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特許7142018コントラスト低減層を有する再帰性反射物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】コントラスト低減層を有する再帰性反射物品
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/12 20060101AFI20220915BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20220915BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220915BHJP
【FI】
G02B5/12
G02B5/22
B32B7/023
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019544848
(86)(22)【出願日】2018-02-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 US2018018639
(87)【国際公開番号】W WO2018152473
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】62/461,173
(32)【優先日】2017-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ウィートリー,ジョン エー.
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-508749(JP,A)
【文献】特開2016-118584(JP,A)
【文献】特表2012-512428(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0353029(US,A1)
【文献】米国特許第03758193(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102902001(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/128
G02B 5/22
B32B 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光入射面を有する再帰性反射物品であって、
再帰性反射層と、
前記再帰性反射層と比べて前記光入射面のより近くに配置されたコントラスト低減層とを含み、
前記コントラスト低減層が、前記再帰性反射の近赤外再帰反射効率を、50%超、低減
前記コントラスト低減層と比べて前記光入射面のより近くに又は前記光入射面からより離れて配置された可視吸収層を更に含み、前記可視吸収層が、可視帯域内の光の少なくとも80%を吸収すると共に、近赤外光を透過させ、
前記再帰性反射物品が、近赤外光により照会したときに空間的に変化するパターンを示す一方で、該パターンが人間にとって不可視である、
再帰性反射物品。
【請求項2】
前記コントラスト低減層が、吸収によって前記近赤外再帰反射効率を低下させる、
請求項1に記載の再帰性反射物品。
【請求項3】
前記コントラスト低減層が、散乱によって前記近赤外再帰反射効率を低下させる、
請求項1に記載の再帰性反射物品。
【請求項4】
前記コントラスト低減層が、バルク散乱体を含む、請求項3に記載の再帰性反射物品。
【請求項5】
前記コントラスト低減層が、表面散乱体を含む、請求項3に記載の再帰性反射物品。
【請求項6】
前記コントラスト低減層がパターン化され、少なくとも第1と第2のセクションを含み、前記再帰反射物品の近赤外再帰反射効率が、前記第1と第2のセクションで異なる、請求項1に記載の再帰性反射物品。
【請求項7】
前記コントラスト低減層が、パターン化され、少なくとも第1と第2のセクションを含み、前記第1のセクションが近赤外光の80%超を吸収し、前記第2のセクションが近赤外光の80%未満を吸収する、請求項1に記載の再帰性反射物品。
【請求項8】
前記再帰性反射物品が可撓性を有する、請求項1に記載の再帰性反射物品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
再帰性反射物品は、少なくとも再帰性反射要素を含む構造体である。再帰性反射要素は、入射光を実質的に同じ方向に反射し返す。再帰性反射要素としては、コーナーキューブプリズム形再帰性反射体、ビーズ形再帰性反射体等が挙げられる。
【発明の概要】
【0002】
一態様において、本明細書は、再帰性反射物品に関する。特に、本明細書は、光入射面を有し、再帰性反射層と、再帰性反射層に比べて光入射面のより近くに配置されたコントラスト低減層とを含む、再帰性反射物品に関する。コントラスト低減層は、再帰性反射基材の近赤外再帰反射効率を50%超減少させる。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】再帰性反射層の側面概略図である。
図2】再帰性反射物品の側面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
再帰性反射物品は、多くの状況において有用である。例えば、可読性又は視認性を促進するための標識又はラベルの直接かつ持続的な照明を提供することは、不可能なほどコスト高であるか、又は実際的ではない。その代わりに、再帰性反射体を使用することにより、自動車のヘッドライトなどの光源からの光が、「オンデマンド」照明を提供することができ、観察者が標識を見て、解釈することを可能にする。
【0005】
輸送インフラストラクチャが、より複雑になるとともに、車両は、より多くの運転自律性を得つつある。安全かつ効果的な運行のために、駐車支援、自律的クルーズコントロール、及び車線逸脱警告から、衝突回避及び交通標識の解釈を含む、完全自立運行及び運転に至るまで、タスクを実行するために、感知モジュールの車両への組み込みが多くなっている。
【0006】
車両の周囲の世界を感知するために、車両は、1つ又は2つ以上の光点を発するセンサーのセットを使用する。例えば、ライダー(光レーダー)システムは、潜在的な障害物又は情報物体を検出するために、周囲を通過移動する光の点のコンステレーションを使用してもよい。これらの照会用光ビームは、狭い波長帯、例えば、2~20nmを使用してもよく、又は広い波長帯、例えば、100nm以上を使用してもよい。
【0007】
これらのタイプのシステムの課題は、異なるレベルの反射率を有する物体を同時に監視し、検出しなければならず、センサーシステムを適切な利得レベルに較正又は調整することが困難である。例えば、車両は、木、他の車両、及び交通標識と同時に歩行者を感知しなければならない。高度に反射性があるように設計された交通標識は、センサーシステムを圧倒して、反射性物体と非反射性物体の両方を感知することを非常に難しくするかもしれない。システムは、これらの両方のタイプの物体を同時に検出する感度を有することが必要であるため、単純に検出器における利得を調整することによって補正することができない。更に、交通標識が、車両センサーによって読み取られる符号化又はその他のパターン化された情報を含む場合、正確な検出と解釈を得ることを可能にするためには、利得が正しいレベルであることが、いっそう重要である。
【0008】
図1は、再帰性反射層の側面概略図である。再帰性反射層100が、入射光線110、及び、再帰性反射層によって再帰反射されている再帰反射光線120とともに図示されている。再帰性反射層100は、光を実質的にその光源に向かって反射するような光学構造を有する。換言すれば、任意の入射光線は、その入射角から実質的に180°反射される。例えば、入射光線110は、再帰性反射層100に対して実質的に同じ角度を有する再帰反射光線120として再帰反射される。再帰性反射層の光学構造の幾何学的形状のため、再帰反射光線が入射光線からわずかに平行移動していてもよい。換言すれば、入射光線と再帰反射光線は実質的に平行であるが、一致する必要はない。
【0009】
図2は、再帰性反射物品の側面概略図である。再帰性反射物品200は、再帰性反射層210、遅延層220、及びコントラスト減衰層230を含む。
【0010】
再帰性反射層210は、任意の好適な再帰性反射層又は層の組み合わせであってもよい。好適な再帰性反射体としては、金属裏地の、又は裏側が空気であるプリズム形(コーナーキューブ)再帰性反射体、金属裏地のビーズ形再帰性反射体、及び任意選択的に、例えば、真珠光沢又は他の反射性フレーク材料を含む結合剤に部分的に埋められたビーズ形再帰性反射体が挙げられる。
【0011】
再帰性反射層は、任意の好適なサイズとすることができ、任意の好適なサイズの要素を有してもよい。例えば、再帰性反射層に使用される微細複製されたプリズム又はビーズは、サイズ(幅又は直径)が数マイクロメートル、サイズが数十マイクロメートル、サイズが数百マイクロメートル、又はサイズが数ミリメートル、更にはサイズが数センチメートルであってもよい。適用のために適切かつ好適な、複数の異なるサイズ及びサイズ分布のビーズを利用してもよい。対象とする再帰反射波長により、回折及びその他のサブ波長特徴の効果が、所望の光学性能に対して影響を及ぼすこと、更には支配的になることを防止するために、特定の実用的な最小特徴サイズがあるかもしれない。
【0012】
ビーズ形再帰性反射体については、ガラスビーズが一般的に使用されるが、任意の実質的に球状の材料を使用することができる。材料は、耐久性、耐環境堅牢性、製造可能性、屈折率、コーティング可能性、又は任意のその他の物理的、光学的、又は材料的特性に基づいて選択されてもよい。ビーズは、例えば、真珠光沢又は金属フレークを含む、反射性結合材に部分的に覆われてもよく、又は、蒸着コーティング、スパッタコーティング、あるいは任意の他の好適なプロセスによって部分的に金属化されてもよい。いくつかの実施形態では、ビーズは、誘電性材料でコーティングされてもよい。いくつかの実施形態では、金属又は金属化フィルムが、ビーズ表面に積層されるか、又は別の方法で取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、コーティング又は層は、スペクトル選択的反射体であってもよい。いくつかの実施形態では、ビーズは、再帰性反射体の光入射面と、基材としての金属又は金属化ポリマーフィルムの間に、非反射性結合材を通過する光路を形成してもよい。結合材は、任意の物理的特性を有してもよく、再帰性反射層に特定の所望の特性を付与するものであってもよい。例えば、結合材は、再帰性反射物品に発色効果を与える顔料又は染料を含んでもよい。
【0013】
プリズム形再帰性反射体については、(少なくとも対象とする波長について透明な)透明媒質に、任意の好適なプリズム形状が、微細複製されるか、又は別の方法で形成されてもよい。いくつかの実施形態では、注型及び硬化微細複製プロセスを使用してプリズム形表面を形成する。例えば、輝度向上フィルム(Brightness Enhancing Film,BEF)におけるプリズムのような、直角線形プリズムを使用することができるが、このようなプリズムは、非常に広い角度範囲にわたっては再帰反射しない。コーナーキューブは、再帰性反射プリズム形状として広く使用され、各入射光線は、入射方向に戻される前に3回反射される。その他、より多くのファセットを有する表面が、プリズム形の再帰性反射体として使用されてもよい。任意の好適な微細複製可能な樹脂を使用することができ、特に、液体又は流動性の形態で塗布され、その後硬化され、ツールから取り出される樹脂が使用されてもよい。ツールは、(化学的又は反応性イオンエッチングの)エッチング、ダイヤモンド旋削、その他を含む、任意の好適なプロセスによって形成することができる。いくつかの実施形態では、ツールは、完全なプリズム形シート表面パターンを被覆する、融合、又はその他の方法で取り付けられた複数の部品の集合とすることができる。硬化は、熱又は電磁放射線を与えることによって行われてもよい。取り扱い又は硬化前処理中に、意図せずして、一部又は全部が硬化することのないように、紫外線硬化性樹脂、又は一般的ではない周囲条件によって硬化し得る樹脂を選択してもよい。いくつかの実施形態では、付加製造又は減法製造プロセスを用いて、微細複製のためのツール表面又はプリズム表面自体のいずれかを形成してもよい。
【0014】
遅延層220は、光の直交成分のうちの一方の偏光を変化させるために、その成分を選択的に遅延させる、任意の好適な遅延層とすることができる。いくつかの実施形態では、遅延層220は、1/4波長リターダとして構成されてもよい。1/4波長リターダは、対象とする特定波長λについて、遅延特性λ/4を有する。所与の波長の光のための1/4波長リターダは、その光を円偏光から直線偏光に、又はその逆方向に、変換する。いくつかの適用では、1/4波長リターダは、完全なλ/4遅延特性を有せずに、許容可能な範囲で機能するものであってもよい。いくつかの適用では、アクロマティックリターダを使用することにより、例えば、2nm、10nm、20nm、40nm、50nm、100nm、150nm、200nm、300nm、400nm、又は、500nmにも及ぶ波長帯にわたって実質的に1/4波長遅延特性を維持することが可能にされてもよい。いくつかの実施形態では、1/4波長リターダは、近赤外波長域全体、例えば、700~1400nmにわたって実質的に1/4波長遅延特性を有する。いくつかの実施形態では、1/4波長リターダは、可視波長帯全体、例えば、400~700nmにわたって実質的に1/4波長遅延特性を有する。いくつかの実施形態では、1/4波長リターダは、近赤外域及び可視光域の両方にわたって実質的に1/4波長遅延特性を有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、遅延層220は、広範囲の入射角にわたって実質的に同様の遅延特性値を提供してもよい。いくつかの実施形態では、遅延特性は、半角が30度の円錐形で10%を超えて変化してはならない、半角が45度の円錐形で10%を超えて変化してはならない、又は、半角が60度の円錐形で10%を超えて変化してはならない。いくつかの適用では、半角が30度、45度、又は60度の円錐形で、20%以下の変化であれば、許容可能としてよい。
【0016】
遅延層220は、任意の好適な一つ又は複数の遅延材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、遅延層220は、液晶リターダを含むか、又は液晶リターダである。いくつかの実施形態では、遅延層220は、配向性複屈折ポリマーフィルムを含む。選択されたポリマーセットの複屈折に従って、所望の遅延特性値を得るために好適な厚さを選択してもよい。いくつかの実施形態において、遅延層220は、対象とする波長又は波長帯について広い角度範囲にわたって円偏光を強化又は保存するために、低遅延特性(例えば、100nm未満の遅延特性)を有する補償フィルム又はその他の追加のフィルムを含んでもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、遅延層220は、パターン化されなくてもよい。いくつかの実施形態では、図2に示すように、パターン化されてもよい。遅延層220は、任意の空間的パターン、勾配、又は任意のその他の配置に配置された、第1領域と第2領域とを、少なくとも、含んでもよい。第1の領域と第2の領域は、少なくとも入射光の遅延において異なる。例えば、一実施形態では、第1の領域は、第1の波長の入射光について1/4波長遅延特性を有してもよい。同時に、第2の領域は、その第1の波長の入射光について実質的にゼロ遅延特性を有してもよい。いくつかの実施形態では、第2の領域は、その第1の波長において実質的に光を吸収してもよい。いくつかの実施形態では、第2の領域は、第1の波長において光を実質的に偏光解消してもよい。パターン化された場合、遅延層220は、情報を符号化又は表示してもよい。情報は、人間が読み取り可能、機械可読、又は人間と機械の両方で可読であってもよい。
【0018】
再帰性反射物品200は、特定のセンサーシステムが高度な忠実度で動作することを可能にしてもよい。例えば、円偏光を検出するセンサー(例えば、左回りの円偏光を通すフィルタと共に使用される電荷結合デバイス又はCMOS)は、有用なセンサー構成であり得る。例えば、左回りの円偏光により照会されると、再帰性反射物品200は、(再帰性反射層210及び遅延層220の構成及び光学に依存して)左回り円偏光を再帰反射する特定の部分を提供してもよい。それらは、明るく見えるか、又は、別の態様で、そのようなセンサー構成により検出可能であってもよい。再帰性反射物品200の他の部分では、左回りの円偏光の照会光は、偏光解消されるか、吸収されるか、又は右回り円偏光に反転されてもよい。そのような領域は、暗く見えるか、又は、そのようなセンサー構成による検出が困難とされる。
【0019】
円偏光に限定されないが、いくつかの実施形態では、このような光を利用することによって、いくつかの潜在的な利点を実現することができる。特に、円偏光は、自然界には稀である傾向があり、偽陽性信号又は他の干渉の確率を低減する。更に、それとは対照的に、これらの適用における直線偏光の使用は、入射角に対して非常に高い感受性をもたらし、垂直方向及び水平方向の平行移動又は観測角度に応じて再帰反射光の外観又は強度を急速に著しく変化させる。
【0020】
いくつかの実施形態では、再帰性反射物品200は、近赤外波長域で動作するように構成され得る。特定のセンサーシステムは、人間にとって不可視である波長内で動作するために、近赤外光を用いる。いくつかの実施形態では、再帰性反射物品200は、近赤外光を再帰反射する再帰性反射層210と、近赤外波長域内の少なくとも1つの波長の1/4波長リターダとして構成される遅延層220とを含んでもよい。
【0021】
コントラスト低減層230は、特定の波長を吸収することによって光を減衰させる層などを含む、任意の好適なコントラスト低減層であってよい。いくつかの実施形態では、カーボンブラックなどの広帯域吸収材を使用することができる。いくつかの実施形態では、選択的に吸収する染料又は顔料を使用してもよい。いくつかの実施形態では、特定の波長スペクトルの光を通す(すなわち、特定の波長帯において透明又は高度に透過性がある)が、別の波長スペクトルの光を吸収する染料又はインクを使用することができる。いくつかの実施形態では、可視スペクトルの光を吸収するが、近赤外スペクトルの光を実質的に透過するコントラスト低減層(すなわち、カモフラージュ層)を使用することができる。いくつかの実施形態では、実質的に光を透過させるとは、光の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は、80%もが、透過される一方、吸収される光については、10%未満、5%、又は、1%しか透過されないことを意味する。いくつかの適用では、注意を逸らしたり、混乱させたりすることなく、検出器に情報を提供するために、低視認性の再帰性反射体を有することが望ましいことがある。いくつかの実施形態では、極端すぎるコントラストを有することから生じる、オーバーグロー、ブルーミング、又はその他の検出アーチファクトを回避するために、コントラスト低減層230が、再帰性反射物品200から再帰反射された光を低減してもよい。
【0022】
コントラスト低減層230はまた、再帰反射角の予測円錐形に沿って再帰反射された光を減衰させるために、任意の表面又はバルク散乱体であるか、又はそれを含んでもよい。換言すれば、コントラスト低減層230は、周知の再帰反射効率測定値Rを低減するために、任意の好適な材料又は材料の組み合わせであってもよい。再帰反射率(R)は、ASTM E810-03(2013)-コプレーナ幾何学を用いる、再帰性反射シートの係数(R)の標準試験法-に記載された試験基準を用いて、観測角度0.2かつ進入角度5、すなわち、0.2/5角度で、測定することができる。
【0023】
コントラストが散乱によって低減されるこれらの実施形態では、照明された再帰性反射体の有用な検出角度を拡大してもよく、これは、高速移動車両又は困難な検出条件に対して、有用であり得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、コントラスト低減層230はパターン化される。いくつかの実施形態では、コントラスト低減層230は、遅延層のパターン化に空間的に類似した、又はオーバーレイとしてパターン化される。いくつかの実施形態では、コントラスト低減層の特定の領域は、符号化された情報の一部として、異なるレベルの減衰を提供してもよい。換言すれば、パターン化されたコントラスト低減層230は、再帰性反射物品に含まれるグレースケール情報ビットを提供してもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、特にパターン化された層が人間にとって不可視とされるべき適用では、再帰性反射物品200はまた、可視吸収層240を含む。可視吸収層は、コントラスト低減層に比べて光入射面のより近くか、又は、その面から、より離れて配置することができる。可視吸収層は、可視波長帯内の光を吸収する一方、近赤外光を、再帰反射させるために、実質的に透過させてもよい。いくつかの実施形態では、可視吸収層は広帯域可視吸収体であり、黒色に見える。いくつかの実施形態では、可視吸収層は、特定の可視波長を選択的に吸収し、色付きの外観を作り出してもよい。色付きの外観は、いくつかの適用では、再帰性反射物品をその環境に溶け込ませるために、有用であり得る。いくつかの実施形態では、可視吸収層は、可視帯域光の少なくとも50%、60%、70%、80%、又は90%を、吸収してもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、可視吸収層とコントラスト低減層は、組み合わされて単一層とされてもよく、そこにおいて、一方又は両方がパターン化されていてもよい。一例として、可視吸収層は、組み合わせ層全体に染料又は顔料が広がっているものでもよく、一方、コントラスト低減層は、再帰性反射物品上にパターン化又は空間的変形を有してもよい。
【0027】
本明細書に記載される再帰性反射物品は、交通管理標識及び方向/ナビゲーションインフラストラクチャーのために有用であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される再帰性反射物品は、固定標識として有用であり得る。いくつかの実施形態では、それらの物品は、コーン又はフラグ又は移動標識などの一時的な交通管理デバイスとするか、又はそれらに含まれてもよい。いくつかの実施形態では、それらの物品は、高視認性のベスト、ヘルメット、又はその他の安全装備などの、衣類又は着用可能な物品に使用又は組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、再帰性反射物品は、形状適合性、屈曲性、又は折り畳み可能性を有するものとすることができる。いくつかの実施形態では、それらの物品は、自動車、オートバイ、航空機、自転車、クワッドコプタ(ドローン)、船舶、又は任意のその他の乗物など、任意の種類の乗物に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、それらの物品は、倉庫、鉄道操車場、造船所、又は配送センターにおける在庫管理のために使用し、例えば、棚、箱、輸送容器などの内容物の自動識別を可能にし得る。
【0028】
本明細書に記載される再帰性反射物品は、感圧接着材を含む小さいデカール又はステッカーから、大きな、高度に視認性の高い交通標識までを含む、任意の好適なサイズとすることができる。再帰性反射物品の光学に影響を及ぼすことなく、剛性又は易接着性(例えば、感圧接着性)を与える基材を、再帰性反射層の裏に備えてもよい。
【0029】
以下は本開示による例示的な実施形態である。
【0030】
項目1。光入射面を有する再帰性反射物品であって、
再帰性反射層と、
再帰性反射層と比べて光入射面のより近くに配置されたコントラスト低減層とを含み
コントラスト低減層が、再帰性反射基材の近赤外線再帰反射効率を、50%超、低減する、再帰性反射物品。
【0031】
項目2。コントラスト低減層が、吸収によって近赤外線再帰反射効率を低下させる、項目1に記載の再帰性反射物品。
【0032】
項目3。コントラスト低減層が、散乱によって近赤外線再帰反射効率を低下させる、項目1に記載の再帰性反射物品。
【0033】
項目4。コントラスト低減層が、バルク散乱体を含む、項目3に記載の再帰性反射物品。
【0034】
項目5。コントラスト低減層が、表面散乱体を含む、項目3に記載の再帰性反射物品。
【0035】
項目6。再帰性反射層がパターン化され、少なくとも第1と第2のセクションを含み、再帰反射率が、第1と第2のセクションで異なる、項目1に記載の再帰性反射物品。
【0036】
項目7。コントラスト低減層が、パターン化され、少なくとも第1と第2のセクションを含み、第1のセクションは近赤外光の80%超を吸収し、第2のセクションは近赤外光の80%未満を吸収する、項目1に記載の再帰性反射物品。
【0037】
項目8。コントラスト低減層と比べて光入射面のより近くに又は光入射面からより離れて配置された可視吸収層を更に含み、可視吸収層が、可視帯域内の光の少なくとも80%を吸収する、項目1に記載の再帰性反射物品。
【0038】
項目9。再帰性反射物品が形状適合性を有する、項目1に記載の再帰性反射物品。
【0039】
項目10。再帰性反射物品がテープである、項目1に記載の再帰性反射物品。
【0040】
項目11。再帰性反射物品が可撓性を有する、項目1に記載の再帰性反射物品。
【0041】
項目12。再帰性反射物品が、近赤外光により照会したときに空間的に変化するパターンを示す、項目1に記載の再帰性反射物品。
図1
図2