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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】ジェル状化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/63 20060101AFI20220915BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20220915BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220915BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20220915BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A61K8/63
A61K8/04
A61K8/81
A61K8/86
A61Q19/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019050945
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020152657
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】井岡 達也
【審査官】寺▲崎▼ 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-198706(JP,A)
【文献】特開2017-128524(JP,A)
【文献】特開平03-240714(JP,A)
【文献】特開2013-082633(JP,A)
【文献】特開平02-178209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)、(B)を含有するジェル状組成物に、(C)が分散したジェル状化粧料。
(A)カルボキシビニルポリマー及び/またはアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体
(B)ポリオキシエチレングリセリルエーテルを化粧料全量に対し1.5~6.5質量%
(C)コレステリック液晶を化粧料全量に対し0.5~3質量%
【請求項2】
(C)コレステリック液晶が、(A)カルボキシビニルポリマー及び/またはアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体と(B)ポリオキシエチレングリセリルエーテルを構成成分として含有する透明又は/半透明のジェル状組成物に分散している請求項1に記載のジェル状化粧料。
【請求項3】
(C)コレステリック液晶が少なくともオレイン酸ジヒドロコレステリル、ノナン酸コレステリル、酪酸ジヒドロコレステリル、酪酸コレステリル、オレイン酸フィトステリルを含む混合物である請求項1または2に記載のジェル状化粧料。
【請求項4】
(B)ポリオキシエチレングリセリルエーテルのポリオキシエチレン基の付加モル数の合計が7~31である請求項1~3のいずれかに記載のジェル状化粧料。
【請求項5】
B型粘度計で測定したときの粘度が5000~60000mPa・sである請求項1~4のいずれかに記載のジェル状化粧料。
【請求項6】
次の工程を含む、請求項1~5のいずれかに記載のコレステリック液晶含有ジェル状化粧料の製造方法。
(1)B型粘度計で測定したときの粘度が1000~3000mPa・sとなるよう粘度調節した、少なくとも(A)カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体から選ばれる1以上の水溶性高分子と(B)ポリオキシエチレングリセリルエーテルを構成成分として含む透明又は/半透明のジェル状組成物に、コレステリック液晶を分散させる工程。
(2)次いで(1)の工程で得られた組成物を塩基性化合物で中和して、B型粘度計で測定したときの粘度が5000~60000mPa・sとなるように増粘させる工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジェル状の化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステリック液晶はサーモトロピック液晶の1種であり、主にコレステロールの誘導体などで構成される。コレステリック液晶は、液晶構造を形成する分子配列の方向が徐々にねじれ、らせんの層状構造となり、この液晶らせんのピッチは、可視光の波長と同程度のものが多く、さまざまな干渉色(干渉光)を呈することが知られている。このため化粧料にコレステリック液晶を配合すると美しい干渉光(構造色)が見えることで美観のすぐれた化粧料となる。特にジェル状化粧料に配合すると、その効果が顕著である(特許文献1~4参照)。化粧料に配合する目的で、様々なコレステロール誘導体からなる液晶が販売されている。
【0003】
また、コレステリック液晶を配合した化粧料は、皮膚水分蒸散を抑制し皮膚の潤いを保つ効果を有している(非特許文献1、特許文献5を参照)。
化粧料中で、コレステリック液晶を分散して安定に保持するために、しばしば高分子増粘剤が基剤として配合されている。コレステリック液晶と高分子増粘剤を含有するジェル状化粧料は、美しい外観と優れたスキンケア効果を有し、さらに化粧料の保存安定性にも優れる。特許文献6は、コレステリック液晶を化粧料に分散させる際、コレステリック液晶を0.1~10mmの大きさになるように分散させると液晶の発色が美しく、視覚的に認識できる液晶の分散が、視覚的に興味をひくようになることが記載されている。しかしながら、このような製剤は粘性を有するコレステリック液晶を、比較的大きな粒子径のまま分散させるため、皮膚への塗布時に顕著なべたつき感が生じる。また、基剤として用いる高分子増粘剤も同様に塗布時に肌へとなじむ際に特有のべたつき感を生じさせる欠点がある。
【0004】
特許文献7には、水不溶性粒子を配合することでコレステリック液晶の配合量を0.5~20重量%に抑制しながら発色を向上させ、べたつき感を抑制した化粧料が提案されている。しかし、この化粧料は、コレステリック液晶の配合量を抑えることで水性ゲルの肌への塗布時のみずみずしい感触があるが、一方で塗布した後の、肌への馴染みと、馴染んだ後に生じるべたつきについては解決できていない。
【0005】
一方、各種のポリオキシアルキレングリセリルエーテルを配合することで、ジェル状化粧料に配合される水溶性高分子や水膨潤性粘土鉱物のべたつき感を抑制できることが知られている(特許文献8、9)。このようなべたつき感の抑制には、ポリオキシプロピレン基やポリオキシブチレン基のようなアルキル鎖部分の長いポリアルキレン基を含むものが、特にその効果に優れる。また、ポリオキシプロピレン基やポリオキシブチレン基を含まないポリオキシエチレングリセリルエーテルは、温感化粧料に好適であることが知られている(特許文献10、11参照)。
しかしコレステリック液晶を分散させたジェル状化粧料に、ポリオキシエチレングリセリルエーテルを配合した場合の効果や最適な配合量は、明らかではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平01-211512号公報
【文献】特開平01-242690号公報
【文献】特開平02-191208号公報
【文献】特開平02-200607号公報
【文献】特開平03-034907号公報
【文献】特開2014-198706号公報
【文献】特開2013-082633号公報
【文献】特開2013-023455号公報
【文献】特開2013-023456号公報
【文献】特開2017-128524公報
【文献】特開2001-072544公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】FRAGRANCE JOURNAL 1990-7 P111-114
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、コレステリック液晶を含むジェル状化粧料であって、美しい外観を持ち、使用に際してべたつき感のない、保湿性の高い化粧料を提供することを課題とする
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
1.次の(A)、(B)、(C)を含むジェル状化粧料。
(A)カルボキシビニルポリマー及び/またはアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体
(B)ポリオキシエチレングリセリルエーテル
(C)コレステリック液晶
2.(C)コレステリック液晶が、(A)カルボキシビニルポリマー及び/またはアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体と(B)ポリオキシエチレングリセリルエーテルを構成成分として含有する透明又は半透明のジェル状組成物に分散している1に記載のジェル状化粧料。
3.(C)コレステリック液晶が少なくともオレイン酸ジヒドロコレステリル、ノナン酸コレステリル、酪酸ジヒドロコレステリル、酪酸コレステリル、オレイン酸フィトステリルを含む混合物である1または2に記載のジェル状化粧料。
4.(B)ポリオキシエチレングリセリルエーテルのポリオキシエチレン基の付加モル数の合計が7~31である1~3のいずれかに記載のジェル状化粧料。
5.B型粘度計で測定したときの粘度が5000~60000mPa・sである1~4のいずれかに記載のジェル状化粧料。
6.(B)ポリオキシエチレングリセリルエーテル0.5~10質量%、(C)コレステリック液晶0.1~5質量%を含有する1~5のいずれかに記載のジェル状化粧料。
7.次の工程を含むコレステリック液晶含有ジェル状化粧料の製造方法。
(1)B型粘度計で測定したときの粘度が1000~3000mPa・sとなるよう粘度調節した、少なくとも(A)カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体から選ばれる1以上の水溶性高分子と(B)ポリオキシエチレングリセリルエーテルを構成成分として含む透明又は半透明のジェル状組成物に、コレステリック液晶を分散させる工程。
(2)次いで(1)の工程で得られた組成物を塩基性化合物で中和して、B型粘度計で測定したときの粘度が5000~60000mPa・sとなるように増粘させる工程。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、コレステリック液晶が分散した特有の美しい外観を有し、べたつき感のない、優れた保湿感を有するジェル状化粧料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例4のジェル状化粧料の液晶を観察した画像である。図中の明るく輝く長円が液晶である。
図2】実施例2のジェル状化粧料の液晶を観察した画像である。図中の明るく輝く長円が液晶である。
図3】比較例5のジェル状化粧料の液晶を観察した画像である。明るく輝く液晶が殆ど観察できない。
図4】比較例11のジェル状化粧料の液晶を観察した画像である。明るく輝く液晶が殆ど観察できない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願のジェル状化粧料は、前記のとおり、透明または半透明のジェル状組成物中にコレステリック液晶が適切に分散していることによって、美しい構造色を呈している。またコレステリック液晶を含むジェル状化粧料に特有のべたつき感が解消され、使用感の良い化粧料となる。なお本明細書中でジェル状組成物(或いはジェル状基剤)と記載する場合はコレステリック液晶を含まないものとし、ジェル状組成物にコレステリック液晶を分散させたものをジェル状化粧料と呼び、区別している。また、本発明において透明から半透明とは、直径3.5cmの円筒形ガラス又はPET容器に化粧料を充填して横から目視観察した時に18ポイントの活字が明確に読み取れることを意味する。
以下に、配合成分及び製造工程について説明する。
【0013】
(A)カルボキシビニルポリマー及び/またはアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体
本発明のジェル状化粧料は、ジェル状組成物の基材としてカルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体から選ばれる1以上の水溶性高分子化合物を含む。カルボキシビニルポリマー及び/またはアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の配合量は、ジェル状化粧料の粘度によって適宜変更することが可能であるが、0.03~1質量%、より好ましくは0.1~0.5質量%とすることが好ましい。2種配合する場合は、その合計量が0.03~1質量%、より好ましくは0.1~0.5質量%とすると好ましい。0.03質量%に満たないと、十分な粘度が得られない恐れがある。1質量%を超えて配合すると塗布時にぬるつきを生じたり塗布後に強い膜感を生じたりして使用感が悪くなる恐れがある。
【0014】
<カルボキシビニルポリマー>
本発明に用いることができるカルボキシビニルポリマーは、カルボキシル基を有する水溶性ポリマーをいう。主としてアクリル酸の重合体からなる。カルボキシビニルポリマーは、白色の酸性粉末であり、その1質量%水溶液のpHは約3を示す酸性化合物である。
カルボキシビニルポリマーは、塩基性化合物を用いてpHを中和することにより、粘性の異なる様々なジェル状組成物を調製することができる。中和に用いる塩基性化合物としては、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム・水酸化カリウムなどの水酸化化合物、アルギニンなどを例示することができる。
中和に用いる塩基性化合物の配合量は特に限定されない。ジェル状組成物や化粧料の粘度が好適な範囲内となるように適宜調整すればよい。本発明で用いるカルボキシビニルポリマーは、化粧料分野において増粘剤として汎用されている市販品を使用することができる。例えばNTC-CARBOMER380/381(日光ケミカルズ)、ハイビスワコー103/104/105(富士フイルム和光純薬)やカーボポール980/981(日本ルーブリゾール)などを例示できる。
【0015】
<アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体>
本発明に用いるアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体とは、アクリル酸とメタクリル酸アルキル(C10~C30)の共重合体をいう。
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体は、カルボキシビニルポリマーと同様に塩基性化合物を用いて中和することにより、粘性の異なる様々なジェル状組成物を調製することができる。中和に用いる塩基性化合物としては、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム・水酸化カリウムなどの水酸化化合物、アルギニンなどを例示することができる。
塩基性化合物の配合量は特に限定されず、ジェル状組成物や化粧料の粘度が好適な範囲内となるように適宜調整すればよい。
本発明で用いるアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体は、化粧品分野において増粘剤として汎用されている市販品を使用すれば良い。市販品としては、PEMULEN TR-1/TR-2、カーボポールウルトレッツ20/21(日本ルーブリゾール)、AQUPEC HV-701EDR/HV-801ERK/HV-803ERK(住友精化)などを例示できる。
【0016】
(B)ポリオキシエチレングリセリルエーテル
本発明に用いるポリオキシエチレングリセリルエーテルとは、グリセリンのポリエチレングリコールエーテルをいう。ポリオキシエチレングリセリルエーテルは、ポリオキシエチレン基の付加モル数の合計は7~31が好ましく、12~26がより好ましい。このようなポリオキシエチレングリセリルエーテルは、化粧料分野において保湿剤として汎用されており、市販品を使用することができる。市販品としては、ブラウノンGL-20、ブラウノンGL-26(青木油脂工業)、ユニオックスG-1200(日油)、ユニオン RG-120(新日本理化)などを例示できる。
本発明における、ポリオキシエチレングリセリルエーテルの配合量は0.5~10質量%が好ましく、1.5~6.5質量%がより好ましい。
【0017】
(C)コレステリック液晶
本発明においては、コレステリック液晶は、皮膚に対する安全性の観点から化粧料用のコレステリック液晶化合物であればいずれも使用可能である。化粧料の発色や着色に対応して適宜選択して使用することができる。
本発明において、使用可能なコレステリック液晶としては、具体的には、コレステリルホルメート、コレステリルアセテート、コレステリルプロピオネート、コレステリルブチレート、コレステリルペンタネート、コレステリルヘキサネート、コレステリルヘプタネート、コレステリルオクタネート、コレステリルノナノエート、コレステリルデカネート、コレステリルドデカネート(コレステリルラウレート)、コレステリルミリステート、コレステリルパルミテート、コレステリルステアレート、コレステリルオレエート、コレステリルオレイルカーボネート、コレステリルリノレート、コレステリル12-ヒドロキシステアレート、コレステリルメルカプタン、コレステリルクロライド、コレステリルフルオライド、コレステリルブロマイド、コレステリルアイオダイド等を挙げることができる。
一般的に、化粧料として好ましいコレステリック液晶としては、アルキルコレステロール(例えばコレステリルノナノエート)、コレステリルハライド(例えばコレステロールクロライド)、およびコレステリルオレイルカーボネートの3種の混合物が挙げられる。またこれ以外の液晶であっても適宜混合して使用可能である。また化粧品用の混合物として市販されているものであっても良い。化粧料が用いられる温度範囲(5℃~50℃)で液晶として発色するものであれば、いかなる組成であっても使用可能である。このような市販品としては、Ecolano CLC-678(日本精化株式会社)を例示できる。Ecolano CLC-678(日本精化株式会社)(コレステリック液晶)の粘度はB型粘度計(25℃、4号ローター、12rpm、30秒)で測定したとき4000~7000mPa・sである。
コレステリック液晶の配合量は、ジェル状化粧料全量に対し、0.1~5質量%、好ましくは0.5~3質量%、特に好ましくは0.7~1.5質量%であると好ましい。
【0018】
本発明のジェル状化粧料の粘度は、B型粘度計(25℃、4号ローター、12rpm、30秒)で測定したとき5000~60000mPa・s、好ましくは5000~30000mPa・sである。この範囲にあると、使用性の良好なジェル状化粧料となるので好ましい。
【0019】
その他任意成分
本発明のジェル状化粧料には、化粧料、皮膚外用剤等に通常用いられる成分を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。そのような任意成分としては、以下に示すような油剤、多価アルコール、水溶性高分子、顔料その他の粉体、紫外線吸収剤、低級アルコール、その他の有効成分が挙げられる。
【0020】
<油剤>
油剤はコレステリック液晶の構造を壊さずに発色を保つ程度の範囲で配合できる。例えば、脂肪酸類、高級アルコール、炭化水素、油脂・ロウ類、合成エステル油、シリコーン油等が挙げられる。脂肪酸としては、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等を挙げることができる。高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、バチルアルコールなどが例示できる。炭化水素としては、スクワラン、流動パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。油脂・ロウ類としては、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル等が挙げられる。合成エステル油としては、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、ピバリン酸イソステアリル、ピバリン酸イソデシル、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)等が挙げられる。シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等が挙げられる。本発明において、コレステリック液晶の構造を壊さずに発色を保つ程度の配合量とは、化粧料全量に対し1質量%未満であると好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下であると好ましい。本発明において、油剤を配合すると、ジェル状組成物に濁りが生じ、透明~半透明ではなくなる恐れがある。
【0021】
<水溶性高分子>
本発明において、カルボキシビニルポリマー及び/またはアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体は(A)成分として必須の成分であるが、化粧料のバリエーション化、すなわち細かな粘度調整や使用感調整の目的で適宜必要な水溶性高分子を、本発明の効果を損なわない範囲で配合できる。具体的には、デンプン、デンプン誘導体、セルロース、セルロース誘導体、ペクチン、アガロース、キサンタンガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、シロキクラゲ多糖体、ソルビトール発酵多糖などの多糖類、アクリル酸ナトリウム、(アクリル酸ジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ベへネス―25)コポリマー等の合成高分子等が挙げられる。
【0022】
<多価アルコール>
本発明のジェル状化粧料には、必要に応じて1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、エチルヘキシルグリセリン、バチルアルコール及び1,2-オクタンジオールポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール等の多価アルコールを添加しても良い。
【0023】
<粉体>
本発明のジェル状化粧料には、ジェル状組成物に分散する粉体を配合することができる。このような粉体としては、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類を例示できる。
【0024】
<その他の有効成分>
エタノールなどの防腐剤、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、クエン酸、塩酸などのpH調整剤、エデト酸類、エチドロン酸類などの金属封鎖剤、 ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類や、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート,ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、ビタミンC又はその誘導体、α-トコフェロール,β-トコフェロール,γ-トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類や、スフィンゴ脂質、リン脂質、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸ステアリルなどの美容上有用な成分を配合することができる。
【0025】
<ジェル状化粧料の調製>
本発明のジェル状化粧料を調製するには、次の工程を踏むと好ましい。
(工程1)まず(A)成分と(B)成分及びその他の任意成分を常法により混合し、1000~3000mPa・sの粘度を有するジェル状組成物を形成させる。次いで、この低粘度のジェル状組成物に(C)成分のコレステリック液晶を添加し分散させる。
(工程2)その後水酸化ナトリウムなどの塩基性化合物を添加して、ジェル状化粧料の粘度が5000~60000mPa・sになるようにA成分を中和する。
このような2段階の工程で調製することでコレステリック液晶が美しい外観を呈するようにジェル状組成物に分散でき、かつ所望とする粘度を有するジェル状化粧料が得られる。本発明のジェル状化粧料のpHは5~7である。なお工程1で1000~3000mPa・sの粘度を有するジェル状組成物とするために、工程2の中和に用いる塩基性化合物の一部を工程1で添加してA成分を部分中和させ、ジェル状組成物の粘度を調整してもよいし、工程1のジェル状組成物の粘度を1000~3000mPa・sの範囲になるようにあらかじめ工程1での水の量を調整してもよい。前者の場合、塩基性化合物の添加は工程1と工程2の両方で行う調製方法である。後者の場合、塩基性化合物の添加は工程2でのみ行う調製方法となる。
【実施例
【0026】
以下に実施例及び比較例のジェル状化粧料を調製し、これを用いた評価試験を示し、本発明を具体的に説明する。
1.ジェル状化粧料の調製
表1に示す組成の実施例1~6、および表2に示す組成の比較例1~11のジェル状化粧料を調製した。試験試料の調製はすべて500mLビーカーを用いて300gスケールで実施した。
また用いた配合成分で表中に※で示した成分のメーカー及び商品名は、次のとおりである。
※1富士フイルム和光純薬社製ハイビスワコー103
※2住友精化社製AQUPEC HV-701EDR
※3ルーブリゾール社製PEMULEN TR-1
※4新日本理化社製ユニオンRG-120
※5青木油脂社製ブラウノンGL-20
※6青木油脂社製ブラウノンGL-26
※7日油社製ユニオールSGP-65
※8阪本薬品工業社製SY-DP9
※9日油社製ユニオールTG-1000
※10日油社製ユニルーブ50TG-32
※11日油社製ウィルブライトS-753D
※12日本精化社製Ecolano CLC-678(旧YOFCO CLC-678):オレイン酸ジヒドロコレステリル,ノナン酸コレステリル,酪酸ジヒドロコレステリル,酪酸コレステリル,オレイン酸フィトステリル
【0027】
(1)(A)成分および(B)成分、または(A)成分と(B)成分に相当する成分さらにはその他の任意成分を所要量の精製水に溶解させ、水相溶液を調製する。
(2)水酸化カリウム溶液を用いて水相に含まれる(A)成分の部分的な中和を行い、水相粘度を1000~3000mPa・s(B型粘度計 25℃、ローターNo.3、回転数12rpm、測定時間30秒)に粘度調整する。
(3)(C)成分を投入してスリーワンモーター(新東科学社製)とパドル羽根を用いて室温下、200rpm、30秒の条件でプレ分散を行う。
(4)水酸化カリウム溶液をすべて投入して(A)成分の中和を行う。
(5)スリーワンモーター(新東科学社製)とパドル羽根を用いて100rpm、60秒の条件で撹拌を行う。
(6)調製したジェル状化粧料を評価試料とする。
【0028】
2.ジェル状化粧料の評価
(1)物性評価
(粘度)
B型粘度計(25℃、ローターNo.3またはローターNo.4、回転数12rpm、測定時間30秒)を用いて粘度を測定した。
(pH)
pHメーター((株)堀場製作所;pH/ION METER F-32)を用いて、pHを測定した。
【0029】
(2)外観評価
試料をガラス瓶(スクリュー管No.7:直径3.5cm)に充填し、専門の官能評価員により、コレステリック液晶の分散と構造色の美観性を下記基準により評価した。
(評価基準)
○:コレステリック液晶の分散と発色が明瞭に認識できる
△:コレステリック液晶の分散と発色がやや不明瞭であり、構造色があまりきれいに認識できない
×:コレステリック液晶の分散と発色が不明瞭であり、構造色が殆ど認識できない
なお、ジェル状組成物(ジェル状基剤)の透明性については、ガラス瓶の横から目視観察した時に18ポイントの活字が明確に読み取れ、実施例1~6はすべて透明であった。
【0030】
(3)使用感評価
試料を手の甲にとり、塗布した際の使用感(塗布時のべたつきのなさ、塗布後のべたつきのなさ、塗布後の保湿感)を、専門の官能評価員が評価した。
(評価項目)
1)塗布時のべたつきのなさ:試料の肌への馴染み際から馴染んだ直後にかけてのべたつきのなさ
2)塗布後のべたつきのなさ:試料が肌へと馴染んだ後のべたつきのなさ
3)塗布後の保湿感:試料を肌へ塗布して馴染ませた直後のしっとりとした感触の良さ
(評価基準)
○:良い
△:やや良い
×:悪い
【0031】
(4)コレステリック液晶分散粒子径の計測と個数
実施例及び比較例に記載の各化粧料を厚さ2mmのガラス皿にすり切り一杯まで充填し、これを試験試料とした。ジェル基剤(ジェル状組成物)中に分散したコレステリック液晶の粒子サイズと個数を計測した。計測はKEYENCE社製デジタルマイクロスコープVHX-5000を用いて行った。また観察画像の撮影を行った。
観察は、倍率30倍で行った。
コレステリック液晶の分散状態の確認は、下記基準により液晶の最大径、最小径、液晶粒子数を計測した。
(基準)
最大径:液晶粒子の内周上の任意の2点間距離が最大となる長さの算術平均
最小径:液晶粒子を平行な2直線で挟んだときの2直線間の距離の最小値の算術平均
液晶個数:単位面積当たりの液晶個数
【0032】
3.評価結果
表1、表2の下段に評価結果を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
本発明の構成(A+B+C)をとる実施例1~6のジェル状化粧料は、いずれも透明なジェル状組成物中にコレステリック液晶の独特の美しい構造色が見える美しい外観であり、かつ使用感(塗布時のべたつきのなさ、塗布後のべたつきのなさ、塗布後の保湿感)に優れたものであった。
比較例1~11は、いずれもB成分を欠く組成(A+C)である。そして、B成分の代わりに、比較例1は水を、比較例2は任意成分の多価アルコールを、比較例3~11はB成分に類似する成分に置き換えた組成である。
比較例1、比較例2のジェル状化粧料は、使用感評価において、塗布時のなじみ際にべたつきがみられた(△評価と×評価)。そして塗布後にべたつきを生じるとの評価(いずれも×評価)であった。
比較例3、比較例4、比較例5、比較例6、比較例7、比較例10、比較例11のジェル状化粧料は、B成分に替えてポリオキシプロピレン基やポリオキシブチレン基を含むポリオキシアルキレンアルキルエーテルを配合した化粧料である。この組成のジェル状化粧料は、コレステリック液晶が微細に分散してしまった。そして、コレステリック液晶が、微細に分散しすぎたことで、外観が濁ったように見えてしまい、ジェル状組成物(基剤)の透明性が損なわれた。そして、微細に分散したコレステリック液晶は、コレステリック液晶としての独特の発色(構造色)が抑制され、ジェル状化粧料としての審美性が損なわれた。
比較例8、比較例9のジェル状化粧料は、ポリエチレングリコールを配合した組成である。この組成のジェル状組成物は、塗布時の肌へのなじみ際に強いべたつき感を生じた(×評価)。さらに塗布後にはきしみ感を生じてしまい、しっとりとした感触の良さが得られず×評価であった。比較例8と9の組成では外観は美しかったが、べたつきがあり、コレステリック液晶を含有させた化粧料に特有の保湿感が得られなかった。
次にジェル状化粧料の外観観察結果について詳細に述べる。
【0036】
ジェル状化粧料の外観、美観に影響を与える、液晶の大きさを観察した画像を図1図4に示す。
図1は実施例4のジェル状化粧料のコレステリック液晶を観察した画像である。ジェル状基剤(ジェル状組成物)に分散したコレステリック液晶の粒子は最大径138μm(算術平均)を示し、1cmあたりに463個が分散し、極めて美しい構造色(光沢)を放っていた。外観評価「〇」であった。
図2は、実施例2のジェル状化粧料のコレステリック液晶を観察した画像である。コレステリック液晶の粒子は最大径253μm(算術平均)を示し、比較的大きい粒子が1cmあたりに70個分散し、極めて美しい構造色(光沢)を放っていた。外観評価「〇」であった。
実施例2及び実施4を含めた、実施例1~6のジェル状化粧料はいずれも、コレステリック液晶の構造色が目視で確認でき、透明なジェル状基剤中に粒子がはっきりと識別できて外観がきわめて美しいものであった。
【0037】
比較例5の観察画像を図3に示す。ジェル状基剤に分散したコレステリック液晶の粒子は最大径76μm(算術平均)であり、最小径49μm(算術平均)、粒子数2392個/cmであった。すなわちコレステリック液晶粒子の最大径および最小径が小さく100μmを下回っており、多数の液晶粒子が分散しているためコレステリック液晶に特有の構造色がほとんど視認できなかった。外観評価は「×」となった。同様のことが比較例6、7、10について言えた。
また比較例11は、外観評価「△」である。観察画像を図4に示す。比較例11のコレステリック液晶粒子は、最大径87μm(算術平均)、最小粒径67μm(算術平均)、粒子数866個/cmであった。コレステリック液晶粒子の最大径および最小径が比較例5よりは大きいものの、実施例よりは小さく100μmを下回っており、多数の液晶粒子が分散しているためコレステリック液晶特有の構造色があまりきれいに認識できず、ジェル状化粧料としてあまり美しくないとの評価(△評価)になった。
このような観察画像の解析から、コレステリック液晶を含むジェル状化粧料の外観を美しくするためには、(1)コレステリック液晶の粒子径を大きくすること、(2)単位体積当たりに分散する液晶の粒子個数を適切な範囲内とすることが重要であると考えられた。本試験では、(1)コレステリック液晶の最大径の算術平均値が120~253μm、(2)試料の厚さを2mmとしたときに観察される液晶の粒子個数が70~712個/cmの時に、美しいと感じることが確認できた。
このことから、ジェル状基剤に分散したコレステリック液晶粒子の画像解析によって得られる最大径の算術平均値が100μmを下回らないこと、試料の厚さを2mmとしたときに観察される液晶の粒子個数が800個/cmを超えないことが、美しい外観を得るために重要であると判断した。
まとめると、試料の厚さ2mm、倍率30倍でのマイクロスコープによる画像解析で(1)コレステリック液晶の最大径の算術平均値が100~300μm、(2)コレステリック液晶の粒子個数が50~800個/cmの時に、コレステリック液晶を含むジェル状化粧料の外観が美しいと感じられる、との基準Aが確立できた。
【0038】
なお前記の基準Aでは、マイクロスコープ観察による画像解析をそのまま用いているため、視認できないほど小さな粒子も解析対象としている。したがって、目視観察による粒子の大きさよりも、値が小さくなる恐れがある。そこで目視観察による液晶粒子の大きさに近づけたい場合の手法としてマイクロスコープ観察画像に対して100μm未満の液晶粒子を排除する以外は同様の基準にて画像解析した。コレステリック液晶の最大径の算術平均値、コレステリック液晶の粒子個数を計測値、および導かれた基準Bは次のとおりであった。
[マイクロスコープ観察画像に対して100μm未満の液晶粒子を排除した解析]
マイクロスコープ観察画像に対して100μm未満の液晶粒子を排除してからコレステリック液晶粒子の最大径を計測したところ、最大径の算術平均値は実施例2が515μm、実施例4が268μmであった。また、それぞれの試料について、最大径の最大値は実施例2が2020μm、実施例4が1173μmであった。なお100μm未満の液晶粒子を排除する前のマイクロスコープ観察した試料中の液晶粒子における100μm以上の粒子個数の割合(100μm以上の液晶粒子個数/全液晶粒子個数)は実施例2が0.60、実施例4が0.45、比較例5が0.27、比較例11が0.35であった。表1と2の結果も踏まえると、試料の厚さを2mmとしたときにマイクロスコープ(30倍)で観察される液晶の粒子個数が50~800個/cmであり、そのうちの4割以上が100μm以上の最大径をもつ粒子であるとき、コレステリック液晶を含むジェル状化粧料の外観が美しいと感じられることがわかった。
(基準B)
試料の厚さ2mm、倍率30倍でのマイクロスコープによる観察画像に対して100μm未満の液晶粒子を排除したときの(1)コレステリック液晶の最大径の算術平均値200~2500μm、(2)コレステリック液晶の粒子個数が23~480個/cmの時に、コレステリック液晶を含むジェル状化粧料の外観が美しいと感じられる。
【0039】
コレステリック液晶組成物をジェル状組成物(ジェル状基剤)に分散させるときの製造工程については前述したとおりであるが、以下、様々な工程を検討した結果を述べる。
【0040】
コレステリック液晶組成物(C成分)をジェル状組成物(ジェル状基剤:A+B)中に、コレステリック液晶の粒子の構造色がわかるレベルで視認できるように分散させて、外観が美しいジェル状化粧料を得るためには、C成分の粘度とジェル状組成物の粘度が大きく離れておらず、かつ若干ジェル状組成物の粘度が低くなるように調整したものに、C成分のコレステリック液晶を分散させると、煩雑な調整をせずに製造できるので好ましい。
つまり、下記の工程をとると好ましい。
(1)B型粘度計で測定したときの粘度が1000~3000mPa・sとなるよう粘度調節した、少なくとも(A)カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体から選ばれる1以上の水溶性高分子と(B)ポリオキシエチレングリセリルエーテルを含む透明又は半透明のジェル状組成物に、コレステリック液晶を分散させる工程。
(2)次いで(1)の工程で得られた組成物を塩基性化合物で中和して、B型粘度計で測定したときの粘度が5000~60000mPa・sとなるように増粘させる工程。
一方、ジェル状組成物の粘度がコレステリック液晶の粘度と同等かそれよりも高い場合、或いはコレステリック液晶の粘度の1/3以下と低い場合は、下記の結果となった。
(ジェル状組成物の粘度が同等か高い場合)
高粘度(5000mP・s以上)のジェル状基剤に、粘度が5000mPa・sのコレステリック液晶を分散させた場合には、均一な分散物を得るために撹拌時間が増加した。この長い撹拌時間により、分散したコレステリック液晶がさらに微細化していくことで、特有の構造色が視認しづらくなり、美しい外観のジェル状化粧料が得られ難くなった。
(ジェル状組成物の粘度が低い場合)
一方、低粘度(1000mPa・s未満)の溶液に粘度が5000mPa・sのコレステリック液晶を分散させようとすると、基剤とコレステリック液晶の比重差から、主に油剤で構成される比重が軽いコレステリック液晶が液面に浮遊して十分に分散させることができず、均質なジェル状化粧料が得られ難かった。
これらのことから、カルボキシビニルポリマー及び/またはアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体に対して塩基性物質を用いて一度部分的に中和を行うか、或いは水の量を調整することで、ジェル状組成物を適度な粘度(1000~3000mP・s)に調整してからコレステリック液晶(4000~7000mP・s)を分散させる工程(工程1)、さらに塩基性物質を加えて中和し、粘度を調整して所望のジェル状化粧料を得る工程(工程2)をとることで、コレステリック液晶特有の美しい構造色を有する粒子が均質に分散した、外観の美しいジェル状化粧料が得られることがわかった。
図1
図2
図3
図4