(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 15/14 20060101AFI20220915BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20220915BHJP
H01Q 1/40 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
H01Q1/38
H01Q1/40
(21)【出願番号】P 2020044691
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2022-05-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509345958
【氏名又は名称】仁川大學校産學協力團
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100121120
【氏名又は名称】渡辺 尚
(72)【発明者】
【氏名】文 寅烈
(72)【発明者】
【氏名】面 了明
(72)【発明者】
【氏名】坂田 喜博
(72)【発明者】
【氏名】黒▲崎▼ 寿文
(72)【発明者】
【氏名】森本 祥平
(72)【発明者】
【氏名】姜 ▲勝▼ 澤
(72)【発明者】
【氏名】李 昌 炯
(72)【発明者】
【氏名】徐 睿 浚
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/121956(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0207315(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00- 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体又は導体に当接又は近接して使用されるアンテナ装置であって、
アンテナと、
前記アンテナに積層されて人体側に配置された層であって、低損失フィルムと、前記低損失フィルムに形成されたメタ・サーフェスとを有するメタ・サーフェス層と、
を備
え、
前記低損失フィルムは積層された第1層目低損失フィルム及び第2層目低損失フィルムを含み、
前記メタ・サーフェスは、前記第1層目低損失フィルムに形成された複数の第1層目電極からなる第1層目メタ・サーフェスと、前記第2層目低損失フィルムに形成された複数の第2層目電極からなる第2層目メタ・サーフェスを含み、
前記複数の第1層目電極は、平面視において、少なくとも一部が前記複数の第2層目電極と重ならないように配置され、
前記複数の第2層目電極は、平面視において、少なくとも一部が前記複数の第1層目電極と重ならないように配置されている、アンテナ装置。
【請求項2】
前記低損失フィルムの厚みは150μm以下である、
請求
項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記メタ・サーフェスはフラクタル形状である、
請求項
1又は請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記複数の第1層目電極は、平面視において、前記複数の第2層目電極と全く重ならないように配置されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記複数の第1層目電極は、平面視において、前記複数の第2層目電極と一部が重なるように配置されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記複数の第2層目電極の各々は、前記複数の第1層目電極の各々と同じ形状を有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置、特に、人体又は他の導体の近傍で使用されるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、時計型、眼鏡型、指輪型、靴型、懐中型、ペンダント型など様々なタイプのウェラブル・コンピュータが開発されている。
また、イヤホン、ヘッドホン等の人体に密着させて使用する電子機器もすでに使用されている。さらに、当然ながら、携帯電話、スマートフォン等の電子機器も、人体に密着又は近づけて使用される。
上記の電子機器には、通信を行うために様々な種類のアンテナが組み込まれている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のアンテナ付き電子機器を人体(頭や手)に密着させて又は近傍で使用すると、次の問題が生じることを、本願の発明者は着目した。
その問題とは、アンテナから出た電波が人体で反射することで、アンテナの放射特性が歪曲されることである。この場合は、電波がアンテナから狙い方向に十分に放射されない。
【0005】
本発明の目的は、アンテナ装置において、人体又は他の導体からの反射を抑えることで、電波を狙い方向に十分に放射させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0007】
本発明の一見地に係るアンテナ装置は、人体又は導体に当接又は近接して使用されるアンテナ装置であって、アンテナと、メタ・サーフェス層とを備えている。
メタ・サーフェス層は、アンテナに積層されて人体側に配置される層である。メタ・サーフェス層は、低損失フィルムと、低損失フィルムに形成されたメタ・サーフェスとを有する。
この装置では、メタ・サーフェス層はアンテナの人体側に配置されている。したがって、メタ・サーフェス層によって、人体側からの電磁波の反射を抑えてアンテナへの影響を減らせる。この結果、電波を狙い方向に十分に放射させられる。
この装置では、メタ・サーフェスは低損失フィルムに設けられている。この場合、薄い低損失フィルムを用いることで、小型アンテナ装置を実現できる。
【0008】
低損失フィルムは積層された複数であってもよい。
メタ・サーフェスは、複数の低損失フィルムの各々に形成されていてもよい。
この装置では、多層の低損失フィルムにメタ・サーフェスを形成することで、薄い低損失フィルムでも、多段回路の構成によって多重反射を抑えるフィルタの等価回路を構成できる。したがって、インピーダンスマッチングが可能になる。
【0009】
低損失フィルムの厚みは150μm以下であってもよい。
【0010】
メタ・サーフェスはフラクタル形状であってもよい。
この装置では、メタ・サーフェスのフラクタルの次数を増やすことで、広帯域特を容易に実現できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るアンテナ装置では、人体からの反射を抑えることで、電波を狙い方向に十分に放射させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置が組み込まれたワイヤレスイヤホンの模式的斜視図。
【
図4】メタ・サーフェスの平面位置を示す模式的平面図。
【
図6】変形例におけるメタ・サーフェスの平面位置を示す模式的平面図。
【
図7】第2実施形態のアンテナ装置の断面構成を示す模式図。
【
図8】各低損失フィルムにおけるアンテナ、メタ・サーフェスの平面位置を示す模式的平面図。
【
図9】第3実施形態のアンテナ装置の断面構成を示す模式図。
【
図10】各低損失フィルムにおけるアンテナ、メタ・サーフェスの平面位置を示す模式的平面図。
【
図11】第4実施形態のアンテナ装置の断面構成を示す模式図。
【
図12】各低損失フィルムにおけるアンテナ、メタ・サーフェスの平面位置を示す模式的平面図。
【
図13】第5実施形態のアンテナ装置の断面構成を示す模式図。
【
図14】メタ・サーフェスの平面位置を示す模式的平面図。
【
図15】第6実施形態のアンテナ装置の断面構成を示す模式図。
【
図16】メタ・サーフェスの平面位置を示す模式的平面図。
【
図18】第7実施形態における各低損失フィルムにおけるアンテナ、メタ・サーフェスの平面位置を示す模式的平面図。
【
図19】変形例におけるメタ・サーフェスの模式的平面図。
【
図20】第8実施形態におけるメタ・サーフェスの模式的平面図。
【
図21】第9実施形態におけるメタ・サーフェスの模式的平面図。
【
図22】第10実施形態におけるメタ・サーフェスの模式的平面図。
【
図23】第11実施形態に係るアンテナ装置が組み込まれたスマートグラスの模式的斜視図。
【
図25】第12実施形態に係るアンテナ装置が組み込まれた持続血糖測定器の使用状態を示す図。持続血糖測定器の模式的斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.第1実施形態
(1)基本構成
図1を用いて、ワイヤレスイヤホン1を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置が組み込まれたワイヤレスイヤホンの模式的斜視図である。
ワイヤレスイヤホン1は、筐体内に組み込まれたアンテナ装置3等を有している。
【0014】
図2を用いて、アンテナ装置3を説明する。
図2は、アンテナ装置の層構成を示す模式図である。
図2において、図下側が人体側である。アンテナ装置3は、例えばBlutooth(登録商標)であって、図上側から下側に向かって、カバー層9、接着層11、メタ・サーフェス層13(メタ・サーフェス層の一例)、保護層15を有している。
メタ・サーフェス層13は、一又は複数の低損失フィルムとメタ・サーフェスとからなる(後述)。メタ・サーフェス層13の図上側面には、アンテナパターン17(アンテナの一例)が形成されている。メタ・サーフェス層13は、アンテナパターン17に対して人体側に配置される。以上に述べたメタ・サーフェス層13とアンテナパターン17とによって、アンテナフィルム19が構成されている。
カバー層9は、例えば、ポリカーボネートであり、厚みは2mmである。接着層11は、例えば、OCAであり、厚みは25μmである。アンテナパターン17は、例えば、銅であり、厚みは3μmである。
【0015】
(2)アンテナフィルムの詳細説明
図3を用いて、アンテナフィルム19を説明する。
図3は、アンテナフィルムの断面構成を示す模式図である。
アンテナフィルム19は、図下側から、第1低損失フィルム20A、第2低損失フィルム20B、第3低損失フィルム20Cを有している。これらフィルムは互いに積層されている。各低損失フィルムは、例えば、PET又はCOPであり、厚みは50~150μmである。低損失フィルムは、低tanδの材料(低誘電損失材料)であればよく、特に限定されない。低損失フィルム全体の厚みは150μm以下であることが好ましい。
【0016】
アンテナパターン17は、第3低損失フィルム20Cの上面に形成されている。
第1低損失フィルム20Aの上面には、第1メタ・サーフェス21Aの第1電極21A1が形成されている。第2低損失フィルム20Bの上面には、第2メタ・サーフェス21Bの第2電極21B1が形成されている。メタ・サーフェスは、例えば、銅であり、厚みは3μmである。又はメタ・サーフェスは、可視光透明な導電膜で作成されていてもよい。具体的には、ITO(酸化インジウム・スズ)、透明導電性インク(例えば銀ナノワイヤーインク)が用いられる。
なお、メタ・サーフェスとは、「人工的に構築された入射電波波長よりも短い周期構造」である。メタ・サーフェスでは、周期構造の共振現象によって電磁界特性が決定することから、周期構造を適宜設計することで、自然界から得られない負の屈折率を持つ特異な電磁界特性を得ることができる。
第1低損失フィルム20Aの下側面には、グラウンド29が形成されている。グラウンド29は、全面的に形成されたベタ層である。
【0017】
第1電極21A1は、互いに隙間を設けて、例えば格子状に配置される。当該隙間にキャパシタンス成分が生じる。また、第1電極21A1とグラウンド29との間にもキャパシタンス成分が生じる。また、第1電極21A1自体にはインダクタンス成分が生じる。
第2電極21B1も同様である。
【0018】
第1メタ・サーフェス21Aは、第1電極21A1とグラウンド29とを接続する第1スルーホール21A2を有している。
第2メタ・サーフェス21Bは、第2電極21B1とグラウンド29とを接続する第2スルーホール21B2を有している。
【0019】
第1スルーホール21A2は、それぞれ1つの第1電極21A1と対応しており、第2低損失フィルム20B、第1低損失フィルム20Aを貫通して、第1電極21A1とグラウンド29とを接続する。これにより、第1スルーホール21A2には、インダクタンス成分が生じる。
第2スルーホール21B2も同様である。
【0020】
図4を用いて、第1メタ・サーフェス及び第2メタ・サーフェスのパターン配置を説明する。
図4は、メタ・サーフェスの平面位置を示す模式的平面図である。
第1電極21A1と第2電極21B1は、正六角形である。第1電極21A1と第2電極21B1は、一行ずつ交互に並んで配置されており、平面視で互いに重なっていない。なお、第1電極21A1に対応して第1スルーホール21A2が設けられ、第2電極21B1に対応して第2スルーホール21B2が設けられている。なお、電極の形状、配置位置は特に限定されない。例えば、電極は、一部が互いに重なっていてもよい。 以上に述べた構造によって、EBG(Electromagnetic Band Gap)又はAMC(Artificial Magnetic Conductor)構造が実現されている。
上記のようにEBG構造を採用することで、放射効率を維持しながら、アンテナの厚み(例えば、アンテナフィルム19の厚み)をλ/4以下にできる。その理由は、対象とする周波数に合わせて周期構造をうまく作れば、EBG構造に入射する電磁波と反射する電磁波の位相が同相にできるからである。位相が同じであれば、厚みをλ/4にしなくても、EBG構造で反射した電磁波と、反射せずに空間に放射する電磁波が強め合うことになる。従って、放射効率をそのままに薄型化が図れる。
上記のように、第1メタ・サーフェス21A及び第2メタ・サーフェス21Bはそれぞれ第1低損失フィルム20A及び第2低損失フィルム20Bに設けられている。この場合、薄い低損失フィルムを用いることで、小型アンテナ装置を実現できる。
【0021】
図5を用いて、アンテナ装置の等価回路を説明する。
図5は、アンテナ装置の等価回路図である。
第1電極21A1及び第2電極21B1と第1スルーホール21A2及び第2スルーホール21B2それぞれとの間には、インダクタンス成分L
1及びL
2が生じる。また、第1電極21A1及び第2電極21B1とグラウンド29との間には、それぞれキャパシタンス成分C
1、C
2が生じる。さらに、第1電極21A1及び第2電極21B1とアンテナパターン17との間には、それぞれキャパシタンス成C
g1、C
g2が生じる。
【0022】
上記のように、第1電極21A1及び第2電極21B1を複数層の薄い第1低損失フィルム20A及び第2低損失フィルム20Bそれぞれに形成することで、薄いフィルムであっても、インダクタンスとキャパシタンスで構成するフィルタが周期的に続く等価回路(EBG構造)を構成できる。
このLとCで構成されたフィルタ特性を、周期構造の最小単位である電極の形状や寸法、繰り返し回数、複数のフィルムの厚みを、シミュレーションで調整することで、広帯域のインピーダンスマッチングが可能になり、反射係数Γを+1にできる。
言い換えると、フィルタの等価回路の概念で表面のエネルギーを制御することができ、つまり、アンテナパターン17の人体側に配置されているメタ・サーフェスの多段階の構成によって多重反射を抑えることで、アンテナパターン17から人体ヘと放射されるエネルギーを減らし、その結果、人体からの電波の反射を軽減できる。この結果、アンテナパターン17への影響が減り、狙い方向に電波を十分に放射させられる。
【0023】
なお、メタ・サーフェスは、導電性部材において周期性を持った2次元正方格子状(すなわち、マトリックス状)に配置された穴から構成されていてもよい。また、導電性部材又は穴の形状は、特に限定されず、周期性のある配置ができれば様々な形状が可能である。
【0024】
図6を用いて、メタ・サーフェスの平面視形状の変形例を説明する。
図6は、変形例におけるメタ・サーフェスの平面位置を示す模式的平面図である。基本的な構成は前述の実施例と同じである。
第3電極21C1及び第4電極21D1は、第1実施形態の第1電極21A1及び第2電極21B1に対応しており、菱形である。第3電極21C1と第4電極21D1は、一行ずつ交互に並んで配置されており、平面視で互いに重なっていない。なお、第3電極21C1に対応して第3スルーホール21C2が設けられ、第4電極21D1に対応して第4スルーホール21D2が設けられている。
電極の形状、配置位置は特に限定されない。例えば、電極は、一部が互いに重なっていてもよい。
【0025】
2.第2実施形態
第1実施形態では低損失フィルムの積層枚数は3枚であったが、それ以上であってもよい。
図7及び
図8を用いて、そのような実施例として第2実施形態を説明する。
図7は、第2実施形態のアンテナ装置の断面構成を示す模式図である。
図8は、各低損失フィルムにおけるアンテナ、メタ・サーフェスの平面位置を示す模式的平面図である。
アンテナ装置3は、例えば板状逆F型アンテナ(PIFA:Plate Inverted F Antenna)であり、メタ・サーフェス層13を有している。
【0026】
メタ・サーフェス層13は、複数の低損失フィルムとメタ・サーフェスとからなる(後述)。メタ・サーフェス層13の図上側面には、アンテナパターン17が形成されている。以上に述べたメタ・サーフェス層13とアンテナパターン17とによって、アンテナフィルム19が構成されている。
アンテナフィルム19は、図下側から、第1低損失フィルム20A、第2低損失フィルム20B、第3低損失フィルム20C、第4低損失フィルム20Dを有している。これらフィルムは互いに積層されている。
【0027】
アンテナパターン17は、第4低損失フィルム20Dの上面に形成されている。
第1低損失フィルム20Aの上面には、第1メタ・サーフェス21Aの第1電極21A1が形成されている。第2低損失フィルム20Bの上面には、第2メタ・サーフェス21Bの第2電極21B1が形成されている。
第1低損失フィルム20Aの下側面には、グラウンド29が形成されている。
第1電極21A1は、互いに隙間を設けて、例えば格子状に配置される。第2電極21B1も同様である。
【0028】
第1メタ・サーフェス21Aは、第1電極21A1とグラウンド29とを接続する第1スルーホール21A2を有している。
第2メタ・サーフェス21Bは、第2電極21B1とグラウンド29とを接続する第2スルーホール21B2を有している。
【0029】
第1スルーホール21A2は、それぞれ1つの第1電極21A1と対応しており、第2低損失フィルム20B、第1低損失フィルム20Aを貫通して、第1電極21A1とグラウンド29とを接続する。
第2スルーホール21B2も同様である。
【0030】
3.第3実施形態
第1実施形態では低損失フィルムの積層枚数は3枚であったが、それ以上であってもよい。
図9及び
図10を用いて、そのような実施例として第3実施形態を説明する。
図9は、第3実施形態のアンテナ装置の断面構成を示す模式図である。
図10は、各低損失フィルムにおけるアンテナ、メタ・サーフェスの平面位置を示す模式的平面図である。
【0031】
図9において、図下側が人体側である。アンテナ装置3は、例えば板状逆F型アンテナ(PIFA)であり、メタ・サーフェス層13を有している。
メタ・サーフェス層13は、複数の低損失フィルムとメタ・サーフェスとからなる(後述)。メタ・サーフェス層13の図上側面には、アンテナパターン17が形成されている。以上に述べたメタ・サーフェス層13とアンテナパターン17とによって、アンテナフィルム19が構成されている。
【0032】
図9において、アンテナフィルム19は、図下側から、第1低損失フィルム20A、第2低損失フィルム20B、第3低損失フィルム20C、第4低損失フィルム20D、第5低損失フィルム20Eを有している。これらフィルムは互いに積層されている。
【0033】
アンテナパターン17は、第5低損失フィルム20Eの上面に形成されている。
第2低損失フィルム20Bの上面には、第1メタ・サーフェス21Aの第1電極21A1が形成されている。第3低損失フィルム20Cの上面には、第2メタ・サーフェス21Bの第2電極21B1が形成されている。
第1低損失フィルム20Aの上面には、グラウンド29が形成されている。
第1低損失フィルム20Aの下面には、第3電極30が形成されている。
第1電極21A1は、互いに隙間を設けて、例えば格子状に配置される。第2電極21B1も同様である。
【0034】
第1メタ・サーフェス21Aは、第1電極21A1、グラウンド29、第3電極30を接続する第1スルーホール21A2を有している。
第2メタ・サーフェス21Bは、第2電極21B1とグラウンド29とを接続する第2スルーホール21B2を有している。
【0035】
第1スルーホール21A2は、それぞれ1つの第1電極21A1及び第3電極30と対応しており、第2低損失フィルム20B、第1低損失フィルム20Aを貫通している。
第2スルーホール21B2も同様である。
【0036】
4.第4実施形態
第1~第3実施形態ではメタ・サーフェスが形成された低損失フィルムの積層枚数は2枚であったが、それ以上であってもよい。
図11及び
図12を用いて、そのような実施例として第4実施形態を説明する。
図11は、第4実施形態のアンテナ装置の断面構成を示す模式図である。
図12は、各低損失フィルムにおけるアンテナ、メタ・サーフェスの平面位置を示す模式的平面図である。
【0037】
図11において、図下側が人体側である。アンテナ装置3は、例えばダイポールアンテナであり、メタ・サーフェス層13を有している。
メタ・サーフェス層13は、複数の低損失フィルムとメタ・サーフェスとからなる(後述)。メタ・サーフェス層13の図上側面には、アンテナパターン17が形成されている。以上に述べたメタ・サーフェス層13とアンテナパターン17とによって、アンテナフィルム19が構成されている。
図11において、アンテナフィルム19は、図下側から、第1低損失フィルム20A、第2低損失フィルム20B、第3低損失フィルム20C、第4低損失フィルム20Dを有している。これらフィルムは互いに積層されている。
【0038】
アンテナパターン17は、第4低損失フィルム20Dの上面に形成されている。
第1低損失フィルム20Aの上面には、第1メタ・サーフェス21Aの第1電極21A1が形成されている。第2低損失フィルム20Bの上面には、第2メタ・サーフェス21Bの第2電極21B1が形成されている。第3低損失フィルム20Cの上面には、第3メタ・サーフェス21Cの第3電極21C1が形成されている。
第1低損失フィルム20Aの下側面には、グラウンド29が形成されている。
第1電極21A1は、互いに隙間を設けて、格子状に配置される。第2電極21B1及び第3電極21C1も同様である。
【0039】
第1メタ・サーフェス21Aは、第1電極21A1とグラウンド29とを接続する第1スルーホール21A2を有している。
第2メタ・サーフェス21Bは、第2電極21B1とグラウンド29とを接続する第2スルーホール21B2を有している。
第3メタ・サーフェス21Cは、第3電極21C1とグラウンド29とを接続する第3スルーホール21C2を有している。
【0040】
第1スルーホール21A2は、それぞれ1つの第1電極21A1と対応しており、第1低損失フィルム20Aを貫通して、第1電極21A1とグラウンド29とを接続する。
第2スルーホール21B2及び第3スルーホール21C2も同様である。
【0041】
5.第5実施形態
第1~第4実施形態ではメタ・サーフェスの電極とグラウンドはスルーホールを介して接続されていたが、電極の面積を広くしたり層同士の間隔を短くしたりすることで、当該電極のスルーホールを省略してもよい。
図13及び
図14を用いて、そのような実施例として第5実施形態を説明する。
図13は、第5実施形態のアンテナ装置の断面構成を示す模式図である。
図14は、各低損失フィルムにおけるアンテナ、メタ・サーフェスの平面位置を示す模式的平面図である。
アンテナ装置3は、例えば板状逆F型アンテナ(PIFA:Plate Inverted F Antenna)であり、メタ・サーフェス層13Aを有している。
【0042】
メタ・サーフェス層13Aは、低損失フィルムとメタ・サーフェスとからなる(後述)。メタ・サーフェス層13Aの図上側面には、アンテナパターン17Aが形成されている。以上に述べたメタ・サーフェス層13Aとアンテナパターン17Aとによって、アンテナフィルム19Aが構成されている。
アンテナフィルム19Aは、図下側から、第1低損失フィルム22A、第2低損失フィルム22B、第3低損失フィルム22Cを有している。これらフィルムは互いに積層されている。
【0043】
アンテナパターン17Aは、第3低損失フィルム22Cの上面に形成されている。
第2低損失フィルム20Bの下には、メタ・サーフェスの電極13A1が形成されている。電極13A1は、例えば、
図14に示すように、一方向に並んで伸びる一対の電極の組み合わせを有している。さらに具体的には、電極13A1の一対の電極は、互いに向かって伸びる三角形状の突起を有しており、一対の電極間にジグザグ状(ノコギリ歯状)の電極が形成されていない部分を確保している。
第1低損失フィルム22Aの下側面には、グラウンド29Aが形成されている。以上より、メタ・サーフェスの電極13A1とグラウンド29Aとの間に配置されているのは、第1低損失フィルム22Aだけである。
【0044】
この実施形態では、電極とグラウンドとを接続するスルーホールは形成されていない。しかし、例えば、上記の電極の広い形状、電極とグラウンドの距離が短いこと等のうち一又は複数の特徴によって、アンテナ性能は維持されている。
【0045】
6.第6実施形態
スルーホールのないメタ・サーフェス用いた他の実施形態を説明する。
図15~
図17を用いて、そのような実施例として第6実施形態を説明する。
図15は、第6実施形態のアンテナ装置の断面構成を示す模式図である。
図16は、メタ・サーフェスの平面位置を示す模式的平面図である。
図17は、グラウンドの平面構成を示す模式的平面図である
【0046】
図15において、図下側が人体側である。アンテナ装置3は、メタ・サーフェス層13を有している。
メタ・サーフェス層13は、複数の低損失フィルムとメタ・サーフェスとからなる(後述)。メタ・サーフェス層13の図上側面には、アンテナパターン17が形成されている。以上に述べたメタ・サーフェス層13とアンテナパターン17とによって、アンテナフィルム19が構成されている。
図15において、アンテナフィルム19は、図下側から、第1低損失フィルム20A、第2低損失フィルム20Bを有している。これらフィルムは互いに積層されている。
【0047】
アンテナパターン17は、第2低損失フィルム20Bの上面に形成されている。
第1低損失フィルム20Aの上面には、第1メタ・サーフェス21Aが形成されている。第1メタ・サーフェス21Aは、
図16に示すように、相補的スプリットリング共振器(CSRR:Complementary Split Ring Resonator)であり、スプリットリング形状の切り欠き31を有している。
【0048】
第1低損失フィルム20Aの下側には、グラウンド29Bが形成されている。
グラウンド29Bは、
図17に示すように、第1メタ・サーフェス21Aに対応した切り欠き33が形成されたグラウンド欠陥構造(DGS:Defected Ground Structure)となっている。切り欠き33は、H字形状である。
以上より、スルーホールなしのアンテナフィルム19が実現されている。
さらに、以上より、メタ・サーフェスは一層であるが、第1実施形態と同じような多段の等価回路を実現できる。
【0049】
7.第7実施形態
図18及び
図19を用いて、第7実施形態を説明する。
図18は、第7実施形態における各低損失フィルムにおけるアンテナ、メタ・サーフェスの平面位置を示す模式的平面図である。
図19は、変形例におけるメタ・サーフェスの模式的平面図である。
第7実施形態の層構成は第5実施形態と同じである。つまり、メタ・サーフェスは一層である。
【0050】
アンテナパターン17Aは、一方向に延びる直線状である。アンテナパターン17Aの給電は全体の真ん中位置で行われる。
第1メタ・サーフェス21Aの第1電極21A1は、平面視H字形状である。
以上のようにして、小型人工磁気壁(AMC:Artificial Magnetic Conductor)が実現されている。したがって、反射係数Γ=+1特性を通じて、放射効率およびインピーダンス整合の維持ができる。その結果、人体影響を最小化できる。
【0051】
図19に示す変形例では、アンテナパターン17Bは、コプレーナ導波(CPW:Co-Planar Wave-line)路構造であり、アンテナ給電はCPWの下端で給電される。
【0052】
8.第8実施形態
図20を用いて、第8実施形態を説明する。
図20は、第8実施形態におけるメタ・サーフェスの模式的平面図である。
この実施形態では、メタ・サーフェス21の電極41は、フラクタル形状である。フラクタルとは、図形の部分と全体が自己相似(再帰)になっているものをいう。
具体的には、メタ・サーフェス21の電極41は、自己相似的な多数の四角形からなる形状である。なお、電極41の最小単位は四角形の導電性部材であり、当該導電性部材は導電性部材が形成されていない四角形部分を真ん中に有している。
【0053】
上記のようにメタ・サーフェスの電極がフラクタル形状を採用しているので、広帯域・小型化が容易である。特に、フラクタルの次数が増えれば増えるほど、広帯域特性が得られる。
従来であれば、メタ・サーフェスにおいて製造上の問題からスルーホールを省略することが検討されていた。しかし、その場合、同じ性能を確保するためには、メタ・サーフェス及び全体の面積が広くなる問題があった。
本実施形態のようにメタ・サーフェスの電極をフラクタル形状にすると、いろいろな等価回路を作れるので、性能を維持しつつ、全体を小型化できる。これにより、スルーホールを省略することができる。
この実施形態では、メタ・サーフェスは一層であるが、多層でもよい。多層の場合にも、スルーホールはあってもよいし、省略も可能である。
【0054】
9.第9実施形態
図21を用いて、第9実施形態を説明する。
図21は、第9実施形態におけるメタ・サーフェスの模式的平面図である。
この実施形態では、メタ・サーフェス21の電極41Aは、フラクタル形状である。具体的には、電極41Aは、自己相似的な多数の四角形からなる形状である。電極41Aは電極41に比べてフラクタルの次数が多い例である。
【0055】
10.第10実施形態
図22を用いて、第10実施形態を説明する。
図22は、第10実施形態におけるメタ・サーフェスの模式的平面図である。
この実施形態では、メタ・サーフェス21の電極41Bは、フラクタル形状である。具体的には、電極41Bは、自己相似的な無数の三角形からなる図形である。なお、電極41Bの最小単位は三角形の導電性部材であり、当該導電性部材の同じ向き3個の間には、導電性部材が形成されていない逆向きの三角形部分が存在する。
【0056】
11.第11実施形態
図23及び
図24を用いて、第11実施形態を説明する。
図23は、第11実施形態に係るアンテナ装置が組み込まれたスマートグラスの模式的斜視図である。
図24は、アンテナ装置の層構成を示す模式図である。
図23に示すように、スマートグラス81は、アンテナ装置83を内蔵している。
図24において、図下側が人体側である。アンテナ装置83は、例えばBlutooth(登録商標)であって、図上側から下側に向かって、第1カバー層123、GND125、絶縁基板127、両面粘着テープ129、メタ・サーフェス層113(メタ・サーフェス層の一例)、第2カバー層131を有している。
【0057】
メタ・サーフェス層113は、一又は複数の低損失フィルムとメタ・サーフェスとからなる(後述)。メタ・サーフェス層113の図下側面には、アンテナパターン117が形成されている。メタ・サーフェス層113は、アンテナパターン117に対して人体側に配置される。以上に述べたメタ・サーフェス層113とアンテナパターン117とによって、アンテナフィルム119が構成されている。
メタ・サーフェス層113の構成は、第1~第10実施形態のメタ・サーフェス層と同じである。
【0058】
12.第12実施形態
図25~
図29を用いて、第12実施形態を説明する。
図25は、第12実施形態に係るアンテナ装置が組み込まれた持続血糖測定器の模式的斜視図である。
図26は、アンテナ装置の断面構成を示す模式図である。
図27は、アンテナ装置の模式的斜視図である。
図28は、アンテナ装置の模式的平面図である。
図29は、アンテナ装置の等価回路図である。
【0059】
持続血糖測定器(GMC:Continuous Glucose Monitoring)201は人の腕に装着され、測定結果は例えば表示装置(図示せず)に表示される。
図25に示すように、GMC201は、アンテナ装置203を有している。
アンテナ装置203は、例えばダイポールアンテナであり、
図26に示すように、アンテナフィルム205を有している。アンテナフィルム205は、図下から上に向かって、第1低損失フィルム207、第2低損失フィルム209、第3低損失フィルム211を有している。これらフィルムは互いに積層されている。
【0060】
アンテナフィルム205は、第1低損失フィルム207の下面に形成されたグラウンド221を有している。
アンテナフィルム205は、第1低損失フィルム207の上面に形成された第1導体パターン213を有している。第1導体パターン213は平面視円形である。第1導体パターン213からグラウンド221に第1スルーホール215が延びている。第1スルーホール215は、アンテナ給電部を構成している。
【0061】
アンテナフィルム205は、第2低損失フィルム209の上面に形成された第2導体パターン217を有している。第2導体パターン217は、平面視円形である。第2導体パターン217は、第1導体パターン213より大面積であり、第1導体パターン213を平面視で覆っている。
第2導体パターン217からグラウンド221に複数の第2スルーホール219が延びている。第2スルーホール219は、第1導体パターン213の周囲に配置されている。
第1導体パターン213と第2導体パターン217との間には、キャパシタンス成分CLが生じる。第2導体パターン217とグラウンド221との間には、キャパシタンス成分CRが生じる。第2導体パターン217にはインダクタンス成分LRが生じる。第2スルーホール219には、インダクタンス成分LLが生じる。
【0062】
この実施形態では、
図27及び
図28に示すように、第2スルーホール219は4本であり、円周方向に等間隔で、つまり周期性を持って配置されている。
以上の構成により、
図29に示すように、右手左手系複合線路(CRLH:Composite Right-/Left-Handed Transmission Line)特性を実現する等価回路が形成されている。
以上の構成により、ゼロ次共振器(ZOR:Zero Order Resonance)特性によって、人体および周辺環境でも第2スルーホール219に電流が流れ、ダイポールアンテナの電流が全体的に多く流れるようにする。この結果、アンテナフィルム205は、広帯域のアンテナとして機能する。
第2スルーホールの本数は限定されない。
【0063】
13.他の実施形態
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、人体又は他の導体の近傍で使用されるアンテナ装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 :ワイヤレスイヤホン
3 :アンテナ装置
9 :カバー層
11 :接着層
13 :メタ・サーフェス層
19 :アンテナフィルム
20A :第1低損失フィルム
20B :第2低損失フィルム
21A :第1メタ・サーフェス
21A1 :第1電極
21A2 :第1スルーホール
21B :第2メタ・サーフェス
21B1 :第2電極
21B2 :第2スルーホール