(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】スポーツ用の衣料
(51)【国際特許分類】
A41D 13/00 20060101AFI20220915BHJP
A41D 27/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A41D13/00 117
A41D27/00 C
(21)【出願番号】P 2019194521
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591038820
【氏名又は名称】株式会社デサント
(73)【特許権者】
【識別番号】306033379
【氏名又は名称】株式会社ワコール
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】山田 恵里
(72)【発明者】
【氏名】堀部 香里
(72)【発明者】
【氏名】角野 まき
(72)【発明者】
【氏名】中山 翼
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-299070(JP,A)
【文献】特開2003-221705(JP,A)
【文献】特開平8-120507(JP,A)
【文献】特開2002-212811(JP,A)
【文献】実開平1-98113(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D7/00、13/00、13/012、27/00、31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポーツ用の衣料であって、
胸部領域に存在する下記腹部側長方形bの引張応力は、下記肩関節側長方形aの引張応力よりも強いことを特徴とするスポーツ用の衣料。
ただし、肩関節側長方形aの引張応力及び腹部側長方形bの引張応力は、下記の(1)~(5)に記載の手順により測定されるものである。
(1)特定マネキンに、前記スポーツ用の衣料を着用させたときの左右の乳頭部に印をつける。
(2)前記スポーツ用の衣料を前記特定マネキンから外して平置きにし、左右の乳頭部同士を結ぶ直線Aとの間の角度が32°となり、尚且つ、胸部で中心側から体側側に向かって下がっていて前記乳頭部を通る直線Bを描く。
(3)前記スポーツ用の衣料の胸部領域には、前記直線Bから肩関節側に1.0cmの間隔を開けて前記直線Bと平行となる長辺を有する肩関節側長方形aと、前記直線Bから腹部側に1.0cmの間隔を開けて前記直線Bと平行となる長辺を有する腹部側長方形bを描く。
(4)前記肩関節側長方形a及び前記腹部側長方形bの短辺が2.0cmであり長辺が10cmであり、前記乳頭部を通り直線Bに垂直な直線Cと、前記肩関節側長方形a及び前記腹部側長方形bの長辺の中点と、が重なる。
(5)前記肩関節側長方形a及び前記腹部側長方形bを前記スポーツ用の衣料から切り出し、前記肩関節側長方形a及び前記腹部側長方形bをつかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で5%伸張したときの引張応力[N]を測定する。
【請求項2】
前記腹部側長方形bの前記引張応力は前記肩関節側長方形aの前記引張応力の105%以上である、請求項1に記載のスポーツ用の衣料。
【請求項3】
スポーツ用の衣料であって、
腹部領域に存在する下記下腹部長方形cの引張応力は、前記腹部側長方形bの引張応力以下であり前記肩関節側長方形aの引張応力以上である請求項1または2に記載のスポーツ用の衣料。
ただし、下腹部長方形cの引張応力は、下記の(1)~(4)に記載の手順により測定されるものである。
(1)前記特定マネキンに、前記スポーツ用の衣料を着用させたときのへそ部に印をつける。
(2)前記スポーツ用の衣料を前記特定マネキンから外して平置きにし、前記スポーツ用の衣料の腹部に、前記へそ部を通る水平線Dと平行となる長辺を有する下腹部長方形cを描く。
(3)前記下腹部長方形cの短辺は2.0cmであり長辺が10cmであり、前記へそ部と、前記下腹部長方形cの2本の対角線の交点と、が重なる。
(4)前記下腹部長方形cを前記スポーツ用の衣料から切り出し、つかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で、5%伸張したときの引張応力[N]を測定する。
【請求項4】
前記スポーツ用の衣料は、ベースシートと、
前記ベースシート上において、前記腹部側長方形bの少なくとも一部を覆うように配置されている第1胸部シートと、を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のスポーツ用の衣料。
【請求項5】
前記スポーツ用の衣料は、
前記ベースシート上において、前記第1胸部シートよりも引張応力が弱く、前記肩関節側長方形aの少なくとも一部を覆うように配置されている第2胸部シートを有する、請求項4に記載のスポーツ用の衣料。
【請求項6】
前記スポーツ用の衣料は、
前記ベースシート上において、引張応力が前記第2胸部シート以上であり前記第1胸部シート以下である腹部シートを有し、
前記腹部シートが
下記条件を満たす下腹部長方形cの少なくとも一部を覆うように配置されている請求項5に記載のスポーツ用の衣料。
<条件>
腹部領域に存在する下腹部長方形cの引張応力は、前記腹部側長方形bの引張応力以下であり前記肩関節側長方形aの引張応力以上である。
ただし、下腹部長方形cの引張応力は、下記の(1)~(4)に記載の手順により測定されるものである。
(1)前記特定マネキンに、前記スポーツ用の衣料を着用させたときのへそ部に印をつける。
(2)前記スポーツ用の衣料を前記特定マネキンから外して平置きにし、前記スポーツ用の衣料の腹部に、前記へそ部を通る水平線Dと平行となる長辺を有する下腹部長方形cを描く。
(3)前記下腹部長方形cの短辺は2.0cmであり長辺が10cmであり、前記へそ部と、前記下腹部長方形cの2本の対角線の交点と、が重なる。
(4)前記下腹部長方形cを前記スポーツ用の衣料から切り出し、つかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で、5%伸張したときの引張応力[N]を測定する。
【請求項7】
前記第1胸部シートの縁の少なくとも一部が、前記乳頭部を中心とする半径2cmの円内を通っている請求項4~6のいずれか一項に記載のスポーツ用の衣料。
【請求項8】
前記ベースシート上において、前記第1胸部シートよりも引張応力が弱く、前記肩関節側長方形aの少なくとも一部を覆うように配置されている第2胸部シートとを有し、
前記スポーツ用の衣料を正面から見た時に前記第1胸部シートの平面投影図形と前記第2胸部シートの平面投影図形とを合体した平面図形が五角形であり、
前記五角形の最下角を通る水平線と、前記五角形の有する辺のうち前記五角形の最下角から剣状突起の存在する側に延びている一辺との間の角度が、3°以上40°以下である請求項
6または7に記載のスポーツ用の衣料。
【請求項9】
前記スポーツ用の衣料は、左右に1つずつ第1胸部シートを有し、
前記2つの第1胸部シートが互いに左右に離れている請求項4~8のいずれか一項に記載のスポーツ用の衣料。
【請求項10】
前記第1胸部シートは、スポーツ用の衣料の襟ぐりから脇の下に向かって連続して延在するように配置される請求項4~9のいずれか一項に記載のスポーツ用の衣料。
【請求項11】
前記肩関節側長方形aと前記腹部側長方形bをつかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で30%伸張したときの引張応力[N]が、3N以上、30N以下である請求項1~10のいずれか一項に記載のスポーツ用の衣料。
【請求項12】
前記腹部側長方形bをつかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で30%伸張したときの引張応力[N]から前記肩関節側長方形aをつかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で30%伸張したときの引張応力[N]を引いた差が、0.3N以上、25N以下である請求項1~11のいずれか一項に記載のスポーツ用の衣料。
【請求項13】
スポーツ用の衣料であって、
胸部領域に存在する下記胸部長方形dの引張応力は、前記腹部側長方形bの引張応力よりも大きい請求項1~12のいずれか一項に記載のスポーツ用の衣料。
ただし、胸部長方形dの引張応力は、下記の(1)~(5)に記載の手順により測定されるものである。
(1)前記特定マネキンに、前記スポーツ用の衣料を着用させたときの乳頭部に印をつける。
(2)前記スポーツ用の衣料を前記特定マネキンから外して平置きにし、左右の乳頭部同士を結ぶ直線Aとの間の角度が32°となり、尚且つ、胸部で中心側から体側側に向かって下がっていて前記乳頭部を通る直線Bを描く。
(3)前記スポーツ用の衣料の胸部に、前記直線Bと平行となる長辺を有する胸部長方形dを描く。
(4)前記胸部長方形dの短辺は2.0cmであり長辺が10cmであり、前記乳頭部と、前記胸部長方形dの2本の対角線の交点と、が重なる。
(5)前記胸部長方形dを前記スポーツ用の衣料から切り出し、つかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で、5%伸張したときの引張応力[N]を測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツをする際に着用するスポーツ用の衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
スピードを競うスポーツを行う際、例えば、水泳を行う際に着用する衣料として、特許文献1のような、着用時に人の胴の少なくとも一部を覆う胴部分を有する、ストレッチ可能な伸縮性のある生地からなるベース層と、前記ベース層の外面に貼り合わせた複数のパネルとを有する、衣服が開発されている。
【0003】
タイムを競うウィンター競技を行う際のウェアとしては、空気を通しにくい素材を用いた全身スーツが使用されることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されている水着においては、水泳時に発生する水の抵抗を低減するための機能面において、未だ改善の余地があった。また、上記に記載のような単に空気を通しにくいだけのタイムを競うウィンター競技用のウェアも、滑走の際の空気抵抗を低減するための機能面において、未だ改善の余地があった。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、スポーツを行う際に競技者の胸部において生じる、水や空気によって生じる抵抗を低減するための機能を有するスポーツ用の衣料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決できた本発明のスポーツ用の衣料とは、胸部領域に存在する下記腹部側長方形bの引張応力は、下記肩関節側長方形aの引張応力よりも強いことを特徴とするスポーツ用の衣料である。ただし、肩関節側長方形aの引張応力及び腹部側長方形bの引張応力は、下記の(1)~(5)に記載の手順により測定されるものである。(1)特定マネキンに、スポーツ用の衣料を着用させたときの左右の乳頭部に印をつける。(2)スポーツ用の衣料を特定マネキンから外して平置きにし、左右の乳頭部同士を結ぶ直線Aとの間の角度が32°となり、尚且つ、胸部で中心側から体側側に向かって下がっていて乳頭部を通る直線Bを描く。(3)スポーツ用の衣料の胸部領域には、直線Bから肩関節側に1.0cmの間隔を開けて直線Bと平行となる長辺を有する肩関節側長方形aと、直線Bから腹部側に1.0cmの間隔を開けて直線Bと平行となる長辺を有する腹部側長方形bを描く。(4)肩関節側長方形a及び腹部側長方形bの短辺が2.0cmであり長辺が10cmであり、乳頭部を通り直線Bに垂直な直線Cと、肩関節側長方形a及び腹部側長方形bの長辺の中点と、が重なる。(5)肩関節側長方形a及び腹部側長方形bをスポーツ用の衣料から切り出し、肩関節側長方形a及び腹部側長方形bをつかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で5%伸張したときの引張応力[N]を測定する。
【0008】
腹部側長方形bの引張応力が、肩関節側長方形aの引張応力よりも強くなるように構成することで、本発明のスポーツ用の衣料は、女性の体に特有の突出した乳房を身幅方向の外側に向けて押し潰すことができる。外側に向かって押しつぶされる乳房は、着用者の脇下方向に向かってスポーツ用の衣料の中に収納される。これにより、着用者の乳房が前方に向かって突出することを抑制することができるため、スポーツ競技を行っている着用者の胸部で生じる水や空気による抵抗を低減することができる。また、女性に限らず、乳房が女性のように膨らんでしまう症状が出ることで知られるクラインフェルター症候群の男性等も、このスポーツ用の衣料を使用することで、胸部の突出を抑えることができるため、胸部における水や空気による抵抗を低減することができる。
【0009】
腹部側長方形bの引張応力は肩関節側長方形aの引張応力の105%以上であることが好ましい。
【0010】
スポーツ用の衣料の、腹部領域に存在する下記下腹部長方形cの引張応力は、腹部側長方形bの引張応力以下であり肩関節側長方形aの引張応力以上であることが好ましい。ただし、下腹部長方形cの引張応力は、下記の(1)~(4)に記載の手順により測定されるものである。(1)特定マネキンに、スポーツ用の衣料を着用させたときのへそ部に印をつける。(2)スポーツ用の衣料を特定マネキンから外して平置きにし、スポーツ用の衣料の腹部に、へそ部を通る水平線Dと平行となる長辺を有する下腹部長方形cを描く。(3)下腹部長方形cの短辺は2.0cmであり長辺が10cmであり、へそ部と、下腹部長方形cの2本の対角線の交点と、が重なる。(4)下腹部長方形cを衣料スポーツ用の衣料から切り出し、つかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で、5%伸張したときの引張応力[N]を測定する。
【0011】
スポーツ用の衣料は、ベースシートと、ベースシート上において、腹部側長方形bの少なくとも一部を覆うように配置されている第1胸部シートと、を有することが好ましい。
【0012】
スポーツ用の衣料は、ベースシート上において、第1胸部シートよりも引張応力が弱く、肩関節側長方形aの少なくとも一部を覆うように配置されている第2胸部シートを有することが好ましい。
【0013】
スポーツ用の衣料は、ベースシート上において、引張応力が第2胸部シート以上であり第1胸部シート以下である腹部シートを有し、腹部シートが下腹部長方形cの少なくとも一部を覆うように配置されていることが好ましい。
【0014】
第1胸部シートの縁の少なくとも一部が、乳頭部を中心とする半径2cmの円内を通っていることが好ましい。
【0015】
スポーツ用の衣料を正面から見た時に第1胸部シートの平面投影図形と第2胸部シートの平面投影図形とを合体した平面図形が五角形であり、五角形の最下角を通る水平線と、五角形の有する辺のうち五角形の最下角から剣状突起の存在する側に延びている一辺との間の角度が、3°以上40°以下であることが好ましい。
【0016】
スポーツ用の衣料は、左右に1つずつ第1胸部シートを有し、2つの第1胸部シートが互いに左右に離れていることが好ましい。
【0017】
第1胸部シートは、スポーツ用の衣料の襟ぐりから脇の下に向かって連続して延在するように配置されていることが好ましい。
【0018】
肩関節側長方形aと腹部側長方形bをつかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で30%伸張したときの引張応力[N]が、3N以上、30N以下であることが好ましい。
【0019】
腹部側長方形bをつかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で30%伸張したときの引張応力[N]から肩関節側長方形aをつかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で30%伸張したときの引張応力[N]を引いた差が、0.3N以上、25N以下であることが好ましい。
【0020】
スポーツ用の衣料であって、胸部領域に存在する下記胸部長方形dの引張応力は、腹部側長方形bの引張応力よりも大きいことが好ましい。ただし、胸部長方形dの引張応力は、下記の(1)~(5)に記載の手順により測定されるものである。(1)特定マネキンに、スポーツ用の衣料を着用させたときの乳頭部に印をつける。(2)スポーツ用の衣料を特定マネキンから外して平置きにし、左右の乳頭部同士を結ぶ直線Aとの間の角度が32°となり、尚且つ、胸部で中心側から体側側に向かって下がっていて乳頭部を通る直線Bを描く。(3)スポーツ用の衣料の胸部に、直線Bと平行となる長辺を有する胸部長方形dを描く。(4)胸部長方形dの短辺は2.0cmであり長辺が10cmであり、乳頭部と、胸部長方形dの2本の対角線の交点と、が重なる。(5)胸部長方形dをスポーツ用の衣料から切り出し、つかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で、5%伸張したときの引張応力[N]を測定する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のスポーツ用の衣料は、女性の体に特有の突出した乳房を外側に向けて押し潰すことができる。外側へ向かって押しつぶされる乳房は、着用者の脇下方向に向かってスポーツ用の衣料の中に収納される。これにより、着用者の乳房が前方に向かって突出することを抑制することができるため、スポーツ競技時において着用者の胸部部分で生じる水や空気による抵抗を低減することができる。また、女性に限らず、乳房が女性のように膨らんでしまう症状が出ることで知られるクラインフェルター症候群の男性等も、このスポーツ用の衣料を使用することで、胸部の突出を抑えることができるため、胸部における水や空気による抵抗を低減することができる。ここでいう前方とは、着用者の身長方向及び、体の身幅方向と垂直で、着用者の正面に向かう方向を言う。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料の腹部から上に相当する部分を示す正面図であり、スポーツ用の衣料の胸部領域の引張応力を測定するための試験片の切り出す位置を示している。矢印xは体の身幅方向、矢印yは身長方向、矢印zは前後方向を指す。
【
図2】本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料の斜視図である。矢印xは体の身幅方向、矢印yは身長方向、矢印zは前後方向を指す。
【
図3】本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料の斜視図である。矢印xは体の身幅方向、矢印yは身長方向、矢印zは前後方向を指す。
【
図4】本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料の斜視図である。矢印xは体の身幅方向、矢印yは身長方向、矢印zは前後方向を指す。
【
図5】本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料の斜視図である。矢印xは体の身幅方向、矢印yは身長方向、矢印zは前後方向を指す。
【
図6】(a)は、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料のベースシートの外側面に備えられた第1胸部シート、第2胸部シート、テープ部材の形態を、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料の外側から見た時の正面図で、(b)は(a)を矢印方向から見たときのVI-VI線での断面図である。
【
図7】(a)は、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料のベースシートの外側面に備えられた第1胸部シート、第2胸部シート、テープ部材の形態を、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料の外側から見た時の正面図で、(b)は(a)を矢印方向から見たときのVII-VII線での断面図である。
【
図8】図面に向かって直線Fよりも右側が人体の骨格を表し、図面に向かって直線Fよりも左側が本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料を着用したときの態様を表している正面図である。矢印xは体の身幅方向、矢印yは身長方向、矢印zは前後方向を指す。
【
図9】本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料を、斜め後ろから見た時の斜視図である。矢印xは体の身幅方向、矢印yは身長方向、矢印zは前後方向を指す。
【
図10】(a)は、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料に備えられた第1胸部部分、第2胸部部分、第3胸部部分の形態を、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料の外側から見た時の正面図で、(b)は(a)を矢印方向から見たときのX-X線での断面図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料の腹部から上に相当する部分を示す正面図であり、スポーツ用の衣料の胸部領域の引張応力を測定するための試験片の切り出す位置を示している。矢印xは体の身幅方向、矢印yは身長方向、矢印zは前後方向を指す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るスポーツ用の衣料に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料の腹部から上に相当する部分を示す正面図であり、スポーツ用の衣料の胸部領域における引張応力の測定を行うための試験片の切り出し方を示す。ただし、
図1では、便宜上、特定マネキンに本発明のスポーツ用の衣料を着用させた状態で試験片となる肩関節側長方形aと腹部側長方形bを記載しているが、本明細書内で記載しているように、スポーツ用の衣料の乳頭部に印をつける工程を終えた後は、特定マネキンからスポーツ用の衣料を外し、当該長方形を特定するための作図を行って切り出すものとする。
【0025】
ここでいう特定マネキン10とは、株式会社七彩製のWD-20Aであり、本明細書内で特定マネキンと記載している場合は、株式会社七彩製のWD-20Aを指す。
【0026】
上記課題を解決できた本発明のスポーツ用の衣料とは、胸部領域に存在する下記腹部側長方形b21の引張応力は、下記肩関節側長方形a20の引張応力よりも強いことを特徴とするスポーツ用の衣料1である。ただし、肩関節側長方形a20の引張応力及び腹部側長方形b21の引張応力は、下記の(1)~(5)に記載の手順により測定されるものである。(1)特定マネキン10に、スポーツ用の衣料1を着用させたときの左右の乳頭部11に印をつける。(2)スポーツ用の衣料1を特定マネキン10から外して平置きにし、左右の乳頭部11同士を結ぶ直線Aとの間の角度αが32°となり、尚且つ、胸部で中心側から体側側に向かって下がっていて乳頭部11を通る直線Bを描く。(3)スポーツ用の衣料1の胸部領域には、直線Bから肩関節側に1.0cmの間隔を開けて直線Bと平行となる長辺を有する肩関節側長方形a20と、直線Bから腹部側に1.0cmの間隔を開けて直線Bと平行となる長辺を有する腹部側長方形b21を描く。(4)肩関節側長方形a20及び腹部側長方形b21の短辺が2.0cmであり長辺が10cmであり、乳頭部11を通り直線Bに垂直な直線Cと、肩関節側長方形a20の長辺の中点20m及び腹部側長方形b21の長辺の中点21mと、が重なる。(5)肩関節側長方形a20及び腹部側長方形b21をスポーツ用の衣料1から切り出し、肩関節側長方形a20及び腹部側長方形b21をつかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で5%伸張したときの引張応力[N]を測定する。
【0027】
腹部側長方形b21の引張応力が、肩関節側長方形a20の引張応力よりも強くなるように構成することで、本発明のスポーツ用の衣料1は、女性の体に特有の突出した乳房を外側に向けて押し潰すことができる。外側に向かって押しつぶされる乳房は、着用者の脇下方向に向かってスポーツ用の衣料1の中に収納される。これにより、着用者の乳房が前方に向かって突出することを抑制することができるため、スポーツ競技を行っている着用者の胸部で生じる水や空気による抵抗を低減することができる。また、女性に限らず、乳房が女性のように膨らんでしまう症状が出ることで知られるクラインフェルター症候群の男性等も、このスポーツ用の衣料1を使用することで、胸部の突出を抑えることができるため、胸部における水や空気による抵抗を低減することができる。本発明のスポーツ用の衣料1は、水の抵抗を受ける競技である水泳を行う際に着用する水着などに好ましく用いることができる。
【0028】
腹部側長方形b21を5%伸長したときの引張応力は肩関節側長方形a20を5%伸長したときの引張応力の105%以上であることが好ましく、108%以上であることがより好ましく、110%以上であることがさらに好ましい。また、腹部側長方形b21の引張応力は肩関節側長方形a20の引張応力の300%以下、250%以下、200%以下などにすることができる。上記構成とすることで、より確実に乳房を外側に向けて押し潰すことができる。
【0029】
腹部側長方形b21を30%伸長したときの引張応力は肩関節側長方形a20を30%伸長したときの引張応力の105%以上であることが好ましく、108%以上であることがより好ましく、110%以上であることがさらに好ましい。また、腹部側長方形b21の引張応力は肩関節側長方形a20の引張応力の300%以下、250%以下、200%以下などにすることができる。上記構成とすることで、より確実に乳房を外側に向けて押し潰すことができる。
【0030】
図1で示されているスポーツ用の衣料1の肩関節側長方形a20、腹部側長方形b21、下腹部長方形c22について、腹部領域に存在する下腹部長方形c22の引張応力は、肩関節側長方形a20の引張応力以下にすることができる。ただし、下腹部長方形c22の引張応力は、下記の(1)~(4)に記載の手順により測定されるものである。(1)特定マネキン10に、スポーツ用の衣料1を着用させたときのへそ部12に印をつける。(2)スポーツ用の衣料1を特定マネキン10から外して平置きにし、スポーツ用の衣料1の腹部に、へそ部12を通る水平線Dと平行となる長辺を有する下腹部長方形c22を描く。(3)下腹部長方形c22の短辺は2.0cmであり長辺が10cmであり、へそ部12と、下腹部長方形c22の2本の対角線22tの交点と、が重なる。(4)下腹部長方形c22をスポーツ用の衣料1から切り出し、つかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で、5%伸張したときの引張応力[N]を測定する。
【0031】
上記のように、腹部にも引張応力の強い部分を設けることで腹部、胸部共に前方に向かって突出するのを防ぐことができ、より水や空気の抵抗を受けにくくすることができる。このため、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1は、特に水泳やタイムを競うウィンター競技を行う際に、水や空気の抵抗による推進力の低下を抑制することができる。
【0032】
図1で示されているスポーツ用の衣料1の肩関節側長方形a20、腹部側長方形b21、下腹部長方形c22について、腹部領域に存在する下腹部長方形c22の引張応力は、腹部側長方形b21の引張応力以下であり肩関節側長方形a20の引張応力以上であることが好ましい。ただし、下腹部長方形c22の引張応力は、下記の(1)~(4)に記載の手順により測定されるものである。(1)特定マネキン10に、スポーツ用の衣料1を着用させたときのへそ部12に印をつける。(2)スポーツ用の衣料1を特定マネキン10から外して平置きにし、スポーツ用の衣料1の腹部に、へそ部12を通る水平線Dと平行となる長辺を有する下腹部長方形c22を描く。(3)下腹部長方形c22の短辺は2.0cmであり長辺が10cmであり、へそ部12と、下腹部長方形c22の2本の対角線22tの交点と、が重なる。(4)下腹部長方形c22をスポーツ用の衣料1から切り出し、つかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で、5%伸張したときの引張応力[N]を測定する。
【0033】
上記のように、腹部にも引張応力の強い部分を設けることで腹部、胸部共に前方に向かって突出するのを防ぐことができ、より水や空気の抵抗を受けにくくすることができる。このため、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1は、特に水泳やタイムを競うウィンター競技を行う際に、水や空気の抵抗による推進力の低下を抑制することができる。
【0034】
図2~
図5は本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料の斜視図である。
【0035】
図2及び
図3は、発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料のうち、一枚物の衣料を示しており、周囲のその他の部分よりも引張応力が強くなるように構成されている領域を点線で示している。
【0036】
図4及び
図5は、発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料のうち、複数のシートを突出を押さえたい部位に配置することによって引張応力が強い部分を設ける実施の形態を示している。
【0037】
図4及び
図5に示すように、スポーツ用の衣料1は、着用者の体を覆うベースシート30と、ベースシート30上において、腹部側長方形b21の少なくとも一部を覆うように配置されている第1胸部シート31と、を有することが好ましい。
【0038】
ベースシート30は、着用者の体を覆うもので、ベースシート30としては繊維を用いた織物または編み物でできた布や、フィルム、シリコン、ゴムなどを用いたシート状のものを使用することができる。
【0039】
第1胸部シート31は、ベースシート30の胸部に配置されるもので、第1胸部シート31としては繊維を用いた織物または編み物でできた布や、フィルム、シリコン、ゴムなどを用いたシート状のものを使用することができる。
【0040】
第1胸部シート31の引張応力は、ベースシート30の引張応力より強いものであってもよいし、第1胸部シート31の引張応力は、ベースシート30の引張応力より弱いものであってもよく、第1胸部シート31とベースシート30の引張応力が同じであってもよいが、第1胸部シート31の引張応力は、ベースシート30の引張応力より強いものであるとより好ましい。
【0041】
第1胸部シート31の引張応力は、身長方向であるy方向の引張応力が、体の身幅方向であるx方向の引張応力よりも強いものでもよいし、身長方向であるy方向の引張応力が、体の身幅方向であるx方向の引張応力よりも弱いものでもよいが、身長方向であるy方向の引張応力と、体の身幅方向であるx方向の引張応力が同じであると好ましい。このような構成とすることで、乳房を外側に向かって押し潰しやすくすることができる。
【0042】
第1胸部シート31の形状は特に限定されず、円形、楕円形、多角形、星形など種々の形状にすることができる。
【0043】
図4及び
図5では、ベースシート30の外側に第1胸部シート31を設ける実施形態を記載しているが、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1における第1胸部シート31の配置位置はこれに限られず、第1胸部シート31はベースシート30の肌側に設けられる構成であってもよい。
【0044】
図2及び
図3のように、ベースシート30に相当するその他の部分23と第1胸部シート31に相当する第1胸部部分24を別々のシートに分けず、引張応力の強弱を編み方や織り方、目の詰まりの程度、使用する糸の太さなどを変更することで、1枚物の衣料1を作製することもできる。1枚物の衣料1とする場合には、シート同士を固定する工程がないため、この部分に縫い目や接着部分がなく、水や空気の抵抗を受けにくいものになる。また、縫い目や接着部分がないため、縫い目や接着面が肌に当たることがなく、肌へのストレスも低減することができる。
【0045】
ただし、1枚物の衣料1の実施形態で、個人差に対応しようとする場合、例えば、オーダーメイドなどの際は、編み分けまたは織り分けの時点で第1胸部部分24の配置位置や大きさを適宜調節する必要があり、オーダーから着用者の手元に届くまでに時間を要する。しかし、上記構成のように、ベースシート30と第1胸部シート31とを別々のシートにすることで、第1胸部シート31を着用者個人個人の所望の大きさで、所望の位置へ配置することが容易になる。
【0046】
第1胸部シート31は、突出した胸部を外側に押し潰すため、腹部側長方形b21の面積の30%以上を覆うように配置されることが好ましく、腹部側長方形b21の面積の50%以上を覆うように配置されることが好ましく、腹部側長方形b21の面積の70%以上を覆うように配置されることがより好ましく、腹部側長方形b21の面積の80%以上を覆うように配置されることがさらに好ましく、腹部側長方形b21の全面を覆うように配置されることが最も好ましい。
【0047】
図4及び
図5に示すように、スポーツ用の衣料1は、ベースシート30上において、第1胸部シート31よりも引張応力が弱く、肩関節側長方形a20の少なくとも一部を覆うように配置されている第2胸部シート32を有することが好ましい。
【0048】
第2胸部シート32は、ベースシート30の胸部に配置されるもので、第2胸部シート32としては繊維を用いた織物または編み物でできた布や、フィルム、シリコン、ゴムなどを用いたシート状のものを使用することができる。
【0049】
第2胸部シート32の引張応力は、ベースシート30の引張応力より強いものであってもよいし、第2胸部シート32の引張応力は、ベースシート30の引張応力より弱いものであってもよく、第2胸部シート32とベースシート30の引張応力が同じであってもよいが、第2胸部シート32の引張応力は、第1胸部シート31の引張応力より弱く、ベースシート30の引張応力より強いものであるとより好ましい。
【0050】
第2胸部シート32の引張応力は、身長方向であるy方向の引張応力が、体の身幅方向であるx方向の引張応力よりも強いものでもよいし、身長方向であるy方向の引張応力が、体の身幅方向であるx方向の引張応力よりも弱いものでもよいが、身長方向であるy方向の引張応力と、体の身幅方向であるx方向の引張応力が同じであると好ましい。このような構成とすることで、乳房を外側に向かって押し潰しやすくすることができる。
【0051】
図6の(a)は、
図3で示す本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料のベースシートの外側面に備えられた第1胸部シート、第2胸部シートの実施の形態を示す正面図である。
図7の(a)も、
図6の(a)と同様に、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料のベースシートの外側面に備えられた第1胸部シート、第2胸部シートの実施の形態を示す正面図である。
図6及び
図7の(b)は、それぞれの図の(a)を矢印方向から見たときのVI-VI線、VII-VII線での断面図である。
図6及び
図7の(a)は、図面に向かって、第1胸部シート、第2胸部シートよりも手前が外側、奥がベースシート側である。
図6及び
図7の(b)は、図面に向かって第1胸部シート、第2胸部シートよりも上側が外側、下側がベースシート側である。
【0052】
図4~
図7では、ベースシート30の外側面に第1胸部シート31と第2胸部シート32を設ける実施形態を記載しているが、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1における第1胸部シート31と第2胸部シート32の配置位置はこれに限られず、第1胸部シート31と第2胸部シート32はベースシート30の肌側に設けられる構成であってもよい。また、第1胸部シート31がベースシート30の外側で第2胸部シート32がベースシート30の肌側に設けられるものや、第2胸部シート32がベースシート30の外側で第1胸部シート31がベースシート30の肌側に設けられるものであってもよい。
【0053】
第2胸部シート32の形状は特に限定されず、円形、楕円形、多角形、星形など種々の形状にすることができる。
【0054】
図2及び
図3のように、ベースシート30に相当するその他の部分23と、第1胸部シート31に相当する第1胸部部分24と、第2胸部シート32に相当する第2胸部部分25を別々のシートに分けず、引張応力の強弱を編み方や織り方、目の詰まりの程度、使用する糸の太さなどを変更することで、1枚物の衣料とすることもできる。1枚物の衣料1とする場合には、シート同士を固定する工程がないため、この部分に縫い目や接着部分がなく、水や空気の抵抗を受けにくいものになる。また、縫い目や接着部分がないため、縫い目や接着面が肌に当たることがなく、肌へのストレスも低減することができる。
【0055】
ただし、1枚物の衣料1の実施形態で、個人差に対応しようとする場合、例えば、オーダーメイドなどの際は、編み分けまたは織り分けの時点で第1胸部部分24及び第2胸部部分25の配置位置や大きさを適宜調節する必要がある。しかし、上記構成のように、ベースシート30と第1胸部シート31と第2胸部シート32とを別々のシートにすることで、第1胸部シート31及び第2胸部シート32を着用者個人個人の所望の大きさで、所望の位置へ配置することが容易になる。
【0056】
第2胸部シート32は、突出した胸部を外側に押し潰すため、肩関節側長方形a20の面積の30%以上を覆うように配置されることが好ましく、肩関節側長方形a20の面積の50%以上を覆うように配置されることが好ましく、肩関節側長方形a20の面積の70%以上を覆うように配置されることがより好ましく、肩関節側長方形a20の面積の80%以上を覆うように配置されることがさらに好ましく、肩関節側長方形a20の全面を覆うように配置されることが最も好ましい。
【0057】
図4及び
図5に示すように、スポーツ用の衣料1は、ベースシート30上であって、引張応力が第2胸部シート32以下である腹部シート33を有し、腹部シート33は下腹部長方形c22の少なくとも一部を覆うように配置されることができる。
【0058】
スポーツ用の衣料1は、ベースシート30上であって、引張応力が第2胸部シート32以上であり第1胸部シート31以下である腹部シート33を有し、腹部シート33が下腹部長方形c22の少なくとも一部を覆うように配置されていることが好ましい。
【0059】
腹部シート33は、ベースシート30の腹部に配置されるもので、腹部シート33としては繊維を用いた織物または編み物でできた布、フィルム、シリコン、ゴムなどを用いたシート状のものを使用することができる。
【0060】
第2胸部シート32、腹部シート33、第1胸部シート31に使用するシートは、織物、編み物、フィルム、シリコン、ゴムなどで構成されたものから適宜選択すればよいが、第2胸部シート32が編み物で腹部シート33が編み物で第1胸部シート31が織物とする組み合わせ方、または、第2胸部シート32が編み物で腹部シート33が織物で第1胸部シート31が織物とする組み合わせ方とすることが好ましい。上記のような組み合わせ方にすることで、乳房を外側に向けて押し潰しやすくすることができる。
【0061】
腹部シート33の引張応力は、ベースシート30の引張応力より強いものであってもよいし、ベースシート30の引張応力より弱いものであってもよく、腹部シート33とベースシート30の引張応力が同じであってもよいが、腹部シート33の引張応力は、第2胸部シート32の引張応力以上であり第1胸部シート31の引張応力以下であることが好ましい。
【0062】
第2胸部シート32及び腹部シート33は全く同じ引張応力、全く同じ素材で構成されていても構わない。
【0063】
また、第1胸部シート31及び腹部シート33は全く同じ引張応力、全く同じ素材で構成されていても構わない。
【0064】
図4及び
図5では、ベースシート30の外側に腹部シート33を設ける実施形態を記載しているが、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1における腹部シート33の配置位置はこれに限られず、腹部シート33はベースシート30の肌側に設けられる構成であってもよい。
【0065】
図2及び
図3のように、ベースシート30に相当するその他の部分23と腹部シート33に相当する腹部部分26を別々のシートに分けず、引張応力の強弱を編み方や織り方、目の詰まりの程度、使用する糸の太さなどを変更することで、1枚物の衣料1を作成することもできる。1枚物の衣料1とする場合には、シート同士を固定する工程がないため、この部分に縫い目や接着部分がなく、水や空気の抵抗を受けにくいものになる。また、縫い目や接着部分がないため、縫い目や接着面が肌に当たることがなく、肌へのストレスも低減することができる。
【0066】
ただし、1枚物の衣料1の実施形態で、個人差に対応しようとする場合、例えば、オーダーメイドなどの際は、編み分けまたは織り分けの時点で腹部部分26の配置位置や大きさを適宜調節する必要があり、オーダーから着用者の手元に届くまでに時間を要する。しかし、上記構成のように、ベースシート30と腹部シート33とを別々のシートにすることで、腹部シート33を着用者個人個人の所望の大きさで、所望の位置へ配置することが容易になる。
【0067】
上記のように、腹部にもシートを設けることで腹部及び胸部が前方に向かって突出するのを防ぐことができ、より水や空気の抵抗を受けにくくすることができる。
【0068】
図8は、図面に向かって直線Fよりも右側に人体の骨格を、図面に向かって直線Fよりも左側に本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料を着用したときの態様を示している正面図である。直線Fは、体の身幅方向xの中心を通り、身長方向yと平行な線である。
【0069】
本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1の腹部シート33は、
図8の、図面に向かって左側の肋骨の最下端部14及び剣状突起13及び図面に向かって右側の肋骨の最下端部15をこの順で繋ぐ直線と、肋骨の最下端部14及び肋骨の最下端部15を通り、肋骨の最下端部14と肋骨の最下端部15よりも体側側に向かって延在する水平線でできた二点鎖線Gよりも下、股の部分を通る水平線を示す二点鎖線Hから上の少なくとも一部を覆うように設けられているとより好ましい。このような構成とすることで、より効果的に腹腔を締め付けることでおなか周りの径を小さくし、スポーツ競技中に水や空気によって受ける抵抗を減らすことができる。
【0070】
第1胸部シート31と腹部シート33は互いに離隔して配置されていることが好ましい。第1胸部シート31と腹部シート33の間の最短距離は、0.5cm以上であると好ましく、1cm以上であるとより好ましく、1.5cm以上であるとさらに好ましい。第1胸部シート31と腹部シート33の間の最短距離の上限は10cm以下、8cm以下、7cm以下などにすることができる。このような構成とすることで、腹部と胸部の突出を抑制しつつ、スポーツ競技中にウエストを捻りやすくすることや、呼吸をしやすくすることができ、運動パフォーマンスを向上させることができる。
【0071】
スポーツ用の衣料1に設けられる第2胸部シート32の面積は、第1胸部シート31の面積の1/4倍以上であると好ましく、1/3倍以上であるとより好ましく、1/2倍以上であるとさらに好ましい。第2胸部シート32の面積は、第1胸部シート31の面積の4倍以下であると好ましく、3倍以下であるとより好ましく、2倍以下であるとさらに好ましい。上記構成とすることで、より効果的に乳房を外側に向けて押し潰すことができる。
【0072】
スポーツ用の衣料1に設けられる第2胸部部分25の面積は、第1胸部部分24の面積の1/4倍以上であると好ましく、1/3倍以上であるとより好ましく、1/2倍以上であるとさらに好ましい。第2胸部シート32の面積は、第1胸部シート31の面積の4倍以下であると好ましく、3倍以下であるとより好ましく、2倍以下であるとさらに好ましい。上記構成とすることで、より効果的に乳房を外側に向けて押し潰すことができる。
【0073】
図2~
図5では、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1の第1胸部部分は、左右の胸部に1つずつ合計2つ設ける構成となっているが、右側または/及び左側の胸部において、第1胸部シート31が2以上組み合わせられている構成としても構わない。第2胸部シート32も同様に、右側または/及び左側の胸部において、第2胸部シート32が2以上組み合わせられている構成としても構わない。
【0074】
図4~
図6に示すように、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1に設けられた第1胸部シート31の一部と第2胸部シート32の一部が接していることが好ましい。第1胸部シート31の一部と第2胸部シート32の一部が接していない場合、第1胸部シート31と第2胸部シート32の間にベースシートのみが存在する部分が生じることとなり、第1胸部シート31と第2胸部シート32との間で乳房部分に段差ができてしまい、スポーツ競技を行う際に水や空気による抵抗を抑制する効果が充分に発揮されない可能性がある。そのため、第1胸部シート31の一部と第2胸部シート32の一部が接している構成とすることが好ましい。また、同様の理由で、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1に設けられた第1胸部シート31の一部と第2胸部シート32の一部が重なるように構成することも好ましい。第1胸部シート31の一部と第2胸部シート32の一部の重なり部分はホットメルト接着剤などを用いて接着することができる。第1胸部シート31の一部と第2胸部シート32の一部が重なるように構成される場合は、重なった部分の引張応力がより強いものになるため、より確実に乳房の突出を抑えることができる。
【0075】
第1胸部シート31の縁の少なくとも一部が、乳頭部11を中心とする半径2cmの円内を通っていることが好ましく、半径1.5cmの円内を通っていることがより好ましく、半径1cmの円内を通っていることがさらに好ましい。上記構成とすることで、より効果的に乳房を外側に向けて押し潰すことができる。
【0076】
第2胸部シート32の縁の少なくとも一部が、乳頭部11を中心とする半径2cmの円内を通っていることが好ましく、半径1.5cmの円内を通っていることがより好ましく、半径1cmの円内を通っていることがさらに好ましい。上記構成とすることで、より効果的に乳房を外側に向けて押し潰すことができる。
【0077】
第1胸部シート31の一部と第2胸部シート32の縁の一部が乳頭部11を通るように構成すると特に好ましい。上記構成とすることで、さらに効果的に乳房を外側に動かすことができる。
【0078】
図4~
図7に示すように、第1胸部シート31の一部と第2胸部シート32の一部を覆うテープ部材34を更に有していることが好ましい。
【0079】
テープ部材34は、ベースシート30の胸部に配置されるもので、テープ部材34としては繊維を用いた織物または編み物でできた布や、フィルム、シリコン、ゴムなど用いたシート状のものを使用することができる。
【0080】
テープ部材34の引張応力は、ベースシート30の引張応力より強いものであってもよいし、弱いものであってもよく、テープ部材34とベースシート30の引張応力が同じであってもよいが、テープ部材34の引張応力は、第1胸部シート31の引張応力以下、第2胸部シート32の引張応力以上であることが好ましい。
【0081】
図6の(a)は、
図3で示す本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料のベースシートの外側面に備えられた第1胸部シート、第2胸部シート、テープ部材の実施の形態を示す正面図である。
図7の(a)も、
図6の(a)と同様に、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料のベースシートの外側面に備えられた第1胸部シート、第2胸部シート、テープ部材の実施の形態を示す正面図である。
図6及び
図7の(b)は、それぞれの図の(a)を矢印方向から見たときのVI-VI線、VII-VII線での断面図である。
図6及び
図7の(a)は、図面に向かって、第1胸部シート、第2胸部シート、テープ部材よりも手前が外側、奥がベースシート側である。
図6及び
図7の(b)は、図面に向かって第1胸部シート、第2胸部シート、テープ部材よりも上側が外側、下側がベースシート側である。
【0082】
第1胸部シート31の一部と第2胸部シート32の一部がテープ部材34で覆われている場合は、
図7(a)で示すように、第1胸部シート31と第2胸部シート32の間に隙間が存在したとしても、それをテープ部材が覆うため、第1胸部シートと第2胸部シートとの間で乳房部分に段差ができにくく、水や空気による抵抗を生じにくくすることができる。このため、より効果的に乳房を外側に向けて押し潰すことができる。
【0083】
また、
図6及び
図7では、第1胸部シート31と第2胸部シート32よりも外側にテープ部材34が設けられる構成となっているが、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1のテープ部材34の位置はこの位置に限られることはなく、例えば、第1胸部シート31と第2胸部シート32よりもベースシート30側にテープ部材34が設けられる構成としてもよい。さらに言えば、第1胸部シート31よりも肌側、第2胸部シート32よりもベースシート30側にテープ部材34が設けられるような構成であってもよいし、第2胸部シート32よりも肌側、第1胸部シート31よりもベースシート30側にテープ部材34が設けられるような構成であってもよい。
【0084】
図6に示す実施の形態の場合、超音波接着を用いることで、第1胸部シート31及び第2胸部シート32の切断と接着を同時に行うことができる。また、超音波接着が行われた第1胸部シート31及び第2胸部シート32の切断、接着部分を覆うようにテープ部材34を配置することで、第1胸部シート31と第2胸部シート32の間に隙間ができにくくなるため、より確実に乳房を外側に向けて押し潰すことができる。
【0085】
テープ部材34の縁の少なくとも一部が、乳頭部11を中心とする半径2cmの円内を通ることが好ましく、半径1.5cmの円内を通ることがより好ましく、半径1cmの円内を通ることがさらに好ましい。上記構成とすることで、より効果的に乳房を外側に向けて押し潰すことができる。
【0086】
テープ部材34が乳頭部11を通るように構成すると特に好ましい。上記構成とすることで、さらに効果的に乳房を外側に動かすことができる。
【0087】
本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1のテープ部材34の形状について、
図4、
図6、
図7では四角形のものが記載されているが、テープ部材34の形態はこれに限られることはなく、楕円形、円形、多角形、星形など種々の形にすることができる。
【0088】
また、衣料1のテープ部材34について、
図4、
図6、
図7では左右それぞれの胸部で1つずつ設ける形態が記載されているが、これに限られることはなく、左側または/及び右側の胸部において2以上のテープ部材34が設けられる構成としてもよい。
【0089】
図4、
図6、
図8に示すように、スポーツ用の衣料1を正面から見た時に第1胸部シート31の平面投影図形と第2胸部シート32の平面投影図形とを合体した平面図形が五角形であることが好ましい。第1胸部シート31の平面投影図形と第2胸部シート32の平面投影図形とを合体した平面図形が五角形になるようにすることで、第1胸部シート31と第2胸部シート32は、乳房を面で捉えることができ、より効率よく乳房を潰すことができる。
【0090】
図7に示すように、スポーツ用の衣料1を正面から見た時に第1胸部シート31の平面投影図形と第2胸部シート32の平面投影図形とテープ部材34の平面投影図形を合体した平面図形が五角形であっても好ましい。第1胸部シート31の平面投影図形と第2胸部シート32の平面投影図形とテープ部材34の平面投影図形を合体した平面図形が五角形になるようにすることで、第1胸部シート31と第2胸部シート32は、乳房を面で捉えることができるうえ、第1胸部シート31と第2胸部シート32との間で段差ができにくく、効率よく乳房を潰すことができる。
【0091】
図6、
図7及び
図8に示すように、五角形の最下角を通る水平線Eと、五角形の有する辺のうち五角形の最下角から剣状突起13の存在する側に延びている一辺との間の角度βが、3°以上40°以下であることが好ましい。上記角度βについて上記範囲内にすることで、着用者の乳房を脇の下の方向に向かってさらに効率よく潰すことができる。
【0092】
図6、
図7、
図8で示されている五角形の最下角を通る水平線Eと、五角形の有する辺のうち五角形の最下角から剣状突起13の存在する側に延びている一辺との間の角度βは、3°以上であると好ましく、5°以上であるとより好ましく、8°以上であるとさらに好ましい。また、角度βは、40°以下であると好ましく、38°以下であるとより好ましく、35°以下であると更に好ましい。上記構成とすることで、着用者の乳房を着用者の脇下方向に押し流しやすくすることができる。
【0093】
スポーツ用の衣料1は、
図4~
図7に示すように、左右に1つずつ第1胸部シート31を有し、2つの第1胸部シート31が互いに左右に離れていることが好ましい。このように、2つの第1胸部シート31の間が離れていることで、着用者の胸骨付近での着圧が緩和されるため、着用者は呼吸がしやすくなる。また、上記構成により、襟ぐり4から水や空気が浸入してくるのを抑制することもできる。
【0094】
本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1の左右に1つずつ設けられた第1胸部シート31同士の間の最短距離は、0.5mm以上であると好ましく、1mm以上であるとより好ましく、3mm以上であるとさらに好ましい。距離の上限は、40mm以下であると好ましく、35mm以下であるとより好ましく、30mm以下であるとさらに好ましい。上記構成とすることで、胸部の締め付けを乳房部分に限定し、着用時の呼吸を行いやすくすることができる。
【0095】
図9は、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料を、斜め後ろから見た時の斜視図である。
【0096】
本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1の背中部分は、
図9に示すように、背穴5を有する形状であることが好ましい。スポーツ用の衣料1を着用して水泳を行う際には、スポーツ用の衣料1の背中部分に背穴5が設けられていると、泳ぎの上で重要な体の捻れがスポーツ用の衣料1によって妨げられるのを防ぐことができる。また、背穴5があることで、第1胸部シート31が設けられている部分と背中の中心付近との間では着圧が軽減されるため、胸部に設けられた着圧によって呼吸がしにくくなるのを防ぐことができる。
図9の実施形態では、背穴5は円形であるが、背穴5の形態はこれに限られることはなく、四角形や楕円形、星形など種々の形状にすることができる。
【0097】
スポーツ用の衣料1の背穴5は大きければ大きいほど体の動きに追従しやすくなるため、背穴5の直径の長さは、1cm以上であると好ましく、3cm以上であるとより好ましく、5cm以上であるとさらに好ましい。スポーツ用の衣料1の背穴5は小さければ小さいほど胴体の締め付けをきつくすることができるため、背穴5の直径の長さは、30cm以下であると好ましく、28cm以下であると好ましく、25cm以下であるとさらに好ましい。背穴5の直径は平置きで測るものとし、背穴5の形状が円形でない場合には、背穴5の外接円と内接円の直径の平均値を背穴5の直径とする。
【0098】
図5に示すように、第1胸部シート31は、スポーツ用の衣料1の襟ぐり4から脇の下に向かって連続して延在するように配置されていることが好ましい。このように、第1胸部シート31が、襟ぐり4から脇の下に向かって連続して延在することで、乳房をより強く外側に向けて押しつぶすことができる。
【0099】
図5に示すように、第2胸部シート32は、スポーツ用の衣料1の襟ぐり4から脇の下に向かって連続して延在するように配置されていることが好ましい。このように、第2胸部シート32が、襟ぐり4から脇の下に向かって連続して延在することで、乳房をより強く上外側に向けて押しつぶすことができる。
【0100】
図5に示すように、テープ部材34は、スポーツ用の衣料1の襟ぐり4から脇の下に向かって連続して延在するように配置されていることが好ましい。このように、テープ部材34が、襟ぐり4から脇の下に向かって連続して延在することで、乳房をより強く上外側に向けて押しつぶすことができる。
【0101】
スポーツ用の衣料1は、編み物または織物で構成されていることが好ましい。スポーツ用の衣料1の部位毎の伸縮性や引張応力は、編み方や織り方、糸の太さ等を変更することで調節することができ、例えば、
図2及び
図3に示すような引張応力の異なる領域を有する1枚物の衣料1の場合は、シート同士を固定する工程がないため、この部分に縫い目や接着部分がなく、水や空気の抵抗を受けにくいものになる。また、上記のようなスポーツ用の衣料1は、縫い目や接着部分がないため、縫い目や接着面が肌に当たることがなく、肌へのストレスも低減することができる。
【0102】
図2及び
図3では、引張応力の異なる部分を点線で示している。
図2及び
図3の実施の形態のスポーツ用の衣料1は、引張応力の強い第1胸部部分24と、第1胸部部分24よりも引張応力の弱い第2胸部部分25が、編み方や織り方、糸の太さ等を変更することによって1枚の織物や編み物で構成されているものである。引張応力が第1胸部部分24以下であり第2胸部部分25以上である腹部部分26を設ける場合も同様に、編み方や織り方、糸の太さ等を変更することによって1枚の織物や編み物で構成することができる。
【0103】
引張応力の強い部分である第1胸部部分24と引張応力の弱い部分である第2胸部部分25について、編み分けによってスポーツ用の衣料1に設ける場合は、繊維を編み込む際の編み目の密度の高低によって引張応力の強弱を編み分ける方法や、繊維の種類や太さを変更して編み込む方法などを利用することができる。編み目の密度の高低によって引張応力の強弱をつける場合、引張応力を弱くする場合には編み目の密度を低くすればよく、引張応力を強くする場合には編み目の密度を高くすればよい。
【0104】
第1胸部部分24と第2胸部部分25を織分けによって本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1に設ける場合には、使用する繊維の種類や太さを変更する方法などを利用することができる。
【0105】
上記のように、1枚物のスポーツ用の衣料1とする場合には、シート同士を固定する工程がないため、この部分に縫い目や接着部分がなく、水や空気の抵抗を受けにくいものになる。また、縫い目や接着部分がないため、縫い目や接着面が肌に当たることがなく、肌へのストレスも低減することができる。
【0106】
第1胸部部分24及び第2胸部部分25の形状は乳房を外側に向けて押しつぶすことができる形状であればどのような形でもよく、例えば
図2のように全ての辺が直線状である多角形にしてもよいし、
図3のように襟ぐりから脇下方向に向かって乳房に曲線を描くようなものであってもよいし、図示はしないが波打っている部分を有するものであってもよい。
【0107】
図示はしないが、第1胸部部分24及び第2胸部部分25の境界部分を覆うようにテープ部材34を設ける構成としてもよい。テープ部材34は、外側面に設けられてもよいし肌側面に設けられてもよいが、空気抵抗や水の抵抗を抑える観点から肌側面に設けられることが好ましい。
【0108】
図10の(a)は、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料に備えられた第1胸部部分、第2胸部部分、第3胸部部分の実施の形態を示す正面図である。
図10(a)では第2胸部部分よりも引張応力が弱いその他の部分については記載を省略している。
図10の(b)は、(a)を矢印方向から見たときのX-X線での断面図である。
図10の(a)は、図面に向かって、第1胸部部分、第2胸部部分、第3胸部部分、第2胸部部分よりも引張応力が弱いその他の部分よりも手前が外側、奥が肌側である。
図10の(b)は、図面に向かって第1胸部部分、第2胸部部分、第3胸部部分、第2胸部部分よりも引張応力が弱いその他の部分よりも上側が外側、下側が肌側である。
【0109】
図10に示すように、第1胸部部分24及び第2胸部部分25の間に第3胸部部分27を設ける構成としてもよい。第3胸部部分27を設ける場合は、第1胸部部分24よりも引張応力が強くなるように構成されることが好ましい。上記構成とすることで、乳房をより確実に外側に向かって押し潰すことができる。
【0110】
肩関節側長方形a20と腹部側長方形b21をつかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で30%伸張したときの引張応力[N]が、3N以上であると好ましく、4N以上であるとより好ましく、5N以上であるとさらに好ましい。また、肩関節側長方形a20と腹部側長方形b21をつかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で30%伸張したときの引張応力[N]は、30N以下であることが好ましく、25N以下であることがより好ましく、20N以下であることがさらに好ましい。肩関節側長方形a20と腹部側長方形b21の引張応力[N]について上記のようにすることで、胸部を締め付けすぎることなく、着用者の乳房を外側に向けて押し潰すことができる。
【0111】
腹部側長方形b21をつかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で30%伸張したときの引張応力[N]から肩関節側長方形a20をつかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で30%伸張したときの引張応力[N]を引いた差が、0.3N以上であることが好ましく、0.4N以上であることがより好ましく、0.5N以上であることがさらに好ましい。腹部側長方形b21の引張応力[N]から肩関節側長方形a20の引張応力[N]を引いた差が、25N以下であることが好ましく、20N以下であることが好ましく、15N以下であることがさらに好ましい。腹部側長方形b21の引張応力[N]と肩関節側長方形a20の引張応力[N]の差について上記のようにすることで、腹部側長方形b21と肩関節側長方形a20との間で乳房において生じる段差ができにくくなり、水や空気による抵抗を生じにくくすることができる。
【0112】
図11は、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料の腹部から上に相当する部分を示す正面図であり、スポーツ用の衣料の胸部領域における引張応力の測定を行うための試験片の切り出し方を示す。ただし、
図11では、便宜上、特定マネキンに本発明のスポーツ用の衣料を着用させた状態で試験片となる腹部側長方形bと胸部長方形dを記載しているが、本明細書内で記載しているように、スポーツ用の衣料の乳頭部に印をつける工程を終えた後は、特定マネキンからスポーツ用の衣料を外し、当該長方形を特定するための作図を行って切り出すものである。
【0113】
図11で示されているスポーツ用の衣料1の腹部側長方形b21、胸部長方形d28について、胸部領域に存在する下記胸部長方形d28の引張応力は、腹部側長方形b21の引張応力よりも大きいことが好ましい。ただし、胸部長方形d28の引張応力は、下記の(1)~(5)に記載の手順により測定されるものである。(1)特定マネキン10に、スポーツ用の衣料1を着用させたときの乳頭部11に印をつける。(2)スポーツ用の衣料1を特定マネキン10から外して平置きにし、左右の乳頭部11同士を結ぶ直線Aとの間の角度が32°となり、尚且つ、胸部で中心側から体側側に向かって下がっていて乳頭部11を通る直線Bを描く。(3)スポーツ用の衣料1の胸部に、直線Bと平行となる長辺を有する胸部長方形d28を描く。(4)胸部長方形d28の短辺は2.0cmであり長辺が10cmであり、乳頭部11と、胸部長方形d28の2本の対角線28tの交点と、が重なる。(5)胸部長方形d28をスポーツ用の衣料1から切り出し、つかみ幅2.0cm、つかみ間隔5cmとなるようにつかんだ状態で、5%伸張したときの引張応力[N]を測定する。
【0114】
上記のように、乳頭部11付近に引張応力の強い部分を設けることで着用時に乳頭部分が前方に向かって突出するのを防ぐことができ、より水や空気の抵抗を受けにくくすることができる。このような構成とすることで、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1は、特に水泳やタイムを競うウィンター競技を行う際に、水や空気の抵抗による推進力の低下を抑制することができる。
【0115】
本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1は着用者の体を覆うシートで形成されている。スポーツ用の衣料1の形状は、
図2~
図5のように膝より上の太ももを覆う部分を有するハーフスパッツの形や、図示はしていないがハイレグカット型等の形にすることができる。スポーツ用の衣料1の形状は、上記の形状に限定されることはなく、例えばロングスパッツ型、トレンカ型、上身頃と下身頃が分かれたセパレート型等の種々の形状にすることができる。
【0116】
本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1のシートを構成する素材としては、綿、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、シリコン、ゴム等を用いることができるが、型崩れしにくく、乾きが早いという性質を持つポリエステル及び、伸縮自在でゴムよりも老化しにくいという性質を持つポリウレタンを含んでいることが好ましい。
【0117】
本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1をタイムを競うウィンターウェア用の衣料として使用する際は、スポーツ用の衣料1のシートは、空気抵抗を軽減する観点から、編み物、通気性を有さないメンブレム、編み物の3層構造とすることが好ましい。
【0118】
本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1を構成するシートは、分厚すぎるとその分スポーツ用の衣料1を着用している部分の体の厚みが増し、水や空気による抵抗が大きくなるため、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1を構成する生地の厚みの上限は、2.5mm以下であると好ましく、2.0mm以下であるとより好ましく、1.5mm以下であると更に好ましい。スポーツ用の衣料1を構成するシートの厚みの下限は、0.001mm以上、0.01mm以上などにすることができる。このような構成とすることで、スポーツ競技中の水や空気による抵抗を抑制するとともに、着用時の軽量感を向上させることができる。
【0119】
また、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1を構成するシートの面積あたりの重さの上限は、300g/m2以下であると好ましく、250g/m2以下であるとより好ましく、200g/m2以下であるとさらに好ましい。スポーツ用の衣料1を構成するシートの面積あたりの重さの下限は、軽ければ軽いほど好ましいが、例えば、30g/m2以上であると好ましく、20g/m2以上であるとより好ましく、10g/m2以上であるとさらに好ましい。このような構成とすることで、着用時の軽量感を向上させることができる。
【0120】
本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1を構成するシートは、撥水加工された部分を有することが好ましい。スポーツ用の衣料1を構成するシートが、撥水加工された部分を有することで、スポーツ用の衣料1がスポーツ競技中に汗や水を含んで重くなることを防ぎ、軽量感を向上させることができる。このため、上記構成とすることで、着用者の運動パフォーマンスを向上させることができる。
【0121】
本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1を構成するシートは、フッ素樹脂撥水剤やシリコン系撥水剤などを使用して撥水加工をすることができる。
【0122】
スポーツ、特に水泳を行う際に着用されるスポーツ用の衣料1は、腕を肩から大きく回したり、胴体を捻ったりするような体の動きに追従して伸び縮みできる必要がある。そのため、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1を構成するシートの、縦方向及び横方向の伸長回復率は、70%以上であると好ましく、75%以上であるとより好ましく、80%以上であるとさらに好ましく、完全に回復できること(100%)が最も好ましい。伸長回復率は、JIS L 1096A法に準じて測定する。
【0123】
本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1を水泳競技を行う際に使用する場合には、
図2~
図5、
図9に示すように、腕を肩から大きく回したり、胴体を捻ったりするような体の動きに追従しやすいよう、衣料1は袖があるものではなく、肩紐2を有し、袖を有さないものとすることが好ましい。
【0124】
また、背中側に位置する肩紐2の付け根は、
図9で示す固定部6のように、できるだけ着用者の肩の高さよりも下で固定されることが好ましい。このような構成とすることで、左右の肩紐2の間が大きく開くことが可能となり、スポーツ用の衣料1の着脱がしやすくなる。また、
図9の実施の形態のように、肩紐2が肩から背中の中心に向かって延びているような構成とすることで、肩紐2がたすき状に斜めに引っ張られるため、肩紐2のズレ落ちを防止することができる。
【0125】
水泳やタイムを競うウィンター競技を行う場合、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1は、着用者の胴囲よりも10~40%程度小さい設計とすることが好ましい。上記構成とすることで、体を締め付け、コンプレッション効果を発揮することができ、水や空気の抵抗を減らすことができる。
【0126】
上記のように、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1について、人体よりも小さい設計とした場合、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1は、着用するのに充分伸長することができる素材で構成されている必要がある。このため、本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1の切断時の伸び率は、35%以上であると好ましく、40%以上であるとより好ましく、45%以上であるとさらに好ましい。本発明の実施の形態に係るスポーツ用の衣料1の切断時の伸び率は、200%以下、180%以下、150%以下などにすることができる。切断時の伸び率は、JIS L 1096A法に準じて測定する。
【0127】
以上の通り、本発明のスポーツ用の衣料は、女性の体に特有の突出した乳房を外側に向けて押し潰すことができ、着用者の胸部の前後方向の幅を小さくすることができるものである。外側へ向かって押しつぶされる乳房は、着用者の脇下方向に向かってスポーツ用の衣料の中に収納される。これにより、着用者の乳房が前方に向かって突出することを抑制することができるため、スポーツ競技時において着用者の胸部部分で生じる水や空気による抵抗を低減することができる。また、女性に限らず、乳房が女性のように膨らんでしまう症状が出ることで知られるクラインフェルター症候群の男性等も、本発明のスポーツ用の衣料を着用することで、胸部の突出を抑えることができるため、胸部における水や空気による抵抗を低減することができる。
【符号の説明】
【0128】
1: スポーツ用の衣料
2: 肩紐
3: 裾
4: 襟ぐり
5: 背穴
6: 固定部
10: 特定マネキン
11: 乳頭部
12: へそ部
13: 剣状突起
14: 右側の肋骨の最下端部
15: 左側の肋骨の最下端部
20: 肩関節側長方形a
20m:肩関節側長方形aの長辺の中点
21: 腹部側長方形b
21m:腹部側長方形bの長辺の中点
22: 下腹部長方形c
22t:下腹部長方形cの対角線
23: 第2胸部部分よりも引張応力が弱いその他の部分
24: 第1胸部部分
25: 第2胸部部分
26: 腹部部分
27: 第3胸部部分
28: 胸部長方形d
28t:胸部長方形dの対角線
30: ベースシート
31: 第1胸部シート
31f:第1胸部シートの縁
32: 第2胸部シート
32f:第2胸部シートの縁
33: 腹部シート
34: テープ部材
A: 直線A
B: 直線B
C: 直線C
D: 水平線D
E: 水平線E
F: 直線F
G: 二点鎖線G
H: 二点鎖線H