IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 河西工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-自動車用防音材の製造方法 図1
  • 特許-自動車用防音材の製造方法 図2
  • 特許-自動車用防音材の製造方法 図3
  • 特許-自動車用防音材の製造方法 図4
  • 特許-自動車用防音材の製造方法 図5
  • 特許-自動車用防音材の製造方法 図6
  • 特許-自動車用防音材の製造方法 図7
  • 特許-自動車用防音材の製造方法 図8
  • 特許-自動車用防音材の製造方法 図9
  • 特許-自動車用防音材の製造方法 図10
  • 特許-自動車用防音材の製造方法 図11
  • 特許-自動車用防音材の製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】自動車用防音材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
B60R13/02 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021553253
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2019041855
(87)【国際公開番号】W WO2021079487
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000124454
【氏名又は名称】河西工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069431
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 成則
(72)【発明者】
【氏名】皐月 勝平
(72)【発明者】
【氏名】安斉 寛子
(72)【発明者】
【氏名】長沼 義知
(72)【発明者】
【氏名】坂本 尚哉
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-113019(JP,A)
【文献】特開2018-024299(JP,A)
【文献】特開2008-285072(JP,A)
【文献】特開2015-209146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用内装トリムの裏面に取り付けられる自動車用防音材の製造方法であって、
前記自動車用防音材の製造方法は、
防音素材からなる長尺状の原反を同面積の矩形に裁断することによって複数の矩形原反片を得る第1の工程と、
前記矩形原反片にスリット部を形成する第2の工程と、
前記第1および第2の工程の後に行われる第3の工程と、を含み、
前記スリット部は、一対の縦スリット、および、横スリットを備え、
前記一対の縦スリットは、前記矩形原反片の側辺に沿って形成され、
前記横スリットは、前記一対の縦スリットに繋がった形状および前記自動車用内装トリムの非覆部に対応した形状になっており、
前記第3の工程では、前記矩形原反片の側辺とこれに隣接する前記縦スリットとで挟まれた領域をZ状に折畳むことにより、前記矩形原反片全体のうち前記横スリットより上部の領域とその下部の領域とが逆転し、かつ、前記矩形原反片の上下辺が対向した状態、および、前記非覆部に対応する前記横スリットの内辺が前記自動車用内装トリムの非覆部外周に沿って配置されることで該非覆部と前記矩形原反片との干渉を回避可能な状態に設定すること
を特徴とする自動車用防音材の製造方法。
【請求項2】
自動車用内装トリムの裏面に取り付けられる自動車用防音材であって、
前記自動車用防音材は、防音素材からなる矩形原反片で構成され、
前記矩形原反片は、スリット部を有し、
前記スリット部は、一対の縦スリット、およb、横スリットを備え、
前記一対の縦スリットは、前記矩形原反片の側辺に沿って形成され、
前記横スリットは、前記一対の縦スリットに繋がった形状および前記自動車用内装トリムの非覆部に対応した形状になっており、
前記矩形原反片は、その側辺とこれに隣接する前記縦スリットとで挟まれた領域がZ状に折り畳まれることにより、前記矩形原反片全体のうち前記横スリットより上部の領域とその下部の領域とが逆転した状態、前記矩形原反片の上下辺が対向した状態、および、前記非覆部に対応する前記横スリットの内辺が前記自動車用内装トリムの非覆部外周に沿って配置されることで該非覆部と前記矩形原反片との干渉を回避可能な状態となるように設定されていること
を特徴とする自動車用防音材。
【請求項3】
自動車用内装トリムの裏面に取り付けられる自動車用防音材の製造方法であって、
前記自動車用防音材の製造方法は、
防音素材からなる長尺状の原反を同面積の矩形に裁断することによって複数の矩形原反片を得る第1の工程と、
前記矩形原反片にスリット部を形成する第2の工程と、
前記第1および第2の工程の後に行われる第3の工程と、を含み、
前記スリット部は、一対の縦スリット、および、横スリットを備え、
前記一対の縦スリットは、前記矩形原反片の側辺に沿って形成され、
前記横スリットは、前記一対の縦スリットに繋がった形状および前記自動車用内装トリムの非覆部に対応した形状になっており、
前記第3の工程では、前記矩形原反片全体のうち前記横スリットより上部の領域と下部の領域をそれぞれ相反する方向に裏返した状態とすることにより、前記上部の領域と前記下部の領域との上下位置関係を維持しつつ、前記矩形原反片の上下辺が対向した状態、および、前記横スリットの内辺が前記自動車用内装トリムの非覆部外周に沿って配置されることで該非覆部と前記矩形原反片との干渉を回避可能な状態に設定すること
を特徴とする自動車用防音材の製造方法。
【請求項4】
自動車用内装トリムの裏面に取り付けられる自動車用防音材であって、
前記自動車用防音材は、防音素材からなる矩形原反片で構成され、
前記矩形原反片は、スリット部を有し、
前記スリット部は、一対の縦スリット、および、横スリットを備え、
前記一対の縦スリットは、前記矩形原反片の側辺に沿って形成され、
前記横スリットは、前記一対の縦スリットに繋がった形状および前記自動車用内装トリムの非覆部に対応した形状になっており、
前記矩形原反片は、前記矩形原反片全体のうち前記横スリットより上部の領域と下部の領域をそれぞれ相反する方向に裏返した状態とすることにより、前記上部の領域と前記下部の領域との上下位置関係を維持しつつ、前記矩形原反片の上下辺が対向した状態、および、前記横スリットの内辺が前記自動車用内装トリムの非覆部外周に沿って配置されることで該非覆部と前記矩形原反片との干渉を回避可能な状態となるように設定されていること
を特徴とする自動車用防音材。
【請求項5】
自動車用内装トリムの裏面に取り付けられる自動車用防音材の製造方法であって、
前記自動車用防音材の製造方法は、
防音素材からなる長尺状の原反を同面積の矩形に裁断することによって複数の矩形原反片を得る第1の工程と、
前記矩形原反片にスリット部を形成する第2の工程と、
前記第1および第2の工程の後に行われる第3の工程と、を含み、
前記スリット部は、一対の縦スリット、および、横スリットで構成され、
前記一対の縦スリットは、前記矩形原反片の一辺から切込まれた形態になっている第1のスリットと、該第1のスリットの長さ方向に連ねて切込まれた形態になっている第2のスリットと、前記第2のスリットの幅方向に並べて切込まれた形態および前記第1のスリットに繋がった形態になっている第3のスリットと、前記第1のスリットと前記第2のスリットとの間に設けた第1の非切込み部と、前記第3のスリットと前記横スリットとの間に設けた第2の非切込み部と、で構成され、
前記横スリットは、前記一対の縦スリットにおける前記第2のスリットに繋がった形態になっており、
前記第3の工程では、前記矩形原反片全体のうち前記一対の縦スリットにおける前記第1および第3のスリットと前記横スリットとで囲まれた領域をスライド変位部として設定し、かつ、前記非切込み部を軸として捩じって前記スライド変位部をスライドさせることにより、そのスライド変位部の大きさに相当する穴が前記矩形原反片に設けられるように設定すること
を特徴とする自動車用防音材の製造方法。
【請求項6】
自動車用内装トリムの裏面に取り付けられる自動車用防音材であって、
前記自動車用防音材は、防音素材からなる矩形原反片で構成され、
前記矩形原反片は、スリット部を有し、
前記スリット部は、一対の縦スリット、および、横スリットを備え、
前記一対の縦スリットは、前記矩形原反片の一辺から切込まれた形態になっている第1のスリットと、該第1のスリットの長さ方向に連ねて切込まれた形態になっている第2のスリットと、前記第2のスリットの幅方向に並べて切込まれた形態および前記第1のスリットに繋がった形態になっている第3のスリットと、前記第1のスリットと前記第2のスリットとの間に設けた第1の非切込み部と、前記第3のスリットと前記横スリットとの間に設けた第2の非切込み部と、で構成され、
前記横スリットは、前記一対の縦スリットにおける前記第2のスリットに繋がった形態になっており、
前記矩形原反片は、前記矩形原反片全体のうち前記一対の縦スリットにおける前記第1および第3のスリットと前記横スリットとで囲まれた領域がスライド変位部として設定され、かつ、前記非切込み部を軸として捩じって前記スライド変位部がスライドしたことにより、そのスライド変位部の大きさに相当する穴が設けられていること
を特徴とする自動車用防音材。
【請求項7】
自動車用内装トリムの裏面に取り付けられる自動車用防音材の製造方法であって、
前記自動車用防音材の製造方法は、
防音素材からなる長尺状の原反を同面積の矩形に裁断することによって複数の矩形原反片を得る第1の工程と、
前記矩形原反片にスリット部を形成する第2の工程と、
前記第1および第2の工程の後に行われる第3の工程と、を含み、
前記スリット部は、一対の縦スリット、および、横スリットを備え、
前記一対の縦スリットは、前記矩形原反片の一辺から切込まれた形態になっている第1のスリットと、該第1のスリットの長さ方向に連ねて切込まれた形態になっている第2のスリットと、前記第1のスリットと前記第2のスリットとの間に設けられた非切込み部と、で構成され、
前記横スリットは、前記一対の縦スリットにおける前記第2のスリットに繋がった形態になっており、
前記第3の工程では、前記矩形原反片全体のうち前記一対の縦スリットと前記横スリットとで囲まれた領域を表裏反転部として設定し、かつ、前記非切込み部を軸として捩じって、前記表裏反転部を反転させることで、前記表裏反転部の大きさに相当する穴が矩形原反片に設けられるように設定すること
を特徴とする自動車用防音材の製造方法。
【請求項8】
自動車用内装トリムの裏面に取り付けられる自動車用防音材であって、
前記自動車用防音材は、防音素材からなる矩形原反片で構成され、
前記矩形原反片は、スリット部を有し、
前記スリット部は、一対の縦スリット、および、横スリットを備え、
前記一対の縦スリットは、前記矩形原反片の一辺から切込まれた形態になっている第1のスリットと、該第1のスリットの長さ方向に連ねて切込まれた形態になっている第2のスリットと、前記第1のスリットと前記第2のスリットとの間に設けられた非切込み部と、で構成され、
前記横スリットは、前記一対の縦スリットにおける前記第2のスリットに繋がった形態になっており、
前記矩形原反片は、前記矩形原反片全体のうち前記一対の縦スリットと前記横スリットとで囲まれた領域が表裏反転部として設定され、かつ、前記非切込み部を軸として捩じって、前記表裏反転部が反転したことで、前記表裏反転部の大きさに相当する穴が設けられていること
を特徴とする自動車用防音材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用内装トリムの裏面に取り付けられる自動車用防音材の製造方法に関し、特に、その製造過程での裁断による端材の発生を防止する、および、裁断する刃物の形状を簡略化するのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用内装トリムの裏面に取り付けられる自動車用防音材としては、例えば特許文献1に記載されているフェルト(4)が知られている。この種のフェルト(4)からなる防音材は、従来、防音素材からなる長尺状の原反を用意し、該原反から裁断によって切り出している。
【0003】
しかしながら、防音材を取付ける自動車用内装トリムの裏面には、例えば、別部品を取付けるための開口部や突起部が設けられている部品取付け部や、自動車用内装トリムTを自動車の車体パネルに取り付けるためのクリップが設置されるクリップ座、あるいは後で配線作業を行うための配線作業領域部などのように、防音材で覆うことが禁止されている部分(非覆部)が存在する。このため、従来の自動車用防音材の製造方法では、原反から切り出される最終製品としての防音材がそのような非覆部を避けた形状となるように原反を裁断していたことから、端材が多量に発生することは避けられず、また、裁断する刃物の形状も複雑になる等の問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】2004-66886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、裁断による端材の発生を防止する、および、裁断する刃物の形状を簡略化するのに好適な自動車用防音材とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、第1の本発明は、自動車用内装トリムの裏面に取り付けられる自動車用防音材の製造方法であって、前記自動車用防音材の製造方法は、防音素材からなる長尺状の原反を同面積の矩形に裁断することによって複数の矩形原反片を得る第1の工程と、前記矩形原反片にスリット部を形成する第2の工程と、前記第1および第2の工程の後に行われる第3の工程と、を含み、前記スリット部は、一対の縦スリット、および、横スリットを備え、前記一対の縦スリットは、前記矩形原反片の側辺に沿って形成され、前記横スリットは、前記一対の縦スリットに繋がった形状および前記自動車用内装トリムの非覆部に対応した形状になっており、前記第3の工程では、前記矩形原反片の側辺とこれに隣接する前記縦スリットとで挟まれた領域をZ状に折畳むことにより、前記矩形原反片全体のうち前記横スリットより上部の領域とその下部の領域とが逆転し、かつ、前記矩形原反片の上下辺が対向した状態、および、前記非覆部に対応する前記横スリットの内辺が前記自動車用内装トリムの非覆部外周に沿って配置されることで該非覆部と前記矩形原反片との干渉を回避可能な状態に設定することを特徴とする。
【0007】
第2の本発明は、自動車用内装トリムの裏面に取り付けられる自動車用防音材であって、前記自動車用防音材は、防音素材からなる矩形原反片で構成され、前記矩形原反片は、スリット部を有し、前記スリット部は、一対の縦スリット、およb、横スリットを備え、前記一対の縦スリットは、前記矩形原反片の側辺に沿って形成され、前記横スリットは、前記一対の縦スリットに繋がった形状および前記自動車用内装トリムの非覆部に対応した形状になっており、前記矩形原反片は、その側辺とこれに隣接する前記縦スリットとで挟まれた領域がZ状に折り畳まれることにより、前記矩形原反片全体のうち前記横スリットより上部の領域とその下部の領域とが逆転した状態、前記矩形原反片の上下辺が対向した状態、および、前記非覆部に対応する前記横スリットの内辺が前記自動車用内装トリムの非覆部外周に沿って配置されることで該非覆部と前記矩形原反片との干渉を回避可能な状態となるように設定されていることを特徴とする。
【0008】
第3の本発明は、自動車用内装トリムの裏面に取り付けられる自動車用防音材の製造方法であって、前記自動車用防音材の製造方法は、防音素材からなる長尺状の原反を同面積の矩形に裁断することによって複数の矩形原反片を得る第1の工程と、前記矩形原反片にスリット部を形成する第2の工程と、前記第1および第2の工程の後に行われる第3の工程と、を含み、前記スリット部は、一対の縦スリット、および、横スリットを備え、前記一対の縦スリットは、前記矩形原反片の側辺に沿って形成され、前記横スリットは、前記一対の縦スリットに繋がった形状および前記自動車用内装トリムの非覆部に対応した形状になっており、前記第3の工程では、前記矩形原反片全体のうち前記横スリットより上部の領域と下部の領域をそれぞれ相反する方向に裏返した状態とすることにより、前記上部の領域と前記下部の領域との上下位置関係を維持しつつ、前記矩形原反片の上下辺が対向した状態、および、前記横スリットの内辺が前記自動車用内装トリムの非覆部外周に沿って配置されることで該非覆部と前記矩形原反片との干渉を回避可能な状態に設定することを特徴とする。
【0009】
第4の本発明は、自動車用内装トリムの裏面に取り付けられる自動車用防音材であって、前記自動車用防音材は、防音素材からなる矩形原反片で構成され、前記矩形原反片は、スリット部を有し、前記スリット部は、一対の縦スリット、および、横スリットを備え、前記一対の縦スリットは、前記矩形原反片の側辺に沿って形成され、前記横スリットは、前記一対の縦スリットに繋がった形状および前記自動車用内装トリムの非覆部に対応した形状になっており、前記矩形原反片は、前記矩形原反片全体のうち前記横スリットより上部の領域と下部の領域をそれぞれ相反する方向に裏返した状態とすることにより、前記上部の領域と前記下部の領域との上下位置関係を維持しつつ、前記矩形原反片の上下辺が対向した状態、および、前記横スリットの内辺が前記自動車用内装トリムの非覆部外周に沿って配置されることで該非覆部と前記矩形原反片との干渉を回避可能な状態となるように設定されていることを特徴とする。
【0010】
第5の本発明は、自動車用内装トリムの裏面に取り付けられる自動車用防音材の製造方法であって、前記自動車用防音材の製造方法は、防音素材からなる長尺状の原反を同面積の矩形に裁断することによって複数の矩形原反片を得る第1の工程と、前記矩形原反片にスリット部を形成する第2の工程と、前記第1および第2の工程の後に行われる第3の工程と、を含み、前記スリット部は、一対の縦スリット、および、横スリットで構成され、前記一対の縦スリットは、前記矩形原反片の一辺から切込まれた形態になっている第1のスリットと、該第1のスリットの長さ方向に連ねて切込まれた形態になっている第2のスリットと、前記第2のスリットの幅方向に並べて切込まれた形態および前記第1のスリットに繋がった形態になっている第3のスリットと、前記第1のスリットと前記第2のスリットとの間に設けた第1の非切込み部と、前記第3のスリットと前記横スリットとの間に設けた第2の非切込み部と、で構成され、前記横スリットは、前記一対の縦スリットにおける前記第2のスリットに繋がった形態になっており、前記第3の工程では、前記矩形原反片全体のうち前記一対の縦スリットにおける前記第1および第3のスリットと前記横スリットとで囲まれた領域をスライド変位部として設定し、かつ、前記非切込み部を軸として捩じって前記スライド変位部をスライドさせることにより、そのスライド変位部の大きさに相当する穴が前記矩形原反片に設けられるように設定することを特徴とする。
【0011】
第6の本発明は、自動車用内装トリムの裏面に取り付けられる自動車用防音材であって、前記自動車用防音材は、防音素材からなる矩形原反片で構成され、前記矩形原反片は、スリット部を有し、前記スリット部は、一対の縦スリット、および、横スリットを備え、前記一対の縦スリットは、前記矩形原反片の一辺から切込まれた形態になっている第1のスリットと、該第1のスリットの長さ方向に連ねて切込まれた形態になっている第2のスリットと、前記第2のスリットの幅方向に並べて切込まれた形態および前記第1のスリットに繋がった形態になっている第3のスリットと、前記第1のスリットと前記第2のスリットとの間に設けた第1の非切込み部と、前記第3のスリットと前記横スリットとの間に設けた第2の非切込み部と、で構成され、前記横スリットは、前記一対の縦スリットにおける前記第2のスリットに繋がった形態になっており、前記矩形原反片は、前記矩形原反片全体のうち前記一対の縦スリットにおける前記第1および第3のスリットと前記横スリットとで囲まれた領域がスライド変位部として設定され、かつ、前記非切込み部を軸として捩じって前記スライド変位部がスライドしたことにより、そのスライド変位部の大きさに相当する穴が設けられていることを特徴とする。
【0012】
第7の本発明は、自動車用内装トリムの裏面に取り付けられる自動車用防音材の製造方法であって、前記自動車用防音材の製造方法は、防音素材からなる長尺状の原反を同面積の矩形に裁断することによって複数の矩形原反片を得る第1の工程と、前記矩形原反片にスリット部を形成する第2の工程と、前記第1および第2の工程の後に行われる第3の工程と、を含み、前記スリット部は、一対の縦スリット、および、横スリットを備え、前記一対の縦スリットは、前記矩形原反片の一辺から切込まれた形態になっている第1のスリットと、該第1のスリットの長さ方向に連ねて切込まれた形態になっている第2のスリットと、前記第1のスリットと前記第2のスリットとの間に設けられた非切込み部と、で構成され、前記横スリットは、前記一対の縦スリットにおける前記第2のスリットに繋がった形態になっており、前記第3の工程では、前記矩形原反片全体のうち前記一対の縦スリットと前記横スリットとで囲まれた領域を表裏反転部として設定し、かつ、前記非切込み部を軸として捩じって、前記表裏反転部を反転させることで、前記表裏反転部の大きさに相当する穴が矩形原反片に設けられるように設定することを特徴とする。
【0013】
第8の本発明は、自動車用内装トリムの裏面に取り付けられる自動車用防音材であって、前記自動車用防音材は、防音素材からなる矩形原反片で構成され、前記矩形原反片は、スリット部を有し、前記スリット部は、一対の縦スリット、および、横スリットを備え、前記一対の縦スリットは、前記矩形原反片の一辺から切込まれた形態になっている第1のスリットと、該第1のスリットの長さ方向に連ねて切込まれた形態になっている第2のスリットと、前記第1のスリットと前記第2のスリットとの間に設けられた非切込み部と、で構成され、前記横スリットは、前記一対の縦スリットにおける前記第2のスリットに繋がった形態になっており、前記矩形原反片は、前記矩形原反片全体のうち前記一対の縦スリットと前記横スリットとで囲まれた領域が表裏反転部として設定され、かつ、前記非切込み部を軸として捩じって、前記表裏反転部が反転したことで、前記表裏反転部の大きさに相当する穴が設けられていることを特徴とする。
【0014】
以上説明した第2、第4、第6、第8の本発明に係る自動車用防音材M1~M4は、前述の通り、いずれも防音素材からなる矩形原反片2で構成され、矩形原反片2は、スリット部3を有し、かつ、該スリット部3を利用して変形したことによって、自動車用内装トリムの非覆部との干渉を回避可能な状態に設定されたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、自動車用防音材とその製造方法の具体的な構成として、前述の通り、矩形原反片を用いる構成を採用するとともに、その矩形原反片と自動車用内装トリムの非覆部との干渉を回避可能な状態に設定する手段として、スリット部を利用して矩形原反片が変形した構造を採用した。このため、例えば、かかる矩形原反片は、例えば、防音素材からなる長尺状の原反を同面積の矩形に裁断することによって取得することができ、その裁断のラインは矩形なので、かかる裁断で端材は生じないこと、および、スリット部は切込みによって形成できるので、スリット部の形成でも端材は生じないこと、並びに、例えばスリット部は直線や曲線等のライン状刃物で形成できることから、裁断による端材の発生を防止する、および、裁断する刃物の形状を簡略化するのに好適な自動車用防音材とその製造方法を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の本発明に係る自動車用防音材の製造方法における第1および第2の工程の説明図。
図2】第1の本発明において図1の原反から得られた一枚の矩形原反片の平面図。
図3】第1の本発明に係る自動車用防音材の製造方法における第3の工程の説明図。
図4】第1の本発明によって製造された自動車用防音材(第2の本発明に対応)の平面図。
図5】第3の本発明に係る自動車用防音材の製造方法における第3の工程の説明図。
図6】第3の本発明によって製造された自動車用防音材(第4の本発明に対応)の平面図。
図7】第5の本発明に係る自動車用防音材の製造方法における第2の工程の説明図。
図8】第5の本発明に係る自動車用防音材の製造方法における第3の工程、および第5の本発明によって製造された自動車用防音材(第6の本発明に対応)の説明図。
図9】第7の本発明に係る自動車用防音材の製造方法における第2の工程の説明図。
図10】第7の本発明に係る自動車用防音材の製造方法における第3の工程、および第7の本発明によって製造された自動車用防音材(第8の本発明に対応)の説明図。
図11図7に示した自動車用防音材の製造方法の変形例の説明図。
図12図8に示した自動車用防音材の変形例の説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
《第1および第2の発明の実施形態》
図1は、第1の本発明に係る自動車用防音材の製造方法における第1および第2の工程の説明図、図2は、図1の原反から得られた一枚の矩形原反片の平面図、図3は、第1の本発明に係る自動車用防音材の製造方法における第3の工程の説明図である。
【0019】
第1の本発明に係る自動車用防音材の製造方法は、図1に示した第1の工程と、図2に示した第2の工程と、図3に示した第3の工程を含み、これらの工程によって、図4に示した最終製品としての自動車用防音材M1を製造するものである。
【0020】
なお、図4の自動車用防音材M1は、同図に示したように、自動車用内装トリムTの裏面に取り付けられる。また、図4の自動車用内装トリムTの裏面には、非覆部U、すなわち、自動車用内装トリムTの裏面において別部品を取付けるための開口部や突起部が設けられている部品取付け部U1や、自動車用内装トリムTを自動車の車体パネルに取り付けるためのクリップが設置されるクリップ座U2、あるいは、後で配線作業を行うための配線作業領域部U3などのように、自動車用防音材M1(2)で覆うことが禁止されている部分が存在する。
【0021】
《第1の本発明における第1の工程の説明》
図1を参照すると、第1の工程では、防音素材からなる長尺状の原反1を用意し、その原反1を1本の幅方向裁断ラインL1および等間隔で配置された3本の長さ方向裁断ラインL2に沿って裁断する、つまり、当該原反1を同面積の矩形に裁断することで、縦一列に並んだ4枚の矩形原反片2(2-1、2-2、2-3、2-4)を一度の裁断で取得している。
【0022】
前記のような一度の裁断で取得し得る矩形原反片1の枚数は、4枚に限定されることはなく、必要に応じて適宜増減することができる。例えば、図1の原反1に比べて2倍の幅の原反を用意したら、単純計算で8枚の矩形原反片1を得ることができる。
【0023】
《第1の本発明における第2の工程の説明》
図2を参照すると、第2の工程では、矩形原反片2にスリット部3を形成する。スリット部3は、同図に示したように、一対の縦スリット31A、31B、および、横スリット32を備えており、一対の縦スリット31A、31Bは、矩形原反片2の側辺に沿って形成される。また、横スリット32は、一対の縦スリット31A、31Bに繋がった形状および自動車用内装トリムTの非覆部U(具体的には、別部品取付け部U1)に対応した形状になっている。
【0024】
《第1の本発明における第3の工程の説明》
図3を参照すると、第3の工程では、矩形原反片2の側辺2A、2Bとこれに隣接する縦スリット31A、31Bとで挟まれた図2の領域Q1、Q2をZ状に折畳む。これにより、矩形原反片2全体のうち横スリット32より上部の図2の領域Q3とその下部の図2の領域Q4とが逆転し(図2図4を比較参照)、かつ、矩形原反片2の上下辺2C、2Dが対向した状態、および、前述の非覆部U(U1)に対応する横スリット32の内辺32Aがその非覆部U(U1)外周に沿って配置されることで該非覆部U(U1)と矩形原反片2との干渉を回避可能な状態となるように設定している。
【0025】
《第1の本発明によって製造された自動車用防音材(第2の本発明に対応)の説明》
図4は、第1の本発明によって製造された自動車用防音材(第2の本発明に対応)の平面図である。
【0026】
図4の自動車用防音材M1は、以上説明した第1の本発明における第1から第3の工程によって製造されたものであり、防音素材からなる図2の矩形原反片2で構成され、自動車用内装トリムTの裏面に取り付けられる。
【0027】
そして、図4の自動車用防音材M1を構成する矩形原反片2は、先に説明した図2のスリット部3を有しており、また、その矩形原反片2は、前述の通り、側辺2A、2Bとこれに隣接する縦スリット31A、31Bとで挟まれた領域Q1、Q2がZ状に折り畳まれることにより、矩形原反片2全体のうち横スリット32より上部の領域Q3とその下部の領域Q4とが逆転した状態、矩形原反片2の上下辺2C、2Dが対向した状態、および、非覆部に対応する横スリット32の内辺32Aが自動車用内装トリムTの非覆部U(具体的には、別部品取付け部U1)外周に沿って配置されることで該非覆部Uと矩形原反片2との干渉を回避可能な状態となるように設定されている。
【0028】
図2の矩形原反片2における縦スリット31A、31Bの長さは、必要に応じて適宜変更することができる。図4の自動車用防音材M1では、かかる縦スリット31A、31Bの長さを調整することにより、Z状に折り畳まれた後の前述の領域Q1、Q2が自動車用内装トリムTの非覆部U(図4の例では、クリップ座U2)と干渉しないように構成している。かかる非覆部U(U2)との干渉は、前述の領域Q1、Q2におけるZ状の折り畳み長さを調整することによって回避することもできる。
【0029】
また、図4の自動車用防音材M1では、対向した矩形原反片2の上下辺2C、2D間に所定幅の隙間G1が形成されるように調整することにより、矩形原反片2と自動車用内装トリムTの非覆部U(図4の例では、配線作業領域部U3)とが干渉しないように構成している。
【0030】
さらに、この図4の自動車用防音材M1では、前述のZ状折畳みによって、その折り畳まれた部分、すなわち領域Q1、Q2が上下に重なった状態になるため、吸音率が向上する等の利点もある。
【0031】
《第3および第4の発明の実施形態》
図5は、第3の本発明に係る自動車用防音材の製造方法における第3の工程の説明図である。
【0032】
第3の本発明に係る自動車用防音材の製造方法は、図1に示した第1の工程と、図2に示した第2の工程と、図5に示した第3の工程を含み、これらの工程によって、図6に示した最終製品としての自動車用防音材M2を製造するものである。
【0033】
つまり、この第3の本発明に係る自動車用防音材の製造方法が先に説明した第1の本発明に係る自動車用防音材の製造方法と異なる工程は、第3の工程のみであり、それ以外の第1および第2の工程は相違点がないので、以下の説明では、第1および第2の工程の詳細説明を省略し、第3の工程のみを説明する。
【0034】
図5を参照すると、第3の工程では、矩形原反片2全体のうち横スリット32より上部の図2の領域Q3とその下部の図2の領域Q4をそれぞれ相反する方向に裏返した状態とする。これにより、前記上部の領域Q3と前記下部の領域Q3との上下位置関係を維持しつつ(図2図6を比較参照)、矩形原反片2の上下辺2C、2Dが対向した状態(図6参照)、および、横スリット32の内辺32Aが自動車用内装トリムTの非覆部U(具体的には、別部品取付け部U1)に沿って配置されることで該非覆部Uと前記矩形原反片2との干渉を回避可能な状態となるように設定している。
【0035】
《第3の本発明によって製造された自動車用防音材(第4の本発明に対応)の説明》
図6は、第3の本発明によって製造された自動車用防音材(第4の本発明に対応)の平面図である。
【0036】
図6の自動車用防音材M2は、以上説明した第3の本発明における第1から第3の工程によって製造されたものであって、図4の自動車用防音材M1と同じく、防音素材からなる図2の矩形原反片2で構成され、自動車用内装トリムTの裏面に取り付けられる。
【0037】
そして、図6の自動車用防音材M2を構成する矩形原反片2は、先に説明した図2のスリット部3を有しており、また、その矩形原反片2は、矩形原反片2全体のうち横スリット32より上部の領域Q3と下部の領域Q4がそれぞれ相反する方向に裏返した状態になることで、前記上部の領域Q3と前記下部の領域Q4との上下位置関係を維持しつつ、矩形原反片2の上下辺2C、2Dが対向した状態、および、横スリット32の内辺32Aが自動車用内装トリムTの非覆部U(具体的には、別部品取付け部U1)外周に沿って配置されることで該非覆部Uと矩形原反片2との干渉を回避可能な状態となるように設定されている。
【0038】
なお、この図6の自動車用防音材M2でも、前述の領域Q3、Q4の裏返しによって領域Q1、Q2(矩形原反片2の側辺2A、2Bとこれに隣接する縦スリット31A、31Bとで挟まれた領域)が上下に重なった状態になるため、吸音率が向上する等の利点がある。
【0039】
《第5および第6の発明の実施形態》
図7は第5の本発明に係る自動車用防音材の製造方法における第2の工程の説明図、図8は第5の本発明に係る自動車用防音材の製造方法における第3の工程、および第5の本発明によって製造された自動車用防音材(第6の本発明に対応)の説明図である。
【0040】
第5の本発明に係る自動車用防音材の製造方法は、図8に示した最終製品としての自動車用防音材M3を製造するものである。この製造方法もまた、第1ないし第3の工程を含み、その第1および第2の工程により、防音素材からなる長尺状の原反1を同面積の矩形に裁断することによって複数の矩形原反片2を得ること、および、その矩形原反片2にスリット部3を形成することは、先に説明した第1の発明に係る自動車用防音材の製造方法と同様であるため、その説明は省略する。
【0041】
この第5の本発明に係る自動車用防音材の製造方法が先に説明した第1の発明に係る自動車用防音材の製造方法と異なる点は、図7に示された第2の工程で形成するスリット部3の具体的な構成である。
【0042】
すなわち、図7を参照すると、第2の工程で形成するスリット部3は、一対の縦スリット31A、31B、および、横スリット32を備えており、その一対の縦スリット31A、31Bは、(1)矩形原反片2の一辺(図7の例では、下辺2D)から切込まれた形態になっている第1のスリットSL1と、(2)第1のスリットSL1の長さ方向に連ねて切込まれた形態になっている第2のスリットSL2と、(3)第2のスリットSL2の幅方向に並べて切込まれた形態および第1のスリットに繋がった形態になっている第3のスリットSL3と、(4)第1のスリットSL1と第2のスリットSL2との間に設けた第1の非切込み部NS1と、(5)第3のスリットSL3と横スリット32との間に設けた第2の非切込み部NS2と、で構成されている。また、横スリット32は、一対の縦スリット31A、31Bにおける第2のスリットSL2に繋がった形態になっている。
【0043】
そして、第3の工程では、矩形原反片2全体のうち一対の縦スリット31A、31Bにおける第1および第3のスリットSL1、SL3と横スリット32とで囲まれた領域をスライド変位部Q5として設定し、かつ、非切込み部NS1、NS2を軸として捩じって当該スライド変位部Q5をスライドさせることにより、そのスライド変位部Q5の大きさに相当する穴H1が矩形原反片2に設けられるように設定する。
【0044】
《第5の本発明によって製造された自動車用防音材(第6の本発明に対応)の説明》
図8の自動車用防音材M3は、以上説明した第5の本発明における第1から第3の工程によって製造されたものであり、図4の自動車用防音材M1と同じく、防音素材からなる図2の矩形原反片2で構成されている。そして、かかる矩形原反片2は、先に説明した図7のスリット部3を有しており、また、その矩形原反片2には、前述の通り、非切込み部NS1、NS2を軸として捩じってスライド変位部Q5がスライドしたことにより、スライド変位部Q5の大きさに相当する穴H1が設けられている。
【0045】
前記穴H1は、先に説明した自動車用内装トリムTの非覆部U(具体的には、配線作業領域部U3)に対応するものであり、かかる穴H1の存在により、該非覆部Uと矩形原反片2との干渉を回避可能な状態となるように設定されている。
【0046】
この図8の自動車用防音材M3では、前述のスライド変位部Q5もまた吸音材として機能するので、吸音率の向上を図れるという利点がある。
【0047】
図7図8に示した自動車用防音材M3とその製造方法の変形例として、例えば図11に示したようにスリット部3を形成することで、図12に示したように、前述のスライド変位部Q5が複数(同図の例では2つ)設けられる構成を採用することもでき、この場合は、図12に示したように、隣り合う2つのスライド変位部Q5、Q5間に穴H3ができるので、その穴H3に引っ掛かる引っ掛けリブを自動車用内装トリムTの裏面に設けてもよい。
【0048】
《第7および第8の発明の実施形態》
図9は第7の本発明に係る自動車用防音材の製造方法における第2の工程の説明図、図10は第7の本発明に係る自動車用防音材の製造方法における第3の工程、および第7の本発明によって製造された自動車用防音材(第8の本発明に対応)の説明図である。
【0049】
第7の本発明に係る自動車用防音材の製造方法は、図10に示した最終製品としての自動車用防音材M4を製造するものである。この製造方法もまた、第1ないし第3の工程を含み、その第1および第2の工程により、防音素材からなる長尺状の原反1を同面積の矩形に裁断することによって複数の矩形原反片2を得ること、および、その矩形原反片2にスリット部3を形成することは、先に説明した第1の発明に係る自動車用防音材の製造方法と同様であるため、その詳細説明は省略する。
【0050】
この第7の本発明に係る自動車用防音材の製造方法が先に説明した第1の発明に係る自動車用防音材の製造方法と異なる点は、第2の工程で形成するスリット部3の具体的な構成である。
【0051】
すなわち、図9を参照すると、第2の工程で形成するスリット部3は、一対の縦スリット31A、31B、および、横スリット32を備えており、その一対の縦スリット31A、31Bは、(1)矩形原反片2の一辺から切込まれた形態になっている第1のスリットSL1と、(2)第1のスリットSL1の長さ方向に連ねて切込まれた形態になっている第2のスリットSL2と、(3)第1のスリットSL1と第2のスリットSL2との間に設けられた非切込み部NS1と、で構成されている。また、また、横スリット32は、一対の縦スリット31A、31Bにおける第2のスリットSL2に繋がった形態になっている。
【0052】
そして、第3の工程では、矩形原反片2全体のうち一対の縦スリット31A、31Bと横スリット32とで囲まれた領域を表裏反転部Q6として設定し、かつ、非切込み部NS1を軸として捩じって表裏反転部Q6を反転することで、表裏反転部Q6の大きさに相当する穴H2が設けられるように設定する。
【0053】
《第7の本発明によって製造された自動車用防音材(第8の本発明に対応)の説明》
図10の自動車用防音材M4は、以上説明した第7の本発明における第1から第3の工程によって製造されたものであり、図4の自動車用防音材M1と同じく、防音素材からなる図2の矩形原反片2で構成されている。そして、かかる矩形原反片2は、先に説明した図9のスリット部3を有しており、また、その矩形原反片2には、前述の通り、非切込み部NS1を軸として捩じって表裏反転部Q6が反転したことで、表裏反転部Q6の大きさに相当する穴H2が設けられている。
【0054】
前記穴H2もまた、先に説明した自動車用内装トリムTの非覆部U(具体的には、配線作業領域部U3)に対応するものであり、かかる穴H2の存在により、該非覆部Uと矩形原反片2との干渉を回避可能な状態となるように設定されている。
【0055】
この図10の自動車用防音材M4でもまた、前述の表裏反転部Q6が吸音材として機能するので、吸音率の向上を図れるという利点がある。
【0056】
また、この図10の自動車用防音材M4では、表裏反転部Q6が所定の重量を有することにより、非切込み部NS1を軸とした捩じりによる表裏反転部Q6の反転は、その表裏反転部Q6の自重によって行うことができるため、反転のための特別な作業工程を必要とせず、自動車用防音材M4の製造作業における作業工数の削減も図れる。
【0057】
《第1の工程と第3の工程の合併》
以上説明した各発明における第1の工程と第2の工程は合併し、各工程で行われる前述の作業、すなわち原反1から複数の矩形原反片2を切出す裁断の作業工程と、その矩形原反片2にスリット部3を形成する作業工程とを同時に行うことができる。この場合、裁断用の刃物とスリット部形成用の刃物を用意し、これらの刃物で同時に裁断の作業とスリット部形成の作業を行えばよい。
【0058】
《以上のまとめ》
以上の説明から分かるように、前述の実施形態(第2、第4、第6、第8の本発明に係る自動車用防音材M1~M4の実施形態)は、いずれも、防音素材からなる矩形原反片2で構成され、矩形原反片2は、スリット部3を有し、かつ、該スリット部3を利用して変形したことによって、自動車用内装トリムTの非覆部Uとの干渉を回避可能な状態に設定されたものである。
【0059】
前述の実施形態によると、自動車用防音材M1~M4とその製造方法の具体的な構成として、前記の通り、矩形原反片2を用いる構成を採用するとともに、その矩形原反片2と自動車用内装トリムの非覆部との干渉を回避可能な状態に設定する手段として、スリット部3を利用して矩形原反片2が変形した構造を採用した。このため、かかる矩形原反片2は、例えば、防音素材からなる長尺状の原反1を同面積の矩形に裁断することによって取得することができ、その裁断のラインは矩形なので、かかる裁断で端材は生じないこと、および、スリット部3は切込みによって形成できるので、スリット部3の形成でも端材は生じないこと、並びに、例えばスリット部3は直線や曲線等のライン状刃物で形成できることから、裁断による端材の発生を防止する、および、裁断する刃物の形状を簡略化するのに好適である。
【0060】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 原反
2、2-1、2-2、2-3、2-4 矩形原反片
2A、2B 矩形原反片の側辺
2C 矩形原反片の上辺
2D 矩形原反片の下辺
3 スリット部
31A、31B 一対の縦スリット
32 横スリット
G1 隙間
H1、H2、H3 穴
L1 幅方向裁断ライン
L2 長さ方向裁断ライン
Q1、Q2、Q3、Q4 領域
Q5 スライド変位部
Q6 表裏反転部
SL1 第1のスリット
SL2 第2のスリット
SL3 第3のスリット
NS1 第1の非切込み部
NS2 第2の非切込み部
T 自動車用内装トリム
U 非覆部
U1 部品取付け部
U2 クリップ座
U3 配線作業領域部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12