(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】鋳型材料及びその製造方法並びに鋳型の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22C 1/02 20060101AFI20220915BHJP
B22C 9/02 20060101ALI20220915BHJP
B22C 1/10 20060101ALI20220915BHJP
B22C 1/22 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B22C1/02 C
B22C9/02 103D
B22C1/10 C
B22C1/22 F
(21)【出願番号】P 2019562507
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2018048489
(87)【国際公開番号】W WO2019132007
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2017253876
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】高間 智宏
(72)【発明者】
【氏名】浦 哲也
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】特許第4953511(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00-1/26,9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火性骨材と、
該耐火性骨材の100質量部に対して、固形分換算で、0.1~2.5質量部の割合の、粘度が1000cP以下である液状の水溶性無機粘結剤と、撥粘結剤性の球状シリコーン樹脂粒子
であって、かかる球状シリコーン樹脂粒子で形成される水平面上に、前記液状の水溶性無機粘結剤を滴下した時の接触角が90°以上となる撥粘結剤性を有しているものとを、少なくとも混合せしめて、かかる球状シリコーン樹脂粒子が表面に存在せしめられてなる湿態のコーテッドサンドとして形成されていることを特徴とする鋳型材料。
【請求項2】
前記球状シリコーン樹脂粒子が、熱重量示差熱分析装置において空気雰囲気下で室温から700℃まで温度をかけた場合の重量減少率が5~50%である特性を有している請求項1に記載の鋳型材料。
【請求項3】
前記球状シリコーン樹脂粒子の平均粒子径が、0.01μm~50μmである請求項1又は請求項2に記載の鋳型材料。
【請求項4】
前記球状シリコーン樹脂粒子の含有量が、前記鋳型材料における水溶性無機粘結剤の固形分の100質量部に対して、0.1~500質量部である請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の鋳型材料。
【請求項5】
前記シリコーン樹脂粒子が、オルガノポリシロキサンを主成分とする樹脂粒子である請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の鋳型材料。
【請求項6】
前記オルガノポリシロキサンが、シルセスキオキサンからなることを特徴とする請求項5に記載の鋳型材料。
【請求項7】
前記シルセスキオキサンが、ポリメチルシルセスキオキサンである請求項6に記載の鋳型材料。
【請求項8】
さらに、硝酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選ばれた少なくとも一つの硝酸塩が、混合せしめられている請求項1乃至請求項
7の何れか1項に記載の鋳型材料。
【請求項9】
前記水溶性無機粘結剤が、水ガラスを主成分とする請求項1乃至請求項
8の何れか1項に記載の鋳型材料。
【請求項10】
耐火性骨材に対して、
該耐火性骨材の100質量部に対して、固形分換算で、0.1~2.5質量部の割合の、粘度が1000cP以下の液状の水溶性無機粘結剤と、撥粘結剤性の球状シリコーン樹脂粒子
であって、かかる球状シリコーン樹脂粒子で形成される水平面上に、前記液状の水溶性無機粘結剤を滴下した時の接触角が90°以上となる撥粘結剤性を有しているものを添加して、常温で混練乃至は混合せしめることにより、かかる球状シリコーン樹脂粒子が表面に存在せしめられてなる湿態のコーテッドサンドを製造することを特徴とする鋳型材料の製造方法。
【請求項11】
前記粘度が1000cP以下の液状の水溶性無機粘結剤が、所定の水溶性無機粘結剤と所定量の水とを別個に添加することによって形成される請求項
10に記載の鋳型材料の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至請求項
9の何れか1項に記載の鋳型材料を、加熱された成形型内に充填した後、かかる成形型内で保持し、固化乃至は硬化せしめることにより、目的とする鋳型を得ることを特徴とする鋳型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳型材料及びその製造方法並びに鋳型の製造方法に係り、特に、目的とする鋳型を有利に造型することの出来る鋳型材料とその製造方法、更には、そのような鋳型材料を用いて、特性の優れた鋳型を有利に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属溶湯の鋳造に用いられる鋳型の一つとして、耐火性骨材からなる鋳物砂を所定の粘結剤にて被覆してなるコーテッドサンド(鋳型材料)を用いて、目的とする形状に造型して得られたものが、用いられてきている。そして、そのようなコーテッドサンドにおける粘結剤としては、水ガラスの如き無機系粘結剤の他、フェノール樹脂やフラン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂からなる有機系粘結剤が用いられており、また、それら粘結剤を用いて自硬性鋳型を造型する手法も、実用化されている。
【0003】
ところで、かかる粘結剤を用いて得られたコーテッドサンドにあっては、粘結剤の存在によって、コーテッドサンドの流動性が低下し易く、鋳型の造型のための金型(成形型)の成形キャビティにおいて、充填不良が惹起されるという問題を内在しており、また得られる鋳型の強度も充分ではない等という問題も、内在するものであった。特に、それら粘結剤の中でも、有機系粘結剤を用いたコーテッドサンドにあっては、その製造やそれを用いた鋳型の造型に際して、有機系粘結剤中に残留する揮発性成分が外部に放出されて、臭気を発したり、またそのようなコーテッドサンドからなる鋳型を用いて金属溶湯の鋳造を実施したときに、有機系粘結剤中の有機分が分解して、ガスを発生し、形成される鋳物にガス欠陥等の問題を惹起する恐れがある他、作業環境が悪化する等という問題が、惹起されることとなる。
【0004】
そこで、近年、そのような有機分の存在しない粘結剤である無機系粘結剤が注目されているのであるが、そのような無機粘結剤を用いて得られたコーテッドサンドにあっては、それからなる鋳型の鋳造後における崩壊性が充分でないことに加えて、吸湿によって鋳型強度が低下するようになる等の問題が内在している。
【0005】
このため、特表2008-511447号公報においては、金属加工用の鋳型を製造するための成形材混合物として、少なくとも一つの耐火性の成形基礎材と少なくとも一つの水ガラスからなる結合剤とを用い、更にその結合剤には、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン及び酸化亜鉛の一群の中から選択される粒子状金属酸化物を一定比率で加えてなる鋳型材料が、明らかにされている。そして、そのような粒子状金属酸化物を添加することにより、鋳型の初期強度(製造直後の強度)や長期間の貯蔵後の強度、並びに耐湿性が改善される等という利点がもたらされるとされている。
【0006】
しかしながら、そのような結合剤である水ガラスと共に、粒子状金属酸化物を含有せしめてなる成形材混合物(鋳型材料)にあっては、それらの混合によって、粒子状金属酸化物にも、水ガラスが付着することとなり、そのために、金型に対する接着点が増加するようになるところから、金型によって造型される鋳型の離型性が悪くなって、抜型時に鋳型の破損が発生するという問題がある。更に、鋳型強度の向上を図るべく、結合剤(水ガラス)の粘度を低くした場合にあっては、鋳型造型時のエアー圧力により、成形材混合物(鋳型材料)が金型(成形キャビティ)内に吹き込まれた後も、そのような低粘度の結合剤が、エアー圧力の影響を受けて、金型内を移動して、キャビティ内周面に偏在するようになり、そのために、離型性が更に悪化する傾向となる問題があり、また充填性が高くなると、成形基礎材(骨材)同士の接着点数も多くなるところから、崩壊性が悪くなる問題も内在することとなる。
【0007】
また、特許第4953511号公報においては、耐火性粒状骨材と、この耐火性粒状骨材の平均粒径に対して所定比の平均粒径を有する非中空球状微粒子とを含有すると共に、かかる非中空の球状微粒子として、シリカ、シリコーン系樹脂、アルミナガラス、ムライト、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸系樹脂及びフッ素系樹脂よりなる群から選ばれたものを用いてなる鋳物砂組成物(鋳型材料)が、明らかにされている。そして、そのような鋳物砂組成物にあっては、その流動性が改善されて、複雑な鋳型や高強度の鋳型の造型に適しているとされているのであるが、近年における複雑化する形状の鋳型の造型には、そのような鋳物砂組成物の流動性は未だ充分でなく、更なる流動性の改善が望まれているのであり、また、そのような鋳物砂組成物にあっては、それから造型される鋳型を用いた鋳造において、得られる鋳造品の鋳肌を向上せしめ、更には鋳造品への砂付着を防止することも要請されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2008-511447号公報
【文献】特許第4953511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、流動性をより一層向上せしめて、鋳型造型に際しての成形型への充填率を更に向上させることの出来る鋳型材料を提供することにあり、また鋳型の離型性や崩壊性がよく、鋳造品の鋳肌を良好なものとなし、更に鋳造品への砂付着を効果的に改善し得る、強度に優れた鋳型を有利に与え得る鋳型材料を提供することにもあり、加えて、そのような優れた特徴を有する鋳型材料を有利に製造し得る方法や、そのような鋳型材料を用いて、優れた特性を有する鋳型を有利に製造することの出来る方法を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものである。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書の記載や添付の図面から把握され得る発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0011】
(1) 耐火性骨材と、粘度が1000cP以下である液状の水溶性無機粘
結剤と、撥粘結剤性の球状シリコーン樹脂粒子とを、少なくとも混合
せしめて、かかる球状シリコーン樹脂粒子が表面に存在せしめられて
なる湿態のコーテッドサンドとして形成されていることを特徴とする
鋳型材料。
(2) 前記球状シリコーン樹脂粒子が、熱重量示差熱分析装置において空
気雰囲気下で室温から700℃まで温度をかけた場合の重量減少率が
5~50%である特性を有している前記態様(1)に記載の鋳型材料
。
(3) 前記球状シリコーン樹脂粒子の平均粒子径が、0.01μm~50
μmである前記態様(1)又は前記態様(2)に記載の鋳型材料。
(4) 前記球状シリコーン樹脂粒子の含有量が、前記鋳型材料における水
溶性無機粘結剤の固形分の100質量部に対して、0.1~500質
量部である前記態様(1)乃至前記態様(3)の何れか1つに記載の
鋳型材料。
(5) 前記シリコーン樹脂粒子が、オルガノポリシロキサンを主成分とす
る樹脂粒子である前記態様(1)乃至前記態様(4)の何れか1つに
記載の鋳型材料。
(6) 前記オルガノポリシロキサンが、シルセスキオキサンからなること
を特徴とする前記態様(5)に記載の鋳型材料。
(7) 前記シルセスキオキサンが、ポリメチルシルセスキオキサンである
前記態様(6)に記載の鋳型材料。
(8) 前記球状シリコーン樹脂粒子が、かかるシリコーン樹脂粒子で形成
される水平面上に前記液状の水溶性無機粘結剤を滴下した時の接触角
が90°以上となる撥粘結剤性を有している前記態様(1)乃至前記
態様(7)の何れか1つに記載の鋳型材料。
(9) さらに、硝酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群
より選ばれた少なくとも一つの硝酸塩が、混合せしめられている前記
態様(1)乃至前記態様(8)の何れか1つに記載の鋳型材料。
(10) 前記水溶性無機粘結剤が、水ガラスを主成分とする前記態様(1
)乃至前記態様(9)の何れか1つに記載の鋳型材料。
(11) 耐火性骨材に対して、粘度が1000cP以下の液状の水溶性無
機粘結剤と、撥粘結剤性の球状シリコーン樹脂粒子を添加して、常温
で混練乃至は混合せしめることにより、かかる球状シリコーン樹脂粒
子が表面に存在せしめられてなる湿態のコーテッドサンドを製造する
ことを特徴とする鋳型材料の製造方法。
(12) 前記粘度が1000cP以下の液状の水溶性無機粘結剤が、所定
の水溶性無機粘結剤と所定量の水とを別個に添加することによって形
成される前記態様(11)に記載の鋳型材料の製造方法。
(13) 前記態様(1)乃至前記態様(10)の何れか1つに記載の鋳型
材料を、加熱された成形型内に充填した後、かかる成形型内で保持し
、固化乃至は硬化せしめることにより、目的とする鋳型を得ることを
特徴とする鋳型の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明に従う鋳型材料にあっては、耐火性骨材に対して、低粘度に調整された液状の水溶性無機粘結剤と、撥粘結剤性を有する球状シリコーン樹脂粒子が混合せしめられることによって、かかる球状シリコーン樹脂粒子が、耐火性骨材の周りに形成される水溶性無機粘結剤層の表面に存在せしめられてなる形態において、湿態のコーテッドサンドとして形成されることとなるところから、鋳型材料同士がその表面の球状シリコーン樹脂粒子を介して接触することとなって、鋳型材料の粒子間の摩擦が効果的に低減せしめられ得て、その流動性が著しく向上され得ることとなると共に、鋳型造型のための成形型の成形キャビティ内への鋳型材料の充填性が効果的に向上せしめられ、更に、鋳型材料が充填された後においては、鋳型材料の粒子間の隙間を埋めるべく移動するようになるために、その充填率をより一層向上せしめることが可能となるのである。
【0013】
しかも、そのような撥粘結剤性の球状シリコーン樹脂粒子が、鋳型材料の粒子表面に存在して、水溶性無機粘結剤層の表面に移動するようになることによって、かかる鋳型材料から、強度に優れた鋳型が有利に形成され得ると共に、形成される鋳型の離型性を高め、また、それからなる鋳型を用いた鋳造工程において、鋳型の崩壊性を向上させ、且つ得られる鋳造品の鋳肌が効果的に改善され得て、平滑性に優れた良好な鋳肌が実現され得ることとなるのであり、更に、鋳造品への砂付着、換言すれば鋳型材料粒子の付着も効果的に防止乃至は抑制され得て、鋳造品の品質を有利に高め得ることとなるのである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】充填流動性の評価に用いられる成形型を構成する金型半体の一つの型割面を示す正面模式図である。
【
図2】実施例における崩壊性試験にて用いられた鋳造試験用砂型の縦断面説明図である。
【
図3】実施例において得られた、廃中子を内包するアルミニウム合金鋳物の縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ところで、耐火性骨材と水溶性無機粘結剤とを含む鋳型材料は、その調製後の状態によって、乾態の鋳型材料と湿態の鋳型材料とに分類されている。その中で、本発明は、水溶性無機粘結剤が粘着性を発現した状態にある、全体として湿った状態(外観)を呈する湿態の鋳型材料(コーテッドサンド)を対象としている。そして、そのような湿態の鋳型材料は、例えば、成形型内(成形キャビティ内)に充填され、かかる成形型内にて加熱及び乾燥せしめられることにより、固化乃至硬化反応が進行し、以て目的とする鋳型が造型されることとなるものである。なお、鋳型材料が乾態を呈するか、或いは湿態を呈するかについては、鋳型材料における水溶性無機粘結剤の固形分量に対する含水分量によって決まるものの、水溶性無機粘結剤の種類によって、鋳型材料が乾態若しくは湿態を呈することとなる含水分量は異なるものである。例えば、水溶性無機粘結剤が水ガラスの場合、その固形分量の5~55質量%に相当する量の水分を含有する鋳型材料は、乾態を呈し、一方、水ガラスの固形分量の55質量%を超える量に相当する水分量を含有する鋳型材料は、湿態を呈するようになる。
【0016】
そして、本発明に従う湿態の鋳型材料(コーテッドサンド)とは、常温流動性を有しないものであって、その水分量に拘わらず、動的安息角を測定した時に、動的安息角の測定値が得られない鋳型材料(コーテッドサンド)をいうものである。ここで、動的安息角とは、片面が透明で平らな面を有する円筒内に鋳型材料(コーテッドサンド)を入れ(例えば、直径:7.2cm×高さ:10cmの容器に体積半分まで鋳型材料を入れる)、一定速度(例えば、25rpm)で回転させ、円筒内で流動している鋳型材料の層の斜面が平面状となり、斜面と水平面との間で形成される角度を測定したものである。従って、鋳型材料(コーテッドサンド)が湿ったような状態で円筒内で流動せずに、鋳型材料(コーテッドサンド)の層の斜面が平面として形成されず、それ故に動的安息角が測定出来ないものが、湿態の鋳型材料となるのである。
【0017】
ここにおいて、本発明に従う湿態の鋳型材料を構成する耐火性骨材としては、鋳型の基材として機能する耐火性物質であって、従来より鋳型用として利用されている各種の耐火性粒状乃至は粉状材料が、何れも用いられ得、具体的には、ケイ砂、再生ケイ砂を始め、アルミナサンド、オリビンサンド、ジルコンサンド、クロマイトサンド等の特殊砂や、フェロクロム系スラグ、フェロニッケル系スラグ、転炉スラグ等のスラグ系粒子、また、アルミナ系粒子、ムライト系粒子等の人工粒子及びこれらの再生粒子や、更には、アルミナボール、マグネシアクリンカー等を挙げることが出来る。なお、これらの耐火性骨材は、新砂であっても、或いは、鋳物砂として鋳型の造型に一回或いは複数回使用された再生砂又は回収砂であっても、更には、そのような再生砂や回収砂に新砂を加えて混合せしめてなる混合砂であっても、何ら差支えない。そして、そのような耐火性骨材は、一般に、AFS指数で40~130程度の粒度のものとして、好ましくは、60~110程度の粒度のものとして、用いられることとなる。
【0018】
特に、上述の如き耐火性骨材の中でも、球状の骨材の使用が、本発明の目的を有利に達成し得る点において、推奨される。また、そのような球状の耐火性骨材としては、具体的には、粒形係数が1.2以下、より好ましくは1.0~1.1であるものが望ましい。この粒形係数が1.2以下である耐火性骨材を用いることにより、流動性や充填性が良くなって、骨材同士の接点数が多くなるところから、同じ強度を発現するために必要な粘結剤の量や添加物量を少なくすることが出来る。なお、ここで用いられる骨材の粒形係数は、一般に、粒子の外形形状を示す一つの尺度として採用され、粒形指数とも称されるものであって、その値が1に近付く程、球形(真球)に近付くことを意味しているものである。そして、そのような粒形係数は、公知の各種の手法で測定された砂表面積を用いて算出された値にて表されるものであって、例えば、砂表面積測定器(ジョージ・フィッシャー社製)を用いて、1gあたりの実際の砂粒の表面積を測定し、それを、理論的表面積で除した値を意味するものである。なお、理論的表面積とは、砂粒が全て球形であると仮定した場合の表面積である。
【0019】
また、本発明に従う鋳型材料における水溶性無機粘結剤としては、公知の各種のものの中から適宜に選択されて用いられることとなるが、中でも、水ガラス、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、バナジン酸ナトリウム、酸化アルミニウムナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸ニッケル、硫酸マンガン等からなる群より選ばれる1種又は2種以上のものを主成分とするものが、有利に用いられることとなる。これらのうち、取扱いの容易性及び最終的に得られる鋳型強度の観点より、水ガラス、及び水ガラスを主成分とするものが特に好ましい。ここで、水ガラスとは、可溶性のケイ酸化合物の水溶液であって、そのようなケイ酸化合物としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸アンモニウム等を挙げることが出来るが、特に、本発明においては、ケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)が有利に用いられることとなる。また、本発明においては、水ガラスを主成分として用いる限り、他に熱硬化性樹脂、糖類、タンパク質、合成高分子、塩類や無機高分子等の水溶性粘結剤を使用することも可能である。なお、水ガラスと他の水溶性粘結剤とを併用する場合、粘結剤の全量における水ガラスの割合は60質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上とされる。
【0020】
ここで、ケイ酸ナトリウムは、通常、SiO2 /Na2O のモル比により、1号~5号の種類に分類されて、用いられている。具体的には、ケイ酸ナトリウム1号は、SiO2 /Na2O のモル比が2.0~2.3であるものであり、またケイ酸ナトリウム2号は、SiO2 /Na2O のモル比が2.4~2.6であるものであり、更にケイ酸ナトリウム3号は、SiO2 /Na2O のモル比が2.8~3.3であるものである。加えて、ケイ酸ナトリウム4号は、SiO2 /Na2O のモル比が3.3~3.5であるものであり、またケイ酸ナトリウム5号は、SiO2 /Na2O のモル比が3.6~3.8であるものである。これらの中で、ケイ酸ナトリウム1号~3号は、JIS-K-1408においても規定されている。そして、これらのケイ酸ナトリウムは、単独での使用の他、混合して用いられてもよく、また2種以上のものを混合することで、SiO2 /Na2O のモル比を調製することも可能である。
【0021】
なお、本発明に従う鋳型材料を有利に得るべく、粘結剤として用いられる水ガラスを構成するケイ酸ナトリウムとしては、SiO2 /Na2O のモル比が、一般に1.9以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.1以上であるものが望ましく、上記したケイ酸ナトリウムの分類において、1号~3号、好ましくは1号~2号、より好ましくは2号に相当するケイ酸ナトリウムが、特に有利に用いられることとなる。かかるケイ酸ナトリウム1号~3号は、それぞれ、水ガラス中のケイ酸ナトリウム濃度が広い範囲においても、安定して、特性の良好な鋳型材料を与えるものである。また、鋳型の強度を得るためにはケイ酸ナトリウム1号~2号が、更には耐湿強度等のトータルバランスでケイ酸ナトリウム2号が選ばれるものとなる。そして、そのようなケイ酸ナトリウムにおけるSiO2 /Na2O のモル比の上限は、水溶液の形態にある水ガラスの特性に応じて適宜に選定されることとなるが、一般に3.5以下、好ましくは3.2以下、より好ましくは2.7以下とされることとなる。ここで、SiO2 /Na2O のモル比が1.9よりも小さくなると、水ガラスに多くのアルカリが存在することとなるため、水に対する水ガラスの溶解性が上がり、鋳型材料が吸湿劣化し易くなる恐れがある。一方、SiO2 /Na2O のモル比が3.5よりも大きいケイ酸ナトリウムでは、水に対する溶解性が低いため、最終的に得られる鋳型において、耐火性骨材間における接着面積が稼げず、鋳型強度が低下するという問題を生じる恐れがある。
【0022】
また、本発明において用いられる水ガラスは、水に溶けた状態のケイ酸化合物の溶液のことを意味し、本発明の鋳型材料を製造するに際しては、市場において購入されたままの原液の状態において用いられる他、そのような原液に水を添加して、希釈した状態において用いられることとなる。そして、そのような水ガラスから、水や溶剤等の揮発する物質を除いた不揮発分(水ガラス成分)を固形分と言い、これが、上記したケイ酸ナトリウム等の可溶性のケイ酸化合物に相当するものである。また、そのような固形分の割合が高い程、水ガラス中のケイ酸化合物濃度も、高くなるものである。従って、本発明において用いられる水ガラスの固形分とは、それが原液のみにて構成される場合においては、かかる原液中の水分量を除いた割合に相当することとなり、一方、原液を水にて希釈して得られる希釈液が用いられる場合にあっては、原液中の水分量と希釈に用いられた水の量とを除いた割合が、使用される水ガラスの固形分に相当することとなる。
【0023】
そして、そのような水ガラス中の固形分は、水ガラス成分(可溶性ケイ酸化合物)の種類等に応じて適宜の割合とされることとなるが、有利には、20~50質量%の割合において含有せしめられていることが望ましい。この固形分に相当する水ガラス成分を適度に水溶液中に存在せしめた水ガラスを用いて、耐火性骨材と混練乃至は混合することにより、かかる耐火性骨材に対して、水ガラス成分がムラなく、均一に分散した状態の混和物を調製することが出来、それによって、目的とする鋳型を、本発明に従って、有利に造型することが可能となる。なお、水ガラス中における水ガラス成分(可溶性ケイ酸化合物)の濃度が低くなり過ぎて、水ガラス成分(固形分)の合計量が20質量%未満となると、本発明に従う湿態の鋳型材料にあっては、成形型内での加熱温度を高くしたり、加熱時間を長くする必要が生じ、そのために、エネルギーロス等の問題が惹起されるようになる。一方、水ガラス中における固形分の割合が高くなり過ぎると、耐火性骨材に対して、水ガラス成分がムラなく、均一に分散した状態の混和物を調製することが困難となり、目的とする鋳型の特性において問題を惹起する恐れがあるところから、かかる固形分は50質量%以下、従って水分量が50質量%以上の割合となるように、水溶液の形態にある水ガラスを調製することが望ましい。
【0024】
なお、上記した水ガラス以外に、本発明において水溶性無機粘結剤として使用される塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、バナジン酸ナトリウム、酸化アルミニウムナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸ニッケル及び硫酸マンガン等にあっても、水溶性無機粘結剤としてよく知られているところであり、例えば特開2012-76115号公報等において指摘されている如き特徴を発揮させるべく、適宜に選択されて、使用されることとなる。
【0025】
ところで、本発明において用いられる上述の如き水溶性無機粘結剤の水溶液、換言すれば液状の水溶性無機粘結剤は、本発明に従う鋳型材料を用いて得られる鋳型の強度を有利に高めるべく、25℃における粘度が1000cP以下、好ましくは750cP以下、より好ましくは500cP以下、更に好ましくは300cP以下の低粘度の液状物として、用いられることとなる。また、かかる液状の水溶性無機粘結剤の粘度の下限としては、水よりも粘度が高ければよく、一般に1cP以上、好ましくは3cP以上、より好ましくは5cP以上、更に好ましくは7cP以上とされることとなる。このような低粘度の液状の水溶性無機粘結剤を用いることにより、撥粘結剤性の球状シリコーン樹脂粒子が、耐火性骨材の表面を被覆する液状の水溶性無機粘結剤の表面を容易に移動することが出来るようになるのである。なお、この液状の水溶性無機粘結剤は、例えば、水ガラスの如く液状のものであって、且つその粘度が本発明にて規定される範囲内であれば、そのまま用いることが可能であり、また固体状のものや、その粘度が本発明規定範囲外(1000cP超)のものには、更に水が添加されて、1000cP以下の粘度の液状物として用いられることとなる。そして、そのような液状の水溶性無機粘結剤の粘度は、1000cP以下であっても、より低い粘度のものを用いた方が、得られる鋳型の強度は向上するものの、その反面、離型性が低下するという問題を惹起することとなる。しかし、本発明に従う鋳型材料は、液状の水溶性無機粘結剤の粘度が1000cP以下の何れにおいても、安定して強度と離型性の良好な鋳型を造型することが可能となる特徴を有している。
【0026】
さらに、上述した各種の水溶性無機粘結剤は、本発明に従う鋳型材料において、固体の場合はその質量が、液体の場合は固形分のみとして考えた場合の固形分換算の質量が、耐火性骨材の100質量部に対して、0.1~2.5質量部の割合となる量において、用いられることが望ましく、中でも、0.2~2.0質量部の割合となる量が、特に有利に採用される。ここで、固形分の測定は、以下のようにして実施されるものである。即ち、アルミ箔製の容器(縦:9cm、横:9cm、高さ:1.5cm、不密封)内に、試料10gを収容して秤量し、乾燥前の試料収容容器の質量を求める。次いで、この試料収容容器を180±1℃に保持した加熱板上に置き、20分間放置した後、かかる試料収容容器を、反転させて、更に20分間、上記加熱板上に放置する。その後、かかる試料収容容器を、加熱板上から取り出して、デシケータ中で放冷した後、秤量を行って、乾燥後の試料収容容器の質量を求め、次式により、固形分(質量%)を算出する。
固形分(質量%)={[乾燥後の試料収容容器の質量(g)-容器のみの質量(g)]/[乾燥前の試料収容容器の質量(g)-容器のみの質量(g)]}×100
【0027】
なお、本発明に従う湿態の鋳型材料において、水溶性無機粘結剤の使用量が少なくなり過ぎると、耐火性骨材に対して、水溶性無機粘結剤がムラなく、均一に分散した状態の混和物(鋳型材料)として調製することが困難となる恐れがある。その一方、水溶性無機粘結剤の使用量が多くなり過ぎても、鋳型材料の流動性が低下したり、離型性が悪くなる恐れがあり、そのために、最終的に得られる鋳型の物性に悪影響をもたらし、また金属を鋳込んだ後の中子の砂落とし(鋳型材料の固化物の除去)を難しくする問題等も、惹起するようになる。
【0028】
そして、本発明は、上述の如き液状の水溶性無機粘結剤と撥粘結剤性の球状シリコーン樹脂粒子を、所定の耐火性骨材に対して添加、混合せしめて、目的とする湿態の鋳型材料を調製するものであるが、そこでは、球状シリコーン樹脂粒子として、撥粘結剤性のものが用いられているところから、得られる鋳型材料の粒子表面、換言すれば耐火性骨材を被覆する水溶性無機粘結剤層の表面に、かかる球状シリコーン樹脂粒子が存在することとなり、これによって、成形型(金型)に鋳型材料を充填するべく鋳型材料を流動させる際、鋳型材料同士が球状シリコーン樹脂粒子を介して接触するようになることで、鋳型材料の粒子間の摩擦が効果的に低減され得て、その流動性が有利に向上するようになるのである。また、鋳型の造型に際しては、鋳型材料表面の水溶性無機粘結剤が、造型装置における金属製のブロータンクやノズルの経路に付着して、これによっても、流動性が悪化するようになるのであるが、本発明に従う鋳型材料にあっては、粒子表面に存在する球状シリコーン樹脂粒子が、造型装置における部材の金属表面と水溶性無機粘結剤との間に介在することとなり、球状シリコーン樹脂粒子が表面保護の役割を果たすようになるところから、造型装置におけるブロータンクやノズルの経路への鋳型材料の付着が、効果的に防止乃至は抑制され得ることとなるのである。しかも、本発明に従う鋳型材料が充填された後では、そのような鋳型材料は、それらの粒子間の隙間を埋めるべく移動するようになるところから、その充填性が、更に一層向上せしめられ得ることとなる。
【0029】
また、本発明において用いられる球状シリコーン樹脂粒子は、その表面が撥粘結剤性であるところから、液状の水溶性無機粘結剤と混合されたときに、液状の水溶性無機粘結剤の表面に移動し易く、そして球状シリコーン樹脂粒子が水溶性無機粘結剤の表面に存在すると共に、球状であることによって、鋳型材料は更に滑り易くなって、より流動性が向上せしめられ得るようになるのである。しかも、成形型に対する水溶性無機粘結剤の付着を有利に防止することが出来ることとなるところから、成形型からの鋳型の離型性が大幅に向上する利点も発揮することとなる。更に、そのようなシリコーン樹脂粒子は、撥粘結剤性とされていることによって、骨材と骨材との間に水溶性無機粘結剤による接着点(ブリッジ)が形成されると、かかる接着点を構成する水溶性無機粘結剤部分の表面(接着点の周囲)に移動して、該水溶性無機粘結剤部分の内部に取り込まれることが効果的に抑制乃至は阻止されることとなるのであり、これにより、夾雑物の存在しない該水溶性無機粘結剤部位にて骨材同士が有利に連結せしめられ得て、鋳型の強度が効果的に確保され得ることとなり、以て、強度の維持乃至は向上に有利に寄与し得るのである。
【0030】
なお、ここで言うところの撥粘結剤性とは、液状の水溶性無機粘結剤をはじく性質を意味するものであって、本発明において、球状シリコーン樹脂粒子が撥粘結剤性を有していると言うことは、かかる球状シリコーン樹脂粒子を、所定の支持部材上に撒いて、この球状シリコーン樹脂粒子にて水平面を形成した後、その水平面上に、鋳型材料の形成に用いられる液状の水溶性無機粘結剤を滴下し、その液滴と水平面との接触角が90°以上、好ましくは100°以上、より好ましくは120°以上、更に好ましくは125°以上となる特性を有していることを意味するものである。
【0031】
また、球状シリコーン樹脂粒子における球状とは、一般に認識される程度の球状を意味するものであって、必ずしも真球状であることが必要とされるものではないが、通常、真球度が0.5以上であるものが用いられ、好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上であるものが、有利に用いられることとなる。ここで、真球度とは、走査型電子顕微鏡を用いた観察において、単粒子のものを無作為に10個選択し、その投影形状から得られたアスペクト比(短径/長径の比)の平均値を意味するものである。
【0032】
さらに、本発明において用いられる撥粘結剤性の球状シリコーン樹脂粒子は、熱重量示差熱分析装置において、空気雰囲気下で室温から700℃まで加熱をした場合において、その重量減少率が5~50%、好ましくは10~30%、より好ましくは10~20%である特性を有していることが望ましい。一般に、水溶性無機粘結剤を用いた鋳型材料は、有機分がないためにガスが発生しないというメリットはあるものの、鋳造後の崩壊性が悪くなるという問題を内在しているのであるが、本発明に従って、撥粘結剤性の球状シリコーン樹脂粒子が添加、配合せしめられることによって、そのような球状シリコーン樹脂粒子に含まれる有機分から発生するガスにより、鋳型の崩壊性が向上させられるようにするべく、上記の重量減少率は5%以上とすることが望ましいのである。一方、鋳造時においてガスが大量に発生するのを抑制すると共に、鋳造品におけるガス欠陥の発生を抑えるために、重量減少率は50%以下とすることが、望ましいのである。
【0033】
そして、上述の如き撥粘結剤性を有する球状シリコーン樹脂粒子としては、耐火性骨材よりも粒子径が小さなものであって、その平均粒子径が、一般に0.01μm以上50μm以下、好ましくは0.05μm以上25μm以下、より好ましくは0.1μm以上10μm以下、更に好ましくは0.2μm以上3μm以下であるものが、有利に用いられることとなる。このような平均粒子径の球状シリコーン樹脂粒子は、混合せしめられる耐火性骨材よりも粒径が小さなものであるために、耐火性骨材間に入り込み易く、均一に分散せしめられ得て、鋳型材料の粒子表面に均一に存在せしめられ得ることとなる。
【0034】
また、本発明に従う鋳型材料において、撥粘結剤性の球状シリコーン樹脂粒子の使用量としては、耐火性骨材の表面の被覆層を構成する水溶性無機粘結剤の固形分の100質量部に対して、0.1~500質量部、好ましくは0.3~300質量部、より好ましくは0.5~200質量部、更に好ましくは0.75~100質量部、最も好ましくは1~50質量部の割合が採用される。このように、所定の平均粒子径を有する球状シリコーン樹脂粒子を、所定の割合において、耐火性骨材表面の水溶性無機粘結剤被覆層に含有せしめることにより、本発明に従う効果をより有利に享受することが可能となるのである。なお、シリコーン樹脂粒子の平均粒子径は、レーザ回折式の粒度分布測定装置等によって測定される粒度分布より、求めることが出来る。
【0035】
さらに、本発明において用いられる上記したシリコーン樹脂粒子は、球状で、撥粘結剤性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、球状の樹脂粒子が、その表面に撥粘結剤性を有しておればよいところから、球状粒子の表面のみを撥粘結剤性を有するシリコーン樹脂にて被覆してなるものを用いても、同様の効果を得ることが可能である。しかし、球状粒子自体の破損やその被覆の剥がれが発生する可能性があるために、撥粘結剤性のシリコーン樹脂の単一成分からなる球状粒子を用いることがより好ましいと言うことが出来る。なお、シリコーン樹脂としては、オルガノポリシロキサンを主成分とするものであることが好ましく、またオルガノポリシロキサンは、シルセスキオキサンからなるものがより好ましい。更に、かかるシルセスキオキサンは、ポリメチルシルセスキオキサンであることが、特に望ましい。球状シリコーン樹脂粒子を構成するオルガノポリシロキサンが、シルセスキオキサンであることにより、更にシルセスキオキサンが、ポリメチルシルセスキオキサンであることにより、有効な撥粘結剤性を有すると共に、ケイ素の含有率が高くなり、耐熱性が優れた球状粒子を得ることが出来る。そして、そのような特性が付与されることにより、鋳型造型時の熱によって熱分解や融解が惹起され難いために、造形時や鋳造時でも球形を有利に保つことが出来、以て充填性や強度向上の効果を有利に維持することが出来ると共に、造型の際の臭気や煙を抑えることが出来るために、鋳造時においても、砂付着の防止効果や鋳肌の向上効果をより一層有利に発揮することが出来ることとなる。
【0036】
なお、本発明に従う鋳型材料にあっては、公知の如く、硬化剤や硬化促進剤を初め、各種の添加剤が適宜に添加、含有せしめられることとなるが、中でも、そのような鋳型材料より得られる鋳型の崩壊性の向上のために、硝酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選ばれた少なくとも一つの硝酸塩を、更に含有していることが望ましい。そのような硝酸塩は、上記した液状の水溶性無機粘結剤や球状のシリコーン樹脂粒子と共に、耐火性骨材に添加、混合せしめられるものであって、その使用量としては、鋳型材料における水溶性無機粘結剤の固形分量の100質量部に対して、0.5~30質量部の割合であることが望ましく、中でも1~25質量部が好ましく、特に3~20質量部であることが好ましい。この含有せしめられる硝酸塩の量が少なくなり過ぎると、上記した効果を有利に享受することが出来なくなる恐れがあり、その一方、硝酸塩の使用量が多くなり過ぎても、その使用量に応じた効果の向上が認められず、更には、費用対効果の観点より得策ではない。また、ここで用いられ得る硝酸塩のうち、アルカリ金属の硝酸塩としては、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムが好適なものであり、またアルカリ土類金属の硝酸塩では、硝酸カルシウムや硝酸マグネシウムが好適なものとして挙げられ、それらが、単独で、又は2種類以上を混合して用いられることとなる。特に、水溶性無機粘結剤として水ガラスを用いた場合にあっては、かかる水ガラスへの溶解性が高い点から、硝酸のアルカリ金属塩がより好ましく、中でも、硝酸ナトリウムや硝酸カリウムの採用が、推奨されることとなる。
【0037】
また、本発明に係る鋳型材料においては、上述した球状シリコーン樹脂粒子と共に、更に、耐湿性向上剤が含有せしめられていることが好ましい。このように、鋳型材料に耐湿性向上剤を含有せしめることにより、球状シリコーン樹脂粒子の撥粘結剤性の副次的な作用によって、鋳型造型時においても、耐湿性向上剤との相乗効果が得られ、最終的に得られる鋳型の更なる耐湿性の向上を図ることが出来ることとなる。
【0038】
ここで、かかる本発明において用いられる耐湿性向上剤としては、鋳型材料において従来より用いられているものであれば、本発明の効果を阻害しないものである限り、如何なるものであっても、使用可能である。具体的には、炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、炭酸鉄、炭酸マンガン、炭酸銅、炭酸アルミニウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸リチウム、四ホウ酸アンモニウム、四ホウ酸カルシウム、四ホウ酸ストロンチウム、四ホウ酸銀、メタホウ酸ナトリウム、メタホウ酸カリウム、メタホウ酸リチウム、メタホウ酸アンモニウム、メタホウ酸カルシウム、メタホウ酸銀、メタホウ酸銅、メタホウ酸鉛、メタホウ酸マグネシウム等のホウ酸塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硫酸チタン、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸銅等の硫酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸リチウム、リン酸水素リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸チタン、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛等の水酸化物、珪素、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、銅、鉄、ホウ素、ジルコニウム等の酸化物等を、例示することが出来る。それらの中でも、特に塩基性炭酸亜鉛、炭酸鉄、炭酸リチウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸リチウム、メタホウ酸カリウム、硫酸リチウム、水酸化リチウムは、水溶性無機粘結剤として水ガラスを用いた場合に、より有利に耐湿性を向上させることが可能である。中でも、炭酸塩、ホウ酸塩は、耐湿性の向上がより容易に得られるので、好ましく用いられることとなる。上記したものを始めとする耐湿性向上剤は、単独で用いられ得ることは勿論のこと、2種以上のものを併用することも可能である。なお、先に列記した耐湿性向上剤の中には、水溶性無機粘結剤として使用可能な化合物も含まれているが、かかる化合物にあっては、それとは異なる水溶性無機粘結剤を用いる場合に、耐湿性向上剤として作用させることが可能である。
【0039】
そして、そのような耐湿性向上剤の使用量としては、その総量において、液状の水溶性無機粘結剤の固形分の100質量部に対して、一般に0.5~50質量部程度であることが好ましく、中でも1~20質量部がより好ましく、特に2~15質量部が更に好ましいものである。この耐湿性向上剤の添加効果を有利に享受するためには、0.5質量部以上の使用量であることが望ましいのであり、一方、その添加量が多過ぎると、水溶性無機粘結剤の結合を阻害し、最終的に得られる鋳型の強度が低下する等の問題を惹起する恐れがあるところから、50質量部以下とされることが望ましいのである。
【0040】
また、本発明に従う鋳型材料には、所定の界面活性剤を含有せしめることも可能である。ここで、本発明の鋳型材料に含有せしめられる界面活性剤の量としては、水溶性無機粘結剤の固形分の100質量部に対して、0.1~20.0質量部であることが望ましく、中でも0.5~15.0質量部が好ましく、特に0.75~12.5質量部であることが好ましい。この含有せしめられる界面活性剤の量が少な過ぎると、上記した効果を有利に享受することが出来ない恐れがあり、その一方、界面活性剤の量が多過ぎても、使用量に応じた効果の向上が認められず、また費用対効果の観点よりして得策ではない。本発明においては、界面活性剤として、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤の何れをも、用いることが出来る。
【0041】
具体的には、陽イオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。また、陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、N-アシル-N-メチルグリシン塩、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシルグルタミン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、N-アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。更に、両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。加えて、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、エマルゲン911)、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(例えば、ニューポールPE-62)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。
【0042】
また、種々の界面活性剤のうち、特に、非極性部位としてシロキサン構造を有するものをシリコーン系界面活性剤といい、パーフルオロアルキル基を有するものをフッ素系界面活性剤という。シリコーン系界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコーン、アクリル末端ポリエステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アクリル末端ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、アミノプロピル変性シリコーン等が挙げられる。また、フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルフォン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー等が挙げられる。
【0043】
本発明においては、上述の如き各種の界面活性剤を、単独で、又は2種類以上を混合して、用いることが可能である。尤も、界面活性剤によっては、水溶性無機粘結剤と反応して、時間の経過と共に、界面活性能が低下乃至は消失する恐れがあるものがあるため、例えば、水溶性無機粘結剤として水ガラスを用いる場合には、かかる水ガラスと反応しない陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤が、有利に使用される。
【0044】
また、本発明に従う鋳型材料には、所定の保湿剤を含有せしめることも可能である。保湿剤を含有せしめることにより、鋳型造型の際に、水分に濡れて湿態化した鋳型材料の湿潤性を、加熱によって固化又は硬化されるまで、安定して維持することが可能となる。保湿剤の含有量は、水溶性無機粘結剤の固形分の100質量部に対して、0.1~20.0質量部であることが望ましく、中でも0.5~15.0質量部が好ましい。また、そのような保湿剤としては、多価アルコール、水溶性高分子、炭化水素類、糖類、タンパク質、無機化合物等を用いることが出来る。
【0045】
具体的に、多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。水溶性高分子化合物としては、特に分子量1000当り、アルコール性水酸基を5~25個有している化合物を指すものである。このような水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール及びその各種変性物等のビニルアルコール系重合体;アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;アルキル澱粉、カルボキシルメチル澱粉、酸化澱粉等の澱粉誘導体;ポリアクリル酸ナトリウム等の吸水性高分子等が挙げられる。炭化水素類としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、石油エーテル、石油ベンジル、テトラリン、デカリン、ターシャリーアミルベンゼン、ジメチルナフタリン等が挙げられる。糖類としては、単糖類、オリゴ糖、デキストリン等の多糖類等を挙げることが出来、その中で、単糖類は、加水分解によって更に簡単な糖類に分解することの出来ない糖類であり、好ましくは三炭糖(炭素原子3個を持つ単糖類)~十炭糖(炭素原子10個を持つ単糖類)、より好ましくは六炭糖(炭素原子6個を持つ単糖類)である。また、タンパク質としては、ゼラチン等が挙げられる。加えて、無機化合物としては、食塩、硫酸ソーダ、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ケイ酸塩等が挙げられる。これら各種の保湿剤を、単独で、又は2種類以上を混合して、用いることが出来る。
【0046】
また、本発明に従う鋳型材料には、平均粒子径が0.1~20μmである二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機金属酸化物粒子を更に含有しても良い。無機金属酸化物粒子を含有せしめることにより、鋳型造型に際しての成形型(成形キャビティ)への鋳型材料の充填性を、より有利に向上させることが可能となる。そのような無機金属酸化物粒子の含有量は、水溶性無機粘結剤の固形分の100質量部に対して、0.1~50.0質量部であることが好ましく、中でも0.5~30.0質量部が好ましい。無機金属酸化物粒子の平均粒子径は、レーザ回折式の粒度分布測定装置等により測定される粒度分布より、求めることが可能である。
【0047】
さらに、本発明において用いられる無機金属酸化物粒子は、球状を呈するものが好ましく、必ずしも真球状を呈することは必要とされないところ、通常、真球度が0.5以上であるものが、好ましくは0.7以上であるものが、更に好ましくは0.9以上であるものが、有利に用いられることとなる。ここで、真球度とは、走査型電子顕微鏡観察において、単粒子のものを無作為に10個選択し、その投影形状から得られたアスペクト比(短径/長径の比)の平均値を意味している。
【0048】
そして、本発明に係る鋳型材料には、上述した添加剤の他にも、必要に応じて、公知の他の各種の添加剤を適宜に含有せしめることも可能である。なお、そのような添加剤を鋳型材料に含有せしめるに際しては、液状の水溶性無機粘結剤に、所定の添加剤を予め配合した後、耐火性骨材と混練乃至は混合せしめる方法や、そのような水溶性無機粘結剤とは別個に、所定の添加剤を、耐火性骨材に対して添加して、全体を均一に混練乃至は混合せしめる方法等が、採用される。
【0049】
また、その他の添加剤として、耐火性骨材と水溶性無機粘結剤との結合を強化するカップリング剤を含有せしめることも有効であり、例えば、シランカップリング剤、ジルコンカップリング剤、チタンカップリング剤等を用いることが出来る。また、鋳型材料の流動性の向上に寄与する滑剤の含有も有効であり、例えば、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックス、モンタン酸ワックス等のワックス類;ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド等の脂肪酸アマイド類;メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等のアルキレン脂肪酸アマイド類;ステアリン酸、ステアリルアルコール;ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;ステアリン酸モノグリセリド、ステアリルステアレート、硬化油等を使用することが可能である。更に、離型剤として、パラフィン、ワックス、軽油、マシン油、スピンドル油、絶縁油、廃油、植物油、脂肪酸エステル、有機酸、黒鉛微粒子、雲母、蛭石、フッ素系離型剤、シリコーンオイル等のシリコーン系離型剤等も使用可能である。そして、これらその他の添加剤は、それぞれ、水溶性無機粘結剤中の固形分に対して、一般に、5質量%以下、好ましくは3質量%以下の割合において、含有せしめられる。
【0050】
なお、本発明に従う、常温流動性を有しない湿態の鋳型材料を製造するに際しては、一般に、常温の耐火性骨材に対して、粘結剤としての水溶液状の水溶性無機粘結剤と撥粘結剤性の球状シリコーン樹脂粒子とを、必要に応じて他の添加剤と共に、混練乃至は混合せしめることにより、耐火性骨材と水溶液状の水溶性無機粘結剤と球状シリコーン樹脂粒子(及び他の添加剤)とが均一に混和している状態の混和物からなる、常温流動性を有しない湿態の鋳型材料(コーテッドサンド)を得る手法が、採用される。この得られる常温流動性を有しない湿態の鋳型材料(コーテッドサンド)は、必要に応じて、湿態を呈する程度において、その含水分量が適宜に調整されるものであって、鋳型材料(コーテッドサンド)の含水分量が、水溶性無機粘結剤の固形分量に対して55質量%より多くなるように、好ましくは70~900質量%となるように、より好ましくは95~500質量%となるように調整されて、製造される。このような含水分量に調整された湿態の鋳型材料(コーテッドサンド)にあっては、鋳型造型時に成形型内へ充填する際のブローエアーによって乾燥し、成形型内への充填が阻害されることを効果的に防止しつつ、湿態の鋳型材料(コーテッドサンド)としての湿潤さを保つことが出来ることに加え、そのような鋳型材料(コーテッドサンド)を用いて造型された鋳型においても、優れた特性が付与されたものとなるのである。
【0051】
ところで、本発明に従う湿態の鋳型材料の製造工程において、撥粘結剤性の球状シリコーン樹脂粒子は、耐火性骨材や水溶性無機粘結剤と同時に添加して、混練乃至は混合することが出来るが、また、その混練時に別個に添加して混練してもよく、更に混練時に時間差を設けて混練することも可能である。この本発明に従う湿態の鋳型材料を製造するに際して、粘結剤としての水溶液状の水溶性無機粘結剤は、使用される水溶性無機粘結剤が固体状のものである場合には、予め水に溶かした状態において用いられることとなる。また、液体状の水溶性無機粘結剤にあっても、その粘度を、本発明において採用される範囲内に調整するために、水に希釈したものを用いることが可能である。かかる水の添加は、予め水溶性無機粘結剤と混ぜてもよく、また耐火性骨材との混錬乃至は混合時に、水溶性無機粘結剤と水とを別々に添加してもよい。なお、本発明における液状の水溶性粘結剤の粘度は、混錬乃至は混合時に水溶性無機粘結剤と水とを別々に添加した場合においては、別々に添加した水溶性無機粘結剤と水とを混ぜた時の粘度を基準とする。従って、例えば、固体の水溶性無機粘結剤と水とを混錬乃至は混合時に別個に添加した場合にあっても、液状の水溶性無機粘結剤を用いたものとみなし、固体の水溶性無機粘結剤を水に溶かして得られた液体状態のものの粘度が1000cP以下となるものであればよい。
【0052】
さらに、本発明に従う常温流動性を有しない湿態の鋳型材料(コーテッドサンド)を用いて、目的とする鋳型を造型する場合においては、かかる鋳型材料を、その目的とする鋳型を与える成形型の成形キャビティ内に充填する一方、成形型を80~300℃、好ましくは90~250℃、より好ましくは100~200℃の温度に加熱して、そこに充填された鋳型材料が乾燥するまで、成形型内で保持されるようにする手法が、有利に採用されることとなる。このような温度範囲内の温度にて成形型を加熱しておくことにより、最終的に得られる鋳型の耐湿強度を有利に向上せしめ得ると共に、鋳型材料の乾燥が、有利に進行せしめられ得ることとなる。なお、成形型内での鋳型材料の保持中に、乾燥促進のために、成形型内に熱風又は過熱水蒸気を吹き込んでも良く、また、鋳型材料(充填相)の固化乃至は硬化をより一層、促進させるために、硬化促進剤としての二酸化炭素(CO2 ガス)やエステル等をガス状又は霧状にして、成形型内に通気しても良い。
【0053】
すなわち、加熱された成形型のキャビティ内に、常温流動性を有しない湿態の鋳型材料(コーテッドサンド)を充填し、保持することにより、キャビティ内の充填相を構成する鋳型材料は湿態であることから、耐火性骨材が水溶性無機粘結剤を介して相互に結合して連結し、一体的な鋳型形状を呈する鋳型材料の集合体(結合物)が形成されるのである。なお、水溶性無機粘結剤は、通常、何の添加剤も加えられていなければ、水の蒸発乾固により固化し、また、硬化剤として酸化物や塩が加えられている場合には、硬化することとなるのである。本発明において、鋳型材料の集合体(結合物)は、単に固化したもの、及び硬化剤によって硬化したものの何れをも含むものである。なお、本明細書における「固化物」との表現は、「硬化物」をも含めた意味において使用されていることが、理解されるべきである。
【0054】
なお、上記した硬化促進剤として用いられる二酸化炭素や各種エステル類には、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、γ-ブチロラクトン、β-プロピオラクトン、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、グリセリンジアセテート、トリアセチン、プロピレンカーボネート等が例示され、これら硬化促進剤は、単独で、或いは2種以上のものを混合して、使用することが出来る。
【0055】
また、本発明に従う鋳型材料を用いて、目的とする鋳型を製造する方法としては、上述した方法の他にも、公知の各種の造型手法が適宜に採用され得るところであり、例えば、鋳型材料の層を順次、積層せしめる一方、目的とする鋳型に対応する部分を硬化せしめて、三次元の鋳型を直接に造型する積層造形の手法も、採用可能である。
【実施例】
【0056】
以下に、幾つかの実施例や比較例を用いて、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、それら実施例や比較例の記載によって、何等の限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。なお、以下の実施例や比較例において、「%」及び「部」は、特に断りのない限りにおいて、何れも、質量基準にて示されるものである。また、実施例や比較例で用いられる樹脂粒子及び粘結剤の特性、またそこで得られた鋳型材料(コーテッドサンド:CS)の特性、更にはそれぞれのCSを用いた造型試験及び鋳造試験における各特性についての評価乃至は測定は、それぞれ、以下のようにして実施した。
【0057】
(1)平均粒子径の測定
実施例や比較例で添加される粒子について、日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置(製品名:MT3200II)を用いて、その粒度分布を測定し、その得られた粒度分布から、積算値50%の粒子径を平均粒子径(D50)として求める。
【0058】
(2)樹脂粒子の熱分解(TG)重量減少率の測定
差動型示差熱天秤(株式会社リガク製TG-DTA Thermoplus2 TG8120;エアー流量:500ml/分、昇温速度:10℃/分、Ptパン:直径0.5cm×高さ0.5cm)を用いて、かかるPtパンに収容した樹脂粒子サンプルを室温から930℃まで加熱昇温して、室温から700℃までの重量減少率を求める。
【0059】
(3)接触角の測定
樹脂粒子をガラス製のシャーレに摺り切り一杯に入れて水平面を形成し、その水平面上に、シリンジにて、鋳型材料の製造に用いた各水溶性無機粘結剤の液状物を1滴程滴下する。そして、その滴下された水溶性無機粘結剤の液滴について、ソニック株式会社製デジタルマイクロスコープBS-D8000IIにて観察し、樹脂粒子による水平面と、滴下して形成される水溶性無機粘結剤の液滴との間の接触角を求める。なお、水溶性無機粘結剤が樹脂粒子内に浸透してしまい、液滴状態を形成し得ないものは、測定不可とする。
【0060】
(4)粘結剤粘度の測定
JIS-Z-8803(2011)「液体の粘度測定方法」において規定される「9.単一円筒形回転粘度計による粘度測定方法」に準拠し、そこに記載された装置と同等の原理を採用する装置を用いて、実施例や比較例で用いられる液状の水溶性無機粘結剤について、25℃での粘度(cP)を測定する。
【0061】
(5)充填率の測定
各実施例又は各比較例において造型して得られた、幅:1.0cm×高さ:1.0cm×長さ:8.0cmの大きさの鋳型を、それぞれ試験片として用いて、骨材の真比重に対する各試験片の比重(質量を試験片の体積で除して算出する)の割合を、百分率で算出する。
充填率(質量%)={[各試験片の質量(g)/体積(cm3 )]
/骨材の真比重(g/cm3 )}×100
【0062】
(6)離型性の測定
下記の充填流動性の測定に用いられた成形金型を使用して、その成形キャビティ内に離型剤を塗布することなく、5回連続して造型したときの試験片の離型状態を、目視評価する。評価基準は、以下の通りである。なお、本発明においては、以下の基準において、△及び○の評価を合格とする。
○:全く問題なく、スムーズに離型出来る。
△:少し抵抗があるが、離型は問題なし。
×:離型不良があり、試験片に折れ・クラックが発生する。
××:離型不良があり、試験片に折れ・クラックが発生し、成形型にも粘
結剤や骨材の付着が認められる。
【0063】
(7)充填流動性の測定
各実施例又は各比較例のCSを、それぞれ、
図1に示すような型割面を有する一方の金型半体5と、それに対称的な型割面を有する他方の金型半体5とを組み合わせて、構成される成形型に、その充填口6から、ブロー圧0.3MPaで、各CSを充填せしめ、成形型温度150℃、成形時間180秒にて造型して、その得られた鋳型の質量(g)を測定する。次に、その成形された鋳型において、キャビティ内の流路1~4に対するCSの充填状態を、目視にて観察し、以下の評価基準に従って評価する。なお、流路3~4までは充填され、流路1~2が△以上の充填状態であるものを、合格とする。
○:充填されている。
△:充填されているが、若干欠損あり。
×:充填できずに、当該流路部分が欠損している。
【0064】
(8)崩壊性の測定
先ず、
図2に示されるように、予め常温自硬性砂で作製された、上部に注湯注入口12と下部に中子の幅木固定部14を有する半割れ中空主型16(キャビティ直径:6cm、高さ:6cm)の内に、各々のCSを用いて作製した、幅木部18を有する円形無空中子20(直径:5cm、高さ:5cm)収容し、かかる幅木部18を、幅木固定部14で接着固定した後、更に半割れ中空主型16を相互に接着固定して、鋳造試験用砂型22を作製する。なお、鋳造時の湯漏れを防ぐために、接着した主型を万力等でクランプするか、針金を巻いてしっかりと固定する。次に、この鋳造試験用砂型22の注湯注入口12からアルミニウム合金溶湯(温度710±5℃)を注湯し、凝固せしめた後、主型16を壊して、
図3に示す円筒状の鋳物26を取り出し、そして、室温になった鋳物26に対して、エアハンマを用いて打撃を加えることにより、円形無空中子20を排出する。かかる排出に際しては、チッピング圧は0.3MPaとし、鋳物26に対して3秒毎にエアハンマで打撃を加える。そして、鋳物26からの、円形無空中子20を構成するCS(以下、中子CSという)の排出のし易さを、排出終了までの打撃回数で評価する。
【0065】
(9)鋳造後の砂付着状況の測定
上記「(8)崩壊性の測定」に従って注湯し、凝固せしめた後、主型16を壊して、
図3に示す円筒の鋳物26を取り出す。そして、室温になったところで、旋盤等を用いて鋳物を中の中子ごと半分に切断する。その後、中子部分を取り除き、鋳物への中子砂(CS)の付着状況を目視にて確認を行い、以下の基準に従って評価する。なお、本発明においては、以下の評価における△及び○の評価を合格とする。
○:砂の付着が全く見られなかった。
△:鋳物表面の一部に砂の付着が見られた。
×:鋳物表面の全面に亘って砂の付着が見られた。
【0066】
(10)表面粗さの測定
上記した「(9)鋳造後の砂付着状況の測定」において、砂付着状況を評価した鋳物について、その表面の粗さを目視及び指で触れた際の感触により、以下の基準に従って、評価する。なお、鋳物表面に砂(CS)が付着している場合には、その付着した砂(CS)を真鍮ブラシ等で砂を除去した後の鋳物の表面について、評価する。本発明においては、△及び○の評価を合格とする。
○:目視で認められる凹凸が無く、且つ、指先に引っかかりを感じない。
△:目視で多少の凹凸は認められるが、指先に引っかかりを感じない。
×:目視で大きな凹凸が認められ、且つ、指先に引っかかりを感じる。
【0067】
(11)抗折強度の測定
上記の「(5)充填率の測定」において、各CSを用いて得られた試験片について、その破壊荷重を、測定器(高千穂精機株式会社製デジタル鋳物砂強度試験機)を用いて測定して、この測定された破壊荷重を用いて、抗折強度を、下記の式により算出する。なお、破壊荷重の測定は、成形後1時間後の常温の試験片を用いて行う。
抗折強度(N/cm2 )=1.5×LW/ab2
[但し、L:支点間距離(cm)、W:破壊荷重(N)、a:試験片の
幅(cm)、b:試験片の厚み(cm)である。]
【0068】
(12)ガス発生量の測定
PGD型ガス圧力測定器(GEORGE FISCHER社製)を用い、測定温度700℃で、測定する。即ち、炉温度を700℃に昇温した後、筒形銅製試料管(φ約0.7cm×7.7cm)内に、上記「(5)充填率の測定」で得られた各CSから作製した試験片より削り出した試料1gを入れて、断熱材カオウール(市販品)で蓋をし、次いで炉内の端部に試料管をセットして、窒素雰囲気下に調整する。次いで、試料管を密封した炉内へ投入し、発生したガスの圧力を圧力センサーにて感知し、信号変換器等を利用して圧力データを圧力数値が一定になるまで(要するにガスの発生が終わるまで)収集する。そして、この得られた圧力データから、圧力-容積換算検量線(重炭酸カリウムの分解を利用した検量線)により、ガス発生量を求める。
ガス発生量(ml/g)=トータルガス発生量(ml)/試験片質量(g)
【0069】
-湿態CSの製造例1-
先ず、耐火性骨材として、市販の鋳造用球状人工砂であるルナモス#60(商品名:花王クエーカー株式会社製)を準備する一方、水溶性無機粘結剤たる水ガラスとして、2号ケイ酸ナトリウム(SiO2 /Na2 Oのモル比:2.5)を用い、これに水を加えて、固形分率:41%、粘度:110cPに調整したものを準備した。
【0070】
そして、上記の骨材(ルナモス#60)の100部を、常温のまま、品川式万能撹拌機(5DM-r型、株式会社ダルトン製)に投入した後、前記水ガラスを、骨材(ルナモス#60)の100部に対して1.1部(固形分:0.45部)の割合で、撹拌機内に投入し、更に撥粘結剤性の球状シリコーン樹脂粒子として、骨材(ルナモス#60)の100部に対して0.05部に相当する量において、球状のポリメチルシルセスキオキサン樹脂粒子(平均粒子径2.0μm)を添加し、2分間の混練を行ない、均一になるまで撹拌、混合した。その後、撹拌機内より混和物を取り出すことにより、骨材、水ガラス及び球状シリコーン樹脂粒子からなる湿態の鋳型材料(コーテッドサンド):CS1を得た。
【0071】
-湿態CSの製造例2-
球状シリコーン樹脂粒子の添加量を0.10部としたこと以外は、上記湿態CSの製造例1と同様の手順に従って、湿態のCS2を得た。
【0072】
-湿態CSの製造例3-
球状シリコーン樹脂粒子の添加量を0.25部としたこと以外は、上記湿態CSの製造例1と同様の手順に従って、湿態のCS3を得た。
【0073】
-湿態CSの製造例4-
球状シリコーン樹脂粒子の添加量を1.00部としたこと以外は、上記湿態CSの製造例1と同様の手順に従って、湿態のCS4を得た。
【0074】
-湿態CSの製造例5-
撥粘結剤性の球状シリコーン樹脂粒子として、球状のポリメチルシルセスキオキサン樹脂粒子(平均粒子径0.7μm)を用いたこと以外は、上記湿態CSの製造例3と同様の手順に従って、湿態のCS5を得た。
【0075】
-湿態CSの製造例6-
撥粘結剤性の球状シリコーン樹脂粒子として、球状のポリメチルシルセスキオキサン樹脂粒子(平均粒子径5.0μm)を用いたこと以外は、上記湿態CSの製造例3と同様の手順に従って、湿態のCS6を得た。
【0076】
-湿態CSの製造例7-
撥粘結剤性の球状シリコーン樹脂粒子として、球状のポリメチルシルセスキオキサン樹脂粒子(平均粒子径30μm)用いたこと以外は、上記湿態CSの製造例3と同様の手順に従って、湿態のCS7を得た。
【0077】
-湿態CSの製造例8-
水溶性無機粘結剤たる水ガラスとして、2号ケイ酸ナトリウム(SiO2 /Na2 Oのモル比:2.5)を用い、これに水を加えて、固形分率:28%、粘度:8cPに調整したものを準備した。次いで、この準備された水ガラスを使用して、それを、骨材(ルナモス#60)の100部に対して1.61部(固形分:0.45部)の割合で添加したこと以外は、上記湿態CSの製造例3と同様の手順に従って、湿態のCS8を得た。
【0078】
-湿態CSの製造例9-
水溶性無機粘結剤たる水ガラスとして、2号ケイ酸ナトリウム(SiO2 /Na2 Oのモル比:2.5)を用い、これに水を加えて、固形分率:37%、粘度:29cPに調整したものを準備した。次いで、この準備された水ガラスを使用して、それを、骨材(ルナモス#60)の100部に対して1.22部(固形分:0.45部)の割合で添加したこと以外は、上記湿態CSの製造例3と同様の手順に従って、湿態のCS9を得た。
【0079】
-湿態CSの製造例10-
水溶性無機粘結剤たる水ガラスとして、2号ケイ酸ナトリウム(SiO2 /Na2 Oのモル比:2.5)を用い、これに水を加えて、固形分率:45%、粘度:280cPに調整したものを準備した。次いで、この準備された水ガラスを使用して、それを、骨材(ルナモス#60)の100部に対して1.00部(固形分:0.45部)の割合で添加したこと以外は、上記湿態CSの製造例3と同様の手順に従って、湿態のCS10を得た。
【0080】
-湿態CSの製造例11-
水溶性無機粘結剤たる水ガラスとして、2号ケイ酸ナトリウム(SiO2 /Na2 Oのモル比:2.5)を用い、これに水を加えて、固形分率:46%、粘度:630cPに調整したものを準備した。次いで、この準備された水ガラスを使用して、それを、骨材(ルナモス#60)の100部に対して0.98部(固形分:0.45部)の割合で添加したこと以外は、上記湿態CSの製造例3と同様の手順に従って、湿態のCS11を得た。
【0081】
-湿態CSの製造例12-
水溶性無機粘結剤たる水ガラスとして、2号ケイ酸ナトリウム(SiO2 /Na2 Oのモル比:2.5)を用い、これに水を加えて、固形分率:47%、粘度:940cPに調整したものを準備した。次いで、この準備された水ガラスを使用して、それを、骨材(ルナモス#60)の100部に対して0.96部(固形分:0.45部)の割合で添加することとしたこと以外は、上記湿態CSの製造例3と同様の手順に従って、湿態のCS12を得た。
【0082】
-湿態CSの製造例13-
撥粘結剤性の球状シリコーン樹脂粒子として、球状のポリメチルシルセスキオキサン樹脂粒子(平均粒径5.0μm)を用いたこと以外は、上記湿態CSの製造例12と同様の手順に従って、湿態のCS13を得た。
【0083】
-湿態CSの製造例14-
硝酸塩として、硝酸カリウムを用い、それを、骨材100部に対して0.023部(無機粘結剤の固形分100部に対して5部)の割合で、更に添加したこと以外は、上記湿態CSの製造例1と同様の手順に従って、湿態のCS14を得た。
【0084】
-湿態CSの製造例15-
硝酸塩として、硝酸カリウムを用い、それを、骨材100部に対して0.023部(無機粘結剤の固形分100部に対して5部)の割合で、更に添加したこと以外は、上記湿態CSの製造例3と同様の手順に従って、湿態のCS15を得た。
【0085】
-湿態CSの製造例16-
硝酸塩として、硝酸ナトリウムを用い、それを、骨材100部に対して0.023部(無機粘結剤の固形分100部に対して5部)の割合で、更に添加したこと以外は、上記湿態CSの製造例3と同様の手順に従って、湿態のCS16を得た。
【0086】
-湿態CSの製造例17-
硝酸塩として、硝酸カルシウムを用い、それを、骨材100部に対して0.023部(無機粘結剤の固形分100部に対して5部)の割合で、更に添加したこと以外は、上記湿態CSの製造例3と同様の手順に従って、湿態のCS17を得た。
【0087】
-湿態CSの製造例18-
球状シリコーン樹脂粒子を添加しないこと以外は、上記湿態CSの製造例1と同様の手順に従って、湿態のCS18を得た。
【0088】
-湿態CSの製造例19-
球状シリコーン樹脂粒子として、撥粘結剤性を有しない球状のジメチルポリシロキサン架橋物の樹脂粒子(平均粒子径5.0μm)を用いたこと以外は、上記湿態CSの製造例3と同様の手順に従って、CS19を得た。
【0089】
-湿態CSの製造例20-
球状シリコーン樹脂粒子に代えて、不定形のポリメチルシルセスキオキサン樹脂粒子(平均粒子径4.0μm)を用いたこと以外は、上記湿態CSの製造例3と同様の手順に従って、湿態のCS20を得た。
【0090】
-湿態CSの製造例21-
球状シリコーン樹脂粒子に代えて、不定形のポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子(平均粒子径7.0μm)を用いたこと以外は、上記湿態CSの製造例3と同様の手順に従って、湿態のCS21を得た。
【0091】
-湿態CSの製造例22-
球状シリコーン樹脂粒子に代えて、球状のポリエチレン樹脂粒子(平均粒子径6.0μm)を用いたこと以外は、上記湿態CSの製造例3と同様の手順に従って、湿態のCS22を得た。
【0092】
-湿態CSの製造例23-
球状シリコーン樹脂粒子に代えて、不定形のポリエチレン樹脂粒子(平均粒子径2.0μm)を用いたこと以外は、上記湿態CSの製造例3と同様の手順に従って、湿態のCS23を得た。
【0093】
-湿態CSの製造例24-
球状シリコーン樹脂粒子に代えて、不定形のエチレンビスステアリン酸アミド粒子(平均粒子径3.0μm)を用いたこと以外は、上記湿態CSの製造例3と同様の手順に従って、湿態のCS24を得た。
【0094】
-湿態CSの製造例25-
球状シリコーン樹脂粒子に代えて、球状の非晶質シリカ粒子(平均粒子径3.0μm)を用いると共に、その使用量を、骨材(ルナモス#60)の100部に対して0.50部に相当する量にしたこと以外は、上記湿態CSの製造例1と同様の手順に従って、湿態のCS25を得た。
【0095】
-湿態CSの製造例26-
水溶性無機粘結剤たる水ガラスとして、2号ケイ酸ナトリウム(SiO2 /Na2 Oのモル比:2.5)を用い、固形分率:48%、粘度:1520cPに調整されたものを使用し、それを、骨材(ルナモス#60)の100部に対して0.94部(固形分:0.45部)の割合で添加することとしたこと以外は、上記湿態CSの製造例3と同様の手順に従って、湿態のCS26を得た。
【0096】
-鋳型の造型例I (実施例1~17及び比較例1~9)-
上記した各手順に従って製造されたCS1~CS26(温度:20℃)を用い、それぞれ、150℃に加熱された成形金型内に、圧力:0.3MPaのゲージ圧にて吹き込んで、充填した後、成形金型内で保持し、かかる成形金型内に充填されたCSを、それぞれ、固化(硬化)させることにより、充填率測定用試験片(1.0×1.0×8.0cm)を、それぞれ作製した。なお、実施例1~17及び比較例1~9のそれぞれにおいて使用したCSは、下記表1~3に示される通りである。
【0097】
次いで、かかる得られた充填率測定用試験片について、先の測定法に従って、充填率の測定を行い、また各CSを用いた造型試験とアルミ鋳造試験を実施して、先の測定法に従って、離型性、充填流動性、崩壊性、鋳造後の砂付着状況及び鋳物の表面粗さについて評価し、それらの結果を、樹脂粒子の平均粒子径や接触角、TG重量減少率及び粘結剤の粘度と共に、下記表1~表3に併せ示した。
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
かかる表1~表2の結果より明らかな如く、本発明に従う実施例1~17において用いられた鋳型材料:CS1~CS17は、何れも、高い充填率を示すものであり、また造型試験においては、優れた充填流動性を有するものであると共に、離型性にも優れており、更にアルミ鋳造試験においては、崩壊性や鋳造後の砂付着状況において優れており、且つ得られた鋳物の表面粗さの評価においても、良好な結果を示すものであった。
【0102】
これに対して、表3の結果から明らかな如く、骨材に水ガラスのみを混合せしめ、何等の粒子も含有せしめられていないCS18を用いた比較例1においては、充填率が低く、また造型試験における離型性や充填流動性においても劣り、更にアルミ鋳造試験においても、崩壊性や砂付着状況及び鋳物の表面粗さにおいて、何れも劣るものであることを認めた。また、水ガラスと共に、撥粘結剤性でない球状シリコーン樹脂粒子を用いて得られたCS19を使用する比較例2においては、充填率が充分でなく、また造型試験における離型性や充填流動性に劣り、アルミ鋳造試験においては、鋳造後の砂付着状況や表面粗さにおいて、劣っていることが認められる。更に、比較例3~8において用いられたCS20~CS25にあっては、球状でないシリコーン樹脂粒子や他の樹脂粒子、或いは有機粒子を用いていたり、シリコーン樹脂とは異なる材質の球状粒子であるために、充填率に劣るものであったり、造型試験やアルミ鋳造試験においても、低い評価結果となっていることが認められる。更にまた、比較例9に係るCS26は、水ガラスの粘度が1000cPを超えるものであるところから、試験片の充填率が悪く、また造型試験における充填流動性が著しく悪く、且つアルミ鋳造試験においても、砂付着状況や鋳物の表面粗さにおいて、劣るものであることを認めた。
【0103】
次いで、水溶性無機粘結剤を、水ガラスから、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムに代えて、上記と同様にして湿態のCS27~CS30を製造し、そして、それら湿態のCS27~CS30を用いて、上記と同様な評価を行った。
【0104】
-湿態CSの製造例27-
水溶性無機粘結剤を塩化ナトリウム水溶液(固形分率:20%)に代え、それを、骨材の100部に対して3.3部(固形分:0.66部)の割合で添加したこと以外は、上記湿態CSの製造例3と同様の手順に従って、湿態のCS27を得た。
【0105】
-湿態CSの製造例28-
水溶性無機粘結剤を硫酸ナトリウム水溶液(固形分率:20%)に代え、それを、骨材の100部に対して3.3部(固形分:0.66部)の割合で添加したこと以外は、上記湿態CSの製造例3と同様の手順に従って、湿態のCS28を得た。
【0106】
-湿態CSの製造例29-
水溶性無機粘結剤を塩化ナトリウム水溶液(固形分率:20%)に代え、それを、骨材の100部に対して3.3部(固形分:0.66部)の割合で添加したこと以外は、上記湿態CSの製造例18と同様の手順に従って、湿態のCS29を得た。
【0107】
-湿態CSの製造例30-
水溶性無機粘結剤を硫酸ナトリウム水溶液(固形分率:20%)に代え、それを、骨材の100部に対して3.3部(固形分:0.66部)の割合で添加したこと以外は、上記湿態CSの製造例18と同様の手順に従って、湿態のCS30を得た。
【0108】
-鋳型の造型例II(実施例18~19及び比較例10~11)-
上記した各手順に従って製造されたCS27~CS30(温度:20℃)を用い、それぞれ、150℃に加熱された成形金型内に、圧力:0.3MPaのゲージ圧にて吹き込んで、充填した後、成形金型内で保持することによって、かかる成形金型内に充填されたCSを、各々、固化(硬化)させて、充填率測定用試験片(1.0×1.0×8.0cm)を作製した。なお、実施例18~19及び比較例10~11の各々において用いられたCSは、下記表4に示す通りである。
【0109】
そして、それら得られた試験片について、そのCSの充填率を測定すると共に、それらCSについての造型試験を実施し、先の評価手法に従って、離型性及び充填流動性を評価し、それらの結果を、下記表4に示した。
【0110】
【0111】
かかる表4の結果から明らかな如く、水溶性無機粘結剤として塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムを用いた実施例18及び19においては、試験片の充填率も高く、また造型試験において、離型性及び充填流動性は、何れも、優れた結果を示すものであった。これに対して、本発明に従う撥粘結剤性の球状シリコーン樹脂粒子が添加、含有せしめられていないCS29やCS30を用いた比較例10~11にあっては、試験片の充填性や造型試験における離型性及び充填流動性において、劣るものであることが認められる。
【0112】
また、水溶性無機粘結剤である水ガラスの粘度を変えて得られるCSについて、その物性変化を評価する試験を実施した。
【0113】
-湿態CSの製造例31-
水溶性無機粘結剤たる水ガラスとして、2号ケイ酸ナトリウム(SiO2 /Na2 Oのモル比:2.5)を用い、これに水を加えて、固形分率:47%、粘度:630cPに調整されたものを準備した。次いで、この準備された水ガラスを使用して、それを、骨材(ルナモス#60)の100部に対して0.98部(固形分:0.45部)の割合で添加したこと以外は、上記湿態CSの製造例1と同様の手順に従って、湿態のCS31を得た。
【0114】
-湿態CSの製造例32-
水溶性無機粘結剤である水ガラスとして、2号ケイ酸ナトリウム(SiO2 /Na2 Oのモル比:2.5)を用い、これに水を加えて、固形分率:33%、粘度:10cPに調整されたものを準備した。次いで、この準備された水ガラスを採用し、それを、骨材(ルナモス#60)の100部に対して1.36部(固形分:0.45部)の割合で使用したこと以外は、上記湿態CSの製造例1と同様の手順に従って、湿態のCS32を得た。
【0115】
-湿態CSの製造例33-
球状シリコーン樹脂粒子を添加しないこと以外は、上記湿態CSの製造例31と同様の手順に従って、湿態のCS33を得た。
【0116】
-湿態CSの製造例34-
球状シリコーン樹脂粒子を添加しないこと以外は、上記湿態CSの製造例32と同様の手順に従って、湿態のCS34を得た。
【0117】
-湿態CSの製造例35-
球状シリコーン樹脂粒子として、撥粘結剤性を有しない球状のジメチルポリシロキサン架橋物の樹脂粒子(平均粒子径5.0μm)を用い、これを、骨材(ルナモス#60)の100部に対して0.25部に相当する量において使用することとしたこと以外は、上記湿態CSの製造例31と同様の手順に従って、湿態のCS35を得た。
【0118】
-湿態CSの製造例36-
球状シリコーン樹脂粒子として、撥粘結剤性を有しない球状のジメチルポリシロキサン架橋物の樹脂粒子(平均粒子径5.0μm)を用い、これを、骨材(ルナモス#60)の100部に対して0.25部に相当する量において使用することとしたこと以外は、上記湿態CSの製造例32と同様の手順に従って、湿態のCS36を得た。
【0119】
-湿態CSの製造例37-
球状シリコーン樹脂粒子に代えて、球状の非晶質シリカ粒子(平均粒子径3.0μm)を用い、これを、骨材(ルナモス#60)の100部に対して0.50部に相当する量において使用することとしたこと以外は、上記湿態CSの製造例31と同様の手順に従って、湿態のCS37を得た。
【0120】
-湿態CSの製造例38-
球状シリコーン樹脂粒子に代えて、球状の非晶質シリカ粒子(平均粒子径3.0μm)を用い、これを、骨材(ルナモス#60)の100部に対して0.50部に相当する量において使用することとしたこと以外は、上記湿態CSの製造例32と同様の手順に従って、湿態のCS38を得た。
【0121】
-鋳型の造型例III (実施例1、20、21及び比較例1、2、8、12~17)-
上記した各手順に従って製造されたCS1、CS18、CS19、CS25、CS31~CS38(温度:20℃)を、それぞれ、150℃に加熱された成形金型内に、圧力:0.3MPaのゲージ圧にて吹き込んで、充填した後、成形金型内で保持することにより、かかる成形型内に充填されたCSを各々、固化(硬化)させて、強度測定用試験片(1.0×1.0×8.0cm)を作製した。なお、実施例1、20、21、比較例1、2、8、12~17の各々において使用したCSは、下記表5~6に示す通りである。
【0122】
そして、それら実施例や比較例で用いられたCSからなる試験片の抗折強度を、先の測定方法に従って測定すると共に、造型試験を実施し、離型性及び充填流動性を評価して、それらの結果を、下記表5及び表6に示した。
【0123】
【0124】
【0125】
かかる表5及び表6の結果から明らかなように、本発明に従うCSを用いて、実施例1や実施例20~21において得られた試験片は、何れも、優れた抗折強度を有しているのに対して、比較例1、2、8、12~17において得られた試験片にあっては、その試験片の何れも、抗折強度が低く、また造型試験における離型性や充填流動性において、劣るものであった。
【0126】
さらに、実施例3、5、6と比較例4~7において作製された充填率測定用試験片を用いて、先の測定方法に従ってガス発生量を測定し、その結果を、下記表7に示した。
【0127】
【0128】
かかる表7の結果から明らかなように、本発明に従う撥粘結剤性の球状シリコーン樹脂粒子を含有するCSを用いた実施例3、5及び6の試験片にあっては、そのガス発生量が少ないことが認められる。これに対して、本発明とは異なる材質の樹脂粒子又は有機粒子を含有するCSを用いた比較例4~7の試験片にあっては、何れも、ガス発生量が多く、そのために、鋳造して得られる鋳物にガス欠陥が発生する問題を内在していることが、認められるのである。
【0129】
次いで、耐火性骨材を、人工砂からフラタリー珪砂に代えて、得られるCSについて、その物性変化を評価する試験を実施した。
【0130】
-湿態CSの製造例39-
耐火性骨材をルモナス#60から不定形のフラタリー珪砂に代えると共に、水ガラスを骨材(フラタリー珪砂)の100部に対して2.06部(固形分:0.85部)の割合で用い、更に球状シリコーン樹脂粒子の添加量を0.25部としたこと以外は、上記湿態CSの製造例1と同様の手順に従って、湿態のCS39を得た。
【0131】
-湿態CSの製造例40-
球状シリコーン樹脂粒子の添加量を0.5部としたこと以外は、上記湿態CSの製造例39と同様の手順に従って、湿態のCS40を得た。
【0132】
-湿態CSの製造例41-
水ガラスを1号ケイ酸ナトリウム(SiO2 /Na2O のモル比:2.1、固形成分:40%)とし、その添加量を、フラタリー珪砂の100部に対して2.13部(固形成分:0.85部)の割合としたこと以外は、上記湿態CSの製造例39と同様の手順に従って、湿態のCS41を得た。
【0133】
-湿態CSの製造例42-
水ガラスを3号ケイ酸ナトリウム(SiO2 /Na2O のモル比:3.2、固形成分:38%)とし、その添加量を、フラタリー珪砂の100部に対して2.24部(固形成分:0.85部)の割合としたこと以外は、上記湿態CSの製造例39と同様の手順に従って、湿態のCS42を得た。
【0134】
-湿態CSの製造例43-
球状シリコーン樹脂粒子を添加しないこと以外は、上記湿態CSの製造例39と同様の手順に従って、湿態のCS43を得た。
【0135】
-鋳型の造型例IV(実施例22~25及び比較例18)-
上記した各手順に従って製造されたCS39~CS43(温度:20℃)を用い、それぞれ、150℃に加熱された成形金型内に、圧力:0.3MPaのゲージ圧にて吹き込んで、充填した後、成形金型内で保持することによって、かかる成形金型内に充填されたCSを、各々、固化(硬化)させて、充填率測定用試験片(1.0×1.0×8.0cm)を作製した。なお、実施例22~25及び比較例18の各々において用いられたCSは、下記表8に示す通りである。
【0136】
そして、それら得られた各試験片について、先の測定法に従って、充填率、離型性、充填流動性、崩壊性、鋳造後の砂付着状況及び鋳物の表面粗さについて評価し、それらの結果を、下記表8に示した。
【0137】
【0138】
かかる表8の結果から明らかな如く、耐火性骨材を人工骨材からフラタリー珪砂に代えても、同様に、本発明の効果が得られていることが分かる。なお、実施例22、24、25は水ガラス1号~3号を用いたものであり、抗折強度は、実施例22が416.0N/cm2 、実施例24が425.7N/cm2 、実施例25が342.4N/cm2 であり、鋳型の強度の面からは、水ガラス1号~2号がより好ましいことが分かる。
【符号の説明】
【0139】
1~4 流路 5 金型半体
6 充填口
12 溶湯注入口 14 幅木固定部
16 主型 18 幅木部
20 中子 22 砂型
24 廃中子排出口 26 鋳物