(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】検査対象物の密閉性をチェックするための漏れ検出器
(51)【国際特許分類】
G01M 3/20 20060101AFI20220915BHJP
F04B 37/16 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
G01M3/20 D
F04B37/16 D
(21)【出願番号】P 2020521883
(86)(22)【出願日】2018-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2018075823
(87)【国際公開番号】W WO2019076583
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-07-26
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511148259
【氏名又は名称】ファイファー バキユーム
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン クーロン
(72)【発明者】
【氏名】シリル ノミヌ
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-518256(JP,A)
【文献】特表2016-532122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00-3/40
F04B 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の密閉性をチェックするための漏れ検出器(1)であって、
前記漏れ検出器は、
-検査対象物に接続するための1つの検出入口(2)と、
-1つのポンプ装置(3)と、
但し、前記ポンプ装置(3)は、
-第1駆動モータ(21、25)、少なくとも1つの第1ポンピングステージ(T1、T2)、及び、吸入口(12)と吐出口(13)の間に直列に設けられた1つの第2ポンピングステージ(T3)を含む第1粗引き真空ポンプ(5;19)
と、
-第2駆動モータ(23、27)、吸入口(14)と吐出口(15)の間に直列に設けられた少なくとも1つの第1ポンピングステージ(T1’、T2’)及び1つの第2ポンピングステージ(T3’)を含む第2粗引き真空ポンプ(6;20)と、
-但し、前記各粗引き真空ポンプ(5、6;19、20)の前記各吸入口(12、14)は、第1遮断弁(8)によって前記検出入口(2)に並列に接続されており、
-前記第1遮断弁(8)と前記各粗引き真空ポンプ(5、6;19、20)の前記各吸入口(12、14)の間に第2遮断弁(9)を介して接続された吐出口(17)を有する、ターボ分子真空ポンプ(7)とを含んでおり、
-前記ターボ分子真空ポンプ(7)に接続されたガス検出器(4)とを備えたものにおいて、
少なくとも1つの前記第2粗引き真空ポンプ(6;20)の前記吐出口(15)が、前記第1粗引き真空ポンプ(5;19)の2つの直列のポンピングステージ(T3、T4;T4、T5)の間において、前記第1粗引き真空ポンプ(5;19)に接続されていることを特徴とする漏れ検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の漏れ検出器おいて、
少なくとも1つの前記第2粗引き真空ポンプ(6)の前記吐出口(15)は、前記第1粗引き真空ポンプ(5;19)の前記最後から2番目のポンピングステージ(T3;T4)と前記最後のポンピングステージ(T4;T5)の間に接続されていることを特徴とする漏れ検出器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の漏れ検出器において、
少なくとも2台の前記粗引き真空ポンプ(5、6)はダイヤフラムポンプであり、前記第1粗引き真空ポンプ(5)の前記ポンピングステージ(T1-T4)のダイヤフラムは、前記第1駆動モータ(21)によって駆動され、前記第2粗引き真空ポンプ(6)のポンピングステージ(T1’-T4’)のダイヤフラムは、前記第
2駆動モータ(23)によって駆動されるように構成されていることを特徴とする漏れ検出器。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の漏れ検出器において、
少なくとも2台の前記粗引き真空ポンプ(19、20)には、前記各ポンピングステージ(T1’-T5‘;T1-T5)で反対方向に同期して回転するように駆動されるように構成された2つのロータが含まれ、前記第1粗引き真空ポンプ(19)のロータは、前記第
1駆動モータ(25)によって駆動され、前記第2粗引き真空ポンプ(20)のロータは、前記第
2駆動モータ(27)によって駆動されるように構成されていることを特徴とする漏れ検出器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の漏れ検出器において、
前記ロータはルーツロータであることを特徴とする漏れ検出器。
【請求項6】
請求項1、2、4のいずれか1項に記載の漏れ検出器において、
少なくとも2台の前記粗引き真空ポンプは、スクリューポンプ又はスクロールポンプであることを特徴とする漏れ検出器。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の漏れ検出器において、
少なくとも2台の前記粗引き真空ポンプ(5、6;19、20)は、同一のポンピングステージ構成を備えていることを特徴とする漏れ検出器。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の漏れ検出器において、
少なくとも1台の粗引き真空ポンプ(5、6;19、20)は、並列に設けられた少なくとも2つの第1ポンピングステージ(T1、T2;T1’、T2’)を含んでいることを特徴とする漏れ検出器。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の漏れ検出器において、
少なくとも1台の前記粗引き真空ポンプ(5、6)は、直列に設けられた少なくとも3段のポンピングステージ(T1-T4;T1’-T4‘)を備えていることを特徴とする漏れ検出器。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の漏れ検出器において、
前記第2粗引き真空ポンプ(6;20)の前記2つのポンピングステージ(T3’、T4’;T4’、T5’)の間にパージガスを供給するように構成されたパージ装置(18)を含んでいることを特徴とする漏れ検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の密閉性をチェックするための漏れ検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるスプレー漏れ検出技術では、漏れ検出器を使用して、検査対象物内のガスを低圧に排気している。そして、検査対象物の周囲に、スプレーによってトレーサーガスの豊富な雰囲気が形成される。漏れ検出器は、検査対象物が取り込んだガス中にトレーサーガスが含まれているかどうかをチェックする。
この方法は、検査対象物のリーク部を通過するトレーサーガスの検出に依存している。一般にヘリウム又は水素がトレーサーガスとして使用される。これらのガスは、分子のサイズが小さく移動速度が速いため、他のガスよりも簡単に小さなリーク部を通過するためである。
【0003】
検査対象物の圧力を下げるために、漏れ検出器には、1台の粗引き真空ポンプと、この粗引き真空ポンプの上流に直列に取り付けられたターボ分子真空ポンプで構成されたポンプシステムが含まれている。まず、ターボ分子真空ポンプは、検査対象物からは隔離されている。粗引き真空ポンプを使用して検査対象物の圧力を下げ、そして、圧力が下限閾値と交差して低下した後に、このターボ分子真空ポンプが検査対象物に接続される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
良好な測定感度を得るためには、ポンプシステムによって達成される到達真空圧力は可能な限り低くなければならない。粗引き真空ポンプのポンプ流量は、検査対象物内の圧力をできるだけ低くするのに十分な多さでなければならない。
到達真空圧を下げるための解決策の1つは、多数のポンピングステージを直列に取り付けた1台の粗引き真空ポンプを使用することである。ただし、この構成では、排気中のポンプ流量を増すことはできない。
【0005】
ポンプ流量を増すための1つの解決策は、1台の第2粗引き真空ポンプを1台の第1粗引き真空ポンプと並列に接続することである。しかしながら、この解決策では、到達真空圧力を低下させることができない。逆に、この解決策では、バックグラウンドノイズが大きくなり、微弱なヘリウム信号の検出が困難になる。
さらに、複数台の粗引き真空ポンプ、特にダイヤフラム真空ポンプのポンプ性能は、経年劣化に伴って低下し、達成できる到達真空圧力が高くなる。これでは、真空圧力を下限閾値と交差して低下させて、ターボ分子真空ポンプによるポンピングに切り替えることを実行できない。
【0006】
1つの解決策は、主ターボ分子真空ポンプと粗引き真空ポンプの間に、追加のターボ分子真空ポンプを挿入して使用することである。この追加のターボ分子真空ポンプは、大気圧での検査対象物の排気時に、この査対象物に接続される。ただし、この解決策は比較的コストがかかる可能性がある。さらに、追加のターボ分子真空ポンプによって気体が繰り返し吸収される空気入口は、誤動作の原因となる可能性がある。
【0007】
本発明の目的の1つは、大気圧において多量のポンプ流量を確保ししながら低い到達真空圧力への到達を可能にし、かつ、合理的なコストと設置面積で、長期にわたって堅牢な、漏れ検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明は、検査対象物の密閉性をチェックするための漏れ検出器であって、
前記漏れ検出器は、
-検査対象物に接続するための1つの検出入口と、
-1つのポンプ装置と、
但し、前記ポンプ装置は、
-第1駆動モータ、吸入口と吐出口の間に直列に取り付けられた少なくとも1つの第1、第2ポンピングステージを含む第1粗引き真空ポンプ、
-第2駆動モータ、吸入口と吐出口の間に直列に取り付けられた少なくとも1つの第1、第2ポンピングステージを含む第2粗引き真空ポンプ、
-但し、前記両粗引き真空ポンプの前記各吸入口は、第1遮断弁によって前記検出入口に並列に接続されており、
-前記第1遮断弁と前記両粗引き真空ポンプの前記各吸入口の間に第2遮断弁を介して接続された吐出口を有する、ターボ分子真空ポンプとを含んでおり、
-前記ターボ分子真空ポンプに接続されたガス検出器とを備えたものにおいて、
少なくとも1つの前記第2粗引き真空ポンプの前記吐出口が、前記第1粗引き真空ポンプの2つの直列のポンピングステージの間において、前記第1粗引き真空ポンプに接続されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の背後にあるアイデアは、大気圧でポンピングされるガスを排出するために従来使用されている粗引き真空ポンプの革新的な使用の考え方である。すなわち、1台の粗引き真空ポンプの一方の吐出口を他方の粗引き真空ポンプのポンピングステージの間に接続することにある。
第2粗引き真空ポンプを第1粗引き真空ポンプのポンピングステージ間に接続することにより、少なくとも2台の粗引き真空ポンプの第1ポンピングステージのポンプ流量と、第2粗引き真空ポンプの最後から2番目のポンピングステージと第1粗引き真空ポンプの最後のポンピングステージとを接続することによる、到達真空圧力の低下の両方の効果を得ることができる。
第2粗引き真空ポンプのポンピングステージの吐出口に、第1粗引き真空ポンプの少なくとも1つの最後のポンピングステージが追加されることで、第2粗引き真空ポンプのポンピングステージを通して、到達真空圧力におけるポンピングが効果的になされる。
この配置は直観に反している。むしろ、得られる到達真空圧力は、単一の粗引き真空ポンプで得られる圧力と同じであると考えられる。
【0010】
従って、検査対象物の到達真空圧力を下げることができる。これにより、バックグラウンドのトレーサーガスを減らすことができるため、測定感度を大幅に向上させることができる。
また、到達真空圧力の低下により、粗引きポンプの経年劣化による性能低下に対して余裕を持たせることができる。従って、ポンプの経年劣化に関連して、堅牢性が向上する。
【0011】
本発明の漏れ検出器の1つ又は複数の機能によると、個別に又は組み合わせて得られる以下のような特徴がある。
-少なくとも1台の前記第2粗引き真空ポンプの前記吐出口が、前記第1粗引き真空ポンプの前記最後から2番目のポンピングステージと前記最後のポンピングステージの間に接続されている。
-少なくとも2台の前記粗引き真空ポンプはダイヤフラムポンプである。
-前記第1粗引き真空ポンプのポンピングステージの前記ダイヤフラムは、前記第1駆動モータによって駆動され、前記第2粗引き真空ポンプのポンピングステージの前記ダイヤフラムは、前記第2駆動モータによって移動するように構成されている。
-少なくとも2台の前記粗引き真空ポンプは、スクリューポンプ又はスクロールポンプである。
-少なくとも2台の前記粗引き真空ポンプは、2つのロータ、たとえばルーツロータを含んでいる。
-少なくとも2台の前記粗引き真空ポンプは、各ポンピングステージで反対方向に同期して回転駆動されるように構成された2つのロータを含んでいる。
-前記第1粗引き真空ポンプの前記ロータは、前記第1駆動モータによって駆動され、前記第2粗引き真空ポンプの前記ロータは、前記第2駆動モータによって駆動されるように構成されている。
-少なくとも2台の前記粗引き真空ポンプは、同一のポンピングステージ構成を有している。
-少なくとも1台の前記粗引き真空ポンプは、並列に設けられた少なくとも2つの第1ポンピングステージを含んでいる。
-少なくとも1台の前記粗引き真空ポンプは、直列に設けられた少なくとも3つのポンピングステージを含んでいる。
-前記漏れ検出器は、前記第2粗引き真空ポンプの2つのポンピングステージ間にパージガスを供給するように構成されたパージ装置を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態による漏れ検出器の概略を示す図である。
【
図2】漏れ検出器に接続された検査対象物の時間(秒)の関数として得られる圧力降下特性を示すグラフ(ミリバール単位)であり、曲線Aは、本発明による2台のダイヤフラム粗引き真空ポンプ、曲線Bは共通の吸入口及び共通の吐出口を有する2台のダイヤフラム粗引き真空ポンプの、最大回転速度でのポンピング及び低下した回転速度でのポンピングにおける、特性を示している。
【
図3】本発明の別の実施形態による漏れ検出器の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のさらなる利点及び特徴は、添付の図面と共に、本発明の特定の、しかし決して限定的ではない実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。各図において、同一の要素には同じ参照番号が付されている。
以下の実施形態は例示である。以下の説明は、1つ又は複数の実施形態に言及しているが、これは、各参照符号が同じ実施形態に関すること、又は特徴が単一の実施形態にのみ適用されることを必ずしも意味しない。異なる実施形態の単純な特徴はまた、本発明の他の実施形態とするために、組み合わせ又は交換することができる。
【0014】
粗引き真空ポンプとは、排気されるガスを取り込んで移送し、そして排出する容積式真空ポンプを意味する。粗引き真空ポンプは、従来の使用法として、大気圧でポンピングされるガスを排出できるように構成されている。「上流」は、ガスの流れの方向に関して、他の要素の前に配置される要素を表すために使用されている。逆に「下流」は、ポンピングされるガスの流れの方向に関して次々に配置される要素を表すために使用されており、上流に位置する要素は、下流に位置する要素よりも低圧である。
「到達真空度」は、無視できるバックグラウンドのガスの流れを除いて、ガスの流れがないとき(流量零)に真空ポンプによって得られる最小圧力を意味するように定義されている。
【0015】
図1は、トレーサーガススプレーなどによって、検査対象物の密閉性をチェックするための漏れ検出器1を示している。この漏れ検出器1は、検査対象物に接続するための1つの検出入口2、1つのポンプ装置3及び1つのガス検出器4を備えている。
ポンプ装置3は、1台の第1粗引き真空ポンプ5、少なくとも1台の第2粗引き真空ポンプ6、1台のターボ分子真空ポンプ7、第1、第2遮断弁8、9、及び少なくとも1つのサンプリング弁10a、10bを備えている。
ガス検出器4は、ターボ分子真空ポンプ7、例えば、その吸気口11に接続されている。このガス検出器4は、例えば、質量分析計を備えている。
ターボ分子真空ポンプ7の吐出口17は、第2遮断弁9を介して粗引き真空ポンプ5、6の吸入口12、14に接続されている。
【0016】
漏れ検出器1の検出入口2は、例えば、少なくとも1つのサンプリング弁10a、10bによって、ターボ分子真空ポンプ7の中間ステージに接続されている。
ポンプ装置3は、例えば、少なくとも2つのサンプリング弁10a、10bを含み、各サンプリング弁10a、10bは、ターボ分子真空ポンプ7の別個の中間ステージに接続されているので、サンプリング流量は、漏れ率のレベルに調整することができる。サンプリング弁10a、10bは、検出入口2と第1遮断弁8との間に配置された真空ライン16のパイプのバイパスに接続されている。
【0017】
第2遮断弁9は、第1遮断弁8と粗引き真空ポンプ5、6の吸入口12、14との間の真空ライン16に接続されている。第1遮断弁8が開いているときに、サンプリング弁10a、10b、さらにオプションで第2遮断弁9を閉じると、粗引き真空ポンプ5、6を使用して、検出入口2に接続された検査対象物を排気できる。
【0018】
第1粗引き真空ポンプ5は、この第1粗引き真空ポンプ5の吸入口12と吐出口13との間に次々と直列に設けられた少なくとも1つの第1ポンピングステージT1、T2、及び1つの第2ポンピングステージT3を含んでおり、そこをポンピングされるガスが流れることができる。第1粗引き真空ポンプ5は、第1駆動モータ21を備えている。第1粗引き真空ポンプ5のポンピングステージT1、T2、T3、T4は、この第1粗引き真空ポンプ5の第1ケーシング22内に配置されている。
【0019】
第2粗引き真空ポンプ6は、この第2粗引き真空ポンプ6の吸入口14と吐出口15との間に次々と直列に設けられた少なくとも1つの第1ポンピングステージT1’、T2’、及び1つの第2ポンピングステージT3’を含んでおり、そこをポンピングされるガスが流れることができる。第2粗引き真空ポンプ6は、第2駆動モータ23を備えている。第2粗引き真空ポンプ6のポンピングステージT1’、T2’、T3’、T4’は、この第2粗引き真空ポンプ6の第2ケーシング24内に配置されている。
【0020】
第1、第2駆動モータ21、23は、互いに独立している。各ポンピングステージT1-T4、T1’-T4’は、それぞれの吸入口と吐出口を備えている。同じ粗引き真空ポンプのポンピングステージを並列に接続することができ、複数の吸入口は互いに接続され、複数の吐出口は互いに接続される。
同じ粗引き真空ポンプの複数のポンピングステージは、前のポンピングステージの吐出口(又は排出口)又は幾つか前のポンピングステージの共通の吐出口を接続するそれぞれの段間チャネルによって、後続のステージの吸入口(又は吸気口)又は幾つかの後続のポンピングステージの共通の吸入口に、次々と直列に接続できる。
【0021】
同じ粗引き真空ポンプのポンピングステージT1-T4、T1’-T4’には、ポンプガス容積である掃引容積があり、直列のポンピングステージの場合この掃引容積は順次減少し(又は同じであり)、第1ポンピングステージT1、T2、T1’、T2’は、最大の掃引容積を有し、最終のポンピングステージT4、T4’は最小の掃引容積を有する。
【0022】
この実施形態では、第1粗引き真空ポンプ5は、並列に設けられた2つの第1ポンピングステージT1、T2を備えている。
これらの第1ポンピングステージT1、T2は、第2ポンピングステージT3と直列にかつその上流に設けられ、この第2ポンピングステージT3は第3のポンピングステージT4に直列にかつその上流に設けられている。
第2粗引き真空ポンプ6は、並列に設けられた2つの第1ポンピングステージT1’、T2’を備えている。
これらの2つの第1ポンピングステージT1’、T2’は、第2ポンピングステージT3’と直列にかつその上流に設けられ、この第2ポンピングステージT3’は、第3のポンピングステージT4’と直列にかつその上流に設けられている。
粗引き真空ポンプ5、6の吸入口12、14は、第1遮断弁8を介して、ポンプ装置3の真空ライン16のパイプによって検出入口2に並列に接続される。
【0023】
この第1の実施形態では、粗引き真空ポンプ5、6はダイヤフラムポンプである。
各ポンピングステージは、偏芯機構によって駆動されるダイヤフラムを有しているので、入口フラップ弁と出口フラップ弁を伴うダイヤフラムの動きにより、ガスをポンピングできる。
第1粗引き真空ポンプ5では、第1駆動モータ21により、ポンピングステージT1-T4のダイヤフラムを動かす偏芯機構が回転される。
第2粗引き真空ポンプ6では、第2駆動モータ23により、ポンピングステージT1’-T4’のダイヤフラムを動かす偏芯機構が回転される。
【0024】
2台の粗引き真空ポンプ5、6は、同一のポンピングステージ構成を持つダイヤフラム真空ポンプである。ポンプ流量は同じであり、各粗引き真空ポンプは3つのポンピングステージが直列に設けられており、第1ポンピングステージでは2つのポンピングステージが並列になっている。
第2粗引き真空ポンプ6の吐出口15は、第1粗引き真空ポンプ5の最後から2つ目のポンピングステージT3と最後のポンピングステージT4の間など、第1粗引き真空ポンプ5の2つの直列のポンピングステージT3、T4の間で、第1粗引き真空ポンプ5に接続される。吐出口15は、例えば、第1粗引き真空ポンプ5の最後のステージ間チャネルに接続される。
【0025】
本発明の背後にあるアイデアは、従来は大気圧で排気されるガスを排出するために使用されている粗引き真空ポンプについて、その一方の吐出口を他方のポンピングステージの間に接続するという、粗引き真空ポンプの革新的な使用法である。
第2粗引き真空ポンプ6を第1粗引き真空ポンプ5のポンピングステージT3、T4の間に接続することにより、2倍のポンピング流量と到達真空圧力の低下という両方の効果を得ることが可能になる。
到達真空において、第2粗引き真空ポンプ6の3つのポンピングステージT1’-T4’に、第1粗引き真空ポンプ5の最終のポンピングステージT4が追加されて、ポンピングが有効になる。
この配置は直感に反している。むしろ、得られる到達真空圧力は、単一の粗引き真空ポンプで得られる圧力と同一であると考えられるかもしれない。
【0026】
漏れ検出器1は、第2粗引き真空ポンプ6の第2のポンピングステージT3’とT4’の間、たとえば最後から2番目のポンピングステージT3’と最後のポンピングステージT4’の間などにパージガスを供給するように構成された、パージ装置18を含むことができる。
従って、単一のパージ装置18は、第2粗引き真空ポンプ6の最終のポンピングステージT4’と第1粗引き真空ポンプ5の最終のポンピングステージT4の両方をパージすることを可能にする。
【0027】
圧力センサーを真空ライン16に配置して、少なくとも1つのサンプリング弁10a、10b、遮断弁8、9及び検出入口2を接続するパイプ内の圧力を測定することができる。遮断弁8、9及びサンプリング弁10a、10bは、例えば、漏れ検出器1の制御ユニットによって制御される電磁弁である。
漏れ検出器1の制御ユニットは、特に真空ライン16で測定された圧力の関数として、ソレノイド弁8、9、10a、10bを制御するのに適したメモリ及びプログラムを有する、1つ又は複数のコントローラ又はマイクロコントローラ又はコンピューターを含んでおり、この制御ユニットは、遠隔制御装置及び/又は制御パネルなど、漏れ検出器1のユーザインターフェースを管理する。
【0028】
次に、漏れ検出器1の使用例について説明する。
最初に、検査対象物は検出入口2に接続され、遮断弁8、9及びサンプリング弁10a、10bは閉じられているとする。
この状態で、ユーザが測定サイクルを開始する。
これに伴い、検出入口2と粗引き真空ポンプ5、6の吸入口12、14との間に挿入された第1遮断弁8が開く。
次に、漏れ検出器1が、2台の粗引き真空ポンプ5、6のポンプ流量を取得する。このポンプ流量は、4つのポンピングステージT1、T2、T1’、T2’が検査対象物から並行してガスを取り込むのに相当する。
真空ライン16で圧力が急速に低下する。
真空ライン16で測定された圧力が低圧閾値以下、例えば500Pa(又は5ミリバール)以下であるとき、第1遮断弁8が閉じるように制御される。
ターボ分子真空ポンプ7とガス検出器4を検出入口2に接続するために、第2遮断弁9とサンプリングソレノイド弁10a、10bの1つが開くように制御される。
【0029】
次に、漏れ検出器1は、直列の5つのポンピングステージT1’、T2’、T3’、T4’、T4に相当する2台の粗引き真空ポンプ5、6のポンプ流量を取得する。
ユーザは、検査対象物の周囲にトレーサーガスをスプレーすることで、漏れを探知することができる。ガス検出器4は、検査対象物にリーク部が存在する場合のトレーサーガスの増加を測定する。
【0030】
漏れ検出器1は、いわゆる「スニファー」検査を使用して、検査対象物の密閉気密検査を実行するためにも使用できる。この目的のために、検査対象物は、例えば加圧されたトレーサーガスで前もって満たされている。
検査対象物を取り巻くガスを取り込むために、漏れ検出器1の検出入口2に探知プローブが接続される。このようにしてサンプリングされたガスの一部は、リーク部の存在を明らかにするトレーサーガスを含んでいる可能性があり、ガス検出器4によって分析される。
漏れ検出器1が使用されなくなったとき、例えば、所定の期間の後に、スタンバイモードが提供され、粗引き真空ポンプ5、6の回転速度が低減される。
粗引き真空ポンプ5、6の回転数を下げることにより、使用しないときの漏洩検出器1の消費電力を低減することができる。このモードは手動でトリガーするか、制御ユニットで検出及び制御することができる。
【0031】
本発明によって提供される利点は、
図2のグラフから、より明確に理解することができる。
図2のグラフは、第2粗引き真空ポンプ6の吐出口15で上述したような2台のダイヤフラム粗引き真空ポンプ5、6について得られるポンプ性能を示す。
曲線Aは、吐出口15が第1粗引き真空ポンプ5の最後から2つ目のポンピングステージT3と最終のポンピングステージT4の間に接続された場合のポンプ性能である。
曲線Bは、従来例の、共通の吸入口と共通の吐出口を使用する2台のダイヤフラムの粗引き真空ポンプのポンプ性能である。
【0032】
上記曲線A、Bは、検査対象物の圧力降下が時間の関数として示されており、粗引き真空ポンプの最大回転速度V1で得られた特性と、速度をこの最大回転速度V1から8~9%程度低下させた回転速度V2の特性を示している。
この例では、3ミリバールを超える高圧の場合、本発明による粗引き真空ポンプ5、6の組み合わせによるポンプ流量が、従来例による共通の吐出口と並列に設けられた2台の粗引き真空ポンプのポンプ流量と同じであることに留意されたい。
従って、本発明による漏れ検出器1は、2台の粗引き真空ポンプ5、6の第1ポンピングステージT1、T2、T1’、T2’のポンプ流量を得ることができる。
第2粗引き真空ポンプ6の吐出口15を第1粗引き真空ポンプ5の最後から2番目のポンピングステージT3と最後のポンピングステージT4との間に接続しても、高い圧力におけるの2台の粗引き真空ポンプ5、6のポンプ性能は低下しない。
【0033】
到達真空圧力では、本発明による最大回転速度V1の粗引き真空ポンプ5、6で得られる圧力は0.7ミリバールに達する。一方、共通の吐出口を持つ粗引き真空ポンプでは圧力が約2.2ミリバールで一定になる。従って、本発明によれば、到達真空圧力は約3分の1に減少する。
低下した回転速度V2において、本発明による粗引き真空ポンプ5、6で得られる到達真空圧力は0.5ミリバールに達するが、共通の吐出口を有する従来例の粗引き真空ポンプでは、1ミリバール程度の到達真空圧力付近で一定になる。従って、この場合も、本発明によれば、到達真空圧力を従来例の2分の1まで低下させることができる。
【0034】
従って、検査対象物の到達真空圧力を下げることができる。これにより、バックグラウンドのトレーサーガスを減らすことができるため、測定感度を大幅に向上させることができる。
到達真空圧力圧を下げることができるので、粗引き真空ポンプ5、6の経年劣化によって発生する可能性のある性能低下に関して余裕を確保することも可能になる。従って、ポンプの経年劣化に関連して、堅牢性が向上する。
【0035】
図3は、本発明の他の実施形態を示すものであり、第1、第2粗引き真空ポンプ19、20が、各ポンピングステージT1-T2、T1’-T2’において反対方向に同期して回転するように駆動される2つのロータを含んでいる。
粗引き真空ポンプ19、20は、例えば、直列に設けられた5つのポンピングステージを含んでいる。第1粗引き真空ポンプ19では、複数のロータを保持する複数のシャフトが、次々と直列に設けられたポンピングステージT1-T5内に伸びている。複数のシャフトは、第1粗引き真空ポンプ19の第1の駆動モータ25によって駆動される。また、ポンピングステージT1-T5は、第1粗引き真空ポンプ19の第1のケーシング26内に配置されている。
第2粗引き真空ポンプ20では、複数のロータを保持する複数のシャフトが、次々と直列に設けられたポンピングステージT1’-T5’内に伸びている。複数のシャフトは、第2粗引き真空ポンプ20の第2駆動モータ27によって駆動される。また、ポンピングステージT1’-T5’は、第2粗引き真空ポンプ20の第2ケーシング28に配置されている。
【0036】
複数のロータには、たとえば、ルーツ(8字型又は豆型の断面)ローブなど、同じプロファイルを持つ複数のローブがある。
複数のロータは角度的にオフセットされて駆動され、各ステージで反対方向に同期して回転する。回転中、吸気口から取り込んだガスは、複数のロータとステーターで形成された空間に閉じ込められ、次に、複数のロータで次段のステージに運ばれる。
これらの粗引き真空ポンプは、運転中、ロータがステーターと機械的に接触することなくステーター内で回転するため、「ドライ」と呼ばれる。これにより、ポンピングステージ階でオイルを完全に無くすることができる。
【0037】
前記実施形態のように、第2粗引き真空ポンプ20の吐出口15は、第1粗引き真空ポンプ19の、例えば、最後から2番目のポンピングステージT4及び最終のポンピングステージT5の間など、第1粗引き真空ポンプ19の連続する2つの直列のポンピングステージT4、T5の間に接続されている。
第2粗引き真空ポンプ20を第1粗引き真空ポンプ19のポンピングステージT4、T5の間に接続することにより、2倍のポンピング流量と到達真空圧力の低下の両方の効果を得ることが可能になる。
到達真空圧力では、第2粗引き真空ポンプ20の5つのポンピングステージT1’-T5’を介してポンピングが効果的であり、これは、第1粗引き真空ポンプ19の最終のポンピングステージT5に追加される。
【0038】
本発明は、また、クローポンプ、又はスクロール又はスクリュー真空ポンプなどの、同様の容積型真空ポンプ原理を使用するポンプなどの、2つのロータを含む他のタイプの多段粗引き真空ポンプにも適用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 漏れ検出器
2 検出入口
3 ポンプ装置
4 ガス検出器
5 第1粗引き真空ポンプ
6 第2粗引き真空ポンプ
7 ターボ分子真空ポンプ
8 第1遮断弁
9 第2遮断弁
10a,10b サンプリング弁
11 吸気口
12 吸入口
13 吐出口
14 吸入口
15 吐出口
16 真空ライン
17 吐出口
18 パージ装置
19 第1粗引き真空ポンプ
20 第2粗引き真空ポンプ
21 第1駆動モータ
22 第1ケーシング
23 第2駆動モータ23
24 第2ケーシング
25 第1の駆動モータ
26 第1のケーシング
27 第2駆動モータ
28 第2ケーシング
T1-T5 ポンピングステージ
T1’-T4’ ポンピングステージ