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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/21 20060101AFI20220915BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220915BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20220915BHJP
【FI】
B41J2/21
B41J2/01 501
C09D11/322
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020201423
(22)【出願日】2020-12-04
(62)【分割の表示】P 2018241482の分割
【原出願日】2014-10-29
(65)【公開番号】P2021054085
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】P 2014103721
(32)【優先日】2014-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】並木 崇
(72)【発明者】
【氏名】越智 和浩
(72)【発明者】
【氏名】大原 瑛一
(72)【発明者】
【氏名】町井 草太
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-208330(JP,A)
【文献】特開2005-036079(JP,A)
【文献】特開2009-234170(JP,A)
【文献】特開2010-076216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/21
B41J 2/01
C09D 11/322
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式で印刷物を製造する印刷物の製造方法であって、
光を反射する光沢性の粒子を含むインクを用いて、マルチパス方式により、前記印刷物の20°光沢度が500以上になるように、インクジェット方式で媒体上にインク層を形成し、
前記光沢性の粒子は、鱗片状の形状の粒子であり、
前記光沢性の粒子を含むインクである光沢インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである光沢インク用ヘッドに、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を行わせ、かつ、前記媒体の各位置に対して複数回の前記主走査動作を前記光沢インク用ヘッドに行わせることで、前記マルチパス方式で前記インク層を形成し、
前記マルチパス方式における各回の前記主走査動作において、前記媒体上に着弾した前記光沢インクが液体の状態で連結するように、前記光沢インク用ヘッドに前記光沢インクを吐出させることを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項2】
前記インク層が形成される面が白色の前記媒体を用いることを特徴とする請求項1に記載の印刷物の製造方法。
【請求項3】
前記光沢性の粒子は、平均粒子径が0.1~0.5μmの光沢性の顔料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷物の製造方法。
【請求項4】
前記光沢性の顔料は、アルミニウムの金属顔料であることを特徴とする請求項に記載の印刷物の製造方法。
【請求項5】
一方向に複数の線状部が平行に形成される前記インク層を形成することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項6】
複数のインクの層が積層される印刷物をインクジェット方式で製造する印刷物の製造方法であって、
光を反射する光沢性の粒子を含むインクを用いて、マルチパス方式により、20°光沢度が500以上になるように、インクジェット方式で媒体上にインク層を形成し、
前記インク層の上に、カラー印刷用のインクで形成されるインクの層であるカラーインク層を更に形成し、
前記光沢性の粒子は、鱗片状の形状の粒子であり、
前記光沢性の粒子を含むインクである光沢インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである光沢インク用ヘッドに、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を行わせ、かつ、前記媒体の各位置に対して複数回の前記主走査動作を前記光沢インク用ヘッドに行わせることで、前記マルチパス方式で前記インク層を形成し、
前記マルチパス方式における各回の前記主走査動作において、前記媒体上に着弾した前記光沢インクが液体の状態で連結するように、前記光沢インク用ヘッドに前記光沢インクを吐出させることを特徴とする印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な分野において、インクジェットプリンタが用いられている(例えば、非特許文献1参照。)。また、インクジェットプリンタ用のインクとして、カラー印刷用のインクであるCMYKインク等以外に、様々な特色用のインクが用いられる場合がある。このようなインクとしては、例えば、メタリック色等の光沢性の色のインク(メタリックインク等)が用いられる場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】インターネットURL http://www.mimaki.co.jp
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光沢性のインクとしては、例えば光を反射する顔料等を含むインクが用いられる。しかし、印刷の条件等によっては、印刷後の状態について、十分な光沢性が得られない場合がある。例えば、シルバー色のメタリックインクを用いる場合、印刷の条件によっては、十分な光沢性が得られずに、単なるグレー色で印刷したような状態になる場合がある。そのため、従来、光沢性の色のインクを用いる場合について、より適切に光沢性が得られる構成が望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の発明者は、メタリックインク等の光沢性のインクを用いる場合に関し、光沢性を十分に発揮させるための条件等について、鋭意研究を行った。そして、例えば、媒体(メディア)上に形成するインクのドット間の距離(ドット間隔)の違いにより、得られる光沢性に差が生じることを見出した。より具体的に、例えば、インクジェットヘッドから吐出するインク滴の容量を一定にして、ドット間隔を様々に異ならせた場合、ドット間隔が所定の距離よりも大きくなると、光沢性が低下すること等を見出した。
【0006】
また、更なる鋭意研究により、例えば、この所定の距離について、媒体上でインクのドット同士が接触する距離に相当することを見出した。すなわち、例えば、ドット間隔が十分に小さく、媒体上でインクのドット同士が互いに接触する場合、高い光沢性が得られることを見出した。また、ドット間隔が大きく、媒体上でインクのドット同士が互いに接触しない場合、十分な光沢性が得られなくなることを見出した。また、その理由について、ドット間距離の違いにより、媒体への顔料の定着の仕方に違いが生じることと関連することを見出した。
【0007】
より具体的に、例えば、インク中の顔料は、インクの溶媒(有機溶剤等)が蒸発することにより、媒体へ定着する。そして、この場合に関し、本願の発明者は、十分な光沢性が得られる状態で顔料を定着させるための条件として、溶媒が揮発除去されるまでの時間をある程度以上にすることが重要であることを見出した。
【0008】
これは、例えば、溶媒が揮発除去されるまでの時間が短い場合、定着時の顔料の配向性に乱雑性が大きくなるためであると考えられる。また、顔料の配向性に乱雑性が大きくなると、例えば、定着後のインクが反射する光がランダムに散乱しやすくなり、光沢性が低下すると考えられる。一方、溶媒が揮発除去されるまでの時間が十分に長い場合、顔料がより整列した状態で媒体に定着すると考えられる。この場合、顔料がより整列した状態とは、例えば、鱗片状の顔料が媒体上で鱗状(平面状)に定着することである。このように顔料が定着すれば、例えば、定着時の顔料の配向性が高まるため、定着後のインクが反射する光が散乱しにくくなり、光沢性が高まると考えられる。
【0009】
また、媒体上において、溶媒が揮発除去されるまでの時間は、通常、インクのドットに含まれるインクの容量が大きくなるほど、長くなる。これは、例えば、インクのドットの容量がより大きくなると、例えば、インクの表面張力の影響等により、インクの容量に対するインクの表面積の割合がより小さくなるためである。
【0010】
そして、媒体上でインクのドット同士が互いに接触しない場合、媒体上のインクのドットの容量は、インクジェットヘッドから吐出された一のインク滴の容量になる。そして、この場合、インクのドットの溶媒を揮発除去するために要する時間は、短くなる。また、その結果、光沢性が低下するおそれがある。
【0011】
一方、ドット間隔が十分に小さく、媒体上でインクのドット同士が互いに接触する場合、接触した複数のドットの間で、インクのドットの連結が生じる。また、その結果、連結後のインクの容量は、連結前のインクのドットの複数個分になる。そして、この場合、連結したインクのドットの溶媒を揮発除去するために要する時間は、ドットが連結しない場合と比べ、より長くなる。そのため、この場合、例えば、溶媒が揮発除去されるまでの時間が十分に長くなり、光沢性が高まると考えられる。
【0012】
また、これらの知見に基づき、本願の発明者は、高い光沢性が得られる本発明の構成に至った。上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
【0013】
(構成1)媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、光沢性の色のインクである光沢インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである光沢インク用ヘッドと、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を光沢インク用ヘッドに行わせる主走査駆動部とを備え、光沢インクは、光沢性の顔料と、溶媒とを含み、前記溶媒が蒸発することにより前記顔料が前記媒体へ定着するインクであり、主走査動作において、光沢インク用ヘッドは、主走査方向へ移動しつつインク滴の吐出を複数回行うことにより、媒体上で主走査方向へ並ぶ複数の位置に、インクのドットを形成し、光沢性の顔料は、光を反射する鱗片状の顔料であり、光沢インク用ヘッドが吐出するインク滴の容量は、一の主走査動作で形成する複数のドットについて、媒体上で溶媒が揮発除去される前に、液体の状態のそれぞれのドットが他のいずれかのドットと媒体上で接触するサイズになる容量である。
【0014】
このように構成した場合、光沢インクのドットは、媒体上で連結し、より大きなドットになる。そして、その結果、溶媒が揮発除去されるまでの時間がより長くなる。また、これにより、例えば、高い光沢性を発揮する状態で光沢インクが媒体に定着することになる。そのため、このように構成すれば、例えば、媒体に定着後の光沢インクについて、高い光沢性を適切に得ることができる。
【0015】
ここで、各回の主走査方向で形成される複数のインクのドットについて、媒体上で接触するとは、例えば主走査方向において隣接するドットが互いに接触することである。また、インクのドットについて、媒体上で接触するとは、溶媒が揮発除去される前に、液体の状態のインクのドットが接触することである。液体の状態のインクのドットが接触するとは、例えば、インクのドットの連結が生じる状態で接触することであってよい。また、インク滴の容量とは、例えば、設計上の容量のことであってよい。
【0016】
また、光沢インクとは、例えば、光を反射する鱗片状の顔料を含むインクである。光沢インクは、例えばメタリック色又はパール色等のインクであってよい。また、光沢インクの溶媒は、例えば有機溶剤である。この有機溶剤は、例えば揮発性有機溶剤であってよい。
【0017】
また、光沢インク用ヘッドは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ複数のノズルが並ぶノズル列を有してよい。この場合、各回の主走査動作において、光沢インク用ヘッドは、例えば、ノズル列中の複数のノズルからインク滴を吐出する。また、これにより、主走査方向における位置を揃えて副走査方向へ並ぶ複数のインクのドットを媒体上に形成する。また、この場合、光沢インク用ヘッドが吐出するインク滴の容量は、主走査方向における位置を揃えて副走査方向へ並ぶ複数のインクのドットについて、それぞれのドットが他のいずれかのドットと媒体上で接触するサイズになる容量にすることが好ましい。
【0018】
(構成2)光沢インクは、メタリック色のインクである。このメタリック色のインクは、例えば銀色のインクであってよい。また、この銀色のインクは、例えば、アルミニウム等の金属の顔料を含むインクであってよい。この金属の顔料は、例えば鱗片状の顔料であっってよい。
【0019】
光沢インクとして、メタリックインクを用いる場合、例えば、より均一な光沢を得ることが望まれる。そのため、この場合、定着時の顔料の配向性における乱雑性をより小さくすることが望まれる。これに対し、このように構成すれば、例えば、媒体上で光沢インクの溶媒が揮発除去されるまでの時間を適切に確保することができる。また、これにより、メタリックインクについて、高い光沢性を適切に得ることができる。
【0020】
(構成3)カラー印刷用のインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドであるカラーインク用ヘッドを更に備え、カラーインク用ヘッドが吐出する一のインク滴により媒体上に形成されるインクのドットのサイズは、光沢インク用ヘッドが吐出する一のインク滴により媒体上に形成されるインクのドットのサイズよりも小さい。
【0021】
インクのドットのサイズとは、例えば、インクのドットの直径である。また、インクのドットの直径は、例えば設計上の直径であってよい。また、カラー印刷用のインクとは、例えば、画像形成用のインクである。また、より具体的に、カラー印刷用のインクとは、例えば、CMYKインクの各色のインクである。カラー印刷用のインクについて、インク滴の容量は、媒体上でドットの接触が生じない大きさにすることが好ましい。この場合、媒体上でドットの接触が生じないとは、例えば、異なる画素の位置にそれぞれ形成されたドットが接触しないことである。このように構成すれば、例えば、光沢用インクによる印刷と共に、カラー印刷を適切に行うことができる。
【0022】
また、CMYKインク等のカラー印刷用のインクで印刷を行う場合について、解像度の高い印刷を適切に行うためには、媒体上に形成されるインクのドットのサイズを十分に小さくする必要がある。これに対し、このように構成すれば、例えば、カラー印刷用のインクについて、インクのドットのサイズを適切に小さくできる。また、これにより、解像度の高い印刷を適切に行うことができる。
【0023】
また、カラー印刷用のインクで印刷を行う場合。媒体上でインクのドットの接触が生じると、印刷の品質が低下する場合がある。例えば、異なる色のインクのドット間で接触が生じた場合、色間滲みが発生し、印刷の品質が低下する場合がある。これに対し、このように構成した場合、カラー印刷用のインクについて、一のインク滴により形成されるインクのドットのサイズを小さくすることにより、媒体上でインクのドットの接触が生じることを適切に防ぐことができる。また、これにより、高品質の印刷をより適切に行うことができる。
【0024】
尚、カラー印刷用のインクとして、例えば各色のライト色(例えばライトマゼンタ色又はライトシアン色等)のインク等を更に用いてもよい。また、例えば求められる印刷の品質等に応じて、更に他の色のインクを用いてもよい。
【0025】
(構成4)インク滴を吐出させる駆動信号を出力する駆動信号出力部を更に備え、駆動信号出力部は、カラーインク用ヘッドへ、予め設定された第1の波形で変化する第1の駆動信号を出力し、光沢インク用ヘッドへ、第1の駆動信号と異なる波形で変化する第2の駆動信号を出力する。この場合、第2の駆動信号は、例えば、第1よりもインク滴の容量が大きくなるような信号である。
【0026】
このように構成すれば、例えば、光沢インク及びカラー印刷用のインクのそれぞれについて、インク滴の容量を適切に設定できる。また、これにより、例えば、光沢インク及びカラー印刷用のインクのそれぞれについて、一のインク滴により形成されるインクのドットのサイズを適切に設定できる。
【0027】
(構成5)光沢インクは、カラー印刷用のインクよりも媒体上で広がりやすい特性のインクである。このように構成すれば、例えば、光沢インクについて、媒体上でインクのドットが接触する条件をより設定しやすくなる。また、これにより、例えば、媒体に定着後の光沢インクについて、高い光沢性を適切に得ることができる。
【0028】
また、この場合、例えばカラーインク用ヘッドと光沢インク用ヘッドとで同じ駆動信号を用いたとしても、一のインク滴により形成されるインクのドットのサイズについて、光沢インクのドットのサイズを、カラー印刷用のインクのドットのサイズよりも大きくできる。そのため、このように構成すれば、例えば、光沢インク及びカラー印刷用のインクのそれぞれについて、一のインク滴により形成されるインクのドットのサイズをより適切に設定できる。
【0029】
(構成6)印刷装置は、マルチパス方式で印刷を行い、各回の主走査動作において、光沢インク用ヘッドは、予め設定されたマスクデータに応じて選択される画素の位置へ、インク滴を吐出し、光沢インク用ヘッドが吐出するインク滴の容量は、各回の主走査動作で形成される複数のドットが媒体上で接触するサイズになる容量である。このように構成すれば、例えば、マルチパス方式で印刷を行うことにより、高い解像度の印刷を適切に行うことができる。また、光沢インクについて、高い光沢性を適切に得ることができる。
【0030】
尚、マルチパス方式で印刷を行う場合、光沢インクのインク滴を吐出する画素の位置は、少なくとも、主走査方向において一つおきの画素の位置になる。この場合、主走査方向において一つおきの画素の位置とは、例えば、印刷の解像度に応じて設定される画素の並びの中で、主走査方向において一つおきになる画素の位置のことである。より具体的に、主走査方向において一つおきの画素の位置とは、例えば、主走査方向における印刷の解像度における解像度ピッチの2倍の距離の間隔で並ぶ位置である。また、この場合、各回の主走査動作で形成される複数のドットが媒体上で接触するサイズになる容量とは、例えば、少なくとも、一のインク滴により形成されるインクのドットの直径が、主走査方向における解像度ピッチの2倍以上になる容量のことである。
【0031】
(構成7)カラー印刷用のインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドであるカラーインク用ヘッドを更に備え、カラーインク用ヘッドは、光沢インク用ヘッドと共通のマスクデータに応じて選択される画素の位置へ、インク滴を吐出し、カラーインク用ヘッドが吐出するインク滴の容量は、各回の主走査動作で形成される複数のドットが媒体上で接触しないサイズになる容量である。この場合、各回の主走査動作で形成される複数のドットが媒体上で接触しないとは、例えば、異なる画素の位置にそれぞれ形成されたドットが接触しないことである。
【0032】
このように構成した場合、例えば、カラーインク用ヘッドによりマルチパス方式で印刷を行うことにより、高い解像度でのカラー印刷を適切に行うことができる。また、カラーインク用ヘッドと光沢インク用ヘッドとで共通のマスクデータを用いることにより、制御を過度に複雑化することなく、マルチパス方式での印刷を適切に行うことができる。
【0033】
更には、カラーインク用ヘッドが吐出するインク滴の容量について、媒体上でのインクのドットが接触しない容量にすることで、例えば色間滲みの発生等を適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、高い解像度でのカラー印刷をより適切に行うことができる。
【0034】
(構成8)光沢インク用ヘッドは、光沢インクのインク滴を吐出するノズルである光沢インク用ノズルを有し、印刷装置は、カラー印刷用のインクのインク滴を吐出するノズルであるカラー印刷用ノズルを更に備え、主走査駆動部は、主走査動作において、光沢インク用ノズル及びカラー印刷用ノズルのそれぞれからインク滴を吐出させ、かつ、予め設定された回数の主走査動作で一のノズルにより媒体上に形成するインクのドットの密度を主走査ドット密度と定義した場合、光沢インク用ノズルに、第1の主走査ドット密度でインクのドットを形成させ、カラー印刷用ノズルに、第1の主走査ドット密度よりも小さな第2の主走査ドット密度でインクのドットを形成させる。
【0035】
このように構成した場合、より高い第1の主走査ドット密度で光沢インクのドットを形成することにより、例えば、媒体上でインクのドットが接触する条件をより設定しやすくなる。また、カラー印刷用のインクについては、より低い第2の主走査ドット密度でインクのドットを形成することにより、媒体上でインクのドットが接触しない条件をより設定しやすくなる。そのため、このように構成すれば、例えば、カラー印刷用のインクについて色間滲み等が生じること等を適切に防ぎつつ、光沢インクについて、高い光沢性を適切に得ることができる。また、これにより、例えば、カラー印刷用のインクによる画像の品質を保ちつつ、光沢インクにより高い光沢性を適切に得ることができる。
【0036】
尚、主走査ドット密度とは、例えば、所定の回数の主走査動作においてインク滴を吐出する画素の密度のことである。また、インク滴を吐出する画素の密度とは、例えば、印刷の解像度に応じて決まる画素の並びのうち、主走査動作においてインク滴を吐出する画素の割合に対応する密度である。また、より具体的に、インク滴を吐出する画素の密度とは、例えば、一定の面積に含まれる画素の数に対する、インク滴を吐出する画素の数の割合であってよい。また、インク滴を吐出する画素の密度は、所定回数の主走査動作による記録デューティ又は記録密度と考えることもできる。
【0037】
また、主走査ドット密度は、より具体的に、例えば、1回の主走査動作でのインクのドットの密度であってよい。また、予め設定された複数回の主走査動作でのインクのドットの密度であってもよい。また、複数回の主走査動作に対応する主走査ドット密度を考える場合、光沢インク用ノズルについて、複数回の主走査動作は、例えば、最初の主走査動作で形成したインクのドットが完全に乾燥しない範囲の時間内に行う。このように構成すれば、例えば、異なる回の主走査動作で形成するインクのドットについても、適切に連結させることができる。
【0038】
(構成9)第1の主走査ドット密度は、光沢インクのドットについて、それぞれのドットが他のいずれかのドットと媒体上で接触する主走査ドット密度であり、第2の主走査ドット密度は、カラー印刷用のインクのドットについて、それぞれのドットが他のいずれのドットとも媒体上で接触しない主走査ドット密度である。
【0039】
このように構成した場合、例えば、光沢インクについて、高い光沢性を適切に得ることができる。また、カラー印刷用のインクについて、色間滲み等が生じること等を適切に防ぐことができる。そのため、このように構成すれば、例えば、カラー印刷用のインクによる画像の品質を保ちつつ、光沢インクにより高い光沢性を適切に得ることができる。
【0040】
(構成10)印刷装置は、各回の主走査動作においてインク滴を吐出する画素を指定するデータであるマスクデータに基づき、マルチパス方式で印刷を行い、主走査駆動部は、光沢インク用ノズルに対して用いるマスクデータと、カラー印刷用ノズルに対して用いるマスクデータとを異ならせることにより、第1の主走査ドット密度と第2の主走査ドット密度とを異ならせる。
【0041】
このように構成すれば、例えば、第1の主走査ドット密度及び第2の主走査ドット密度のそれぞれを適切に設定できる。また、これにより、例えば、カラー印刷用のインクによる画像の品質を保ちつつ、光沢インクにより高い光沢性をより適切に得ることができる。
【0042】
(構成11)予め設定された領域を予め設定された濃度で塗りつぶす動作を行うために必要な印刷のパス数をベタ印字パス数と定義した場合、主走査駆動部は、光沢インク用ノズル及びカラー印刷用ノズルのそれぞれに対して、光沢インク用ノズルで塗りつぶしを行う場合のベタ印字パス数が、カラー印刷用ノズルで塗りつぶしを行う場合のベタ印字パス数よりも小さくなるようなマスクデータを使用する。
【0043】
このように構成した場合、光沢インク用ノズル及びカラー印刷用ノズルのそれぞれにより、第1の主走査ドット密度及び第2の主走査ドット密度のそれぞれに応じた印刷のパス数を用いて、適切にインクのドットを形成できる。そのため、このように構成すれば、光沢インク用ノズル及びカラー印刷用ノズルのそれぞれによる印刷の動作をより適切に実行できる。
【0044】
(構成12)主走査方向と直交する副走査方向へ媒体に対して相対的に移動する副走査動作を光沢インク用ヘッドに行わせる副走査駆動部を更に備え、光沢インク用ヘッドは、副走査方向へ並ぶ複数の光沢インク用ノズルを有し、主走査駆動部は、少なくとも、光沢インク用ノズルの並びの中央部の光沢インク用ノズルに、第1の主走査ドット密度でインクのドットを形成させ、かつ、光沢インク用ノズルの並びにおける少なくとも一方の端の光沢インク用ノズルに、第1の主走査ドット密度よりも小さな第3の主走査ドット密度で、インクのドットを形成させる。
【0045】
例えばマルチパス方式で印刷を行う場合のように、複数の主走査動作を繰り返すことで印刷を行う場合、各回の主走査動作で印刷を行う印刷領域の境界が目立つバンディング等が生じる場合がある。また、その結果、印刷の品質が低下する場合がある。
【0046】
これに対し、このように構成した場合、各回の主走査動作により光沢インクで印刷を行う印刷領域のうち、境界部分の主走査ドット密度を低く設定することができる。また、これにより、境界が目立ってバンディングが発生すること等を適切に抑えることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、バンディング等の発生を抑制しつつ、高い光沢性を適切に得ることができる。
【0047】
尚、副走査駆動部は、例えば、媒体を搬送することにより、光沢インク用ヘッドに副走査動作を行わせる。この場合、光沢インク用ノズルの並びにおける少なくとも一方の端とは、例えば、媒体の搬送方向における上流側又は下流側の少なくとも一方の端のことである。また、副走査駆動部は、例えば、光沢インク用ヘッドの側を移動させることにより、光沢インク用ヘッドに副走査動作を行わせてもよい。
【0048】
(構成13)カラー印刷用ノズルは、光沢インク用ノズルにより形成されたインクの層の上に、インク滴を吐出する。このように構成すれば、例えば、光沢性を有するカラー印刷(例えば、メタリックカラー印刷)を適切に行うことができる。
【0049】
また、この構成のように、光沢インクの層の上に他のインク(カラー印刷用のインク)のインク滴を吐出する場合、例えば主走査ドット密度が高い状態で、一度の多量のインク滴を吐出すると、他のインクにより光沢インクが浸食されやすくなる場合がある。また、その結果、印刷の品質が低下するおそれがある。
【0050】
これに対し、このように構成した場合、例えば、カラー印刷用のインクに対する主走査ドット密度を低い密度にすることにより、カラー印刷用のインクによる光沢インクの浸食がより生じにくい構成を実現できる。また、これにより、印刷品質の低下を適切に防ぐことができる。
【0051】
尚、この構成においては、更に、例えば、インクのドットのサイズについて、下層に形成される光沢インクのドットのサイズよりも、上層に形成されるカラー印刷用のインクのドットのサイズが小さくなるように設定することが好ましい。このように構成すれば、例えば、カラー印刷用のインクによる光沢インクの浸食をより適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、印刷の解像度が高い場合等においても、カラー印刷用のインク及び光沢インクによる印刷をより適切に行うことができる。
【0052】
(構成14)媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、光沢性の色のインクである光沢インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである光沢インク用ヘッドに、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を行わせ、光沢インクは、光沢性の顔料と、溶媒とを含むインクであり、主走査動作において、光沢インク用ヘッドは、主走査方向へ移動しつつインク滴の吐出を複数回行うことにより、媒体上で主走査方向へ並ぶ複数の位置に、インクのドットを形成し、光沢インク用ヘッドが吐出するインク滴の容量は、一の主走査動作で形成する複数のドットについて、それぞれのドットが他のいずれかのドットと媒体上で接触するサイズになる容量である。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【0053】
(構成15)媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、光沢性の色のインクである光沢インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである光沢インク用ヘッドと、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を光沢インク用ヘッドに行わせる主走査駆動部とを備え、光沢インク用ヘッドは、光沢インクのインク滴を吐出するノズルである光沢インク用ノズルを有し、主走査駆動部は、主走査動作において、光沢インク用ノズルからインク滴を吐出させ、予め設定された回数の主走査動作で一のノズルにより媒体上に形成するインクのドットの密度を主走査ドット密度と定義した場合、光沢インク用ノズルにより形成するインクのドットについて、主走査ドット密度は、各回の主走査動作で形成するそれぞれのドットが液体の状態の他のいずれかのドットと媒体上で接触する主走査ドット密度である。
【0054】
光沢インクのドットについて、液体の状態での接触は、例えば、複数回の主走査動作で形成するドット間で生じさせることも考えられる。この場合も、液体の状態で複数のドットを接触させることにより、複数のドットを適切に連結させることができる。そのため、このように構成すれば、光沢インクを用いて、高い光沢性を適切に得ることができる。
【0055】
(構成16)媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、光沢性の色のインクである光沢インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである光沢インク用ヘッドに予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を行わせ、光沢インク用ヘッドは、光沢インクのインク滴を吐出するノズルである光沢インク用ノズルを有し、主走査駆動部は、主走査動作において、光沢インク用ノズルからインク滴を吐出させ、予め設定された回数の主走査動作で一のノズルにより媒体上に形成するインクのドットの密度を主走査ドット密度と定義した場合、光沢インク用ノズルにより形成するインクのドットについて、主走査ドット密度は、各回の主走査動作で形成するそれぞれのドットが液体の状態の他のいずれかのドットと媒体上で接触する主走査ドット密度である。このように構成すれば、例えば、構成15と同様の効果を得ることができる。
【0056】
(構成17)媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、少なくとも一以上のインクジェットヘッドと、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を一以上のインクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部とを備え、一以上のインクジェットヘッドは、予め設定された領域を塗りつぶす用途のインクのインク滴を吐出するノズルであるベタ印字用ノズルと、カラー印刷用のインクのインク滴を吐出するノズルであるカラー印刷用ノズルとを有し、予め設定された回数の主走査動作で一のノズルにより媒体上に形成するインクのドットの密度を主走査ドット密度と定義した場合、主走査駆動部は、ベタ印字用ノズルに、第1の主走査ドット密度でインクのドットを形成させ、カラー印刷用ノズルに、第1の主走査ドット密度よりも小さな第2の主走査ドット密度でインクのドットを形成させる。
【0057】
インクジェット方式での印刷を行う場合、予め設定された領域を塗りつぶす用途のインク(ベタ印字用インク)として、様々なインクを用いる場合がある。この場合、予め設定された領域を塗りつぶすとは、例えば、印刷装置において予め設定された所定の濃度(例えば100%の濃度)で、インク滴を吐出することである。また、この所定の濃度は、例えば、印刷の解像度に応じて設定される全ての画素の位置に対し、インク滴を吐出する濃度である。
【0058】
また、より具体的には、例えば、ベタ印字用インクとしてメタリックインク等の光沢インクや、透光性なクリア色のインク(クリアインク)等を用いて、ベタ印字による塗りつぶしを行う場合がある。また、白色等の特定の色のインクを用いて、塗りつぶしを行う場合もある。そして、このような場合、ベタ印字用インクに対応する主走査ドット密度については、ある程度以上の高い密度に設定することが望ましい。このように構成すれば、例えば、一定の領域に対し、より均一に塗りつぶしを行うことができる。
【0059】
一方、カラー印刷用のインクについては、色間滲み等を防ぐために、ベタ印字用インクよりも低い主走査ドット密度を設定することが望ましい。そのため、このように構成すれば、例えば、ベタ印字用インク、及びカラー印刷用のインクのそれぞれについて、好ましい主走査ドット密度を適切に設定できる。また、これにより、例えば、カラー印刷用のインクによる画像の品質を保ちつつ、ベタ印字用インクによる塗りつぶしをより適切に行うことができる。
【0060】
(構成18)媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、少なくとも一以上のインクジェットヘッドに、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を行わせ、一以上のインクジェットヘッドは、予め設定された領域を塗りつぶす用途のインクのインク滴を吐出するノズルであるベタ印字用ノズルと、カラー印刷用のインクのインク滴を吐出するノズルであるカラー印刷用ノズルとを有し、予め設定された回数の主走査動作で一のノズルにより媒体上に形成するインクのドットの密度を主走査ドット密度と定義した場合、ベタ印字用ノズルに、第1の主走査ドット密度でインクのドットを形成させ、カラー印刷用ノズルに、第1の主走査ドット密度よりも小さな第2の主走査ドット密度でインクのドットを形成させる。このように構成すれば、例えば、構成15と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0061】
本発明によれば、例えば、媒体に定着後の光沢インクについて、高い光沢性を適切に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置10の一例を示す図である。図1(a)、(b)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す正面図及び上面図である。
図2】ヘッド部12のより詳細な構成の一例を示す図である。図2(a)は、ヘッド部12の構成の一例を示す。図2(b)は、ヘッド部12の構成の他の例を示す。
図3】ドットサイズと解像度との関係に関する実験に関し、実験を行った条件を示す図である。
図4】主走査方向におけるドット間隔と、光沢度との関係に関する実験の結果を示す図である。
図5】副走査方向におけるドット間隔と、光沢度との関係に関する実験の結果を示す図である。
図6】単位面積あたりのインクの吐出量と、光沢度との関係に関する実験の結果を示す図である。
図7】印刷の解像度とインク滴の容量との関係について、好ましい条件の一例を具体的に示す図である。図7(a)は、好ましい第1の条件を示す。図7(b)は、好ましい第2の条件を示す。
図8】メタリックインクを用いて印刷を行った結果を示す拡大写真である。
図9】実験により得られた印刷のパス数と光沢度との関係を示す図である。
図10】各画素の位置へインク滴が着弾するタイミングである着弾順について、印刷のパス数との関係の一例を示す図である。図10(a)は、印刷のパス数が4の場合について、メタリックインクによる印刷結果の一例と、着弾順の一例とを示す。図10(b)は、印刷のパス数が8の場合について、メタリックインクによる印刷結果の一例と、着弾順の一例とを示す。
図11】横落としマスクを用いる場合について、メタリックインクによる印刷結果の一例と、着弾順の一例とを示す図である。
図12】空スキャンの影響に関する実験の結果を示す図である。
図13】単位面積あたりのインク量と光沢度との関係に関する実験の結果を示す図である。
図14】メタリックインクを用いて行う印刷の好ましい条件の例を示す図である。
図15】ヘッド部12を用いて行う印刷の動作について説明をする図である。図15(a)は、ヘッド部12の詳細な構成の一例を示す。図15(b)は、本例のヘッド部12について簡略化して示す図である。
図16】ノズル列の分割について更に詳しく説明をする図である。図16(a)は、ノズル列を分割する領域の数の一例を示す。図16(b)は、ヘッド分割数を5にした場合の領域の設定の例を示す図である。図16(c)は、メタリックカラー印刷を行う場合に形成されるインクの層の一例を示す。
図17】本例のヘッド部12におけるノズル列に対して行う領域の設定の例を示す図である。
図18】メタリックインクによる印刷について説明をする図である。図18(a)は、メタリックインクのドットの重なり方の一例を示す。図18(b)は、使用するメタリックインの特性等の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置10の一例を示す。図1(a)、(b)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す正面図及び上面図である。尚、以下に説明をする点以外について、印刷装置10は、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の構成を有してよい。
【0064】
印刷装置10は、媒体50に対してインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタである。また、本例において、印刷装置10は、例えばインクジェットヘッドに主走査動作を行わせるシリアル方式で印刷を行うインクジェットプリンタであり、ヘッド部12、主走査駆動部14、副走査駆動部16、プラテン18、駆動信号出力部20、及び制御部22を備える。
【0065】
ヘッド部12は、媒体50に対して印刷を行う部分であり、制御部22の指示に応じて、印刷する画像の各画素に対応するインクのドットを媒体50上に形成する。また、本例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッドを有する。ヘッド部12のより具体的な構成については、後に更に詳しく説明をする。
【0066】
主走査駆動部14は、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドに主走査動作を行わせる構成である。この場合、主走査動作とは、例えば、予め設定された主走査方向(図中のY方向)へ移動しつつ媒体50へインク滴を吐出する動作である。また、本例において、主走査駆動部14は、キャリッジ102及びガイドレール104を有する。キャリッジ102は、インクジェットヘッドのノズル列と媒体50と対向させた状態でヘッド部12を保持する。ガイドレール104は、主走査方向へのキャリッジ102の移動をガイドするレールであり、制御部22の指示に応じて、主走査方向へキャリッジ102を移動させる。
【0067】
副走査駆動部16は、主走査方向と直交する副走査方向へ媒体50に対して相対的に移動する副走査動作をヘッド部12におけるインクジェットヘッドに行わせる構成である。本例において、副走査駆動部16は、媒体50を搬送するローラであり、主走査動作の合間に媒体50を搬送することにより、インクジェットヘッドに副走査動作を行わせる。
【0068】
尚、印刷装置10の構成としては、例えば、媒体50の搬送を行わずに、位置を固定した媒体50に対してインクジェットヘッドの側を動かすことで副走査動作を行う構成(例えば、X-Yテーブル型機)を用いることも考えられる。この場合、副走査駆動部16としては、例えば、ガイドレール104を副走査方向へ移動させることでインクジェットヘッドを移動させる駆動部等を用いることができる。
【0069】
プラテン18は、媒体50を載置する台状部材であり、ヘッド部12のインクジェットヘッドにおいてノズルが形成されているノズル面と対向させて媒体50を支持する。また、本例において、プラテン18は、例えばヘッド部12と対向する位置に、媒体50を加熱するヒータを有する。このヒータは、媒体50上のインクを媒体50に定着させるための加熱手段であり、媒体50を加熱することにより、媒体50上のインクに含まれる溶媒(溶剤)を揮発除去する。プラテン18は、複数のヒータを有してもよい。例えば、ヒータとして、インク滴が着弾する前の位置で媒体50を加熱するヒータ(プレヒータ)と、ヘッド部12と対向する位置で媒体50を加熱するヒータ(プラテンヒータ)とを有してよい。また、例えば媒体50の搬送方向においてヘッド部12よりも下流側で媒体50を加熱するヒータ(アフターヒータ)等を更に有してもよい。
【0070】
駆動信号出力部20は、ヘッド部12における複数のインクジェットヘッドへ駆動信号を出力する信号出力部である。この場合、駆動信号とは、例えば、インクジェットヘッドにおいてノズルの位置に配設された駆動素子(例えば、ピエゾ素子)の動作を制御する信号である。また、駆動信号出力部20は、主走査動作時において、駆動素子の動作を制御することにより、インクジェットヘッドのノズルから、インク滴を吐出させる。
【0071】
制御部22は、例えば印刷装置10のCPUであり、例えばホストPCの指示に応じて、印刷装置10の各部の動作を制御する。以上の構成により、印刷装置10は、媒体50に対し、印刷を行う。続いて、ヘッド部12のより具体的な構成については、詳しく説明をする。
【0072】
図2は、ヘッド部12のより詳細な構成の一例を示す。図2(a)は、ヘッド部12の構成の一例を示す。本例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッドとして、複数のカラーインク用ヘッド202と、メタリックインク用ヘッド204とを有する。また、図示は省略したが、複数のカラーインク用ヘッド202及びメタリックインク用ヘッド204のそれぞれは、複数のノズルが副走査方向(X方向)へ並ぶノズル列を有する。
【0073】
複数のカラーインク用ヘッド202のそれぞれは、カラー印刷用のインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。カラー印刷用のインクとは、例えば、CMYKインクの各色のインクである。この場合、複数のカラーインク用ヘッド202のそれぞれは、例えば、CMYKインクの各色のインクのインク滴を吐出する。また、本例において、複数のカラーインク用ヘッド202は、例えば図2(a)に示すように、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。これにより、各回の主走査動作において、複数のカラーインク用ヘッド202は、同じ領域へインク滴を吐出する。
【0074】
尚、複数のカラーインク用ヘッド202のそれぞれにおいて、カラー印刷用のインクとしては、例えば、公知の各種インクを用いることができる。例えば、本例において、複数のカラーインク用ヘッド202のそれぞれは、例えば、CMYKの各色のソルベントインクのインク滴を吐出する。この場合、ソルベントインクとは、例えば、顔料と有機溶剤とを含むインクである。この有機溶剤は、揮発性有機溶剤であってよい。また、複数のカラーインク用ヘッド202で用いるソルベントインクは、例えば公知のソルベントインクであってよい。また、カラー印刷用のインクとしては、例えば、ソルベントUVインク等を用いることも考えられる。この場合、ソルベントUVインクとは、例えば、紫外線硬化型のモノマー又はオリゴマーと、溶媒である有機溶剤とを含むインクである。また、ソルベントUVインクは、紫外線硬化型インクを有機溶剤で希釈したインクであってよい。
【0075】
メタリックインク用ヘッド204は、光沢インク用ヘッドの一例であり、光沢インクの一例であるメタリック色のインク(メタリックインク)のインク滴を吐出する。この場合、光沢インク用ヘッドとは、例えば、光沢インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。また、光沢インクとは、例えば、光沢性の色のインクである。光沢インクは、例えば、光沢性の顔料と、溶媒とを含むインクであってよい。また、光沢インクとは、例えば、光を反射する鱗片状の顔料を含むインクであってよい。また、光沢インクとしては、例えばパール色等のインク等を用いることも考えられる。この場合、ヘッド部12は、例えば、光沢インク用ヘッドとして、パール色のインク用のインクジェットヘッドを有する。
【0076】
また、本例において、メタリックインク用ヘッド204は、例えば図2(a)に示すように、複数のカラーインク用ヘッド202に対し、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。これにより、各回の主走査動作において、メタリックインク用ヘッド204は、例えば、複数のカラーインク用ヘッド202と同じ領域へインク滴を吐出する。
【0077】
また、本例のメタリックインク用ヘッド204において、メタリックインクとしては、例えば、公知のメタリックインクを用いることができる。例えば、本例において、メタリックインク用ヘッド204は、メタリック色のソルベントインクのインク滴を吐出する。この場合、メタリック色のソルベントインクとは、例えば、メタリック色用の鱗片状の顔料と、有機溶剤とを含むインクである。この有機溶剤は、揮発性有機溶剤であってよい。また、この有機溶剤は、例えば、メタリックインクの主成分となる溶媒である。この場合、インクの主成分とは、例えば、重量比で50%以上含む成分のことである。また、この有機溶剤としては、例えばグリコールエーテル系溶剤等を好適に用いることができる。また、メタリックインクは、例えば、バインダ樹脂等を更に含んでよい。また、より具体的に、本例において用いるメタリックインクは、例えば銀色のインクであってよい。この場合、メタリックインクは、例えば、アルミニウム等の金属の顔料を含む。また、金属の顔料としては、例えば、金、銀、黄銅等や、各種合金からなる顔料を用いてもよい。また、メタリックインクとして、例えば、ソルベントUVインクを用いること等も考えられる。
【0078】
尚、メタリックインクを用いて印刷を行う場合、例えば、所定の領域に対し、カラー印刷用のインク(CMYK)のインク滴は吐出せずに、メタリックインクで塗りつぶしを行う場合がある。この場合、メタリックインクで塗りつぶしを行うとは、例えば所定の一定の濃度(例えば100%の濃度)でメタリックインクのインク滴を吐出することである。このような場合、例えば、その領域に対する主走査動作において、カラーインク用ヘッド202によるインク滴を行わずに、メタリックインク用ヘッド204のみにインク滴を吐出させることが考えられる。このように構成すれば、例えば、図2(a)に示した構成により、メタリックインクによる印刷を適切に行うことができる。
【0079】
また、上記及び以下において説明をする点を除き印刷装置10(図1参照)は、複数のカラーインク用ヘッド202及びメタリックインク用ヘッド204により、公知の方法と同一又は同様にして、印刷を行ってよい。例えば、メタリックインク用ヘッド204によるインク滴の吐出の仕方等以外の点について、印刷装置10の動作は、公知の印刷装置と同一又は同様であってよい。この場合、メタリックインク用ヘッド204によるインク滴の吐出の仕方とは、例えば、インク滴のサイズや、インク滴を吐出する画素の選択の仕方等のことである。
【0080】
また、より具体的に、例えば、印刷装置10におけるカラーインク用ヘッド202の動作は、公知の印刷装置におけるカラーインク用ヘッドの動作と、同一又は同様であってよい。また、印刷装置10は、例えば、マルチパス方式で印刷を行ってもよい。この場合、マルチパス方式とは、例えば、媒体50(図1参照)の各位置に対して複数の印刷パス分の複数回の主走査動作を行う方式である。この場合、複数のカラーインク用ヘッド202及びメタリックインク用ヘッド204は、例えば、予め設定されたマスクデータに応じて選択される画素の位置へ、インク滴を吐出する。この場合、マスクデータとは、例えば、各回の印刷パスでインク滴を吐出すべき画素を指定するデータのことである。また、マスクデータは、インク滴の着弾順を規定するデータと言うことできる。このように構成すれば、例えば、マルチパス方式で印刷を行うことにより、高い解像度の印刷を適切に行うことができる。また、この場合、複数のカラーインク用ヘッド202及びメタリックインク用ヘッド204は、例えば、共通のマスクデータに応じて選択される画素の位置へ、インク滴を吐出してよい。このように構成すれば、例えば、制御を過度に複雑化することなく、マルチパス方式での印刷を適切に行うことができる。
【0081】
また、カラーインク用ヘッド202及びメタリックインク用ヘッド204により行う主走査動作の方向は、必要に応じて、一方向及び双方向のいずれに設定してもよい。この場合、主走査動作の方向を一方向に設定するとは、例えば、主走査動作時にカラーインク用ヘッド202及びメタリックインク用ヘッド204を移動させる向きを、主走査方向における一方の向きのみに設定することである。また、主走査動作の方向を双方向に設定するとは、例えば、主走査方向へカラーインク用ヘッド202及びメタリックインク用ヘッド204を往復させ、かつ、この往復における往路及び復路の両方で主走査動作を行うことである。
【0082】
また、複数のカラーインク用ヘッド202及びメタリックインク用ヘッド204のそれぞれは、例えば、複数のインクジェットヘッドにより構成される複合ヘッドであってもよい。例えば、複数のカラーインク用ヘッド202及びメタリックインク用ヘッド204のそれぞれは、複数のインクジェットヘッドをスタガ配置で並べたスタガヘッドであってもよい。
【0083】
また、ヘッド部12における複数のカラーインク用ヘッド202とメタリックインク用ヘッド204との配置については、例えば、図1(a)に示した構成以外の構成を用いることも考えられる。図2(b)は、ヘッド部12の構成の他の例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図2(b)において、図2(a)と同じ符号を付した構成は、図2(a)における構成と、同一又は同様の特徴を有する。
【0084】
図2(b)に示した構成において、メタリックインク用ヘッド204は、複数のカラーインク用ヘッド202と副走査方向における位置をずらして配設される。この場合、各回の主走査動作において、メタリックインク用ヘッド204は、カラーインク用ヘッド202と同時に主走査方向へ移動しつつ、カラーインク用ヘッド202とは異なる領域へインク滴を吐出する。このように構成した場合も、カラー印刷用インク及びメタリックインクによる印刷を適切に行うことができる。
【0085】
続いて、本例におけるメタリックインク用ヘッド204の動作等について、更に詳しく説明をする。上記のように、本例において、メタリックインク用ヘッド204は、主走査動作を行うことにより、媒体50上にインク滴を吐出する。また、より具体的に、各回の主走査動作において、メタリックインク用ヘッド204は、主走査方向へ移動しつつインク滴の吐出を複数回行うことにより、媒体50上で主走査方向へ並ぶ複数の位置に、インクのドットを形成する。
【0086】
また、本例において、メタリックインク用ヘッド204が吐出するインク滴の容量は、各回の主走査動作で形成される複数のドットが媒体50上で接触するサイズになる容量である。また、この容量は、例えば、一の主走査動作でメタリックインク用ヘッド204が形成する複数のドットについて、それぞれのドットが他のいずれかのドットと媒体50上で接触するサイズになる容量であるとも言える。
【0087】
尚、各回の主走査方向で形成される複数のインクのドットについて、媒体50上で接触するとは、同じ主走査動作で形成される複数のドットにおいて、例えば主走査方向において隣接するドットが互いに接触することである。また、インクのドットについて、媒体50上で接触するとは、例えば、溶媒が揮発除去される前に、液体の状態のインクのドットが接触することである。液体の状態のインクのドットが接触するとは、例えば、インクのドットの連結が生じる状態で接触することであってよい。
【0088】
また、それぞれのドットが他のいずれかのドットと媒体50上で接触するとは、例えば、メタリックインク用ヘッド204により形成される実質的に全てのドットのそれぞれについて、他のいずれかのドットと媒体50上で接触することであってよい。実質的に全てのドットとは、例えば、画素の選択について設計上の都合や、メタリックインク用ヘッド204の動作上生じる一部の例外を除いたドットのことであってよい。また、実質的に全てのドットとは、例えば、視認結果に影響を与えない範囲の一部の例外を除いたドットのことであってよい。また、インク滴の容量とは、例えば、設計上の容量のことであってよい。
【0089】
また、上記においても説明をしたように、本例において、メタリックインク用ヘッド204は、複数のノズルが副走査方向へ並ぶノズル列を有する。この場合、各回の主走査動作において、メタリックインク用ヘッド204は、例えば、ノズル列中の複数のノズルからインク滴を吐出する。また、これにより、主走査方向における位置を揃えて副走査方向へ並ぶ複数のインクのドットを媒体上に形成する。また、この場合、メタリックインク用ヘッド204が吐出するインク滴の容量は、主走査方向における位置を揃えて副走査方向へ並ぶ複数のインクのドットについて、それぞれのドットが他のいずれかのドットと媒体上で接触するサイズになる容量にすることが好ましい。
【0090】
また、上記においても説明をしたように、本例において、印刷装置10は、例えば、マルチパス方式で印刷を行ってもよい。この場合、メタリックインク用ヘッド204がメタリックインクのインク滴を吐出する画素の位置は、少なくとも、主走査方向において一つおきの画素の位置になる。この場合、主走査方向において一つおきの画素の位置とは、例えば、印刷の解像度に応じて設定される画素の並びの中で、主走査方向において一つおきになる画素の位置のことである。より具体的に、主走査方向において一つおきの画素の位置とは、例えば、主走査方向における印刷の解像度における解像度ピッチの2倍の距離の間隔で並ぶ位置である。また、この場合、各回の主走査動作で形成される複数のドットが媒体50上で接触するサイズになる容量とは、例えば、少なくとも、一のインク滴により形成されるインクのドットの直径が、主走査方向における解像度ピッチの2倍以上になる容量のことである。
【0091】
ここで、メタリックインクを用いて印刷を行う場合、高い光沢性が得られる状態で適切に印刷を行うためには、例えば、定着時の顔料の配向性における乱雑性をより小さくすることが望まれる。より具体的には、例えば、鱗片状の顔料について、媒体50上で鱗状(平面状)に配向するように媒体50に定着することが望まれる。しかし、例えばメタリックインク用ヘッド204により形成される各ドットについて、他のドットと連結しないような条件で形成した場合、各ドットが乾燥するまでの時間が短くなり、ドット内の顔料の状態が乱れたままでインクが媒体50に定着しやすくなる。また、その結果、十分な光沢性が得られなくなるおそれがある。
【0092】
これに対し、本例の場合、例えば、メタリックインクのドットは、媒体50上で連結し、より大きなドットになる。そして、その結果、溶媒(有機溶剤)が揮発除去されるまでの時間がより長くなる。また、これにより、例えば、高い光沢性を発揮する状態でメタリックが媒体に定着することになる。そのため、本例によれば、例えば、媒体50に定着後のメタリックについて、高い光沢性を適切に得ることができる。
【0093】
このように、本例においては、例えば、メタリックインク用ヘッド204から吐出されるメタリックインクのインク滴の容量を大きくすることにより、高い光沢性が得られる構成を実現している。しかし、上記においても説明をしたように、ヘッド部12は、メタリックインク用ヘッド204の他に、複数のカラーインク用ヘッド202を更に有する。そして、カラー印刷用のインクであるCMYKインクの場合、インク滴の容量が大きすぎると、高い精度での印刷を適切に行えなくなる場合がある。例えば、カラー印刷用のインクで印刷を行う場合。媒体50上でインクのドットの接触が生じると、印刷の品質が低下する場合がある。また、より具体的に、例えば、異なる色のインクのドット間で接触が生じた場合、色間滲みが発生し、印刷の品質が低下する場合がある。そのため、カラー印刷用のインクで印刷を行う場合について、解像度の高い印刷を適切に行うためには、媒体50上に形成されるインクのドットのサイズを十分に小さくする必要がある。
【0094】
そこで、本例においては、例えば、カラーインク用ヘッド202が吐出するインク滴の容量について、メタリックインク用ヘッド204の場合と異ならせ、より小さくすることが好ましい。これにより、カラーインク用ヘッド202が吐出する一のインク滴により媒体50上に形成されるインクのドットのサイズは、メタリックインク用ヘッド204が吐出する一のインク滴により媒体50上に形成されるインクのドットのサイズよりも小さくなる。この場合、インクのドットのサイズとは、例えば、インクのドットの直径である。また、インクのドットの直径は、例えば設計上の直径であってよい。
【0095】
また、より具体的に、カラーインク用ヘッド202が吐出するインク滴の容量は、複数のドットが媒体50上で接触しないサイズになる容量にすることが好ましい。この場合、複数のドットが媒体50上で接触しないとは、例えば、同じ主走査動作により形成する複数のドットについて、媒体50上で接触しないことである。このように構成すれば、例えば、カラー印刷用のインクについて、インクのドットのサイズを適切に小さくできる。また、これにより、例えば色間滲みの発生等を適切に防ぎ、解像度の高い高品質の印刷を適切に行うことができる。
【0096】
また、カラーインク用ヘッド202及びメタリックインク用ヘッド204のそれぞれから吐出するインク滴の容量を上記のように設定するためには、例えば、カラーインク用ヘッド202及びメタリックインク用ヘッド204へ供給する駆動信号を互いに異ならせることが考えられる。この場合、駆動信号出力部20(図1参照)は、例えば、カラーインク用ヘッド202へ、予め設定された第1の波形で変化する第1の駆動信号を出力する。また、メタリックインク用ヘッド204へ、第1の駆動信号と異なる波形で変化する第2の駆動信号を出力する。この場合、第2の駆動信号は、例えば、第1よりもインク滴の容量が大きくなるような信号である。また、第2の駆動信号について、第1の駆動信号と異なる波形で変化するとは、例えば、信号のレベル(電圧)のみが異なることであってもよい。
【0097】
このように構成すれば、例えば、メタリックインク及びカラー印刷用のインクのそれぞれについて、インク滴の容量を適切に設定できる。また、これにより、例えば、メタリックインク及びカラー印刷用のインクのそれぞれについて、一のインク滴により形成されるインクのドットのサイズを適切に設定できる。
【0098】
また、メタリックインクとしては、例えば、カラー印刷用のインクよりも媒体50上で広がりやすい特性のインクを用いることも考えられる。このように構成すれば、例えば、メタリックインクについて、媒体50上でインクのドットが接触する条件をより設定しやすくなる。また、これにより、例えば、媒体に定着後のメタリックインクについて、高い光沢性を適切に得ることができる。
【0099】
尚、インクの特性について、媒体50上で広がりやすい特性とは、例えば、溶媒が揮発除去されるまでの間により広い直径にまで広がるインクのことである。媒体50上で広がりやすい特性のインクとは、例えば媒体50への着弾直後においてより早く広がるインクであってよい。また、媒体50上で広がりやすい特性のインクとは、例えば、媒体50に弾かれにくいインクであってよい。媒体50に弾かれにくいインクとは、例えば媒体50との親和性が高いインクのことである。また、本例において、メタリックインクとしては、例えば、媒体50との親和性を高める添加剤等をカラー印刷用インクよりも多く含むインクを用いること等が考えられる。
【0100】
以上のように、本例によれば、例えば、メタリックインクを用いて、例えば、光沢性の高い印刷を適切に行うことができる。また、カラー印刷用のインクにより、例えば、解像度の高い印刷を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、高品質の印刷を適切に行うことができる。
【0101】
続いて、本発明に関連して本願の発明者が行った各種実験等について、説明をする。本願の発明者は、先ず、インクのドットのサイズ(ドットサイズ)及び解像度と光沢度(光沢値)との関係を確認するための実験を行った。図3~6は、ドットサイズ及び解像度と光沢度の関係に関する実験の結果を示す。図3は、実験を行った条件を示す。この実験では、図3において固定条件として示した各条件を固定した上で、その他の条件を様々に異ならせ、印刷を行った。
【0102】
また、様々に異ならせる条件として、VD(バリアブルドット)用の2種類の駆動波形を用いた。また、この駆動波形として、ミマキエンジニアリング社製の公知のインクジェットプリンタで用いている駆動波形であるWF6波形と、WF8波形とを用いた。この場合、VF用の駆動波形とは、インクジェットヘッドの各ノズルから吐出するインク滴の容量について、複数段階で可変にする駆動波形である。また、より具体的に、この実験で用いたWF6波形及びWF8波形は、小サイズ(S)、中サイズ(M)、大サイズ(L)の3段階のドットサイズのそれぞれに合わせ、インク滴の容量を変化させる。また、各ドットサイズの主走査方向(Y方向)及び副走査方向(X方向)における直径(ドットゲイン)や、各ドットサイズに対応するインク滴の容量(Shot Volume)は、図示のとおりである。
【0103】
そして、これらの印刷の条件を用いて、以下において説明をする実験を行った。図4は、主走査方向(Y方向)におけるドット間隔と、光沢度との関係に関する実験の結果を示す。図5は、副走査方向(X方向)におけるドット間隔と、光沢度との関係に関する実験の結果を示す。これらの実験では、駆動波形としてWF8波形を用いた。また、形成するインクのドットは、大サイズ(L)のドットとした。そして、主走査方向におけるドット間隔を様々に異ならせて印刷を行い、各条件で得られる光沢度を確認した。また、ドット間隔は、印刷の解像度(解像度メッシュ)を異ならせることで変化させた。
【0104】
図4及び図5に示したグラフ及び写真からわかるように、メタリックインクを用いた印刷により得られる光沢度は、ドット間隔により変化する。また、ドット間隔が大きくなると、光沢度の低下が顕著になる。
【0105】
ここで、これらの実験の場合、主走査方向及び副走査方向のいずれのドット間隔についても、720×720dpiの解像度(主走査方向及び副走査方向の解像度が共に720dpi)で印刷を行った場合に、最も高い光沢度が得られた。そのため、ドット間隔をこの場合より小さくした場合及び大きくした場合のいずれにおいても、光沢度は、最適なドット間隔の場合と比べると低下するとも言える。しかし、光沢度が低下する理由は、ドット間隔を小さくする場合と大きくした場合とで異なると考えられる。
【0106】
例えば、ドット間隔を小さくした場合、単位面積あたりに吐出されるインクの吐出量が多くなるため、インクがより乾燥しにくくなること等が原因であると考えられる。そのため、この場合、例えば十分な時間をかけてインクを乾燥させれば、高い光沢性が適切に得られると考えられる。一方、ドット間隔を大きくした場合、反対に、単位面積あたりに吐出されるインクの吐出量が少なくなるため、インクの乾燥しやすくなると考えられる。また、その結果、メタリックインクの顔料の定着時の配向性に乱雑性が大きくなり、光沢性が低下していると考えられる。
【0107】
そこで、本願の発明者は、更に、単位面積あたりのインクの吐出量と、光沢度との関係を確認する実験を行った。図6は、単位面積あたりのインクの吐出量と、光沢度との関係に関する実験の結果を示す。この実験では、グラフ中に示す各条件で印刷を行うことにより、単位面積(1m)あたりのインク吐出量を様々に異ならせ、各条件で得られる光沢度を確認した。
【0108】
グラフからわかるように、単位面積あたりのインクの吐出量がある程度(例えば10g/m程度)より小さくなると、光沢度は急激に低下する。また、そして、この場合、十分な光沢度が得られなくなるおそれがある。一方、単位面積あたりのインクの吐出量が多くなった場合には、少なくなる場合と比べ、光沢度の低下の度合いは小さい。そのため、高い光沢度を適切に得るためには、単位面積あたりのインクの吐出量が不足する条件を避けることが重要であると言える。尚、より具体的に、例えば、ドットゲインが70~90μm程度(Shot Volume:12~19ng程度)で変化する場合、720×720dpiの解像度で印刷を行えば、500以上の高い解像度が得られると言える。
【0109】
以上の実験により、例えば、高い光沢度を得るためには、単位面積あたりのインクの吐出量を十分に多くすることが必要であると言える。また、そのためには、印刷の解像度(ドット間隔)に応じて、ドットサイズが十分に大きくなるように、インク滴の容量を十分に大きくすることが必要であると言える。
【0110】
これに対し、例えば、図1及び図2を用いて説明をした印刷装置10の構成によれば、メタリックインク用ヘッド204が吐出するインク滴の容量について、各回の主走査動作で形成される複数のドットが媒体50上で接触するサイズになる容量とすることで、インク滴の容量を適切かつ十分に大きくすることができる。また、これにより、メタリックインクを用いて、光沢度の高い印刷を適切に行うことができる。
【0111】
図7は、印刷の解像度とインク滴の容量との関係について、好ましい条件の一例を具体的に示す。この条件は、駆動波形としてWF8波形を用い、メタリックインク用ヘッド204から吐出するインク滴を大サイズ(L)のドット用のインク滴に設定する場合の好ましい条件である。
【0112】
図7(a)は、好ましい第1の条件を示す。この第1の条件において、印刷の解像度は、720×720dpiとする。この場合、主走査方向(Y方向)及び副走査方向(X方向)のそれぞれにおいて、ドット間距離は、35.28μmとなる。また、パス数を4とするマルチパス方式で印刷を行う。そして、印刷の濃度を100%にして、印刷を行う。
【0113】
また、図7(a)において、図示したマス目の格子点は、印刷の解像度に応じて設定される画素の位置を示す。また、各画素の位置に対して示した数字(1)~(4)は、その画素の位置へインク滴を吐出する印刷パスを示す。例えば、数字(1)を付した画素の位置に対しては、1番目の印刷パスにおいて、インク滴を吐出する。また、数字(2)~(4)のそれぞれを付した画素の位置に対しては、2~4番目のそれぞれの印刷パスにおいて、インク滴を吐出する。このように構成すれば、例えば、各回の印刷パスにおいて、インクのドットを媒体50上で適切に接触させることができる。また、これにより、メタリックインクを用いて、光沢度の高い印刷を適切に行うことができる。
【0114】
図7(b)は、好ましい第2の条件を示す。以下に説明をする点を除き、第2の条件は、第1の条件と、同一又は同様である。第2の条件において、印刷の解像度は、1440×720dpiとする。この場合、主走査方向における解像度が1440dpiである。また、副走査方向における解像度が720dpiである。この場合、印刷の解像度に応じて設定される画素の位置は、図中のマス目の格子点の位置になる。そして、パス数を8とするマルチパス方式で印刷を行う。また、印刷の濃度は、第1の条件と比べて半分の50%とする。
【0115】
そして、各画素の位置に対し、数字(1)~(8)のそれぞれが示す印刷パスにより、インク滴を吐出する。より具体的に、この場合の画素の選択の仕方は、千鳥配置状であり、数字(1)~(8)のそれぞれを付した画素の位置に対して、1~8番目のそれぞれの印刷パスにおいて、インク滴を吐出する。このように構成した場合も、例えば、各回の印刷パスにおいて、インクのドットを媒体50上で適切に接触させることができる。また、これにより、メタリックインクを用いて、光沢度の高い印刷を適切に行うことができる。
【0116】
図8は、メタリックインクを用いて印刷を行った結果を示す拡大写真であり、上記の第1の条件で印刷を行った印刷結果の拡大写真を、比較対象となる条件で印刷を行った印刷結果の拡大写真と共に示す。第1の条件で印刷を行った場合、写真に示すように、媒体上において、複数のインクのドットが連結し、大きなドットが形成されている。また、その結果、この場合、高い光沢性が適切に得られている。
【0117】
一方、比較対象となる条件においては、360×360dpiの印刷解像度で、印刷パス数を2とするマルチパス方式で印刷を行った。また、印刷の濃度は、6.25%とした。この条件は、同じ主走査動作で形成されるドット間距離が大きくなり、ドット間の連結が生じない条件である。図からわかるように、この場合、媒体上で、インクのドットは、互いに離間して形成される。そのため、この場合、インク中の溶媒は、短時間で揮発除去されることになる。また、その結果、この条件の場合、十分な光沢性は得られなかった。
【0118】
ここで、上記のように、インクジェット方式で印刷を行う場合、マルチパス方式で印刷を行う方法が広く用いられている。また、マルチパス方式で印刷を行う場合、媒体上の同じ位置に対し、複数回の主走査動作を行う。そのため、マルチパス方式で印刷を行う場合、インクのドットの乾燥の仕方に関し、一の主走査動作を行った後、次の主走査動作を行うまでの時間が影響することも考えられる。より具体的には、例えば、低パスモードで印刷を行う場合や、インク滴を吐出させずにインクジェットの移動のみを行う空スキャンを含む動作を行う場合等に、乾燥ムラ等が生じること等が考えられる。また、その結果、画質の低下や、主走査方向への縞等が発生するおそれもある。
【0119】
そこで、本願の発明者は、マルチパス方式で印刷を行う場合について、各回の主走査動作でインク滴を吐出する画素の選択の仕方等について、好ましい方法を突き止めるための各種実験等を更に行った。また、このような実験として、具体的には、例えば、印刷のパス数(パス分割数)及びマスクデータ(マスク)と光沢度との関係について、各種実験を行った。
【0120】
図9は、実験により得られた印刷のパス数と光沢度との関係を示す図であり、図6において示したグラフと同じデータに基づき、印刷のパス数と光沢度との関係を示す。図9に示したグラフにより、例えば、印刷のパス数と光沢度との関係について、印刷パス数が多い高パスの設定になると、光沢度が低下することがわかる。
【0121】
図10は、各画素の位置へインク滴が着弾するタイミングである着弾順について、印刷のパス数との関係の一例を示す。図10(a)は、印刷のパス数が4の場合について、メタリックインクによる印刷結果の一例と、着弾順の一例とを示す。図10(b)は、印刷のパス数が8の場合について、メタリックインクによる印刷結果の一例と、着弾順の一例とを示す。尚、図10(a)、(b)において、図示したマス目の格子点は、印刷の解像度に応じて設定される画素の位置を示す。また、各画素の位置に対して示した数字(1)~(4)、又は(1)~(8)は、その画素の位置へインク滴を吐出する印刷パスを示す。
【0122】
図からわかるように、図10(a)に示した場合、1回の主走査動作により、主走査方向における隣接する複数の画素の位置に対してインク滴を吐出する。一方、図10(b)に示した場合、主走査方向における隣接する複数の画素のそれぞれの位置に対し、異なる回の主走査動作でインク滴を吐出することになる。
【0123】
また、より一般的に、印刷のパス数が多くなった場合、1回の主走査動作で形成される複数のインクのドットの並びにおいて、通常、ドット間隔は大きくなる。また、その結果、印刷のパス数が多くなった場合、通常、複数のドット間での連結は生じにくくなると考えられる。また、隣接する画素の位置の間で、インク滴が着弾するタイミングの時間差も大きくなる場合がある。そして、この場合、インク層の表面に凹凸や隙間が発生し、光沢度が低下する原因になると考えられる。また、実際、図中に示すように、図10(b)に示した場合の光沢度は、図10(a)に示した場合と比べ、低下している。
【0124】
ここで、上記のように、図10(a)、(b)に示した場合の比較により、印刷のパス数を多くすることで、光沢度が低下する場合があることがわかる。また、その理由として、印刷のパス数が多くなると、隣接する画素の位置の間で、インク滴が着弾するタイミングの時間差が大きくなること等が考えられる。
【0125】
これに対し、例えば、隣接する画素の位置の間について、インク滴が着弾するタイミングの時間差を小さくできれば、印刷のパス数が多い場合でも、高い光沢度を適切に得られると考えられる。また、このような方法としては、例えば、マルチパス方式で用いるマスクデータとして、横落としマスクを用いることが考えられる。この場合、横落としマスクとは、例えば、各回の主走査動作でインク滴を吐出する画素の選択について、主走査方向において隣接する画素の位置へのインク滴の吐出を、連続する主走査動作において行うように選択するマスクデータのことである。
【0126】
図11は、横落としマスクを用いる場合について、メタリックインクによる印刷結果の一例と、着弾順の一例とを示す。図11において、図示したマス目の格子点は、印刷の解像度に応じて設定される画素の位置を示す。また、各画素の位置に対して示した数字(1)~(8)は、その画素の位置へインク滴を吐出する印刷パスを示す。
【0127】
印刷結果と共に示したように、この場合、例えば図10(b)に示した場合と比べ、より高い光沢度が得られている。そのため、この結果から、例えば、高パスの設定で印刷を行う場合について、横落としマスクを用いることで光沢度の低下を抑え得ることがわかる。
【0128】
ここで、以上の実験結果により、例えば、ドットサイズが70~90μm(12~19ng)程度の場合、ドット間隔について、720×720dpiの解像度に対応する間隔程度にすることが好ましいことがわかる。また、インク滴の着弾順について、隣接する画素の間での着弾の時間差が光沢度に強い影響を与えることがわかる。また、その結果、高パスの設定で印刷を行う場合には、横落としマスクを用いることが好ましいと言える。そのため、例えば、高パスの設定で高光沢に印刷を行う場合には、一例として、例えば、横落としマスクを用い、印刷のパス数を8とし、720×720dpiの解像度で印刷を行うことが好ましい設定となる。また、例えば、この設定に対し、印刷の濃度を50%にし、主走査方向において1ドット間隔で間引きを行うこと等も考えられる。この場合、例えば、横落としマスクを用い、印刷のパス数を16とし、1440×720dpiの解像度で印刷を行うこと等が考えられる。
【0129】
尚、インクジェットプリンタにおいては、マルチパス印刷を行う設定について、印刷のパス数や使用するマスクデータが異なる複数種類の設定を用いる場合がある。そのため、より一般化して考えた場合、メタリックインクのインク滴の容量については、図1及び図2等に関連して説明をしたように、各回の主走査動作で形成される複数のドットが媒体上で接触するサイズになる容量にすることが好ましいと言える。また、この場合、より具体的に、インク滴の容量について、一のインク滴により形成されるインクのドットの直径が主走査方向における解像度ピッチの2倍以上になる容量にすることが考えられる。
【0130】
続いて、マルチパス方式で生じる空スキャンの影響に関する実験の結果について、説明をする。マルチパス方式で印刷を行う場合、印刷条件の設定によっては、例えば媒体を搬送する送り動作との関係等により、一定の間隔で空スキャンを挟んで主走査動作を行う場合がある。そして、このような変則的な送り動作を行う場合、各画素の位置への着弾順において、着弾のタイミングの時間差が変化する場合がある。また、その結果、意図しない縞等が発生し、光沢度が低下する場合がある。
【0131】
図12は、空スキャンの影響に関する実験の結果を示す。この実験では、図12において固定条件として示した各条件を固定した上で、主走査動作の間隔(スキャン間隔)を異ならせた各条件で、印刷を行った。また、スキャン間隔を異ならせる条件として、主走査動作においてインクジェットヘッドを移動させる距離(スキャン幅)を異ならせた。より具体的に、この実験では、スキャン幅について、最大設定の幅(フル幅)である1300mmと、より短い100mmとの設定を用いた。
【0132】
また、この実験では、解像度及びパス数の設定として、図中に(A)~(C)として示した3つの条件を用いた。このうち、条件(A)は、空スキャンが生じない設定である。また、条件(B)は、1回おきに空スキャンが生じる設定である。また、条件(C)は、1回おきに空スキャンが生じ、かつ、各回の主走査動作(スキャン)毎でのインクの吐出量が少ない条件である。
【0133】
ここで、スキャン幅を短い設定である100mmとした場合、1回の主走査動作に要する時間も短くなる。そのため、スキャン間隔も短くなり、隣接する画素の位置に対し、異なる回の主走査動作でインク滴を吐出する場合にも、着弾のタイミングの時間差は小さくなる。そのため、この場合、(A)~(C)のいずれの条件を用いる場合にも、高い光沢度が得られた。
【0134】
一方、スキャン幅をフル幅に設定した場合、1回の主走査動作に要する時間は長くなる。そのため、スキャン間隔は長くなる。また、その結果、例えば、隣接する画素の位置に対し、異なる回の主走査動作でインク滴を吐出する場合、着弾のタイミングの時間差は大きくなる。そして、この場合、例えば条件(A)のように、空スキャンが生じない条件であれば、光沢度が大きく低下することはない。また、この場合、例えば、双方向で高速に印刷する設定(BiHi)にした場合、光沢度は更に高くなる。これは、例えば、隣接する画素の位置への着弾の時間差が更に小さくなるためであると考えられる。
【0135】
しかし、例えば条件(B)、(C)のように、空スキャンが生じる条件の場合、図中に示すように、フル幅での印刷を行うと、光沢度が大きく低下することになる。これは、隣接する画素の位置への着弾の時間差が大きくなりすぎたためであると考えられる。
【0136】
そこで、本願の発明者は、空スキャンが必要な場合において、空スキャンの代わりに、つなぎ用の主走査動作を行うことを考えた。この場合、つなぎ用の主走査動作とは、例えば、本来は空スキャンを行うべきタイミングで行う主走査動作のことである。このつなぎの主走査動作においては、例えば、所定の一定の濃度でインク滴を吐出する主走査動作を行うことが考えられる。
【0137】
また、本願の発明者は、実際に、条件(B)、(C)に関し、図中にBi/SL交互として示すように、双方向で印刷をする設定を用い、つなぎの主走査動作として、バリアブルドットの設定により、小サイズ(S)のドット用のインク滴を吐出するようにして、主走査動作を行った。また、これにより、高い光沢性が得られることを確認した。そのため、このような構成により、例えば、スキャン幅が広い場合にも、高い光沢性を適切に得ることができることがわかる。
【0138】
尚、つなぎ用の主走査動作以外の本来の主走査動作で形成するインクのドット(メインドット)のサイズが、例えば70~90μm程度(14~19ng程度)の場合、つなぎ用の主走査動作で形成するドット(つなぎ用サブドット)のサイズは、例えば60μm程度(5ng程度)とすることが考えられる。このように構成すれば、例えば、高い光沢性を適切に得ることができる。
【0139】
また、上記の結果について補足説明をするため、以下において、更に、単位面積あたりのインク量と光沢度との関係に関する実験の結果について、説明をする。図13は、単位面積あたりのインク量と光沢度との関係に関する実験の結果を示す図である。この実験においては、図13に示すように、WF6波形及びWF8波形の様々なサイズのインクのドットを用い、通常印刷の設定で双方向の印刷を行うことにより、単位面積あたりのインク量と光沢度との関係を確認した。また、これにより、例えば、単位面積あたりのインク量が少ない場合、光沢度が低くなることがわかる。また、例えば印刷のパス数が多い場合(例えば16の場合)、ある程度のインク量に達するまで、インク量が増えるほど光沢度が高まる関係にあることがわかる。
【0140】
そして、この場合、例えば上記において説明をしたつなぎの主走査動作を行う構成について、単位面積あたりのインク量を増加させる構成と考えることができる。また、これにより、例えば、つなぎの主走査動作を行うことで光沢度が高まる点について、理解することができる。
【0141】
続いて、メタリックインクを用いて行う具体的な印刷の条件について、以上のような各実験に基づいた場合に考えられる好ましい条件の例を示す。図14は、メタリックインクを用いて行う印刷の好ましい条件の例を示す。
【0142】
上記の各実験に基づいた場合、メタリックインクを用いて行う印刷について、例えば、図中に示す条件A~Cのいずれかを用いることが好ましいと考えられる。図14において、図示したマス目の格子点は、印刷の解像度に応じて設定される画素の位置を示す。また、各画素の位置に対して示した数字(1)~(8)、又は(1)~(16)は、その画素の位置へインク滴を吐出する印刷パスを示す。これらの条件により印刷を行えば、例えば、メタリックインクを用いて、光沢度の高い印刷を適切に行うことができる。
【0143】
ここで、上記においては、主に、メタリックインクで印刷をする場合の条件等について、各種の観点での好ましい条件等を説明した。しかし、実際の印刷時においては、メタリックインクでの印刷の条件のみではなく、カラー印刷用のインクでの印刷の条件についても、十分に考慮することが必要である。例えば、図1及び図2等を用いて説明をした本例の印刷装置10で印刷をする場合、カラー印刷用のインク及びメタリックインクのそれぞれについての好ましい印刷の条件に合わせて、カラーインク用ヘッド202及びメタリックインク用ヘッド204(図2参照)のそれぞれの制御を行うことが望ましい。
【0144】
また、この場合、例えば、カラー印刷用のインクについての印刷の条件と、メタリックインクについての印刷の条件とを異ならせることも考えられる。そこで、以下、カラー印刷用のインク及びメタリックインクのそれぞれについて用いる印刷の条件の例について、更に詳しく説明をする。
【0145】
図15は、ヘッド部12を用いて行う印刷の動作について説明をする図である。図15(a)は、ヘッド部12の詳細な構成の一例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図15(a)に示すヘッド部12は、図1~14に関連して説明をしたヘッド部12と同一又は同様の構成を有する。例えば、ヘッド部12の物理的な構成は、図2(a)に示したヘッド部12と同一又は同様である。また、ヘッド部12は、例えば、図1に示した印刷装置10において用いられる。また、説明の便宜上、以下の説明においては、図15(a)に示したヘッド部12を用いる構成について、本例と呼ぶ
【0146】
本例において、ヘッド部12は、複数のカラーインク用ヘッド202と、メタリックインク用ヘッド204とを有する。複数のカラーインク用ヘッド202のそれぞれと、メタリックインク用ヘッド204とは、同じ構成のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。また、これらの複数のインクジェットヘッドは、副走査方向(X方向)における位置を揃えて、主走査方向(Y方向)へ並べて配設されている。また、本例において、メタリックインク用ヘッド204は、メタリックインクとして、より具体的に、シルバー色のメタリックインクを用いる。
【0147】
更に、図2等においては図示を省略していたが、ヘッド部12における各インクジェットヘッドは、図15(a)に図示したように、副走査方向へ複数のノズル214が並ぶノズル列212を有する。このうち、それぞれのカラーインク用ヘッド202におけるノズル214は、カラー印刷用のインクのインク滴を吐出するノズルであるカラー印刷用ノズルの一例である。また、メタリックインク用ヘッド204におけるノズル214は、光沢インクのインク滴を吐出するノズルである光沢インク用ノズルの一例である。
【0148】
また、本例において、印刷装置10は、複数のカラーインク用ヘッド202及びメタリックインク用ヘッド204により、マスクデータに基づき、マルチパス方式で印刷を行う。そして、マルチパス方式での動作において、各インクジェットヘッドのノズル列212を、複数の領域に分けて使用する。
【0149】
より具体的に、図示した場合においては、各インクジェットヘッドのノズル214を、副走査方向において、メタリック用領域302、カラー用領域304、及びメタリックカラー用領域306の3つの領域に分割している。このうち、メタリック用領域302は、メタリックインクでの印刷用の領域である。また、カラー用領域304及びメタリックカラー用領域306は、カラー印刷用のインクでの印刷用の領域である。
【0150】
各回の主走査動作において、メタリックインク用ヘッド204は、ノズル列212を構成するノズル214のうち、メタリック用領域302に含まれるノズル214から、インク滴を吐出する。また、メタリックインク用ヘッド204において、メタリック用領域302以外の領域であるカラー用領域304及びメタリックカラー用領域306に含まれるノズル214は、インク滴を吐出しない非吐出ノズルに設定される。
【0151】
また、複数のカラーインク用ヘッド202のそれぞれは、ノズル列212を構成するノズル214のうち、カラー用領域304及びメタリックカラー用領域306に含まれるノズル214から、インク滴を吐出する。また、カラーインク用ヘッド202において、メタリック用領域に含まれるノズル214は、インク滴を吐出しない非吐出ノズルに設定される。
【0152】
ここで、この場合、各領域に含まれるノズル214とは、例えば、副走査方向における位置がその領域の設定範囲と重なるノズル214のことである。また、上記のように、本例においては、カラー印刷用のインクでの印刷用の領域として、カラー用領域304と、メタリックカラー用領域306とを設定している。このうち、カラー用領域304は、通常のカラー印刷用の領域である。この場合、通常のカラー印刷とは、例えば、メタリックインクと重ならない位置に対して行うカラー印刷のことである。また、メタリックカラー用領域306は、メタリックインクと重ねてカラー印刷を行うことで光沢性を有するカラー印刷(メタリックカラー印刷)を行うための領域である。
【0153】
また、カラー用領域304と、メタリックカラー用領域306とは、異なるプロファイルを用いてカラー印刷を行う領域であってよい。この場合、プロファイルとは、例えば、プロセスカラーであるCMYKの各色を用いて様々な色を表現するための設定である。このように構成すれば、例えば、カラー用領域304及びメタリックカラー用領域306のそれぞれに対し、印刷の目的及び条件に合わせ、プロファイルを適切に設定できる。
【0154】
尚、ヘッド部12の構成の変形例においては、例えば、カラー用領域304用の複数のカラーインク用ヘッド202とは別に、メタリックカラー用領域306用の複数のカラーインク用ヘッド202を更に用いること等も考えられる。また、本例のヘッド部12を用いて行う印刷の動作については、後に更に詳しく説明をする。
【0155】
図15(b)は、本例のヘッド部12について簡略化して示す図である。上記のように、本例においては、各インクジェットヘッドのノズル列212を複数の領域に分割して用いる。そして、この場合、ヘッド部12の構成について、図示のように、分割する領域を示すことで簡略化して示すことができる。
【0156】
より具体的に、図15(b)においては、ヘッド部12の各インクジェットヘッドにおけるノズル列212をメタリック用領域302、カラー用領域304、及びメタリックカラー用領域306に分割した構成を示している。また、図中において、距離Lは、副走査方向におけるノズル列212の長さを示している。
【0157】
尚、図15においては、説明の簡略化のため、ヘッド部12の構成について、複数のカラーインク用ヘッド202として、CMYKの各色用のインクジェットヘッドのみを有する構成を図示している。しかし、ヘッド部12は、カラーインク用ヘッド202として、CMYKの各色以外の色用のインクジェットヘッドを更に有してもよい。例えば、C色のライト色であるライトシアン色(Lc)や、M色のライト色であるライトマゼンタ色(Lm)等について、更にカラーインク用ヘッド202を有してもよい。
【0158】
また、図15においては、説明の簡略化のため、各インクジェットヘッドのノズル列212を、均等に3分割した場合の例を示している。この場合、メタリック用領域302、カラー用領域304、及びメタリックカラー用領域306の主走査方向における長さは、L/3になる。
【0159】
しかし、実際の構成においては、例えば、ノズル列212について、更に多くの領域に分割してもよい。また、各領域の副走査方向における長さを互いに異ならせること等も考えられる。そこで、以下、このような構成に関し、更に詳しく説明をする。
【0160】
先ず、領域の分割数を様々に異ならせる構成に関し、説明をする。図16は、ノズル列の分割について更に詳しく説明をする図である。図16(a)は、ノズル列を分割する領域の数(以下、ヘッド分割数と言う)の一例を示す。本例において、印刷装置10(図1参照)は、例えば、ヘッド分割数を示す印刷の設定をユーザから受け取る。より具体的には、例えば、このような印刷の設定として、ヘッド分割数と対応づけられたレベル(Lv1~Lv8)の指示を受け取る。そして、この指示に応じて、レベルに応じたヘッド分割数でノズル列を分割して、印刷の動作を行う。
【0161】
尚、マルチパス方式で印刷を行う場合、他の条件が同じであれば、印刷パスの幅は、ヘッド分割数が多くなるほど、狭くなる。そのため、本例において、他の条件が同じである場合、レベルが高くなるほど、印刷パスの幅が小さくなる。
【0162】
図16(b)は、ヘッド分割数を5にした場合の領域の設定の例を示す図であり、各インクジェットヘッドのノズル列について、メタリック用領域302、カラー用領域304、及びメタリックカラー用領域306に加えて、2つの非吐出領域308を含めて分割した場合の例を示す。非吐出領域308は、カラーインク用ヘッド202及びメタリックインク用ヘッド204のいずれにおいてもインク滴を吐出しない領域である。
【0163】
また、この構成において、2つの非吐出領域308のそれぞれは、メタリック用領域302とカラー用領域304との間、及び、カラー用領域304とメタリックカラー用領域306との間にそれぞれ設定される。これにより、ノズル列を分割する各領域は、副走査方向における一方側から、メタリック用領域302、非吐出領域308、カラー用領域304、非吐出領域308、及びメタリックカラー用領域306の順で並ぶ。
【0164】
ここで、マルチパス方式で印刷を行う場合、ヘッド部12は、間に副走査動作を挟んで主走査動作を繰り返すことにより、印刷を行う。そして、各回の副走査動作においては、印刷のパス数及びノズル列の分割の仕方等に応じて決まる距離だけ、副走査方向へ、媒体に対して相対的にヘッド部12を移動させる。また、これにより、副走査方向において、ノズル列を分割した各領域は、ノズル列の一方側の領域から順番に、媒体上の各位置と重なることになる。また、この場合、媒体の各位置において、非吐出領域308と重なっている間は、インク滴が吐出されない期間になる。そのため、非吐出領域308を設定することにより、例えば、インクを乾燥させるための時間をより適切に確保できる。
【0165】
また、上記においても説明をしたように、本例においては、メタリック用領域302及びメタリックカラー用領域306を設定して印刷を行うことにより、メタリックカラー印刷を行う。図16(c)は、メタリックカラー印刷を行う場合に形成されるインクの層の一例を示す。メタリックカラー印刷を行う場合、先ず、印刷をすべき領域に対し、メタリックインク用ヘッド204(図15参照)においてメタリック用領域302に含まれるノズルからインク滴を吐出することにより、メタリックインクの層であるメタリック層402を形成する。また、その後、印刷のパス数に応じて決まる回数の主走査動作を行った後に、複数のカラーインク用ヘッド202(図15参照)においてメタリックカラー用領域306に含まれるノズルにより、メタリック層402の上にインク滴を吐出する。また、これにより、メタリック層402に重ねて、カラー印刷用のインクの層であるカラーインク層404を形成する。このように構成すれば、例えば、メタリックカラー印刷を適切に行うことができる。
【0166】
また、この場合、例えば、非吐出領域308を設定することにより、メタリック層402の形成した後、カラーインク層404を形成するまでの間に、メタリック層402を乾燥させる時間をより適切に確保することができる。そのため、このように構成すれば、例えば、メタリックカラー印刷をより適切に行うことができる。
【0167】
また、ノズル列に対する領域の設定については、上記に限らず、様々な設定を行うことも考えられる。また、その設定として、例えば、カラー印刷用のインクによる画像の品質を保ちつつ、光沢インクにより高い光沢性をより適切に得ることが可能な設定等も考えられる。そこで、以下、本例のヘッド部12を用いて行う印刷の動作に関し、ノズル列に対する領域の様々な設定等を説明する。
【0168】
図17は、本例のヘッド部12におけるノズル列に対して行う領域の設定の例を示す図である。また、より具体的に、図17においては、図中に符号A~Fを付して示した6種類の設定(以下、設定A~F等と言う)の例を示す。これらの各設定は、720x1440dpiで印刷を行う場合の設定である。
【0169】
また、これらの各設定において、印刷装置10(図1参照)は、図中に示した印刷の条件を用いて、マルチパス方式で印刷を行う。また、印刷の条件に応じて、各回の主走査動作において、主走査駆動部14(図1参照)は、ヘッド部12における各インクジェットヘッドの各ノズルから、インク滴を吐出させる。また、印刷装置10は、例えば、少なくとも一部の領域に対し、シルバー色のインクで形成したメタリック層上にカラーインク層を重ねることで、メタリックカラー印刷を行う。
【0170】
また、印刷の条件としては、より具体的に、印刷のパス数(Pass)、ヘッド分割数(Lv)、及び使用するマスクデータ(マスク)を設定する。また、図17に示した場合において、印刷のパス数としては、16又は32のいずれかを設定する。ヘッド分割数としては、分割する領域の数に応じて、図16(a)に示したレベルを設定する。
【0171】
また、マスクデータとしては、図中に既存又はシルバー用と示したマスクデータを使用する。このうち、既存のマスクデータを用いる設定は、例えば、公知の一般的なマスクデータを用いてマルチパス方式での印刷を行う設定である。また、本例において、既存のマスクデータを用いる設定では、例えば、メタリック用領域302、カラー用領域304、及びメタリックカラー用領域306のそれぞれに対し、同じマスクデータを用いる。
【0172】
また、シルバー用のマスクデータを用いる設定は、メタリックインクを用いる場合に特に適したマスクデータを用いる設定である。本例において、シルバー用のマスクデータを用いる設定では、メタリック用領域302に対して用いるマスクデータと、カラー用領域304及びメタリックカラー用領域306に対して用いるマスクデータとを異ならせる。
【0173】
尚、この場合、メタリック用領域302に対して用いるマスクデータとは、例えば、メタリックインク用ヘッド204においてメタリック用領域302に含まれるノズルに適用するマスクデータのことである。また、カラー用領域304及びメタリックカラー用領域306に対して用いるマスクデータとは、例えば、カラーインク用ヘッド202においてカラー用領域304及びメタリックカラー用領域306に含まれるノズルに適用するマスクデータのことである。シルバー用のマスクデータを用いる設定については、設定D等の説明と合わせて、以下において更に詳しく説明する。
【0174】
また、図17において、印刷の設定の下には、図15(b)で各領域を示したのと同様にして、設定A~Fのそれぞれにおける領域の分割の仕方を示している。また、各領域を示す四角形の中には、その領域内のノズルに対応する主走査ドット密度について、基準の密度に対する相対値を示している。また、基準の密度としては、既存のマスクデータを用いて16パスでの印刷を行う場合である設定Aでの主走査ドット密度を100とする密度を用いている。
【0175】
また、この場合、主走査ドット密度とは、例えば、予め設定された回数の主走査動作で一のノズルにより媒体上に形成するインクのドットの密度のことである。また、主走査ドット密度は、例えば、所定の回数の主走査動作においてインク滴を吐出する画素の密度と考えることもできる。
【0176】
また、インク滴を吐出する画素の密度とは、例えば、印刷の解像度に応じて決まる画素の並びのうち、主走査動作においてインク滴を吐出する画素の割合に対応する密度である。また、より具体的に、インク滴を吐出する画素の密度とは、例えば、一定の面積に含まれる画素の数に対する、インク滴を吐出する画素の数の割合であってよい。また、インク滴を吐出する画素の密度は、所定回数の主走査動作による記録デューティ又は記録密度と考えることもできる。また、本例において、主走査ドット密度は、より具体的に、例えば、1回の主走査動作でのインクのドットの密度である。主走査ドット密度は、予め設定された複数回の主走査動作でのインクのドットの密度であってもよい。
【0177】
更に、図17において、領域の分割の仕方の下には、各設定の特徴として、シルバーインクの密度(Silver密度)、カラー印刷用のインクの密度(Color密度)、印刷パスの幅(Pass幅)、メタリックカラー印刷時の待ち時間(S→MC待ち時間)、及び印刷速度について、設定Aでの値を100とした場合の相対値を示している。この場合、シルバーインクの密度とは、メタリックインク用ヘッド204においてメタリック用領域302に含まれるノズルに対応する主走査ドット密度である。カラー印刷用のインクの密度とは、カラーインク用ヘッド202においてカラー用領域304及びメタリックカラー用領域306に含まれるノズルに対応する主走査ドット密度である。
【0178】
また、印刷パスの幅とは、一の印刷パスにより印刷される領域の副走査方向における幅である。メタリックカラー印刷時の待ち時間とは、メタリックカラー印刷を行う領域において、メタリック層を形成した後、カラーインク層の形成を開始するまでの時間である。また、印刷速度とは、設定A~Fのそれぞれに応じて決まる印刷装置10による印刷の速度(印字速度)である。
【0179】
続いて、設定A~Fのそれぞれについて、更に詳しく説明をする。図17に示した設定のうち、設定Aは、図15(b)に示した場合と同様の設定を行う場合の例であり、各インクジェットヘッドのノズル列に対し、同じ幅のメタリック用領域302、カラー用領域304、及びメタリックカラー用領域306を設定する。この場合、各領域の幅とは、副走査方向における長さのことである。また、設定Aにおいて、マスクデータとしては、既存のマスクデータを用いる。そのため、設定Aを用いる場合、カラーインク用ヘッド202のノズルと、メタリックインク用ヘッド204のノズルとは、媒体上に、同じ主走査ドット密度でインクのドットを形成する。
【0180】
より具体的に、設定Aで印刷を行う場合、図16(a)においてLv1として示したレベルでの領域の分割を行い、メタリック用領域302、カラー用領域304、及びメタリックカラー用領域306を設定する。そして、印刷時には、印刷のパス数を16としたマルチパス方式の動作により、媒体に各位置に対し、先ず、メタリックインク用ヘッド204においてメタリック用領域302に含まれているノズルにより、シルバー色のインクによる印刷を行う。これにより、媒体上に、メタリック層を形成する。また、メタリック層と重ならない領域に対し、カラーインク用ヘッド202においてカラー用領域304に含まれるノズルにより、カラーインク層を形成する。更に、メタリック層の上に、カラーインク用ヘッド202においてメタリックカラー用領域306に含まれるノズルにより、カラーインク層を形成する。
【0181】
このように構成すれば、例えば、メタリックインク及びカラー印刷用のインクによる印刷を適切に行うことができる。また、例えば、メタリックインクとカラー印刷用のインクとを重ねるメタリックカラー印刷等についても、適切に行うことができる。
【0182】
設定Bは、非吐出領域308を設定する場合の例である。より具体的に、設定Bでは、設定Aとの相違点として、図中に示すように、メタリック用領域302とカラー用領域304との間、及びカラー用領域304とメタリックカラー用領域306との間に、非吐出領域308を設定する。このように構成した場合も、メタリック用領域302、カラー用領域304、及びメタリックカラー用領域306を設定して印刷を行うことにより、例えば、メタリックインク及びカラー印刷用のインクによる印刷を適切に行うことができる。
【0183】
また、この場合、非吐出領域308を設定することにより、例えば、設定Aと比べて、メタリックカラー印刷時の待ち時間をより長い時間にすることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、上にカラーインク層を重ねる前に、メタリック層をより適切に乾燥させることができる。また、これにより、メタリックカラー印刷をより適切に行うことができる。
【0184】
設定Cは、設定Aと比べて主走査ドット密度を小さくした場合の例である。より具体的に、設定Cでは、設定Aとの相違点として、図中に示すように、各領域に対応する主走査ドット密度を設定Aと比べて半分にしている。また、これに伴い、印刷のパス数を2倍の32にしている。このように構成した場合も、メタリック用領域302、カラー用領域304、及びメタリックカラー用領域306を設定して印刷を行うことにより、例えば、メタリックインク及びカラー印刷用のインクによる印刷を適切に行うことができる。
【0185】
また、この場合、印刷のパス数が多くなるため、例えば、設定Aと比べて、メタリックカラー印刷時の待ち時間がより長い時間になる。そのため、このように構成すれば、例えば、上にカラーインク層を重ねる前に、メタリック層をより適切に乾燥させることができる。また、これにより、メタリックカラー印刷をより適切に行うことができる。
【0186】
このように、設定A~Cを用いることにより、メタリックインク及びカラー印刷用のインクによる印刷を適切に行うことができる。しかし、図中に示しているように、設定A~Cでは、メタリック用領域302、カラー用領域304、及びカラー用領域304に全てに対し既存のマスクデータを用い、メタリックインクによる印刷と、カラー印刷用のインクによる印刷とを同じ設定で行っている。そのため、この場合、メタリックインクにとって好ましい印刷の条件と、カラー印刷用のインクにとって好ましい印刷の条件とを、両立することが難しい場合がある。より具体的には、例えば、カラー印刷用のインクについて色間滲み等が生じること等を適切に防ぎつつ、光沢インクについて、高い光沢性を適切に得ることが難しくなる場合がある。
【0187】
これに対し、以下において説明をする設定D~Fでは、既存のマスクデータではなく、シルバー用のマスクデータを用いる。これにより、例えば、メタリックインクにとって好ましい印刷の条件と、カラー印刷用のインクにとって好ましい印刷の条件とを両立している。また、この場合、例えば、メタリックインク用ヘッド204のノズルに対して用いるマスクデータと、カラーインク用ヘッド202のノズルに対して用いるマスクデータとを異ならせることにより、メタリックインク用ヘッド204のノズルに対応する主走査ドット密度と、カラーインク用ヘッド202のノズルに対応する主走査ドット密度とを異ならせること等が考えられる。
【0188】
尚、設定D~Fについて、図17では、説明をより簡略にするために、ヘッド分割数の設定をLv1としている。しかし、実際の設定時には、ヘッド分割数がより多くなるレベル(例えばLv3)の設定を用いて、各領域を分割してもよい。また、上記及び以下に説明をする点を除き、設定D~Fは、設定A~Cと同一又は同様の設定であってよい。
【0189】
以下、設定D~Fについて、更に詳しく説明をする。先ず、設定D、Eについて、説明をする。設定D及び設定Eにおいては、例えば、図中に示すように、カラー印刷用のインクの密度がシルバーインクの密度より小さくなるように設定する。例えば、設定Dの場合、シルバーインクの密度が100、カラー印刷用のインクの密度が50になるように、各領域のノズルに対応する主走査ドット密度を設定する。また、設定Eの場合、シルバーインクの密度が100、カラー印刷用のインクの密度が75になるように、各領域のノズルに対応する主走査ドット密度を設定する。
【0190】
また、この場合、印刷のパス数等の条件は、例えば、各領域のノズルに対応する主走査ドット密度に応じて設定する。また、例えば設定Aと比べて各領域の幅が変化するのに応じて、非吐出領域308を適宜設定する。例えば、設定Dの場合、メタリック用領域302とカラー用領域304との間に、非吐出領域308を設定する。また、設定Eの場合、更に、カラー用領域304とメタリックカラー用領域306との間に、非吐出領域308を設定する。また、この場合、ヘッド分割数のレベルは、設定する領域の数に応じて設定する。
【0191】
このように構成した場合、シルバー色のインクについて、より高い主走査ドット密度でインクのドットを形成することにより、例えば、媒体上でインクのドットが接触する条件をより設定しやすくなる。また、カラー印刷用のインクについては、より低い主走査ドット密度でインクのドットを形成することにより、媒体上でインクのドットが接触しない条件をより設定しやすくなる。また、この場合、より具体的に、シルバーインクの密度について、それぞれのドットが他のいずれかのドットと媒体上で接触する主走査ドット密度にすることが好ましい。また、カラー印刷用のインクの密度について、それぞれのドットが他のいずれのドットとも媒体上で接触しない主走査ドット密度にすることが好ましい。
【0192】
このように構成すれば、例えば、カラー印刷用のインクについて色間滲み等が生じること等を適切に防ぎつつ、光沢インクについて、高い光沢性を適切に得ることができる。また、これにより、例えば、カラー印刷用のインクによる画像の品質を保ちつつ、光沢インクにより高い光沢性を適切に得ることができる。
【0193】
また、メタリックカラー印刷を行う場合等のように、メタリック層の上に他のインク(カラー印刷用のインク)のインク滴を吐出する場合、例えば主走査ドット密度が高い状態で、一度の多量のインク滴を吐出すると、他のインクによりメタリックインクが浸食されやすくなる場合がある。また、その結果、印刷の品質が低下するおそれがある。
【0194】
これに対し、設定D、Eのようにした場合、例えば、カラー印刷用のインクに対する主走査ドット密度を低い密度にすることにより、カラー印刷用のインクによるメタリックインクの浸食がより生じにくい構成を実現できる。また、これにより、印刷品質の低下を適切に防ぐことができる。
【0195】
また、設定Eにおいては、例えば、設定Dと比べて非吐出領域308の合計幅を大きくすることで、メタリックカラー印刷時の待ち時間をより長い時間にしている。そのため、このように構成すれば、例えば、上にカラーインク層を重ねる前に、メタリック層をより適切に乾燥させることができる。また、これにより、メタリックカラー印刷をより適切に行うことができる。
【0196】
ここで、設定D、Eの特徴については、例えば、メタリックインク用ヘッド204のノズルに第1の主走査ドット密度でインクのドットを形成させ、カラーインク用ヘッド202のノズルに、第1の主走査ドット密度よりも小さな第2の主走査ドット密度でインクのドットを形成させる設定であるとも言える。このように構成すれば、例えば、メタリックインク用ヘッド204及びカラーインク用ヘッド202のそれぞれにおけるノズルに対し、主走査ドット密度を適切に設定できる。
【0197】
また、例えば、予め設定された領域を予め設定された濃度で塗りつぶす動作を行うために必要な印刷のパス数をベタ印字パス数と定義した場合、メタリックインク用ヘッド204及びカラーインク用ヘッド202のそれぞれのノズルに対して使用するマスクデータについて、メタリックインク用ヘッド204のノズルで塗りつぶしを行う場合のベタ印字パス数が、カラーインク用ヘッド202のノズルで塗りつぶしを行う場合のベタ印字パス数よりも小さくなるようなマスクデータを使用する設定とも言える。このように構成すれば、例えば、メタリックインク用ヘッド204及びカラーインク用ヘッド202のそれぞれにおけるノズルにより、第1の主走査ドット密度及び第2の主走査ドット密度のそれぞれに応じた印刷のパス数を用いて、適切にインクのドットを形成できる。
【0198】
また、上記においても説明をしたように、シルバー色等のメタリックインクを用いる場合、ある程度以上の高い密度でインク滴を吐出しなければ、適切に光沢性を発揮させることができない場合がある。そのため、インク滴の打ち込み量(印字密度)について、ある一定以上にすることが望まれる。また、必要な打ち込み量は、印刷のパス数等によっても変化する。より具体的には、例えば、印刷のパス数が多くなると、必要な打ち込み量は増加する。また、例えば、単位面積あたりに一回に落ちるインク量が多いほど、メタリックインクの輝度が出やすいとも言える。
【0199】
また、メタリックインクで印刷を行う場合、ある程度の乾燥時間を設けないと、輝度が低下しやすい。また、印刷のパス数をある程度以上にしないと、スジ等が発生して、画質の劣化が生じやすい。特に、例えばメタリックカラー印刷等を行う場合、メタリックカラー印刷時の待ち時間を適切に設定し、ある程度の乾燥時間を設けないと、輝度が落ちる場合がある。また、メタリックカラー印刷を行う場合、カラー印刷用のインクの吐出量(印字量)が多いと、輝度を損なう場合がある。
【0200】
これに対し、設定D、Eを用いた場合、上記においても説明をしたように、メタリックインク(シルバー色のインク)について、高い主走査ドット密度でインクのドットを形成することにより、インク滴の打ち込み量を適切に高めることができる。また、例えば、メタリックカラー印刷時の待ち時間を適切に設定し、十分な乾燥時間を適切に確保することもできる。また、メタリックインクについて主走査ドット密度を高めることにより、インクの量が少ない場合でも、高い輝度を適切に得ることが可能になる。更には、メタリック層の上にカラー印刷用のインク滴が一度に多く吐出されること等も適切に防ぐことができる。そのため、このように構成すれば、例えば、メタリックインク及びカラー印刷用のインクを用いた印刷を、より適切に行うことができる。
【0201】
尚、図17に示した各設定において、メタリックインクのドットのサイズと、カラー印刷用のインクとは、例えば同一であってよい。しかし、メタリックカラーの印刷時のように、複数のインクの層を重ねる場合、例えば、インクのドットのサイズについて、下層であるメタリック層を構成するインクのドットのサイズよりも、上層であるカラーインク層を構成するインクのドットのサイズが小さくなるように設定することも考えられる。このように構成すれば、例えば、カラー印刷用のインクによるメタリックインクの浸食をより適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、印刷の解像度が高い場合等においても、カラー印刷用のインク及びメタリックインクによる印刷をより適切に行うことができる。
【0202】
また、上記の各設定(設定A~E)において、同じ領域内の各ノズルに対しては、同じ主走査ドット密度を設定する。しかし、更なる他の設定においては、例えば、領域内の一部のノズルに対し、他のノズルとは異なる主走査ドット密度でインクのドットを形成させてもよい。
【0203】
設定Fは、メタリックインク用ヘッド204においてメタリック用領域302に含まれるノズルについて、一部のノズルの主走査ドット密度を異ならせた場合の例である。この場合、例えば、メタリックインク用ヘッド204においてメタリック用領域302に含まれるノズルの並びについて、並びの端のノズルに対応する主走査ドット密度を小さくすること等が考えられる。より具体的に、この構成は、例えば、メタリックインク用ヘッド204においてメタリック用領域302に含まれるノズルの並びに対し、並びの中央部のノズルに第1の主走査ドット密度でインクのドットを形成させ、かつ、並びにおける少なくとも一方の端のノズルに、第1の主走査ドット密度よりも小さな第3の主走査ドット密度でインクのドットを形成させる構成と考えることができる。
【0204】
このように構成した場合、例えば、各回の主走査動作によりメタリックインクで印刷を行う印刷領域のうち、境界部分の主走査ドット密度を低く設定することができる。また、これにより、境界が目立ってバンディングが発生すること等を適切に抑えることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、バンディング等の発生を抑制しつつ、高い光沢性を適切に得ることができる。また、これにより、例えば、メタリックインク及びカラー印刷用のインクを用いた印刷を、より適切に行うことができる。
【0205】
尚、設定Fは、例えば、設定Eでの主走査ドット密度の設定に対し、メタリックインク用ヘッド204においてメタリック用領域302に含まれるノズルの主走査ドット密度を低くした設定であってよい。この場合、図中に示したシルバーインクの密度は、例えば、メタリックインク用ヘッド204においてメタリック用領域302に含まれるノズルの間での、平均の主走査ドット密度であってよい。
【0206】
また、図1等に関連して説明をしたように、本例において、印刷装置10は、媒体を搬送することで、ヘッド部12に副走査動作を行わせる。そして、この場合、ノズルの並びにおける少なくとも一方の端とは、例えば、媒体の搬送方向における上流側又は下流側の少なくとも一方の端のことである。また、この場合、ノズルの並びにおける両端のノズルに対応する主走査ドット密度を、並びの中央部のノズルに対応する主走査ドット密度よりも小さくすることが好ましい。
【0207】
また、ノズル列に対して行う領域の設定としては、上記の設定に限らず、更に他の設定を用いてもよい。例えば、上記の設定に対し、非吐出領域308をなくした設定を用いること等も考えられる。より具体的には、例えば、乾燥性の高いインクを用いる場合等で、インクの乾燥に要する時間が短い場合、設定Eにおける非吐出領域308をなくすこと等が考えられる。この場合、設定Eに対し、非吐出領域308となっている領域にまでカラー用領域304の領域を広げることが考えられる。すなわち、この場合、設定Eにおいて、2個の非吐出領域308及びカラー用領域304になっている領域を全て、カラー用領域304として用いることになる。このように構成すれば、例えば、カラー用領域304として広い領域を確保することにより、カラー印刷の品質をより高めることができる。
【0208】
続いて、本例の構成に対して考えられる更なる変形例等について、説明をする。上記においては、主に、図2(a)や図15(a)に示した構成のヘッド部12を用いる場合について、説明をした。しかし、ヘッド部12の具体的な構成については、様々に変形すること等も考えられる。
【0209】
より具体的には、例えば、図2(a)や図15(a)に示した構成のヘッド部12において、メタリックインク用のノズル列と、カラー印刷用のノズル列は、別のインクジェットヘッドに形成されている。しかし、ヘッド部12の構成の変形例においては、メタリックインク用のノズル列と、カラー印刷用ノズルとを、例えば、一のインクジェットヘッドに形成することも考えられる。
【0210】
また、上記においても説明をしたように、ヘッド部12は、カラーインク用ヘッド202として、例えばライトシアン色(Lc)やライトマゼンタ色(Lm)等の、CMYKの各色以外の色用のインクジェットヘッドを更に有してもよい。また、この場合、メタリック層とは別の領域に印刷を行う通常のカラー印刷を行う場合において、ライトシアン色及びライトマゼンタ色用のカラーインク用ヘッド202を更に用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、通常のカラー印刷をより高い品質で行うことができる。
【0211】
また、この場合、メタリックカラー印刷を行うためにメタリック層に重ねてカラー印刷を行う場合には、ライトシアン色及びライトマゼンタ色用のカラーインク用ヘッド202を用いずに、CMYK用のカラーインク用ヘッド202のみでカラー印刷を行うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、メタリックカラー印刷をより適切に行うことができる。
【0212】
また、メタリックインクを着弾させる着弾面は、媒体上に限らず、なんらかのインクの層上にしてもよい。例えば、メタリックカラー印刷を行う場合、カラーインク層の上にメタリック層を形成してもよい。この場合、メタリック用領域302、カラー用領域304、メタリックカラー用領域306を設定する位置は、層を重ねる順番に応じて、適宜変更することが好ましい。
【0213】
また、上記においては、主に、メタリックインク中の顔料を配向させる時間を確保する特徴に着目して、メタリックインクの光沢性が適切に得られる構成について、説明をした。しかし、メタリンクインクの光沢性を更に適切に得るためには、インクの層を十分に平坦化し、インクの層の光沢性を高めること等が好ましい場合もある。そして、この観点で考えた場合も、本例の構成においては、インクのドットが互いに接触することにより、ドットが平坦化しやすい構成になっていると考えることができる。そのため、本例においては、この点でも、メタリックインクについて、より高い光沢性を適切に得られる構成であると言える。
【0214】
また、ドットを互いに接触させてインクの層をより適切に平坦化させるという観点で考えた場合、メタリックインクとして、インクを乾燥させることが必要なインク(ソルベントインク等)に限らず、乾燥によらずにインクを定着させるインクを用いること等も考えられる。また、このようなインクとして、例えば紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型インク(UVインク)等を用いることも考えることができる。この場合も、インクのドットを互いに接触させることにより、インクをより短時間で平坦化させることができる。また、これにより、単独のインクのドットではマット状になりやすく、インクが広がりにくい紫外線硬化型インク等を用いる場合にも、インクを硬化させる前にインクのドットを十分に平坦化させ、インクの層の光沢性を適切に高めることができる。
【0215】
尚、この場合、例えば、硬化前のインクに含まれる液体成分について、インクの溶媒と考えることができる。例えば、紫外線硬化型インクに含まれるモノマー等について、インクの溶媒と考えることもできる。
【0216】
また、インクの層を平坦化するという特徴に着目した場合、上記において説明をした印刷の設定等について、メタリックインク等に限らず、より一般的に、予め設定された領域を塗りつぶす用途のインク(以下、ベタ印字用インクと言う)に適用することも考えられる。この場合、予め設定された領域を塗りつぶすとは、例えば、印刷装置において予め設定された所定の濃度(例えば100%の濃度)で、インク滴を吐出することである。また、この所定の濃度は、例えば、印刷の解像度に応じて設定される全ての画素の位置に対し、インク滴を吐出する濃度である。
【0217】
また、より具体的に、ベタ印字用インクとしては、メタリックインク以外にも、例えば、透光性のクリア色のインクであるクリアインク等のオーバーコート用のインクや、下地の印刷等に用いる所定の色(例えば白色等)のインクを用いることが考えられる。そして、このような場合にも、ベタ印字用インクに対応する主走査ドット密度について、ある程度以上の高い密度に設定することが望ましいと言える。より具体的には、例えば、各回の主走査動作で形成するそれぞれのドットが液体の状態の他のいずれかのドットと媒体上で接触する主走査ドット密度とすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、液体の状態のインクのドットを互いに接触させることにより、インクのドットについて、個別のドット形状を保たせずに、適切に平坦化させることができる。また、これにより、例えば、一定の領域に対し、より均一に塗りつぶしを行うことができる。また、例えば、インクの層を十分に平坦化し、グロス状の印刷を適切に行うことができる。
【0218】
また、このように構成した場合、画像の印刷に用いるカラー印刷用のインクについては、ベタ印字用インクよりも低い主走査ドット密度を設定することができる。また、これにより、例えば、色間滲み等を適切に防ぐことができる。
【0219】
また、このような構成については、例えば、予め設定された領域を塗りつぶす用途のインクのインク滴を吐出するノズルであるベタ印字用ノズルに第1の主走査ドット密度でインクのドットを形成させ、カラー印刷用ノズルに、第1の主走査ドット密度よりも小さな第2の主走査ドット密度でインクのドットを形成させる構成であると言える。このように構成すれば、例えば、ベタ印字用インク、及びカラー印刷用のインクのそれぞれについて、好ましい主走査ドット密度を適切に設定できる。また、これにより、例えば、カラー印刷用のインクによる画像の品質を保ちつつ、ベタ印字用インクによる塗りつぶしをより適切に行うことができる。
【0220】
尚、この場合、ベタ印字用ノズルは、例えば、ベタ印字により、カラー印刷用のインクの層と重なるインクの層を形成してもよい。例えば、ベタ印字用インクとしてクリアインクを用いる場合、カラー印刷用のインクの層の上に、クリアインクの層を形成することが考えられる。また、ベタ印字用ノズルは、ベタ印字用インクの層を、カラー印刷用のインクの層の下に形成してもよい。例えば、メタリックカラー印刷を行う場合、メタリック層をカラー印刷用のインクの層の下に形成すること等が考えられる。
【0221】
続いて、上記の構成においてメタリックインクを用いて印刷を行うことで得られる効果について、補足説明を行う。図18は、メタリックインクによる印刷について説明をする図である。図18(a)は、メタリックインクのドットの重なり方の一例を示す。図18(b)は、使用するメタリックインの特性等の一例を示す。尚、説明の便宜上、以下の説明においては、図1~17を用いて説明をした本発明の構成を総称して、本例と呼ぶ。
【0222】
主に図1図14等を用いて説明をしたように、メタリックインクを用いて印刷を行う場合、ドット間隔を十分に小さくすることにより、高い光沢性を得ることができる。そして、この場合、顔料の配向性を高めることが可能になるため、例えばサイズの小さな顔料を用いた場合であっても、十分に高い光沢性を得ることが可能になる。より具体的には、アルミニウムの微粒子の顔料を含むメタリックインクを用いる場合において、例えば顔料の平均粒子径が0.5μm以下(例えば、0.1~0.5μm程度、好ましくは、0.2~0.5μm程度)であったとしても、十分な光沢度を適切に得ることが可能になる。
【0223】
ここで、インクジェットヘッドでメタリックインクのインク滴を吐出する場合、顔料のサイズが大きいと、ノズルの詰まり等の吐出不良が生じやすくなる。これに対し、本例によれば、例えば、上記のように、サイズな小さな顔料をより適切に用いることが可能になる。また、これにより、インクジェットヘッドにおいて、メタリックインクをより適切に使用できる。
【0224】
尚、本例におけるメタリックインク(ソルベントメタリックインク)として、具体的には、例えば、色材(アルミニウム)、溶剤、バインダー、及び添加材を含むインク等を好適に用いることができる。この場合、合計で100重量%になる組成の一例として、例えば、色材(アルミニウム)を4重量%含み、溶剤として、BCA(ブチルグリコールアセテート)を56重量%、GBL(γ-ブチロラクトン)を18重量%、PMA(プロピレングリコールモノメチル-アセテート)を18重量%それぞれ含み、バインダーとして、日新工業社製ソルバインC5Rを2重量%含み、添加材を2重量%含むインク等を用いることが考えられる。
【0225】
また、図4及び図5等を用いて説明をしたように、メタリックインクを用いる場合、媒体上でのドット間隔を大きくすると、光沢度の低下が顕著になる。これに対し、本例においては、メタリックインクのドットを媒体上で接触させ、ある程度の重なりを生じさせることにより、乾燥までの時間を確保し、顔料を十分に整列(配向)させる。また、これにより、輝度を高め、高い光沢性を適切に得ることができる。
【0226】
しかし、この場合、ドットの間隔について、必ずしもより小さければよりよいわけではなく、ドット間隔がある程度よりも小さくなると、高い光沢性が得られるとしても、ピークの値と比べ、光沢度が低下する。そのため、最も効果的に高い光沢度を得るためには、ドット間の重なり量について、より好ましい範囲に設定することが望まれる。
【0227】
そして、この場合、例えば、ドットの重なり量がドットの径の半分程度になるように、ドット間距離を設定することが好ましい。より具体的には、図4及び図5を用いて説明をした実験等の条件の場合、例えば図18(a)に示すように、72μm程度のドットの径に対し、ドット間距離を35.3μm程度にすることが最適である。また、この条件は、ドットの直径に対して約50%、1個のドットの面積に対して約30%の重なりが生じる条件である。また、この場合、使用するメタリックインクは、例えば、図18(b)に示す特性のメタリックインクである。
【0228】
尚、この条件について、より一般化して示した場合、例えば、インクジェットヘッドで使用可能な光沢インク(メタリックインク)を用いる場合について、ドットの重なりを直径に対して50%程度(例えば40~60%程度)にすることが好ましいといえる。このように構成すれば、例えば、高い光沢度をより適切に得ることができる。
【0229】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0230】
本発明は、例えば印刷装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0231】
10・・・印刷装置、12・・・ヘッド部、14・・・主走査駆動部、16・・・副走査駆動部、18・・・プラテン、20・・・駆動信号出力部、22・・・制御部、50・・・媒体、102・・・キャリッジ、104・・・ガイドレール、202・・・カラーインク用ヘッド、204・・・メタリックインク用ヘッド(光沢インク用ヘッド)、212・・・ノズル列、214・・・ノズル、302・・・メタリック用領域、304・・・カラー用領域、306・・・メタリックカラー用領域、308・・・非吐出領域、402・・・メタリック層、404・・・カラーインク層
図1
図2
図3
図4
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図18