(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】油圧ショベル
(51)【国際特許分類】
E02F 3/43 20060101AFI20220915BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
E02F3/43 A
E02F3/43 M
E02F9/20 M
(21)【出願番号】P 2019176198
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】頴原 智里
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊憲
(72)【発明者】
【氏名】平松 秀文
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-169515(JP,A)
【文献】特開昭54-091903(JP,A)
【文献】特開2012-021290(JP,A)
【文献】特開平06-294150(JP,A)
【文献】特開2018-044414(JP,A)
【文献】特開2017-044027(JP,A)
【文献】特開2005-344482(JP,A)
【文献】特開2018-199989(JP,A)
【文献】特開2007-191283(JP,A)
【文献】特開平05-331882(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0116897(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/43
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な走行体と、
前記走行体の上側に旋回可能に設けられた旋回体と、
前記旋回体に連結され、バケットを有する作業装置と、
前記走行体に対する前記旋回体の旋回角
度を検出する旋回
角度センサと、
前記作業装置の姿勢を検出する姿勢検出器とを備えた油圧ショベルにおいて、
掘削物の積込位置を設定する積込位置設定装置と、
前記バケットの掘削位置を設定する掘削位置設定装置と、
前記旋回
角度センサにより検出された前記旋回体の旋回角
度と前記姿勢検出器により検出された前記作業装置の姿勢から前記バケットの位置を算出して、前記バケットの位置に応じて前記旋回体の旋回の速度を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記積込位置と前記掘削位置とに基づいて、旋回停止領域及び旋回減速領域からなる旋回制限領域を設定して、前記バケットの位置が前記旋回減速領域にある場合には、前記旋回体の旋回を減速させ、前記バケットの位置が前記旋回停止領域にある場合には、前記旋回体の旋回を停止させると共に
、前記旋回
角度センサにより検出された前記旋回角度から算出した前記旋回体の旋回速度に応じて、前記旋回停止領域と前記旋回減速領域との境界を更新することを特徴とする油圧ショベル。
【請求項2】
走行可能な走行体と、
前記走行体の上側に旋回可能に設けられた旋回体と、
前記旋回体に連結され、バケットを有する作業装置と、
前記走行体に対する前記旋回体の旋回速度を検出する旋回速度センサと、
前記作業装置の姿勢を検出する姿勢検出器とを備えた油圧ショベルにおいて、
掘削物の積込位置を設定する積込位置設定装置と、
前記バケットの掘削位置を設定する掘削位置設定装置と、
前記旋回速度センサにより検出された前記旋回速度から算出した前記旋回体の旋回角度と前記姿勢検出器により検出された前記作業装置の姿勢から前記バケットの位置を算出して、前記バケットの位置に応じて前記旋回体の旋回の速度を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記積込位置と前記掘削位置とに基づいて、旋回停止領域及び旋回減速領域からなる旋回制限領域を設定して、前記バケットの位置が前記旋回減速領域にある場合には、前記旋回体の旋回を減速させ、前記バケットの位置が前記旋回停止領域にある場合には、前記旋回体の旋回を停止させると共に、前記旋回速度センサにより検出された前記旋回体の旋回速度に応じて、前記旋回停止領域と前記旋回減速領域との境界を更新することを特徴とする油圧ショベル。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の油圧ショベルにおいて、
前記作業装置を支持する油圧シリンダの圧力を検出する圧力センサを更に備え、
前記コントローラは、前記圧力センサで検出された前記油圧シリンダの圧力から前記作業装置のモーメントを算出し、前記旋回体の旋回速度と前記作業装置のモーメントに応じて、前記旋回停止領域と前記旋回減速領域との境界を更新することを特徴とする油圧ショベル。
【請求項4】
請求項1
又は2に記載の油圧ショベルにおいて、
前記バケット内の掘削物の重量を検出する重量センサを更に備え、
前記コントローラは、前記重量センサで検出された前記バケット内の掘削物の重量と前記姿勢検出器により検出された前記作業装置の姿勢とから前記作業装置のモーメントを算出し、前記旋回体の旋回速度と前記作業装置のモーメントに応じて、前記旋回停止領域と前記旋回減速領域との境界を更新することを特徴とする油圧ショベル。
【請求項5】
請求項1
又は2に記載の油圧ショベルにおいて、
前記コントローラは、前記掘削位置から前記積込位置に向かって前記旋回減速領域の高さ範囲が徐々に増加するように、前記旋回減速領域を設定することを特徴とする油圧ショベル。
【請求項6】
請求項
5に記載の油圧ショベルにおいて、
前記コントローラは、前記掘削位置を基準として前記積込位置に向かって予め設定された所定の旋回角度だけ進んだ位置から、前記旋回減速領域を設定することを特徴とする油圧ショベル。
【請求項7】
請求項
5に記載の油圧ショベルにおいて、
前記コントローラは、前記旋回停止領域の高さ範囲が一定となるように、前記旋回停止領域を設定することを特徴とする油圧ショベル。
【請求項8】
請求項1
又は2に記載の油圧ショベルにおいて、
前記作業装置を支持する油圧シリンダの圧力を検出する圧力センサと、
操作装置による前記旋回体の旋回の指示を検出する旋回指示検出器とを更に備え、
前記掘削位置設定装置は、前記圧力センサで検出された前記油圧シリンダの圧力から前記作業装置のモーメントを算出し、前記姿勢検出器により検出された前記作業装置の姿勢と前記作業装置のモーメントとから前記バケット内の掘削物の重量を算出し、前記バケット内の掘削物の重量が予め設定された閾値以上である状態で、前記旋回指示検出器の検出結果に基づいて前記旋回体の旋回開始を検出したときに、前記コントローラで算出された前記バケットの位置を前記掘削位置として設定することを特徴とする油圧ショベル。
【請求項9】
請求項1
又は2に記載の油圧ショベルにおいて、
前記バケット内の掘削物の重量を検出する重量センサと、
操作装置による前記旋回体の旋回の指示を検出する旋回指示検出器とを更に備え、
前記掘削位置設定装置は、前記重量センサで検出された前記バケット内の掘削物の重量が予め設定された閾値以上である状態で、前記旋回指示検出器の検出結果に基づいて前記旋回体の旋回開始を検出したときに、前記コントローラで算出された前記バケットの位置を前記掘削位置として設定することを特徴とする油圧ショベル。
【請求項10】
請求項1
又は2に記載の油圧ショベルにおいて、
前記積込位置の設定を指示する設定指示器を更に備え、
前記積込位置設定装置は、前記設定指示器で指示されたときに、前記コントローラで算出された前記バケットの位置を前記積込位置として設定することを特徴とする油圧ショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削作業及び積込作業を行う油圧ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルは、走行可能な走行体と、走行体の上側に旋回可能に設けられた旋回体と、旋回体に連結された作業装置とを備える。作業装置は、例えば、旋回体の前部に回動可能に連結されたブームと、ブームの先端部に回動可能に連結されたアームと、アームの先端部に回動可能に連結されたバケットとを備える。ブーム、アーム、及びバケットは、ブームシリンダ、アームシリンダ、及びバケットシリンダの駆動によってそれぞれ回動する。
【0003】
また、油圧ショベルは、原動機(詳細には、エンジン又は電動モータ)によって駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプからブームシリンダ、アームシリンダ、及びバケットシリンダへの圧油の流れをそれぞれ制御する油圧パイロット方式のブーム制御弁、アーム制御弁、及びバケット制御弁とを備える。
【0004】
特許文献1は、油圧ショベルの作業装置と周囲の障害物との衝突を回避するために、作業装置の動作を制限する装置を開示する。この装置は、コントローラと、コントローラからの指令電流に応じてパイロット圧(油圧)を生成してブーム制御弁へ出力する一対の電磁比例弁と、コントローラからの指令電流に応じてパイロット圧を生成してアーム制御弁へ出力する一対の電磁比例弁と、コントローラからの指令電流に応じてパイロット圧を生成してバケット制御弁へ出力する一対の電磁比例弁とを備える。
【0005】
コントローラは、ブーム角度、アーム角度、及びバケット角度に基づいて作業装置の位置を算出する第1の機能と、モニタスイッチの操作時の作業装置の位置を用いて作業装置の危険域を設定する第2の機能と、作業装置の危険域を基準として作業装置の制限領域を設定する第3の機能と、作業装置が制限領域にある場合に作業装置の速度を制限するように上述した指令電流を制限する第4の機能を有する。第4の機能について詳しく説明すると、コントローラは、作業装置の位置と速度との関係であって、作業装置が危険域に近づくのに従って作業装置の速度が減少して最終的にゼロとなる減速パターンを記憶しており、この減速パターンに従って作業装置が危険域に近づくときの作業装置の速度を制限するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、油圧ショベルは、バケットで土砂などを掘削して、バケット内に掘削物を積載する掘削作業と、その後、バケットが上昇すると共に旋回体が旋回してバケットを運搬車両の荷台の上方に移動させ、バケットから運搬車両の荷台に掘削物を積み込む積込作業を行う。この積込作業において、旋回体が旋回するときに、バケットと運搬車両の荷台が衝突する可能性がある。そこで、バケットと運搬車両の荷台との衝突を回避するために、特許文献1に記載の技術を適用して、旋回体の旋回を制限する場合を想定する。
【0008】
この場合、制限領域は、旋回体の旋回を減速する減速領域と、旋回体の旋回を停止する停止領域とからなる。そして、特許文献1に記載の技術と同様、減速領域の範囲及び停止領域の範囲を固定するのであれば、旋回体の旋回速度が最大であるときの旋回停止角度(詳細には、旋回体の旋回を停止させる制御を開始してから実際に停止するまでに必要な旋回角度)を考慮して、停止領域の範囲を大きめに設定する必要がある。しかし、実際に旋回体の旋回速度が小さければ、旋回体の旋回を過剰に停止することになる。そのため、作業効率が低下する。
【0009】
本発明の目的は、作業効率の低下を防ぎつつ、バケットと運搬車両の荷台との衝突を回避することができる油圧ショベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、代表的な本発明は、走行可能な走行体と、前記走行体の上側に旋回可能に設けられた旋回体と、前記旋回体に連結され、バケットを有する作業装置と、前記走行体に対する前記旋回体の旋回角度を検出する旋回角度センサと、前記作業装置の姿勢を検出する姿勢検出器とを備えた油圧ショベルにおいて、掘削物の積込位置を設定する積込位置設定装置と、前記バケットの掘削位置を設定する掘削位置設定装置と、前記旋回角度センサにより検出された前記旋回体の旋回角度と前記姿勢検出器により検出された前記作業装置の姿勢から前記バケットの位置を算出して、前記バケットの位置に応じて前記旋回体の旋回の速度を制御するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記積込位置と前記掘削位置とに基づいて、旋回停止領域及び旋回減速領域からなる旋回制限領域を設定して、前記バケットの位置が前記旋回減速領域にある場合には、前記旋回体の旋回を減速させ、前記バケットの位置が前記旋回停止領域にある場合には、前記旋回体の旋回を停止させると共に、前記旋回角度センサにより検出された前記旋回角度から算出した前記旋回体の旋回速度に応じて、前記旋回停止領域と前記旋回減速領域との境界を更新する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業効率の低下を防ぎつつ、バケットと運搬車両の荷台との衝突を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態における油圧ショベルの構造を表す側面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態における油圧駆動装置の構成を表す概略図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態における衝突回避装置の構成を表すブロック図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態における旋回制限領域を表す斜視図及び旋回方向の展開図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態におけるコントローラの処理手順を表す図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態における衝突回避装置の構成を表すブロック図である。
【
図7】本発明の一変形例における旋回制限領域を表す斜視図及び展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1は、本実施形態における油圧ショベルの構造を表す側面図である。なお、以降、油圧ショベルのキャブに搭乗したオペレータの前側(
図1の右側)、後側(
図1の左側)、左側(
図1の紙面に対して奥側)、右側(
図1の紙面に対して手前側)を、単に前側、後側、左側、右側と称する。
【0015】
本実施形態の油圧ショベルは、走行可能な走行体1と、走行体1の上側に旋回可能に設けられた旋回体2と、旋回体2の前側に連結された作業装置3とを備える。走行体1は、左右の走行モータ4A、4B(後述の
図2参照)の駆動によって走行する。旋回体2は、旋回モータ5(後述の
図2参照)の駆動によって旋回する。
【0016】
作業装置3は、旋回体2の前部に上下方向に回動可能に連結されたブーム6と、ブーム6の先端部に上下方向に回動可能に連結されたアーム7と、アーム7の先端部に上下方向に回動可能に連結されたバケット8とを備える。ブーム6、アーム7、及びバケット8は、ブームシリンダ9、アームシリンダ10、及びバケットシリンダ11の駆動によってそれぞれ回動する。
【0017】
旋回体2の前部左側には、オペレータが搭乗するキャブ12が設けられている。キャブ12内には、オペレータが操作する複数の操作装置(詳細は後述)が設けられている。
【0018】
油圧ショベルは、上述した操作装置の操作に応じて油圧アクチュエータを駆動する油圧駆動装置を備える。この油圧駆動装置の構成を、
図2を用いて説明する。
図2は、本実施形態における油圧駆動装置の構成を表す概略図である。
【0019】
本実施形態の油圧駆動装置は、エンジン13と、エンジン13によって駆動される可変容量型の油圧ポンプ14A、14Bと、油圧ポンプ14A、14Bからの圧油によって駆動される複数の油圧アクチュエータ(詳細には、上述した走行モータ4A、4B、旋回モータ5、ブームシリンダ9、アームシリンダ10、及びバケットシリンダ11)と、油圧ポンプ14A、14Bから複数の油圧アクチュエータへの圧油の流れを制御するコントロールバルブ装置15と、コントロールバルブ装置15を操作する複数の操作装置(詳細には、走行操作装置16A、16B及び作業操作装置17A、17B)とを備える。
【0020】
走行操作装置16Aは、図示しないものの、前後方向に操作可能な操作レバーと、操作レバーの前側の操作量に応じて前走行パイロット圧(油圧)を生成して出力する左側走行パイロット弁と、操作レバーの後側の操作量に応じて後走行パイロット圧(油圧)を生成して出力する左側走行パイロット弁とを有する。
【0021】
同様に、走行操作装置16Bは、図示しないものの、前後方向に操作可能な操作レバーと、操作レバーの前側の操作量に応じて前走行パイロット圧(油圧)を生成して出力する右側走行パイロット弁と、操作レバーの後側の操作量に応じて後走行パイロット圧(油圧)を生成して出力する右側走行パイロット弁とを有する。
【0022】
作業操作装置17Aは、図示しないものの、左右方向及び前後方向に操作可能な操作レバーと、操作レバーの左側の操作量に応じてアームダンプパイロット圧(油圧)を生成して出力するアームパイロット弁と、操作レバーの右側の操作量に応じてアームクラウドパイロット圧(油圧)を生成して出力するアームパイロット弁と、操作レバーの前側の操作量に応じて右旋回パイロット圧(油圧)を生成して出力する旋回パイロット弁と、操作レバーの後側の操作量に応じて左旋回パイロット圧(油圧)を生成して出力する旋回パイロット弁とを有する。
【0023】
作業操作装置17Bは、図示しないものの、左右方向及び前後方向に操作可能な操作レバーと、操作レバーの左側の操作量に応じてバケットクラウドパイロット圧(油圧)を生成して出力するバケットパイロット弁と、操作レバーの右側の操作量に応じてバケットダンプパイロット圧(油圧)を生成して出力するバケットパイロット弁と、操作レバーの前側の操作量に応じてブーム下げパイロット圧(油圧)を生成して出力するブームパイロット弁と、操作レバーの後側の操作量に応じてブーム上げパイロット圧(油圧)を生成して出力するブームパイロット弁とを有する。
【0024】
コントロールバルブ装置15は、図示しないものの、油圧パイロット方式の左側走行制御弁、右側走行制御弁、アーム制御弁、旋回制御弁、バケット制御弁、及びブーム制御弁を備える。
【0025】
左側走行制御弁は、走行操作装置16Aからの前走行パイロット圧又は後走行パイロット圧によって切換えられ、油圧ポンプから左側の走行モータ4Aへの圧油の流れ(方向と流量)を制御する。これにより、左側の走行モータ4Aが前方向又は後方向に回転するようになっている。
【0026】
同様に、右側走行制御弁は、走行操作装置16Bからの前走行パイロット圧又は後走行パイロット圧によって切換えられ、油圧ポンプから右側の走行モータ4Bへの圧油の流れ(方向と流量)を制御する。これにより、右側の走行モータ4Bが前方向又は後方向に回転するようになっている。
【0027】
アーム制御弁は、作業操作装置17Aからのアームクラウドパイロット圧又はアームダンプパイロット圧によって切換えられ、油圧ポンプからアームシリンダ10への圧油の流れ(方向と流量)を制御する。これにより、アームシリンダ10が伸長又は縮短するようになっている。
【0028】
旋回制御弁は、作業操作装置17Aからの左旋回パイロット圧又は右旋回パイロット圧によって切換えられ、油圧ポンプから旋回モータ5への圧油の流れ(方向と流量)を制御する。これにより、旋回モータ5が一方向又は反対方向に回転するようになっている。
【0029】
バケット制御弁は、作業操作装置17Bからのバケットクラウドパイロット圧又はバケットダンプパイロット圧によって切換えられ、油圧ポンプからバケットシリンダ11への圧油の流れ(方向と流量)を制御する。これにより、バケットシリンダ11が伸長又は縮短するようになっている。
【0030】
ブーム制御弁は、作業操作装置17Bからのブーム上げパイロット圧又はブーム下げパイロット圧によって切換えられ、油圧ポンプからブームシリンダ9への圧油の流れ(方向と流量)を制御する。これにより、ブームシリンダ9が伸長又は縮短するようになっている。
【0031】
上述した油圧ショベルは、バケット8で土砂などを掘削して、バケット8内に掘削物を積載する掘削作業と、その後、バケット8が上昇すると共に旋回体2が旋回してバケット8を運搬車両100の荷台101(後述の
図4(a)参照)の上方に移動させ、バケット8から運搬車両100の荷台101に掘削物を積み込む積込作業を行う。この積込作業において、旋回体2が旋回するときに、バケット8と運搬車両100の荷台101が衝突する可能性がある。そこで、本実施形態の油圧ショベルは、バケット8と運搬車両100の荷台101との衝突を回避する装置を備える。この衝突回避装置の構成を、
図3を用いて説明する。
図3は、本実施形態における衝突回避装置の構成を表すブロック図である。
【0032】
本実施形態の衝突回避装置は、ブーム角度センサ20、アーム角度センサ21、バケット角度センサ22、シリンダ圧力センサ23A、23B、パイロット圧センサ24A、24B、旋回速度センサ25、設定スイッチ26、コントローラ27、及び電磁式の減圧弁28A、28Bを備える。
【0033】
ブーム角度センサ20は、ブーム6の基端部に取り付けられた角度センサであり、旋回体2に対するブーム6の回動角度を検出してコントローラ27へ出力する。アーム角度センサ21は、アーム7の基端部に取り付けられた角度センサであり、ブーム6に対するアーム7の回動角度を検出してコントローラ27へ出力する。バケット角度センサ22は、バケット8の基端部に取り付けられた角度センサであり、アーム7に対するバケット8の回動角度を検出してコントローラ27へ出力する。
【0034】
シリンダ圧力センサ23Aは、ブームシリンダ9のボトム側油室に設けられた圧力センサであり、ブームシリンダ9のボトム側圧力を検出してコントローラ27へ出力する。シリンダ圧力センサ23Bは、ブームシリンダ9のロッド側油室に設けられた圧力センサであり、ブームシリンダ9のロッド側圧力を検出してコントローラ27へ出力する。
【0035】
パイロット圧センサ24A又は24Bは、上述の
図2で示すように、作業操作装置17Aの旋回パイロット弁とコントロールバルブ装置15の旋回制御弁の間に設けられた圧力センサである。パイロット圧センサ24A又は24Bは、旋回パイロット圧を検出してコントローラ27へ出力する。旋回速度センサ25は、旋回体2の旋回速度を検出してコントローラ27へ出力する。
【0036】
設定スイッチ26は、キャブ12内に設けられており、オペレータの操作によって掘削物の積込位置P1(詳細には、後述の
図4(a)で示すように、運搬車両100の荷台101の上端であってバケット8に最も近い部分の位置)の設定を指示する指示信号をコントローラ27へ出力する。
【0037】
減圧弁28A又は28Bは、上述の
図2で示すように、作業操作装置17Aの旋回パイロット弁とコントロールバルブ装置15の旋回制御弁の間に設けられている。
【0038】
コントローラ27は、図示しないものの、プログラムに基づいて演算処理や制御処理を実行する制御部(例えばCPU)と、プログラムや処理結果を記憶する記憶部(例えばROM、RAM)とを有する。コントローラ27は、機能的構成として、バケット位置算出部30、モーメント算出部31、バケット積載量算出部32、旋回制限領域設定部33、及び旋回制限制御部34を有する。
【0039】
コントローラ27のバケット位置算出部30は、旋回速度センサ25で検出された旋回体2の旋回速度を積分することにより、走行体1に対する旋回体2の旋回角度を算出する。そして、算出した旋回体2の旋回角度とブーム角度センサ20、アーム角度センサ21、及びバケット角度センサ22で検出されたブーム6、アーム7、及びバケット8の回動角度に基づいて、バケット8の位置(詳細には、バケット8の下端の位置)を算出する。
【0040】
コントローラ27のモーメント算出部31は、シリンダ圧力センサ23A、23Bで検出されたブームシリンダ9のボトム側圧力及びロッド側圧力に基づいて、作業装置3のモーメントを算出する。コントローラ27のバケット積載量算出部32は、モーメント算出部31で算出された作業装置3のモーメントとブーム角度センサ20、アーム角度センサ21、及びバケット角度センサ22で検出されたブーム6、アーム7、及びバケット8の回動角度に基づいて、バケット8内の掘削物の重量(積載量)を算出する。
【0041】
コントローラ27の旋回制限領域設定部33は、設定スイッチ26からの指示信号が入力されたときに、バケット位置算出部30で算出されたバケット8の位置を、積込位置P1として設定して記憶する。
【0042】
コントローラ27の旋回制限領域設定部33は、バケット積載量算出部32で算出されたバケット8内の掘削物の重量が予め設定された閾値以上であるかどうかを判定する。また、パイロット圧センサ24A、24Bで検出された旋回パイロット圧の両方が予め設定された閾値未満である状態から、一方の旋回パイロット圧が閾値以上となるかどうかを判定することにより、旋回体2の旋回開始を検出する。そして、バケット8内の掘削物の重量が閾値以上である状態で旋回体2の旋回開始を検出したときに、バケット位置算出部30で算出されたバケット8の位置を、バケット8の掘削位置P2(別の言い方をすれば、掘削作業の終了位置、又は積込作業の開始位置)として設定して記憶する。
【0043】
コントローラ27の旋回制限領域設定部33は、掘削位置P2を設定した直後に、積込位置P1と掘削位置P2と旋回速度センサ25で検出された旋回体2の旋回速度に基づいて、旋回停止領域A1及び旋回減速領域A2からなる旋回制限領域を設定して記憶する。また、所定の周期毎に、旋回速度センサ25で検出された旋回体2の旋回速度に応じて、旋回停止領域A1と旋回減速領域A2との境界を更新する(詳細は後述)。
【0044】
コントローラ27の旋回制限制御部34は、バケット位置算出部30で算出されたバケット8の位置が旋回減速領域A2及び旋回停止領域A1にない場合、減圧弁28A、28Bを全開状態に制御する。
【0045】
コントローラ27の旋回制限制御部34は、バケット位置算出部30で算出されたバケット8の位置が旋回減速領域A2にある場合に、減圧弁28A、28Bのうちの一方を絞り状態に制御して、積込位置P1に近づく方向の旋回体2の旋回を減速させる。絞り状態における減圧弁の開口率は、旋回体2の旋回方向におけるバケット8の位置にかかわらず、一定値であってもよいし、バケット8の位置が旋回停止領域A1に近づくのに従って、減少してもよい。
【0046】
コントローラ27の旋回制限制御部34は、バケット位置算出部30で算出されたバケット8の位置が旋回停止領域A1にある場合に、減圧弁28A、28Bの一方を全閉状態に制御して、積込位置P1に近づく方向の旋回体2の旋回を停止させる。
【0047】
次に、旋回停止領域A1と旋回減速領域A2の設定方法の具体例を、
図4(a)及び
図4(b)を用いて説明する。
図4(a)及び
図4(b)は、本実施形態における旋回制限領域を表す斜視図及び旋回方向の展開図である。
【0048】
コントローラ27の旋回制限領域設定部33は、旋回体2の同一の旋回半径方向にて掘削位置P2を位置P2’に水平移動して、旋回体2の旋回中心軸から積込位置P1までの水平距離と、旋回体2の旋回中心軸から位置P2’までの水平距離が同じとなるように設定する。
【0049】
旋回制限領域設定部33は、旋回体2の旋回速度に対応する旋回停止角度(詳細には、旋回体2の旋回を停止させる制御を開始してから実際に停止するまでに必要な旋回角度)を予め記憶しており、これを用いて旋回速度センサ25で検出された旋回体2の旋回速度から旋回停止角度を算出する。そして、旋回体2の旋回中心軸を中心として積込位置P1を通る水平円周上で、積込位置P1を基準として位置P2’側に向かって旋回停止角度だけ進んだ位置P3を設定する。
【0050】
旋回制限領域設定部33は、積込位置P1に対して旋回体2の旋回半径方向が同じ、且つ位置P2、P2’に対して高さが同じである位置P4を設定する。また、位置P3に対して旋回体2の旋回半径方向が同じ、且つ位置P2、P2’、P4に対して高さが同じである位置P5を設定する。
【0051】
旋回制限領域設定部33は、積込位置P1と位置P3を旋回体2の旋回方向の曲線で結び、位置P4と位置P5を旋回体2の旋回方向の曲線で結び、積込位置P1と位置P4を高さ方向の直線で結び、位置P3と位置P5を高さ方向の直線で結び、旋回体2の旋回中心軸上の予め定められた旋回中心点(図示せず)と位置P1、P3、P4、P5のそれぞれを直線で結ぶことにより、旋回停止領域A1を設定する。これにより、旋回体2の旋回方向における位置にかかわらず、旋回停止領域A1の高さ範囲が一定となるように設定される。
【0052】
旋回制限領域設定部33は、位置P3と位置P2’を旋回体2の旋回方向の曲線で結び、位置P5と位置P2’を旋回体2の旋回方向の曲線で結び、旋回中心点と位置P2’、P3、P5のそれぞれを直線で結ぶことにより、旋回減速領域A2を設定する。これにより、掘削位置P2から積込位置P1に向かって旋回減速領域A2の高さ範囲が徐々に増加するように設定される。
【0053】
なお、所定の周期毎に旋回速度センサ25で検出された旋回体2の旋回速度が増加すれば、旋回停止角度も増加するため、旋回停止領域A1と旋回減速領域A2との境界(すなわち、位置P3、P5)が掘削位置P2側に移動する。また、所定の周期毎に旋回速度センサ25で検出された旋回体2の旋回速度が減少すれば、旋回停止角度も減少するため、旋回停止領域A1と旋回減速領域A2との境界(すなわち、位置P3、P5)が積込位置P1側に移動する。
【0054】
次に、本実施形態におけるコントローラの処理内容を、
図5を用いて説明する。
図5は、本実施形態におけるコントローラの処理手順を表すフローチャートである。なお、この
図5のステップS1の前に、コントローラ27の旋回制限領域設定部33は、積込位置P1を設定して記憶したものとして説明する。
【0055】
ステップS1にて、コントローラ27の旋回制限領域設定部33は、バケット積載量算出部32で算出されたバケット8内の掘削物の重量が閾値以上であるかどうかを判定し、ステップS2にて、旋回制限領域設定部33は、旋回体2の旋回開始を検出したかどうかを判定する。バケット積載量算出部32で算出されたバケット8内の掘削物の重量が閾値未満であれば、ステップS1の判定がNOとなって、その判定が繰り返される。また、旋回体2の旋回開始を検出しなければ、ステップS2の判定がNOとなって、ステップS1に戻る。
【0056】
バケット8内の掘削物の重量が閾値以上である状態で旋回体2の旋回開始を検出すれば、ステップS1及びS2の判定がYESとなって、ステップS3に進む。ステップS3にて、旋回制限領域設定部33は、バケット8内の掘削物の重量が閾値以上である状態で旋回体2の旋回開始を検出したときに、バケット位置算出部30で算出されたバケット8の位置を、掘削位置P2として設定して記憶する。そして、ステップS4に進み、旋回制限領域設定部33は、積込位置P1と掘削位置P2と予め設定された所定の旋回速度に基づいて、旋回体2の旋回速度旋回停止領域A1及び旋回減速領域A2からなる旋回制限領域を仮設定する。そして、旋回速度センサ25で検出された旋回体2の旋回速度に応じて、旋回停止領域A1と旋回減速領域A2との境界を更新する。
【0057】
その後、ステップS5に進み、コントローラ27の旋回制限制御部34は、バケット位置算出部30で算出されたバケット8の位置が旋回減速領域A2にあるかどうかを判定する。バケット8の位置が旋回減速領域A2にない場合、ステップS5の判定がNOとなって、ステップS6に進む。ステップS6にて、旋回制限制御部34は、バケット位置算出部30で算出されたバケット8の位置が旋回停止領域A1にあるかどうかを判定する。バケット8の位置が旋回停止領域A1にない場合、ステップS6の判定がNOとなって、ステップS7に進む。ステップS7にて、旋回制限制御部34は、減圧弁28A、28Bを全開状態に制御する。
【0058】
ステップS5にてバケット8の位置が旋回減速領域A2にある場合、ステップS5の判定がYESとなって、ステップS8に進む。ステップS8にて、旋回制限制御部34は、減圧弁28A、28Bのうちの一方を絞り状態に制御して、積込位置P1に近づく方向の旋回体2の旋回を減速させる。ステップS6にてバケット8の位置が旋回停止領域A1にある場合、ステップS6の判定がYESとなって、ステップS9に進む。ステップS9にて、旋回制限制御部34は、減圧弁28A、28Bのうちの一方を全閉状態に制御して、積込位置P1に近づく方向の旋回体2の旋回を停止させる。したがって、バケット8と運搬車両100の荷台101との衝突を回避することができる。
【0059】
ステップS7、S8、又はS9の後、ステップS10に進む。ステップS10にて、コントローラ27の旋回制限領域設定部33は、バケット積載量算出部32で算出されたバケット8内の掘削物の重量が閾値未満であるかどうかを判定する。すなわち、積込作業が完了したかどうかを判定する。
【0060】
ステップS10にてバケット積載量算出部32で算出されたバケット8内の掘削物の重量が閾値以上である場合(すなわち、積込作業が完了していない場合)、ステップS10の判定がNOとなって、ステップS4に戻る。ステップS4にて、旋回制限領域設定部33は、旋回速度センサ25で検出された旋回体2の旋回速度に応じて、旋回停止領域A1と旋回減速領域A2との境界を更新する。
【0061】
ステップS10にてバケット積載量算出部32で算出されたバケット8内の掘削物の重量が閾値未満である場合(すなわち、積込作業が完了した場合)、ステップS10の判定がNOとなって、ステップS1に戻る。
【0062】
以上のようにして、本実施形態では、バケット8と運搬車両100の荷台101との衝突を回避することができる。また、旋回体2の旋回速度に応じて旋回停止領域A1と旋回減速領域A2との境界を更新するので、その境界を固定する場合とは異なり、旋回体2の旋回を過剰に停止させることがない。したがって、作業効率の低下を防ぐことができる。
【0063】
また、本実施形態では、掘削位置P2から積込位置P1に向かって旋回減速領域A2の高さ範囲が徐々に増加するように設定されている。これにより、旋回減速領域の高さ範囲が一定となるように設定された場合とは異なり、バケット8の上昇と旋回体2の旋回を同時に行う複合操作を行っても、旋回体2の旋回を過剰に減速させることがない。したがって、作業効率の低下を防ぐことができる。
【0064】
なお、上記において、ブーム角度センサ20、アーム角度センサ21、バケット角度センサ22は、特許請求の範囲に記載の作業装置の姿勢を検出する姿勢検出器を構成する。また、シリンダ圧力センサ23A、23Bは、作業装置を支持する油圧シリンダの圧力を検出する圧力センサを構成する。
【0065】
また、設定スイッチ26は、積込位置の設定を指示する設定指示器を構成する。また、コントローラ27の旋回制限領域設定部33の一機能は、掘削物の積込位置を設定する積込位置設定装置を構成し、且つ、設定指示器で指示されたときに、コントローラで算出されたバケットの位置を積込位置として設定する積込位置設定装置を構成する。
【0066】
また、パイロット圧センサ24A、24Bは、操作装置による旋回体の旋回の指示を検出する旋回指示検出器を構成する。また、コントローラ27の旋回制限領域設定部33の一機能は、バケットの掘削位置を設定する掘削位置設定装置を構成し、且つ、圧力センサで検出された油圧シリンダの圧力から作業装置のモーメントを算出し、姿勢検出器により検出された作業装置の姿勢と作業装置のモーメントとからバケット内の掘削物の重量を算出し、バケット内の掘削物の重量が予め設定された閾値以上である状態で、旋回指示検出器の検出結果に基づいて旋回体の旋回開始を検出したときに、コントローラで算出されたバケットの位置を掘削位置として設定する掘削位置設定装置を構成する。
【0067】
なお、第1の実施形態において、油圧ショベルは、シリンダ圧力センサ23A、23Bを備え、コントローラ27は、シリンダ圧力センサ23A、23Bの検出結果に基づいて作業装置3のモーメントを算出するモーメント算出部31と、作業装置3のモーメント等に基づいてバケット8内の掘削物の重量を算出するバケット積載量算出部32とを有する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で変形が可能である。油圧ショベルは、シリンダ圧力センサ23A、23Bとコントローラ27のモーメント算出部31及びバケット積載量算出部32に代えて、例えば、バケット8内の掘削物の重量を検出する重量センサを備えてもよい。この場合、コントローラ27の旋回制限領域設定部33は、重量センサで検出されたバケット8内の掘削物の重量が予め設定された閾値以上である状態で、パイロット圧センサ24A、24Bの検出結果に基づいて旋回体2の旋回開始を検出したときに、コントローラ27のバケット位置算出部30で算出されたバケット8の位置を掘削位置P2として設定すればよい。
【0068】
また、第1の実施形態において、コントローラ27の旋回制限領域設定部33は、バケット8内の掘削物の重量が予め設定された閾値以上である状態で、パイロット圧センサ24A、24Bの検出結果に基づいて旋回体2の旋回開始を検出したときに、コントローラ27のバケット位置算出部30で算出されたバケット8の位置を掘削位置P2として設定する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で変形が可能である。コントローラ27の旋回制限領域設定部33は、設定スイッチで掘削位置の設定が指示されたときに、コントローラ27のバケット位置算出部30で算出されたバケット8の位置を掘削位置P2として設定してもよい。
【0069】
本発明の第2の実施形態を、
図6を用いて説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同等の部分は、同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0070】
図6は、本実施形態における衝突回避装置の構成を表すブロック図である。
【0071】
本実施形態のコントローラ27の旋回制限領域設定部33Aは、所定の周期毎に、旋回速度センサ25で検出された旋回体2の旋回速度とモーメント算出部31で算出された作業装置3のモーメントに応じて、旋回停止領域A1と旋回減速領域A2との境界を更新する。
【0072】
詳しく説明すると、旋回制限領域設定部33Aは、旋回体2の旋回速度及び作業装置3のモーメントに対応する旋回停止角度を予め記憶しており、これを用いて旋回速度センサ25で検出された旋回体2の旋回速度とモーメント算出部31で算出された作業装置3のモーメントから旋回停止角度を算出する。そして、第1の実施形態と同様、この旋回停止角度に基づいて、旋回停止領域A1と旋回減速領域A2との境界(すなわち、上述の
図4(a)及び
図4(b)で示す位置P3、P5)を更新する。
【0073】
このような本実施形態でも、第1の実施形態と同様、バケット8と運搬車両100の荷台101との衝突を回避することができる。また、本実施形態では、旋回体2の旋回速度だけでなく、作業装置3のモーメントに応じて、旋回停止領域A1と旋回減速領域A2との境界を更新するので、作業効率の低下を更に防ぐことができる。
【0074】
なお、第2の実施形態において、油圧ショベルは、シリンダ圧力センサ23A、23Bを備え、コントローラ27は、シリンダ圧力センサ23A、23Bの検出結果に基づいて作業装置3のモーメントを算出するモーメント算出部31と、作業装置3のモーメント等に基づいてバケット8内の掘削物の重量を算出するバケット積載量算出部32とを有する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で変形が可能である。油圧ショベルは、シリンダ圧力センサ23A、23Bとコントローラ27のバケット積載量算出部32に代えて、例えば、バケット8内の掘削物の重量を検出する重量センサを備えてもよい。この場合、コントローラ27のモーメント算出部は、ブーム角度センサ20、アーム角度センサ21、バケット角度センサ22、及び重量センサの検出結果に基づいて作業装置3のモーメントを算出すればよい。
【0075】
また、第1及び第2の実施形態において、コントローラ27の旋回制限領域設定部33は、掘削位置P2を含むように旋回減速領域A2を設定した場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で変形が可能である。例えば
図7で示す変形例のように、掘削位置Pを基準として、予め設定された所定の旋回角度を含まず、積込位置P1に向かって所定の旋回角度だけ進んだ位置P6、P7から旋回減速領域A2を設定してもよい。
【0076】
また、第1及び第2の実施形態において、油圧ショベルは、ブーム角度センサ20、アーム角度センサ21、及びバケット角度センサ22を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で変形が可能である。油圧ショベルは、例えば、ブーム角度センサ20に代えて、ブームシリンダ9のストロークを検出する変位センサを備えてもよい。また、油圧ショベルは、例えば、アーム角度センサ21に代えて、アームシリンダ10のストロークを検出する変位センサを備えてもよい。また、油圧ショベルは、例えば、バケット角度センサ22に代えて、バケットシリンダ11のストロークを検出する変位センサを備えてもよい。
【0077】
また、第1及び第2の実施形態において、油圧ショベルは、旋回体2の旋回速度を検出する旋回速度センサ25を備え、コントローラ27は、旋回速度センサ25で検出された旋回体2の旋回速度を積分することにより、走行体1に対する旋回体2の旋回角度を算出する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で変形が可能である。油圧ショベルは、例えば、旋回速度センサ25に代えて、走行体1に対する旋回体2の旋回角度を検出する旋回角度センサを備え、コントローラ27は、旋回角度センサで検出された旋回体2の旋回角度を微分することにより、旋回体2の旋回速度を算出してもよい。
【0078】
また、第1及び第2の実施形態において、油圧ショベルは、操作レバーの操作によって作動する機械式の旋回パイロット弁を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で変形が可能である。油圧ショベルは、例えば、操作レバーの操作量を検出してコントローラへ出力するポテンションメータと、操作レバーの操作量に応じてコントローラで生成された指令電流によって作動する電磁式の旋回パイロット弁とを備えてもよい。この場合、ポテンションメータがあるため、パイロット圧センサ24A、24Bが不要となる。また、減圧弁28A、28Bが不要となり、コントローラは、旋回体2の旋回を減速又は停止させるために、前述した指令電流を制限すればよい。
【符号の説明】
【0079】
1 走行体
2 旋回体
3 作業装置
8 バケット
17A、17B 作業操作装置
20 ブーム角度センサ
21 アーム角度センサ
22 バケット角度センサ
23A、23B シリンダ圧力センサ
24A、24B パイロット圧センサ
25 旋回速度センサ
26 設定スイッチ
27 コントローラ
28A、28B 減圧弁
30 バケット位置算出部
31 モーメント算出部
32 バケット積載量算出部
33、33A 旋回制限領域設定部
34 旋回制限制御部