(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】カップホルダ
(51)【国際特許分類】
B60N 3/10 20060101AFI20220915BHJP
B60R 7/04 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B60N3/10 A
B60R7/04 C
(21)【出願番号】P 2019183862
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 康司
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-029304(JP,A)
【文献】特開2013-208961(JP,A)
【文献】特開2017-100725(JP,A)
【文献】特開2003-341680(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0274808(US,A1)
【文献】特開2011-111073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/10
B60R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を保持するためのカップホルダであって、
前記容器を収容する凹部及び前記凹部に連通して上下に延在するアーム受容溝を画定するホルダ本体と、
前記アーム受容溝内に部分的に受容され、上端部に於いて前記ホルダ本体に支持されるアッパアーム片、前記アーム受容溝内に部分的に受容され、下端部に於いて前記ホルダ本体に上下に変位可能に支持されたロアアーム片、並びに前記アッパアーム片の下端部及び前記ロアアーム片の上端部間にヒンジ結合部を形成する薄肉部を有することにより、前記ヒンジ結合部が、前記凹部内に突入した初期位置と、前記初期位置よりも外方に位置する最拡位置との間で変位可能であるようにされた少なくとも1つのアームと、
前記アームを前記初期位置に向けて付勢するばねとを備えることを特徴とするカップホルダ。
【請求項2】
前記ヒンジ結合部が、前記アッパアーム片の前記下端部及び/又は前記ロアアーム片の前記上端部に、前記ヒンジ結合部の側方にて前記ヒンジ結合部を超えて内方に膨出する膨出部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカップホルダ。
【請求項3】
前記ヒンジ結合部及び前記膨出部の一方は、左右に互いに離間するように1対設けられ、
前記ヒンジ結合部及び前記膨出部の他方は、1対の前記一方の間に配置されたことを特徴とする請求項2に記載のカップホルダ。
【請求項4】
前記アッパアーム片の前記上端部が、前記アーム受容溝を画定する1対の側面に対して、回動可能にかつ内外方向に変位可能にピンスロット係合部を介して支持され、
前記ばねが、前記アッパアーム片を、その上端部が内方に変位し、その下端部が内方に変位する向きに回動させる付勢力を発生するべく、前記ピンスロット係合部に於ける第1ガイドピンに巻回され、前記アッパアーム片の前記上端部に係合された一端及び前記ホルダ本体に係合された他端を有するねじりコイルばねを含むことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のカップホルダ。
【請求項5】
前記ピンスロット係合部が、前記アーム受容溝を画定する前記1対の側面から同軸的に突出する1対の前記第1ガイドピンと、前記第1ガイドピンを受容するべく前記アッパアーム片の側部のそれぞれに設けられたガイドスロットを含み、前記ガイドスロットが内外方向に延在する第1スロット部と、前記第1スロット部の中間部から、前記アッパアーム片の上端に向けて延出する第2スロット部とを含むことを特徴とする請求項4に記載のカップホルダ。
【請求項6】
前記ロアアーム片の前記下端部が、左右に突出する1対の第2ガイドピンを有し、前記アーム受容溝を画定する前記1対の側面に前記第2ガイドピンを回動可能かつ上下に変位可能に受容するガイド溝が形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のカップホルダ。
【請求項7】
前記アーム受容溝を画定する前記1対の側面間の間隔が下方に向けて狭まるように、該1対の側面がテーパ面として形成され、
前記アーム受容溝の上端が、前記アーム受容溝を画定する前記1対の側面間の間隔が1対の前記第2ガイドピンの先端間の距離に等しくなる位置又はその上方に位置することを特徴とする請求項6に記載のカップホルダ。
【請求項8】
前記アッパアーム片は、内方を向く主壁と、前記主壁の両側縁から外方に延出する1対の側壁とを含むことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載のカップホルダ。
【請求項9】
前記アッパアーム片の前記側壁に、前記ロアアーム片が係止されて前記初期位置を規定するストッパが形成されていることを特徴とする請求項8に記載のカップホルダ。
【請求項10】
前記アームは樹脂を素材とする一体成形品からなることを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載のカップホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、容器を保持するカップホルダ、特に、車両等の乗物の室内に設置されて飲料容器を保持するカップホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車室内に設置されるカップホルダについては、様々なものが公知となっている。例えば、特許文献1に記載のカップホルダは、ホルダ本体と、容器(カップ)の側面を支持するアーム状の支持部材とを備える。支持部材は、互いにヒンジ結合された第一支持片と第二支持片とを備え、ヒンジ結合部に於いて容器を支持する。上側に配置された第一支持片の上端部は、ホルダ本体に回転可能に支持され、下側に配置された第二支持片の下端部は、ホルダ本体の内側面に回転可能かつ摺動可能に当接している。ヒンジ結合は、第二支持片の上端部に設けられた軸体が第一支持片の下端部に設けられた軸受に保持されることによって構成される。容器の挿入時は、容器の底部の縁が第一支持片を摺動した後、容器の側面がヒンジ結合部を摺動する。容器の引き抜き時は、容器の側面がヒンジ結合部を摺動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のカップホルダでは、ヒンジ結合部が容器を支持するため、軸体及び軸受に液体やごみが付着して作動不良や異音を発生させるおそれがあった。また、側面に凹みを有する容器をカップホルダから引き抜く時、ヒンジ結合部が容器の凹んだ部分に引っかかり、容器をスムーズに取り出せないおそれがあった。さらに、支持部材の部品点数が多いため、製造コストが高かった。
【0005】
このような問題に鑑み、本発明は、液体やごみの付着による作動不良や異音の発生を防止できるカップホルダを提供することを目的とする。また、本発明の少なくともいくつかの実施形態は、側面に凹みのある容器でもスムーズに引き抜くことができるカップホルダを提供することを目的とする。また、本発明の少なくともいくつかの実施形態は、製造コストが抑制されたカップホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、容器を保持するためのカップホルダ(1)であって、前記容器を収容する凹部(8)及び前記凹部に連通して上下に延在するアーム受容溝(9)を画定するホルダ本体(2)と、前記アーム受容溝(9)内に部分的に受容され、上端部に於いて前記ホルダ本体(2)に支持されるアッパアーム片(10)、前記アーム受容溝(9)内に部分的に受容され、下端部に於いて前記ホルダ本体(2)に上下に変位可能に支持されたロアアーム片(11)、並びに前記アッパアーム片(10)の下端部及び前記ロアアーム片(11)の上端部間にヒンジ結合部(12)を形成する薄肉部を有することにより、前記ヒンジ結合部(12)が、前記凹部(8)内に突入した初期位置と、前記初期位置よりも外方に位置する最拡位置との間で変位可能であるようにされた少なくとも1つのアーム(3)と、前記アーム(3)を前記初期位置に向けて付勢するばね(4)とを備えることを特徴とする。ここで、アームに関する内外方向は、保持するべき容器に対して近づく方向を内方、遠ざかる方向を外方とする。
【0007】
この構成によれば、ヒンジ結合部が薄肉ヒンジによって構成されるため、ヒンジ結合部に液体やごみが付着しても作動不良や異音が生じない。
【0008】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成に於いて、前記ヒンジ結合部(12)が、前記アッパアーム片(10)の前記下端部及び/又は前記ロアアーム片(11)の前記上端部に、前記ヒンジ結合部(12)の側方にて前記ヒンジ結合部(12)を超えて内方に膨出する膨出部(16)が設けられていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、膨出部が容器に接触して、ヒンジ結合部は容器に接触しないため、ヒンジ結合部が保護されてアームの耐久性が向上する。
【0010】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成に於いて、前記ヒンジ結合部(12)及び前記膨出部(16)の一方は、左右に互いに離間するように1対設けられ、前記ヒンジ結合部(12)及び前記膨出部(16)の他方は、1対の前記一方の間に配置されたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、容器に接触する膨出部の面積が小さくなるため、容器の挿入及び引き抜きがスムーズになる。
【0012】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかに於いて、前記アッパアーム片(10)の前記上端部が、前記アーム受容溝を画定する1対の側面(20)に対して、回動可能にかつ内外方向に変位可能にピンスロット係合部(22)を介して支持され、前記ばね(4)が、前記アッパアーム片(10)を、その上端部が内方に変位し、その下端部が内方に変位する向きに回動させる付勢力を発生するべく、前記ピンスロット係合部(22)に於ける第1ガイドピン(21)に巻回され、前記アッパアーム片(10)の前記上端部に係合された一端及び前記ホルダ本体(2)に係合された他端を有するねじりコイルばねを含むことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、容器の引き抜き時に、膨出部に斜め上外方に向けた力が加わっても、アッパアーム片が内外方向の外方に変位するため、容器が膨出部に引っかからず、スムーズに容器を引き抜くことができる。
【0014】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成に於いて、前記ピンスロット係合部(22)が、前記アーム受容溝(9)を画定する前記1対の側面(20)から同軸的に突出する1対の前記第1ガイドピン(21)と、前記第1ガイドピン(21)を受容するべく前記アッパアーム片(10)の側部(18)のそれぞれに設けられたガイドスロット(19)を含み、前記ガイドスロット(19)が内外方向に延在する第1スロット部(19a)と、前記第1スロット部(19a)の中間部から、前記アッパアーム片(10)の上端に向けて延出する第2スロット部(19b)とを含むことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、第2スロット部を介して第1スロット部に第1ガイドピンを挿入できるため、アームのホルダ本体への組み付けが容易になる。
【0016】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記の第4又は第5の構成に於いて、前記ロアアーム片(11)の前記下端部が、左右に突出する1対の第2ガイドピン(27)を有し、前記アーム受容溝(9)を画定する前記1対の側面(20)に前記第2ガイドピン(27)を回動可能かつ上下に変位可能に受容するガイド溝(28)が形成されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、ロアアーム片の下端部がガイド溝に受容されてホルダ本体の外方のスペースに突入しないため、カップホルダの設置スペースを小さくできる。また、第2ガイドピンが回動可能かつ上下に変位可能にガイド溝に受容されるため、容器の引き抜き時に膨出部に斜め上外方に向けた力が加わっても、ロアアーム片が第2ガイドピンを軸に回動できるため、容器が膨出部に引っかからず、スムーズに容器を引き抜くことができる。
【0018】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成に於いて、前記アーム受容溝(9)を画定する前記1対の側面(20)間の間隔が下方に向けて狭まるように、該1対の側面(20)がテーパ面として形成され、前記アーム受容溝(9)の上端が、前記アーム受容溝(9)を画定する前記1対の側面(20)間の間隔が1対の前記第2ガイドピン(27)の先端間の距離に等しくなる位置又はその上方に位置することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、アーム受容溝に第2ガイドピンの先端間距離よりも広い幅を有する部分があるため、その部分から第2ガイドピンを差し込むことにより、アームを容易にホルダ本体に組み付けることができる。
【0020】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかに於いて、前記アッパアーム片(10)は、内方を向く主壁(14)と、前記主壁(14)の両側縁から外方に延出する1対の側壁(15)とを含むことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、1対の側壁によってアッパアーム片の変形が抑制され、アームが安定して確実に作動する。
【0022】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成に於いて、前記アッパアーム片(10)の前記側壁(15)に、前記ロアアーム片(11)が係止されて前記初期位置を規定するストッパ(23)が形成されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、ストッパによってヒンジ結合部の過大な変形が抑制される。
【0024】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかに於いて、前記アームは樹脂を素材とする一体成形品からなることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、部品点数が少なくなり、製造コストを抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、液体やごみの付着による作動不良や異音の発生が防止されたカップホルダを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】実施形態に係るカップホルダを示す部分斜視図
【
図3】実施形態に係るカップホルダの外面の一部を示す図
【
図4】実施形態に係るカップホルダのアームを示す斜視図
【
図5】実施形態に係るカップホルダのアームを外方から見た図
【
図6】実施形態に係るカップホルダにおけるアームの取付状態を示す断面図
【
図7】実施形態に係るカップホルダの容器挿入時を示す説明図
【
図8】実施形態に係るカップホルダの容器保持時を示す説明図
【
図9】実施形態に係るカップホルダの容器引き抜き時を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は実施形態に係るカップホルダ1の平面図であり、
図2はカップホルダ1の内側の一部を示す斜視図であり、
図3はカップホルダ1の外側の一部を示す斜め水平方向(後述するアーム3の外側)から見た図である。
【0029】
カップホルダ1は、飲料容器等の容器を保持するために使用されるものであって、ホルダ本体2と、ホルダ本体2に取り付けられた4本のアーム3と、アーム3を付勢するばね4とを備える。カップホルダ1は、車両の車室内のセンターコンソールに固定される。
【0030】
ホルダ本体2は、容器を下方から支持する底壁5と、底壁5の縁に立設されて容器の側面の少なくとも下部を包囲する側壁6と、側壁6の上端から外側に延出するフランジ7とを含み、底壁5及び側壁6によって上部が開口された凹部8を画定する。ホルダ本体2は、例えば樹脂を素材とする成形品である。
【0031】
側壁6は前後及び左右に設けられている。なお、ホルダ本体2に関する前後方向及び左右方向は、平面視におけるカップホルダ1の長手方向及び短手方向である。側壁6の左右の部分は、前部及び後部で概ね前後方向に延在する主部6a、前後方向の中央近傍で前後方向に中央に向かうに従って左右方向の内側に傾斜する傾斜部6b、及び前後方向の中央の所定の区間に於いて、主部6aよりも互いに近接して前後方向に延在する中央部6cを含む。また、底壁5は、側壁6の中央部6cに対応する前後方向位置に、上方に膨出する中央部5aを含む。底壁5の中央部5a及び側壁6の中央部6cにより凹部8が前後2つに区切られ、その区切られ部分の各々に容器が収容可能である。カップホルダ1は、前後方向の中心を通り前後方向に直交する面、及び/又は、この左右方向の中心を通り左右方向に直交する面に対して鏡像対称形をなしてもよい。
【0032】
側壁6の傾斜部6bには、アーム3を部分的に受容するアーム受容溝9が設けられている。アーム3の一部は、容器を支持するべく、凹部8に挿入される容器に向かって凹部8内に突入している。アーム3の凹部8への突入方向は、平面視で側壁6の傾斜部6bの内面に対して略直交している。なお、アーム3に関する内外方向は、挿入される容器に向かう方向が内方、挿入される容器から遠ざかる方向が外方であり、アーム3に関する左右方向(側方)はアーム3の幅方向(傾斜部6bの内面に沿った水平方向)である。アーム受容溝9を隠すように、平面視でフランジ7に整合する輪郭を有する化粧板(図示せず)をフランジ7の上面に取り付けてもよい。
【0033】
図4はアーム3の斜視図であり、
図5はアーム3を外方から見た図である。
図1~
図5に示すように、アーム3は、上端部に於いて側壁6の傾斜部6bに内外方向に変位可能かつ回動可能に支持されるアッパアーム片10と、下端部に於いて側壁6の傾斜部6bに上下に変位可能かつ回動可能に支持されたロアアーム片11と、アッパアーム片10の下端部及びロアアーム片11の上端部をヒンジ結合するヒンジ結合部12とを含む。アーム3は、樹脂を素材とする一体成形品であり、ヒンジ結合部12は、左右方向の軸線回りに湾曲可能な薄肉部によって形成される薄肉ヒンジである。アーム3は、ロアアーム片11の下端部がアッパアーム片10の上端部に近づくようにヒンジ結合部12が湾曲してヒンジ結合部12が凹部8内に突入した初期位置と、ロアアーム片11の下端部がアッパアーム片10の上端部から遠ざかるようにヒンジ結合部12の湾曲の度合いが弱まってヒンジ結合部12が初期位置よりも外方に位置して対向する側壁内面との距離が最も拡がる最拡位置との間で変位可能である。
【0034】
アッパアーム片10は、ホルダ本体2の側壁6に回動可能かつ内外方向に変位可能に支持される支持部13と、支持部13から斜め下内方に延出して、斜め上内方を向く主面を有する主壁14と、主壁14の左右両側縁から外方に延出する1対の側壁15と、主壁14の下端から延出してヒンジ結合部12よりも内方に膨出した膨出部16とを含む。
【0035】
支持部13は、主壁14の上端から外方に延出する上壁17と、上壁17の左右側縁から下方に延出して側壁15に連結している1対の上部側壁18とを含む。1対の上部側壁18の各々にはガイドスロット19が設けられており、ホルダ本体2の側壁6には、アーム受容溝9を画定する左右1対の側面20から同軸的に突出する1対の第1ガイドピン21が設けられている。1対の第1ガイドピン21が対応するガイドスロット19に挿通されることにより、アッパアーム片10がホルダ本体2に対して回動可能にかつ内外方向に変位可能に支持されるピンスロット係合部22(
図6参照)が形成される。
【0036】
ガイドスロット19は、内外方向に延在する第1スロット部19aと、第1スロット部19aの中間部から、上壁17の上面まで延出する第2スロット部19bとを含む。第1スロット部19aは、貫通溝であって第1ガイドピン21が貫通している。第2スロット部19bにおける上壁17を通る部分は、第1ガイドピン21を上方から挿入できる深さを有する有底の溝であるが、上部側壁18を通る部分は貫通溝である。
【0037】
主壁14の主面は、容器の底部の縁が摺動しやすいように滑らかな面となっており、好ましくは平面である。主壁14の主面は、膨出部16の内側の面と滑らかに連続している。側壁15の下側の端縁は、初期位置に於いてロアアーム片11を係止して初期位置を規定する第1ストッパ23となっている。膨出部16は左右1対設けられており、左右1対の膨出部16の間にヒンジ結合部12が設けられている。
【0038】
ロアアーム片11は、主面が斜め下内方を向いた主壁24と、主壁24の上部に於いて左右両側縁よりも左右方向内側から内外方向の外方に延出し、初期位置に於いてアッパアーム片10の1対の側壁15の間に突入してその側壁15に近接するように配置された第1側壁25と、主壁24の左右両側縁から外方に延出する第2側壁26と、第2側壁26の下端部から左右方向の外側に同軸的に突出する1対の第2ガイドピン27とを含む。
【0039】
主壁24の主面は、側面が凹んだ容器の引き抜き時に容器が摺動する可能性があるため滑らかな面であることが好ましい。第2側壁26の上部の端縁は、初期位置に於いて、アッパアーム片10の側壁15に設けられた第1ストッパ23に係止される。
【0040】
1対の第2ガイドピン27は、アーム受容溝9を画定する1対の側面20に上下に延在するように設けられたガイド溝28に上下に変位可能かつ回動可能に受容される。アーム受容溝9を画定する1対の側面20間の間隔が下方に向けて狭まるように、1対の側面20がテーパ面として形成されている。アーム受容溝9の上端の位置は、1対の側面20間の間隔が1対の第2ガイドピン27の先端間の距離に等しい位置又はその上方の位置である。ガイド溝28は、有底の溝であっても貫通溝であってもよい。なお、アーム受容溝9の下部では、ロアアーム片11の下部がアーム受容溝9内を移動し、凹部8内に突入しないため、アーム受容溝9の下部は、内外方向の内側が開口していなくてもよく、また、上面が開口した筒状になっていてもよい。
【0041】
薄肉部からなるヒンジ結合部12は、上端がアッパアーム片10の主壁14の下端に連結し、下端がロアアーム片11の主壁24の上端に連結している。ヒンジ結合部12は、アッパアーム片10の下端部及びロアアーム片11の上端部の内側に沿って設けられ、すなわち、ヒンジの回動軸線よりも内外方向の内方に配置されており、左右方向から見て滑らかな輪郭を画定するように形成されている。膨出部16の表面は、左右方向から見て、このヒンジ結合部12に輪郭を超えて内外方向の内方に位置する。
【0042】
アッパアーム片10の主壁14及びロアアーム片11の主壁24の内外方向の外側の面には、補強のためのリブ29が複数設けられている。
【0043】
ばね4は、第1ガイドピン21に巻回され、一端側に於いてアッパアーム片10における第1ガイドピン21よりも下方の部分に係合し、他端側に於いてホルダ本体2の側壁6に於ける第1ガイドピン21よりも下方の部分に係合するねじりコイルばねを含む。ばね4は、アッパアーム片10をその上端部が内外方向の内方に変位し、その下端部が内外方向の内方に変位する向きに回動させるように付勢する。例えば、ばね4の一端側がアッパアーム片10のリブ29に内外方向の外側から当接するように係合し、ばね4の他端側がアーム受容溝9を画定する側面20を構成する壁に設けられた係合溝30(
図6参照)に受容されるように係合してもよい。
【0044】
図6は、アーム3の左右方向の中央を通りアーム3の左右方向に直交する断面の図である。実線で示すアーム3の位置は、アーム3がばね4の付勢力によってロアアーム片11が第1ストッパ23に係止されるまでヒンジ結合部12が湾曲した初期位置を示す。初期位置は、容器が凹部8に挿入されていない時のアーム3の位置である。2点鎖線で示すアーム3の位置は、ヒンジ結合部12が内外方向の外側に向かう力を受けて、アーム受容溝9を画定する側面20に設けられた第2ストッパ31にアッパアーム片10の側壁6の端縁が係止している最拡位置を示す。第2ストッパ31は、側面20における内外方向の外側の部分が内側の部分よりも左右方向の内側に配置されることによって形成される。アーム3がホルダ本体2の側壁6と協働して容器を保持する保持位置は、初期位置と最拡位置との間の位置である。
【0045】
アーム3及びばね4のホルダ本体2への組み付け方法について説明する。ロアアーム片11の第2ガイドピン27を上方からガイド溝28に挿入するとともに、ホルダ本体2の第1ガイドピン21を第2スロット部19bを介して第1スロット部19aに挿入する。次いで、ばね4を1対の第1ガイドピン21に巻回させ、ばね4の両端部をアッパアーム片10及びホルダ本体2に係合させる。アーム受容溝9を画定する1対の側面20がテーパ面となっており、上部に於いては1対の側面20間の間隔が1対の第2ガイドピン27の先端間の間隔よりも広いため、1対の第2ガイドピン27のガイド溝28への挿入が容易となる。
【0046】
図7~
図9はアーム3の動きを説明するための図であり、
図7は容器の挿入時、
図8は容器の保持時、
図9は容器の引き抜き図を示す。なお、
図7~9に於いて、符号「B」は容器を示している。容器の下部の側面は底部よりも縮径されて凹みが設けられている。
図6~
図9を参照して、容器の挿入時及び引き抜き時におけるアーム3の動きについて説明する。
【0047】
図7に示すように、容器の挿入時は、まず、容器の底部の縁がアッパアーム片10の主壁14の主面を摺動する。この時、ばね4の内外方向の付勢力によって第1スロット部19aの外端が第1ガイドピン21に押し付けられた状態にあり、ばね4の回動方向の付勢力に抗して第1ガイドピン21の中心線である第1回動軸線32回りにアッパアーム片10はその下端部が下方に向かうように回動する。この動きに伴い、ヒンジ結合部12の薄肉部の湾曲の度合いが弱まり、ロアアーム片11の第2ガイドピン27がガイド溝28に沿って下方に摺動する。その後、容器の底部が底壁5に支持されるまで、容器の側面が膨出部16(
図4参照)を摺動し、側面の形状に合わせて、第1スロット部19aの外端が第1ガイドピン21に押し付けられた状態に於けるアッパアーム片10の第1回動軸線32回りの回動、ヒンジ結合部12の変形、及び第2ガイドピン27の上下移動がなされる。
【0048】
図8に示すように、容器の保持時は、底壁5が容器の底部を下方から支持し、アーム3及び側壁6が協働して容器の側面を支持する(側壁6は、
図8の断面図に示された位置とは異なる位置で容器に当接している)。
【0049】
図9に示すように、容器の引き抜き時、特に、容器の凹みにおける下側の部分が膨出部16を摺動する時、すなわち、膨出部16に当接している容器の側面部分の径が徐々に大きくなる時、膨出部16には、容器から斜め上外方に向かう力を受ける。このため、第2ガイドピン27の中心である第2回動軸線33回りにロアアーム片11がその上端が外方に向かうように回動し、アッパアーム片10の支持部13が内外方向の外方に向かうように第1スロット部19aを画定する面が第1ガイドピン21を摺動する。容器が完全に引き抜かれると、ばね4の付勢力によってアーム3は初期位置に戻る。
【0050】
実施形態に係るカップホルダ1の作用効果について説明する。
【0051】
ヒンジ結合部12が、軸体及び軸受を有さない薄肉ヒンジから形成されるため、液体やごみが付着しても作動不良や異音が発生しない。また、アーム3が一体成形品であるため、部品点数が少なく、製造コストを抑制できる。アッパアーム片10が側壁15を含み、ロアアーム片11が第1側壁25及び第2側壁26を含むため、アッパアーム片10及びロアアーム片11の変形が抑制され、アーム3が安定して確実に作動する。また、初期位置に於いて、ロアアーム片11の第1側壁25がアッパアーム片10の側壁15に左右方向に於いて重なるように配置されるため、アーム3をねじる方向に力が作用しても、側壁15及び第1側壁25が互いに係止されるため、アーム3は、変形が抑制されて安定して確実に作動する。
【0052】
膨出部16が容器に接触して、ヒンジ結合部12は容器に接触しないため、薄肉部からなるヒンジ結合部12に対する負荷が小さく、耐久性が向上する。また、膨出部16は、左右1対に設けられておりアーム3の幅方向全体に延在するのではないため、容器との接触面積が小さくなり、容器の挿入及び引き抜きがスムーズになる。
【0053】
引き抜き時には、アッパアーム片10の支持部13が内外方向の外方に移動して、ロアアーム片11が第2回動軸線33を中心に回動するため、側面に凹みを有する容器又は柔らかい側面を有する容器であってばね4に付勢されたアーム3によって側面が凹んだ容器であっても、容器がアーム3に引っかからずスムーズに容器を引き抜くことができる。
【0054】
ばね4がねじりコイルばねであるため、1つのばね4で、アーム3の回動方向及び内外方向の内方への付勢を行うことができる。
【0055】
アーム受容溝9を画定する左右1対の側面20がテーパ面であり、その上部における1対の側面間の距離が第2ガイドピン27の先端間の距離よりも広いため、アーム3のホルダ本体2への組み付けが容易になる。
【0056】
ロアアーム片11の下端部に設けられた第2ガイドピン27がガイド溝28を上下に移動するため、ロアアーム片11の下端部が内外方向の外側のスペースに突入することがなく、カップホルダ1の設置スペースを小さくすることができる。
【0057】
第1ストッパ23及び第2ストッパ31によってヒンジ結合部12の過大な変形が防止されるため、ヒンジ結合部12に係る負荷を抑制できる。
【0058】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。カップホルダは、センターコンソール以外の部分、例えばインストルメントパネルに固定されてもよく、車両以外の乗物の室内に固定されてもよい。ヒンジ結合部が左右1対設けられ、その間に1つの膨出部が配置されてもよい。膨出部がアッパアーム片に代えて、又はアッパアーム片とともにロアアーム片に設けられてもよい。ばねとして、ねじりコイルばね以外のばねを使用してもよく、回動方向に付勢するばねと内外方向に付勢するばねとを別体としてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1:カップホルダ
2:ホルダ本体
3:アーム
4:ばね
6:側壁
8:凹部
9:アーム受容溝
10:アッパアーム片
11:ロアアーム片
12:ヒンジ結合部
14:アッパアーム片の主壁
15:アッパアーム片の側壁
16:膨出部
18:上部側壁(側部)
19:ガイドスロット
19a:第1スロット部
19b:第2スロット部
20:側面
21:第1ガイドピン
22:ピンスロット係合部
23:第1ストッパ(ストッパ)
27:第2ガイドピン(ロアアーム片)
28:ガイド溝