(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】植物栽培装置
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20220915BHJP
A01G 9/00 20180101ALI20220915BHJP
A01G 27/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A01G9/02 B
A01G9/00 C
A01G9/02 E
A01G27/00 502E
A01G27/00 502W
(21)【出願番号】P 2021113486
(22)【出願日】2021-07-08
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】399041158
【氏名又は名称】西日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514257022
【氏名又は名称】NTTビジネスソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【氏名又は名称】地代 信幸
(72)【発明者】
【氏名】野村 智之
(72)【発明者】
【氏名】田邊 克洋
(72)【発明者】
【氏名】川勝 崇司
(72)【発明者】
【氏名】高山 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】杢保 順也
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/198726(WO,A1)
【文献】特開2019-103424(JP,A)
【文献】特開2015-096048(JP,A)
【文献】登録実用新案第3202251(JP,U)
【文献】登録実用新案第3067134(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0042192(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0024424(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00 - 9/28
A01G 25/00 - 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが鉛直方向に向き、一直線上に並ぶ複数本の縦支柱と、
前記縦支柱に対して固定され、前記縦支柱同士の間を渡し水平方向に向き、上下方向に複数段設けられた横支柱と、
前記横支柱から前記横支柱の長さ方向に対して垂直な両横方向に延ばされた梁材と、
前記梁材上に、前記横支柱の左右それぞれに前記横支柱に沿って乗せられた、栽培容器を格納できるように上向きに開放された空間を有する水樋と、
前記植物栽培装置を設置する設置面に接して前記両横方向に回転可能な車輪と、
前記車輪を回転させる駆動機構と、
設置箇所の天井に配された両横方向に配したレール内を移動するローラから下方に配された天井リングに対して、最上段の前記縦支柱又は横支柱との間を直接的に又は間接的に拘束した拘束具を有する、植物栽培装置。
【請求項2】
下から二段目以降の前記水樋が下方側の一部に通水孔を有し、前記通水孔から下方に位置する別の前記水樋へ、落下より減速させて水を伝える伝水路を有する
請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記栽培容器に給水する給水機構として、
前記縦支柱に並行する縦給水管と、前記縦給水管から分岐して各段の前記横支柱に並行して前記水樋の間に配された横給水管と、前記横給水管から前記栽培容器へ給水する個別給水管とを有する、
請求項1
又は2に記載の植物栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、植物工場で用いる植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物工場は植物の栽培環境を人工的に制御することで、季節を選ばず一定品質の作物を安定的に収穫することができる。植物工場では光を日光に頼ることなく照明により提供するので、平面ではなく多段に重ねた棚の上で栽培することで、面積当たりの収容率を高めることが行われている。
【0003】
近年、温室や屋内での植物栽培において、その植物や生育状態に応じて栽培環境を管理することが一般的に行われている。このような栽培方法の一つとして、施肥量、灌水量を管理することに加えて、閉鎖的な空間で温度、湿度、光量をも管理した植物工場が提案されている。この植物工場では、栽培温度、湿度を管理し、さらに光量や日長に関しても人工光源によって適切に管理する。このような植物工場では栽培環境を人工的に制御することで、季節を選ばず一定品質の作物を安定的に収穫することができる。また、人工光源の採用により多段の栽培棚で3次元的な高密度栽培が可能となる。これにより、単位面積あたりの収容率を高めることができる。
【0004】
例えば特許文献1には、アルミニウム部材を利用して、栽培棚を多段に設置するために垂直に伸びる支柱を四隅に加えて長さ方向の複数個所に設けられた垂直支柱を有して垂直枠を為し、支柱と支柱との間に棚を渡し、その上に栽培容器を載置する載置棚で植物栽培装置を構成する例が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、単に多段にするだけでは面積当たりの収容率の向上は不十分であり、経済的にはさらに収容率を向上して植物工場全体の経済性を向上させることが求められた。
【0007】
例えば特許文献1では、四隅に支柱を据えることで水平方向と奥行方向に重複して部材を配して強度を保つ構造となっている。さらに、垂直方向でも、横部材に加えて複数段の受けレールが設けられている。水平/垂直/奥行方向にそれぞれ重複して多数の部材を使用することにより強度は確保できるものの、その分だけ支柱や部材が占める領域が多く、植物の栽培容器に割り当てられる空間に制限があり、面積当たりの収容率の向上には限界があった。
【0008】
そこでこの発明は、植物工場で用いる植物栽培装置において、面積当たりの収容率をさらに向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、
それぞれが鉛直方向に向き、一直線上に並ぶ複数本の縦支柱と、
前記縦支柱に対して固定され、前記縦支柱同士の間を渡し水平方向に向き、上下方向に複数段設けられた横支柱と、
前記横支柱から前記横支柱の長さ方向に対して垂直な両横方向に延ばされた梁材と、
前記梁材上に、前記横支柱の左右それぞれに前記横支柱に沿って乗せられた、栽培容器を格納できるように上向きに開放された空間を有する水樋と、
を有する植物栽培装置により、上記の課題を解決した。
【0010】
すなわち、四隅に支柱を持つ櫓構造ではなく、一直線上に並ぶ縦支柱と、その間を渡して固定される横支柱から梁材が延ばされた上に栽培容器が並ぶので、両横方向の占有面積が支柱一本分とそれに伴う部位の分だけ削減することができ、面積当たりの収容率が大きく向上した植物栽培装置となった。
【0011】
また、この発明にかかる植物栽培装置は、下から二段目以降の前記水樋が下方側の一部に通水孔を有し、前記通水孔から下方に位置する別の前記水樋へ、落下より減速させて水を伝える伝水路を有する構造を採用できる。各段の前記水樋からの排水管を設けようとすると、その分だけ上下方向の高さを余分に必要とする。そこで、各段の前記水樋で排水すべき水を、伝水路をつたって下方にある別の前記水樋へ送り込み、最下段の前記水樋からのみ排水管に繋げることができるようにすると、従来は最下段以外の各段に設ける必要があった排水管の分だけ上下方向高さに必要な体積を削減することができる。例えば従来であれば4段分までしか収容できなかった空間に、5段分まで収容するといったことが可能になる。
【0012】
また、この発明にかかる植物栽培装置は、その植物栽培装置を設置する設置面に接して前記両横方向に回転可能な車輪と、前記車輪を回転させる駆動機構とを有する構造を採用できる。車輪を有し可動式にすることで、設置後に同型の植物栽培装置との間をできるだけ詰めて設置することができるので、複数台を設置する際の面積当たりの収容率を高めることができる。
【0013】
さらに、上記の車輪と駆動機構を有する構造に加えて、設置箇所の天井に、前記両横方向に配したレール内を移動するローラと、前記ローラから下方に配された天井リングとを設けておく。この天井リングを、最上段の前記縦支柱又は横支柱に対して直接的に又は間接的に拘束した拘束具を有する構造を採用できる。可動式にするだけでは転倒しやすくなってしまうが、可動する方向に沿って配したレール上を稼働できる天井リングに拘束させることで、地震などの際に転倒する危険性を大幅に抑制できる。
【0014】
また、この発明にかかる植物栽培装置は、前記栽培容器に給水する給水機構として、前記縦支柱に並行する縦給水管と、前記縦給水管から分岐して各段の前記横支柱に並行して前記水樋の間に配された横給水管と、前記横給水管から前記栽培容器へ給水する個別給水管とを有する構成を採用できる。前記横支柱を前記水樋の間に格納することで、上下方向の占有幅が給水機構によって広がらず、上下方向に格納できる段数を増やすことができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明にかかる植物栽培装置により、面積当たりに収容できる栽培容器の数を従来の櫓構造の植物栽培装置に比べて飛躍的に増加させることができる。これにより、植物工場における面積当たりの収容率及び作物の生産効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)この発明にかかる植物栽培装置の実施形態の横方向から見た図、(b)(a)の長さ方向から見た図
【
図2】この発明にかかる植物栽培装置の実施形態の端部方向から見下ろした斜視図
【
図9】天井に設置したレール及び天井リングと最上段の横支柱との断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明について具体的な実施形態とともに詳細に説明する。この発明は、面積当たりの収容率を高めた植物栽培装置10である。
【0018】
この発明にかかる植物栽培装置の実施形態例の全体図を
図1(a)及び(b)に示す。
図1(a)は横方向から見た全体側面図、
図1(b)は長さ方向から見た正面図である。なお、本説明において
図1(b)における左右方向を横方向という。
【0019】
この植物栽培装置10の基本骨格は、それぞれが鉛直方向に向き、一直線上に並ぶ複数本の縦支柱11と、縦支柱11に対して固定され、縦支柱11,11同士の間を渡し水平方向に向き、上下方向に複数段設けられた横支柱12(12a~12f)とからなる。縦支柱11が向く前記鉛直方向は
図1(a)(b)の上下方向であり、横支柱12は
図1(a)の左右方向で示される水平方向に向く。ここでは、一直線上に3本の縦支柱11が並んだ実施形態を示しているが、2本でもよいし、4本以上でもよい。ただし、縦支柱11の本数が増えると、その部分は後述する栽培容器16を設置できないために面積当たりの収容率が減少してしまうので、縦支柱11の数は強度上必要最低限に抑えることが望ましい。
【0020】
上記の縦支柱11及び横支柱12を構成するそれぞれの支柱は、一定の長さを持つ、強度の高い材質のものであれば良く、例えば、金属製で中空状の円筒管、角パイプや、H型鋼を使用することができる。その中でも、工事現場で足場資材として利用される一般的な単管を用いると、強度及びコストの点で特に望ましい。
【0021】
上記の縦支柱11及び横支柱12との間の接点では、クランプ13により上下左右に交錯しながら接するように固定する。このクランプ13により縦支柱11と横支柱12とを固定した形態を、
図2の斜視図及び
図3の拡大図に示す。このクランプ13としても、工事現場で足場資材の固定に利用される一般的なクランプを用いると、強度及びコストの点で特に望ましい。また、支柱の形状に応じて、上記のクランプの代わりに同様に支柱同士を固定できる部材を適宜利用できる。
【0022】
横支柱12(12a~12f)には、間隔を空けて梁材14が複数個取り付けられる。梁材14は横支柱12の長さ方向に対して垂直な両横方向に延ばされている。この両横方向とは
図1(b)における左右方向にあたる。梁材を横支柱12に取り付ける形態としては、特に限定されないが、この実施形態では横支柱12を囲むUボルトクランプ27が下に突起を延ばしており、その突起に対して下方から梁材14を固定している。横支柱12の下側から両横方向に梁材14の両梁が延びる構造となっている。この梁材14には後述する水樋15及び栽培容器16の重量が集中するため、金属製で強固な材料で形成されることが望ましい。
【0023】
この横支柱12から両横方向にそれぞれ複数本延ばされた梁材14の上に、横支柱12に沿って水樋15が載せられる。
図1(a)では水樋15が3本の梁材14に支えられている。また、
図1(b)では横支柱12の横方向として左右両方に梁材14が延ばされており、左右それぞれに水樋15を載せた実施形態を示している。ただし、本発明としてはこれに限らず、左右いずれかの方向に延びる梁材を、上下互い違いに設けてその上に水樋15を設置する実施形態でもよい。水樋15は横支柱12の長さ方向に長い方形又は半円筒形で、内部に後述する栽培容器16を格納できるように上向きに開放された空間を有するように形成されている。なお、格納される際に、栽培容器16が脱落しなければ、栽培容器16の全体が収まっていなくても良い。また、水樋15は内部に流された水をまとめて排水できるように内部に傾斜ができるように形成されているか、または傾斜を有するように配されている。この実施形態では傾斜を有するように両横方向に傾くように配されている。水樋15はできるだけ軽量で、かつ水を通さないことが必要である。このため水樋15はプラスチック材料で形成されていると好ましい。なお、軽量かつ水を通さなければ、金属でも木材であってもよい。
【0024】
水樋15を両横方向に傾斜させている構造の拡大図を
図4に示す。梁材14の左右両側に勾配曲げ金具28が取り付けられており、これが水樋15の両横方向の側面を支えて、傾斜させた状態で固定している。この勾配曲げ金具28の斜視図を
図5に示す。勾配曲げ金具28は、梁材14の上部に乗る天面28aと、天面28aから直角に下方へ折れ曲がった固定面28bと、天面28aから上方に跳ね上がった傾斜面28dを有する。固定面28bには固定穴28cが空けられ、梁材14の固定穴に対してネジ留めすることで勾配曲げ金具28の全体を固定できる。天面28aと傾斜面28dとの為す角度は、植える作物の条件に応じて適宜設定するとよい。具体的には100度以上125度以下程度に設定するとよい。これにより、栽培容器の土などの内容物の脱落を防ぎ、かつ、作業時に視認性・作業性が向上することができる。
【0025】
一方、水樋15の中央方向側の下方角は、横支柱12(
図4では12xと表示)を囲んで梁材14を支えるUボルトクランプ27の上側に乗って支えられている。上記の天面28aと傾斜面28dとの為す角度は、水樋15の中央方向側の下方角がUボルトクランプ27の上に乗せられたときに、水樋15の両横方向側の側面の角度に傾斜面28dが沿う角度であると好ましい。
【0026】
水樋15の内側には作物を育成する栽培容器16が設けられる。図に示す実施形態ではポット状の栽培容器16を水樋15の長さ方向に並べているが、形状はこれに限定されず、例えば水樋15に沿った長尺形状の栽培容器を並べていてもよい。ただし、水樋15の内部に植えられる作物の株数や収穫量ができるだけ多くなるように、間隔を空けずに栽培容器16を詰めておけることが望ましい。それにより、面積当たりの収容率を高めることができる。栽培容器16も軽量であることが望ましく、プラスチック材料で形成されていると好ましい。栽培容器16の中は土やスポンジ、不織布などの、作物の種や苗などを固定できる内容物が詰められている。これらの内容物は水を保持できることが望ましい。一方で、栽培容器16の下方には、余分な水を排水できる排水口(図示せず)が設けられていると好ましい。排水口から排出された水は、水樋15に集められて排水される。
【0027】
以上の構成により、横支柱12(12b~12f)ごとの各段に、左右両横に水樋15が配され、この水樋15の内部に栽培容器16が並べられた構造が並ぶ。従来の櫓構造に比べて、横支柱12を挟んで水樋15が並んでいるだけで四隅や外周を支柱などで囲まれることがなく、水平方向の占有面積を削減し、面積当たりの収容率を高めた構造を実現している。このような構造を上下方向に複数段重ねて、さらに面積当たりの収容率を数倍にしている。
【0028】
個々の栽培容器16への給水機構の例を
図6の斜視図を用いて説明する。縦支柱11と並行に、縦給水管18が設けてある。縦給水管18には下方から水が供給される。縦給水管18からは横支柱12(12b~12f)ごとに設けられた各段について、それぞれ横給水管19(19a~19e)が分岐している。横給水管19は各段の横支柱12に並行して水樋15,15の間に配されている。水樋15は上記の通り両横方向に傾いている分、中央側が広く空いており、ここに横給水管19を通すことで、スペースを有効活用し、各段に必要な高さを節約できる。横給水管19の上部からは個別給水管17が分岐しており、この個別給水管17を介して個々の栽培容器16へ給水する。また、縦給水管18から分岐したそれぞれの横給水管19(19a~19e)には弁を操作するコック22が設けてあり、その段の水樋15及び栽培容器16への給水が一時的に不要になった場合にはコック22を操作して給水を停止する。
【0029】
なお、栽培容器16への給水機構は上記の形態に限られるものではなく、個別給水管17の先端形状が変更されたものであったり、横給水管19が水樋15の上方にあって散水により給水するものであったり、特に限定されない。ただし、スペースの有効活用の点からは、水樋15、15の間に横給水管19を配するのが特に好ましい。また、コック22の弁が電磁弁であってもよいし、その電磁弁を電子的に制御するシステムを別途備えていてもよい。
【0030】
次に、個々の栽培容器16からの排水機構の例を、
図4を参照して説明する。栽培容器16は植木鉢などのように下方に排水口が空けられており、栽培容器16で余分となった水が水樋15に落ちて集められる。水樋15は両横方向へ傾けられているので、集められた水はこの傾きによって底部両横方向側へと集まる。この底部両横方向側のように最下部に位置することになる水樋15の下方側の一部に、水を排出する通水孔25を空ける。設置した際に水が集まる最下部となる位置であれば水樋15の底面に限られず、傾けた際に下側となる側面であってもよい。さらに、この通水孔25は開放せずに、孔を通して下方に位置する別の水樋15の上まで到達する伝水路23を取り付けてある。伝水路23は、水が自由落下するよりも流速を制限させて水を下側へと伝えるものである。排水の流速を制限せずに下方に位置する別の水樋15へ落下させると跳ね返って、植物や機器などに排水がかかる恐れがある。流速を制限することでこのような事態を抑制し、植物の汚染や、機器の故障などを防止することができる。スペースを省略するためには、水平方向へ延びたりせず、真下へ向けられていることが望ましい。例えば、流速を制限する突起物を内部に備えたホースなどが挙げられる。また、傾斜を有する螺旋状の管によって最終的に真下へ向かわせるものでもよい。図に示す実施形態では、伝水路23として、耐水性のある鎖を用いる例を示す。通水孔25を通る排水は、排水管などでまとめる必要なく、伝水路23を伝って下方に位置する別の水樋15で集めることができる。このため、各段の水樋15からの排水を集めるための排水用配管を各段の下部に設けなくてよくなり、上下方向に必要となるスペースを削減できる。なお、最下段の拡大図である
図7に示すように、最下段の水樋15から下に延ばされた伝水路23は、最下段にのみ設けられた排水管24の中へ到達されており、最上段の水樋15から最下段の水樋15までの全ての排水が、排水管24一本で集めて排水可能となる。
【0031】
個々の栽培容器16で育成する作物を照らす照明機構としては、
図2の最上段に示すように、梁材14の下方側に、横支柱12aに沿って配された長尺状の照明材20が利用できる。照明材20の構成としては、LEDを用いると、波長や波長ごとの光量などを任意に選択できるとともに、使用する電力量も最小限にとどめることができるので好ましい。
【0032】
この発明にかかる植物栽培装置10は、全体を動かせるようにするため、設置面に接して両横方向に回転可能な車輪36と、車輪36を回転させる駆動機構とを有する。全体を動かせると、栽培に関する作業を終えた後、隣接する植物栽培装置10との間のスペースを詰めることが容易にできる。これにより、多数の植物栽培装置10を併用する際の収容率を高めることが容易にできる。
【0033】
駆動機構と車輪36の構成例を、装置下部を拡大した
図7を参照して説明する。車輪36は四隅に配されている。これらの車輪36は、各段の栽培容器16への通常の作業では植物栽培装置10が倒れないように支えられる位置に配されていると好ましい。これらの車輪は装置の底部のフレームとなる装置台部37に対して固定されている。装置台部37の上面には、縦支柱11を支えて固定する支柱固定部38が設けられており、縦支柱11を装置台部37に対して固定している。車輪36の少なくとも一つに対して、手動で回転力を与えるハンドル31が装置台部37の上方に取り付けてある。ハンドル31は手動で回すものであるため、大人の作業者の手が立ったまま届く高さに設けられていると好ましい。ハンドル31を回転した回転力は、ベルトチェーン34,34を介して、車輪36に隣接する回転軸35を回転させる。なお、ベルトチェーン34,34の間に、ベルトチェーン34に対して噛み合い回転される中継軸33を設けてある。中継軸33及び回転軸35ともに、装置台部37に対して回転可能に取り付けられてある。ハンドル31が回されたことに従って回転軸35が回転されると、さらにベルトチェーンを介して車輪36が回転され、植物栽培装置10を両横方向に移動させることができる。なお、伝達機構はベルトチェーンに限定されるものではなく、その他の回転駆動機構を選択してよい。
【0034】
さらに、この発明にかかる植物栽培装置10は、転倒防止機構を有すると好ましい。上記の車輪36があることで移動させやすくなる半面、奥行方向の部材が使用されていないこともあり、高速な移動や地震などにより大きな揺れが両横方向に掛けられた場合、転倒しやすくなってしまうため、その危険性を低減するための機構である。この転倒防止機構の例を
図8の斜視図及び
図9の天井部断面図とともに説明する。植物栽培装置10を設置する箇所の天井Sに、両横方向に配したレール43を設けてある。レール43の天井S裏には、振動を受けた際に植物栽培装置10の荷重を支えられるように、レール固定具45が設けてある。レール43の内部には、レール43に沿って移動するローラ44が入れ込まれており、ローラ44からは下方に天井リング41がぶら下げられてある。天井リング41と、最上段の縦支柱11又は横支柱12aとの間を、直接的に又は間接的に拘束具で繋いで拘束する。図では拘束具として転倒防止チェーン42を用いた例を示す。直接的にとは、天井リング41を通した拘束具を、縦支柱11や横支柱12aに直接引っ掛けて外れないようにすることである。間接的にとは、天井リング41を通した拘束具を、縦支柱11や横支柱12aに別途取り付けて固定した金具などの付属品に引っ掛けて外れないようにすることである。横支柱12aであれば横支柱12aの下側をくぐらせることで直接的に拘束しやすい。縦支柱11であれば例えば上端に拡幅された部位を持つ抜け止めを設けてその抜け止めより下に拘束具を引っ掛けることで、縦支柱11に直接的に拘束できる。間接的に取り付ける場合は、拘束具の形態に応じて適宜様々な金具を選択できる。いずれの形態であっても、高速な移動や地震などにより大きな揺れが起きて、両横方向に植物栽培装置10が揺れ動いても、横支柱12aに転倒防止チェーン42で繋げられた天井リング41が、レール43内を移動するローラ44を動かし、揺れを吸収する。これにより、植物栽培装置10が転倒する危険性を抑制できる。
【実施例】
【0035】
本発明の植物栽培装置として、
図1に示す形態の植物栽培装置を製造した。長さ8mで24株分の栽培装置を収容した水樋を、両横方向に2本並べた。両横方向の占有幅は550mmとなった。また、各段には排水管を設けず、各段の水樋からは下の段への排水を伝わせる伝水チェーンを設けることで、一段あたりの上下方向高さを圧縮し、段数は5段分を収容することができた。
【0036】
一方、従来の櫓型で四隅に支柱を有する植物栽培装置に、上記と同じ長さ8mで24株分の栽培装置を収容した水樋を、一段あたり2列並べた。両横方向の占有幅は600mmであり、支柱がある分だけ両横方向の占有面積は本発明の植物栽培装置に比べて広がってしまった。
【0037】
また、従来の植物栽培装置では、それぞれの水樋の下部に水平方向へ延びる排水管を取り付けてあり、端部に設けた縦排水管に集約して排水する機構を採用した。このため、縦排水管の分、一段あたりの上下方向高さは本発明の植物栽培装置より高くなり、全体としては同じ高さの中に、4段分のみ収容することができた。
【符号の説明】
【0038】
10 植物栽培装置
11 縦支柱
12,12a,12b,12c,12d,12e,12f 横支柱
13 クランプ
14 梁材
15 水樋
16 栽培容器
17 個別給水管
18 縦給水管
19 横給水管
20 照明材
22 コック
23 伝水路
24 排水管
25 通水孔
27 Uボルトクランプ
28 勾配曲げ金具
28a 天面
28b 固定面
28c 固定穴
28d 傾斜面
29 ファン
31 ハンドル
33 中継軸
34 ベルトチェーン
35 回転軸
36 車輪
37 装置台部
38 支柱固定部
41 天井リング
42 転倒防止チェーン
43 レール
44 ローラ
45 レール固定具
S 天井
【要約】
【課題】植物工場に据える植物栽培装置の面積当たりの収容率を向上させる。
【解決手段】それぞれが鉛直方向に向き、水平方向に一直線上に並ぶ複数本の縦支柱11と、縦支柱11に対して固定され、縦支柱11同士の間を渡し水平方向に向き、上下方向に複数段設けられた横支柱12と、横支柱12から横支柱12の長さ方向に対して垂直な両横方向に延ばされた梁材14と、梁材14上に横支柱12の左右それぞれに横支柱12に沿って乗せられた水樋15と、水樋15の内側に設けられた栽培容器16と、栽培容器16に給水する給水機構とを有する植物栽培装置を用いた。
【選択図】
図1