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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】複層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/40 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
B32B27/40
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021530028
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2020025615
(87)【国際公開番号】W WO2021002342
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2019123620
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】沢田 雅史
(72)【発明者】
【氏名】柳田 正毅
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-073497(JP,A)
【文献】特開2013-147614(JP,A)
【文献】特開2003-026755(JP,A)
【文献】特開2009-024060(JP,A)
【文献】特開2015-131871(JP,A)
【文献】特開平09-235460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08G 18/00-18/87、71/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基層と前記基層上に形成された表層とを有する複層フィルムであって、
前記表層が、ポリオルガノシロキサン基及び活性水素基を有する化合物(a1)を必須成分として含有する活性水素成分(A1)とイソシアネート成分(B1)とからなるポリウレタン樹脂(U1)を含有し、前記ポリウレタン樹脂(U1)の100%伸長時の弾性回復率が50~100%であり、
前記基層が、活性水素成分(A2)とイソシアネート成分(B2)とからなるポリウレタン樹脂(U2)を含有し、前記活性水素成分(A2)が、前記ポリオルガノシロキサン基及び活性水素基を有する化合物(a1)を含有せず、高分子ポリオール(a2)を必須成分として含有する活性水素成分であり、前記ポリウレタン樹脂(U2)の100%伸長時の弾性回復率が80~100%であり、
前記表層の膜厚が1~50μmであり、前記基層の膜厚が100~1,000μmである
複層フィルム。
【請求項2】
前記ポリオルガノシロキサン基が、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン基である請求項1記載の複層フィルム。
【化1】
[式中、R~Rはそれぞれ独立に炭素数1~6の炭化水素基を表し、nは1~100の整数である。]
【請求項3】
前記ポリオルガノシロキサン基及び活性水素基を有する化合物(a1)の重量が、構成成分として、前記ポリウレタン樹脂(U1)の重量を基準として、0.5~5重量%である請求項1又は2記載の複層フィルム。
【請求項4】
前記高分子ポリオール(a2)が、ポリテトラメチレングリコールを含む高分子ポリオールである請求項1~3のいずれか記載の複層フィルム。
【請求項5】
前記ポリウレタン樹脂(U2)の架橋点の濃度が、0.05~0.25mmol/gであり、前記ポリウレタン樹脂(U2)のウレタン基濃度(ウレア基が存在する場合はウレタン基とウレア基の合計濃度)が、1.0~2.0mmol/gである請求項1~4のいずれか記載の複層フィルム。
【請求項6】
光学部材の表面保護フィルム用である請求項1~のいずれか記載の複層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶パネル等の光学部材用の表面保護フィルムとして、ハードコート処理されたフィルムが用いられてきた。しかし、フィルムの表面硬度を上げることにより傷が付きにくくすることはできるものの、一旦、傷が付くとその傷を回復することできない。
そこで自己修復性を有する材料が検討されており、例えばポリアミド、ポリカーボネート及びポリイミド等の透明基材にポリエステル系ウレタン樹脂を積層したフィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1記載の複層フィルムを含めて従来の技術では傷の回復時間が長く、微細な傷が付きやすい条件下での耐擦傷性が十分ではないと言う問題がある。また、従来の技術では、耐屈曲性が十分ではないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2019-511386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、耐擦傷性に優れ、さらに耐屈曲性にも優れるフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、基層と上記基層上に形成された表層とを有する複層フィルムであって、上記表層がポリオルガノシロキサン基及び活性水素基を有する化合物(a1)を必須成分として含有する活性水素成分(A1)とイソシアネート成分(B1)とからなるポリウレタン樹脂(U1)を含有し、上記ポリウレタン樹脂(U1)の100%伸長時の弾性回復率が50~100%であり、上記基層が、活性水素成分(A2)とイソシアネート成分(B2)からなるポリウレタン樹脂(U2)を含有し、上記活性水素成分(A2)が、ポリオルガノシロキサン基及び活性水素基を有する化合物(a1)を含有せず、高分子ポリオール(a2)を必須成分として含有する活性水素成分であり、上記ポリウレタン樹脂(U2)の100%伸長時の弾性回復率が80~100%である複層フィルムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の複層フィルムは、耐擦傷性に優れ、さらに耐屈曲性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の複層フィルムは、基層と上記基層上に形成された表層とを有する複層フィルムである。
そして、上記表層がポリオルガノシロキサン基及び活性水素基を有する化合物(a1)を必須成分として含有する活性水素成分(A1)とイソシアネート成分(B1)とからなるポリウレタン樹脂(U1)を含有し、上記ポリウレタン樹脂(U1)の100%伸長時の弾性回復率が50~100%であり、上記基層が、活性水素成分(A2)とイソシアネート成分(B2)とからなるポリウレタン樹脂(U2)を含有し、上記活性水素成分(A2)がポリオルガノシロキサン基及び活性水素基を有する化合物(a1)を含有せず、高分子ポリオール(a2)を必須成分として含有する活性水素成分であり、上記ポリウレタン樹脂(U2)の100%伸長時の弾性回復率が80~100%である複層フィルムである。
【0008】
表層にポリオルガノシロキサン基及び活性水素基を有する化合物(a1)を必須成分として含有する活性水素成分(A1)とイソシアネート成分(B1)とからなるポリウレタン樹脂(U1)を含有し、上記ポリウレタン樹脂(U1)の100%伸長時の弾性回復率が50~100%であることにより、耐擦傷性が向上する。
また、上記基層が、活性水素成分(A2)とイソシアネート成分(B2)からなるポリウレタン樹脂(U2)を含有し、上記活性水素成分(A2)が上記ポリオルガノシロキサン基及び活性水素基を有する化合物(a1)を含有せず、高分子ポリオール(a2)を必須成分として含有する活性水素成分であり、上記ポリウレタン樹脂(U2)の100%伸長時の弾性回復率が80~100%であることにより、耐擦傷性及び耐屈曲性に優れるフィルムとすることができる。
また、一般的に本発明における基層に用いるポリウレタン樹脂(U2)等は耐擦傷性及び耐屈曲性に優れるが、表面にタックを生じることが多く、本発明においては表層を設けることにより、複層フィルムの表面のタックの発生を抑えることが可能となる。
【0009】
[表層]
表層の主要構成成分であるポリウレタン樹脂(U1)は、ポリオルガノシロキサン基及び活性水素基を有する化合物(a1)を必須成分として含有する活性水素成分(A1)とイソシアネート成分(B1)とを反応させて得られるポリウレタン樹脂である。
【0010】
ポリウレタン樹脂(U1)における活性水素成分(A1)としては、必須成分としてのポリオルガノシロキサン基と活性水素基を有する化合物(a1)並びに任意成分としての高分子ポリオール(a2)、鎖伸長剤(a3)及び反応停止剤(a4)等が挙げられる。
【0011】
ポリオルガノシロキサン基と活性水素基を有する化合物(a1)として、耐擦傷性及びヘイズの観点から好ましいのは、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン基を有する化合物である。
【0012】
【化1】
【0013】
一般式(1)におけるR~Rはそれぞれ独立に炭素数1~6の炭化水素基を表す。R~Rとして耐擦傷性の観点から好ましいのは炭素数1~3のアルキル基、更に好ましいのはメチル基である。
【0014】
一般式(1)におけるnは1~100の整数であり、耐擦傷性及びヘイズの観点から、10~70が好ましく、更に好ましくは15~50である。
【0015】
ポリオルガノシロキサン基及び活性水素基を有する化合物(a1)[以下、(a1)と略記]が有する活性水素基としては、水酸基、アミノ基及びカルボキシル基等が挙げられる。
(a1)は、一般的にポリウレタン樹脂(U1)の他の構成単量体と相溶性が低いため、ポリウレタン樹脂(U1)に均質に(a1)を導入して(U1)のヘイズの上昇を抑制する観点から、活性水素基として水酸基及びアミノ基を有する(a1)を用いることが好ましい。(a1)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
(a1)のうち、水酸基を有する化合物(a11)としては、市販品を用いることができ、例えば、両末端に水酸基を有する「KF-6001」(官能基当量900g/mol)、「KF-6002」(官能基当量1,600g/mol)、「KF-6003」(官能基当量2,550g/mol)、両末端にフェノール性水酸基を有する「X-22-1821」(官能基当量1,470g/mol)(以上、信越化学工業株式会社製)、「BY-16-752A」(官能基当量1,500g/mol)(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)、一方の末端に水酸基を有する「X-22-170BX」(官能基当量2,800g/mol)、「X-22-170DX」(官能基当量4,670g/mol)、「X-22-176DX」(官能基当量1,600g/mol)、「X-22-176F」(官能基当量6,300g/mol)(以上、信越化学工業株式会社製)、側鎖に水酸基を有する「X-22-4039」(官能基当量970g/mol)「X-22-4015」(官能基当量1,870g/mol)(以上、信越化学工業株式会社製)、両末端ポリエーテル中に水酸基を有する「SF8427」(官能基当量930g/mol、東レ・ダウコーニング株式会社製)、「X-22-4952」(官能基当量1,100g/mol、信越化学工業株式会社製);側鎖ポリエーテル中に水酸基を有する「FZ-2162」(官能基当量750)及び「SH3773M」(官能基当量800g/mol)(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)が挙げられる。
【0017】
(a1)のうち、アミノ基を有する化合物(a12)としては、市販品を用いることができ、例えば、両末端にアミノ基を有る「KF-8010」(官能基当量430g/mol)、「X-22-161A」(官能基当量800g/mol)、「X-22-161B」(官能基当量1,500g/mol)、「KF-8012」(官能基当量2,200g/mol)、「KF-8008」(官能基当量5,700g/mol)、「X-22-9409」(官能基当量700g/mol)、「X-22-1660B-3」(官能基当量2,200g/mol)(以上、信越化学工業株式会社製)、「BY-16-853U」(官能基当量460g/mol)、「BY-16-853」(官能基当量650g/mol)、「BY-16-853B」(官能基当量2,200g/mol)(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)、側鎖にアミノ基を有する「KF-868」(官能基当量8,800g/mol)、「KF-865」(官能基当量5,000g/mol)、「KF-864」(官能基当量3,800)、「KF-880」(官能基当量1,800g/mol)、「KF-8004」(官能基当量1,500g/mol)(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0018】
(a1)のうち、カルボキシル基を有する化合物(a13)としては、市販品を用いることができ、例えば、両末端にカルボキシル基を有する「X-22-162C」(官能基当量2,300g/mol)、一方の末端にカルボキシル基を有する「X-22-3710」(官能基当量1,450g/mol)及び側鎖にカルボキシル基を有する「X-22-3701E」(官能基当量4,000g/mol)(以上、信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0019】
ポリウレタン樹脂(U1)におけるポリオルガノシロキサン基及び活性水素基を有する化合物(a1)の重量は、耐擦傷性、タックフリー性及びヘイズの観点から、構成成分として、ポリウレタン樹脂(U1)の重量を基準として、好ましくは0.5~5重量%、更に好ましくは1~4重量%である。
【0020】
高分子ポリオール(a2)として、好ましくは数平均分子量(以下、Mnと略記)が500以上の高分子ポリオールであり、具体的には、ポリエステルポリオール(a21)、ポリエーテルポリオール(a22)及びポリエーテルエステルポリオール(a23)等が挙げられる。高分子ポリオール(a2)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
ポリエステルポリオール(a21)としては、縮合型ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール及びポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0022】
上記縮合型ポリエステルポリオールとしては、Mn又は化学式量が500未満のポリオールと、炭素数2~20の多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体[酸無水物、低級(炭素数1~4)アルキルエステル及び酸ハライド等]との縮合により得られるもの等が挙げられる。
【0023】
上記Mn又は化学式量が500未満のポリオールとしては、炭素数2~20の多価アルコール;炭素数2~20の多価アルコールの炭素数2~12のアルキレンオキサイド(以下、AOと略記)付加物であってMn又は化学式量が500未満のもの;ビスフェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールS及びビスフェノールF等)の炭素数2~12のAO付加物であってMn又は化学式量が500未満のもの;ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート及びその炭素数2~12のAO付加物であってMn又は化学式量が500未満のもの等が挙げられる。
【0024】
上記炭素数2~12のAOとしては、エチレンオキサイド、1,2-又は1,3-プロピレンオキサイド、1,2-,1,3-又は2,3-ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、スチレンオキサイド、α-オレフィンオキサイド及びエピクロルヒドリン等が挙げられる。
【0025】
上記炭素数2~20の多価アルコールとしては、炭素数2~12の直鎖又は分岐の脂肪族2価アルコール[エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコール等の直鎖アルコール;1,2-、1,3-又は2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,7-ヘプタンジオール、3-メチル-1,7-ヘプタンジオール、4-メチル-1,7-ヘプタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,8-オクタンジオール及び4-メチルオクタンジオール等の分岐アルコール等];炭素数6~20の脂環式2価アルコール[1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘプタンジオール、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)-1,4-ジオキサン、2,7-ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、1,4-ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等];炭素数8~20の芳香脂肪族2価アルコール[m-又はp-キシリレンジオール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン及びビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等];炭素数3~20の3価アルコール[脂肪族トリオール(グリセリン及びトリメチロールプロパン等)等];炭素数5~20の4~8価アルコール[脂肪族ポリオール(ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン及びジペンタエリスリトール等);糖類(ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド及びその誘導体)];等が挙げられる。
【0026】
上記炭素数2~20の多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、デシルコハク酸、フマル酸及びマレイン酸等)、脂環式ジカルボン酸(ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、t-ブチルイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸及び4,4’-ビフェニルジカルボン酸等)、3価又はそれ以上の多価カルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、これらの無水物(無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸及び無水トリメリット酸等)、これらの酸ハロゲン化物(アジピン酸ジクロライド等)、これらの低分子量アルキルエステル(コハク酸ジメチル及びフタル酸ジメチル等)並びこれらの併用が挙げられる。
【0027】
上記ポリラクトンポリオールとしては、上記炭素数2~20の多価アルコールを開始剤として炭素数3~12のラクトンモノマー(β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、η-カプリロラクトン、11-ウンデカノラクトン及び12-トリデカノイド等)を開環重合させたもの等が挙げられる。ラクトンモノマーは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記ポリカーボネートポリオールとしては、上記炭素数2~20の多価アルコール(好ましくは炭素数3~9、更に好ましくは炭素数4~6の脂肪族2価アルコール)の1種又は2種以上(好ましくは2~4種)と、低分子カーボネート化合物(例えば、アルキル基の炭素数1~6のジアルキルカーボネート、炭素数2~6のアルキレン基を有するアルキレンカーボネート及び炭素数6~9のアリール基を有するジアリールカーボネート)から、脱アルコール反応させながら縮合させることによって製造されるポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0029】
ポリエーテルポリオール(a22)としては、上記Mn又は化学式量が500未満のポリオールに炭素数2~12のAOを付加させた化合物等が挙げられる。AOは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよく、後者の場合はブロック付加(チップ型、バランス型、活性セカンダリー型等)でもランダム付加でもこれらの併用系でもよい。
【0030】
上記Mn又は化学式量が500未満のポリオールへのAOの付加は、例えば無触媒で又は触媒(アルカリ触媒、アミン系触媒、酸性触媒等)の存在下(特にAO付加の後半の段階で)に常圧又は加圧下に1段階又は多段階で行なわれる。
【0031】
ポリエーテルポリオール(a22)の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(オキシ-3-メチルテトラメチレン)グリコール、テトラヒドロフラン/エチレンオキサイド共重合ジオール及びテトラヒドロフラン/3-メチルテトラヒドロフラン共重合ジオール等が挙げられる。
【0032】
ポリエーテルエステルポリオール(a23)としては、上記ポリエーテルポリオールの1種以上と上記縮合型ポリエステルポリオールの原料として例示した炭素数2~20の多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体の1種以上とを縮重合させて得られるもの等が挙げられる。
【0033】
ポリウレタン樹脂(U1)における高分子ポリオール(a2)の内、耐擦傷性、タックフリー性及び耐薬品性の観点から特に好ましいのは、ポリカーボネートポリオールである。
【0034】
高分子ポリオール(a2)のMnは、耐擦傷性の観点から、好ましくは500以上であり、更に好ましくは500~5000、特に好ましくは800~3000である。
【0035】
尚、本発明における高分子ポリオール(a2)のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、例えば以下の条件で測定することができる。
装置:「Waters Alliance 2695」[Waters社製]
カラム:「Guardcolumn Super H-L」(1本)、「TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH4000(いずれも東ソー株式会社製)を各1本連結したもの」
試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10μl
流量:0.6ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリエチレングリコール
【0036】
ポリウレタン樹脂(U1)における高分子ポリオール(a2)の重量は、耐擦傷性及びタックフリー性の観点から、構成成分として、ポリウレタン樹脂(U1)の重量を基準として、好ましくは50~90重量%、更に好ましくは60~80重量%である。
【0037】
鎖伸長剤(a3)としては、水、上記Mn又は化学式量が500未満のポリオール及びMn又は化学式量が500未満のポリアミン化合物等が挙げられる。
【0038】
上記Mn又は化学式量が500未満のポリオールとしては、上記縮合型ポリエステルポリオールを構成するMn又は化学式量が500未満のポリオールと同様の物が挙げられる。
【0039】
上記Mn又は化学式量が500未満のポリアミン化合物としては、炭素数2~36の脂肪族ポリアミン[エチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジヘキシレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチエレンヘキサミン及びヘキサエチレンヘプタミン等のポリ(n=2~6)アルキレン基(炭素数2~6)ポリ(n=3~7)アミン等]、炭素数6~20の脂環式ポリアミン(1,3-又は1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-又は2,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等)、炭素数6~20の芳香族ポリアミン(1,3-又は1,4-フェニレンジアミン、2,4-又は2,6-トリレンジアミン、4,4’-又は2,4’-メチレンビスアニリン等)、炭素数8~20の芳香脂肪族ポリアミン[1,3-又は1,4-キシリレンジアミン、ビス(アミノエチル)ベンゼン、ビス(アミノプロピル)ベンゼン及びビス(アミノブチル)ベンゼン等]、炭素数3~20の複素環式ポリアミン[2,4-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、ピペラジン及びN-(2-アミノエチル)ピペラジン等]、ヒドラジン又はその誘導体(二塩基酸ジヒドラジド例えばアジピン酸ジヒドラジド等)及び炭素数2~20のアミノアルコール類(例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール及びトリエタノールアミン)等が挙げられる。
【0040】
鎖伸長剤(a3)のうち、耐擦傷性及びタックフリー性の観点から好ましくは、水、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール及びトリメチロールプロパンである。
【0041】
ポリウレタン樹脂(U1)における鎖伸長剤(a3)の重量は、耐擦傷性及びタックフリー性の観点から、構成成分として、ポリウレタン樹脂(U1)の重量を基準として、好ましくは0.5~10重量%、更に好ましくは1~5重量%である。
【0042】
反応停止剤(a4)としては、炭素数1~20のモノアルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、デカノール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコール等)、炭素数1~20のモノアミン(モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン及びモノオクチルアミン等のモノ又はジアルキルアミン並びにモノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミン等のモノ又はジアルカノールアミン等)が挙げられる。
【0043】
反応停止剤(a4)のうち、耐擦傷性及びタックフリー性の観点から好ましくはモノエタノールアミン及びジエタノールアミンである。
【0044】
ポリイソシアネート成分(B1)としては、2~3個又はそれ以上のイソシアネート基を有する炭素数8~26の芳香族ポリイソシアネート(b1)、炭素数4~22の脂肪族ポリイソシアネート(b2)、炭素数8~18の脂環式ポリイソシアネート(b3)、炭素数10~18の芳香脂肪族ポリイソシアネート(b4)及びこれらの有機ポリイソシアネートの変性物(b5)等が挙げられる。
【0045】
炭素数8~26の芳香族ポリイソシアネート(b1)[以下、(b1)と略記]としては、例えば1,3-又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート(以下、トリレンジイソシアネートをTDIと略記)、粗製TDI、4,4’-又は2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、ジフェニルメタンジイソシアネートをMDIと略記)、粗製MDI、ポリアリールポリイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート及びm-又はp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートが挙げられる。
【0046】
炭素数4~22の脂肪族ポリイソシアネート(b2)[以下、(b2)と略記]としては、例えばエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート及び2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエートが挙げられる。
【0047】
炭素数8~18の脂環式ポリイソシアネート(b3)[以下、(b3)と略記]としては、例えばイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、水添MDIと略記)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート及び2,5-又は2,6-ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0048】
炭素数10~18の芳香脂肪族ポリイソシアネート(b4)[以下、(b4)と略記]としては、例えばm-又はp-キシリレンジイソシアネート及びα,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0049】
(b1)~(b4)の有機ポリイソシアネートの変性物(b5)としては、上記ポリイソシアネートのウレタン基、カルボジイミド基、アロハネート基、ウレア基、ビウレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基又はオキサゾリドン基含有変性物[例えば変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI及びトリヒドロカルビルホスフェート変性MDI等)、ウレタン変性TDI、ビウレット変性HDI、イソシアヌレート変性HDI及びイソシアヌレート変性IPDI]が挙げられる。
【0050】
ポリウレタン樹脂(U1)におけるイソシアネート成分(B1)の内、耐擦傷性の観点から好ましいのは、炭素数8~26の芳香族ポリイソシアネート(b1)、更に好ましいのは炭素数8~26の芳香族ジイソシアネート、特に好ましいのはMDIである。
イソシアネート成分(B1)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0051】
ポリウレタン樹脂(U1)におけるイソシアネート成分(B1)の重量は、耐擦傷性及びタックフリー性の観点から、構成成分として、ポリウレタン樹脂(U1)の重量を基準として、好ましくは10~50重量%、更に好ましくは20~40重量%である。
【0052】
ポリウレタン樹脂(U1)の用いる高分子ポリオール(a2)のガラス転移点(Tg)、ポリウレタン樹脂(U1)中の架橋点の濃度並びにポリウレタン樹脂(U1)中のウレタン基濃度及びウレア基濃度を調整すること等により、ポリウレタン樹脂(U1)の弾性回復率を所定の範囲にすることができる。
ポリウレタン樹脂(U1)に用いる高分子ポリオール(a2)のTgは-20℃以下が好ましく、ポリウレタン樹脂(U1)の架橋点の濃度は0.03~0.25mmol/gが好ましく、ポリウレタン樹脂(U1)中のウレタン基濃度(ウレア基が存在する場合はウレタン基とウレア基の合計濃度)は1.5~2.5mmol/gが好ましい。
尚、本発明におけるポリウレタン樹脂(U1)の架橋点の濃度(単位:mmol/g)は、ポリウレタン樹脂(U1)に用いる3官能以上の構成単量体の官能基数をFとした場合、3官能以上の構成単量体それぞれについて、(F-2)×{3官能以上の構成単量体のポリウレタン樹脂(U2)1g中のミリモル数}を計算してその総和をとることにより算出された値である。
【0053】
本発明におけるポリウレタン樹脂(U1)の製造方法は特に限定されず、活性水素成分(A1)、イソシアネート成分(B1)及び必要により有機溶剤を用いて予めウレタンプレポリマーを製造して、ウレタンプレポリマーと鎖伸長剤とを反応させる方法やバッチ式反応槽に活性水素成分(A1)、イソシアネート成分(B1)及び必要により有機溶剤を一括して仕込み、加熱して反応させる方法等が挙げられる。
ウレタンプレポリマーの製造方法は特に限定されないが、例えば無溶剤下、ニーダー中で活性水素成分(A1)及びイソシアネート成分(B1)を混合し、加熱して反応させる方法や攪拌機付きバッチ式反応槽中で有機溶剤の存在下又は非存在下に、活性水素成分(A1)及びイソシアネート成分(B1)を混合し、加熱して反応させる方法が挙げられる。
【0054】
ポリウレタン樹脂(U1)の製造方法においては、その任意の製造工程において有機溶剤を使用することができる。有機溶剤としては特に限定されず、炭素数3~10のケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等)、炭素数2~10のエステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル及びγ-ブチロラクトン等)、炭素数4~10のエーテル系溶剤(ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ及びジエチレングリコールジメチルエーテル等)、炭素数3~10のアミド系溶剤(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン及びN-メチルカプロラクタム等)、炭素数2~10のスルホキシド系溶剤(ジメチルスルホキシド等)、炭素数1~8のアルコール系溶剤(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びオクタノール等)及び炭素数4~10の炭化水素系溶剤(シクロヘキサン、トルエン及びキシレン等)等が挙げられる。有機溶剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0055】
これらの内、溶解性の観点から好ましいのはメチルエチルケトン及びトルエンである。
【0056】
有機溶剤を使用する場合、その使用量はポリウレタン樹脂(U1)の濃度が10~70重量%となる量が好ましく、更に好ましくは15~50重量%となる量である。
【0057】
また、ポリウレタン樹脂(U1)の製造に際し、反応促進のため必要により触媒を含有することができる。触媒の具体例としては、例えば有機金属化合物(ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ビスマスカルボキシレート、ビスマスアルコキシド及びジカルボニル基を有する化合物とビスマスとのキレート化合物等)、無機金属化合物(酸化ビスマス、水酸化ビスマス、ハロゲン化ビスマス等);アミン(トリエチルアミン、トリエチレンジアミン及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン等)及びこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0058】
表層には必須成分としてポリウレタン樹脂(U1)を含有するが、必要により酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、吸着剤、充填剤、離型剤及び難燃剤等の添加剤(D)を含有することができる。
【0059】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール化合物〔ペンタエリスチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等〕、リン化合物[トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等]、イオウ化合物[ペンタエリスチル-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート等]等が挙げられる。
【0060】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール化合物[2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等]等が挙げられる。
【0061】
光安定剤としては、ヒンダードアミン化合物[(ビス-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート等]等が挙げられる。
【0062】
可塑剤としては、フタル酸エステル(フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチルベンジル及びフタル酸ジイソデシル等);脂肪族2塩基酸エステル(アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル及びセバシン酸-2-エチルヘキシル等);トリメリット酸エステル(トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル及びトリメリット酸トリオクチル等);脂肪酸エステル(オレイン酸ブチル等);脂肪族リン酸エステル(トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ-2-エチルヘキシルホスフェート及びトリブトキシホスフェート等);芳香族リン酸エステル[トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート及びトリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフェート等];ハロゲン脂肪族リン酸エステル[トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート及びトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等];等が挙げられる。
【0063】
吸着剤としては、アルミナ、シリカゲル、モレキュラーシーブ等が挙げられる。
【0064】
充填剤としては、カオリン、タルク、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、ベントナイト、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、ガラス繊維、黒鉛、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、硫酸バリウム、ホウ酸亜鉛、アルミナ、マグネシア、ウォラストナイト、ゾノトライト、ウィスカー及び金属粉末等が挙げられる。
【0065】
離型剤としては公知の離型剤等が使用でき、フッ素化合物型離型剤[リン酸トリパーフルオロアルキル(炭素数8~20)エステル(トリパーフルオロオクチルホスフェート及びトリパーフルオロドデシルホスフェート等)];シリコーン化合物型離型剤(ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン及びカルボキシル変性ジメチルポリシロキサン等);脂肪酸エステル型離型剤[炭素数10~24の脂肪酸のモノ又は多価アルコールエステル(ブチルステアレート、硬化ひまし油及びエチレングリコールモノステアレート等)等];脂肪族酸アミド型離型剤[炭素数8~24の脂肪酸のモノ又はビスアミド(オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド及びエチレンジアミン等のジステアリン酸アミド等)等];金属石鹸(ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸亜鉛等);天然又は合成ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス及びポリブロピレンワックス等);等が挙げられる。
【0066】
難燃剤としては、ハロゲン含有難燃剤、リン含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、金属水酸化物含有難燃剤等が挙げられる。
【0067】
表層に用いられるポリウレタン樹脂(U1)の後述の方法で測定される弾性回復率は、50~100%であり、更に好ましくは60~100%である。ポリウレタン樹脂(U1)弾性回復率が50%未満であると耐擦傷性及び耐屈曲性が劣る。
ポリウレタン樹脂(U1)では、このような構成とすることにより、所定の弾性回復率に調整することができ、耐擦傷性及び耐屈曲性を付与することができる。
【0068】
[基層]
本発明において、基層は、活性水素成分(A2)とイソシアネート成分(B2)とからなるポリウレタン樹脂(U2)を含有し、上記活性水素成分(A2)がポリオルガノシロキサン基及び活性水素基を有する化合物(a1)を含有せず、高分子ポリオール(a2)を必須成分として含有する活性水素成分であり、ポリウレタン樹脂(U2)の100%伸長時の弾性回復率が80~100%である。
【0069】
ポリウレタン樹脂(U2)における活性水素成分(A2)としては、ポリオルガノシロキサン基及び活性水素基を有する化合物(a1)を含有せず、高分子ポリオール(a2)を必須成分として含有する。
ポリウレタン樹脂(U2)では、活性水素基を有する化合物(a1)を含有しないので透明性に優れ、高分子ポリオール(a2)を必須成分として含有することにより、所定の弾性回復率に調整することができ、耐擦傷性及び耐屈曲性を付与することができる。
なお、上記ポリオルガノシロキサン基及び活性水素基を有する化合物(a1)、高分子ポリオール(a2)は、ポリウレタン樹脂(U1)で記載したポリオルガノシロキサン基及び活性水素基を有する化合物(a1)、高分子ポリオール(a2)を意味する。
【0070】
高分子ポリオール(a2)は、弾性回復率を所定の範囲に調整し、耐擦傷性及び耐屈曲性を好適に付与する観点から、ポリエーテルポリオール(a22)を含むことが好ましく、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(オキシ-3-メチルテトラメチレン)グリコール及びテトラヒドロフラン/3-メチルテトラヒドロフラン共重合ジオールを含むことが更に好ましく、ポリテトラメチレングリコールを含むことが特に好ましい。
【0071】
高分子ポリオール(a2)のMnは、耐擦傷性の観点から、好ましくは500以上であり、更に好ましくは500~5000、特に好ましくは800~4000である。
【0072】
ポリウレタン樹脂(U2)における高分子ポリオール(a2)の重量は、耐擦傷性及び耐屈曲性の観点から、構成成分として、ポリウレタン樹脂(U2)の重量を基準として、好ましくは60~90重量%、更に好ましくは70~85重量%である。
【0073】
活性水素成分(A2)は、任意成分として鎖伸長剤及び反応停止剤を含有してもよい。
上記鎖伸長剤としては、ポリウレタン樹脂(U1)で記載した鎖伸長剤(a3)を適宜選択して用いることができる。
また、上記反応停止剤としては、ポリウレタン樹脂(U1)で記載した反応停止剤(a4)を適宜選択して用いることができる。
【0074】
ポリウレタン樹脂(U2)における鎖伸長剤(a3)の重量は、耐擦傷性及び耐屈曲性の観点から、構成成分として、ポリウレタン樹脂(U2)の重量を基準として、好ましくは0.5~20重量%、更に好ましくは1~10重量%である。
【0075】
ポリイソシアネート成分(B2)としては、ポリウレタン樹脂(U1)で記載したポリイソシアネート成分(B1)を適宜選択して用いることができる。
なかでも、耐擦傷性の観点から好ましいのは、炭素数8~26の芳香族ポリイソシアネート(b1)、更に好ましいのは炭素数8~26の芳香族ジイソシアネート、特に好ましいのはMDIである。
【0076】
ポリウレタン樹脂(U2)におけるポリイソシアネート成分(B2)の重量は、耐擦傷性及び耐屈曲性の観点から、構成成分として、ポリウレタン樹脂(U2)の重量を基準として、好ましくは5~40重量%、更に好ましくは10~30重量%である。
【0077】
ポリウレタン樹脂(U2)の用いる高分子ポリオール(a2)のガラス転移点(Tg)、ポリウレタン樹脂(U2)中の架橋点の濃度並びにポリウレタン樹脂(U2)中のウレタン基濃度及びウレア基濃度を調整すること等により、ポリウレタン樹脂(U2)の弾性回復率を所定の範囲にすることができる。
ポリウレタン樹脂(U2)に用いる高分子ポリオール(a2)のTgは-20℃以下が好ましく、ポリウレタン樹脂(U2)の架橋点の濃度は0.05~0.25mmol/gが好ましく、ポリウレタン樹脂(U2)中のウレタン基濃度(ウレア基が存在する場合はウレタン基とウレア基の合計濃度)は1.0~2.0mmol/gが好ましい。
尚、本発明におけるポリウレタン樹脂(U2)の架橋点の濃度(単位:mmol/g)は、ポリウレタン樹脂(U2)に用いる3官能以上の構成単量体の官能基数をFとした場合、3官能以上の構成単量体それぞれについて、(F-2)×{3官能以上の構成単量体のポリウレタン樹脂(U2)1g中のミリモル数}を計算してその総和をとることにより算出された値である。
【0078】
本発明におけるポリウレタン樹脂(U2)の製造方法は特に限定されず、活性水素成分(A2)及びイソシアネート成分(B2)を含有すること以外はポリウレタン樹脂(U1)の製造方法と同様の方法を用いることができる。
【0079】
また、ポリウレタン樹脂(U2)の製造に際し、反応促進のため必要によりポリウレタン樹脂(U1)の製造方法で用いた上記触媒を含有することができる。
【0080】
基層には必須成分としてポリウレタン樹脂(U2)を含有するが、必要によりポリウレタン樹脂(U1)の製造方法で用いた上記添加剤(D)を含有することができる。
【0081】
基層に用いられるポリウレタン樹脂(U2)は、本発明の複層フィルムにおいて、外圧による複層フィルムの変形を早期に回復させる機能を担っているため、その100%伸長時の弾性回復率が80~100%である必要がある。ポリウレタン樹脂(U2)の弾性回復率は好ましくは85~100%であり、更に好ましくは90~100%であり、特に好ましくは95~100%である。100%伸長時の弾性回復率が80%未満であると、耐擦傷性及び屈曲性が十分に付与されない。
【0082】
本発明における100%伸長時の弾性回復率は下記方法で測定される。
<100%伸長時の弾性回復率の測定方法>
(1)膜厚が約2mmのシートから、縦100mm×横5mmの短冊状の試験片を切り出して標線間距離が50mmとなるように標線を付ける。
(2)この試験片をインストロン型引張り試験機(島津製作所社製オートグラフ)のチャックにセットして、25℃の雰囲気下、500mm/分の一定速度で標線間の距離が100%になるまで伸長後、直ちに同じ速度で伸長前のチャック間の距離まで戻す操作を行う。
(3)この操作時の伸長過程における50%伸長時の応力(M)と戻り過程における50%伸長時の応力(M)を測定し、次式から弾性回復率を求める。
弾性回復率(%)=M/M×100
【0083】
[複層フィルム]
本発明の複層フィルムは、基層と基層上に形成された表層とを有する。
表層の膜厚は、耐擦傷性及びタック抑制の観点から、好ましくは1~50μm、更に好ましくは5~25である。
基層の膜厚は、耐擦傷性及び耐屈曲性の観点から、好ましくは100~1,000μm、更に好ましくは300~600μmである。
【0084】
本発明の複層フィルムは、光学部材の表面保護フィルム用であることが好ましい。光学部材との接着性を付与するために必要に応じて基層側に接着層を有することができる。上記接着層としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。
【0085】
本発明の複層フィルムの製造方法は特に限定されず、例えば以下の方法で製造することができる。
(1)表層に用いるポリウレタン樹脂(U1)用ウレタンプレポリマーの製造工程
ポリオルガノシロキサン基及び活性水素基を有する化合物(a1)と高分子ポリオール(a2)とイソシアネート成分(B1)を必要により有機溶剤中で反応させて末端にイソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(U1)用ウレタンプレポリマーを製造する。
(2)基層に用いるポリウレタン樹脂(U2)用ウレタンプレポリマーの製造工程
高分子ポリオール(a2)とイソシアネート成分(B2)を必要により有機溶剤中で反応させて末端にイソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(U2)用ウレタンプレポリマーを製造する。
(3)表層の形成工程
ポリウレタン樹脂(U1)用ウレタンプレポリマー又はその有機溶剤溶液と、必要に応じて高分子ポリオール(a2)及び/又は鎖伸長剤(a3)とを混合して、離型フィルム上に所定の膜厚となる様に塗工する。尚、有機溶剤を用いた場合は有機溶剤の乾燥を行う。
(4)基層の形成工程
ポリウレタン樹脂(U2)用ウレタンプレポリマー又はその有機溶剤溶液と、鎖伸長剤(a3)とを混合して、(3)で得られた表層上に所定の膜厚に塗工して加熱硬化させて基層を形成させる。尚、有機溶剤を用いた場合は硬化と共に乾燥を行う。
上記(1)~(4)の工程により、離型フィルム上に表層と基層を有する複層フィルムが形成される。
【0086】
上記(1)及び(2)の工程におけるウレタンプレポリマー化反応の温度は、特に限定されないが、好ましくは50~140℃、更に好ましくは70~100℃であり、また、反応時間は特に限定されないが、好ましくは1~10時間、更に好ましくは2~8時間である。
【0087】
上記(3)の工程における乾燥温度は特に限定されないが、好ましくは30~80℃、更に好ましくは40~60℃であり、乾燥時間は特に限定されないが、好ましくは10秒~5分、更に好ましくは20~60秒である。
上記(4)の工程における硬化温度は特に限定されないが、好ましくは60~150℃、更に好ましくは80~120℃であり、硬化時間は特に限定されないが、好ましくは1~8時間、更に好ましくは2~6時間である。尚、必要に応じて行われる上記(4)の工程での有機溶剤の乾燥は上記硬化と共に行われる。
【実施例
【0088】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下において部は重量部を表す。
【0089】
<製造例1>[表層に用いるポリウレタン樹脂(U1-1)用ウレタンプレポリマーの製造]
撹拌装置及び温度制御装置付きの容器に表1に示す種類及び量(重量部)のポリオルガノシロキサン基と活性水素を有する化合物(a1)、高分子ポリオール(a2)、芳香族ポリイソシアネート(b1)、有機ポリイソシアネートの変性物(b5)及び有機溶剤を仕込み、80℃で3時間反応させてポリウレタン樹脂(U1-1)用ウレタンプレポリマーを得た。得られたウレタンプレポリマーのNCO含量は1.46%であった。
【0090】
<製造例2~6及び比較製造例1~2>[表層に用いるポリウレタン樹脂(U1-2)~(U1-5)、(U1’-1)~(U1’-2)用ウレタンプレポリマーの製造]
使用原料とその使用量(重量部)を表1に記載のものに変更すること以外は製造例1と同様にして、表層に用いるポリウレタン樹脂(U1-2)~(U1-6)用ウレタンプレポリマー及び比較用のポリウレタン樹脂(U1’-1)~(U1’-2)用ウレタンプレポリマーを得た。
【0091】
[表層に用いるポリウレタン樹脂(U1-1)の弾性回復率の測定]
ポリプロピレン製のビーカーに製造例1で得られた(U1-1)用ウレタンプレポリマーと鎖伸長剤(a3)を表1に記載の処方にて配合した。得られた配合液を11×17.5cmのポリプロピレン製のトレイに、乾燥後の厚さが200μmとなるように流し込み、室温で一晩乾燥した。乾燥後、120℃で2時間硬化して表層に用いるポリウレタン樹脂(U1-1)のシートを得た。
このシートを用いて上述の100%伸長時の弾性回復率の測定方法に基づいて弾性回復率を測定した。その結果を表1に示す。
【0092】
[表層に用いるポリウレタン樹脂(U1-2)~(U1-6)及び比較用のポリウレタン樹脂(U1’-1)~(U1’-2)の弾性回復率の測定]
使用するウレタンプレポリマー及び鎖伸長剤(a3)とその使用量(重量部)を表1に記載のものに変更すること以外は試験例1と同様にして、表層に用いるポリウレタン樹脂(U1-2)~(U1-6)及び比較用のポリウレタン樹脂(U1’-1)~(U1’-2)のシートを得た。
このシートを用いて上述の100%伸長時の弾性回復率の測定方法に基づいて弾性回復率を測定した。その結果を表1に示す。
【0093】
尚、表1で記載した各種原料の内容は下記の通りである。
<ポリウレタン樹脂用ウレタンプレポリマーの材料>
[ポリオルガノシロキサン基及び活性水素基を有する化合物(a1)]
・X-22-161A:信越化学株式会社製アミノ基変性シリコーンオイル[Mn=1600、一般式(1)におけるR~R=メチル基、n=22]
・KF-6003:信越化学株式会社製水酸基変性シリコーンオイル[Mn=5100、一般式(1)におけるR~R=メチル基、n=68]
[高分子ポリオール(a2)]
・クラレポリオールC1090:クラレ株式会社製ポリカーボネートポリオール(Mn:1000)
[芳香族ポリイソシアネート(b1)]
・4,4’-MDI:東ソー株式会社製「ミリオネートMT」
[有機ポリイソシアネートの変性物(b5)]
・コロネート2793:東ソー株式会社製アロファネート基含有ポリイソシアネート(平均官能基数=5.1)
[有機溶剤]
・トルエン
<ウレタンプレポリマーの鎖伸長反応用材料>
[鎖伸長剤(a3)]
・1,4-ブタンジオール
・トリメチロールプロパン
[有機溶剤]
・メチルエチルケトン
また、表1の「ウレタンプレポリマーの鎖伸長反応用材料」の欄には後述の実施例で使用する各プレポリマーを鎖伸長する際に用いる材料とその使用量を記載した。
【0094】
【表1】
【0095】
<製造例7>[基層に用いるポリウレタン樹脂(U2-1)用ウレタンプレポリマーの製造]
撹拌装置及び温度制御装置付きの容器に表2に示す種類及び量(重量部)の高分子ポリオール(a2)、芳香族ポリイソシアネート(b1)を仕込み、80℃で3時間反応させてポリウレタン樹脂(U2-1)用ウレタンプレポリマーを得た。得られたウレタンプレポリマーのNCO含量は3.36%であった。
【0096】
[基層に用いるポリウレタン樹脂(U2-2)~(U2-8)、(U2’-1)~(U2’-2)用ウレタンプレポリマーの製造]
使用するウレタンプレポリマー及びとその使用量(重量部)を表2に記載のものに変更すること以外は製造例7と同様にして、表層に用いるポリウレタン樹脂(U2-2)~(U2-8)用ウレタンプレポリマー及び比較用のポリウレタン樹脂(U2’-1)~(U2’-2)用ウレタンプレポリマーを得た。
【0097】
尚、表2で記号又は商品名で表した各種原料の内容は下記の通りである。
<ポリウレタン樹脂用ウレタンプレポリマーの材料>
[高分子ポリオール(a2)]
・PTMG-1000:三菱ケミカル株式会社製ポリテトラメチレングリコール(Mn=1000)
・PTMG-2000:三菱ケミカル株式会社製ポリテトラメチレングリコール(Mn=2000)
・PTMG-3000:三菱ケミカル株式会社製ポリテトラメチレングリコール(Mn=3000)
・プラクセル220:株式会社ダイセル製ポリカプロラクトンジオール(Mn=2000)
[Mn500未満のポリオール]
・サンニックスPP-400:三洋化成工業株式会社製ポリプロピレングリコール(Mn=400)
[芳香族ポリイソシアネート(b1)]
・4,4’-MDI:東ソー株式会社製「ミリオネートMT」
<ウレタンプレポリマーの鎖伸長反応用材料>
[鎖伸長剤(a3)]
・1,4-ブタンジオール
・トリメチロールプロパン
また、表2の「ウレタンプレポリマーの鎖伸長反応用材料」の欄には後述の試験例及び実施例で使用する各プレポリマーを鎖伸長する際に用いる材料とその使用量を記載した。
【0098】
[基層に用いるポリウレタン樹脂(U2-1)の弾性回復率の測定]
ポリプロピレン製のビーカーに予め80℃に温調しておいた製造例7で得られたポリウレタン樹脂(U2)用ウレタンプレポリマーと鎖伸長剤(a3)を表2に記載の処方にて配合し、アジターで1分間撹拌混合した後、減圧下で2分間脱泡を行った。得られた混合物を隙間が2mmのSUS製の金型に注型し、120℃で2時間硬化して基層に用いるポリウレタン樹脂(U2-1)のシートを得た。
ポリウレタン樹脂(U2-1)の架橋点の濃度及びウレタン基濃度を表2に示す。
このシートを用いて上述の100%伸長時の弾性回復率の測定方法に基づいて弾性回復率を測定した。その結果を表2に示す。
【0099】
[基層に用いるポリウレタン樹脂(U2-2)~(U2-8)及び比較用のポリウレタン樹脂(U2’-1)~(U2’-2)の弾性回復率の測定]
使用するウレタンプレポリマー及び鎖伸長剤(a3)とその使用量(重量部)を表2に記載のものに変更すること以外は試験例7と同様にして、基層に用いるポリウレタン樹脂(U2-2)~(U2-8)及び比較用のポリウレタン樹脂(U2’-1)~(U2’-2)のシートを得た。
ポリウレタン樹脂(U2-2)~(U2-8)及び比較用のポリウレタン樹脂(U2’-1)~(U2’-2)の架橋点の濃度及びウレタン基濃度を表2に示す。
これらのシートを用いて上述の100%伸長時の弾性回復率の測定方法に基づいて弾性回復率を測定した。その結果を表2に示す。
【0100】
[基層に用いる比較用のポリウレタン樹脂(U2’-3)の弾性回復率の測定]
トルエン350部を仕込んだ撹拌装置及び温度制御装置付きの容器に、撹拌下で、ポリエーテル系熱可塑性ウレタンエラストマー「エラストラン1180A」(BASFジャパン株式会社製)150部を仕込み、80℃に昇温して溶解させた。得られた配合液を11×17.5cmのポリプロピレン製のトレイに、乾燥後の厚さが400μmとなるように流し込み、室温で一晩乾燥した。さらに100℃の減圧乾燥機で2時間乾燥して基層に用いる比較用のポリウレタン樹脂(U2’-3)のシートを得た。
このシートを用いて上述の100%伸長時の弾性回復率の測定方法に基づいて弾性回復率を測定した。その結果を表2に示す。
【0101】
【表2】
【0102】
<実施例1> [複層フィルムの製造]
製造例1で得られた表層用のポリウレタン樹脂(U1-1)用のウレタンプレポリマー496.1部(表1に記載のウレタンプレポリマー材料の合計量)と、対応する表1に記載のウレタンプレポリマーの鎖伸長反応用材料としての1,4-ブタンジオール7.6部及びメチルエチルケトン496.3部を混合して離型フィルム上に乾燥後の膜厚が10μmになるように塗工し、50℃の循風乾燥機で30秒乾燥し、溶剤を揮発させて表層用ポリウレタン樹脂を作製した。
製造例7で得られたポリウレタン樹脂(U2-1)用ウレタンプレポリマーと鎖伸長剤(a3)を表2に記載の処方にて配合し、表層用ポリウレタン樹脂の上に膜厚が400μmとなるように塗工し、120℃で2時間硬化後に、離型フィルムを剥離して表層がポリウレタン樹脂(U1-1)で基層がポリウレタン樹脂(U2-1)である複層フィルムを得た。
【0103】
<実施例2~19及び比較例1~4>
表層用のポリウレタン樹脂と基層用のポリウレタン樹脂を表3に記載の組み合わせに変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2~19及び比較例1~4の複層フィルムを得た。
【0104】
<比較例5>
実施例1と同様にして得られた表層用のポリウレタン樹脂(U1-1)用のウレタンプレポリマーを、比較試験例5と同様にして得られた厚さ400μmのポリウレタン樹脂(U2’-3)のシート上に、乾燥後の膜厚が10μmになるように塗工し、50℃の循風乾燥機で30秒乾燥し、さらに120℃で2時間硬化させて比較例5の複層フィルムを得た。
【0105】
得られた複層フィルムについて下記評価方法により耐擦傷性を評価した結果を表3に示す。
【0106】
[耐擦傷性の評価方法]
新東科学株式会社製「トライボギア TYPE:40」のスチールウール固定治具に日本スチールウール社製のスチールウール(No.0000)を取り付け、1cmあたり100gの荷重をかけて、実施例及び比較例で得られた複層フィルムの表層側を5cmの長さを繰り返し摩擦した際に、何往復で傷が発生したかを観察して、下記基準に基づいて評価した。その結果を表3に示した。
<評価基準>
◎:500往復以上で傷が発生しない。
○:300往復以上500往復未満で傷が発生した。
×:300往復未満で傷が発生した。
【0107】
[耐屈曲性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた複層フィルムについて、幅方向(折りたたみ部の方向)50mm×流れ方向(屈曲方向)100mmの大きさのサンプルを用意する。無負荷U字伸縮試験機(ユアサシステム機器社製、DLDMLH-FS)を用いて、屈曲半径3mmを設定し、1回/秒の速度で、5万回屈曲させた。その際、サンプルは長辺側両端部10mmの位置を固定して、屈曲する部位は50mm×80mmとした。屈曲処理終了後、サンプルの屈曲内側を下にして平面に置き、目視検査を行った。
<評価基準>
◎:サンプルの変形がないか又は変形があっても、水平に置いた際、浮き上がり最大高さが3mm未満。
○:サンプルの変形があり、水平に置いた際、浮き上がり最大高さが3mm以上5mm未満。
×:サンプルに折跡があるか、水平に置いた際、浮き上がり最大高さが5mm以上。
【0108】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明のポリウレタン樹脂は耐擦傷性に優れ、さらに耐屈曲性にも優れるため、光学部材の表面保護フィルム、特にタッチ式デバイスの表面保護フィルムに好適である。