けた場合の水分散性の低下が少ない。
【0011】
基紙は、フロック状水分散時間が100秒以下かつ繊維状水分散時間が200秒以下であることが好ましく、フロック状水分散時間が10秒以下かつ繊維状水分散時間が100秒以下であることがより好ましく、フロック状水分散時間が5秒以下かつ繊維状水分散時間が60秒以下であることがさらに好ましい。
基紙には、その使用目的に応じて粘着剤や水系塗料による塗工層が設けられるため、これらの塗工に耐えるために、JIS P8113に準拠する引張強さとして、0.3kN/m以上であることが好ましく、0.5kN/m以上であることがより好ましい。引張強さの上限は坪量により異なるが、水分散性を損なわない範囲とすることが必要で、概ね6.0kN/m以内とすることが好ましい。基紙は、水溶性アルカリ性化合物による黄色化などで白色度が低下して外観が損なわれることがあるため、基紙の白色度は70%以上が好ましく、75%以上であることが更に好ましい。
【0012】
・製紙用繊維
本発明で用いる製紙用繊維としては、一般に製紙用に用いられている木材パルプ繊維又は非木材系パルプ繊維を用いることができる。具体的には、木材パルプ繊維としては、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ、溶解パルプ、マーセル化パルプ等、非木材系パルプ繊維としては、亜麻パルプ、マニラ麻パルプ、ケナフパルプ等の非木材系パルプ繊維、リヨセル等の精製セルロース繊維等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を混合して使用することができる。これらの中で、強度的に優れた水分散性シートを得るためには針葉樹パルプが好ましく、水分散性に優れたシートを得るためには広葉樹パルプや溶解パルプが好ましい。製紙用繊維の平均繊維長は特に制限されないが、0.1mm以上5mm以下であることが好ましく、0.5mm以上3mm以下であることがより好ましく、0.8mm以上2mm以下であることがさらに好ましい。
【0013】
製紙用繊維のカナダ標準ろ水度(以下、ろ水度ともいう。JIS P8121-2 2012による測定値)は、500mlCSF以上750mlCSF以下である。叩解が進む(ろ水度は低くなる)と、繊維のフィブリル化、切断、内部膨潤が多くなり、基紙の密度、強度、平滑度が高くなる一方で、水分散性や通気度は低下する。製紙用繊維のろ水度は、550mlCSF以上720mlCSF以下であることが好ましく、600mlCSF以上700mlCSF以下であることがより好ましい。
【0014】
・水溶性アルカリ性化合物
本発明の水分散紙は、基紙が水溶性アルカリ性化合物を含有する。水溶性アルカリ性化合物とは、25℃の水への溶解度が溶液100gあたり1g以上であり、モル濃度が0.1モル/リットルの水溶液のpHが8.0以上である化合物をいう。水溶性アルカリ性化合物は、水中でアルカリ性水溶液を生成して基紙の製紙用繊維を膨潤させ、水素結合の開裂を促進することにより水分散性を高める効果を有する。水溶性アルカリ性化合物としては、上記効果を備えるものを特に制限することなく使用することができるが、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩並びに炭酸水素塩、リン酸水素ナトリウム等のアルカリ金属のリン酸塩、リン酸水素塩、酢酸ナトリウム等のアルカリ金属の有機酸塩、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア及びアンモニウム塩、トリエタノールアミン等のアミン類、分子量1000以下のポリエチレンイミン等のアルカリ性高分子等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を混合して使用することができる。水溶性アルカリ性化合物のpHは、濃度0.1モル/リットルの水溶液とした場合のpHが8.0以上、好ましくはpH9.0~pH12.0である。水溶性アルカリ性化合物としては、適度な塩基性を有して水溶性に優れる炭酸ナトリウムが好ましい。
【0015】
基紙重量に対する水溶性アルカリ性化合物の割合は、0.1重量%以上16.0重量%以下であることが好ましい。水溶性アルカリ性化合物の割合が0.1重量%未満では水分散性改善効果が乏しく、16.0重量%を越えると基紙の変色や白色度低下等の外観変化が起こりやすくなる。水溶性アルカリ性化合物の割合は、0.2重量%以上14.0重量%以下であることがより好ましい。なお、基紙重量に対する水溶性アルカリ性化合物の割合は、使用する水溶性アルカリ性化合物の種類等により適宜調整され、一例を挙げると、炭酸ナトリウムの場合は基紙重量に対して1.0重量%以上10.0重量%以下、水酸化ナトリウムの場合は基紙重量に対して0.4重量%以上3.8重量%以下であることが好ましい。
【0016】
・カルボキシアルキルセルロース塩
本発明の水溶紙の基紙は、製紙用繊維と水溶性アルカリ性化合物に加えて、カルボキシアルキルセルロース塩を含有することが好ましい。水溶性アルカリ性化合物とカルボキシアルキルセルロース塩を併用することにより、水分散性をさらに向上させることができる。
カルボキシアルキルセルロース塩とは、天然セルロース、再生セルロース、精製セルロース等のセルロースを公知の方法でカルボキシアルキル化したものであり、その水溶液は中性(pH6~8)を示す。カルボキシアルキルセルロース塩としては、具体的には、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、カルボキシエチルセルロースナトリウム塩等が挙げられ、カルボキシメチルセルロース塩が、水分散性向上、強度向上の点から好ましい。
【0017】
基紙重量に対するカルボキシアルキルセルロース塩の割合は、基紙重量に対して2.0重量%以上12.0重量%以下であることが好ましい。カルボキシアルキルセルロース塩の割合が2.0重量%未満では水分散性改善効果が乏しく、12.0重量%を越えると水分散紙の表面に皮膜ができて紙中への水の浸透が悪くなり、水分散性が低下する場合がある。基紙重量に対するカルボキシアルキルセルロース塩の含有率は、3.0重量%以上6.0重量%以下であることがより好ましい。
【0018】
カルボキシアルキルセルロース塩のエーテル化度は、0.2以上1.1以下であることが好ましい。なお、エーテル化度とは、カルボキシアルキル基の置換度を意味する。エーテル化度が0.2より低いとゲル成分が増し水溶性が低下する。エーテル化度が1.1を越えるとアルカリ性下での水への溶解速度が低下する。エーテル化度は、0.6以上0.8以下であることがより好ましい。
【0019】
カルボキシアルキルセルロース塩の2.5%水溶液におけるB型粘度(以下、単にB型粘度ともいう)は、5mPa・s以上3500mPa・s以下であることが好ましい。B型粘度が5mPa・s未満のものはカルボキシアルキルセルロース塩製造時の歩留まりが低く高価なものとなるため水分散紙のコストが高くなり好ましくない。B型粘度が3500mPa・sを超えると、水分散紙の表面に皮膜ができて紙中への水の浸透が悪くなり、水分散性が低下するため好ましくない。カルボキシアルキルセルロース塩のB型粘度は、8mPa・s以上3000mPa・s以下であることがより好ましい。
【0020】
基紙は、製紙用繊維と水溶性アルカリ性化合物の他に、水不溶性粉体または水難溶性粉体を含有することが好ましい。水不溶性粉体または水難溶性粉体を含むことによって、基紙の水分散性、白色度、不透明度や平滑度が高くなる利点がある。水不溶性粉体または水難溶性粉体としては、金属化合物粉末、水不溶性無機塩、水難溶性無機塩、熱硬化性樹脂粉末、熱可塑性樹脂粉末などが用いられる。これらは単独であるいは2種以上を併用してもよい。
【0021】
水不溶性粉体の具体例は次の通りである。酸化アルミニウム、二酸化チタン等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛などの金属水酸化物。炭化ケイ素、炭化ホウ素等の炭化物。四窒化三ケイ素、窒化ホウ素等の窒化物。雲母、長石族、シリカ鉱物族、粘土鉱物、合成ゼオライト、天然ゼオライト等の珪酸塩鉱物。チタン酸カリウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩化合物。珪酸マグネシウム等の珪酸塩化合物。リン酸亜鉛等のリン酸塩化合物。塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、尿素/ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、スチレン/ブタジエン系共重合体系樹脂、フェノール樹脂、プラスチック中空粒子等の有機填料。
【0022】
水難溶性粉体の具体例は次の通りである。水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物。炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛等の炭酸塩化合物。硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム等の硫酸塩化合物。
これらの水不溶性粉体または水難溶性粉体は、基紙中に5重量%以上50重量%以下含有されるように製紙用繊維原料に添加して抄紙される。基紙に含まれる水不溶性または水難溶性粉体の量が5重量%に満たない場合には、水分散性や白色度の向上効果が極めて少なく、効果が無い。一方、水不溶性または水難溶性粉体の量が50重量%を越えると引張強さが大きく低下し、抄紙性が悪くなる。
【0023】
・基紙の製造方法
製紙用繊維を含む紙料から公知の製紙技術によって抄紙したシートに水溶性アルカリ性化合物を含有させることにより、基紙を得ることができる。
抄紙機は、円網式抄紙機、傾斜短網式抄紙機、長網式抄紙機、ツインワイヤー式抄紙機等何れでもよく、要求される強度、水分散性に応じて使い分けることができる。例えば、円網式抄紙機を用いた場合には、強度異方性が大きく、縦方向より横方向の強度が弱くなるため、水中で容易に横方向に千切れる水分散紙を得ることができる。
シートは、単層のシートとして抄紙するほか、同一または異なる紙料から2基以上の抄網をもつ抄紙機で複数の湿紙を製造し抄き合わせることにより、複数層のシートとして抄紙することができる。
【0024】
シートに水溶性アルカリ性化合物を含有させる方法は特に制限されず、例えば、塗工機による塗工、噴霧器による噴霧、フェルト等に付着させて転移させる等の方法を用いることができる。また、同様の方法により、シートにカルボキシアルキルセルロース塩を含有させることができる。カルボキシアルキルセルロース塩は、水溶性アルカリ性化合物と混合して同時に含有させることもでき、水溶性アルカリ性化合物とは別々に含有させることもできる。
【0025】
上記方法の中で、水溶性アルカリ性化合物やカルボキシアルキルセルロース塩を基紙に精度よく均一に添加できる点で、塗工により含有させることが好ましい。塗工方式は特に制限されず、ロールコーター、グラビアコーター、エアナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、チャンプレックスコーター等の塗工機を用いて塗工することができる。
【0026】
基紙の坪量は、特に制限されないが、通常10g/m以上200g/m以下の範囲内である。特に、印刷・印字用の塗工紙の基紙としては50g/m以上が好ましく、また、120g/m以下が好ましい。
【0027】
「水分散紙」
本発明の水分散紙は、基紙を単独で用いることもできるが、用途に応じて粘着層や塗工層を設けることもできる。例えば、基紙の一方の面上に粘着剤層、他方の面上に塗工層を有する水分散紙は、表面に印刷を施した粘着ラベルとしてコンテナやリターナブル容器などの被着体に貼付し、使用後に水で洗い流して被着体から容易に取り除くことが求められる用途などに利用することができる。
【0028】
「粘着剤層」
本発明の水分散紙は、基紙の少なくとも一方の面上に粘着剤層を有することができる。
水分散紙の粘着剤層を構成する粘着剤としては、水溶性又は水再分散性を有する粘着剤が好ましく、水溶性アクリル系粘着剤または水再分散性アクリル系粘着剤がより好ましい。水溶性アクリル系粘着剤の例としては、アクリル酸アルコキシアルキルとスチレンスルホン酸塩と他の共重合性単量体とからなる共重合体や、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有ビニル系単量体と水酸基含有単量体と場合により用いられる共重合可能な他の単量体との共重合体をベースポリマーとして含有するものなどを挙げることができる。水再分散性アクリル系粘着剤の例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有ビニル系単量体とアルコキシ基を有するビニル系単量体と場合により用いられる共重合可能な他の単量体との共重合体や、カルボキシル化ロジンエステル含有ビニル系単量体とカルボキシル基含有ビニル系単量体と水溶性ビニル系単量体が共重合されてなる共重合体をベースポリマーとして含有するものなどを挙げることができる。なお、これらの共重合体のカルボキシル基は、必要に応じ一部又は全部がアルカリにより中和された塩型であってもよく、このアルカリとして、アルカリ金属塩、アミン塩、アルカノールアミン塩が好適に用いられる。
【0029】
水溶性アクリル系粘着剤または水再分散性アクリル系粘着剤を用いる場合、粘着剤層を形成する粘着剤層塗工液には、粘着力や水溶性又は水分散性の調整のために架橋剤を配合することができる。このような架橋剤としては特に制限はなく、従来アクリル系粘着剤において架橋剤として慣用されているものを用いることができる。例えば、1,2-エチレンジイソシアネートのようなイソシアネート系架橋剤、ジグリシジルエーテル類のようなエポキシ系架橋剤、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられる。さらに、粘着剤層塗工液には、必要に応じ性状を調整し、性能を高めるために、従来公知の可塑剤、粘着性付与剤、着色剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、防黴剤、酸化防止剤等を適宜配合することができる。ここで、可塑剤、粘着性付与剤は水溶性又は水分散性のものが好ましく、可塑剤としては、例えば、糖アルコールなどの多価アルコール、ポリエーテルポリオール、酸化ロジンのアルカノールアミン塩などが挙げられ、粘着付与剤としては、例えば、ロジン、不均化ロジン、水添ロジンなどのアルカリ金属塩や、アンモニウム塩、ポリエーテルエステルなどが挙げられる。
【0030】
粘着剤層は、基紙の少なくとも一方の面上に粘着剤層塗工液を直接塗布して設けることもでき、剥離シート上に形成した粘着剤層を基紙に転写してもよい。粘着剤層は、基紙の少なくとも一方の面の全面上に設けることもでき、部分的に設けることもできる。粘着剤層を部分的に設けることにより、例えば、粘着剤層に貼り合わせた剥離紙を剥がしやすくなる。
粘着剤層の塗工量は固形分として3g/m以上60g/m以下であることが好ましく、10g/m以上50g/m以下であることがより好ましい。粘着剤塗工量が3g/m未満では、得られる粘着シートの接着性能が不足し、一方、60g/mを越えると粘着シートの製造時や後加工工程で粘着剤がはみ出し易くなり好ましくない。
【0031】
粘着剤層は使用時以外での不要な粘着を防ぐために剥離シートを貼合し、所望により剥がして使用することが好ましい。剥離シートとして特に制限はなく、従来公知のもの、例えば、グラシン紙、コート紙、キャストコート紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの各種プラスチックフィルムの片面若しくは両面に、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗布したものなどを用いることができる。剥離シートの坪量については特に制限はないが、通常20g/m以上120g/m以下程度である。
【0032】
また、基紙の一方の面上に、印刷方式で点状や矩形状の非連続パターンで粘着剤を部分塗布し、基紙の他方の面上に粘着剤のパターンと対応するパターンで剥離剤を部分塗布し、粘着剤部分塗布面と剥離剤部分塗布面とを重ね合わせることにより、剥離シートが不要の水分散紙の積層体を形成することもできる。
【0033】
「塗工層」
本発明の水分散紙は、基紙の少なくとも一方の面上に水系塗料による塗工層を有することができる。塗工層は、基紙上に単独で設けることもでき、粘着剤層とともに設けることもできる。この場合、塗工層は、基紙の粘着剤層とは他方の面側に設けることが好ましい。
【0034】
塗工層は、水系塗料を塗工・乾燥して形成された層であれば特に制限されず、例えば、インキ受容層、ヒートシール層等が挙げられる。また、複数層の塗工層を設けることもできる。
以下に、グラビア印刷やフレキソ印刷に適応した塗工層の例を示す。
【0035】
本発明の水分散紙をグラビア印刷やフレキソ印刷に適応させる場合、水分散紙の少なくとも一方の面上に顔料及び水系バインダーを主成分としたピグメントコート層、あるいは水系バインダーを主成分としたクリアーコート層を有することが好ましい。このような塗工層を塗設することにより、ろ水度が高く比較的多孔質である基紙表面の平滑性が高まり、インキ着肉性が向上する。
【0036】
この塗工層に配合する顔料、バインダー、各種添加剤等は、印刷適性等に応じて、公知のものを適宜選択して用いることができる。
顔料としては、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ソーダ、アルミノケイ酸マグネシウム、シリカ、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム複合シリカなどの無機顔料、又はメラミン樹脂顔料、尿素-ホルマリン樹脂顔料、ポリエチレンパウダー、ナイロンパウダー、スチレン、スチレン-アクリル、アクリルなどの有機顔料が挙げられる。
【0037】
バインダーとしては水溶性樹脂又は水分散性樹脂が好ましく、具体的にはデンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体及びそのアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体及びそのアルカリ塩、スチレン/ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸ソーダ、酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル、アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体、アクリル酸/メタクリル酸共重合体等が挙げられる。これらの中でも水分散性の観点から、水溶性樹脂であるデンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンをバインダーとして含有させることが望ましい。
【0038】
各種添加剤としては、カチオン性樹脂(印刷適性向上剤)、顔料分散剤、消泡剤、潤滑剤、紫外線吸収剤、サイズ剤、蛍光染料、防腐剤等が挙げられる。
【0039】
塗工層を形成するための塗工機としては、特に限定されるものではなく、エアナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、キャストコーター、チャンプレックスコーター、グラビアコーター、2ロールコーター、トランスファーロールコーター等を使用することができる。
【実施例
【0040】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明の構成はこれに限定されない。
「実施例1」
針葉樹晒クラフトパルプ20重量%と広葉樹クラフトパルプ80重量%をカナダ標準ろ水度500mlCSFまで混合叩解した後、填料(炭酸カルシウム)をパルプ総量に対して17重量%加え、長網式抄紙機で坪量45g/mの基紙を抄造した。
水溶性アルカリ性化合物(炭酸ナトリウム、株式会社トクヤマ製、ソーダ灰ライト)の水溶液を、得られた基紙に対して水溶性アルカリ性化合物の割合が8.0重量%となるようにサイズプレス方式で塗工して水分散紙を作製した。
【0041】
「実施例2」
針葉樹晒クラフトパルプを62重量%と広葉樹溶解パルプ38重量%をカナダ標準ろ水度600mlCSFまで混合叩解した後、長網式抄紙機で坪量53g/mの基紙を抄造した。
得られた基紙に対して水溶性アルカリ性化合物の割合が8.3重量%となるように塗工したこと以外は、実施例1と同様にして水分散紙を作製した。
【0042】
「実施例3」
水溶性アルカリ性化合物(炭酸ナトリウム、株式会社トクヤマ製、ソーダ灰ライト)とカルボキシアルキルセルロース塩(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩粉末(以下、CMC塩ともいう)日本製紙株式会社製、商品名サンローズAPP84、エーテル化度0.75、B型粘度8mPa・s)を溶解した水溶液を、基紙に対して水溶性アルカリ性化合物が8.3重量%、CMC塩が4.1重量%となるように塗工したこと以外は、実施例2と同様にして水分散紙を作製した。
【0043】
「実施例4」
水溶性アルカリ性化合物(炭酸ナトリウム、株式会社トクヤマ製、ソーダ灰ライト)とCMC塩(日本製紙株式会社製、商品名サンローズSLD-F1、エーテル化度0.2、B型粘度300mPa・s)を溶解した水溶液を、基紙に対して水溶性アルカリ性化合物が8.1重量%、CMC塩が4.1重量%となるように塗工したこと以外は、実施例2と同様にして水分散紙を作製した。
【0044】
「実施例5」
水溶性アルカリ性化合物(炭酸ナトリウム、株式会社トクヤマ製、ソーダ灰ライト)とCMC塩(日本製紙株式会社製、商品名サンローズF10LC、エーテル化度0.55、B型粘度1400mPa・s)を溶解した水溶液を、基紙に対して水溶性アルカリ性化合物が8.1重量%、CMC塩が4.0重量%となるように塗工したこと以外は、実施例2と同様にして水分散紙を作製した。
【0045】
「実施例6」
水溶性アルカリ性化合物(炭酸ナトリウム、株式会社トクヤマ製、ソーダ灰ライト)とCMC塩(日本製紙株式会社製、商品名サンローズF30LC、エーテル化度0.65、B型粘度1940mPa・s)を溶解した水溶液を、基紙に対して水溶性アルカリ性化合物が8.5重量%、CMC塩が4.3重量%となるように塗工したこと以外は、実施例2と同様にして水分散紙を作製した。
【0046】
「実施例7」
水溶性アルカリ性化合物(炭酸ナトリウム、株式会社トクヤマ製、ソーダ灰ライト)とCMC塩(日本製紙株式会社製、商品名サンローズF100HC、エーテル化度1.0、B型粘度3100mPa・s)を溶解した水溶液を、基紙に対して水溶性アルカリ性化合物が8.0重量%、CMC塩が4.0重量%となるように塗工したこと以外は、実施例2と同様にして水分散紙を作製した。
【0047】
「実施例8」
針葉樹晒クラフトパルプを単独でカナダ標準ろ水度700mlCSFまで叩解した後、手抄きにより坪量53g/mの基紙を作製した。
水溶性アルカリ性化合物(炭酸ナトリウム、株式会社トクヤマ製、ソーダ灰ライト)とCMC塩(日本製紙株式会社製、商品名サンローズAPP84、エーテル化度0.75、B型粘度8mPa・s)を溶解した水溶液を、得られた基紙に対してアルカリ性化合物が10.4重量%、CMC塩が2.6重量%となるように塗工して水分散紙を作製した。
【0048】
「実施例9」
基紙に対して水溶性アルカリ性化合物が4.4重量%、CMC塩が7.3重量%となるように塗工したこと以外は、実施例8と同様にして水分散紙を作製した。
「実施例10」
基紙に対して水溶性アルカリ性化合物が2.2重量%、CMC塩が8.6重量%となるように塗工したこと以外は、実施例8と同様にして水分散紙を作製した。
【0049】
「実施例11」
水溶性アルカリ性化合物(炭酸ナトリウム、株式会社トクヤマ製、ソーダ灰ライト)とCMC塩(日本製紙株式会社製、商品名サンローズF10LC、エーテル化度0.55、B型粘度1400mPa・s)を溶解した水溶液を、基紙に対して水溶性アルカリ性化合物が2.5重量%、CMC塩が4.2重量%となるように塗工したこと以外は、実施例2と同様にして水分散紙を作製した。
【0050】
「実施例12」
水溶性アルカリ性化合物(炭酸ナトリウム、株式会社トクヤマ製、ソーダ灰ライト)とCMC塩(日本製紙株式会社製、商品名サンローズF30LC、エーテル化度0.65、B型粘度1940mPa・s)を溶解した水溶液を、基紙に対して水溶性アルカリ性化合物が2.6重量%、CMC塩が4.3重量%となるように塗工したこと以外は、実施例2と同様にして水分散紙を作製した。
【0051】
「実施例13」
水溶性アルカリ性化合物(炭酸ナトリウム、株式会社トクヤマ製、ソーダ灰ライト)とCMC塩(日本製紙株式会社製、商品名サンローズAPP84、エーテル化度0.75、B型粘度8mPa・s)を溶解した水溶液を、基紙に対して水溶性アルカリ性化合物が2.4重量%、CMC塩が4.0重量%となるように塗工したこと以外は、実施例2と同様にして水分散紙を作製した。
【0052】
「実施例14」
水溶性アルカリ性化合物(炭酸ナトリウム、株式会社トクヤマ製、ソーダ灰ライト)とCMC塩(日本製紙株式会社製、商品名サンローズF100HC、エーテル化度1.0、B型粘度3100mPa・s)を溶解した水溶液を、基紙に対して水溶性アルカリ性化合物が2.3重量%、CMC塩が3.9重量%となるように塗工したこと以外は、実施例2と同様にして水分散紙を作製した。
【0053】
「実施例15」
下記配合の粘着剤層塗工液を、シリコーン剥離剤を塗布した剥離シート(日本製紙パピリア株式会社製、35SIP、坪量36g/m)の剥離処理面に固形分として25g/m塗布乾燥して、粘着剤層を設けた剥離シートを作成した。
<粘着剤層塗工液>
水溶性アクリル系粘着剤(ビッグテクノス株式会社製、リキダインAR-2410、固形分濃度42重量%) 100重量部
硬化剤(ビッグテクノス株式会社製、サンパスタHD-5013)
0.1重量部
【0054】
実施例3で作製した水分散紙を基紙とし、この基紙に粘着剤層を設けた剥離シートの粘着剤層を貼り合せ、一方の面に粘着剤層を有する水分散紙を作製した。なお、この粘着剤層を有する水分散紙は、塗布8時間後にJIS Z0237に準拠して測定したステンレス板との180°引き剥がし試験による粘着力が560g/25mmであり、十分な粘着力を有していた。
【0055】
「実施例16」
実施例3で得た水分散紙を基紙とし、この基紙の一方の面に、カオリン70重量部、炭酸カルシウム30重量部、ヒドロキシエチル化澱粉(三晶株式会社製、商品名コートマスター)75重量部を配合した水系塗工液をグラビアコーターで固形分の付着量が5g/mとなるように塗工し、線圧150kg/cm、温度80℃でスーパーカレンダー加工して、塗工層を有する水分散紙を得た。
得られた水分散紙の塗工層の上に、卓上型グラビア印刷試験機を用いて青色の油性グラビアインキ(大日精化株式会社製、GFPカラー藍色)を用いて印刷した。この水分散紙の印刷仕上がりは実用上支障のないものであった。
【0056】
「比較例1」
針葉樹晒クラフトパルプ17重量%と広葉樹クラフトパルプ83重量%をカナダ標準ろ水度400mlCSFまで混合叩解した後、填料(炭酸カルシウム)をパルプ総量に対して22重量%加え、長網式抄紙機で坪量36g/mの塗工用の基紙を抄造した。
【0057】
「比較例2」
水溶性アルカリ性化合物(炭酸ナトリウム、株式会社トクヤマ製、ソーダ灰ライト)の水溶液を、比較例1で得られた基紙に対して水溶性アルカリ性化合物の割合が2.0重量%となるようにサイズプレス方式で塗工して水分散紙を作製した。
【0058】
「比較例3」
水溶性アルカリ性化合物の割合が6.5重量%となるようにサイズプレス方式で塗工した以外は、比較例2と同様にして水分散紙を作製した。
「比較例4」
CMC(日本製紙株式会社製、商品名サンローズAPP84、エーテル化度0.75、B型粘度8mPa・s)を溶解した水溶液を、基紙に対してCMC塩が5.9重量%となるようにサイズプレス方式で塗工したこと以外は、比較例2と同様にして水分散紙を作製した。
【0059】
「比較例5」
水溶性アルカリ性化合物(炭酸ナトリウム、株式会社トクヤマ製、ソーダ灰ライト)とCMC塩(日本製紙株式会社製、商品名サンローズAPP84、エーテル化度0.75、B型粘度8mPa・s)を溶解した水溶液を、基紙に対して水溶性アルカリ性化合物が6.1重量%、CMC塩が6.1重量%となるようにサイズプレス方式で塗工したこと以外は、比較例2と同様にして水分散紙を作製した。
【0060】
「比較例6」
実施例2で抄造した基紙を、そのまま用いた。
「比較例7」
水溶性アルカリ性化合物を塗工しないこと以外は実施例4と同様にして水分散紙を作製した。
「比較例8」
水溶性アルカリ性化合物を塗工しないこと以外は実施例5と同様にして水分散紙を作製した。
【0061】
「比較例9」
水溶性アルカリ性化合物を塗工しないこと以外は実施例6と同様にして水分散紙を作製した。
「比較例10」
水溶性アルカリ性化合物を塗工しないこと以外は実施例7と同様にして水分散紙を作製した。
「比較例11」
実施例8で抄造した基紙を、そのまま用いた。
【0062】
上記実施例、比較例で得られた水分散紙、基紙について、下記評価を行った。結果を表1、2に示す。
1)水分散性
脱イオン水300mlを入れた300mlビーカーに、スターラーで650rpmに攪拌しながら、3cm角の試験片を投入した。試験片が2つ以上に千切れる時間をフロック状水分散時間とし、試験片が繊維一本一本にほぐれる時間を繊維状水分散時間とした。それぞれの時間は、ストップウオッチで測定して5回の測定の平均値とし、下記のように評価した。
◎:フロック状水分散時間が5秒以内でかつ繊維状水分散時間が60秒以内。
○:フロック状水分散時間が5秒を越えて10秒以内でかつ繊維状水分散時間が100秒以内、又はフロック状水分散時間が10秒以内でかつ繊維状水分散時間が60秒を越えて100秒以内。
△:フロック状水分散時間が10秒を越えて100秒以内でかつ繊維状水分散時間が200秒以内、又はフロック状水分散時間が100秒以内でかつ繊維状水分散時間が100秒を越えて200秒以内。水分散性があると評価される。
×:フロック状水分散時間が100秒を越えるか、又は繊維状水分散時間が200秒を越える。水分散が困難と評価される。
【0063】
2)引張試験
23℃、50%RHの雰囲気で24時間以上保管した水分散紙試料について、JIS P8113に準拠して測定した。
3)通気度
通気度手動測定器(フィルトローナー社製、PPM100型)を用いて、差圧100mmHOの時、試料の1cmを1分間に通過する空気の容積を測定した。
4)白色度
分光光度計型測色計(テクニダイン社製、カラータッチ)を用い、JIS P8212に準拠して拡散青色光反射率を測定した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
本発明である実施例で得られた水分散紙は、水分散性に優れていた。特に、水溶性アルカリ性化合物を含む実施例4~7と、水溶性アルカリ性化合物を含まない比較例7~10で得られた水分散紙とから、水溶性アルカリ性化合物により、水分散性が顕著に向上することが確かめられた。
比較例1~5で得られた水分散紙は、製紙用繊維のろ水度が低いため、水分散性に劣っていた。