(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】テンプレート作成装置および部品装着機
(51)【国際特許分類】
H05K 13/08 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
H05K13/08 C
(21)【出願番号】P 2020529931
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2018026396
(87)【国際公開番号】W WO2020012621
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江嵜 弘健
(72)【発明者】
【氏名】天野 雅史
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-072924(JP,A)
【文献】特開2006-049868(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006076(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品装着機の内部に位置決めされた基板の所定の装着位置に装着されることが要求される部品がもつ電極に関する情報である電極情報を取得する電極情報取得部と、
取得された前記電極情報に基づき、前記基板の前記装着位置に配設されて前記電極に接続される電極パッドの位置を探索するためのテンプレートを作成するテンプレート作成部と、を備え、
前記テンプレート作成部は、前記電極と前記電極パッドの大きさの相違を考慮し、前記電極パッドごとに設けられるテンプレート要素を可変に設定して前記テンプレートを作成する
、
テンプレート作成装置。
【請求項2】
部品装着機の内部に位置決めされた基板の所定の装着位置に装着されることが要求される部品がもつ電極に関する情報である電極情報を取得する電極情報取得部と、
取得された前記電極情報に基づき、前記基板の前記装着位置に配設されて前記電極に接続される電極パッドの位置を探索するためのテンプレートを作成するテンプレート作成部と、を備え、
前記テンプレート作成部は、前記電極と前記電極パッドの形状の相違を考慮し、前記電極パッドごとに設けられるテンプレート要素を可変に設定して前記テンプレートを作成する
、
テンプレート作成装置。
【請求項3】
部品装着機の内部に位置決めされた基板の所定の装着位置に装着されることが要求される部品がもつ電極に関する情報である電極情報を取得する電極情報取得部と、
取得された前記電極情報に基づき、前記基板の前記装着位置に配設されて前記電極に接続される電極パッドの位置を探索するためのテンプレートを作成するテンプレート作成部と、を備え、
前記テンプレート作成部は、前記電極パッドにペースト状半田が印刷されているか否かに応じて、前記テンプレートの使用条件を変更する
、
テンプレート作成装置。
【請求項4】
部品装着機の内部に位置決めされた基板の所定の装着位置に装着されることが要求される部品がもつ電極に関する情報である電極情報を取得する電極情報取得部と、
取得された前記電極情報に基づき、前記基板の前記装着位置に配設されて前記電極に接続される電極パッドの位置を探索するためのテンプレートを作成するテンプレート作成部と、を備え、
前記テンプレートは、前記電極パッドごとに設けられるテンプレート要素として、前記電極パッドのエッジを探索するシークラインを有する
、
テンプレート作成装置。
【請求項5】
前記電極情報取得部は、前記部品の形状データから前記電極情報を取得する、請求項1
~4のいずれか一項に記載のテンプレート作成装置。
【請求項6】
前記電極情報取得部は、前記部品を撮像して求めた画像データに画像処理を施して前記電極情報を取得する、請求項1
~4のいずれか一項に記載のテンプレート作成装置。
【請求項7】
前記電極情報取得部は、前記部品がもつ前記電極に関する物理量を実測した実測データから前記電極情報を取得する、請求項1
~4のいずれか一項に記載のテンプレート作成装置。
【請求項8】
前記電極情報は、前記電極の形状、大きさ、個数、および配置の情報を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のテンプレート作成装置。
【請求項9】
位置決めされた前記基板の少なくとも前記装着位置の付近を撮像して基板画像データを取得する撮像部と、
請求項1~
8のいずれか一項に記載のテンプレート作成装置で作成された前記テンプレートを前記基板画像データに対して移動させつつ前記電極パッドの前記位置を探索することにより、前記装着位置を表す装着座標位置を取得する探索部と、
取得された前記装着座標位置に基づいて前記部品を装着する装着部と、
を有する部品装着機。
【請求項10】
部品装着機の内部に位置決めされ
た基板の少なくとも
所定の装着位置の付近を撮像して基板画像データを取得する撮像部と、
前記基板の
前記装着位置に装着されることが要求される部品がもつ電極に関する情報である電極情報を取得する電極情報取得部と、取得された前記電極情報に基づき、前記基板の前記装着位置に配設されて前記電極に接続される電極パッドの位置を探索するためのテンプレートを作成するテンプレート作成部と、を備えるテンプレート作成装置で作成された前記テンプレートを前記基板画像データに対して移動させつつ前記電極パッドの前記位置を探索することにより、前記装着位置を表す装着座標位置を取得する探索部と、
取得された前記装着座標位置に基づいて前記部品を装着する装着部と、を有し、
前記撮像部は、前記電極パッドにペースト状半田が印刷されているか否かに応じて撮像条件を変更する、部品装着機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、基板上の電極パッドの位置を探索するためのテンプレートを作成するテンプレート作成装置、および、作成されたテンプレートを使用する部品装着機に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線が施された基板に対基板作業を実施して、回路基板を量産する技術が普及している。対基板作業を実施する対基板作業機の代表例として、部品の装着作業を実施する部品装着機がある。一般的に、部品装着機では、基板に付設された位置マークを検出して基板の正確な位置を求め、装着座標位置に基づいて部品を装着する。部品の装着座標位置に関連する一技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された部品装着座標作成装置は、印刷マスクを作成する際に用いたガーバーデータの電極パッド情報を回路基板の電極パッド情報として用い、これを各部品のパートデータの端子情報と比較して、各部品の装着位置を探索するパターンマッチング手段と、パターンマッチング結果に基づいて各部品の装着座標位置を演算する演算手段と、を備える。これによれば、回路基板設計用のCADデータが無くても、回路基板に装着する各部品の装着座標位置を自動作成できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1において、実際の基板や部品が無くとも、データ処理によって装着座標位置を自動作成できる点は好ましい。しかしながら、実際の基板は、製造上の個体差、例えば、位置マークの位置ズレや大きさのばらつきをもつ。加えて、実際の基板は、位置決め時にクランプされて反りが生じたり、両面装着時にリフロー機で加熱されて熱変形したりする。このため、位置マークの検出結果だけに頼って装着作業を実施すると、部品の実際の装着位置に誤差の生じるおそれがある。装着位置の誤差は、精細な位置精度が要求される部品で問題となる場合が多い。
【0006】
この対策として、基板の隅に付設した位置マーク(グローバルマーク)に加え、精細な位置精度が要求される部品の近傍に部品位置マーク(ローカルマーク)を付設することが行われてきた。しかしながら、この対策では、基板上に部品位置マークの付設スペースを確保する必要が生じる。加えて、部品装着機を動作させる生産プログラムに部品位置マークのデータ、および部品位置マークの検出動作を追加する手間が必要となる。
【0007】
本明細書では、基板に部品位置マークを付設せずとも、部品の装着位置を精細な位置精度で探索できるテンプレートを作成するテンプレート作成装置を提供すること、および、作成されたテンプレートを使用する部品装着機を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、部品装着機の内部に位置決めされた基板の所定の装着位置に装着されることが要求される部品がもつ電極に関する情報である電極情報を取得する電極情報取得部と、取得された前記電極情報に基づき、前記基板の前記装着位置に配設されて前記電極に接続される電極パッドの位置を探索するためのテンプレートを作成するテンプレート作成部と、を備え、前記テンプレート作成部は、前記電極と前記電極パッドの大きさの相違を考慮し、前記電極パッドごとに設けられるテンプレート要素を可変に設定して前記テンプレートを作成するテンプレート作成装置を開示する。
【0009】
また、本明細書は、位置決めされた前記基板の少なくとも前記装着位置の付近を撮像して基板画像データを取得する撮像部と、部品装着機の内部に位置決めされた基板の所定の装着位置に装着されることが要求される部品がもつ電極に関する情報である電極情報を取得する電極情報取得部と、取得された前記電極情報に基づき、前記基板の前記装着位置に配設されて前記電極に接続される電極パッドの位置を探索するためのテンプレートを作成するテンプレート作成部と、を備えるテンプレート作成装置で作成された前記テンプレートを前記基板画像データに対して移動させつつ前記電極パッドの前記位置を探索することにより、前記装着位置を表す装着座標位置を取得する探索部と、取得された前記装着座標位置に基づいて前記部品を装着する装着部と、を有し、前記撮像部は、前記電極パッドにペースト状半田が印刷されているか否かに応じて撮像条件を変更する、部品装着機を開示する。
【発明の効果】
【0010】
本明細書で開示するテンプレート作成装置は、部品がもつ電極の電極情報に基づき、基板上の電極パッドの位置を探索するためのテンプレートを作成する。このテンプレートを使用することにより、実際の基板のそれぞれを対象として電極パッドの位置を探索できる。したがって、基板の個体差や反り、熱変形などの誤差要因が排除され、部品の装着位置を精細な位置精度で探索できる。さらに、本明細書で開示する部品装着機は、作成されたテンプレートを使用するので、部品の実際の装着位置の位置精度が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の部品装着機の構成例を模式的に示す平面図である。
【
図2】実施形態のテンプレート作成装置の機能構成、および実施形態の部品装着機のテンプレートの使用に関する機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】或るCSP部品の電極情報を図式的に示す平面図である。
【
図4】テンプレート作成部が作成したテンプレートを図式的に示す図である。
【
図5】撮像部によって取得された基板画像データを示す図である。
【
図6】探索部がテンプレートを使用して電極パッドの位置を探索する途中の状況を説明する図である。
【
図7】探索部の探索が良好に終了した状況を説明する図である。
【
図8】従来技術の基板を模式的に示す平面図である。
【
図9】テンプレート作成部が作成する別のテンプレートを図式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施形態の部品装着機1の構成例
まず、テンプレートを使用する実施形態の部品装着機1の構成例について説明する。
図1は、実施形態の部品装着機1の構成例を模式的に示す平面図である。部品装着機1は、部品を基板Kに装着する装着作業を実施する。
図1の紙面左側から右側に向かう方向が基板Kを搬送するX軸方向、紙面下側(前側)から紙面上側(後側)に向かう方向がY軸方向となる。部品装着機1は、基板搬送装置2、複数のテープフィーダ3、部品移載装置4、部品カメラ5、および制御部6などが機台10に組み付けられて構成される。
【0013】
基板搬送装置2は、一対のガイドレール21、22、一対のコンベアベルト、および基板クランプ機構などで構成される。コンベアベルトは、基板Kを載置した状態でガイドレール21、22に沿って輪転することにより、基板Kを作業実施位置まで搬入する。基板クランプ機構は、作業実施位置の基板Kを押し上げてクランプし、位置決めする。部品の装着作業が終了すると、基板クランプ機構は基板Kを解放し、コンベアベルトは基板Kを搬出する。
【0014】
複数のテープフィーダ3は、機台10上のパレット部材11に刻設された複数のスロットに取り付けられて列設される。テープフィーダ3は、本体部31の前側にテープリール39を保持する。本体部31の後側寄りの上部に、部品を供給する供給位置32が設定される。テープリール39には、多数のキャビティにそれぞれ部品を収容したキャリアテープが巻回されている。テープフィーダ3は、図略のテープ送り機構によりキャリアテープを供給位置32まで送り、順次キャビティから部品を供給する。
【0015】
部品移載装置4は、基板搬送装置2やテープフィーダ3よりも上方に配設される。部品移載装置4は、テープフィーダ3から部品を採取して基板Kに装着する。部品移載装置4は、ヘッド駆動機構40、装着ヘッド44、ノズルツール45、吸着ノズル46、およびマークカメラ47などで構成される。ヘッド駆動機構40は、一対のY軸レール41、42、Y軸スライダ43、および図略の駆動モータを含んで構成される。Y軸レール41、42は、Y軸方向に延び、相互に離隔して平行配置される。X軸方向に長いY軸スライダ43は、両方のY軸レール41、42にまたがって装架され、Y軸方向に移動する。装着ヘッド44は、Y軸スライダ43に装架され、X軸方向に移動する。ヘッド駆動機構40は、Y軸スライダ43をY軸方向に駆動するとともに、Y軸スライダ43上の装着ヘッド44をX軸方向に駆動する。
【0016】
装着ヘッド44は、ノズルツール45およびマークカメラ47を保持する。ノズルツール45は、1本または複数本の吸着ノズル46を下側に有する。吸着ノズル46は、図略の昇降駆動部に駆動されて昇降動作する。吸着ノズル46は、供給位置32の上方から下降動作し、負圧の供給により部品を吸着する。ノズルツール45や吸着ノズル46は、複数種類あり、自動または手動で交換される。マークカメラ47は、位置決めされた基板Kに付設された位置マークを撮像して、基板Kの正確な作業実施位置を検出する。
【0017】
部品カメラ5は、基板搬送装置2とテープフィーダ3との間の機台10の上面に、上向きに設けられる。部品カメラ5は、装着ヘッド44がテープフィーダ3から基板Kに移動する途中で、吸着ノズル46が吸着している部品の状態を撮像する。取得された画像データは、画像処理され、画像処理結果として部品の吸着姿勢が求められる。画像処理結果は、吸着ノズル46の次の装着動作に反映される。
【0018】
制御部6は、機台10に組み付けられており、その配設位置は特に限定されない。制御部6は、CPUを有してソフトウェアで動作するコンピュータ装置により構成される。なお、制御部6は、複数のCPUが機内に分散配置されて構成されてもよい。制御部6は、予め記憶した装着シーケンスにしたがって、部品の装着作業を制御する。
【0019】
2.テンプレート作成装置7の機能構成および動作
実施形態のテンプレート作成装置7の説明に移る。
図2は、実施形態のテンプレート作成装置7の機能構成、および実施形態の部品装着機1のテンプレートの使用に関する機能構成を示す機能ブロック図である。本実施形態において、テンプレート作成装置7は、部品装着機1と別体で構成される。テンプレート作成装置7は、電極情報取得部71およびテンプレート作成部72で構成される。
【0020】
テンプレート作成装置7が対象とする部品は、装着位置に精細な位置精度が要求される部品に限定される。精細な位置精度が要求される部品として、多数の電極が狭いピッチで配置されたCSP部品(Chip Size Package)やQFP部品(Quad Flat Package)を例示できる。部品装着機1は、対象外の部品については、マークカメラ47による基板Kの作業実施位置の検出結果にしたがって装着作業を進める。仮に、基板Kに装着される全部品が対象とされた場合、テンプレートを使用する探索が全部品に適用されることになるため、装着作業が長時間化する。
【0021】
電極情報取得部71は、対象とする部品がもつ電極に関する情報である電極情報Giを取得する。本実施形態において、電極情報取得部71は、データベースに記憶された部品の形状データ73から電極情報Giを取得する。
図3は、或るCSP部品の電極情報Giを図式的に示す平面図である。電極情報Giは、電極の形状、大きさ、個数、および配置の情報を含む。
【0022】
図3の例で、電極の形状は、ボールグリッドと呼ばれる半球形状であり、平面視では円形となる。そして、電極の大きさは、円形の直径Dで表される。また、電極の配置および個数は、縦8個×横8個の二次元格子配置で合計64個となる。さらに、電極の中心間の距離は、縦方向および横方向ともに配設ピッチPである。部品の形状データ73には、部品の縦寸法S1および横寸法S2も含まれる。
【0023】
なお、電極情報取得部71は、当該のCSP部品を撮像して求めた画像データに画像処理を施して、電極情報Giを取得してもよい。CSP部品を撮像するカメラとして、部品装着機1のマークカメラ47を利用してもよいし、その他の任意の撮像装置を利用してもよい。また、電極情報取得部71は、CSP部品がもつ電極に関する物理量を実測した実測データから電極情報Giを取得してもよい。物理量を実測する測定器として、三次元スキャナーや各種メジャー類を例示できる。CSP部品の撮像や物理量の実測による方法では、実際のCSP部品を用いて正確な電極情報Giを取得することができる。
【0024】
テンプレート作成部72は、取得された電極情報Giに基づき、電極パッドPd(
図5参照)の位置を探索するためのテンプレートTpを作成する。ここで、電極パッドPdは、基板Kの装着位置に配設されて、CSP部品の電極に半田付けで接続されるものである。通常、電極パッドPdの個数および配置は、電極の個数および配置に一致する。また、電極パッドPdの大きさは、電極よりも大きめとされる。さらに、電極パッドPdの形状は、電極の形状と同じ場合が多いが、相違する場合もある。例えば、円形の電極に対して正方形の電極パッドPdが設けられる場合がある。
【0025】
本実施形態において、テンプレートTpは、電極パッドPdごとに設けられるテンプレート要素Teとして、電極パッドPdのエッジを探索するシークラインSLを有する。
図4は、テンプレート作成部72が作成したテンプレートTpを図式的に示す図である。
図4の外側の正方形は、CSP部品の外形線を参考に示したものであり、テンプレートTpに含まれない。
【0026】
テンプレート作成部72は、電極パッドPdの個数および配置が電極の個数および配置に一致しているものと想定する。これにより、テンプレート作成部72は、配設ピッチPで二次元格子配置された電極パッドPdに対応する64個のテンプレート要素Teを作成できる。各テンプレート要素Teは、回転対称点Ra(
図6、
図7参照)のまわりに90°ピッチで配置された4本のシークラインSLからなる。回転対称点Raは、電極パッドPdの想定される中心位置Cr(
図6、
図7参照)に対応する。
【0027】
ここで、電極パッドPdが電極と同じ円形であることは予め判っているが、電極パッドPdの正確な大きさは未知である。そこで、テンプレート作成部72は、電極と電極パッドPdの大きさの相違を考慮し、テンプレート要素Teを可変に設定する。つまり、電極の大きさに対応するシークラインと比較して、電極パッドPdを探索するためのシークラインSLを長めに設定する。
【0028】
また、電極と電極パッドPdで形状が相違する場合に、テンプレート作成部72は、電極と電極パッドPdの形状の相違を考慮し、電極パッドPdごとに設けられるテンプレート要素Teを可変に設定する。例えば、電極が円形で、電極パッドPdが正六角形の場合に、テンプレート作成部72は、電極情報Giに基づいて電極パッドPdの中心位置の配置を求め、正六角形の電極パッドPdに適したテンプレート要素Teを設定する。このときのテンプレート要素Teは、回転対称点Raのまわりに60°ピッチで配置された6本のシークライン、または、回転対称点Raのまわりに120°ピッチで配置された3本のシークラインからなる。なお、正方形の電極パッドPdについては、4本のシークラインSLからなるテンプレート要素Teを共通に用いることができる。
【0029】
シークラインSLを使用する探索方法に関して、本願出願人は、特開平8-180191号や特開2017-72924に先行技術を開示している。先行技術では、シークラインSLに沿って走査を行い、輝度(明度)が大きく変化した画素の位置をエッジと判定する。つまり、基板Kの素地の低輝度から電極パッドPdの高輝度へと変化する位置、または逆に高輝度から低輝度へと変化する位置を検出して、電極パッドPdのエッジとする。
【0030】
上記した探索方法の精度を向上するため、テンプレート作成部72は、実際の基板Kの電極パッドPdにペースト状半田が印刷されているか否かに応じて、テンプレートTpの使用条件を変更する。具体的に、テンプレート作成部72は、シークラインSLに沿って走査するときに基板Kの素地と電極パッドPdとを判別する輝度の閾値を変更する。
【0031】
補足すると、電極パッドPdは、高輝度であるが、ペースト状半田が印刷されると輝度が低下して基板Kの素地の低輝度へと近付く。このため、ペースト状半田が印刷されていないときには、高めの閾値でよいが、ペースト状半田が印刷されているときに、低めの閾値を用いる必要が生じる。仮に、ペースト状半田が印刷されているときに高めの閾値を用いると、局部的に電極パッドPdを基板Kの素地と誤るおそれが生じて、エッジの判別精度が低下する。
【0032】
テンプレート作成装置7が作成したテンプレートTp、およびその使用条件は、部品装着機1に転送されて使用される。実施形態のテンプレート作成装置7は、CSP部品がもつ電極の電極情報Giに基づき、基板K上の電極パッドPdの位置を探索するためのテンプレートTpを作成する。このテンプレートTpを使用することにより、実際の基板Kのそれぞれを対象として電極パッドPdの位置を探索できる。したがって、基板Kの個体差や反り、熱変形などの誤差要因が排除され、CSP部品の装着位置を精細な位置精度で探索できる。
【0033】
3.部品装着機1のテンプレートTpの使用に関する機能構成、および動作
次に、実施形態の部品装着機1のテンプレートTpの使用に関する機能構成、および動作について説明する。
図2に示されるように、部品装着機1の制御部6は、撮像部61、探索部62、および装着部63を備える。
【0034】
撮像部61は、マークカメラ47の撮像機能を含んで構成される。撮像部61は、位置決めされた基板Kの少なくとも装着位置の付近をマークカメラ47に撮像させて、基板画像データKdを取得する。装着位置の付近の撮像領域は、少なくともCSP部品が装着される全ての電極パッドPdを含んでいる必要がある。撮像領域に対してマークカメラ47の撮像視野が狭い場合、撮像部61は、マークカメラ47を移動させて複数回の撮像を行わせる。さらに、撮像部61は、取得した複数の画像データを合成して、撮像領域の全体を含む基板画像データKdを作成する。
【0035】
また、撮像部61は、電極パッドPdにペースト状半田が印刷されているか否かに応じて撮像条件を変更する。前述したように、ペースト状半田が印刷されることによって、電極パッドPdの輝度が低下する。したがって、基板画像データKdの中でペースト状半田が印刷された電極パッドPdと、低輝度の基板Kの素地とが明瞭に判別されるように、撮像部61は撮像条件を変更する。具体的に、撮像部61は、ペースト状半田が印刷されている場合に、印刷されていない場合と比較して照明を強くしたり、シャッタースピードを遅くしたりする。
【0036】
図5は、撮像部61によって取得された基板画像データKdを示す図である。
図5の例では、前記した画像データの合成により、基板Kの全面を含む基板画像データKdが得られている。また、撮像部61は、基板画像データKdに対し、輝度の高低に対応する白黒の二値化処理を施す。これにより、基板画像データKd上において、基板Kの素地が黒色で示され、基板Kの三隅の位置マークMkおよび電極パッドPdが白色で示される。
図5の基板画像データKdには、CSP部品が接続される64個の電極パッドPd以外に、他の部品用の長方形の電極パッドが32個ある。なお、二値化処理は必須で無く、基板画像データKdは、各画素が相違する輝度値を有した撮像時の生データであってもよい。
【0037】
探索部62は、まず、テンプレート作成装置7からテンプレートTpを受け取る。探索部62は、次に、テンプレートTpを基板画像データKdに対して移動させつつ電極パッドPdの位置を探索する。
図6は、探索部62がテンプレートTpを使用して電極パッドPdの位置を探索する途中の状況を説明する図である。また、
図7は、探索部62の探索が良好に終了した状況を説明する図である。
図6および
図7では、基板Kの素地がハッチングで示されるとともに、一個の電極パッドPdの画像および一個のテンプレート要素Teが例示されている。
【0038】
本実施形態では、電極パッドPdの正確な大きさが未知であるので、探索部62は、前述した先行技術をそのまま用いることはできない。探索部62が基板画像データKdの上でテンプレートTpを電極パッドPdに近付けてゆくと、
図6に示される状況となる。
図6において、テンプレート要素Teの4本のシークラインSL1、SL2、SL3、SL4の全てが電極パッドPdのエッジと交差している。探索部62は、各シークラインSL1、SL2、SL3、SL4が電極パッドPdに重なっている部分の長さL11、L12、L13、LS4を求める。
【0039】
次に、探索部62は、向かい合うシークラインの長さを比較して、電極パッドPdの中心位置Crを推定する。具体的に、
図6の上側のシークラインSL1の長さL11は、下側のシークラインSL3の長さL13よりも大きい。したがって、探索部62は、電極パッドPdの中心位置Crが回転対称点Raよりも上側にあると推定する。また、右側のシークラインSL2の長さL12は、左側のシークラインSL4の長さL14よりも大きい。したがって、探索部62は、電極パッドPdの中心位置Crが回転対称点Raよりも右側にあると推定する。
【0040】
次に、探索部62は、推定結果に基づいて、テンプレートTpを基板画像データKdに対して右上方向に移動させる。電極パッドPdの中心位置Crの推定、およびテンプレートTpの移動を繰り返すことにより、
図7に示される状況となる。なお、シークラインSL1、SL2、SL3、SL4の長さの差(L11-L13)および差(L12-L14)に基づいて、右上方向への適正な移動量を推定することもできる。これによれば、繰り返し回数を削減することができる。
【0041】
図7において、上側のシークラインSL1の長さL21と、下側のシークラインSL3の長さL23とが相等しい。また、右側のシークラインSL2の長さL22と、左側のシークラインSL4の長さL24とが相等しい。このとき、電極パッドPdの中心位置Crは、回転対称点Raに重なっている。したがって、探索部62は、探索が良好に終了したことを認識できる。
【0042】
実際には、64箇所の全てで
図7に示される状況が同時に発生するとは限らない。多くの場合、複数箇所で中心位置Crと回転対称点Raとの間に位置誤差が発生する。探索部62は、64箇所の位置誤差の総和または二乗和が最小となるテンプレートTpの位置に基づいて、CSP部品の装着位置を表す装着座標位置を取得する。
【0043】
装着部63は、部品移載装置4を含んで構成される。装着部63は、部品移載装置4を制御し、探索部62が取得した装着座標位置に基づいて、CSP部品を基板Kに装着させる。これにより、CSP部品の実際の装着位置の位置精度が高められる。
【0044】
4.従来技術との対比
次に、実施形態のテンプレート作成装置7および部品装着機1が基板Kの回路設計に及ぼす効果について、従来技術と対比して説明する。
図8は、従来技術の基板KXを模式的に示す平面図である。従来技術の基板KXでは、三隅にそれぞれ位置マークMkが付設されている。加えて、QFP部品の矩形に配置された複数の電極パッドPXを挟む対角位置に、二個の部品位置マークBkが付設されている。従来技術では、基板KX上に部品位置マークBkの付設スペースを確保する必要が生じる。これにより、部品の装着密度が制限され、対象部品の点数が多い場合には基板KXの大きさにも影響する。
【0045】
これに対比して、実施形態のテンプレート作成装置7および部品装着機1によれば、部品位置マークBkは不要である。したがって、部品の装着密度は制限されず、基板KXが大型化するおそれも無い。
【0046】
5.実施形態の応用および変形
なお、実施形態で説明したテンプレートTpは、シークラインSLを有するが、これに限定されない。例えば、テンプレート作成部72は、
図9に示されるテンプレートTpQを作成してもよい。
図9は、テンプレート作成部72が作成する別のテンプレートTpQを図式的に示す図である。このテンプレートTpQは、電極パッドPdの形状に相当する円形のテンプレート要素TeQが白色で表され、基板Kの素地に相当する部分が黒色で表される。
【0047】
テンプレートTpQを作成する際に、電極と電極パッドPdの大きさの相違が考慮され、電極の直径Dに倍率mが乗算されてテンプレート要素TeQの直径が求められる。倍率mは、1より大きな値とされ、部品メーカが推奨する電極パッドPdの大きさなどを参考にして適宜設定される。倍率mを1より大きく設定するのは、通常、部品の電極よりも基板K側の電極パッドPdの寸法のほうが大きいためである。また、円形の電極に対して正方形の電極パッドPdが設けられる場合には、電極と電極パッドPdの形状の相違が考慮され、正方形のテンプレート要素TeQが求められる。さらに、電極情報Giのうちの個数および配置の情報は、そのまま利用される。
【0048】
なお、倍率mを1より大きく設定することは必須でない。例えば、テンプレート作成装置7の電極情報取得部71がCSP部品を撮像し、求めた画像データに画像処理を施して、電極情報Giを取得する場合を想定する。この場合、撮像時の照明角度などの影響で半球形状の電極の付け根部分が光り、実寸法より大きな直径Dが取得されることがある。このようなことを考慮して、倍率mを1以下に設定してもよい。
【0049】
一方、部品装着機1は、このテンプレートTpQを使用して、形状ベースマッチングによる探索を行う。詳述すると、撮像部61は、撮像によって取得した基板画像データKdに対し、輝度の高低に対応する白黒の二値化処理を施す。このとき、撮像部61の撮像条件は、電極パッドPdにペースト状半田が印刷されているか否かに応じて変更される。また、基板Kの素地と電極パッドPdの内部とを判別する輝度の閾値も、電極パッドPdにペースト状半田が印刷されているか否かに応じて変更される。
【0050】
次に、探索部62は、二値化処理が施された基板画像データKdにテンプレートTpQを重ねて、各画素で白色および黒色が一致しているか否かを調査し、テンプレートTpQの全領域における一致率を求める。探索部62は、次に、基板画像データKdに対してテンプレートTpQを移動させ、一致率を求める処理を繰り返す。探索部62は、最後に、一致率が最高となったテンプレートTpQの位置に基づいて、CSP部品の装着位置を表す装着座標位置を取得する。
【0051】
また、詳細な説明は省略したが、探索部62は、CSP部品の水平面内における相対的な回転の誤差を考慮し、装着座標位置だけでなく装着角度も探索して取得することができる。また、テンプレート(Tp、TpQ)は、電極の全数に対応するテンプレート要素(Te、TeQ)を有する必要はない。例えば、
図3に示される二次元格子配置のうち四隅の電極に対応する4個のテンプレート要素(Te、TeQ)のみとすることも可能である。これにより、探索部62の探索所要時間が削減される。さらに、テンプレート作成装置7は、実施形態において部品装着機1と別体であるが、部品装着機1内に一体的に構成することもできる。本実施形態は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:部品装着機 4:部品移載装置 47:マークカメラ 6:制御部 61:撮像部 62:探索部 63:装着部 7:テンプレート作成装置 71:電極情報取得部 72:テンプレート作成部 73:形状データ K:基板 Gi:電極情報 Tp、TpQ:テンプレート Te、TeQ:テンプレート要素 SL、SL1、SL2、SL3、SL4:シークライン Ra:回転対称点 Kd:基板画像データ Pd:電極パッド Cr:中心位置 Mk:位置マーク KX:従来技術の基板 Bk:部品位置マーク