(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】MAdCAMアンタゴニストの投与レジメン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220916BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220916BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20220916BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20220916BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZMD
A61P1/04
C07K16/28 ZNA
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2020173121
(22)【出願日】2020-10-14
(62)【分割の表示】P 2016001684の分割
【原出願日】2016-01-07
【審査請求日】2020-11-12
(32)【優先日】2015-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファビオ カタルディ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エー. クレア
(72)【発明者】
【氏名】ゲイル エム. カマー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヴェイカーナーンド プルザーン
(72)【発明者】
【氏名】アラー アフマド
(72)【発明者】
【氏名】ミナ ハッサン-ザーライー
(72)【発明者】
【氏名】メラ クリシュナーン ティリー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイドン ザン
(72)【発明者】
【氏名】アニンディター バナジー
(72)【発明者】
【氏名】カレン ミシェル ペイジ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル スティーブン ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ジェイ. フォン シャク
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-505606(JP,A)
【文献】特開2006-249084(JP,A)
【文献】Gut, (2011), 60, [8], p.1068-1075
【文献】Br. J. Pharmacol., (2009), 157, [2], p.281-293
【文献】PLoS Genet., (2011), 7, [12], p.e1002367
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における
潰瘍性大腸炎
を処置するための
医薬の製造における、MAdCAMアンタゴニスト抗体
の使用であって、
該医薬が、22.5mgまたは75mgの初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体が該患者に皮下投与され、その後、該初期用量とほぼ同じ量での1つまたは複数の後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体が約4週間毎に投与されるように用いられ
ることを特徴とし、
該MAdCAMアンタゴニスト抗体が、配列番号11に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号12に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号13に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3、ならびに配列番号14に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号15に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号16に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を含
む、
使用。
【請求項2】
該医薬が、
後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体、初期用量とほぼ同じかまたはそれ未満の量で投与され、前記後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体が、初期用量の投与から約1週間後から約12週間後の間に提供されるように用いられることを特徴とする、請求項1に記載の
使用。
【請求項3】
該医薬が、
22.5mgまたは75mgの1つまたは複数の後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体が患者に投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1または2に記載の
使用。
【請求項4】
患者が、TNFアンタゴニストまたはTNF阻害剤を服用していないことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の
使用。
【請求項5】
MAdCAMアンタゴニスト抗体が、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、および配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の
使用。
【請求項6】
MAdCAMアンタゴニスト抗体が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖、および配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する重鎖を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の
使用。
【請求項7】
該医薬が、1種または複数の追加の治療剤と組み合わせて用いられることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
該追加の治療剤が、
(i)アセトアミノフェン、ナプロキセンナトリウム、イブプロフェン、トラマドール、アスピリン、セレコキシブ、バルデコキシブ、インドメタシン、および他のNSAID;
(ii)ベクロメタゾン、ヒドロキシコルチゾン、ベタメタゾン、メチルプレドニゾロン、ブデソニド、プレドニゾロン、コルチゾン、プレドニゾン、デキサメタゾン、およびトリアムシノロン、ならびに他のグルココルチコイド(glucorticoids);
(iii)6-メルカプトプリン、タクロリムス、アザチオプリン、サリドマイド、シクロスポリン、トファシチニブ、メトトレキセート、および他の免疫抑制剤/免疫調節剤;
(iv)アバタセプト、エトロリズマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、AMG-181、インフリキシマブ、抗ip10抗体、インターロイキン-2、AVX470、ベドリズマブ、セルトリズマブペゴル、および他の生物製剤;および
(v)AEB-071、メラトニン、アリカホルセン、メサラミン、ベンゾチアジノン、ニコチン、カンナビス、ホスファチジルコリン、クルクミン、幹細胞、hmpl-004、スルファサラジン、イベロガスト、トリクリス・スイス(trichuris suis)、カッパプロクト、krp-203、スルファサラジン、メサラミン、バルサラジド、オルサラジン;およびロペラミド、
からなる群から選択される、請求項7に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MAdCAMアンタゴニスト抗体の投与レジメンに関する。
【背景技術】
【0002】
粘膜アドレシン細胞接着分子(MAdCAM;アドレシンとしても公知)は、細胞接着受容体の免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。特殊なリンパ組織および胃腸管の粘膜部位へのリンパ球ホーミングの選択性は、MAdCAMの内皮発現によって決定される。MAdCAMは、組織化された腸リンパ組織、例えば、パイアー斑および腸間膜リンパ節などの高内皮細静脈の細胞表面上にユニークに発現されるが、他のリンパ器官、例えば、膵臓、胆嚢、ならびに脾臓白髄の脾臓細静脈および周縁洞においても発現される。
【0003】
MAdCAMは、腸の免疫学的監視において生理的役割を果たす一方、これは、慢性胃腸管炎症の状態下の炎症性腸疾患において過剰なリンパ球血管外遊出を促進すると思われる。TNFαおよび他の炎症促進性サイトカインは、内皮MAdCAM発現を増大させ、クローン病および潰瘍性大腸炎(UC)の患者から採取される生検標本では、炎症の部位においてMAdCAM発現のおよそ2~3倍の局所的増大がある。発現の上昇の同様のパターンが大腸炎の実験モデルにおいて観察された。炎症状態、例えば、インスリン依存性糖尿病移植片対宿主疾患、慢性肝疾患、炎症性脳症、および胃炎などの他の前臨床モデルでは、疾患病因における胎性MAdCAM発現の再覚醒および活性化α4β7
+リンパ球の参加もある。これらの炎症モデルおよびハプテン媒介(例えば、TNBS、DSSなど)または養子移入(CD4+CD45Rbhigh)マウス大腸炎モデルでは、MAdCAMへのα4β7
+リンパ球の結合を遮断するラット抗マウスMAdCAMモノクローナル抗体(mAb)、MECA-367は、リンパ球動員、組織血管外遊出、炎症および疾患の重症度を低減する。
【0004】
WO2005067620には、MAdCAMアンタゴニスト抗体およびこれらの使用が開示されている。WO2006096490には、MAdCAMアンタゴニスト抗体およびこれらの組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2005067620
【文献】WO2006096490
【文献】US8188235
【文献】米国特許第4,816,397号
【文献】PCT公開第WO98/52976号
【文献】PCT公開第WO00/34317号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R.Robinson編、Marcel Dekker,Inc.、New York、1978
【文献】Kabatら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5版、公衆衛生局、NIH、Washington D.C.、NIH刊行物番号91-3242
【文献】Chothiaら、1989、Nature、342:877~883
【文献】MacCallumら、1996、J.Mol.Biol.、262:732-745
【文献】Northら、2011、J.Mol.Biol、406:228~256
【文献】Makabeら、2008、Journal of Biological Chemistry、283:1156~1166
【文献】SongsivilaiおよびLachmann(1990)、Clin.Exp.Immunol.、79:315~321
【文献】Kostelnyら(1992)、J.Immunol.、148:1547~1553
【文献】Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89(22)、10915~9、1992
【文献】Jonsson U.ら、Ann.Biol.Clin.、51:19~26(1993)
【文献】Jonsson U.ら、Biotechniques、11:620~627(1991)
【文献】Jonsson B.ら、J.Mol.Recognit.、8:125~131(1995)
【文献】Johnsson B.ら、Anal.Biochem.、198:268~277(1991)
【文献】KohlerおよびMilstein(1975)、Nature、256:495
【文献】Sambrook、Fritsch、およびManiatis(編)、Molecular Cloning;A Laboratory Manual、2版、Cold Spring Harbor、N.Y.、(1989)
【文献】Ausubel,F.M.ら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates、(1989)
【文献】ZhangおよびSkolnick、Nucleic Acids Research、33:2302~2309(2005)
【文献】Pearson、Methods Enzymol.、183:63~98(1990)
【文献】Pearson、Methods Mol.Biol.、132:185~219(2000)
【文献】Pearson、Methods Enzymol.、266:227~258(1996)
【文献】Pearson、J.Mol.Biol.、276:71~84(1998)
【文献】MehrotraおよびRailkar、2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に示した実施形態を提供するが、ここでそれぞれの実施形態はEで示される。
E1. MAdCAM発現の増大に関連した状態に罹りやすいかまたはそれと診断された患者を処置するための方法であって、約5mgから約150mgの間の初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、方法。
E2. MAdCAM発現の増大に関連した状態に罹りやすいかまたはそれと診断された患者を処置するための方法であって、約5mgから約150mg未満の間の初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、方法。
E3. 潰瘍性大腸炎(UC)に罹りやすいかまたはそれと診断された患者を処置するための方法であって、約5mgから約150mgの間の初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、方法。
E4. UCに罹りやすいかまたはそれと診断された患者を処置するための方法であって、約5mgから約150mg未満の間の初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、方法。
【0009】
実施形態が「E」によって示されている、さらなる実施形態を以下に示す。
E5. 約7.5mgから約75mgの間の初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、E1からE4の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E6. 約20mgから約75mgの間の初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、E1からE5の実施形態のいずれか1つに記載の方法。E7. 約22.5mgから約75mgの間の初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、E1からE6の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E8. 約25mgから約75mgの間の初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、E1からE7の実施形態のいずれか1つに記載の方法。E9. 約50mgの初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、E1からE8の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E10. 約50mgから約150mgの間の初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、E1からE9の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E11. 約75mgから約125mgの間の初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、E1からE10の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E12. 約100mgの初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、E1からE11の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E13. MAdCAMアンタゴニスト抗体が、下限が、約5mg、約6mg、約7mg、約7.5mg、約8mg、約9mg、約10mg、約12mg、約15mg、約20mg、約22.5mg、約25mg、約30mg、約35mg、約45mg、約50mg、約55mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mgからなる群から選択され、上限が、約22.5mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg未満、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約105mg、約110mg、約115mg、約120mg、125mg、約130mg、約135mg、約140mg、約145mg、約150mg未満、および約150mgからなる群から選択される範囲で投薬される、E1からE12の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E14. 1つまたは複数の後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、E1からE13の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E15. 1つまたは複数の後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体が、初期用量とほぼ同じかまたはそれ未満の量で投与される、E14に記載の方法。
E16. 1つまたは複数の後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体が、初期用量とほぼ同じ量で投与される、E14に記載の方法。
E17. 約5mgから約150mgの間の後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、E1からE16の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E18. 約20mgから約75mgの間の後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、E1からE17の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E19. 約22.5mgから約75mgの間の後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、E1からE18の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E20. 約25mgから約75mgの間の後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、E1からE19の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E21. 約50mgの後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、E1からE20の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E22. 約50mgから約150mgの間の後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、E1からE21の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E23. 約75mgから約125mgの間の後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、E1からE22の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E24. 約100mgの後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、E1からE23の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E25. 下限が、約5mg、6mg、約7mg、約7.5mg、約8mg、約9mg、約10mg、約12mg、約15mg、約20mg、約22.5mg、約25mg、約30mg、約35mg、約45mg、約50mg、約55mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、および約100mgからなる群から選択され、上限が、22.5mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg未満、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約105mg、約110mg、約115mg、約120mg、125mg、約130mg、約135mg、約140mg、約145mg、約150mg未満、および約150mgからなる群から選択される範囲で、後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップと含む、E1からE24の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E26. 後続の用量が、初期用量とほぼ同じかまたはそれ未満の量で投与され、前記後続の用量が、初期用量から約1週間から約12週間の間の後に提供される、E1からE25の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E27. 後続の用量が、初期用量とほぼ同じかまたはそれ未満の量で投与され、前記後続の用量が、初期用量から約4週間から約12週間の間の後に提供される、E1からE26の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E28. 後続の用量が、初期用量とほぼ同じかまたはそれ未満の量で投与され、前記後続の用量が、初期用量から約2週間から約8週間の間の後に提供される、E1からE27の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E29. 後続の用量が、初期用量とほぼ同じかまたはそれ未満の量で投与され、前記後続の用量が、初期用量から約4週間から約8週間の間の後に提供される、E1からE28の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E30. 後続の用量が、初期用量とほぼ同じかまたはそれ未満の量で投与され、前記後続の用量が、初期用量から約4週間後に提供される、E1からE29の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E31. 後続の用量が、初期用量とほぼ同じかまたはそれ未満の量で投与され、前記後続の用量が、初期用量から約1カ月後に提供される、E1からE30の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E32. 後続の用量が、初期用量とほぼ同じかまたはそれ未満の量で投与され、前記後続の用量が、初期用量から約6週間後に提供される、E1からE31の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E33. 後続の用量が、初期用量とほぼ同じかまたはそれ未満の量で投与され、前記後続の用量が、初期用量から約8週間後に提供される、E1からE32の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E34. 後続の用量が、初期用量とほぼ同じかまたはそれ未満の量で投与され、前記後続の用量が、初期用量から約2カ月後に提供される、E1からE33の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E35. 初期用量から約12週間後における観察される臨床的寛解率が、MAYOスコアを使用して判定される場合、少なくとも約3%である、E1からE34の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E36. 初期用量から約12週間後における観察される臨床的寛解率が、MAYOスコアを使用して判定される場合、少なくとも約5%である、E1からE35の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E37. 初期用量から約12週間後における観察される臨床的寛解率が、MAYOスコアを使用して判定される場合、少なくとも約10%である、E1からE36の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E38. 初期用量から約12週間後における観察される臨床的寛解率が、MAYOスコアを使用して判定される場合、少なくとも約11%である、E1からE37の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E39. 初期用量から約12週間後における観察される臨床的寛解率が、MAYOスコアを使用して判定される場合、少なくとも約12%である、E1からE38の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E40. 初期用量から約12週間後における観察される臨床的寛解率が、MAYOスコアを使用して判定される場合、少なくとも約14%である、E1からE39の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E41. 初期用量から約12週間後における観察される臨床的寛解率が、MAYOスコアを使用して判定される場合、少なくとも約15%である、E1からE40の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E42. 初期用量から約12週間後における観察される臨床的寛解率が、MAYOスコアを使用して判定される場合、少なくとも約16%である、E1からE41の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E43. 初期用量から約12週間後における観察される臨床的寛解率が、MAYOスコアを使用して判定される場合、少なくとも約18%である、E1からE42の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E44. 初期用量から約12週間後における観察される臨床的寛解率が、MAYOスコアを使用して判定される場合、少なくとも約20%である、E1からE43の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E45. 初期用量から約12週間後における観察される臨床的寛解率が、MAYOスコアを使用して判定される場合、少なくとも約23%である、E1からE44の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E46. 初期用量から約12週間後における臨床的奏効率が、少なくとも約28%である、E1からE45の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E47. 初期用量から約12週間後における臨床的奏効率が、少なくとも約30%である、E1からE46の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E48. 初期用量から約12週間後における臨床的奏効率が、少なくとも約35%である、E1からE47の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E49. 初期用量から約12週間後における臨床的奏効率が、少なくとも約38%である、E1からE48の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E50. 初期用量から約12週間後における臨床的奏効率が、少なくとも約40%である、E1からE49の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E51. 初期用量から約12週間後における臨床的奏効率が、少なくとも約45%である、E1からE50の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E52. 初期用量から約12週間後における臨床的奏効率が、少なくとも約50%である、E1からE51の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E53. 初期用量から約12週間後における粘膜治癒率が、少なくとも約10%である、E1からE52の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E54. 初期用量から約12週間後における粘膜治癒率が、少なくとも約14%である、E1からE53の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E55. 初期用量から約12週間後における粘膜治癒率が、少なくとも約15%である、E1からE54の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E56. 初期用量から約12週間後における粘膜治癒率が、少なくとも約20%である、E1からE55の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E57. 初期用量から約12週間後における粘膜治癒率が、少なくとも約25%である、E1からE56の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E58. 初期用量から約12週間後における粘膜治癒率が、少なくとも約27%である、E1からE57の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E59. 初期用量から約12週間後における粘膜治癒率が、少なくとも約30%である、E1からE58の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E60. 初期用量から約12週間後における粘膜治癒率が、少なくとも約35%である、E1からE59の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E61. 初期用量から約12週間後における粘膜治癒率が、少なくとも約37%である、E1からE60の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E62. 患者が、TNFアンタゴニストまたはTNF阻害剤を服用していない、E1からE61の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E63. TNF阻害剤が、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、紫外線A処置(PUVA)と組み合わせたソラレン、セルトリズマブペゴル、メトトレキセート、シクロスポリン、クルクミン、カテキン、カンナビス、およびムラサキバレンギク(Echinacea purpurea)からなる群から選択される1種または複数である、E62に記載の方法。
E64. MAdCAMアンタゴニスト抗体が皮下投与される、E1からE63の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E65. 患者が、AMG-181、アダリムマブ、アリカホルセン(alicaforsam)、アバタセプト、アスピリン、アセトアミノフェン、アザチオプリン、AVX470、AEB-071、アミトリプチリン、アントラリン、アシトレチン、アレファセプト、アロセトロン、アバタセプト、アメルバント、アナキンラ、アプレミラスト、アピリモド、アセクロフェナク、アクタリット、アモキサピン(amoxapinet)、ブデソニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、バルサラジド、ベンゾチアジノン、ベンゾカイン、ベリムマブ、ブプレノルフィン、セレコキシブ、シクロスポリン、コルチゾン、セルトリズマブペゴル、クルクミン(curcurmin)、カンナビス、シプロフロキサシン;カルシポトリエン;シクロベンザプリン;クロベタゾールプロピオン酸エステル、コデイン、樟脳、デキサメタゾン、ドキセピン、デノスマブ、ジアセレイン、ジクロフェナク、ジフルニサル、デフラザコート、ジピリダモール、ジヒドロコデイン、デラコキシブ、ズロキセチン、エトロリズマブ、エタネルセプト、エファリズマブ、エトドラク、エクリズマブ、エトリコキシブ、フルオキセチン、フォントリズマブ、フェルビナク、フェノプロフェン、フェンタニル、ゴリムマブ、ガバペンチン、hmpl-004、ヒドロモルフォン、ヒドロコドン,インドメタシン、イブプロフェン、インフリキシマブ、インターロイキン-2、イミプラミン、イベロガスト、サリチル酸イミダゾール、イグラチモド、免疫グロブリン、ヒドロキシコルチゾン、ヒドロキシウレア、ヒアルロン酸(hylauronic acid)、カッパプロクト(kappaproct)、krp-203、ロペラミド、ロルノキシカム、ルメリコキシブ(lumericoxib)、レフルノミド、リコフェロン、ルミラコキシブ、リドカイン、メチルプレドニゾロン、6-メルカプトプリン、メトトレキセート、メトロニダゾール、メサラミン、メラトニン、メサラミン、メロキシカム、ミソプロストール、サリチル酸メチル、ナプロキセンナトリウム、ニコチン、ノルトリプチリン、ナブメトン(nambumetone)、ネパフェナク、ノルアドレナリン、ノルエピネフリン、オルサラジン、OM-89、オトゼラ(Otzela)、オプレルベキン、オファツムマブ、オクレリズマブ、オキシコドン、オキシモルホン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ホスファチジルコリン、パロキセチン、パクリタキセル、プロソルバ(prosorba)、ペルビプロフェン、ピロキシカム、ペグスネルセプト、プラルナカサン、プリナベレル、パレコキシブ、プレガバリン、リメキソロン、リセドロネートナトリウム、ロシグリタゾン、ロフェコキシブ、ロピバカイン、レボキセチン、(S,S)-レボキセチン、ロイマコン、スルファサラジン、スルファサラジン、ロペラミド、セルトラリン、シルデナフィル、トラマドール、トリアムシノロン、タクロリムス、サリドマイド、トファシチニブ、トリクリス・スイス(trichuris suis)、トラゾドン、タザロテン、テガセロド、トシリズマブ、テムシロリムス、テノキシカム、バルデコキシブ、ベドリズマブ、キセルジャンズ(Xeljanz)、ゾルピデム、ゾレドロン酸、153Sm-EDTMP、およびSK-1306X、および10rT1抗体、CP-481715、ABN-912、MLN-3897、HuMax-IL-15、RA-1、Org-37663、Org 39141、AED-9056、AMG-108、GW-274150、AT-001、681323(GSK)、K-832、R-1503、DE-096、Cpn10、THC+CBD(GW Pharma)、856553(GSK)、ReN-1869、mm-093、SCIO-469、ABT-874、LenkoVAX、LY-2127399、TRU-015、KC-706、およびTAK-715、PG760564、VX-702、PMX-53、CF-101、tgAAV-TNFR:Fc、R-788、PMI-001、S-[2-[(1-イミノエチル)アミノ]エチル]-L-ホモシステイン、S-[2-[(1-イミノエチル)-アミノ]エチル]-4,4-ジオキソ-L-システイン、S-[2-[(1-イミノエチル)アミノ]エチル]-2-メチル-L-システイン、(2S,5Z)-2-アミノ-2-メチル-7-[(1-イミノエチル)アミノ]-5-ヘプテン酸、2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)-ブチル]チオ]-5-クロロ-3-ピリジンカルボニトリル;2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)ブチル]チオ]-4-クロロベンゾニトリル、(2S,4R)-2-アミノ-4-[[2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]チオ]-5-チアゾールブタノール、2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)ブチル]チオ]-6-(トリフルオロメチル)-3ピリジンカルボニトリル、2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)ブチル]チオ]-5-クロロベンゾニトリル、N-[4-[2-(3-クロロベンジルアミノ)エチル]フェニル]チオフェン-2-カルボキサミジン、N-[({2-[4-(2-エチル-4,6-ジメチル-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)フェニル]エチル}アミノ)-カルボニル]-4-メチルベンゼンスルホンアミド、4-[(1S)-1-({[5-クロロ-2-(3-フルオロフェノキシ)ピリジン-3-イル]カルボニル}アミノ)エチル]安息香酸、および1-(3-ビフェニル-4-イルメチル-4-ヒドロキシ-クロマン-7-イル)-シクロペンタンカルボン酸からなる群から選択される別の医薬品でも処置される、E1からE64の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E66. 患者が、MAdCAM抗体および他の医薬品で同時に処置される、E65に記載の方法。
E67. 患者が、MAdCAM抗体および他の医薬品で順次処置される、E65に記載の方法。
E68. MAdCAMアンタゴニスト抗体が、配列番号3のCDRに係るCDRを有する軽鎖、および配列番号4のCDRに係るCDRを有する重鎖を含む、E1からE67の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E69. MAdCAMアンタゴニスト抗体が、配列番号3および配列番号4を含む、E1からE68の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E70. MAdCAMアンタゴニスト抗体が、配列番号1および配列番号2を含む、E1からE69の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E71. 約22.5mgから約75mgの間の初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体、その後、初期用量とほぼ同じ量での1つまたは複数の後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含み、1つまたは複数の後続の用量が約4週間毎の用量である、E1からE70の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E72. 約50mgの初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体、その後、初期用量とほぼ同じ量での1つまたは複数の後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含み、1つまたは複数の後続の用量が約4週間毎の用量である、E1からE71の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E73. 約40mgの初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体、その後、初期用量とほぼ同じ量で1つまたは複数の後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含み、1つまたは複数の後続の用量が約4週間毎の用量である、E1からE71の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E74. 約30mgの初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体、その後、初期用量とほぼ同じ量での1つまたは複数の後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含み、1つまたは複数の後続の用量が約4週間毎の用量である、E1からE71の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E75. 約50mgから約150mgの間の初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体、その後、初期用量とほぼ同じ量での1つまたは複数の後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含み、1つまたは複数の後続の用量が約8週間毎の用量である、E1からE71の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E76. 約75mgから約125mgの間の初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体、その後、初期用量とほぼ同じ量での1つまたは複数の後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含み、1つまたは複数の後続の用量が約8週間毎の用量である、E1からE71の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E77. 約100mgの初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体、その後、初期用量とほぼ同じ量での1つまたは複数の後続の用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含み、1つまたは複数の後続の用量が約8週間毎の用量である、E1からE71の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E78. MAdCAM発現の増大に関連した状態が、潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)、過敏性腸症候群(IBS)、過敏性腸疾患(IBD)、関節リウマチ、反応性関節炎、骨関節炎、感染性関節炎、乾癬性関節炎、多発性関節炎、若年性関節炎、若年性関節リウマチ、若年性反応性関節炎、若年性乾癬性(psioriatic)関節炎、疼痛、線維症、線維筋痛症症候群、強直性脊椎炎、未分化脊椎関節症、若年発症の脊椎関節炎、乾癬、痛風、キャッスルマン病、敗血症、I型糖尿病、II型糖尿病、多発性骨髄腫、および腎細胞癌からなる群から選択される、E1からE77の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
E79. 実施形態E1~E78のいずれか1つに記載の方法で使用するためのMAdCAMアンタゴニスト抗体。
E80. E79に記載の抗体を含む医薬組成物。
E81. 溶解用乾燥製剤、例えば、凍結乾燥粉末、フリーズドライ粉末、または無水濃縮物などとしてMAdCAMアンタゴニスト抗体を含む、E80に記載の医薬組成物。
E82. 液体製剤としてMAdCAMアンタゴニスト抗体を含む、E80に記載の医薬組成物。
E83. 潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)、過敏性腸症候群(IBS)、過敏性腸疾患(IBD)、セリアック病、原発性硬化性胆管炎、胆道疾患、関節リウマチ、反応性関節炎、骨関節炎、感染性関節炎、乾癬性関節炎、多発性関節炎、若年性関節炎、若年性関節リウマチ、若年性反応性関節炎、若年性乾癬性関節炎、疼痛、線維症、線維筋痛症症候群、強直性脊椎炎、未分化脊椎関節症、若年発症の脊椎関節炎、乾癬、痛風、キャッスルマン病、敗血症、I型糖尿病、II型糖尿病、多発性骨髄腫、および腎細胞癌からなる群から選択される状態を処置するための医薬の調製におけるE79に記載のMAdCAMアンタゴニスト抗体の使用。
E84. 潰瘍性大腸炎を処置するための医薬の調製におけるE79に記載のMAdCAMアンタゴニスト抗体の使用。
E85. クローン病を処置するための医薬の調製におけるE79に記載のMAdCAMアンタゴニスト抗体の使用。
E86. 対照と比較した場合のバイオマーカーのレベルの変化が、状態における有益な治療応答の予測となるように、
(a)前記患者からの生体試料中のバイオマーカーのレベルを測定するステップであって、前記バイオマーカーが、(i)糞便カルプロテクチン、sMAdCAM、hsCRP、AR、CHI3L1、CXCL1、CXCL11、CXCL13、CXCL9、Dkk-1、EGF、EN-RAGE、EPO、FGF-21、GH、IL-17C、IL-6、IL-7、IL-8、MIP-1アルファ、MMP-1、MMP-10、MMP-12、MMP-3、NT-pro-BNP、OSM、PTPN22、PTX3、REG-4、RETN、TNFRSF4、TRANCE、およびVEGF-Aからなる群から選択されるバイオマーカーの任意の1種もしくは組合せ;(ii)CCR9;(iii)循環α4β7+細胞;または(iv)上記の任意の組合せである、ステップと;
(b)前記レベルを対照と比較するステップと
をさらに含む、実施形態E1~E78のいずれか1つに記載の方法。
E87. MAdCAMアンタゴニスト抗体を投与した後の潰瘍性大腸炎(UC)患者における有益な応答の存在または非存在を評価するための方法であって、
(a)前記患者からの生体試料中のバイオマーカーのレベルを測定するステップであって、前記バイオマーカーが、(i)糞便カルプロテクチン、sMAdCAM、hsCRP、AR、CHI3L1、CXCL1、CXCL11、CXCL13、CXCL9、Dkk-1、EGF、EN-RAGE、EPO、FGF-21、GH、IL-17C、IL-6、IL-7、IL-8、MIP-1アルファ、MMP-1、MMP-10、MMP-12、MMP-3、NT-pro-BNP、OSM、PTPN22、PTX3、REG-4、RETN、TNFRSF4、TRANCE、およびVEGF-Aからなる群から選択されるバイオマーカーの任意の1種もしくは組合せ;(ii)CCR9;(iii)循環α4β7+細胞;または(iv)上記の任意の組合せである、ステップと;
(b)前記レベルを対照と比較するステップと
を含み、対照と比較した場合のバイオマーカーのレベルの変化が、前記患者における有益な応答の予測となる、方法。
E88. MAdCAMアンタゴニスト抗体を用いた処置から利益を得ると予想される潰瘍性大腸炎(UC)患者を同定するための方法であって、
(a)前記患者からの生体試料中のバイオマーカーのレベルを測定するステップであって、前記バイオマーカーが、(i)糞便カルプロテクチン、sMAdCAM、hsCRP、AR、CHI3L1、CXCL1、CXCL11、CXCL13、CXCL9、Dkk-1、EGF、EN-RAGE、EPO、FGF-21、GH、IL-17C、IL-6、IL-7、IL-8、MIP-1アルファ、MMP-1、MMP-10、MMP-12、MMP-3、NT-pro-BNP、OSM、PTPN22、PTX3、REG-4、RETN、TNFRSF4、TRANCE、およびVEGF-Aからなる群から選択されるバイオマーカーの任意の1種もしくは組合せ;(ii)CCR9;(iii)循環α4β7+細胞;または(iv)上記の任意の組合せである、ステップと;
(b)前記レベルを対照と比較するステップであって、対照と比較した場合のバイオマーカーのレベルの変化が、前記患者がMAdCAMアンタゴニスト抗体を用いた処置から利益を得ると予想されることを予測する、ステップと;
(c)MAdCAMアンタゴニスト抗体を用いた処置のために前記患者を選択するステップと
を含む、方法。
E89. 前記バイオマーカーが、糞便カルプロテクチン、sMAdCAM、hsCRP、AR、CHI3L1、CXCL1、CXCL11、CXCL13、CXCL9、Dkk-1、EGF、EN-RAGE、EPO、FGF-21、GH、IL-17C、IL-6、IL-7、IL-8、MIP-1アルファ、MMP-1、MMP-10、MMP-12、MMP-3、NT-pro-BNP、OSM、PTPN22、PTX3、REG-4、RETN、TNFRSF4、TRANCE、VEGF-A、および上記の任意の組合せからなる群から選択される、実施形態E86~E88のいずれか1つに記載の方法。
E90. 前記バイオマーカーが、糞便カルプロテクチン、sMAdCAM、hsCRP、CHI3L1、CXCL1、CXCL13、CXCL9、Dkk-1、EGF、EN-RAGE、EPO、IL-17C、IL-6、IL-7、MIP-1アルファ、MMP-1、MMP-10、MMP-12、MMP-3、NT-pro-BNP、PTPN22、PTX3、RETN、TNFRSF4、TRANCE、および上記の任意の組合せからなる群から選択される、実施形態E86~E89のいずれか1つに記載の方法。
E91. 前記バイオマーカーが、糞便カルプロテクチン、sMAdCAM、hsCRP、AR、CXCL11、CXCL13、EPO、FGF-21、GH、IL-6、IL-7、IL-8、MMP-1、MMP-10、MMP-3、OSM、PTPN22、REG-4、RETN、VEGF-A、および上記の任意の組合せからなる群から選択される、実施形態E86~E90のいずれか1つに記載の方法。
E92. 前記バイオマーカーが、糞便カルプロテクチン、sMAdCAM、hsCRP、CXCL13、EPO、IL-6、IL-7、MMP-1、MMP-10、MMP-3、PTPN22、RETN、および上記の任意の組合せからなる群から選択される、実施形態E86~E91のいずれか1つに記載の方法。
E93. 前記バイオマーカーが、糞便カルプロテクチン、sMAdCAM、hsCRP、CXCL13、IL-7、PTPN22、RETN、および上記の任意の組合せからなる群から選択される、実施形態E86~E92のいずれか1つに記載の方法。
E94. 前記バイオマーカーが、糞便カルプロテクチン、sMAdCAM、hsCRP、および上記の任意の組合せからなる群から選択される、実施形態E86~E93のいずれか1つに記載の方法。
E95. 前記バイオマーカーが、(i)糞便カルプロテクチン、sMAdCAM、もしくはhsCRP;(ii)CCR9;(iii)循環α4β7+細胞;または(iv)上記の任意の組合せである、実施形態E86~E94のいずれか1つに記載の方法。
E96. 前記バイオマーカーが糞便カルプロテクチンであり、対照と比較した場合の糞便カルプロテクチンレベルの減少が、前記患者がMAdCAMアンタゴニスト抗体を用いた処置から利益を得ると予想されることの予測となる、実施形態E86~E95のいずれか1つに記載の方法。
E97. 前記バイオマーカーがsMAdCAMであり、対照と比較した場合のsMAdCAMレベルの減少が、前記患者がMAdCAMアンタゴニスト抗体を用いた処置から利益を得ると予想されることの予測となる、実施形態E86~E95のいずれか1つに記載の方法。
E98. 前記バイオマーカーがhsCRPであり、対照と比較した場合のhsCRPレベルの減少が、前記患者がMAdCAMアンタゴニスト抗体を用いた処置から利益を得ると予想されることの予測となる、実施形態E86~E95のいずれか1つに記載の方法。E99. 前記バイオマーカーがCCR9であり、対照と比較した場合のCCR9レベルの増大が、前記患者がMAdCAMアンタゴニスト抗体を用いた処置から利益を得ると予想されることの予測となる、実施形態E86~E88およびE95のいずれか1つに記載の方法。
E100. 前記バイオマーカーが循環α4β7+細胞であり、対照と比較した場合の循環α4β7+細胞レベルの増大が、前記患者がMAdCAMアンタゴニスト抗体を用いた処置から利益を得ると予想されることの予測となる、実施形態E86~E88およびE95のいずれか1つに記載の方法。
E101. 前記生体試料が、MAdCAMアンタゴニスト抗体を投与してから少なくとも約4週間後に得られる、実施形態E86~E100のいずれか1つに記載の方法。
E102. 前記生体試料が、MAdCAMアンタゴニスト抗体を投与してから約4週間~約12週間後に得られる、実施形態E86~E101のいずれか1つに記載の方法。
E103. 前記生体試料が、MAdCAMアンタゴニスト抗体を投与してから約12週間後に得られる、実施形態E86~E102のいずれか1つに記載の方法。
E104. 前記患者が、rs11171739においてリスク対立遺伝子(C)をさらに含む、実施形態E1~E78およびE86~E103のいずれか1つに記載の方法。
E105. MAdCAMアンタゴニスト抗体を用いた処置から利益を得ると予想される潰瘍性大腸炎(UC)患者を同定するための方法であって、
(a)前記患者からのゲノムDNAを含む生体試料をアッセイするステップと;
(b)前記ゲノムDNAからSNP rs11171739配列を得るステップと
を含み、rs11171739におけるリスク対立遺伝子(C)の存在が、前記患者がMAdCAMアンタゴニスト抗体を用いた処置から利益を得ると予想されることの予測となる、方法。
E106. MAdCAM発現の増大に関連した状態に罹りやすいかまたはそれと診断された患者を処置する方法であって、約5mgから約150mgの間の初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含み、前記患者は、rs11171739においてリスク対立遺伝子(C)を含む、方法。
E107. MAdCAM発現の増大に関連した状態に罹りやすいかまたはそれと診断された患者を処置する方法であって、約5mgから約150mgの間の初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含み、前記患者は、実施形態E86~E105に記載の方法のいずれか1つによって同定される、方法。
E108.
(a)生体試料中のバイオマーカーの存在を検出するため、またはバイオマーカーのレベルを測定するための検出剤であって、前記バイオマーカーが、(i)表12、13、15に列挙したバイオマーカーの任意の1種;(ii)循環α4β7+細胞;(iii)rs11171739リスク対立遺伝子;または(iv)上記の任意の組合せである、検出剤と;
(b)前記検出剤を使用するための指示書
を含む、キット。
【0010】
本発明は、独立して、または先の実施形態のいずれかと組み合わせて使用することができるさらなる実施形態として、トファシチニブの1回または複数の投薬後に約5mgから約150mgの間の初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む、MAdCAM発現の増大に関連した状態に罹りやすいかまたはそれと診断された患者を処置するための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】12週目における総mayoスコアに基づく臨床的寛解率を示す図である(処置失敗手法)。
【
図2】12週目におけるナイーブおよび経験集団に基づく臨床的寛解率を示す図である(処置失敗手法)。
【
図3】12週目における臨床反応および粘膜治癒率を示す図である(処置失敗手法)。
【
図4】12週目における総mayoスコアに基づくプラセボ補正臨床的寛解率、臨床的奏効率、および粘膜治癒率の分析結果を示す図である(cmh方法、中央読み取り(central read)、mitt集団)。
【
図5】12週目における総mayoスコアに基づくプラセボ補正臨床的寛解率、臨床的奏効率、および粘膜治癒率の分析結果を示す図である(cmh方法、ローカル読み取り(local read)、mitt集団)。
【
図6】4、8、12週目における1超の個々のサブスコアを伴わない2以下の部分的mayoスコアのベースラインからの減少を有する対象の比率の分析結果を示す図である(cmh方法、mitt集団)。
【
図7】4、8、および12週目における臨床的寛解(2ポイント未満の総sccaiスコアとして定義した)を伴う対象の比率(および90%信頼区間)を示す図である。
*信頼区間は、厳密法を使用して算出される。
【
図8】糞便カルプロテクチン(μg/g)のベースラインからのパーセント変化の幾何平均(および90%信頼区間)を示す図である(mitt、観察された症例)。
【
図9】12週目における処置群による可溶性madcam(pmol/l)のベースラインからのパーセント変化の幾何平均(および90%信頼区間)を示す図である(mitt、観察された症例)。
【
図10】hscrp(mg/dl)のベースラインからのパーセント変化の幾何平均(および90%信頼区間)を示す図である(mitt、0~12週目、観察された症例)。
【
図11-1】処置群によるモデル予測(黒色、中央値および95%予測区間)と比較した、観察された(赤色)血清mAb 7.16.6濃度を示す図である。
【
図12】有効性の表:処置と訪問によるMayo排便回数を示す図である。
【
図13】有効性の表:処置と訪問によるMayo直腸出血を示す図である。
【
図14】有効性の表:処置と訪問によるMayo軟性S状結腸鏡検査を示す図である。
【
図15】有効性の表:処置と訪問によるMayo PGAを示す図である。
【
図16】処置群による最も一般的な有害事象を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、患者を処置するための方法であって、潰瘍性大腸炎(UC)に罹りやすいかまたはそれと診断された患者に、約5mgから約75mgの間の初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0013】
本発明は、MAdCAM発現の増大に関連した状態に罹りやすいかまたはそれと診断された患者を処置するための方法であって、約5mgから約150mgの間の初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含む方法を提供する。一部の態様では、MAdCAM発現の増大は、健康な個体におけるMAdCAMと比較した場合である。
【0014】
中等度~重度の潰瘍性大腸炎を有する患者におけるmAb 7.16.6の安全性および有効性の第II相無作為化、多施設二重盲検、プラセボ対照試験において、排出および粘膜治癒は、プラセボに対して22.5mgおよび75mg用量群において有意に大きかった一方、奏功は、プラセボに対して22.5mgおよび225mg群で有意に大きかった。
【0015】
MAdCAMアンタゴニスト抗体は、25mg(初期および/または後続の用量)で投薬することができる。MAdCAMアンタゴニスト抗体は、50mg(初期および/または後続の用量)で投薬することができる。MAdCAMアンタゴニスト抗体は、75mgで投薬することができる。MAdCAMアンタゴニスト抗体は、25mg(初期および/または後続の用量)で投薬することができる。
【0016】
mAb 7.16.6は、本試験における主要有効性エンドポイントを満たした。総Mayoスコアに基づく臨床的寛解率は、4つの処置群のうち3つ(7.5mg、22.5mg、および75mg)において統計的に有意であった。抗TNF曝露による層(経験済みまたはナイーブ)による臨床的寛解率は、ナイーブ患者の中でより高かった。臨床反応、粘膜治癒、および部分Mayoスコアについての重要な二次エンドポイント結果は、一般に、主要エンドポイント分析の知見を支持した。mAb 7.16.6は、この患者集団において安全で耐容性良好であると思われる。
【0017】
一部の態様では、患者は、TNFアンタゴニストまたはTNF阻害剤を服用していない。一部の態様では、患者は、初期用量の前の少なくとも約1週間にわたってTNFアンタゴニストまたはTNF阻害剤を服用していない。一部の態様では、患者は、初期用量の前の少なくとも約2週間にわたってTNFアンタゴニストまたはTNF阻害剤を服用していない。一部の態様では、患者は、初期用量の前の少なくとも約3週間にわたってTNFアンタゴニストまたはTNF阻害剤を服用していない。一部の態様では、患者は、初期用量の前の少なくとも約4週間にわたってTNFアンタゴニストまたはTNF阻害剤を服用していない。一部の態様では、患者は、初期用量の前の少なくとも約5週間にわたってTNFアンタゴニストまたはTNF阻害剤を服用していない。一部の態様では、患者は、初期用量の前の少なくとも約6週間にわたってTNFアンタゴニストまたはTNF阻害剤を服用していない。一部の態様では、患者は、初期用量の前の少なくとも約7週間にわたってTNFアンタゴニストまたはTNF阻害剤を服用していない。一部の態様では、患者は、初期用量の前の少なくとも約8週間にわたってTNFアンタゴニストまたはTNF阻害剤を服用していない。一部の態様では、患者は、初期用量の前にTNFアンタゴニストまたはTNF阻害剤を服用したことがない。
【0018】
12週目における総Mayoスコア計算で中央読み取り内視鏡サブスコア(これからは中央読み取り)を使用して、プラセボ、mAb 7.16.6の7.5mg、22.5mg、75mg、および225mgにおける観察された臨床的寛解率(mITT集団)は、それぞれ、2.7%、11.3%、16.7%、15.5%、および5.7%であり、プラセボとの差異およびCMH検定を使用する対応する両側90%信頼区間(CI)は、それぞれ、8.0%(1.9%、14%)、12.8%(5.6%、19.9%)、11.8%(4.8%、18.8%)、および2.6%(-1.2%、6.4%)であった。
【0019】
総Mayoスコア計算でローカル読み取り内視鏡サブスコア(これからはローカル読み取り)を使用して、プラセボ、mAb 7.16.6の7.5mg、22.5mg、75mg、および225mgにおける観察された臨床的寛解率(mITT集団)は、それぞれ、5.5%、14.1%、23.6%、18.3%、および12.9%であり、プラセボとの差異およびCMH検定を使用する対応する90%CIは、それぞれ、8.0%(0.2%、15.9%)、17.8%(8.3%、27.2%)、12.2%(3.6%、20.8%)、および6.6%(-0.9%、14.2%)であった。
【0020】
したがって、一部の態様では、初期用量から約12週間後に観察される臨床的寛解率は、MAYOスコアを使用して判定される場合、少なくとも約3%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約16%、少なくとも約17%、少なくとも約18%、少なくとも約19%、少なくとも約20%、少なくとも約21%、少なくとも約22%、および少なくとも約23%からなる群から選択することができる。
【0021】
12週目における中央読み取りサブスコアを使用して、プラセボ、7.5mg、22.5mg、75mg、および225mgの観察された奏効率は、それぞれ、28.8%、38.0%、54.2%、45.1%、および50.0%であり、対応する粘膜治癒率は、それぞれ、8.2%、15.5%、27.8%、25.4%、および14.3%であった。ローカル読み取りサブスコアを使用する場合、観察される率は、中央読み取りより高く、プラセボ、7.5mg、22.5mg、75mg、および225mgについて、臨床的奏効率は、それぞれ、32.9%、38.6%、54.2%、48.6%、および51.4%であり、粘膜治癒率は、それぞれ、21.9%、22.5%、37.5%、35.2%、および28.6%であった。プラセボ群に対する22.5mgおよび225mg処置群の臨床的奏効率は、内視鏡サブスコア源にかかわらず、プラセボと有意に異なった。中央読み取りを使用する粘膜治癒率は一般に、ローカル読み取りより低く、傾向は、他のエンドポイントと一致する。
【0022】
したがって、一部の態様では、初期用量から約12週間後に観察される臨床的奏効率は、MAYOスコアを使用して判定される場合、少なくとも約25%、少なくとも約27%、少なくとも約28%、少なくとも約30%、少なくとも約32%、少なくとも約33%、少なくとも約35%、少なくとも約37%、少なくとも約38%、少なくとも約40%、少なくとも約42%、少なくとも約43%、少なくとも約45%、少なくとも約47%、少なくとも約48%、および少なくとも約50%からなる群から選択することができる。
【0023】
したがって、一部の態様では、初期用量から約12週間後における粘膜治癒率は、MAYOスコアを使用して判定される場合、少なくとも約10%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約27%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、および少なくとも約37%からなる群から選択することができる。
【0024】
mAb 7.16.6は、この患者集団において安全で耐容性良好であると思われる。最も一般的な有害事象は、根本的な疾患に関連し、プラセボおよび7.5mg処置群において処置の最初の月中に起こった。
【0025】
血清mAb 7.16.6曝露は、UC第I相試験(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT00928681)において観察されたものと一致し、標的媒介薬物体内動態を記述する予備集団薬物動態学的モデルによって十分に予測された。これらのPKレベルは、68~98%の範囲の可溶性MAdCAMの抑制に対応し(12週目における)、試験の設計中のモデル予測と一致した。全体的な確認抗薬物抗体(ADA)陽性率は、およそ6.4%であった。処置ブーストADA応答の徴候はなかった。ベースライン後に確認陽性ADAを有する対象における予備評価は、曝露、安全性、または有効性に対するADAの識別できる効果を示さなかった。
【0026】
バイオマーカー
本発明はさらに、分子バイオマーカー、例えば、遺伝子突然変異、トランスクリプトミクスRNA発現、細胞タンパク質マーカー、および患者、特に潰瘍性大腸炎(UC)を有する者における抗MAdCAM処置に対する応答の様々な尺度などを提供する。例えば、バイオマーカーは、mAb 7.16.6で処置した後の潰瘍性大腸炎を有する対象において観察される、観察された非単調用量応答についての根本的な基本メカニズムを確立するのに使用することができる。mAb 7.16.6処置は、より低い臨床的に効果的な用量で制御性細胞に対する免疫エフェクターの優先的な阻害をもたらし、それは、より高い臨床的にあまり効果的でない用量で正常化する。したがって、制御性細胞に関係するバイオマーカーは、将来の用量選択を最適化するのに使用することができる。さらに、バイオマーカーは、抗MAdCAM抗体処置に対して特に応答性であるUC患者の亜集団を選択するのにも使用することができる。
【0027】
例えば、UC患者に、少なくとも初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体、および固定間隔で(実施例では、患者は、4週間毎に投薬された)任意選択で1つまたは複数の後続の用量を投与することができる。初期用量から約4週間後または少なくとも約4週間後に、約8週間後または少なくとも約8週間後に、約12週間後または少なくとも約12週間後に、前記患者における1つまたは複数のバイオマーカーを評価して、将来の有益な治療応答が有望であるか否かを予測してもよい。陽性のバイオマーカーアッセイ結果は、患者が抗MAdCAM処置を継続することから利益を得ると予想されること示唆するはずである。バイオマーカーは、抗MAdCAM処置から利益を得る可能性があると予想される患者の亜集団を選択するために、抗MAdCAM処置の前に評価されてもよい。バイオマーカーを、例えば、用量を調整するために、または処置を継続するべきか否かを判定するために、処置の過程中に連続的に監視することができる。
【0028】
4つのタイプのバイオマーカー:遺伝子バイオマーカー(SNP rs11171739など)、RNA転写物マーカー(CCR9転写物など)、タンパク質バイオマーカー(糞便カルプロテクチン、sMAdCAM、およびhsCRPなど)、および細胞バイオマーカー(α4β7+細胞など)が本明細書に提供されている。これらのバイオマーカーのいずれも、治療効果および/または患者亜集団を評価するのに単独で、または任意の組合せで使用することができる。
【0029】
一態様では、本発明は、MAdCAMアンタゴニスト抗体を投与した後の患者における有益な応答の存在または非存在を評価するための方法であって、(a)前記患者からの生体試料中のバイオマーカーのレベルを測定するステップと;(b)前記レベルを対照と比較するステップとを含み、対照と比較した場合のバイオマーカーのレベルの変化が、前記患者における有益な応答の予測となる、方法を提供する。別の態様では、本発明は、MAdCAMアンタゴニスト抗体を投与した後の患者における有益な応答の存在または非存在を評価するための方法であって、(a)前記患者から生体試料を得、または受け取るステップと;(b)前記生体試料中のバイオマーカーのレベルを測定するステップと;(c)前記レベルを対照と比較するステップとを含み、対照と比較した場合のバイオマーカーのレベルの変化が、前記患者における有益な応答の予測となる、方法を提供する。このような患者は、MAdCAMアンタゴニスト抗体処置を継続することができる。さらなる投与量をバイオマーカーレベルの変化によって調整して、所望の治療効果を実現することができる。例えば、患者におけるバイオマーカーレベルの変化が最小限の閾値に到達していなかった場合、用量を増やすことができる。
【0030】
当業者は、何が適切な対照であるかを判定することができるであろう。ある特定の実施形態では、対照は、抗MAdCAM処置の前の前記バイオマーカーのレベルである。ある特定の実施形態では、対照は、処置中のある特定の時点(例えば、初期用量から1週間後、初期用量から2週間後)における前記バイオマーカーのレベルである。ある特定の実施形態では、対照は、所定の値(例えば、閾値値または患者集団中の平均レベル)である。
【0031】
ある特定の実施形態では、前記バイオマーカーは、表12中のタンパク質バイオマーカー、ならびに糞便カルプロテクチン、sMAdCAM、およびhsCRPの任意の1種または任意の組合せである。ある特定の実施形態では、前記バイオマーカーは、表13中のタンパク質バイオマーカー、ならびに糞便カルプロテクチン、sMAdCAM、およびhsCRPの任意の1種または任意の組合せである。ある特定の実施形態では、前記バイオマーカーは、CCR9などの表14中のRNA転写物バイオマーカーの任意の1種または任意の組合せである。ある特定の実施形態では、前記バイオマーカーは、循環α4β7+細胞である。本明細書に開示のタンパク質、RNA、および細胞バイオマーカーの任意の組合せも使用することができる。
【0032】
ある特定の実施形態では、バイオマーカーは、(i)糞便カルプロテクチン、sMAdCAM、hsCRP、AR、CHI3L1、CXCL1、CXCL11、CXCL13、CXCL9、Dkk-1、EGF、EN-RAGE、EPO、FGF-21、GH、IL-17C、IL-6、IL-7、IL-8、MIP-1アルファ、MMP-1、MMP-10、MMP-12、MMP-3、NT-pro-BNP、OSM、PTPN22、PTX3、REG-4、RETN、TNFRSF4、TRANCE、およびVEGF-Aからなる群から選択されるバイオマーカーの任意の1種もしくは組合せ;(ii)CCR9;(iii)循環α4β7+細胞;または(iv)上記の任意の組合せである。
【0033】
一態様では、本発明は、MAdCAMアンタゴニスト抗体の処置から利益を得ると予想される患者を同定するための方法であって、(a)前記患者から生体試料を得るステップと;(b)前記試料中のrs11171739リスク対立遺伝子の存在を検出するステップとを含み、rs11171739リスク対立遺伝子の存在が、前記患者におけるMAdCAMアンタゴニスト抗体処置に対する有益な応答の予測となる、方法を提供する。rs11171739は、12q13.2遺伝子座(56076841位)におけるSNPであり、報告によれば、MADCAM1遺伝子の発現、およびある特定の自己免疫疾患と関連がある。正常対立遺伝子(dbSNPエントリーに配向)は、(T)(対立遺伝子頻度55.5%)であり、リスク対立遺伝子は、(C)(対立遺伝子頻度44.5%)である。遺伝子型頻度については、(T;T)が40.9%であり、(C;T)が32.8%であり、(C;C)が26.3%である。
【0034】
開示されたゲノム、RNA、タンパク質、および細胞バイオマーカーのバリエーションの組合せを使用することができる。例えば、患者亜集団を、CCR9転写物およびsMAdCAMの組合せ、またはrs11171739リスク対立遺伝子、CCR9、およびsMAdCAMの組合せによって同定することができる。
【0035】
一部の態様では、本発明は、ある状態に対する処置レジームに関する患者の適性を評価する方法であって、
・ 処置の前に糞便カルプロテクチン、sMAdCAM、およびhsCRPからなる群から選択される1種または複数の遺伝子の遺伝子発現レベルを測定するステップと;
・ 患者が本発明によるMAdCAMアンタゴニスト抗体で処置された後、ステップ(i)で測定された遺伝子の発現レベルを測定するステップと、
・ ステップ(i)および(ii)からの遺伝子発現レベルを比較し、発現の増大または減少を同定するステップと;
・ 遺伝子の1種または複数の遺伝子発現の変化に基づいて患者の処置を継続するステップと
を含む、方法を提供する。
【0036】
一部の態様では、遺伝子は、糞便カルプロテクチンである。一部の態様では、遺伝子は、可溶性MAdCAM(sMAdCAM)である。一部の態様では、遺伝子は、hsCRPである。
【0037】
別の態様では、本発明は、MAdCAMアンタゴニスト抗体を投与した後の患者における有益な応答の存在または非存在を評価するためのキットであって、(a)本明細書に記載のバイオマーカーの存在を検出するため、または本明細書に記載のバイオマーカーのレベルを測定するための検出剤と;(b)前記検出剤を使用するための指示書とを含む、キットを提供する。検出剤は、バイオマーカーに特異的に結合するプローブを含み得る。
【0038】
バイオマーカーは、本明細書に開示したように、表12、13、15からの任意のバイオマーカー;糞便カルプロテクチン、sMAdCAM、hsCRP;α4β7+細胞、rs11171739;またはこれらの任意の組合せであり得る。
【0039】
プローブは、オリゴヌクレオチド(例えば、DNAもしくはRNAバイオマーカーに結合するための)、抗体(例えば、タンパク質バイオマーカーに結合するための)、または前記バイオマーカーに特異的に結合するリガンド、アプタマー、もしくは低分子であり得る。プローブは、前記バイオマーカーの存在もしくは非存在を判定するため、または前記バイオマーカーのレベルを定量化するために検出可能マーカー(例えば、蛍光タグ)で標識することができる。
【0040】
別の態様では、本発明は、MAdCAM発現の増大と関連する状態に罹りやすいかまたはそれと診断された患者を処置するための方法であって、約5mgから約150mgの間の初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含み、前記患者が、(a)初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を前記患者に投与するステップと;(b)初期投与から約4週間またはそれ超(例えば、約8週間、約12週間、約16週間、もしくは約20週間)後に、前記患者からの生体試料をアッセイするステップであり、(i)前記生体試料中のバイオマーカーのレベルを測定するステップと;(ii)前記レベルを対照と比較するステップを含む、ステップによって同定され、対照と比較した場合のバイオマーカーのレベルの変化が、前記患者における有益な応答の存在の予測となる、方法を提供する。別の態様では、本発明は、MAdCAM発現の増大と関連する状態に罹りやすいかまたはそれと診断された患者を処置するための方法であって、約5mgから約150mgの間の初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を患者に投与するステップを含み、前記患者が、(a)初期用量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を前記患者に投与するステップと;(b)初期投与から約4週間またはそれ超(例えば、約8週間、約12週間、約16週間、もしくは約20週間)後に、前記患者からの生体試料を得、または受け取るステップと;(c)前記生体試料中のバイオマーカーのレベルを測定するステップと;(d)前記レベルを対照と比較するステップとによって同定され、対照と比較した場合のバイオマーカーのレベルの変化が、前記患者における有益な応答の存在の予測となる、方法を提供する。このような患者は、MAdCAMアンタゴニスト抗体処置を継続することができる。さらなる投与量をバイオマーカーレベルの変化によって調整して、所望の治療効果を実現することができる。例えば、患者におけるバイオマーカーレベルの変化が最小限の閾値に到達していなかった場合、用量を増やすことができる。やはり、様々な対照、例えば、抗MAdCAM処置前もしくは処置中のある特定の時点の前記バイオマーカーのレベル、または所定の値などを使用することができる。
【0041】
後続の用量は、バイオマーカー評価中に投与することもできる。例えば、抗MAdCAMアンタゴニスト抗体は、4週間毎に投与される場合があり、生体試料は、初期用量から4週間、8週間、および12週間後に採取される場合がある。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約20%の糞便カルプロテクチンの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約25%の糞便カルプロテクチンの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約30%の糞便カルプロテクチンの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約35%の糞便カルプロテクチンの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約40%の糞便カルプロテクチンの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約45%の糞便カルプロテクチンの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約50%の糞便カルプロテクチンの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約55%の糞便カルプロテクチンの低減をもたらす。上記の%値は、対照(処置前糞便カルプロテクチンレベルなど)に対して比較した場合であり得る。一部の態様では、本発明の方法は、対照(処置前糞便カルプロテクチンレベルなど)と比較した場合、初期用量から約12週間後に、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の糞便カルプロテクチンの低減をもたらす。
【0042】
一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後にsMAdCAMの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約25%のsMAdCAMの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約50%のsMAdCAMの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約60%のsMAdCAMの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約65%のsMAdCAMの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約70%のsMAdCAMの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約75%のsMAdCAMの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約80%のsMAdCAMの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約85%のsMAdCAMの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約90%のsMAdCAMの低減をもたらす。上記の%値は、対照(処置前sMAdCAMレベルなど)に対して比較した場合であり得る。一部の態様では、本発明の方法は、対照(処置前sMAdCAMレベルなど)と比較した場合、初期用量から約12週間後に少なくとも約95%のsMAdCAMの低減をもたらす。
【0043】
一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に、hsCRPの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約5%のhsCRPの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約10%のhsCRPの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約15%のhsCRPの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約65%のhsCRPの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約16%のhsCRPの低減をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に少なくとも約20%のhsCRPの低減をもたらす。上記の%値は、処置前hsCRPレベルなどの対照に対して比較した場合であり得る。一部の態様では、本発明の方法は、対照(処置前hsCRPレベルなど)と比較した場合、初期用量から約12週間後に、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%のhsCRPの低減をもたらす。
【0044】
一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後にCCR9 RNA転写物の増大をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、対照(処置前CCR9レベルなど)と比較した場合、初期用量から約12週間後に、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.2倍、少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.4倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約1.6倍、少なくとも約1.7倍、少なくとも約1.8倍、少なくとも約1.9倍、少なくとも約2.0倍、少なくとも約2.1倍、少なくとも約2.2倍、少なくとも約2.3倍、少なくとも約2.4倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3.0倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4.0倍、少なくとも約4.5倍、少なくとも約5.0倍、少なくとも約5.5倍、少なくとも約6.0倍、少なくとも約6.5倍、少なくとも約7.0倍、少なくとも約7.5倍、少なくとも約8.0倍、少なくとも約8.5倍、少なくとも約9.0倍、少なくとも約9.5倍、または少なくとも約10.0倍のCCR9 RNA転写物の増大をもたらす。
【0045】
一部の態様では、本発明の方法は、初期用量から約12週間後に循環α4β7+細胞の増大をもたらす。一部の態様では、本発明の方法は、対照(処置前循環α4β7+細胞レベルなど)と比較した場合、初期用量から約12週間後に、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.2倍、少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.4倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約1.6倍、少なくとも約1.7倍、少なくとも約1.8倍、少なくとも約1.9倍、少なくとも約2.0倍、少なくとも約2.1倍、少なくとも約2.2倍、少なくとも約2.3倍、少なくとも約2.4倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3.0倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4.0倍、少なくとも約4.5倍、少なくとも約5.0倍、少なくとも約5.5倍、少なくとも約6.0倍、少なくとも約6.5倍、少なくとも約7.0倍、少なくとも約7.5倍、少なくとも約8.0倍、少なくとも約8.5倍、少なくとも約9.0倍、少なくとも約9.5倍、または少なくとも約10.0倍の循環α4β7+細胞の増大をもたらす。
【0046】
ある特定の態様では、MAdCAMアンタゴニスト抗体の処置を受けている患者は、ヘテロ接合体rs11171739リスク対立遺伝子(C;T)を含む。ある特定の態様では、MAdCAMアンタゴニスト抗体の処置を受けている患者は、ホモ接合体(homogezygote)rs11171739リスク対立遺伝子(C;C)を含む。
【0047】
上記に開示した変化の任意の組合せも、本発明によって包含されている。例えば、抗MAdCAM処置に対する有益な応答の存在を評価するため、または患者の亜集団を選択するために、基準としてsMAdCAMの50%の減少およびCCR9転写物の2倍の増大を組み合わせることができる。
【0048】
製造品
本発明は、容器、MAdCAMアンタゴニスト抗体を含む容器内の組成物、ならびに本明細書に記載の方法および使用によって抗体を投薬するための指示書を含有する添付文書を含む、製造品をさらに提供する。
【0049】
本発明は、医薬として使用するためのMAdCAMアンタゴニスト抗体またはその抗原結合性部分にも関わる。
【0050】
本発明は、医薬として使用するためのMAdCAMアンタゴニスト抗体またはその抗原結合性部分にも関する。
【0051】
投与間隔
一部の態様では、本発明の方法は、初期用量とほぼ同じかまたはそれ未満の量での後続用量の抗体の投与をさらに提供する。
【0052】
一部の態様では、第1の後続の用量は、最初の用量から約2から約12週間の間の後に提供される。一部の態様では、第1の後続の用量は、最初の用量から約4週間後に提供される。
【0053】
一部の態様では、後続の用量は、約4から約12週間離して与えられる。一部の態様では、後続の用量は、約2から約8週間離して与えられる。一部の態様では、後続の用量は、約2から約10週間離して与えられる。一部の態様では、後続の用量は、約4から約10週間離して与えられる。一部の態様では、後続の用量は、約4週間離して与えられる。
【0054】
一部の態様では、後続の用量は、約1から約3カ月離して与えられる。一部の態様では、後続の用量は、約1カ月離して与えられる。一部の態様では、後続の用量は、約2カ月離して与えられる。
【0055】
一部の態様では、本発明の方法は、最初と第1の後続の用量との間に提供される、初期用量とほぼ同じかまたはそれ未満の量での維持用量の抗体の投与をさらに提供する。
【0056】
抗体は、1回投与することができ、または複数回投与することができる。
【0057】
一部の態様では、本発明は、MAdCAMアンタゴニスト抗体、患者を処置するためのMAdCAMアンタゴニストを含む医薬組成物を使用する方法であって、患者に提供されるMAdCAMアンタゴニスト抗体の用量が、薬学的に許容できる賦形剤または担体と一緒に、投与後、少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8週間、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12週間の期間にわたってMAdCAMレベルの持続的低減に十分である、方法を提供する。
【0058】
一部の態様では、初期投与量は、下限が、約5mg、6mg、約7mg、約7.5mg、約8mg、約9mg、約10mg、約12mg、約15mg、約20mg、約22.5mg、約25mg、約30mg、約35mg、約45mg、約50mgからなる群から選択され、上限が、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg未満、および約75mgからなる群から選択される間であり、後続の投与量は、初期用量とほぼ同じかまたはそれ未満の量で送達され、後続の用量は、初期用量から約2から約6週間の間の後に投与される。一部の態様では、後続の用量は、初期用量から約4週間後に投与される。
【0059】
一部の態様では、初期投与量は、下限が、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、および約100mgからなる群から選択され、上限が、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約105mg、約110mg、約115mg、約120mg、125mg、約130mg、約135mg、約140mg、約145mg、約150mg未満、および約150mgからなる群から選択される間であり、後続の投与量は、初期用量とほぼ同じかまたはそれ未満の量で送達され、後続の用量は、初期用量から約6から約10週間の間の後に投与される。一部の態様では、後続の用量は、初期用量から約8週間後に投与される。
【0060】
投与経路
したがって、本発明は、MAdCAMの過剰発現によって特徴付けられる障害に罹りやすいかまたはそれと診断された患者を処置するための方法であって、初期用量の治療有効量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を皮下投与するステップを含む、方法を提供する。
【0061】
一部の態様では、本発明は、MAdCAMの過剰発現によって特徴付けられる障害に罹りやすいかまたはそれと診断された患者を処置するための方法であって、初期用量の治療有効量のMAdCAMアンタゴニスト抗体を静脈内投与するステップを含む、方法を提供する。
【0062】
一部の態様では、少なくとも1つの後続の用量は、皮下注射によって投与される。一部の態様では、少なくとも1つの後続の用量は、静脈内注射によって投与される。
【0063】
抗体は、ミニポンプを介して連続的に投与されてもよい。抗体は、粘膜、頬側、鼻腔内、吸入可能、静脈内、皮下、筋肉内、非経口、または腫瘍内経路を介して投与される場合がある。抗体は、1回、少なくとも2回、または少なくとも状態が、処置、緩和、もしくは治癒されるまでの時間にわたって投与される場合がある。抗体は一般に、状態が存在する限り投与されることになる。
【0064】
本発明のMAdCAM抗体
本発明は、一般にMAdCAM抗体、およびこれらの使用に関する。一部の態様では、抗体は、mAb 7.16.6またはそのバリアントである。一部の態様では、MAdCAMアンタゴニスト抗体は、配列番号1および配列番号2のCDRを含む。一部の態様では、MAdCAMアンタゴニスト抗体は、配列番号3および配列番号4のCDRを含む。一部の態様では、MAdCAMアンタゴニスト抗体は、配列番号3および配列番号4の可変ドメインを含む。一部の態様では、MAdCAMアンタゴニスト抗体は、配列番号1および配列番号2を含む。一部の態様では、本発明の方法および組成物で使用するための代替のMAdCAMアンタゴニスト抗体を使用することができる。例示的なMAdCAMアンタゴニスト抗体は、表1および2に列挙されている。WO2005067620(参照により本明細書に組み込まれている)の実施例には、表1および2の抗体が完全に記載されており、特徴付ける情報の詳細、例えば、結合親和性、Kon、Koff、Kdなどが提供されている。
【0065】
一部の態様では、抗体は、mAb 7.16.6と交差競合するMAdCAMアンタゴニスト抗体(配列番号1および2)であり得る。
【0066】
一部の態様では、本発明の抗体は、以下の特性の1つまたは複数を有する:
〇 20から60日の間のヒト患者における半減期;
〇 少なくとも50%のSCバイオアベイラビリティー;および/または
〇 10nM以下のKD。
【0067】
一部の態様では、抗体は、少なくとも30日のヒト患者における半減期を有し得る。一部の態様では、抗体は、少なくとも35日のヒト患者における半減期を有し得る。一部の態様では、抗体は、少なくとも40日のヒト患者における半減期を有し得る。一部の態様では、抗体は、少なくとも45日のヒト患者における半減期を有し得る。一部の態様では、抗体は、少なくとも50日のヒト患者における半減期を有し得る。
【0068】
一部の態様では、抗体のSCバイオアベイラビリティーは、少なくとも60%であり得る。一部の態様では、抗体のSCバイオアベイラビリティーは、少なくとも65%であり得る。一部の態様では、抗体のSCバイオアベイラビリティーは、少なくとも70%であり得る。一部の態様では、抗体のSCバイオアベイラビリティーは、少なくとも75%であり得る。一部の態様では、抗体のSCバイオアベイラビリティーは、少なくとも80%であり得る。一部の態様では、抗体のSCバイオアベイラビリティーは、少なくとも85%であり得る。一部の態様では、抗体のSCバイオアベイラビリティーは、少なくとも95%であり得る。一部の態様では、抗体のSCバイオアベイラビリティーは、少なくとも90%であり得る。一部の態様では、抗体のSCバイオアベイラビリティーは、少なくとも99%であり得る。
【0069】
一部の態様では、KDは、表面プラズモン共鳴によって測定される。一部の態様では、表面プラズモン共鳴は、Biocoreを使用して測定することができる。一部の態様では、SPRは、捕捉抗体および溶液相MAdCAMとともにBiacoreを使用して測定することができる。
【0070】
一部の態様では、抗体は、10nM以下のKDを有する。一部の態様では、抗体は、1nM以下のKDを有する。一部の態様では、抗体は、500pM以下のKDを有する。一部の態様では、抗体は、200pM以下のKDを有する。一部の態様では、抗体は、100pM以下のKDを有する。一部の態様では、抗体は、50pM以下のKDを有する。一部の態様では、抗体は、20pM以下のKDを有する。一部の態様では、抗体は、10pM以下のKDを有する。一部の態様では、抗体は、5pM以下のKDを有する。
【0071】
寄託情報
ハイブリドーマは、以下の寄託番号で2003年9月9日に、欧州細胞培養コレクション(ECACC)、H.P.A at CAMR、Porton Down、Salisbury、Wiltshire SP4 OJGにおいて、ブタペスト条約による条項下で寄託した。
【0072】
【0073】
寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約の条項およびその下の規定(ブダペスト条約)下で行った。これは、寄託日から30年にわたって寄託物の生存培養の維持を保証する。寄託は、ブダペスト条約の条項下でECACCによって利用可能とされ、Pfizer Inc.とECACCとの間で合意することが必要となり、この合意は、米国特許の発行後、または任意の米国もしくは外国特許出願のどちらか早くなる方の公衆への公開後に、公衆への寄託物の培養物の子孫の永続的かつ非制限的利用可能性を保証し、米国特許法第122条およびこれに準じた長官規則(886OG638を特に参照した連邦規則法典第37巻第1.14条を含む)に従って権利が与えられるべきであると米国特許商標庁長官が決定した者に子孫の利用可能性を保証する。
【0074】
本出願の代理人は、寄託された材料の培養物が、適切な条件下で培養しても万一死滅したり、失われたり、または破壊されたりした場合、通告によりその材料を同一の別の材料と即座に交換されることに合意した。寄託された材料の利用可能性は、どのような政府の権限下でもその特許法に従って公布された権利に違反して本発明を実施するためのライセンスとして解釈されるべきでない。
【0075】
本発明の治療法
治療法は、本発明によって提供される。治療法は、本発明の化合物または組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む。
【0076】
本明細書において、薬物、化合物、または医薬組成物の「有効投与量」または「有効量」は、任意の1つまたは複数の有益なまたは所望の結果に影響を与えるのに十分な量である。予防的使用について、有益なまたは所望の結果には、疾患の生化学的、組織学的および/または行動上の症状、その合併症、ならびに疾患の発生中に存在する中間病理学的表現型を含めた疾患のリスクの排除もしくは低減、重症度の緩和、または発症の遅延が含まれる。治療的使用について、有益なまたは所望の結果には、疾患を処置するのに必要とされる他の薬剤の用量の減少、別の薬剤の効果の増強、および/または患者の疾患の進行の遅延などの臨床結果が含まれる。有効投与量は、1つまたは複数の投与で施すことができる。本発明の目的について、薬物、化合物、または医薬組成物の有効投与量は、直接または間接的に予防的または治療的処置を達成するのに十分な量である。臨床状況において理解されているように、薬物、化合物、または医薬組成物の有効投与量は、別の薬物、化合物、または医薬組成物と併せて実現されても、されなくてもよい。したがって、「有効投与量」は、1種または複数の治療剤の投与との関連で考慮することができ、単剤は、1種または複数の他の作用物質と併せて望ましい結果を実現することができ、または実現される場合、有効量で与えられると見なすことができる。
【0077】
「治療有効量」は、処置されている障害の症状の1つまたは複数をある程度軽減することになる、投与されている治療剤の量を指す。
【0078】
「処置する(Treat)」、「処置する(treating)」、および「処置」は、生物学的障害および/またはその付帯的な症状を和らげ、または抑止する方法を指す。
【0079】
「個体」または「対象」は、哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳動物はまた、それだけに限らないが、家畜、競技動物、ペット、霊長類、およびウマを含む。一部の態様では、患者は、ヒト患者である。
【0080】
MAdCAMアンタゴニスト抗体をその必要のある患者に投与することによってMAdCAM活性を阻害するための方法も提供されている。本明細書に記載の抗体または抗原結合性部分のいずれも、治療的に使用することができる。好適な実施形態では、MAdCAMアンタゴニスト抗体は、ヒト、キメラ、またはヒト化抗体である。別の好適な実施形態では、MAdCAMは、ヒトであり、患者は、1人の患者である。代わりに、患者は、MAdCAMアンタゴニスト抗体が交差反応するMAdCAMを発現する哺乳動物であり得る。抗体は、ヒト疾患の動物モデルを目的とする、またはその動物モデルとしてMAdCAMを発現する非ヒト哺乳動物に投与することができる。このような動物モデルは、抗体の治療有効性を実証するのに使用することができる。
【0081】
一部の態様では、MAdCAMアンタゴニスト抗体またはその抗体部分を、異常に高レベルのMAdCAMを発現する患者に投与することができる。
【0082】
MAdCAM抗体またはその抗原結合性部分を、MAdCAMが関係付けられている疾患を処置するのに使用することができる。MAdCAM抗体またはその抗原結合性部分を使用して処置することができる疾患の例としては、潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)、過敏性腸症候群(IBS)、過敏性腸疾患(IBD)、セリアック病、原発性硬化性胆管炎、胆道疾患、関節リウマチ、反応性関節炎、骨関節炎、感染性関節炎、乾癬性関節炎、多発性関節炎、若年性関節炎、若年性関節リウマチ、若年性反応性関節炎、若年性乾癬性関節炎、疼痛、線維症、線維筋痛症症候群、強直性脊椎炎、未分化脊椎関節症、若年発症の脊椎関節炎、乾癬、痛風、キャッスルマン病、成人発症スティル病、敗血症、I型糖尿病、II型糖尿病、多発性骨髄腫、および腎細胞癌がある。MAdCAM抗体またはその抗原結合性部分を、UCを処置するのに使用することができる。
【0083】
MAdCAM抗体またはその抗原結合性部分を、1種または複数の他の治療剤と組み合わせて使用することができる。例えば、関節リウマチ、骨関節炎、および疼痛などの疾患を処置するために、抗体またはその抗原結合性部分をセレコキシブなどのCOX-2阻害剤とともに使用することができる。MAdCAM抗体またはその抗原結合性部分および他の治療剤を、同じ剤形または異なる剤形で患者に投与することができる。さらに、これらを同じ時間または異なる時間に投与することができる。以下は、抗MAdCAM抗体またはその抗原結合性部分と組み合わせて使用することができる疾患およびこれらの治療剤のいくつかの例である。
【0084】
潰瘍性大腸炎
一部の態様では、本発明は、潰瘍性大腸炎を処置するための組成物および方法を提供する。一部の態様では、本発明の組成物および方法は、1種または複数の他の追加の治療剤と組み合わせたMAdCAMアンタゴニスト抗体の使用を提供する。
【0085】
一部の態様では、1種または複数の追加の治療剤は、アセトアミノフェン、ナプロキセンナトリウム、イブプロフェン、トラマドール、アスピリン、セレコキシブ、バルデコキシブ、インドメタシン、および他のNSAIDからなる群から選択することができる。一部の態様では、1種または複数の追加の治療剤は、ベクロメタゾン、ヒドロキシコルチゾン、ベタメタゾン、メチルプレドニゾロン、ブデソニド、プレドニゾロン、コルチゾン、プレドニゾン、デキサメタゾン、およびトリアムシノロン、ならびに他のグルココルチコイド(glucorticoids)からなる群から選択することができる。一部の態様では、1種または複数の追加の治療剤は、6-メルカプトプリン、タクロリムス、アザチオプリン、サリドマイド、シクロスポリン、トファシチニブ、メトトレキセート、および他の免疫抑制剤/免疫調節剤からなる群から選択することができる。一部の態様では、1種または複数の追加の治療剤は、アバタセプト、エトロリズマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、AMG-181、インフリキシマブ、抗ip10抗体、インターロイキン-2、AVX470、ベドリズマブ、セルトリズマブペゴル、および他の生物製剤からなる群から選択することができる。一部の態様では、1種または複数の追加の治療剤は、AEB-071、メラトニン、アリカホルセン、メサラミン、ベンゾチアジノン、ニコチン、カンナビス、ホスファチジルコリン、クルクミン、幹細胞、hmpl-004、スルファサラジン、イベロガスト、トリクリス・スイス(trichuris suis)、カッパプロクト、krp-203、スルファサラジン、メサラミン、バルサラジド、オルサラジン;およびロペラミドからなる群から選択することができる。
【0086】
したがって、一部の態様では、本発明の組成物および方法は、これらの作用物質、製品、およびクラスと組み合わせた使用を特に意図している。
【0087】
クローン病
一部の態様では、本発明は、クローン病を処置するための組成物および方法を提供する。
【0088】
製品:鎮痛薬、例えば、アセトアミノフェン、ナプロキセンナトリウム、イブプロフェン、トラマドール、アスピリン、セレコキシブ、バルデコキシブ、インドメタシン、および他のNSAIDなど;抗炎症薬;スルファサラジン、メサラミン、バルサラジド、およびオルサラジン;ならびにコルチコステロイド、例えば、プレドニゾンおよびブデソニドなど;免疫抑制薬、例えば、アザチオプリン、メルカプトプリンや、インフリキシマブおよびアダリムマブなどのTNFブロッカー、メトトレキセート、ならびにシクロスポリンなど;抗生物質、例えば、メトロニダゾールおよびシプロフロキサシンなど;ロペラミドなどの下痢止め薬;ならびに緩下剤。クラス:鎮痛薬;NSAID;COX-2阻害剤;抗炎症薬;TNFブロッカー;抗生物質;下痢止め薬;および緩下剤。
【0089】
したがって、一部の態様では、本発明の組成物および方法は、これらの製品およびクラスと組み合わせた使用を特に意図する。
【0090】
他の効能
一部の態様では、本発明は、関節リウマチ(RA)、ライター症候群(反応性関節炎)、骨関節炎、感染性関節炎、乾癬性(psioratic)関節炎、多発性関節炎、若年性関節炎、若年性関節リウマチ、若年性反応性関節炎、若年性乾癬性関節炎、疼痛、線維症、線維筋痛症症候群、強直性脊椎炎、未分化脊椎関節症(USpA)、若年発症脊椎関節炎(juvenile-onset spondyloarthritis)(JSpA)、乾癬、痛風、または過敏性腸症候群(IBS)を処置するための組成物および方法を提供する。
【0091】
高レベルのMAdCAMに関連した他の疾患、例えば、処置抵抗性うつ病、がん悪液質、II型糖尿病、高安動脈炎、グレーブス眼症、および高齢者における筋肉の消耗なども本発明の方法および化合物で処置することができる。
【0092】
医薬組成物および投与
ヒトを含めた哺乳動物におけるMAdCAM発現の増大に関連した状態(潰瘍性大腸炎、クローン病など)を処置するための医薬組成物であって、異常細胞浸潤を処置するのに有効である、本明細書に記載のある量のMAdCAMアンタゴニスト抗体またはその抗原結合性部分、および薬学的に許容できる担体を含む、医薬組成物も提供される。本組成物は、様々な炎症性疾患および自己免疫疾患、例えば、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、肉芽腫症、多発性硬化症、喘息、およびがんなどの1つまたは複数を有する患者に治療上の利益をもたらす。
【0093】
MAdCAM抗体およびその抗原結合性部分は、対象への投与に適した医薬組成物中に組み込むことができる。典型的には、医薬組成物は、MAdCAMアンタゴニスト抗体またはその抗原結合性部分および薬学的に許容できる担体を含む。本明細書において、「薬学的に許容できる担体」は、生理学的に適合性である任意かつすべての溶媒、分散媒質、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを意味する。薬学的に許容できる担体のいくつかの例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝溶液、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびこれらの組合せである。多くの場合では、組成物中に等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトールなど、または塩化ナトリウムを含むことがより好ましいことになる。薬学的に許容できる物質の追加の例は、抗体の保存可能期間あるいは有効性を高める湿潤剤あるいは少量の補助物質、例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、防腐剤、または緩衝液などである。
【0094】
本発明の組成物は、様々な形態、例えば、液体、半固体、ならびに固形剤形、例えば、溶液(例えば、注入可能医薬品および注入用溶液)、分散液または懸濁液、錠剤、ピル、粉末、リポソーム、ならびに坐剤などであり得る。形態は、意図される投与モードおよび治療用途に依存する。典型的な組成物は、ヒトの受動免疫に使用されるものと同様である組成物などの注入可能医薬品または注入用溶液の形態である。1つの場合では、投与モードは、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。別の場合では、抗体は、静脈内注入または注射によって投与される。別の場合では、抗体は、筋肉内または皮下注射によって投与される。注射用製剤は、添加される防腐剤の有無にかかわらず、単位剤形で、例えば、アンプルで、または複数回用量容器で提供することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルジョンなどの形態をとることができ、製剤化剤(formulatory agent)、例えば、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤などを含有することができる。代わりに、活性成分は、使用前に、適当なビヒクル、例えば、滅菌無発熱物質水で構成するための粉末形態であり得る。滅菌注射用溶液は、上記に列挙した成分の1種または組合せとともに、適切な溶媒中に必要量でMAdCAMアンタゴニスト抗体を組込み、必要に応じて、その後濾過滅菌することによって調製することができる。
【0095】
投与量値は、軽減されるべき状態のタイプおよび重症度によって変動し得る。滅菌注射用溶液の調製用滅菌粉末の場合では、調製の適当な方法は、活性成分と任意の追加の所望の成分の粉末を、先に滅菌濾過されたその溶液から生じさせる真空乾燥および凍結乾燥を含む。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散液の場合では要求される粒径を維持することによって、界面活性剤を使用することによって維持することができる。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンなどを組成物中に含めることによってもたらすことができる。
【0096】
ある特定の場合では、MAdCAMアンタゴニスト抗体組成物は、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達系を含めた制御放出製剤などの、抗体を迅速放出から保護する担体を用いて調製することができる。生分解性生体適合性ポリマー、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などを使用することができる。このような製剤を調製するための多くの方法を使用することができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれているSustained and Controlled Release Drug
Delivery Systems、J.R.Robinson編、Marcel Dekker、Inc.、New York、1978を参照。
【0097】
追加の活性化合物を組成物中に組み込むこともできる(先に開示した追加の治療剤の任意の1種または複数を含む)。一部の場合では、阻害性MAdCAMアンタゴニスト抗体は、1種または複数の追加の治療剤と同時製剤化され、かつ/または同時投与される。これらの作用物質としては、限定することなく、他の標的に結合する抗体、抗腫瘍剤、抗血管新生剤、シグナル伝達阻害剤、抗増殖剤、化学療法剤、またはMAdCAMを阻害するペプチド類似体がある。このような組合せ療法は、より低い投与量の阻害性MAdCAMアンタゴニスト抗体および同時投与される作用物質を必要とし、しがたって様々な単剤療法に関連した可能性がある毒性または合併症を回避することができる。
【0098】
組成物は、「治療有効量」または「予防有効量」の抗体または抗原結合性部分を含み得る。「治療有効量」は、所望の治療結果を実現するのに、投与時に、かつ必要な時間にわたって有効な量を指す。抗体または抗原結合性部分の治療有効量は、疾患状態、個体の年齢、性別、および体重、ならびに抗体または抗体部分の個体において所望の応答を誘発する能力などの要因によって変動し得る。治療有効量は、抗体または抗原結合性部分の任意の有毒または有害な効果に治療的に有益な効果が勝っているものでもある。「予防有効量」は、所望の予防結果を実現するのに、投与時に、かつ必要な時間にわたって有効な量を指す。典型的には、予防用量は、疾患の前に、またはそのより早期の段階で対象に使用されるので、治療有効量より少ない場合がある。
【0099】
1つの場合では、抗体は、約5.0~約6.5の範囲であるpHを有し、約1mg/ml~約200mg/mlの抗体、約1ミリモル~約100ミリモルのヒスチジン緩衝液、約0.01mg/ml~約10mg/mlのポリソルベート80またはポリソルベート20、約100ミリモル~約400ミリモルのそれだけに限らないが、トレハロースまたはスクロースから選択される非還元糖、約0.01ミリモル~約1.0ミリモルの二ナトリウムEDTA二水和物を含み、キレート化剤に加えて薬学的に許容できる抗酸化剤を含んでもよい滅菌水溶液としての製剤で投与される。適当な抗酸化剤としては、それだけに限らないが、メチオニン、チオ硫酸ナトリウム、カタラーゼ、および白金がある。例えば、組成物は、1mM~約100mMの範囲であり、特に、約27mMである濃度でメチオニンを含有し得る。一部の場合では、製剤は、20mMクエン酸ナトリウム、pH5.5、140mM NaCl、および0.2mg/mlポリソルベート80の緩衝液中に5mg/mlの抗体を含有する。
【0100】
一部の態様では、製剤は、その内容が本明細書に組み込まれているWO2006/096490に示された通りである。一部の態様では、製剤は、75mg/ml抗体、10mMヒスチジン pH5.5、90mg/mlトレハロース二水和物、0.1mg/ml二ナトリウムEDTA二水和物、および0.4mg/mlポリソルベート80を含む。
【0101】
別の態様では、製剤は、20mMヒスチジン、7%トレハロース、0.4mg/mLポリソルベート80、0.1mg/mL EDTA、pH5.5、ならびに25mg/mLおよび75mg/mL抗MAdCAM抗体を含む。
【0102】
キット
本明細書に提供される別の態様は、MAdCAMアンタゴニスト抗体もしくは抗原結合性部分、またはこのような抗体もしくは抗原結合性部分を含む組成物を含むキットである。キットは、抗体または組成物に加えて、1種もしくは複数の追加の治療剤、および/または1つもしくは複数の追加の診断剤を含み得る。キットは、診断法または治療法において使用するための指示書も含み得る。1つの場合では、キットは、抗体または抗体を含む組成物、および本明細書に記載の方法で使用することができる診断剤を含む。別の場合では、キットは、抗体またはそれを含む組成物、および本明細書に記載の方法で使用することができる1種もしくは複数の治療剤を含む。
【0103】
一部の態様では、本発明は、容器、MAdCAMアンタゴニスト抗体を含む容器内の組成物、および本発明の方法による指示書を含有する添付文書を含む製造品を提供する。本明細書に提供される別の態様は、本明細書に記載のバイオマーカーを検出または定量化するためのプローブを含むキットである。前記キットは、抗MAdCAM処置に対する有益な応答の存在または非存在を評価するのに使用することができる。キットは、患者が抗MAdCAM処置を継続するべきか否かを判定し、抗MAdCAM処置から利益を得る可能性がある患者の亜集団を同定し、または抗MAdCAMアンタゴニスト抗体の用量を調整するのに有用である。
【0104】
定義
抗体
「抗体」は、免疫グロブリン分子であって、免疫グロブリン分子の可変領域に位置した少なくとも1つの抗原結合部位によって、標的または抗原、例えば、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどに特異的に結合することができる、免疫グロブリン分子である。
【0105】
本明細書において、脈絡による別段の指定のない限り、この用語は、2つの同一の全長重鎖ポリペプチドおよび2つの同一の軽鎖ポリペプチドを含むインタクトなポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけでなく、サメおよびラクダ抗体を含めた、これらの断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、単鎖(ScFv)およびドメイン抗体(dAb)、ならびに本明細書に記載の抗体部分、多価抗体、多重特異性抗体(例えば、それが所望の生物活性を呈する限り二重特異性抗体)、および抗体断片を含む融合タンパク質、ならびに抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された構成、例えば、限定することなく、ミニボディ、マキシボディ、モノボディ、ペプチボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、およびビス-scFvも包含するように意図されている。
【0106】
抗原結合性部分は、組換えDNA技法、またはインタクト抗体の酵素切断もしくは化学切断によって生成することができる。抗原結合性部分としては、とりわけ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、dAb、および相補性決定領域(CDR)断片、単鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、ならびにポリペプチドへの特異的抗原結合を付与するのに十分であるIgの少なくとも一部を含有するポリペプチドがある。
【0107】
免疫グロブリン(Ig)は、ヘテロ多量体分子である。天然に存在するIgでは、各多量体は、ポリペプチド鎖の同一の対から主に構成され、各対は、1本の「軽」鎖(約25kDa)および1本の「重」鎖(約50~70kDa)を有する。
【0108】
各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識を主に担う約100~110またはそれ超のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主に担う定常領域を画定する。ヒト軽鎖は、κおよびλ軽鎖として分類される。重鎖は、α、δ、ε、γ、およびμとして分類され、それぞれIgA、IgD、IgE、IgG、IgMとして抗体のアイソタイプを定義する。これらのクラスのいくつかは、アイソタイプ:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに細分することができる。
【0109】
軽鎖および重鎖内で、可変および定常領域は、約12またはそれ超のアミノ酸の「J」領域によって連結され、重鎖は、約10超のアミノ酸の「D」領域も含む(抗体配列全体との関連で、DおよびJ領域は、時に、これらが連結した後、可変領域の一部として見なされる)。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成し、その結果、インタクトなIgは、2つの結合部位を有する。
【0110】
可変ドメインは、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる、3つの超可変領域によって連結された相対的に保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を呈する。各対の2本の鎖からのCDRは、フレームワーク領域によって整列され、特異的エピトープへの結合を可能にする。N末端からC末端に、軽鎖および重鎖はともに、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。
【0111】
CDRを構成する特定の抗体中のアミノ酸残基の同一性は、当技術分野で周知の方法を使用して判定することができる。例えば、抗体CDRは、Kabatら(Kabatら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5版、公衆衛生局、NIH、Washington D.C.、NIH刊行物番号91-3242)によって最初に定義された超可変領域として同定することができる。CDRの位置は、Chothiaら(Chothiaら、1989、Nature、342:877~883)によって記載された構造的ループ構造としても同定することができる。CDRを同定するための他の手法としては、KabatとChothiaの間の折衷であり、Abysisプログラム(www.abysis.org)から得られる「AbM定義」、またはMacCallumら、1996、J.Mol.Biol.、262:732~745に示された観察される抗原接触に基づくCDRの「接触定義」がある。Northは、CDR定義の異なる好適なセットを使用してカノニカルCDRコンホメーションを同定した(Northら、2011、J.Mol.Biol、406:228~256)。CDRの「コンホメーション定義」として本明細書で呼ばれる別の手法では、CDRの位置を、抗原結合にエンタルピー的寄与をする残基として同定することができる(Makabeら、2008、Journal of Biological Chemistry、283:1156~1166)。さらに他のCDR境界定義は、上記手法の1つに厳密には従わない場合があるが、それにもかかわらず、特定の残基もしくは残基の基が、またはCDR全体でさえ、抗原結合に著しくインパクトを与えないという予測または実験的知見を踏まえると、これらを短くし、または長くすることができるとはいえ、Kabat CDRの少なくとも一部と重複することになる。本明細書において、CDRは、手法の組合せを含めた当技術分野で公知の任意の手法によって定義されるCDRを指す場合がある。本明細書に使用される方法は、これらの手法のいずれかによって定義されるCDRを利用することができる。1つを超えるCDRを含有する任意の所与の実施形態について、CDR(または抗体の他の残基)は、Kabat、Chothia、North、拡張、AbM、接触、および/またはコンホメーション定義のいずれかによって定義することができる。
【0112】
哺乳動物軽鎖は、2つのタイプ、κおよびλのものであり、任意の所与の天然に存在する抗体分子において、1つのタイプだけが存在する。λ分子のおよそ2倍多くのκがヒトにおいて産生されるが、他の哺乳動物では、この比は変動し得る。各遊離軽鎖分子は、フォールドされて定常領域ドメインおよび可変領域ドメインを形成する単一のポリペプチド鎖中におよそ220のアミノ酸を含有する。
【0113】
定常カッパ(CLκ)領域は、単一遺伝子によってコードされる一方、ラムダ定常(CLλ)領域は、複数の遺伝子によってコードされ、スプライシングを起こす。CLλの特定の多型種に関連したいくつかのマーカー:例えば、IgCLλ1(Mcgマーカー);IgLC2-IgCLλ2(Kern-Oz-マーカー);IgCLλ3(Kern-Oz+マーカー)、およびIgCLλ7が公知である。当業者は、ヒトCLλ鎖中でこれまで同定された多型のすべてを容易に確かめることができる。本発明の配列は、CLκおよびCLλ、ならびに一般の抗体の他の公知の多型を包含する。2つの多型遺伝子座;CLκ-V/A153およびCLκ-L/V191がCLκにおいて同定されている。これまでに同定された3つの多型は、Km(1):CLκ-V153/L191;Km(1,2):CLκ-A153/L191;およびKm(3):CLκ-A153/V191である。
【0114】
用語「Fc領域」は、本明細書において、一般に、免疫グロブリン重鎖のC末端ポリペプチド配列を含む二量体複合体を指し、C末端ポリペプチド配列は、インタクト抗体のパパイン消化によって得られるものである。Fc領域は、天然またはバリアントFc配列を含み得る。免疫グロブリンのFc配列は、一般に、2つの定常ドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、CH4ドメインを含んでもよい。用語「Fcポリペプチド」は、Fc領域を構成するポリペプチドの1つを指すのに本明細書で使用される。一部の実施形態では、Fcポリペプチドは、様々なIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4サブタイプの少なくとも1つから、またはIgA、IgE、IgD、もしくはIgMからなどの任意の適当な免疫グロブリンから得ることができ、またはそれに由来し得る。一部の実施形態では、Fcポリペプチドは、野生型ヒンジ配列の一部またはすべてを含む(一般にそのN末端において)。一部の実施形態では、Fcポリペプチドは、野生型ヒンジ配列を含まない。Fcポリペプチドは、天然またはバリアントFc配列を含み得る。
【0115】
「免疫グロブリン様ヒンジ領域」、「免疫グロブリン様ヒンジ配列」およびこれらのバリエーションは、本明細書において、免疫グロブリン様または抗体様分子(例えば、イムノアドヘシン)のヒンジ領域およびヒンジ配列を指す。一部の実施形態では、免疫グロブリン様ヒンジ領域は、自己のキメラ形態、例えば、キメラIgG1/2ヒンジ領域を含めた、任意のIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4サブタイプ、またはIgA、IgE、IgD、もしくはIgMからのものであり得、またはこれらに由来し得る。
【0116】
「抗体断片」は、インタクト抗体の一部分だけを含み、この部分は、好ましくは、インタクト抗体中に存在するときのその部分に通常付随する機能の少なくとも1つ、好ましくはほとんどまたはすべてを保持する。
【0117】
「二価抗体」は、1分子(例えば、IgG)当たり2つの抗原結合性部位を含む。一部の場合では、2つの結合部位は、同じ抗原特異性を有する。しかし、二価抗体は、二重特異性であり得る(以下を参照)。
【0118】
「一価抗体」は、1分子(例えば、IgG)当たり1つの抗原結合性部位を含む。一部の場合では、一価抗体は、1つを超える抗原結合性部位を有し得るが、結合部位は、異なる抗原からのものである。
【0119】
「多重特異性抗体」は、1つを超える抗原またはエピトープを標的にするものである。「二重特異性」、「デュアル特異性」、または「二機能性」抗体は、2つの異なる抗原結合性部位を有するハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、多重特異性抗体の1つの種であり、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の連結などを含めた様々な方法によって生成することができる。例えば、SongsivilaiおよびLachmann(1990)、Clin.Exp.Immunol.、79:315~321;ならびにKostelnyら(1992)、J.Immunol.、148:1547~1553を参照。二重特異性抗体の2つの結合部位は、同じまたは異なるタンパク質標的上に存在し得る2つの異なるエピトープに結合する。
【0120】
語句「抗原結合アーム」、「標的分子結合アーム」、およびこれらのバリエーションは、本明細書において、目的の標的分子に特異的に結合する能力を有する本発明の抗体の要素部分を指す。一般にかつ好ましくは、抗原結合アームは、免疫グロブリンポリペプチド配列、例えば、免疫グロブリン軽鎖および重鎖のCDRおよび/または可変ドメイン配列の複合体である。
【0121】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書において、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る、可能性がある天然に存在する突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原に向けられている。さらに、異なる決定基(エピトープ)に向けられた異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物と対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に向けられている。
【0122】
Fab断片は、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価断片であり;F(ab’)2断片は、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であり;Fd断片は、VHおよびCH1ドメインからなり;Fv断片は、抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなり;dAb断片は、VHドメインまたはVLドメイン(例えば、ヒト、ラクダ科の動物、またはサメ)からなる。
【0123】
単鎖抗体(scFv)は、VLおよびVH領域が、これらが単一タンパク質鎖として作製されるのを可能にする合成リンカーを介して一価分子を形成するように対形成された抗体である。ダイアボディは、VHおよびVLドメインが単一ポリペプチド鎖上で発現されるが、短すぎて同じ鎖上の2つのドメイン間で対形成することを可能にすることができず、それによって、これらのドメインを別の鎖の相補的ドメインと強制的に対形成させ、2つの抗原結合性部位を創るリンカーを使用して発現される二価の二重特異性抗体である。1つまたは複数のCDRを、共有結合または非共有結合で一分子中に組み込んで、それをイムノアドヘシンすることができる。イムノアドヘシンは、CDRをより大きいポリペプチド鎖の一部として組み込むことができ、CDRを別のポリペプチド鎖に共有結合で連結することができ、またはCDRを非共有結合で組み込むことができる。CDRは、イムノアドヘシンが目的の特定の抗原に特異的に結合することを可能にする。
【0124】
抗体は、1つまたは複数の結合部位を有し得る。1つを超える結合部位がある場合、結合部位は、互いに同一であってもよく、または異なっていてもよい。例えば、天然に存在する抗体は、2つの同一の結合部位を有し、単鎖抗体またはFab断片は、1つの結合部位を有し、一方、「二重特異性」または「二機能性」抗体は、2つの異なる結合部位を有する。
【0125】
「単離抗体」は、(1)天然状態で抗体と共存している天然に付随する要素、例えば他の天然に付随する抗体などが付随していない抗体、(2)同じ種からの他のタンパク質を含まない抗体、(3)抗体を天然に発現しない細胞によって発現されるか、もしくは異なる種からの細胞によって発現される抗体、または(4)自然に存在しない抗体である。
【0126】
用語「ヒト抗体」は、ヒトIg配列に由来する1つまたは複数の可変および定常領域を有するすべての抗体を含む。本発明のいくつかの実施形態では、抗体の可変および定常ドメインのすべてがヒトIg配列に由来する(完全ヒト抗体)。
【0127】
ヒト化抗体は、ある特定のアミノ酸がヒトにおける免疫応答を回避または阻止するように突然変異された非ヒト種に由来する抗体である。代わりに、ヒト化抗体は、ヒト抗体からの定常ドメインを非ヒト種の可変ドメインに融合することによって生成される場合がある。
【0128】
用語「キメラ抗体」は、1つの抗体からの1つまたは複数の領域および1つまたは複数の他の抗体からの1つまたは複数の領域を含有する抗体を指す。各抗体は、別個の種(ヒトおよびマウスなど)に由来し得る。
【0129】
用語「エピトープ」は、IgまたはT細胞受容体に特異的に結合することができる任意の分子決定基を含む。エピトープ決定基は通常、アミノ酸または糖側鎖などの原子の表面基群(surface grouping)からなり、通常、特定の3次元構造特性および特定の帯電特性を有する。抗体は、解離定数が1μM未満、好ましくは、100nM未満、または10nM未満であるとき、抗原に「特異的に」結合する。
【0130】
完全ヒト抗体は、マウスまたはマウス誘導体化モノクローナル抗体(Mab)に固有の免疫原性反応およびアレルギー反応を最小限にし、したがって投与される抗体の有効性および安全性を増大させることが予期されている。完全ヒト抗体を使用すると、抗体投与の繰り返しを必要とし得る炎症およびがんなどの慢性および再発性ヒト疾患の処置において実質的な利点がもたらされることを予期することができる。
【0131】
さらに、2つ(またはそれ超)の単鎖抗体が互いに連結されている融合抗体を創製することができる。これは、単一のポリペプチド鎖上に二価もしくは多価抗体を創製したい場合、または二重特異性抗体を創製したい場合有用である。
【0132】
一タイプの誘導体化抗体は、2つまたはそれ超の抗体(同じタイプまたは異なるタイプの;例えば、二重特異性抗体を創製するために)を架橋することによって生成される。適当な架橋剤としては、適切なスペーサーによって分離された2つの明確に反応性の基を有するヘテロ二官能性(例えば、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)またはホモ二官能性(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)であるものがある。
【0133】
別のタイプの誘導体化抗体は、標識抗体である。本発明の抗体または抗体部分を誘導体化することができる有用な検出剤としては、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5-ジメチルアミン-1-ナプタレンスルホニルクロリド、フィコエリトリン、ランタニドリン光体などを含めた蛍光化合物がある。抗体は、検出に有用である酵素、例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ、ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼなどで標識することもできる。抗体は、ビオチンで標識し、アビジンまたはストレプトアビジン結合の間接測定によって検出することもできる。抗体は、ガドリニウムなどの磁性剤で標識される場合がある。抗体は、二次レポーター(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)によって認識される所定のポリペプチドエピトープで標識される場合もある。一部の実施形態では、標識は、潜在的な立体障害を低減するために様々な長さのスペーサーアームによって付着されている。
【0134】
本明細書において、「完全アンタゴニスト」は、有効濃度で、MAdCAMの測定可能な効果を本質的に完全に遮断するアンタゴニストである。部分アンタゴニストとは、測定可能な効果を部分的に遮断することができるが、最高濃度でさえ完全アンタゴニストでないアンタゴニストを意味する。本質的に完全にとは、測定可能な効果の少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約98%または99%が遮断されることを意味する。
【0135】
本明細書において、「抗MAdCAMアンタゴニスト抗体」または「MAdCAMアンタゴニスト抗体」は、MAdCAM生物活性および/またはMAdCAMシグナル伝達によって媒介される下流経路(複数可)を阻害することができるMAdCAMアンタゴニストを指す。MAdCAMアンタゴニスト抗体は、MAdCAMシグナル伝達によって媒介される下流経路、またはMAdCAMに対する細胞応答の誘発を含めたMAdCAM生物活性を(任意の程度、例えば有意に)遮断、アンタゴナイズ、抑制、または低減する抗体を包含する。本発明の目的に関して、用語「MAdCAMアンタゴニスト抗体」は、MAdCAM自体、MAdCAM生物活性、または生物活性の結果が、任意の意味のある程度において実質的に無効にされ、減少し、または中和されるすべての先に識別した用語、表題、ならびに機能状態および特性を包含することが明示的に理解される。一部の実施形態では、MAdCAMアンタゴニスト抗体は、MAdCAMに結合する。MAdCAMアンタゴニスト抗体の例は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれているWO2005067620に提供されている。
【0136】
一般用語
本明細書において、「生物活性」は、化合物、組成物、もしくは混合物のin vivo活性、または化合物、組成物、もしくは他の混合物をin vivo投与すると生じる生理反応を指す。生物活性は、このような化合物、組成物、および混合物の治療効果、診断効果、および薬学的活性を包含する。
【0137】
用語「生物学的に適合性の」は、本明細書において、細胞内および細胞外生体分子と生物学的に不活性または非反応性であり、無毒性であるものを意味する。
【0138】
「約」または「およそ」は、測定可能な数値変数に関連して使用される場合、変数の示された値、および示された値の実験誤差内(例えば、平均の95%信頼区間内)または示された値の10パーセント以内のいずれか大きい方である変数のすべての値を指す。数値範囲は、範囲を画定する数値を含む。用語「約」が時間(年、月、週間、日など)の脈絡内で使用される場合、用語「約」は、次の下位の時間のプラスマイナス1の量(例えば、約1年は、11~13カ月を意味し;約6カ月は、6カ月プラスマイナス1週間を意味し;約1週間は、6~8日を意味する;など)、または示された値の10パーセント以内のいずれか大きい方の時間を意味する。
【0139】
用語「競合する」は、第1の抗体またはその抗原結合性部分が、第2の抗体またはその抗原結合性部分と結合を競合することを意味し、この場合、第1の抗体のその同族エピトープとの結合は、第2の抗体の非存在下での第1の抗体の結合と比較して、第2の抗体の存在下で検出可能な程度に減少する。第2の抗体のそのエピトープへの結合も、第1の抗体の存在下で検出可能な程度に減少する代替は、当てはまり得るが、そうである必要はない。すなわち、第1の抗体は、第2の抗体のそのエピトープへの結合を、その第2の抗体が第1の抗体のそのそれぞれのエピトープへの結合を阻害することなく阻害し得る。しかし、各抗体が、他の抗体のその同族エピトープまたはリガンドとの結合を、同じ、より大きい、またはより小さい程度であってもなくても検出可能な程度に阻害する場合、抗体は、これらのそれぞれのエピトープの結合を互いに「交差競合する」と言われる。このような競合または交差競合が起こる機構(例えば、立体障害、コンホメーション変化、または共通エピトープもしくはその部分への結合)にかかわらず、当業者は、本明細書に提供される教示に基づいて、このような競合および/または交差競合抗体が本明細書に開示の方法にとって有用であり得ることを理解するはずである。
【0140】
用語「同一性」は、当技術分野で公知であるように、配列を比較することによって判定される、2つもしくはそれ超のポリペプチド分子または2つもしくはそれ超の核酸分子の配列間の関係を指す。当技術分野では、「同一性」は、場合によって、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列のストリング間でマッチさせることによって判定される、ポリペプチドまたは核酸分子配列間の配列関連性の程度も意味する。「同一性」は、コンピュータープログラムの特定の数学的モデル(すなわち「アルゴリズム」)によって対処されるギャップアライメントを用いて2つまたはそれ超の配列間の完全な一致のパーセントを測定する。
【0141】
用語「類似性」は、関連した概念であるが、「同一性」と対照的に、完全な一致および保存的置換一致の両方を含む類似性の尺度を指す。保存的置換は、ポリペプチドに適用し、核酸分子に適用しないので、類似性は、ポリペプチド配列比較のみを扱う。2つのポリペプチド配列が、例えば、20のうちの10の同一のアミノ酸を有し、残りがすべて非保存的置換である場合、パーセント同一性および類似性は、ともに50%である。同じ例において、保存的置換がある5つのさらなる位置がある場合、パーセント同一性は、50%のままであるが、パーセント類似性は、75%(20のうち15)である。したがって、保存的置換がある場合では、2つのポリペプチド配列間の類似性の程度は、これらの2つの配列間のパーセント同一性より高いことになる。
【0142】
用語「保存的アミノ酸置換」は、その位置のアミノ酸残基の極性、電荷、およびおよその体積に対してほとんどまたはまったく効果がないような、天然アミノ酸残基の非天然残基との置換を指す。例えば、保存的置換は、ポリペプチドの非極性残基の任意の他の非極性残基との置換から生じる。この用語は、BLOSUM62マトリックスまたは関連マトリックスにおいて見られるように、高度に同様のタンパク質間で頻繁に起こるとして同定される置換も指す場合がある(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89(22)、10915~9、1992)。
【0143】
ヌクレオチド配列への言及は、本明細書において、別段の指定のない限りその相補体を包含する。したがって、特定の配列を有する核酸への言及は、脈絡によって別段に定義されていない限り、その相補配列とともに、その相補鎖を包含することが理解されるべきである。
【0144】
用語「純化する」、およびその文法的変異は、ポリペプチドおよび1種または複数の不純物を含有する混合物から少なくとも1種の不純物を完全にであっても部分的にであっても除去し、それによって組成物中のポリペプチドの純度のレベルを改善すること(すなわち、組成物中の不純物の量(ppm)を減少させることによって)を意味するのに使用される。
【0145】
用語「KD」は、特定の抗体抗原相互作用の結合親和性平衡定数を指す。抗体は、KDが1mM以下、好ましくは100nM以下、最も好ましくは10nM以下であるとき、抗原に特異的に結合すると言われる。KD結合親和性定数は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって、例えば、BIACORE(商標)システムを使用して測定することができる。一部の態様では、SPRは、捕捉抗体、および溶液相標的を使用した。一部の態様では、SPRは、捕捉された標的、および溶液相抗体を使用した。
【0146】
用語「koff」は、特定の抗体抗原相互作用の解離速度定数を指す。koff解離速度定数は、表面プラズモン共鳴によって、例えば、BIACORE(商標)システムを使用して測定することができる。
【0147】
用語「表面プラズモン共鳴」は、例えば、BIACORE(商標)システム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、SwedenおよびPiscataway、N.J.)を使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することによって、リアルタイム生体特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を指す。さらなる記述については、Jonsson U.ら、Ann.Biol.Clin.、51:19~26(1993);Jonsson U.ら、Biotechniques、11:620~627(1991);Jonsson B.ら、J.Mol.Recognit.、8:125~131(1995);およびJohnsson B.ら、Anal.Biochem.、198:268~277(1991)を参照。
【0148】
MAdCAMに対するMAdCAMアンタゴニスト抗体の結合親和性および解離速度は、任意の適当な方法によって判定することができる。結合親和性は、ELISA、RIA、フローサイトメトリー、およびBIACORE(商標)などの表面プラズモン共鳴によって測定することができる。解離速度(dissociate rate)は、表面プラズモン共鳴によって測定することができる。任意の適当な方法を使用することによって、抗体がMAdCAMアンタゴニスト抗体と実質的に同じKDを有するか否かを判定することができる。US8188235(参照により本明細書に組み込まれている)の実施例7には、抗MAdCAMモノクローナル抗体の親和定数を判定するための方法が例示されている。
【0149】
任意の適当な方法を使用することによって、抗体が、MAdCAMアンタゴニスト抗体と同じエピトープに結合し、または結合を交差競合するか否かを判定することができる。一例では、MAdCAMアンタゴニスト抗体が飽和条件下でMAdCAMに結合させられ、次いで試験抗体のMAdCAMに結合する能力が測定される。試験抗体がMAdCAMアンタゴニスト抗体と同時にMAdCAMに結合することができる場合、試験抗体は、MAdCAMアンタゴニスト抗体の異なるエピトープに結合する。しかし、試験抗体が同時にMAdCAMに結合することができない場合、試験抗体は、同じエピトープ、重複エピトープ、またはヒト(huma)MAdCAMアンタゴニスト抗体が結合するエピトープにごく接近しているエピトープに結合する。この実験は、ELISA、RIA、BIACORE(商標)、またはフローサイトメトリー(FACS)を使用して実施することができる。
【0150】
MAdCAMアンタゴニスト抗体が別のMAdCAMアンタゴニスト抗体と交差競合するか否かを試験するために、2つの方向で、すなわち、参照抗体が試験抗体をブロックし、逆の場合も同様であるか否かを判定する本明細書に記載の競合法を使用することができる。一例では、実験は、ELISAを使用して実施される。
【0151】
MAdCAM抗体またはその抗原結合性部分は、慣例的なモノクローナル抗体方法、例えば、KohlerおよびMilstein(1975)、Nature、256:495の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技法を含めて、様々な技法によって生成することができる。モノクローナル抗体を生成するための他の技法、例えば、Bリンパ球のウイルス形質転換または癌化なども使用することができる。
【0152】
MAdCAM抗体またはその抗原結合性部分は、宿主細胞内の免疫グロブリン軽鎖および重鎖遺伝子の組換え発現によって調製することができる。例えば、組換えで抗体を発現させるために、宿主細胞は、抗体の免疫グロブリン軽鎖および重鎖をコードするDNA断片を担持する1種または複数の組換え発現ベクターをトランスフェクトされ、その結果、軽鎖および重鎖が宿主細胞内で発現され、好ましくは宿主細胞が培養されている培地中に分泌され、その培地から抗体を回収することができる。抗体重鎖および軽鎖遺伝子を得るため、組換え発現ベクター中にこれらの遺伝子を組み込むため、および宿主細胞内にベクターを導入するための様々な組換えDNA方法、例えば、その文献の開示が、参照により本明細書に組み込まれている、Sambrook、Fritsch、およびManiatis(編)、Molecular Cloning;A Laboratory Manual、2版、Cold Spring Harbor、N.Y.、(1989)、Ausubel、F.M.ら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates、(1989)、ならびに米国特許第4,816,397号に記載されたものなどが使用される。
【0153】
MAdCAM抗体およびその抗原結合性部分を発現させるために、本明細書に記載されるように得られる部分的なまたは全長の軽鎖および重鎖をコードするDNAが、遺伝子が転写および翻訳制御配列に作動可能に連結されるように発現ベクター中に挿入される。この脈絡内で、用語「作動可能に連結された」は、ベクター内の転写および翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写および翻訳を調節するこれらの意図された機能を果たすように抗体遺伝子がベクター中にライゲーションされることを意味する。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞に適合するように選択される。発現ベクターとしては、例えば、プラスミド、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、植物ウイルス、例えば、カリフラワーモザイクウイルス、タバコモザイクウイルスなど、コスミド、YAC、およびEBV由来エピソームがある。抗体遺伝子は、ベクター内の転写および翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写および翻訳を調節するこれらの意図された機能を果たすように、ベクター中にライゲーションされる。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞に適合するように選択される。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子を別個のベクター中に挿入することができ、または両方の遺伝子は、同じ発現ベクター中に挿入される。抗体遺伝子は、様々な方法(例えば、抗体遺伝子断片上の相補的な制限部位およびベクターのライゲーション、または制限部位が存在しない場合、平滑末端ライゲーション)によって発現ベクター中に挿入される。
【0154】
別の態様では、MAdCAM抗体またはその抗原結合性部分は、例えば、PCT公開第WO98/52976号および同第WO00/34317号(参照により本明細書に組み込まれている)に記載の技法を使用してこれらの免疫原性を低減するように脱免疫化される場合がある。
【0155】
別段の指定のない限り、「臨床的寛解」は、1超の個々のサブスコアがなく、0または1の直腸出血サブスコアを伴った2以下の総Mayoスコアとして定義される。示されている場合、臨床的寛解は、SCCAIに基づく場合があり、この場合では、臨床的寛解は、2未満の総SCCAIスコアとして定義される。
【0156】
「臨床的奏効率」は、総Mayoスコアのベースラインからの少なくとも3ポイントの減少かつ少なくとも30%の変化、それに加えて直腸出血サブスコアにおける少なくとも1ポイントの減少または0もしくは1の絶対スコアとして定義される。
【0157】
「粘膜治癒」は、0または1の内視鏡検査に対する絶対Mayoサブスコアとして定義される。
【0158】
構造的整列
タンパク質および時にRNA配列に通常特異的である構造的整列は、配列の整列を助けるためにタンパク質またはRNA分子の二次および三次構造についての情報を使用する。構造的整列は、これらが、配列情報をもっぱら利用するのではなく構造的に同様であるタンパク質配列の領域を明示的に整列させるので、「ゴールドスタンダード」として使用される。一般に使用される構造的整列についてのアルゴリズムは、TM-ALIGN(ZhangおよびSkolnick、Nucleic Acids Research、33:2302~2309(2005))であり、これは、重ね合わせ中に構造体の最も同様の領域に増大した重みを割り当てる。
【0159】
配列整列
本発明のタンパク質配列を用いた構造的整列が、例えば、標的配列のNMRまたは結晶構造データが存在しないことに起因して可能でない場合、配列整列を使用することができる。当業者は、配列整列ツール(BLAST、CLUSTAL、および本明細書に記載のものなどの当業者に公知の他のものなど)に精通しており、特に、サブタイプおよび種にわたる、免疫グロブリンドメイン、抗体、および抗体定常ドメインについて既に存在している多数の例示的な構造的研究に特に起因して、公知の構造モチーフに従って、配列、特に抗体定常ドメイン配列を整列させることができる。
【0160】
保存された構造を有する特定のタンパク質ファミリーについて、他の整列アルゴリズムが利用可能である。抗体の場合では、Kabat番号付けを割り当てるための様々なアルゴリズムが利用可能である。Abysisの2012年リリース品(www.abysis.org)においてインプリメントされたアルゴリズムが、別段の注記のない限り、可変領域にKabat番号付けを割り当てるのに本明細書で使用される。
【0161】
核酸配列との関連で、用語「パーセント配列同一性」は、最大対応で整列されたとき同じである2つの配列中の残基を意味する。配列同一性比較の長さは、少なくとも約9ヌクレオチド、通常少なくとも約18ヌクレオチド、より通常には少なくとも約24ヌクレオチド、典型的には少なくとも約28ヌクレオチド、より一般的には、少なくとも約32ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約36、48、またはそれ超のヌクレオチドのストレッチにわたるものであり得る。ヌクレオチド配列同一性を測定するのに使用することができる当技術分野で公知のいくつかの異なるアルゴリズムがある。例えば、ポリヌクレオチド配列は、Wisconsin Package Version10.0、Genetics Computer Group(GCG)、Madison、Wisconsin中のプログラムであるFASTA、Gap、またはBestfitを使用して比較することができる。例えば、プログラムFASTA2およびFASTA3を含むFASTAは、クエリーとサーチ配列との間のベストオーバーラップの領域の整列およびパーセント配列同一性をもたらす(Pearson、Methods Enzymol.、183:63~98(1990);Pearson、Methods Mol.Biol.、132:185~219(2000);Pearson、Methods Enzymol.、266:227~258(1996);Pearson、J.Mol.Biol.、276:71~84(1998);参照により本明細書に組み込まれている)。別段の指定のない限り、特定のプログラムまたはアルゴリズムのデフォルトのパラメータが使用される。例えば、核酸配列同士間のパーセント配列同一性は、そのデフォルトのパラメータ(6のワードサイズおよびスコアリングマトリックスについてのNOPAMファクター)を用いてFASTAを使用して、または参照により本明細書に組み込まれているGCGバージョン6.1において提供されているそのデフォルトのパラメータを用いてGapを使用して判定することができる。
【0162】
【実施例】
【0163】
(実施例1)
試験設計
試験は、mAb 7.16.6の有効性、安全性、およびPKを評価するのに行われている第IIB相概念実証(POC)、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並列、用量範囲試験であった。中等度~重度の潰瘍性大腸炎を有する対象を、皮下(SC)用量レベル(7.5、22.5、75、および225mg)のmAb 7.16.6、またはプラセボに1:1:1:1:1の比で無作為化した。本試験における参加は、およそ38カ月間であり、これは、最大で6週間のスクリーニング期間、12週間の処置期間、24カ月のフォローアップ期間(6回の毎月の訪問、その後の18か月の接触の延長(6カ月毎の電話による接触))を含んでいた。
【0164】
12週間のデータを有する少なくとも300人の対象を観察するために、21カ国にわたる105の場所で357人の対象を無作為化し、処置した。
【0165】
対象を以下の群のうちの1つに無作為に割り当てた:(1)7.5mg SC(n=60);(2)22.5mg SC(n=60);(3)75mg SC(n=60);(4)225mg SC(n=60);およびプラセボ(n=60)。患者に、0週目(6週間のスクリーニング期間後)に初期用量を投与し、4週目および8週目に後続の用量を投与した。
【0166】
(実施例2)
試験のエンドポイント
本試験の主目的は、中等度~重度の潰瘍性大腸炎を有する対象において総Mayoスコアに基づいて臨床的寛解を誘導することにおけるmAb 7.16.6の用量応答および有効性を特徴付けることであった。
【0167】
総Mayoスコアは、それぞれ0~3のスコアを付けられ、3が最悪である4つの要素からなる。要素のうちの2つ、排便数および直腸出血は、音声自動応答システム(IVRS)に患者が入力した毎日の日記から得た。Mayoスコアの第3の要素は、医師の包括的評価である。最後の要素は、内視鏡スコアである(以下のMAYOスコアリングを参照)。すべての内視鏡スコアは、調査者(ローカルリーダー)および盲検化された中央リーダーによって評価された。歴史的に、潰瘍性大腸炎患者の臨床試験は、ローカルで読み取られた内視鏡検査を使用して総Mayoスコアを計算していた。
MAYOスコアリング
排便回数†:0=この対象の便通の正常数
1=正常より1~2回多い便通
2=正常より3~4回多い便通
3=正常より5回またはそれ超多い便通
サブスコア、0~3
直腸出血‡: 0=血液が見られない
1=時間の半分未満において便通に伴い筋状の血液
2=常に便通に伴って明らかな血液
3=血液のみ通過
サブスコア、0~3
内視鏡検査での知見:0=正常または不活性な疾患
1=軽度の疾患(紅斑、血管パターンの減少、軽度のもろさ)
2=中等度の疾患(顕著な紅斑、血管パターンの欠如、もろさ、びらん)
3=重度の疾患(自然発生的な出血、潰瘍形成)
サブスコア、0~3
医師の包括的評価§:0=正常
1=軽度の疾患
2=中等度の疾患
3=重度の疾患
サブスコア、0~3
* Mayoスコアは、0~12の範囲であり、より高いスコアがより重度の疾患を示す。データは、Schroederらからのものである。
† 各対象は、排便回数の異常性の程度を確立するのに、彼または彼女自身の対照として機能を果たす。
‡ 日々の出血スコアは、その日の最も重度の出血を表す。
§ 医師の包括的評価は、他の3つの基準、腹部不快感および健康の一般的な感覚の対象の日々の回想、ならびに他の観察、例えば、身体的な知見および対象のパフォーマンスステータスなどを知らせる。
【0168】
有効性エンドポイント
主要有効性エンドポイント:
・ 12週目における臨床的寛解(1超の個々のサブスコアがなく、0または1の直腸出血サブスコアを伴った2以下の総Mayoスコアとして定義される)における対象の比率。
【0169】
重要な二次有効性エンドポイント:
・ 12週目における臨床反応(直腸出血サブスコアにおける少なくとも1ポイントの減少または0もしくは1の絶対スコアを伴った少なくとも30%の変化を含む総Mayoスコアの少なくとも3ポイントのベースラインからの減少として定義される)を有する対象の比率。
・ 12週目における粘膜治癒(0または1の内視鏡検査に対する絶対Mayoサブスコアとして定義される)を有する対象の比率。
・ 4、8、12週目における1超の個々のサブスコアのない2以下の部分Mayoスコアのベースラインからの減少を有する対象の比率。
・ 12週目における総Mayoスコアのベースラインからの変化(CFB)、および4、8、12週目における個々のMayoサブスコアのCFB。
・ 4、8、12週目における糞便カルプロテクチンおよびhsCRPのCFB。
【0170】
安全性およびPK、ならびにPK/PDエンドポイント:
・ AE、SAE、試験処置の中止に至るAEの頻度によって評価される安全性および耐容性。
・ mAb 7.16.6の濃度-時間プロファイル
・ 事前の集団PKを含めた、薬物動態学的データおよび抗薬物抗体データの概要。
【0171】
探索的エンドポイント:
・ 4、8、および12週目における臨床的寛解(2ポイント未満の総SCCAIスコアとして定義される)を有する対象の比率。
・ ベースラインおよび12週目における血液中の可溶性MAdCAMならびにCFB。
【0172】
(実施例3)
分析方法
主要エンドポイントの分析
予め指定した主要エンドポイントの分析は、1)Emaxモデル;2)用量モデルの直線性(Linear in dose model);または3)最小リスクウェイトを使用するCMH法(MehrotraおよびRailkar、2000)に基づきなされた。観察されたデータは、Emaxおよび用量モデルの直線性のどちらについても単調な漸増用量-応答傾向を支持しなかったので、以前の抗TNF療法経験によって階層化されたCMH法を主要エンドポイントの分析に使用した。Hochbergのステップアップ法を使用する片側で調整したp値は、予め指定していなかったが、多重比較の調整をサポートするために本報告において提示されている。
【0173】
二次エンドポイントの分析
4、8、または12週目におけるバイナリデータを使用する重要な二次および探索的エンドポイントを、CMH法を使用して分析した。4、8、または12週目における連続的なエンドポイントを、共分散分析(ANCOVA)モデルおよび/または線形混合モデル(LMM)を使用して分析した。
【0174】
バイナリエンドポイントにおける欠損値のインピュテーション
CMH法を使用した主要、二次、および探索的エンドポイントにおけるバイナリエンドポイントの分析において脱落した対象についての欠損値インピュテーションに、処置失敗手法を使用した。ANCOVAおよびLMMモデルについては、観察されたデータのみを使用し、インピュテーションは行わなかった。縦断的分析については、一般化線型混合モデルは、ランダムに欠損している仮定の下で有効であるので、インピュテーションを行わず、観察されたままのデータを使用した。
【0175】
分析集団セット
試験設計に基づいて、最初の無作為化を0~12週目まで保持したが、12週目後は保持しなかった。0~12週目の分析セットを以下の集団に対して実施した。
・ 修正治療意図(mITT)集団:少なくとも1つの用量の治験製品を受けたすべての無作為化された対象からなる完全な分析セット。
・ 安全性分析集団:少なくとも1つの用量の治験薬を受けたすべての登録された対象を含む。この集団は、処置されたが、様々な理由で無作為に割り当てられた治験製品を受けなかった対象を含む。
・ パープロトコール(PP)集団:mITT分析集団のサブセットであるが、重要なプロトコール違反で同定されたすべての対象を除外する。
・ PK集団:1用量の治験製品を受けたすべての対象を含み、少なくとも1つのPK濃度の時点に対するデータを有する。
【0176】
(実施例4)
対象の体質および人口統計
合計587人の対象をスクリーニングして357の無作為化された対象を得、この対象のすべては、少なくとも1用量の治験薬を受けた。これらの357人の対象は、mITT分析集団および安全性分析集団を構成する。3つすべての用量に割り当てられたものと異なる処置を受けた2人の対象があった。これらの2人の対象はともに、22.5mg用量群に無作為に割り当てられ、ともに以下の表3に反映されている75mg用量群を受けた。
【0177】
主要および二次エンドポイントの分析を支持するために、320人の対象を構成するPP集団を使用して感度分析を行った。合計37人の対象を、重要なプロトコール逸脱の同定に起因してPP分析セットから除外した。これらの対象のうち12人は、1つまたは複数の誤った用量を受けた。
【0178】
【0179】
【0180】
(実施例5)
有効性
主要有効性エンドポイント - 12週目における臨床的寛解
重要な二次有効性エンドポイント - 12週目における臨床反応および粘膜治癒
図1は、mITTおよびPP集団の両方についての中央およびローカル読み取りに由来する各処置群の12週目における観察された臨床的寛解率を示す。一般に、ローカル読み取りを使用する寛解率は、中央読み取りを使用するものより高い。プラセボ、7.5mg、22.5mg、75mg、および225mgのmAb 7.16.6について中央読み取りを使用して計算したmITT集団における寛解率は、それぞれ、2.7%、11.3%、16.7%、15.5%、および5.7%であった一方、ローカル読み取りを使用して計算した寛解率は、それぞれ、5.5%、14.1%、23.6%、18.3%、および12.9%であった。PP集団では、対応する率は、わずかに高かったが同じ傾向を保持し、22.5mgが4つの処置群の中で最高であり、その後75mgからの率が続いた。
【0181】
12週目における抗TNF曝露層(stratum of anti-TNF exposure)(経験済みまたはナイーブ)による観察された臨床的寛解率を分析し、
図2に提示した。一般に、mITT集団において観察された臨床的寛解率は、同様の傾向を示し、経験済み患者に対してナイーブ患者の中でより高い率を示した。PP分析結果は、mITT集団と同じ知見を支持したが、処置群とプラセボ群との間でより大きいエフェクトサイズを示した。
【0182】
中央読み取りに基づく主要エンドポイント(臨床的寛解)ならびに重要な二次エンドポイント(臨床反応および粘膜治癒)の分析を
図4に示す。主要エンドポイント臨床的寛解については、4つの処置群のうち3つ(7.5mg、22.5mg、および75mg)が、プラセボ群に対して統計的に有意な有効性利点を示した。12週目におけるプラセボに対する7.5mg、22.5mg、および75mgの臨床的寛解率は、それぞれ、8.0%(p=0.043)、12.8%(p=0.010)、および11.8%(p=0.012)であった。臨床反応の観点からは、4つの処置群のうち3つ、22.5mg、75mg、および225mgが、プラセボと比較して統計的な有効性を示し、エフェクトサイズ(RD=リスク差)は、それぞれ25.4%(p=0.004)、16.3%(p=0.048)、および21.3%(p=0.016)であった。プラセボに対する22.5mgおよび75mgの粘膜治癒率は、プラセボと有意に異なり、エフェクトサイズは、それぞれ18.7%(p=0.004)および15.9%(p=0.008)であった。プラセボと比較した最高用量225mgの臨床的寛解および粘膜治癒率は、すべての用量群の中で最低である。対照的に、225mg用量群の臨床反応は、2番目に高く、プラセボと有意に異なる。
【0183】
ローカル読み取りに対応する結果は、同様の傾向に従う(
図5)。エフェクトサイズは一般に、中央読み取りスコアを使用するものより高い。22.5mgおよび75mgの臨床的寛解率は、統計的に有意であり、エフェクトサイズは、それぞれ17.8%(p=0.006)および12.2%(p=0.038)である。22.5mgおよび225mgの臨床反応も統計的に有意であり、エフェクトサイズは、21.2%(p=0.023)および18.5%(p=0.044)であった。75mgの臨床反応は、わずかに有意でない(p=0.065)。おそらく高いプラセボの率(21.9%)のために、用量のいずれも、粘膜治癒の観点から統計的にプラセボから分離しなかった。同様の結果が、これらの2つの分析下のPP集団においても観察される。
【0184】
重要な二次有効性エンドポイント - 部分Mayoスコア
図6は、4、8、12週目において1超の個々のサブスコアを伴わない2以下の部分Mayoスコアのベースラインからの減少を有する対象の比率を要約する。これらのデータは、主要エンドポイント分析に使用した同じCMH法を使用して分析した。12週目における部分Mayoスコアのベースラインからの変化の結果は、主要エンドポイント分析と一致する。22.5mgは、プラセボ(p=0.004)および75mgと違いが出たが、有意ではなく、次に最も近いエフェクトサイズであった。4週目において、4つすべての用量は、ほとんど同様のエフェクトサイズを示したが、8週目から開始して、これらは、プラセボと違いが出始めた。PP集団での分析結果は、同じ傾向をもたらし、各時点においてわずかにより高いRDを伴った。
【0185】
主要エンドポイントおよび重要な二次エンドポイントについて上記に提示したすべての分析は、バイナリエンドポイントを使用した。臨床的有効性の上記知見を支持するために、12週目における総Mayoスコアを使用するベースラインからの変化を、ANCOVAモデルをフィッティングして分析した。中央読み取りデータを使用するANCOVAからの結果を表5に提示する。22.5mgに対するプラセボ群からの差異が最高であると思われ、その後225mgが続き、4つすべての処置群がプラセボと統計的に異なった。これらの知見は、臨床反応の分析と同様であり、理由は、応答がMayoスコアに対するベースラインからの変化に基づいて判定されるためである。ローカル読み取りを使用する分析も、これらの知見と一致する。
【0186】
図12は、無作為化がベースラインで十分バランスのとれた排便回数スコアをもたらしたことを示す。すべての処置群が、4週目までにプラセボより良好であり、12週目における最大効果が22.5mg処置群で観察された。排便回数は、完全Mayoスコアおよび部分Mayoスコアの両方の要素である。これは、毎日報告され、発病前の値に対して正規化され、0~3のスケールで格付けされる。0のスコアは、排便回数が発病前の値と同じであることを示し;1のスコアは、正常より1~2回多い便通/日を示し;2のスコアは、正常より3~4回多い便通/日を示し;3のスコアは、それぞれの日で正常より4回超多い便通を示す。各対象のデータは、評価日の前の3つの値の平均を表す。グラフ上の各点は、評価日における処置についての平均(SEM)である。データ表において、平均に隣接する括弧内の値は、プラセボ補正平均、すなわち、平均-対応するプラセボ値である。
【0187】
図13は、無作為化がベースラインで十分バランスのとれた直腸出血スコアをもたらしたことを示す。すべての処置群が、4週目までにプラセボより良好であり、この効果は、12週目を通じて持続的であり、その訪問における最大の効果が22.5mg群で見られた。直腸出血は、完全Mayoスコアおよび部分Mayoスコアの両方の要素である。これは、毎日報告され、0~3のスケールで格付けされる。0のスコアは、出血がないことを示し;1のスコアは、時間の50%未満の便通に伴って目に見える血液があったことを示し;2のスコアは、時間の50%以上の便通に伴って明なか血液を示し;3のスコアは、便通を伴わない血液のみの通過を示す。各対象のデータは、評価日の前の3つの値の平均を表す。グラフ上の各点は、評価日における処置についての平均(SEM)である。データ表において、平均に隣接する括弧内の値は、プラセボ補正平均、すなわち、平均-対応するプラセボ値である。
【0188】
図14は、無作為化がベースラインで十分バランスのとれた軟性S状結腸鏡検査スコアをもたらしたことを示す。すべての処置群が、12週目においてプラセボより良好であり、その訪問における最大の効果が22.5mg群で見られた。軟性S状結腸鏡検査は、完全Mayoスコアの要素である。これは、ベースライン訪問の前、および12週目の訪問の直前に実施された。これは、0~3のスケールで格付けされる。0のスコアは、正常な結腸粘膜または不活性な疾患を示し;1のスコアは、紅斑、血管パターンの減少、および/または軽度のもろさによって特徴付けられる軽度の疾患を示し;2のスコアは、顕著な紅斑、血管パターンの不在、もろさ、および/またはびらんによって特徴付けられる中等度の疾患を示し;3のスコアは、潰瘍形成および自然発生的な出血を伴った重度の疾患を示す。グラフ上の各点は、評価日における処置についての平均(SEM)である。データ表において、平均に隣接する括弧内の値は、プラセボ補正平均、すなわち、平均-対応するプラセボ値である。
【0189】
図15は、無作為化がベースラインで十分バランスのとれたPGAスコアをもたらしたことを示す。プロトコールから予期されるように、対象の疾患は、ベースラインにおいて中等度~重度であると見なされた。すべての処置群が、12週目においてプラセボより良好であり、その訪問における最大の効果が22.5mg群で見られた。医師の包括的評価は、完全Mayoスコアおよび部分Mayoスコアの両方の要素である。これは、対象の潰瘍性大腸炎のすべての様相を考慮に入れた治療医師の主観的評価を反映する。これは、0~3のスケールで格付けされる。0のスコアは、対象が正常であることを示し;1のスコアは、軽度の疾患を示し;2のスコアは、中等度の疾患を示し;3のスコアは、重度の疾患を示す。グラフ上の各点は、評価日における処置についての平均(SEM)である。データ表において、平均に隣接する括弧内の値は、プラセボ補正平均、すなわち、平均-対応するプラセボ値である。
【0190】
【0191】
(実施例6)
探索的エンドポイント - SCCAI
別の予め指定されたスコアシステムに基づく臨床的寛解、単純臨床大腸炎活動指数(Simple Clinical Colitis Activity Index)(SCCAI)を、臨床効果の一貫性の点検として得た(表6)。SCCAIは、内視鏡検査を含まない。SCCAIに基づく所与の時点における臨床的寛解は、2未満の総SCCAIスコアとして定義される。4、8、および12週目における観察された寛解率(処置失敗手法を用いた)および対応する90%信頼区間を、
図7にプロットする。すべての時点において、用量22.5mgおよび75mgに対応する寛解率は、他の2つの用量より高く、経時的に、これらの2つの用量は、さらに分離する。12週目におけるSCCAI結果は、Mayoスコアに基づく臨床的寛解結果と一致する。
【0192】
【0193】
(実施例7)
安全性
本試験で観察された安全性シグナルの証拠はなかった。安全性集団は、無作為化され、少なくとも1つの用量の治験薬を受けた357人の対象からなった。対象は、受けた処置によって分析した。対象の体質を表7に提示する。3つすべての用量について割り当てられたものと異なる処置を受けた2人の対象があった。両方とも、22.5mg用量群に割り当てられ、ともに75mgを受けた。有害事象は、プラセボ処置対象(39/73=53%)より薬物処置対象(162/284=57%)においてわずかにより一般的であったが、用量に対する関係の明らかな証拠はなかった(表7)。
【0194】
【0195】
中止
処置期中の、有害事象による脱落に起因する12を含めて21の中止があった(表8)。12の有害事象による脱落のほとんどは、潰瘍性大腸炎の悪化(7)および他のGI事象(3)に起因していた。これらの事象の大部分は、試験の最初の30日中に7.5mg(n=6)群で起こった。薬物または用量応答の証拠はなかった。
【0196】
【0197】
死亡
本試験中に1件の死亡があった。7.5mgを受けた30歳の女性は、治験薬の最初の用量から30日後に大腸の腺癌と診断された。試験エントリーの前に、患者は、15.8kg/m2のスクリーニングにおけるBMIを伴って短時間にわたる顕著な体重損失を経験した。試験前の大腸内視鏡検査は、直腸中に狭窄範囲を伴って異常であったが、生検は、異形成を示さなかった。対象は、治験薬での最初の4週間以内にさらに10%体重を失った。S字結腸鏡検査を繰り返すと、より著しい狭窄が明らかになり、その時点での狭窄病変部の生検は、腺癌を示した。彼女は、治験薬を中止し、3カ月後に転移大腸がんで死亡した。がんは、陰性の生検にもかかわらず試験エントリー前に存在し、この致命的な有害事象が治験薬の使用と関連する見込みはないと考えられた。e-DMCもこの因果関係に一致した。
【0198】
重篤な有害事象
重篤な有害事象の頻度は、7.5mg処置群において最高であったが(n=10)、プラセボを含めたすべての他の群は、同様のSAE頻度が報告された(n=1~4)。22人の対象において26の重篤な有害事象があった。ほとんどの一般的なSAEは、潰瘍性大腸炎であり、9人の対象によって報告され、その後片頭痛が続き、2人の対象によって報告された。他の胃腸SAE(それぞれ1事象)には、腹痛、大腸の腺癌、肛門膿瘍、裂肛、虫垂炎、下痢症、便秘、C.ディフィシル(C.difficile)感染、および嘔吐が含まれた。他の、非胃腸SAE(それぞれ1事象)には、複雑型片頭痛、片頭痛、てんかん、四肢の疼痛、網膜動脈塞栓症、血管迷走神経性失神、肺塞栓症、および緊張型頭痛が含まれた。
【0199】
プロトコール固有の医学的に重要な事象
試験の過程にわたって、非常に積極的な監視プログラムを整えて、PMLおよび心筋炎のあらゆるリスクを評価した。これらの事象のいずれも観察されなかった。
【0200】
有害事象
全体的に、mAb 7.16.6は、耐容性良好であると思われた。有害事象の頻度は、プラセボ処置(53%)対象より薬物(57%)処置対象においてわずかに高かったが、用量とともに増大しなかった。器官別大分類(SOC)による最も一般的な有害事象は、感染および侵襲、胃腸障害、神経系障害、筋骨格障害、ならびに一般的な障害および投与部位状態であった(表9)。
【0201】
【0202】
胃腸管および関連組織を除いて、MAdCAMは、乳房、鼻腔組織、および脾臓において構成的に見つかる。有害事象は、乳房または脾臓について報告されなかった。鼻咽頭炎および上気道感染症の発生率は、処置群の中で異ならなかった(表10)。
【0203】
【0204】
一般的な有害事象(1処置群中で少なくとも4人の対象において観察されたもの)は、腹痛、潰瘍性大腸炎、吐き気、嘔吐、頭痛、咳、および貧血であった。最も一般的なAEは、頭痛であり、対象の最大で10%によって報告され、その後腹痛および潰瘍性大腸炎が続いた。これらの事象のいずれについても用量効果の証拠はなかった(表11および
図16)。
【0205】
紅斑、疼痛、腫張、および灼熱感として報告される注射部位反応は珍しく、225mg処置群中でより頻繁に観察されたが(10%)、プラセボを含む他の処置群全体にわたって均等に分布していた(3~4%)。mAb 7.16.6は、この患者集団において安全で耐容性良好であると思われる。
【0206】
【0207】
(実施例8)
バイオマーカー
8.1 血清タンパク質プロファイリングによって同定されるタンパク質バイオマーカー
背景。血液および組織試料を、すべての用量群において様々な時点で収集し、Olink Biosciences高度多重化タンパク質アッセイプラットフォームを使用してタンパク質のパネルを測定するのに使用した。202種のタンパク質の濃度を、この感度のよいかつ正確なアッセイプラットフォームを使用して測定し、処置前に採取した試料と初期投与して4週間後および12週間後に採取した試料との間で比較した。処置に対する応答を予測するバイオマーカーを、処置前に採取した試料からの単一または複数のタンパク質の出発濃度、およびベースラインから4週目または12週目までのタンパク質濃度の変化を相関させることによって分析する。これらのタンパク質データを、RNA、遺伝子型判定からのデータ、および細胞集団データと一緒に分析する。そのそれぞれの対照値からの逸脱を示すタンパク質アッセイの結果を表12および13に示す。抗MAdCAM抗体を4週毎に投与した。
【0208】
方法。MAdCAM UC POC試験に登録された患者からの血清タンパク質を、Olink Biosciences近接伸長アッセイプラットフォームを使用して、処置前、ならびに処置の投薬期間中の4週間および12週間の時点に採取した試料から測定した。全体で、12週間の処置期間中の3つの時点で331人の対象から収集した937血清試料からタンパク質を測定した。3つの市販のアッセイ、Proseek Multiplex CVD I96x96、Proseek Multiplex INF I96x96、およびProseek Multiplex ONC v2 I96x96を、Olinkによって試験血清試料中の202のユニークなタンパク質を測定するのに使用した。
【0209】
結果。多くのタンパク質は、出発濃度値と比較して、抗MAdCAM処置の投薬期間中の4週間および12週間の時点で異なる濃度を有する。プラセボ群の処置前および4週目と比較した、処置前と抗MAdCAM処置の4週間後との間に最大の中央値の差異を有するタンパク質を表12に要約する。各マーカーの各群についての中央値変化、および第1四分位点、第3四分位点の値が示されている。統計的モデリングを使用して応答のバイオマーカーについてデータが分析されている。
【0210】
【0211】
プラセボ群の処置前および12週目と比較した、処置前と抗MAdCAM処置の12週間後との間に最大の中央値の差異を有するタンパク質を表13に要約する。各群についての中央値変化、および第1四分位点、第3四分位点の値が示されている。統計的モデリングを使用して応答のバイオマーカーについてデータが分析されている。
【0212】
さらに、IBDノードと共同して、提案されているこれらの試料の公知または新規の治療用タンパク質の評価の他のIBDデータセットと比較して、この疾患のさらなる本発明者らの理解に向けてデータをマイニングすることによって追加の値を抽出することができる。
【0213】
特に、3種のタンパク質バイオマーカー - 糞便カルプロテクチン、sMAdCAM、およびhsCRPは、処置に対する患者の応答を特に予測するものである。処置に応答したタンパク質レベルの変化、およびベースラインから4週目まで、またはベースラインから12週目までのタンパク質濃度の変化は、臨床的エンドポイント(例えば、12週目における臨床反応)と相関し、臨床反応を予測するのに、またはこの処置に特に適した患者亜集団を同定するのに使用することができる。
【0214】
【0215】
糞便カルプロテクチン。糞便カルプロテクチンデータのベースラインからの変化の推定(および90%CI)を
図8に要約する。4週目において活性群のベースラインからの糞便カルプロテクチン値のロバストな低下があり、これは、8および12週目において低下し続けた。
図8から明白なように、プラセボ群は、活性群と比較してより少ない低下を示した。12週目において、ベースラインからの%変化の幾何平均は、プラセボ、7.5mg、22.5mg、75mg、および225mg用量について、それぞれ、-19%(減少)、-60%(減少)、-59%(減少)、-55%(減少)、および-60%(減少)であった。
【0216】
可溶性MAdCAM(sMAdCAM)。sMAdCAMデータのベースラインからの変化の推定(および90%CI)を
図9に要約する。試験の設計中の予測と一致して、sMAdCAMは、用量範囲にわたって非常にロバストで単調な低下を示し、22.5mg以上の用量で安定した。12週目において、ベースラインからの%変化の幾何平均は、プラセボ、7.5mg、22.5mg、75mg、および225mg用量について、それぞれ、4%(増大)、-68%(減少)、-90%(減少)、-94%(減少)、および-98%(減少)であった。
【0217】
hsCRP。hsCRPデータのベースラインからの変化の推定(および90%CI)を
図10に要約する。4週目において活性群についてベースラインからのhsCRP値のいくらかの低下があり、これは、あまり変化を示さなかった7.5mg用量群を除いて8週目にかけて低下し続けた。活性処置群は、12週目までにベースラインに戻る傾向を示したが、臨床所見と一致して、最大で最も持続性の低減が22.5mgおよび75mg群で観察された。
図2から明白なように、プラセボ群は、経時的にあまり変化を示さなかった。12週目において、ベースラインからのパーセント変化の幾何平均は、プラセボ、7.5mg、22.5mg、75mg、および225mg用量について、それぞれ、15%(増大)、5%(増大)、-20%(減少)、-16%(減少)、および2%(増大)であった。
【0218】
8.2 MAdCAM UCについての遺伝子発現プロファイリングによって同定されるRNAバイオマーカー
背景。血液および組織生検試料を、すべての用量群において様々な時点で収集し、RNA-seq技術プラットフォームを使用して全体的なトランスクリプトームを測定するのに使用した。RNA-seqは、所与の細胞または組織型内に存在する実質的にすべての転写物の転写量の同時のかつ公平な測定を可能にする公平な遺伝子発現プロファイリング技術である。トランスクリプトームを1試料当たり約4000万ペアエンドリードのリード深度で配列決定した。このリード深度は、それぞれのアイソフォームを含む15,000超の遺伝子の詳細な転写物分析を可能にする。処置前に採取した試料を、処置して4週間後および12週間後に採取した試料と比較し、統計分析を実施して、これらのサンプリング時点にわたって様々な用量レベルで変化する転写物を同定した。処置に対する応答を予測するバイオマーカーを、処置前に採取した試料からの単一または複数の転写物の出発濃度、およびベースラインから4週間または12週間までの転写物発現レベルの変化を相関させることによって分析する。これらの遺伝子発現データをまた、タンパク質からのデータおよび細胞集団データと一緒に分析する。
【0219】
方法。MAdCAM UC試験に登録された患者からの血液および組織RNAを、TruSeq mRNA鎖(TruSeq mRNA stranded)配列決定ライブラリー生成、その後のIllumina HiSeq2000または4000シリーズ配列決定装置を使用するこのライブラリーの分析からなるIllumina RNA-seq技術プラットフォームを使用して、処置前、ならびに処置の投薬期間中の4週間および12週間の時点に採取した試料から測定した。全体で、血液中の転写物発現を、ベースラインおよび12週間において320患者について測定した。この群からの256患者は、4週目で転写物分析も実施してもらった。組織生検試料分析については、126人の対象は、スクリーニング訪問時および12週目に炎症組織生検を分析してもらった。
【0220】
結果。多くの転写物は、ベースライン(またはスクリーニング訪問)時の出発遺伝子発現値と比較して、抗MAdCAM処置の投薬期間中の4週間および12週間の時点で異なる遺伝子発現レベルを示す。表14を参照。特に、CCR9の発現変化(例えば、ベースラインからの12週目における発現変化)は、臨床的有効性と相関すると考えられる。
【0221】
【0222】
【0223】
8.3 FACSによって同定される細胞バイオマーカー
B7インテグリンFACSアッセイ。リンパ球サブセット中の表面B7マーカーの頻度および発現を、全血FACSアッセイによって評価する。ヘパリンナトリウム血液のアリコート(100μL)を、抗体カクテル(CD45RO-FITC、B7-インテグリン、またはラットIgG2aアイソタイプ対照-PE、CD4-PerCPCy5.5、CD27-APC、およびCD3-APC-H7;すべてBDから)30μLとともに室温で30分間インキュベートする。各チューブに、1× BD PharmLyse溶液1mLを添加し、手動でシェイクし、30分間光から保護しながら、室温で30分間インキュベートする。溶解された血液は、調製して2時間以内にFACSCanto IIによって得る。血球計算器は、チューブ1本当たりに試料のほとんどを得るように設定する。サブセット中の表面B7タンパク質の発現は、キャリブレーターとしてBD QuantiBrite-PEを用いて標準単位MESF(等価可溶性蛍光色素の分子)として定量化する。
【0224】
MAdCAMは、腸の内皮細胞および腸関連リンパ組織に発現される。抗MAdCAMは、β7+発現細胞とリガンドMAdCAMとの間の相互作用を遮断し、それによって血液循環から腸へのβ7+発現細胞の血管外遊出を遮断する。したがって、抗MAdCAMで処置すると、血液循環中のα4β7+細胞が増加する。血液試料をベースライン、8週目、および12週目に採取し、α4β7+セントラルメモリーT細胞を蛍光活性化細胞分類(FACS)によって測定する。パーセントβ7+データは、b7も発現した%CD4+発現細胞として報告し、絶対数(細胞/μL)、およびセントラルメモリーT細胞上のβ7タンパク質発現の単位尺度であるMESF(等価可溶性蛍光色素の分子)も測定する。FACSパラメータは、応答としてのベースラインからの変化、および処置、抗TNF経験の状態、同時のIS療法、ベースライン、訪問、および固定効果としての訪問対話(visit interaction)による処置、およびランダムな効果としての対象を使用する線形混合モデルを使用して分析する。循環b7+セントラルメモリーCD4+
Tリンパ球は、用量依存的な様式で抗MAdCAM処置患者において8週目および12週目で増大すると考えられる。%β7+セントラルメモリーT細胞の倍率変化は、8週目および12週目ですべての用量について統計的に有意であることが予期される。β7+セントラルメモリーT細胞の絶対数およびMESFの増大も、8週目および12週目でプラセボと比較してすべての用量の抗MAdCAM群について有意により高いと予期される。
【0225】
8.4 遺伝子型判定によって同定される遺伝子バイオマーカー。
ゲノム全域にわたる遺伝子型データを、Pfizer特注Illuminaアレイを使用してすべての対象について生成した。この特注チップの大部分は、ゲノム中に存在するほとんどのエクソンバリエーションをカバーすることを目的とするIllimuna OmniExpressExomeチップ設計をベースとしている。OmniExpressExomeチップを越える追加のコンテンツは、以前の試験に基づいて、多民族コホートにおける疾患と関連することが公知である追加のバリアントをカバーすることを目的とする。試料レベルおよび遺伝子型レベルの品質管理はともに、以下の基準に基づいて行われることになる。
【0226】
試料レベル
・ 試料のコールレートチェック - 95%未満のコールレートを有する試料を除去する。
・ 試料の性別チェック - 自己報告した性別に一致しない性別を有する試料を除去する。性別は、X染色体上のホモ接合率によって定義される。男性については、ホモ接合率は、0.8以上であると予想され、女性については、これは、0.2以下であると予想される。典型的には、試料の0.5%未満が性別ミスマッチを有する。
・ 試料のヘテロ接合率 - 平均より3標準偏差超のヘテロ接合率を有する試料を除去する。
・ 試料の関連性チェック - 0.1875超のPI_HATスコアを有する対について、より低いコールレートを有する試料を除去する。
【0227】
遺伝子型レベル
・ SNPのコールレートチェック:95%未満のコールレートを有するSNPは、除去されることになる。
・ SNPマーカーの重複チェック:チップ上の重複SNPを除去する。より高いコールレートを有するSNPを保持する。
【0228】
遺伝子型データの分析。2つの遺伝子分析を行う。第1に、候補SNPを分析して、12週目における臨床的有効性との関連を評価する。特に、rs11171739を分析し、理由は、rs11171739が、MADCAM1遺伝子の発現レベルと潜在的に関連すると示唆されているSNPであるためである。第2に、公的に利用可能なデータに基づいて潰瘍性大腸炎と関連することが公知である上位遺伝的バリアントの組合せに基づいて遺伝子スコアを構築して、この遺伝子スコアのMadCAMに対する臨床反応との関連について試験する。遺伝子スコアは、UCについてのリスク対立遺伝子の加重和に基づいて計算する。重みは、各リスク対立遺伝子の公知のエフェクトサイズに基づくことになる。遺伝子スコアを、各個々の対象について計算し、次いで臨床的有効性の様々な尺度の線形回帰モデルにおける関連について試験する。
【0229】
すべての分析は、薬物反応ではなく祖先に関連するシグナルの検出を回避するために、共変量として祖先を含む。祖先は、いくつかの主要な要素に沿ったこれらの値を表す各対象についての定量的なベクトルによって表され、共変量としての人種の代用として上記回帰モデル中に含められる。
【0230】
(実施例9)
薬物動態、ターゲットカバレッジ、および抗薬物抗体
曝露は、FIH試験(A7281001、潰瘍性大腸炎)において観察され、標的媒介薬物体内動態を記述する予備集団薬物動態学的モデルによって十分に予測されるものと一致する(
図11)。
【0231】
12週目における平均の観察されたトラフ濃度値は、7.5mg、22.5mg、75mg、および225mgの用量でそれぞれ、435ng/ml、1334ng/ml、5567ng/ml、および19860ng/mlであった。これらの血清濃度は、
図9に示したように、それぞれ68、90、94、および98の可溶性MAdCAMの抑制(12週目におけるベースラインからの幾何平均パーセント変化)に対応し、試験の設計中のモデル予測と一致した。
【0232】
一般に、本試験におけるPKレベル血清濃度は、対応する用量で同じ治療抗体を使用する別個のクローン病試験において観察されたものと同様であった。
【0233】
最大で12週目まで分析した活性処置の282人の対象からの758のADA試料のうち、709が陰性と報告された。29人の対象;7.5mgの7人の対象、22.5mgの6人の対象、75mgの9人の対象、および225mgの7人の対象からの49のADA試料が陽性であると確認された。12人の対象がベースラインで確認陽性ADAを有していた。ベースラインで確認陽性ADAを有する12人の対象のうち9人の対象が、ベースライン後に陽性であり(7.5mgの3人の対象、22.5mgの1人の対象、75mgの4人の対象、および225mgの1人の対象)、処置ブーストADA応答(すなわち、ベースラインと比較した場合の処置後のより大きいADA力価)の徴候はなかった。陰性と報告された709試料のうち、396(約56%)が決定的でないと見なされ、313(約44%)が、それぞれLLOQ超(10ng/mL超)およびBLQ(10ng/mL未満)である血清濃度の測定に基づいて陰性が確認された。注:313の値のBLOQのうち、245が投薬前の測定であった。
【0234】
全体的な確認陽性率は、およそ6.4%であり、力価は、一般に低く、カットオフ(4.64)に近く、いずれも11.86より高くなかった。
【0235】
ベースライン後に確認陽性ADAを有する対象におけるPKデータの事前評価は、曝露、安全性、または有効性に対する陽性ADAの識別できる効果はないことを示す。この評価は、ベースライン後に確認陽性ADAを有する対象(n=26)からのすべての利用可能なデータに基づいて行った。
【0236】
(実施例10)
クローン病
背景。血流から腸への白血球(WBC)トランスロケーションの阻害は、炎症性腸疾患を管理するための有望な新しい手法である。OPERAは、クローン病(CD)を有する対象におけるmAb 7.16.6の安全性および有効性の無作為化、多施設二重盲検、プラセボ対照試験であった。
【0237】
方法。活性な中等度から重度のCD(CDAI 220~450)、ならびに抗TNFおよび/または免疫抑制薬に対して失敗もしくは不耐性の履歴を有する18~75歳の成人は、彼らが3.0mg/L超のhsCRPおよび大腸内視鏡検査での潰瘍を有していた場合適格であった。対象を、プラセボ、22.5mg、75mg、または225mg群に対して無作為化した。主要エンドポイントは、8または12週目におけるCDAI-70応答であった。二次エンドポイントは、寛解およびCDAI-100応答および安全性であった。試験した疾患バイオマーカーは、FACSによる血中β7+CD4+セントラルメモリーT細胞レベル(頻度およびβ7発現)、CRP、ならびに可溶性MAdCAMであった。
【0238】
結果。267人の対象を登録した。CDAI-70応答は、いずれの処置についてもプラセボと有意に異ならなかったが、寛解は、より高いベースラインCRP(CRP>18)を有する対象においてより高いと思われる。ベースラインにおける中央値CRPは、すべての群にわたって18mg/Lであった。対照対象ではなく、処置された対象における可溶性MAdCAMは、用量関連様式で、ベースラインと比較して2週目で有意に減少し、試験中低いままであった。循環β7+CD4+セントラルメモリーTリンパ球は、用量依存的様式で、PF処置対象において8および12週目で増大した。ベースライン特性、および有効性結果のサブセットは、表15中にある。
【0239】
【0240】
mAb 7.16.6は、この患者集団において安全で耐容性良好であると思われる。最も一般的な有害事象は、根本的な疾患に関連し、いずれのAE群においても用量応答の証拠はなかった。
【0241】
結論。主要エンドポイントは、高いプラセボ応答のために満たされず、mAb 7.16.6は、β7+Tリンパ球の用量関連増大およびMAdCAMの持続的用量関連減少によって示されるように薬理学的に活性であった。より高いベースラインCRPを有する対象は、mAb 7.16.6に対して最良の応答を有した。安全性シグナルは、本試験で観察されなかった。
【0242】
(実施例11)
クローン病のRNAバイオマーカー
MAdCAM CD試験に登録された患者からの血液由来RNAを、TruSeq mRNA鎖配列決定ライブラリー生成、その後のIllumina HiSeq2000または4000シリーズ配列決定装置を使用するこのライブラリーの分析からなるIllumina RNA-seq技術プラットフォームを使用して、処置前、および処置の投薬期間中の12週間の時点に採取した試料から測定した。全体で、血液中の転写物発現を、ベースラインおよび12週目に91患者について測定した。
【0243】
多くの転写物は、ベースラインにおける出発遺伝子発現値と比較して、抗MAdCAM処置の投薬期間中の12週間の時点で異なる遺伝子発現レベルを示す。ベースラインと抗MAdCAM処置後12週間との間の異なる用量レベルにわたる統計的に200の最も有意な変化についての転写物を表16に要約する。各用量レベルにおける平均倍率変化(AveFC)に続いて処置用量にわたる変化の有意性(PValueTrt)が示されている。最初の2つの列は、それぞれ、Ensemble GeneIDおよびHUGO遺伝子命名法委員会(HGNC)GeneIDを示す。
【0244】
【0245】
【0246】
【0247】
【0248】
【配列表】