(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】圧力ダム軸受を含む電動機アセンブリ
(51)【国際特許分類】
F16C 17/02 20060101AFI20220915BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20220915BHJP
F25B 1/053 20060101ALI20220915BHJP
F16C 33/14 20060101ALI20220915BHJP
F16C 33/10 20060101ALI20220915BHJP
H02K 5/167 20060101ALI20220915BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
F16C17/02 Z
F25B1/00 361C
F25B1/053 Z
F16C33/14 Z
F16C33/10 Z
H02K5/167 A
F04B39/00 106C
(21)【出願番号】P 2019551533
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(86)【国際出願番号】 US2018024097
(87)【国際公開番号】W WO2018175933
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-08
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518010511
【氏名又は名称】ジョンソン コントロールズ テクノロジー カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Johnson Controls Technology Company
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ハイシー、 マシュー エル.
(72)【発明者】
【氏名】スネル、 ポール ダブリュー.
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0323000(US,A1)
【文献】特表2012-528989(JP,A)
【文献】特開平9-273555(JP,A)
【文献】特開昭52-32444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/02,33/14,33/10
F25B 1/00, 1/053
H02K 5/167
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心圧縮機を駆動するように構成された電動機を含む電動機アセンブリであって、
AC電力を受け、且つ磁場を生成するように構成された固定子と、
前記磁場によって生成された電磁力に応じて、軸を中心に回転するように構成された回転子と、
前記回転子に接続され、且つ前記遠心圧縮機を駆動するように構成されたシャフトであって、圧力ダム軸受によって支持されるシャフトと
を含み、
前記圧力ダム軸受は、潤滑剤で潤滑され、
前記圧力ダム軸受は、前記シャフトを受け入れる孔と、前記孔の両側に形成された2つの軸方向溝と、前記2つの軸方向溝の間の2つの円弧片とを含み、前記2つの円弧片のうちの上部円弧片が前記孔の上面を形成し、前記2つの円弧片のうちの下部円弧片が前記孔の底面を形成し、前記潤滑剤は、前記圧力ダム軸受
の孔の底面に潤滑剤のくさび
効果を
生じ、前記潤滑剤のくさび
効果は、前記シャフトに上向きの力を作用させ、前記上向きの力は、ある量の振動を前記電動機内で発生させ、
前記圧力ダム軸受は、前記潤滑剤の一部を保持するように構成された圧力ダムを含み、前記圧力ダムは、前記シャフトに下向きの力を作用させるように
前記圧力ダム軸受の孔の上面に配置されかつ深さと弧の長さとによって画定される形状を有し、前記下向きの力は、前記上向きの力と釣り合って、前記電動機内における前記振動の量を減らす、電動機アセンブリ。
【請求項2】
前記電動機は、前記遠心圧縮機を直接駆動するように構成される、請求項1に記載の電動機アセンブリ。
【請求項3】
前記電動機は、チラーアセンブリの一部として動作し、前記チラーアセンブリは、液体冷媒を冷媒蒸気に変換するように構成された蒸発器と、前記冷媒蒸気を液体冷媒に変換するように構成された凝縮器とを含む、請求項1に記載の電動機アセンブリ。
【請求項4】
前記チラーアセンブリは、前記蒸発器からの前記冷媒蒸気を前記遠心圧縮機に移送するように構成された吸引ラインと、前記遠心圧縮機からの前記冷媒蒸気を前記凝縮器に移送するように構成された放出ラインとをさらに含む、請求項3に記載の電動機アセンブリ。
【請求項5】
前記遠心圧縮機は、羽根車を含み、前記羽根車は、前記シャフトに接続され、且つ前記冷媒蒸気の圧力を上昇させるように構成される、請求項4に記載の電動機アセンブリ。
【請求項6】
前記チラーアセンブリは、前記電動機に前記AC電力を提供するように構成された可変速駆動装置(VSD)をさらに含む、請求項5に記載の電動機アセンブリ。
【請求項7】
前記2つの
軸方向溝のそれぞれは、11°~27°の範囲の弧の長さを有する、請求項
1に記載の電動機アセンブリ。
【請求項8】
前記2つの
軸方向溝は、180°の弧の長さだけ離れている、請求項1に記載の電動機アセンブリ。
【請求項9】
前記圧力ダムのそれぞれは、0.15ミリメートル~0.20ミリメートルの範囲の深さを有する、請求項
8に記載の電動機アセンブリ。
【請求項10】
前記圧力ダムは、140°~150°の範囲の弧の長さを有する、請求項1に記載の電動機アセンブリ。
【請求項11】
前記圧力ダム軸受は、0.08ミリメートル~0.12ミリメートルの範囲の隙間の直径を有する、請求項1に記載の電動機アセンブリ。
【請求項12】
前記潤滑剤のくさび
効果は、前記シャフトに第1の横方向の力を
さらに作用させ、前記第1の横方向の力の方向は、前記シャフトの回転方向に依存する、請求項1に記載の電動機アセンブリ。
【請求項13】
前記圧力ダム
がさらに前記シャフトに第2の横方向の力を作用させ、前記第2の横方向の力
が前記第1の横方向の力の反対方向に作用
するように、前記圧力ダムの弧の長さが前記2つの軸方向溝の一方から始まって約140°~150°である、請求項
12に記載の電動機アセンブリ。
【請求項14】
チラーアセンブリであって、
液体冷媒を冷媒蒸気に変換するように構成された蒸発器と、
前記冷媒蒸気を前記液体冷媒に変換するように構成された凝縮器と、
前記蒸発器からの前記冷媒蒸気を遠心圧縮機に移送するように構成された吸引ラインと、
前記遠心圧縮機からの前記冷媒蒸気を前記凝縮器に移送するように構成された放出ラインと、
前記遠心圧縮機を駆動するように構成された電動機を含む電動機アセンブリであって、
AC電力を受け、且つ磁場を生成するように構成された固定子と、
前記磁場によって生成された電磁力に応じて、軸を中心に回転するように構成された回転子と、
前記回転子に接続され、且つ前記遠心圧縮機を駆動するように構成されたシャフトであって、圧力ダム軸受によって支持されるシャフトと
を含む電動機アセンブリと
を含み、
前記圧力ダム軸受は、潤滑剤で潤滑され、
前記圧力ダム軸受は、前記シャフトを受け入れる孔と、前記孔の両側に形成された2つの軸方向溝と、前記2つの軸方向溝の間の2つの円弧片とを含み、前記2つの円弧片のうちの上部円弧片が前記孔の上面を形成し、前記2つの円弧片のうちの下部円弧片が前記孔の底面を形成し、前記潤滑剤は、前記圧力ダム軸受
の孔の底面に潤滑剤のくさび
効果を
生じ、前記潤滑剤のくさび
効果は、前記シャフトに上向きの力を作用させ、前記上向きの力は、ある量の振動を前記電動機内で発生させ、
前記圧力ダム軸受は、圧力ダムを含み、前記圧力ダムは、前記潤滑剤の一部を保持するように構成され、前記圧力ダムは、前記シャフトに下向きの力を作用させるように
前記圧力ダム軸受の孔の上面に配置されかつ深さと弧の長さとによって画定される形状を有し、前記下向きの力は、前記上向きの力と釣り合い、且つ前記電動機内における前記振動の量を減らす、チラーアセンブリ。
【請求項15】
前記圧力ダムは、0.15ミリメートル~0.20ミリメートルの範囲の深さを有する、請求項
14に記載のチラーアセンブリ。
【請求項16】
前記圧力ダムは、140°~150°の範囲の弧の長さを有する、請求項
14に記載のチラーアセンブリ。
【請求項17】
前記潤滑剤のくさび
効果は、前記シャフトに第1の横方向の力を
さらに作用させ、前記第1の横方向の力の方向は、前記シャフトの回転方向に依存し、前記圧力ダム
がさらに前記シャフトに第2の横方向の力を作用させ、前記
第2の横方向の力
が前記第1の横方向の力の反対方向に作用
するように、前記圧力ダムの弧の長さが前記2つの軸方向溝の一方から始まって約140°~150°である、請求項
14に記載のチラーアセンブリ。
【請求項18】
遠心圧縮機を駆動するように構成された電動機を含む電動機アセンブリを提供する
ことを含む方法であって、前記電動機アセンブリは、
AC電力を受け、且つ磁場を生成するように構成された固定子と、
前記磁場によって生成された電磁力に応じて、軸を中心に回転するように構成された回転子と、
前記回転子に接続され、且つ前記遠心圧縮機を駆動するように構成されたシャフトであって、圧力ダム軸受によって支持されるシャフトと
を含
み、
前記圧力ダム軸受は、潤滑剤で潤滑され、
前記圧力ダム軸受は、前記シャフトを受け入れる孔と、前記孔の両側に形成された2つの軸方向溝と、前記2つの軸方向溝の間の2つの円弧片とを含み、前記2つの円弧片のうちの上部円弧片が前記孔の上面を形成し、前記2つの円弧片のうちの下部円弧片が前記孔の底面を形成し、前記潤滑剤は、前記圧力ダム軸受
の孔の底面に潤滑剤のくさび
効果を
生じ、前記潤滑剤のくさび
効果は、前記シャフトに上向きの力を作用させ、前記上向きの力は、ある量の振動を前記電動機内で発生させ、
前記圧力ダム軸受は、圧力ダムを含み、前記圧力ダムは、前記潤滑剤の一部を保持するように構成され、前記圧力ダムは、前記シャフトに下向きの力を作用させるように
前記圧力ダム軸受の孔の上面に配置されかつ深さと弧の長さとによって画定される形状を有し、前記下向きの力は、前記上向きの力と釣り合い、且つ前記電動機内における前記振動の量を減らす、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年3月24日に出願された米国仮特許出願第62/476,441号明細書の利益及びそれに対する優先権を主張するものであり、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
建物は、暖房、換気及び空調(HVAC)システムを含むことができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の1つの実装形態は、遠心圧縮機を駆動するように構成された電動機を含む電動機アセンブリである。電動機は、AC電力を受け、且つ磁場を生成するように構成された固定子を含む。電動機は、磁場によって生成された電磁力に応じて、軸を中心に回転するように構成された回転子をさらに含む。電動機は、回転子に接続され、且つ遠心圧縮機を駆動するように構成されたシャフトをさらに含む。シャフトは、圧力ダム軸受によって支持される。圧力ダム軸受は、潤滑剤で潤滑される。潤滑剤は、圧力ダム軸受内において潤滑剤のくさびを形成する。潤滑剤のくさびは、シャフトに上向きの力を作用させる。上向きの力は、ある量の振動を電動機内で発生させる。圧力ダム軸受は、潤滑剤の一部を保持するように構成された圧力ダムを含む。圧力ダムは、シャフトに下向きの力を作用させるようにさらに構成される。下向きの力は、上向きの力と釣り合い、且つ電動機内における振動の量を減らす。
【0004】
本開示の別の実装形態は、チラーアセンブリである。チラーアセンブリは、液体を蒸気に変換するように構成された蒸発器を含む。チラーアセンブリは、蒸気を液体に変換するように構成された凝縮器をさらに含む。チラーアセンブリは、蒸発器からの蒸気を遠心圧縮機に移送するように構成された吸引ラインをさらに含む。チラーアセンブリは、遠心圧縮機からの蒸気を凝縮器に移送するように構成された放出ラインをさらに含む。チラーアセンブリは、遠心圧縮機を駆動するように構成された電動機を含む電動機アセンブリをさらに含む。電動機は、AC電力を受け、且つ磁場を生成するように構成された固定子を含む。電動機は、磁場によって生成された電磁力に応じて、軸を中心に回転するように構成された回転子をさらに含む。電動機は、回転子に接続され、且つ遠心圧縮機を駆動するように構成されたシャフトをさらに含む。シャフトは、圧力ダム軸受によって支持される。圧力ダム軸受は、潤滑剤で潤滑される。潤滑剤は、圧力ダム軸受内において潤滑剤のくさびを形成する。潤滑剤のくさびは、シャフトに上向きの力を作用させる。上向きの力は、ある量の振動を電動機内で発生させる。圧力ダム軸受は、潤滑剤の一部を保持するように構成された圧力ダムを含む。圧力ダムは、シャフトに下向きの力を作用させるようにさらに構成される。下向きの力は、上向きの力と釣り合い、且つ電動機内における振動の量を減らす。
【0005】
本開示の別の実装形態は、方法である。本方法は、遠心圧縮機を駆動するように構成された電動機を含む電動機アセンブリを提供するステップを含む。電動機は、AC電力を受け、且つ磁場を生成するように構成された固定子を含む。電動機は、磁場によって生成された電磁力に応じて、軸を中心に回転するように構成された回転子をさらに含む。電動機は、回転子に接続され、且つ遠心圧縮機を駆動するように構成されたシャフトをさらに含む。シャフトは、圧力ダム軸受によって支持される。圧力ダム軸受は、潤滑剤で潤滑される。潤滑剤は、圧力ダム軸受内において潤滑剤のくさびを形成する。潤滑剤のくさびは、シャフトに上向きの力を作用させる。上向きの力は、ある量の振動を電動機内で発生させる。圧力ダム軸受は、潤滑剤の一部を保持するように構成された圧力ダムを含む。圧力ダムは、シャフトに下向きの力を作用させるようにさらに構成される。下向きの力は、上向きの力と釣り合い、且つ電動機内における振動の量を減らす。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【0007】
【
図2】
図1のチラーアセンブリ内にある誘導電動機の図である。
【0008】
【
図3】
図2の電動機の駆動端に取り付けられた圧力ダム軸受の図である。
【0009】
【0010】
【0011】
【
図6】
図2の電動機の非駆動端に取り付けられた圧力ダム軸受の図である。
【0012】
【0013】
【0014】
【
図9】
図3の軸受及び
図6の軸受に関連する寸法特性の図である。
【0015】
【
図10】
図3の軸受及び
図6の軸受に関連する圧力プロファイルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
概して図を参照すると、圧縮機を駆動するように構成された電動機アセンブリが示されている。本明細書で電動機と呼ばれ得る電動機アセンブリは、チラーアセンブリの一部として遠心圧縮機を直接駆動するように構成された高速誘導電動機を含むことができる。チラーアセンブリは、HVACシステムにおいて冷媒の蒸気圧縮サイクルを行うように構成され得る。電動機は、電動機の駆動端に配置された第1の圧力ダム軸受と、電動機の非駆動端に配置された第2の圧力ダム軸受とを含む。圧力ダム軸受は、潤滑剤が差され、電動機のシャフトに下向きの力を作用させるように構成された圧力ダムを含む。下向きの力は、軸受内に形成された潤滑剤のくさびにより電動機のシャフトに作用される上向きの力と釣り合うことができる。その結果、システムは、より大きい安定性を達成し、オイルホワールなどの影響によって発生される振動を回避できる。加えて、圧力ダム軸受は、回転子の動力学を改善するために、幅広い動作速度範囲で十分な剛性を維持できる。圧力ダム軸受は、様々な電動機の構成要素(例えば、シャフト、回転子、固定子)の寿命を延ばすと共に、チラーアセンブリの効率及び性能を高めることができる。
【0017】
特に
図1を参照すると、チラーアセンブリ100の例示的な実装形態が示されている。チラーアセンブリ100は、電動機104によって駆動される圧縮機102と、凝縮器106と、蒸発器108とを含むことが示されている。冷媒は、蒸気圧縮サイクルでチラーアセンブリ100を通して循環される。チラーアセンブリ100は、チラーアセンブリ100内の蒸気圧縮サイクルの動作を制御するための制御パネル114も含み得る。制御パネル114は、保守、分析などに関連する様々なデータを共有するために電子ネットワークに接続され得る。
【0018】
電動機104は、可変速駆動装置(VSD)110によって動力を供給され得る。VSD 110は、AC電源(図示せず)から特定の固定ライン電圧及び固定ライン周波数を有する交流(AC)電力を受け、可変電圧及び周波数を有する電力を電動機104に提供する。電動機104は、VSD 110によって動力の供給を受けることが可能な任意のタイプの電動機であり得る。例えば、電動機104は、高速誘導電動機であり得る。圧縮機102は、電動機104により駆動されて、吸引ライン112を介して蒸発器108から受けた冷媒蒸気を圧縮する。次いで、圧縮機102は、圧縮された冷媒蒸気を、放出ラインを介して凝縮器106に送る。圧縮機102は、遠心圧縮機、スクリュー式圧縮機、スクロール式圧縮機、タービン式圧縮機又は任意の他のタイプの適切な圧縮機であり得る。
【0019】
蒸発器108は、内部チューブバンドル(図示せず)と、内部チューブバンドルにプロセス流体を供給するための供給ライン120と、内部チューブバンドルからプロセス流体を排出するための戻りライン122とを含む。供給ライン120及び戻りライン122は、プロセス流体を循環させる導管を介してHVACシステム内の構成要素(例えば、エアハンドラ)と流体連通し得る。プロセス流体は、建物を冷却するための冷却液であり、水、エチレングリコール、塩化カルシウムブライン、塩化ナトリウムブライン又は任意の他の適切な液体であり得るが、これらに限定されない。蒸発器108は、プロセス流体が蒸発器108のチューブバンドルを通過し、冷媒と熱を交換するときにプロセス流体の温度を下げるように構成される。冷媒液が蒸発器108に送られて、プロセス流体と熱を交換し、冷媒蒸気への相変化を経ることにより、蒸発器108内で冷媒蒸気が形成される。
【0020】
圧縮機102によって凝縮器106に送られた冷媒蒸気は、熱を流体に伝達する。冷媒蒸気は、流体との熱伝達の結果、凝縮器106で凝縮して冷媒液になる。凝縮器106からの冷媒液は、膨張装置を通って流れ、蒸発器108に戻されて、チラーアセンブリ100の冷媒のサイクルが完了する。凝縮器106は、凝縮器106と、HVACシステムの外部の構成要素(例えば、冷却塔)との間で流体を循環させるための供給ライン116及び戻りライン118を含む。戻りライン118を介して凝縮器106に供給される流体は、凝縮器106内の冷媒と熱交換し、供給ライン116を介して凝縮器106から排出されて、サイクルを完了する。凝縮器106を循環する流体は、水又は任意の他の適切な液体であり得る。
【0021】
ここで、
図2を参照すると、電動機104のより詳細な図が示されている。電動機104は、遠心圧縮機(すなわち圧縮機102)を直接駆動するように構成された高速誘導電動機であり得る。電動機104は、シャフト212と、回転子214と、固定子216とを含むことが示されている。固定子216は、(例えば、VSD 110から)AC電力を供給され、磁場を生成できる巻線を含む。磁場は、回転子214の軸の周りにトルクを生じる電磁力を誘導することができる。その結果、回転子214及びシャフト212は、円運動で回転し始める。シャフト212は、直接駆動機構218を介して圧縮機102の羽根車220に接続され得る。従って、羽根車220は、圧縮機102内の冷媒蒸気の圧力を上昇させるために高速で回転するように構成され得る。
【0022】
一部の用途では、単純な平穴スタイルの流体膜軸受で支持された軽負荷の回転子シャフトは、回転子の動的不安定性及び振動の影響を受け得る。電動機104は、電動機104の駆動端に配置された第1の圧力ダム軸受230と、電動機104の非駆動端に配置された第2の圧力ダム軸受240とを含むことが示されている。軸受230及び240は、シャフト212を支持し、油又は別のタイプの潤滑剤で潤滑され得る。電動機104が通電され、シャフト212が回転し始めると、シャフト212は、軸受230及び240の内側を被覆する潤滑剤の薄膜に支えられて回転することができる。この潤滑剤のくさびは、シャフト212の下にかなりの圧力を発生させ、この圧力により、シャフト212が上方向に押しやられる。加えて、回転方向に応じて、潤滑剤のくさびは、シャフト212をわずかに横方向にも押しやり得る。シャフト212に作用する圧力の量は、回転子214の速度、回転子214の重量、潤滑剤の圧力及び他の様々な要因に応じて変わり得る。システムに外乱がもたらされると、シャフト212がその平衡位置から外れ、潤滑剤が不安定なオイルホワール効果を引き起こし得る。オイルホワール効果は、シャフトを旋回する経路に追いやり、シャフト212の回転速度の約半分の周波数で振動を生じさせる。結果として、電動機104の特定の構成要素がより早期に摩耗し、電動機104の全体的な性能が低下し得る。潤滑剤のくさびによりシャフト212に作用する上向きの力と釣り合うために、軸受230及び240には、軸受の孔の上(すなわち負荷のかからない)半分に圧力ダムが組み込まれている。これらの圧力ダムは、潤滑剤の一部を保持し、シャフト212に下向きの力を生じることができる。この流体力学的安定化力は、上向きの力に釣り合うために潤滑剤のくさびに十分な負荷をかけることができ、従って軸受230及び240内のシャフト212を安定させることができる。軸受230及び240の圧力ダムの設計及び圧力プロファイルに関するさらなる詳細については、
図9及び
図10を参照して後に説明する。
【0023】
ここで、
図3を参照すると、圧力ダム軸受230の図が示されている。軸受230は、2つの円弧片(lobe)と2つの軸方向溝とを含む流体力学的ジャーナル軸受である。
図3では、軸方向溝234を見ることができるが、第2の軸方向溝(すなわち軸方向溝236)は、軸方向溝234の直接向かい側(すなわち180°)にあるため、示されていない。また、
図3には、電動機104の動作中にシャフト212に下向きの力を生じるように構成された圧力ダム232も示されている。
【0024】
ここで、
図4を参照すると、圧力ダム軸受230の別の図が示されている。
図4は、
図5の図面を作成するための切断線400を示す。ここで、
図5を参照すると、軸方向溝234及び236の両方が示されている。加えて、圧力ダム232が軸受230の孔の上面に沿って示されている。圧力ダム232は、弧の長さが約140°~150°であることが示されている。この構造に関連する利点のさらなる詳細については、
図9及び
図10に関連して後に提示する。
【0025】
ここで、
図6を参照すると、圧力ダム軸受240の図が示されている。軸受240も、2つの円弧片と2つの軸方向溝とを含む流体力学的ジャーナル軸受である。ただし、
図3と同様に、
図6では軸方向溝244のみを見ることができる。第2の軸方向溝(すなわち軸方向溝246)は、軸方向溝244の直接向かい側にある。加えて、圧力ダム242が軸受240の孔の上面(すなわち負荷のかからない半分)に沿って示されている。圧力ダム232と同様に、圧力ダム242は、電動機104の動作中にシャフト212に下向きの力を生じるように構成され得る。この下向きの圧力は、軸受240内で潤滑剤のくさびによって生じるシャフト212に対する上向きの圧力と釣り合うのに役立つ。
【0026】
ここで、
図7を参照すると、圧力ダム軸受240の別の図が示されている。
図4と同様に、
図7は、
図8の図面を作成するための切断線700を示す。ここで、
図8を参照すると、軸方向溝244及び246の両方を見ることができる。加えて、圧力ダム242が軸受240の孔の上面に沿って示され、その弧の長さが約140°~150°であることが示されている。この構造に関連する利点のさらなる詳細については、
図9及び
図10に関して後に提示する。
【0027】
ここで、
図9を参照すると、例示的な圧力ダム軸受900に関連する寸法特性の図が示されている。軸受900は、軸受230及び240と同一又は略同一であり得、軸受230及び240に関連する様々な特徴及び寸法関係を推測できる例として提示されている。例えば、軸受900は、圧力ダム902(例えば、圧力ダム232及び242と同様)と、2つの軸方向溝904及び906(例えば、軸方向溝234/236及び244/246と同様)とを含むことが示されている。
図9に示す各変数の説明を以下の表1に示す。表1の各変数について、本開示と一致する典型的な値が含まれている。
【表1】
【0028】
ここで、
図10を参照すると、圧力ダム軸受230及び240に関連する圧力プロファイル1000の図が示されている。圧力プロファイル1000は、矢印1002及び1004を含むことが示されている。矢印1002は、シャフト212の回転方向を表す。この場合、シャフト212は、反時計回りに回転している。矢印1004は、軸受の孔の底面(すなわち負荷のかかる面)上のシャフト212の静止重量を表す。圧力領域1008は、軸受の孔の負荷のかかる半分に形成された潤滑剤のくさびを介してシャフト212の下に形成される圧力を表す。圧力領域1008は、潤滑剤のくさびによって形成される圧力もシャフト212にわずかな横方向の力を作用させるため、わずかに非対称であることが示されている。この横方向の圧力増加は、正のx方向に見られているが、シャフトが時計回りに回転している場合、この横方向の圧力増加は、負のx方向になる。圧力領域1008によってシャフト212に作用する上向きの力と釣り合うために、圧力ダム(例えば、圧力ダム232又は242)は、潤滑剤の一部を収容し、軸受の孔の上面(すなわち負荷のかからない面)に強い圧力領域を生じる。この圧力は、領域1010で示されており、圧力ダムの縁部と一致する径方向で最大1006になる。圧力ダムの弧の長さが約140°~150°であるため、最大圧力1006は、負のx方向に見られ、領域1008に示されている正のx方向の横方向圧力の一部又は全部と釣り合うことができる。
【0029】
圧力プロファイル1000から推測できるように、圧力ダム232及び242は、電動機104の安定性を高める。その結果、様々な障害がシステムにもたらされたとき、オイルホワール及びオイルウィップなどの悪影響が生じにくくなる。加えて、軸受230及び240は、安定性を向上させながら、様々な電動機の速度で十分な軸受剛性を実現することができる。圧力ダム軸受230及び240によって駆動される電動機104の「滑らかな」動作により、チラーアセンブリ100の様々な構成要素がさらなる長寿命を実現し、必要とするメンテナンスを少なくすることが可能になる。圧力ダム軸受230及び240を使用することにより、チラーアセンブリ100の全体的な効率及び性能を高めることができる。
【0030】
様々な例示的な実施形態に示されているシステム及び方法の構築及び構成は、例示的なものにすぎない。本開示では、例示的な実施形態のみを詳細に説明したが、多くの修正形態が可能である(例えば、サイズ、寸法、構造、様々な要素の形状及び割合、パラメータの値、取り付け構成、材料の使用、色、向きなどの変更)。例えば、要素の位置を逆にしたり、他の方法で変えたりすることができ、個別の要素又は位置の性質又は数を変更するか又は変化させることができる。従って、このような修正形態は、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。任意のプロセス又は方法ステップの順番又は順序は、代替的な実施形態に従って変更又は再順序付けされ得る。本開示の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態の設計、動作条件及び構成における他の置換形態、修正形態、変更形態及び省略形態がなされ得る。