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特許7141983フェノールフォーム製造用樹脂組成物並びにフェノールフォーム及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】フェノールフォーム製造用樹脂組成物並びにフェノールフォーム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/14 20060101AFI20220915BHJP
   C08K 5/02 20060101ALI20220915BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20220915BHJP
   C08K 5/21 20060101ALI20220915BHJP
   C08G 8/08 20060101ALI20220915BHJP
   C08L 61/06 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
C08J9/14 CEZ
C08K5/02
C08L71/02
C08K5/21
C08G8/08
C08L61/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019122727
(22)【出願日】2019-07-01
(65)【公開番号】P2021008564
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】山田 修司
(72)【発明者】
【氏名】木坂 靖
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/036049(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/088035(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/152988(WO,A1)
【文献】特開2018-95869(JP,A)
【文献】特表2014-530939(JP,A)
【文献】特開2007-161810(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065906(WO,A1)
【文献】特表2019-515112(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103890665(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/14
C08K 5/02
C08L 71/02
C08K 5/21
C08G 8/08
C08L 61/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾール型フェノール樹脂及び酸硬化剤と共に、発泡剤として、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含有するフェノールフォーム製造用樹脂組成物。
【請求項2】
前記発泡剤が(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンである請求項1に記載のフェノールフォーム製造用樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸硬化剤がパラトルエンスルホン酸及び/又はキシレンスルホン酸である請求項1又は請求項2に記載のフェノールフォーム製造用樹脂組成物。
【請求項4】
前記酸硬化剤としてパラトルエンスルホン酸及びキシレンスルホン酸を含有し、質量基準において、該パラトルエンスルホン酸の含有量が該キシレンスルホン酸の含有量より多い請求項1又は請求項2に記載のフェノールフォーム製造用樹脂組成物。
【請求項5】
ひまし油エチレンオキサイド付加物を更に含有する請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のフェノールフォーム製造用樹脂組成物。
【請求項6】
尿素を更に含有する請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のフェノールフォーム製造用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のフェノールフォーム製造用樹脂組成物の発泡硬化物よりなるフェノールフォーム。
【請求項8】
独立気泡率が90%以上である請求項7に記載のフェノールフォーム。
【請求項9】
圧縮強さが17.5N/cm2 以上である請求項7又は請求項8に記載のフェノールフォーム。
【請求項10】
初期熱伝導率が0.0170w/m・k以下である請求項7乃至請求項9の何れか1項に記載のフェノールフォーム。
【請求項11】
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のフェノールフォーム製造用樹脂組成物を、面材上で発泡及び硬化させる工程を含むフェノールフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノールフォーム製造用樹脂組成物に係り、特に、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを必須の成分として用いて得られるフェノールフォームにおいて、断熱性能の長期安定性と機械的強度(圧縮強さ)とを、共に、より一層向上せしめることが出来る技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを組み合わせて発泡硬化せしめることにより、フェノール樹脂発泡体(フェノールフォーム)を製造するに際しては、フロン系の発泡剤が広く用いられていたが、オゾン層の破壊、地球温暖化係数が高い等の問題から、現在では、好ましい発泡剤として、塩素化脂肪族炭化水素系発泡剤、炭化水素系発泡剤、ハロゲン化アルキル等の採用が推奨されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2016-27175号公報)においては、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン及び1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィンを含むものを発泡剤として含有するフェノール樹脂発泡体が、開示されている。同文献に明示されている1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン等は、何れも、オゾン破壊係数及び地球温暖化係数が低く、また難燃性を有していることが知られている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に明示されている1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン等のオレフィンを発泡剤として用いると、フェノール樹脂発泡体(フェノールフォーム)の成形時に、発泡途中の組成物中の上部と下部との間において、また中央部と端部との間において、発泡の程度に差異が生じ、最終的に得られる発泡体(フォーム)が十分な圧縮強さを発揮しない恐れがある。
【0005】
また、近年では、建築、土木、工業用品等の各分野で使用されるフェノール樹脂発泡体(フェノールフォーム)に対して、従来以上の断熱性能が求められているところ、発泡剤としても、フェノール樹脂発泡体(フェノールフォーム)における断熱性能の向上に寄与するものが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-27175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる状況の下、本発明者等は、オゾン破壊係数及び地球温暖化係数が低いハイドロクロロフルオロオレフィンを発泡剤として用いたフェノールフォーム製造用樹脂組成物について、鋭意検討したところ、発泡剤として1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを用いると、製造直後から中長期的に優れた断熱性能を発揮すると共に、優れた圧縮強さを有するフェノールフォームが得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
従って、本発明の解決すべき課題とするところは、格別の断熱性能及び非常に優れた圧縮強さを発揮するフェノールフォームが有利に得られるフェノールフォーム製造用樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の他の課題とするところは、格別の断熱性能及び非常に優れた圧縮強さを発揮するフェノールフォームを提供することにあり、更に別の課題とするところは、そのような優れたフェノールフォームを有利に製造することが出来る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明は、かかる課題を解決するために、レゾール型フェノール樹脂及び酸硬化剤と共に、発泡剤として、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含有するフェノールフォーム製造用樹脂組成物を、その要旨とするものである。
【0010】
なお、本発明に従うフェノールフォーム製造用樹脂組成物においては、前記発泡剤が(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンであることを、好ましい第一の態様とする。
【0011】
また、本発明に従うフェノールフォーム製造用樹脂組成物においては、前記酸硬化剤がパラトルエンスルホン酸及び/又はキシレンスルホン酸であることを、好ましい第二の態様とする。
【0012】
さらに、本発明に従うフェノールフォーム製造用樹脂組成物においては、前記酸硬化剤としてパラトルエンスルホン酸及びキシレンスルホン酸を含有し、質量基準において、該パラトルエンスルホン酸の含有量が該キシレンスルホン酸の含有量より多いことを、好ましい第三の態様とする。
【0013】
加えて、本発明に従うフェノールフォーム製造用樹脂組成物においては、ひまし油エチレンオキサイド付加物を更に含有することを、好ましい第四の態様とする。
【0014】
さらにまた、本発明に従うフェノールフォーム製造用樹脂組成物においては、尿素を更に含有することを好ましい第五の態様とする。
【0015】
一方、本発明は、上記した各態様に係るフェノールフォーム製造用樹脂組成物のうちの何れか一つの発泡硬化物よりなるフェノールフォームをも、その要旨とするものである。
【0016】
なお、そのような本発明に係るフェノールフォームにおいては、独立気泡率が90%以上であることを好ましい第一の態様とする。
【0017】
また、本発明に係るフェノールフォームにおいては、圧縮強さが17.5N/cm2 以上であることを好ましい第二の態様とする。
【0018】
さらに、本発明に係るフェノールフォームにおいては、初期熱伝導率が0.0170w/m・k以下であることを好ましい第三の態様とする。
【0019】
他方、本発明は、上記した各態様に係るフェノールフォーム製造用樹脂組成物を、面材上で発泡及び硬化させる工程を含むフェノールフォームの製造方法をも、その要旨とするものである。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明に従うフェノールフォーム製造用樹脂組成物にあっては、発泡剤として、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンが用いられているところから、環境負荷の低い、環境に優しいフェノールフォームが有利に形成され得ることとなると共に、得られるフェノールフォームが、製造直後から中長期的に優れた断熱性能を発揮し、更には優れた圧縮強さをも発揮することとなるのである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ところで、本発明に従うフェノールフォーム製造用樹脂組成物において使用されるレゾール型フェノール樹脂は、有利には、フェノール類の1モルに対して、アルデヒド類を、1.0~3.0モル程度の割合において、好ましくは1.5~2.5モル程度の割合において用い、それらを、アルカリ性の反応触媒の存在下において、例えば50℃~還流温度の範囲内の温度下において反応させた後、中和処理を実施し、次いで減圧下で、所定の特性値、例えば25℃での粘度が2000mPa・s以上であり、且つ含有水分量が3~20%、好ましくは5~18%となるように、脱水濃縮を行い、そして冷却し、しかる後に、必要に応じて、所定の添加物を従来と同様に加えて、製造されることが望ましい。
【0022】
勿論、このようなレゾール型フェノール樹脂の他、本発明においては、酸硬化剤によって硬化せしめられ得る、公知の各種のレゾール型フェノール樹脂も、適宜に採用され得るところであり、また適当な変性剤によって変性されたレゾール型フェノール樹脂をも、同様に用いることが出来る。
【0023】
そして、このようにして得られるレゾール型フェノール樹脂が、25℃において、2000mPa・s以上、好ましくは2000~100000mPa・s、より好ましくは3000~80000mPa・s、更に好ましくは4000~30000mPa・sの粘度を有していることにより、目的とする樹脂組成物の調製、中でも酸硬化剤及び発泡剤の分散、含有をより効果的に実現せしめ、更にはその分散状態の安定性を有利に高め得ることとなるのであり、以て、得られるフェノールフォームにおける断熱性能のより一層の向上を図り得ることとなるのである。なお、かかるレゾール型フェノール樹脂の粘度が2000mPa・s未満である場合や、100000mPa・sを超える場合には、樹脂組成物中における酸硬化剤や発泡剤等の分散性を良好なものとすることが困難となり、目的とするフェノールフォームが得られない恐れがある。
【0024】
なお、本発明で用いられるレゾール型フェノール樹脂の一方の原料となるフェノール類としては、フェノール、o‐クレゾール、m‐クレゾール、p‐クレゾール、p‐tert‐ブチルフェノール、m‐キシレノール、ビスフェノールF、ビスフェノールA等を挙げることが出来、また、このフェノール類と組み合わせて用いられる、他方の原料であるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、ポリオキシメチレン、グリオキザール等を挙げることが出来る。更に、反応触媒としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、アンモニア等を挙げることが出来る。勿論、これらフェノール類、アルデヒド類及び反応触媒は、何れも、上例のものに限定されるものでは決してなく、公知の各種のものが、適宜に用いられ得るものであり、また、それらは、それぞれ単独において、或いは2種以上を組み合わせて、用いられ得るものである。
【0025】
また、本発明において用いられる酸硬化剤は、上述せる如きレゾール型フェノール樹脂の硬化反応を促進するための成分(硬化触媒)であって、従来から公知の酸硬化剤が、適宜に選択されて、用いられることとなる。そして、そのような酸硬化剤としては、例えばベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸;硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホウフッ化水素酸等の無機酸等が挙げられ、これらは、単独で用いられてもよく、また2種以上が組み合わされて用いられても、何等、差し支えない。なお、これら例示の酸硬化剤の中でも、フェノールスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸にあっては、フェノールフォームの製造に際して、適度な硬化速度を実現することが出来るために、レゾール型フェノール樹脂の硬化と発泡剤による発泡とのバランスがより一層良好となり、以て、望ましい発泡構造を実現することとなるところから、特に好適に用いられることとなるのである。中でも、本発明にあっては、パラトルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸との併用が推奨され、それらの使用割合は、質量基準において、パラトルエンスルホン酸の使用量が、キシレンスルホン酸の使用量より多いことが望ましい。具体的には、質量比でパラトルエンスルホン酸:キシレンスルホン酸が51:49~95:5の範囲内において、有利に採用されることとなる。
【0026】
なお、そのような酸硬化剤の使用量としては、その種類や、前記レゾール型フェノール樹脂との混合時における温度条件等に応じて、適宜に設定されるものの、本発明においては、レゾール型フェノール樹脂の100質量部に対して、一般に1~50質量部、好ましくは5~30質量部、特に好ましくは7~25質量部とすることが望ましい。その使用量が1質量部未満では、硬化が進行せず、逆に50質量部を超えるようになると、硬化速度が速くなり過ぎて、目的とするフェノールフォームが出来ない問題を惹起する。
【0027】
そして、本発明においては、上述の如きレゾール型フェノール樹脂及び酸硬化剤と共に、発泡剤として、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)が用いられて、フェノールフォーム製造用樹脂組成物が構成されることとなる。
【0028】
本発明において発泡剤として用いられる1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)は、オゾン破壊係数及び地球温暖化係数が低いものであるところから、本発明に係るフェノールフォーム製造用樹脂組成物より得られるフェノールフォームは、環境負荷の低い、環境に優しいものとなるのである。また、本発明者等が知得したところによれば、得られるフェノールフォームは、製造直後から中長期的に優れた断熱性能を発揮すると共に、優れた圧縮強さをも発揮することとなるのである。
【0029】
ここで、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)には、シス体(Z体)とトランス体(E体)が存在することが知られているところ、トランス体(E体)よりシス体(Z体)の方が安定であることから、本発明においては、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンのシス体(Z体)[(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン]が有利に用いられる。
【0030】
また、本発明においては、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、上述した1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン以外の発泡剤を併用することも可能である。本発明において、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと併用することが出来る発泡剤としては、例えば、地球温暖化係数の低い、塩素化脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素やハロゲン化アルケン等を挙げることが出来る。
【0031】
発泡剤としての塩素化脂肪族炭化水素は、一般に、炭素数が2~5個程度の直鎖状、分岐鎖状の脂肪族炭化水素の塩素化物が好ましく用いられ、その塩素原子の結合数としては、一般に、1~4個程度である。このような塩素化脂肪族炭化水素の具体例としては、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等を挙げることが出来る。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよいが、それらの中でも、プロピルクロリドやイソプロピルクロリド等のクロロプロパン類が好ましく、特にイソプロピルクロリドが好適に用いられることとなる。
【0032】
また、発泡剤としての脂肪族炭化水素には、従来から公知の、炭素数が3~7個程度の炭化水素系発泡剤が、適宜に選択されて用いられ得るところであり、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ネオヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、シクロペンタン等を挙げることが出来、それらの中から、1種又は2種以上を組み合わせて用いられることとなる。
【0033】
なお、本発明において、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと共に、上記した塩素化脂肪族炭化水素及び脂肪族炭化水素を併用する場合、その混合比率としては、質量比において、脂肪族炭化水素:塩素化脂肪族炭化水素=25:75~5:95の範囲内において、有利に採用されることとなる。なお、そのような2種類の発泡剤の組み合わせとしては、イソペンタンとイソプロピルクロリドとの組み合わせが推奨される。
【0034】
さらに、本発明において、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと併用される発泡剤として、ハロゲン化アルケンを例示することが出来る。発泡剤としてハロゲン化アルケンを併用することにより、得られるフェノールフォームの特性、特に難燃性の向上を図ることが出来る。このような特性を有するハロゲン化アルケンは、ハロゲン化オレフィンやハロゲン化ハイドロオレフィンと称されるものをも含み、一般的に、ハロゲンとして塩素やフッ素を結合、含有せしめてなる、炭素数が2~6個程度の不飽和炭化水素誘導体であって、例えば、3~6個のフッ素置換基を有するプロペン、ブテン、ペンテン及びヘキセンであり、また、他の置換基、例えば塩素も置換、含有することの出来る、テトラフルオロプロペン、フルオロクロロプロペン、トリフルオロモノクロロプロペン、ペンタフルオロプロペン、フルオロクロロブテン、ヘキサフルオロブテンや、これらの2種以上の混合物を挙げることが出来る。
【0035】
具体的には、かかるハロゲン化アルケン(ハロゲン化オレフィン)の1つであるハイドロフルオロオレフィン(HFO)としては、例えば、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)等のペンタフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ye)等のテトラフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)等のトリフルオロプロペン、テトラフルオロブテン異性体(HFO-1354)類、ペンタフルオロブテン異性体(HFO-1345)類、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)等のヘキサフルオロブテン異性体(HFO-1336)類、ヘプタフルオロブテン異性体(HFO-1327)類、ヘプタフルオロペンテン異性体(HFO-1447)類、オクタフルオロペンテン異性体(HFO-1438)類、ノナフルオロペンテン異性体(HFO-1429)類等を挙げることが出来る。また、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)としては、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)、ジクロロトリフルオロプロペン(HCFO-1223)、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yd)、1-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zb)、2-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xe)、2-クロロ-2,2,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xc)、3-クロロ-1,2,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233ye)、3-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yc)等を挙げることが出来る。
【0036】
さらに、本発明においては、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン等のフッ素化炭化水素(代替フロン)、トリクロロモノフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン等の塩素化フッ素化炭化水素、水、イソプロピルエーテル等のエーテル化合物、窒素、アルゴン、炭酸ガス等の気体、空気等を、発泡剤として使用することも可能である。
【0037】
ここで、本発明において、少なくとも1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む発泡剤の総使用量は、レゾール型フェノール樹脂の100質量部に対して、一般に1~30質量部、好ましくは5~25質量部の割合において用いられることとなる。また、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)と他の発泡剤とを使用する場合、その使用比率としては、質量比において、HCFO-1224yd:他の発泡剤が1:0.1~1:2、好ましくは1:0.1~1:1、より好ましくは1:0.2~1:0.7の範囲内において、有利に採用されることとなる。
【0038】
ところで、本発明に従うフェノールフォーム製造用樹脂組成物には、上述の如きレゾール型フェノール樹脂と、酸硬化剤と共に、発泡剤として1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンが必須の成分として添加、配合せしめられるものであるが、その他、必要に応じて、従来から公知の整泡剤、尿素、赤リン粉末、無機フィラーや可塑剤等を含有せしめることも可能である。
【0039】
そのような必要に応じて添加、含有せしめられる添加剤のうち、先ず、整泡剤は、樹脂組成物における混合成分の混合や乳化の補助、発生ガスの分散、フォームセル膜の安定化等を図るために配合せしめられるものである。そして、そのような整泡剤としては、特に限定されるものではなく、当該技術分野で従来から使用されてきた各種の整泡剤が、何れも選択使用されることとなるが、中でも、ポリシロキサン系化合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、ひまし油のエチレンオキサイド付加物(ひまし油エチレンオキサイド付加物)等の非イオン系界面活性剤が、特に好ましく用いられる。
【0040】
具体的に、本発明において有利に用いられるひまし油エチレンオキサイド付加物は、ひまし油の1モルに対してエチレンオキサイドが20モル超、40モル未満付加されているものである。このように、エチレンオキサイドの付加モル数が20モル超、40モル未満であることが好ましい理由は、エチレンオキサイドの付加モル数がかかる範囲内にあるときには、ひまし油の長鎖炭化水素基を主体とする疎水性基と、エチレンオキサイドによって形成されたポリオキシエチレン基を主体とする親水性基とが、分子内でバランス良く配置されて、良好な界面活性能が得られるからである。このような、良好な界面活性能を有するひまし油エチレンオキサイド付加物を用いることにより、フェノールフォームの気泡径が小さく保たれると共に、気泡壁に柔軟性が付与されて、気泡壁において亀裂の発生が有利に抑制される等の効果を享受することが出来る。なお、エチレンオキサイドの付加モル数は21~38モルであることがより好ましい。
【0041】
なお、上記した整泡剤は、単独で用いられる他、その2種以上を組み合わせて、用いることも出来る。また、その使用量についても、特に制限は無いが、一般的には、レゾール型フェノール樹脂の100質量部に対して、0.5~10質量部の範囲内において、用いられることとなる。
【0042】
また、本発明に従うフェノールフォーム製造用樹脂組成物には、尿素が好適に添加、含有せしめられることとなる。このような尿素の含有によって、得られるフェノールフォームの初期熱伝導率を効果的に低下せしめることが出来、またフェノールフォームの臭気を低減させることが出来、更には強度、特に低脆性のフェノールフォームを得ることが出来ると共に、その中長期に亘る熱伝導率を低く維持することにも有利に寄与し、以て、優れた断熱性能を長期安定的に有するフェノールフォームを得ることが容易となるのである。
【0043】
さらに、本発明のフェノールフォーム製造用樹脂組成物には、それを用いて得られるフェノールフォームに優れた難燃性を付与しつつ、熱伝導率の上昇を抑制乃至は阻止し、更に、中長期間に亘って低い熱伝導率が確保され得るように、難燃剤としての赤リン粉末が有利に含有せしめられる。なお、本発明において用いられる赤リン粉末としては、公知のものが、何れも対象とされ、通常、市販品の中から適宜に選択して用いられることとなる。例えば、燐化学工業株式会社製の「NOVARED」,「NOVAEXCEL」、日本化学工業株式会社製の「HISHIGUARD」、クラリアント社製の「EXOLIT」等の名称にて販売されているものを挙げることが出来る。中でも、そのような赤リン粉末は、取扱い性乃至は作業性の向上と共に、樹脂組成物中への分散性を高め、その添加効果を有利に向上せしめる上において、その表面にコーティング層が形成されているものであることが望ましく、具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属の酸化物や水酸化物からなる無機化合物、及び/又はフェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂による被覆層を粒子表面に形成してなる赤リン粉末が、有利に用いられることとなる。なお、かかる被覆層は、一般に、赤リンの100質量部に対して、1~30質量部程度の割合において、形成されている。
【0044】
なお、このような赤リン粉末の使用量としては、レゾール型フェノール樹脂の100質量部に対して、一般に0.5~30質量部、好ましくは1~25質量部、更に好ましくは2~20質量部の範囲内において決定される。この赤リン粉末添加量が少なくなり過ぎると、フェノールフォームに対する難燃性の付与効果を充分に奏し難くなるからであり、また、その添加量が多くなり過ぎると、反って熱伝導率を悪化せしめたり、それが添加された組成物の粘度を上昇させ、撹拌不良等の問題を惹起するようなことに加えて、中長期における低い熱伝導率の維持が困難となる等の問題を惹起するようになる。
【0045】
また、かかる赤リン粉末の平均粒径は、一般に1~100μm程度、好ましくは5~50μm程度である。この赤リン粉末の粒径が小さくなり過ぎると、その取扱いや樹脂組成物中への均一な分散が困難となる等の問題を惹起し、またその粒径が大きくなり過ぎても、樹脂組成物中における均一な分散効果を得ることが難しい等の問題を惹起する。
【0046】
その他、無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の金属の水酸化物や酸化物、亜鉛等の金属粉末、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛等の金属の炭酸塩を挙げることが出来る。なお、これらの無機フィラーは、単独で用いられる他、その内の2種以上を組み合わせて用いることも可能である。勿論、このような無機フィラーの使用により、難燃性や耐火性の向上が図られ得ることとなるが、その使用量は、本発明の目的を阻害しない使用量の範囲内において、適宜に決定されるものであることは、言うまでもないところである。
【0047】
また、可塑剤は、フェノールフォームの気泡壁に柔軟性を付与し、断熱性能の経時的な劣化を抑制するために、有利に添加されるものである。この可塑剤としては、特に制限はなく、従来からフェノールフォームの製造に用いられている公知の可塑剤、例えば、リン酸トリフェニル、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル等を用いることが出来、更にポリエステルポリオールの使用も有効である。特に、ポリエステルポリオールは、親水性且つ界面活性に優れるエステル結合及びヒドロキシル基を含む構造を有しているところから、親水性のフェノール樹脂液と相溶性がよく、フェノール樹脂と均一に混合することが出来る。また、このポリエステルポリオールを用いることにより、気泡の偏在を回避し、発泡体全体に気泡を均一に分布させ、品質的にも均質なフェノール樹脂発泡体(フェノールフォーム)が生成し易くなり、好ましい可塑剤ということが出来る。なお、このような可塑剤は、レゾール型フェノール樹脂の100質量部に対して、通常、0.1~20質量部、好ましくは0.5~15質量部、より好ましくは1~12質量部の範囲において用いられ、これによって、得られるフェノールフォームの他の性能を損なうことなく、気泡壁に柔軟性を付与する効果が良好に発揮され、本発明の目的が、より一層良好に達成され得ることとなる。
【0048】
ところで、上述の如き配合成分を含有する本発明に従うフェノールフォーム製造用樹脂組成物は、例えば、前述のレゾール型フェノール樹脂に、必要に応じて、前記の整泡剤や尿素、更には無機フィラーや可塑剤等を加えて混合し、そしてその得られた混合物に、発泡剤として1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)を添加した後、これを、酸硬化剤と共に、ミキサに供給して、撹拌することにより、調製することが可能である。
【0049】
また、そのようにして調製されたフェノールフォーム製造用樹脂組成物を用いて、目的とするフェノールフォームを製造する方法としては、従来から公知の各種の手法が採用され得、例えば、(1)エンドレスコンベアベルト上に樹脂組成物を流出させて、発泡、硬化させる成形方法、(2)スポット的に充填して部分的に発泡、硬化させる方法、(3)モールド内に充填して加圧状態で発泡、硬化させる方法、(4)所定の大きな空間内に充填して、発泡、硬化させることにより、発泡体ブロックを形成する方法、(5)空洞中に圧入しながら充填発泡させる方法を挙げることが出来る。
【0050】
そして、それら成形方法の中でも、上記(1)の成形方法によれば、前述の如きフェノールフォーム製造用樹脂組成物は、連続的に移動するキャリア上に吐出され、この吐出物が加熱ゾーンを経由して発泡せしめられると共に成形されて、所望のフェノールフォームが作製されるようにする方法が、採用される。具体的には、前記フェノールフォーム製造用樹脂組成物を、コンベアベルト上の面材の上に吐出した後、かかるコンベアベルト上の樹脂材料の上面に面材を載せて、硬化炉に移動せしめ、そして硬化炉の中では、上から他のコンベアベルトで押さえて、かかる樹脂材料を所定の厚さに調整して、60~100℃程度、2~15分間程度の条件下で発泡硬化せしめ、その後、硬化炉から取り出された発泡体を所定の長さに切断することにより、目的とする形状のフェノールフォームが作製されるのである。
【0051】
なお、ここで用いられる面材としては、特に制限されることはなく、一般的には天然繊維、ポリエステル繊維やポリエチレン繊維等の合成繊維、ガラス繊維等の無機繊維等の不織布、紙類、アルミニウム箔張不織布、金属板、金属箔等が用いられるものであるが、通常、ガラス繊維不織布、スパンボンド不織布、アルミニウム箔張不織布、金属板、金属箔、合板、構造用パネル、パーティクルボード、ハードボード、木質系セメント板、フレキシブル板、パーライト板、珪酸カルシウム板、炭酸マグネシウム板、パルプセメント板、シージングボード、ミディアムデンシティーファイバーボード、石膏ボード、ラスシート、火山性ガラス質複合板、天然石、煉瓦、タイル、ガラス成形体、軽量気泡コンクリート成形体、セメントモルタル成形体、ガラス繊維補強セメント成形体等の水硬化性セメント水和物をバインダー成分とする成形体が、好適に用いられることとなる。そして、この面材は、フェノールフォームの片面に設けてもよく、また両面に設けても、何等差支えない。また、両面に設けられる場合において、面材は同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。更に、後から接着剤を用いて、面材を貼り合わせて形成されるものであっても、何等差支えない。
【0052】
かくの如くして得られるフェノールフォームにおいて、独立気泡率は、好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、特に好ましくは93%以上、100%以下である。独立気泡率が低すぎるフェノールフォームにおいては、気泡に内包された発泡剤が空気と置換しやすくなることから長時間経過後の熱伝導率が上昇したり、気泡膜が破れ易くなることから圧縮強さが低下する等の傾向がある。
【0053】
また、本発明に従って得られるフェノールフォームにおいて、初期熱伝導率は、一般に0.0170W/m・K(20℃)以下、好ましくは0.0165W/m・K(20℃)以下であり、また、長期安定性を確認するための促進試験による熱伝導率は、一般に0.0180W/m・K(20℃)以下、好ましくは0.0170W/m・K(20℃)以下である。これにより、フェノールフォームは、製造直後から中長期的に優れた断熱性能を発揮するのである。
【0054】
さらに、本発明に従って得られるフェノールフォームにおいて、圧縮強さは、好ましくは17.5N/cm2 以上、より好ましくは18.0N/cm2 以上である。
【0055】
加えて、本発明に従って得られるフェノールフォームにおいて、平均気泡径は、好ましくは50μm~200μm、より好ましくは50μm~150μm、さらに好ましくは60μm~140μm、特に好ましくは70μm~120μmである。平均気泡径が大きすぎると、気泡内のガスの対流及び気泡膜による熱の遮断が少なくなるため、初期の断熱性能が低下する傾向がある。その一方で、平均気泡径が小さすぎると、個々の気泡膜が薄くなるところから、圧縮強さが低下する傾向にある。
【0056】
また、本発明に従って得られるフェノールフォームにおいて、密度は、10kg/m3 ~150kg/m3 、好ましくは15kg/m3 ~100kg/m3 であり、より好ましくは15kg/m3 ~70kg/m3 であり、さらに好ましくは20kg/m3 ~50kg/m3 であり、最も好ましくは20kg/m3 ~40kg/m3 である。密度が10kg/m3 よりも低いフェノールフォームは、強度が低く、運搬又は施工時にフォーム(発泡体)が破損する恐れがある。また、密度が低いと、気泡膜が薄くなる傾向がある。気泡膜が薄いと、フォーム(発泡体)中の発泡剤が空気と置換し易くなったり、発泡時に気泡膜が破れ易くなることから、高い独立気泡構造を得ることが困難となり、長期の断熱性能が低下する傾向がある。その一方で、密度が150kg/m3 を超えると、フェノール樹脂を始めとする固形成分由来の固体の熱伝導が大きくなるために、フェノールフォームの断熱性能が低下する傾向がある。
【実施例
【0057】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。なお、以下に示す百分率(%)及び部は、特に断りのない限り、何れも、質量基準にて示されるものである。
【0058】
-実施例1-
還流器、温度計及び撹拌機を備えた三つ口反応フラスコ内に、フェノール1600部、47%ホルマリン2282部及び50%水酸化ナトリウム水溶液41.6部を仕込み、80℃の温度下において70分間反応させた。次いで、40℃に冷却した後、50%パラトルエンスルホン酸水溶液で中和せしめ、その後、減圧・加熱下において、水分率:10%まで脱水濃縮することにより、液状のレゾール型フェノール樹脂を得た。この得られたフェノール樹脂は、粘度:10000mPa・s/25℃、数平均分子量:380、遊離フェノール:4.0%の特性を有するものであった。
【0059】
次いで、その得られた液状のレゾール型フェノール樹脂の100部に、整泡剤として、ひまし油エチレンオキサイド付加物(付加モル数22)の3部を加えて、混合し、均一なフェノール樹脂混合物を得た。
【0060】
更にその後、かかる得られたフェノール樹脂混合物の103部に対して、発泡剤として、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd、AGC株式会社製)の17部と、酸硬化剤として、パラトルエンスルホン酸:キシレンスルホン酸=2:1(質量比)の混合物の15部とを、撹拌、混合せしめることにより、フェノールフォーム製造用樹脂組成物である発泡性フェノール樹脂成形材料を調製した。
【0061】
そして、かくの如くして調製された発泡性フェノール樹脂成形材料を用い、それを、予め70~75℃に加熱されてなる、縦300mm、横300mm、厚み50mmの型枠内に注入した後、かかる型枠を70~75℃の乾燥機に収容して、10分間発泡硬化せしめ、更に70℃の温度で12時間、加熱炉内で加熱することにより、後硬化させて、フェノールフォーム(フェノール樹脂発泡体)を作製した。
【0062】
-実施例2-
実施例1において、酸硬化剤として、パラトルエンスルホン酸:キシレンスルホン酸=1:1(質量比)の混合物の15部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、フェノールフォームを作製した。
【0063】
-実施例3-
実施例1において、酸硬化剤として、キシレンスルホン酸の15部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、フェノールフォームを作製した。
【0064】
-実施例4-
実施例1において、発泡剤(HCFO-1224yd)の添加量を15部としたこと以外は、実施例1と同様にして、フェノールフォームを作製した。
【0065】
-実施例5-
実施例1において、発泡剤として、HCFO-1224ydの14部と、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロパン(HCFO-1233zd、Honeywell社製)の3部とを併用したこと以外は、実施例1と同様にして、フェノールフォームを作製した。
【0066】
-実施例6-
実施例1において、発泡剤として、HCFO-1224ydの11部とHCFO-1233zdの6部とを併用したこと以外は、実施例1と同様にして、フェノールフォームを作製した。
【0067】
-実施例7-
実施例1において、発泡剤として、HCFO-1224ydの13部と、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz、Chemours社製)の4部とを併用したこと以外は、実施例1と同様にして、フェノールフォームを作製した。
【0068】
-実施例8-
実施例1において、添加剤として尿素の5部を、フェノール樹脂混合物に添加したこと以外は、実施例1と同様にして、フェノールフォームを作製した。
【0069】
-比較例1-
実施例1において、発泡剤として、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)の17部に代えて、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)の15部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、フェノールフォームを作製した。
【0070】
-比較例2-
実施例1において、発泡剤として、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)の17部に代えて、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)の19部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、フェノールフォームを作製した。
【0071】
次いで、かくして得られた各種のフェノールフォーム(フェノール樹脂発泡体)を用いて、その密度、独立気泡率、平均気泡径、初期熱伝導率、熱伝導率の長期安定性、及び圧縮強さについて、それぞれ、以下の方法に従って測定乃至は評価し、それら得られた結果を、それぞれ、下記表1に示した。
【0072】
(1)密度の測定
JIS-A-9511(2017)における「6.6密度」の記載に従って、各フェノールフォームの密度を測定した。
【0073】
(2)独立気泡率の測定
ASTM-D2856によって、フェノールフォームサンプルの独立気泡率を測定した。
【0074】
(3)平均気泡径
フェノールフォームサンプルにおける厚み方向のほぼ中央部より試験片を切り出し、かかる試験片における厚み方向の切断面を50倍拡大で撮影した。撮影した画像に、長さ:9cmの直線を4本、引いた。この際、ボイド(2mm2 以上の空隙)を避けるように直線を引いた。各直線が横切った気泡の数(JIS-K-6400(2004)に規定されるセル数の測定法に準拠して測定される気泡の数)を、直線毎に計数し、直線1本当たりの平均値を求めた。気泡の平均値で1800μmを除し、求められた値を平均気泡径(μm)とした。
【0075】
(4)初期熱伝導率[20℃]の測定
縦200mm、横200mm、厚み50mmに切り出したフェノールフォームサンプルを用い、低温板10℃、高温板30℃に設定して、JIS-A-1412-2(1999)に規定の「熱流計法」に従い、熱伝導率測定装置:HC-074 304(英弘精機株式会社製)を使用して、測定した。なお、ここでは、フェノールフォームサンプルを、70℃の雰囲気下で4日間放置した後の熱伝導率を、初期熱伝導率[20℃]として、測定した。
【0076】
(5)熱伝導率の長期安定性の評価
ISO 11561 Annex Bに準拠し、建築物において発生し得る最高温度を70℃として、フェノールフォームサンプルを、70℃の雰囲気下で、25週間放置した後の熱伝導率を測定する方法を、熱伝導率の長期安定性を確認するための促進試験として採用し、その得られた熱伝導率に基づいて長期安定性を評価した。下記表1においては、促進試験後のフェノールフォームの熱伝導率を「促進試験後の熱伝導率[20℃]」として示している。
【0077】
(6)圧縮強さの測定
JIS-A-9511(2017)における「6.9圧縮強さ」により、フェノールフォームサンプルの圧縮強さを測定した。
【0078】
【表1】
【0079】
かかる表1の結果からも明らかなように、実施例1~9に係る各フェノールフォームは、何れも、初期熱伝導率が0.0170W/m・k以下であり、加えて、長期安定性を確認するための促進試験で得られた熱伝導率が0.0180W/m・k以下のものであって、優れた初期熱伝導率と共に、中長期に亘る熱伝導率の変化も低く、優れた熱伝導率を維持し得るものであることが認められる。また、実施例1~9に係る各フェノールフォームは、独立気泡率が90%以上であり、加えて圧縮強さは17.5N/cm2 以上であり、優れた圧縮強さを発揮するものであることが確認される。
【0080】
これに対して、特定の発泡剤(HCFO-1224yd)を全く使用していない比較例1、2に係る各フェノールフォームにあっては、実施例1~9に係る各フェノールフォームと比較すると、初期熱伝導率及び促進試験後の熱伝導率の何れも高く、断熱性能に劣っていることが認められ、また、圧縮強さも17.0N/cm2 以下であることから、実施例1~9に係る各フェノールフォームより劣っていることが認められるのである。